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JP4601891B2 - 細胞活性物質、その製造方法、ならびに、当該細胞活性物質を含む医薬品、化粧料および食品 - Google Patents
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JP4601891B2 - 細胞活性物質、その製造方法、ならびに、当該細胞活性物質を含む医薬品、化粧料および食品 - Google Patents

細胞活性物質、その製造方法、ならびに、当該細胞活性物質を含む医薬品、化粧料および食品 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の技術分野】
本発明は、海洋深層水中に含有される細胞活性物質、その製造方法、ならびに、この細胞活性物質を含有する医薬品および化粧料に関する。さらに詳しくは、本発明は、海洋深層水中に含有される、皮膚細胞活性物質(繊維芽細胞エネルギー代謝活性物質および繊維芽細胞増殖活性物質などの繊維芽細胞活性物質を含む)、免疫細胞活性物質(好酸球活性物質を含む)などの細胞活性物質、このような細胞活性物質を製造する方法、ならびに、このような細胞活性物質を含有する医薬品、化粧料および食品に関する。
【0002】
【発明の技術的背景】
人皮には、加齢などの内的要因によりあるいは紫外線などの外的要因などにより、しわ、しみ、たるみの発生といった老化症状が発現する。こうした人皮の老化症状は、皮膚真皮繊維芽細胞の機能低下、さらにこうした細胞の機能低下に伴うマトリックス繊維およびコラーゲンの分泌不足が主要な発生要因となっていると考えられている。従って、人皮の老化防止あるいは老化した皮膚の機能改善には、皮膚真皮繊維芽細胞を活性化させ、さらにこうした細胞の増殖を図ることが有効な手段であると考えられている。
【0003】
このような人皮の老化症状、すなわち皮膚真皮繊維芽細胞の活性の低下に対しては、海藻などからの抽出物が有効であるとされている。例えば特開平10-330281号公報には、ヤハズグサ類、ホンダワラ類、フクリンアミジ類、フクロノリ類、コンブ類、カイメンソウ類、カギケノリ類、イトグサ類、ヤナギノリ類、ソゾ類、ガラガラ類からの抽出液が真皮繊維芽細胞の代謝を活性化させることが記載されている。また、特開平11-116431号公報には、キートセロスグラシリスの培養上清を含有してなる皮膚外用剤の発明が開示されている。ここで使用されているキートセロスグラシリス(Chaetoceros gracilis)は、近海の海中に単独で生息する藻類の一種である。このキートセロスグラシリスの培養上清は、真皮の繊維芽細胞の代謝活性を向上させる効果があると記載されている。
【0004】
また、こうした海藻由来の成分のほかにも、例えば特開2000-169320号公報には、海藻抽出液、カミツレ抽出液、ムクロジ抽出液、タマサキツズラフジ抽出液のいずれかと、ユッカ抽出液とを組み合わせることにより細胞賦活剤として効果があると記載されている。
しかしながら、こうした藻類あるいは植物からの抽出物は、藻類あるいは植物の生息状況によって抽出される成分の組成に変動が生ずる虞があり、また、こうした藻類あるいは植物からの抽出操作も複雑であるとの問題がある。
【0005】
また、特開2000-159654号公報には、海洋深層水を限外濾過、逆浸透膜濾過法、電気透析法、イオン交換膜法および蒸留法の処理法から選ばれる少なくとも1種の処理法により処理することにより得られる濃縮水を含有することを特徴とする化粧料の発明が開示されている。そして、この公報には、この濃縮水の導電率が5mS/cm〜1S/cm、好ましくは10mS/cm〜500mS/cmであると記載されており、海水が上記のような導電率を有するためには、相当量のイオン性物質を含有していると考えられる。また、この公報では、濃縮水中の水蒸発固形分あたりの塩素イオン、ナトリウムイオンおよびカリウムイオンの合計存在量比率は35%以下であり、現に実施例2および比較例2で使用している濃縮水B1の塩素イオン、ナトリウムイオン及びカリウムイオンの合計存在比率は31.5%、実施例2および比較例2で使用している濃縮水B2の塩素イオン、ナトリウムイオン及びカリウムイオンの合計存在比率も32.5%と非常に高い値を示している。そして、該公報には、これらの値を有し、かつこの公報に記載されている方法により得られる濃縮水であって、海洋深層水中に含有される成分のうち、皮膚に対して刺激性を有する塩素イオン、ナトリウムイオン及びカリウムイオンを除いたミネラル分を高い濃度で含有する海洋深層水を用いた化粧料の発明が開示されていると解される。海洋深層水に含まれる無機物質から、皮膚に対して刺激性を有する塩素イオン、ナトリウムイオン及びカリウムイオンを除去すると、一般に栄養塩といわれるイオンであるリン酸イオン、ケイ酸イオン、硝酸イオンなどの含有比率が高くなり、これらの天然ミネラルが皮膚のくすみ、しわなどの改善効果および痩身効果を奏するものと考えられる。
【0006】
上記のように特開2000-159654号公報には、海洋深層水を濃縮して、海洋深層水中に含有される天然ミネラルを主として含有する海洋深層水の濃縮水を使用した化粧料が開示されているのであり、この公報に開示されている化粧料によって奏される効果は海洋深層水中に含まれる天然ミネラル成分、すなわち無機塩であると解される。
【0007】
このような加齢などの内的要因による皮膚の老化とは別に、皮膚疾患として、近年、住環境および食生活等の変化、ストレスなどから、アトピー性皮膚炎などの種々のアレルギー症状を起こす患者が増えており、問題となっている。
アトピー性皮膚炎などのアレルギー症状は、遺伝による体質が大きな役割を果たしている過敏症の一種である。このようなアレルギー症状を引き起こす抗原は、血液中にあると考えられており、この抗原と抗体との複合体が、組織からヒスタミンあるいはヒスタミン様物質を遊離させる結果、特異的な症状が引き起こされるものと考えられている。例えば、アトピー性皮膚炎では、末梢血好酸球が増大し、組織所見においても好酸球の浸潤がみられることが多い。このことからも、好酸球がアトピー性皮膚炎においては中心的な役割を担う細胞の一つであると考えられる。
【0008】
こうした背景のもとに、好酸球活性物質について種々の研究がなされており、海洋深層水によって好酸球の活性が高くなることが既に知られているが、このような海洋深層水の好酸球活性に関するメカニズムについては、いまだ正確には解明されていない。目下のところ、好酸球活性は、海洋深層水中に含まれるミネラル分に由来するものとの考え方が大勢を占めており、海洋深層水を濃縮、脱塩、分離して得られるミネラル分を多く含む分離物がアレルギー性の薬剤等に用いられていた。
【0009】
上記のような海洋深層水を濃縮、脱塩、分離して得られる物質では、そのほとんどを硫酸カルシウム等の無機塩が占めている。しかしながら、硫酸カルシウムには、アレルギーに関与した薬効が実質的にはないことが知られている。
【0010】
【発明の目的】
本発明は、海洋深層水中から無機塩をできるだけ除去し、一方この海洋深層水中に含有される有機物質を濃縮した高濃縮脱塩海洋深層水からなる細胞活性物質である皮膚細胞活性物質(繊維芽細胞エネルギー代謝活性物質および繊維芽細胞増殖活性物質などの繊維芽細胞活性物質を含む)および免疫細胞活性物質(好酸球活性物質を含む)を提供することを目的としている。
【0011】
さらに本発明は、上記のような細胞活性物質である皮膚細胞活性物質および免疫細胞活性物質を製造する方法を提供することを目的としている。
また、本発明は、上記のような皮膚細胞活性物質および免疫細胞活性物質などの細胞活性物質を用いた医薬品、化粧料および食品を提供することを目的としている。
【0012】
【発明の概要】
本発明の細胞活性物質は、海洋深層水中に溶存される無機塩の少なくとも一部を分離する操作を経た脱塩海洋深層水を、さらに濃縮する操作を少なくとも1回行うことにより得られ得るものである。
前記脱塩海洋水は、必要に応じて、減圧蒸留等により濃縮された濃縮脱塩海洋水であってもよい。
【0013】
本発明において、濃縮操作(工程)とは、海洋水中に溶存する溶在塩の除去操作をいい、本工程においては、海洋水が濃縮され真水が除去されていてもよい。
本発明における細胞活性物質には、皮膚細胞活性物質および免疫細胞活性物質が包含される。また、前記皮膚細胞活性物質には、繊維芽細胞エネルギー代謝活性物質および繊維芽細胞増殖活性物質などの繊維芽細胞活性物質が含まれ、前記免疫細胞活性物質には、好酸球活性物質が含まれる。
【0014】
本発明では、海洋深層水は、深度200m以上の深海から採取されたものを用いる。
また、本発明の細胞活性物質の製造方法は、海洋深層水から溶存する無機塩の少なくとも一部を分離して(濃縮)脱塩海洋深層水を得る工程、および、該(濃縮)脱塩海洋深層水をさらに濃縮して析出物あるいは無機塩を分離する操作を少なくとも一回行う工程を経て細胞活性物質を高い濃度で含有する高濃縮脱塩海洋深層水を得ることを特徴としている。
【0015】
さらに、本発明の医薬品は、海洋深層水中に溶存される無機塩の少なくとも一部を分離する操作を経た(濃縮)脱塩海洋深層水を、さらに濃縮する操作を少なくとも1回行うことにより得られ得る細胞活性物質を含有することを特徴としている。
また、本発明の化粧料は、海洋深層水中に溶存される無機塩の少なくとも一部を分離する操作を経た(濃縮)脱塩海洋深層水を、さらに濃縮する操作を少なくとも1回行うことにより得られ得る細胞活性物質を含有することを特徴としている。
【0016】
またさらに、本発明の食品は、海洋深層水中に溶存される無機塩の少なくとも一部を分離する操作を経た(濃縮)脱塩海洋深層水を、さらに濃縮する操作を少なくとも1回行うことにより得られ得る細胞活性物質を含有することを特徴としている。
海洋深層水中には、無機塩と有機物質とが含有されており、海洋深層水中に溶存している無機塩の濃度は、通常は3.4重量%程度である。そして、この無機塩のうち約2.2重量%以上が、塩化ナトリウム、塩化マグネシウム、硫酸カルシウムであり、こうした無機塩は、繊維芽細胞活性物質としての作用は少なく、また、特に無機塩中に多く含まれる硫酸カルシウムには、アレルギーに関与した薬効も実質的にないことが知られている。
【0017】
一方、海洋深層水に溶存している無機塩を除去しながら濃縮して得られる濃縮液を分析すると、この濃縮液中には一定分子量以上の有機物質が含有されていることがわかった。このような有機物質の由来およびその構成などについての詳細は明らかではなく、極めて多種多様な成分を含有しているものと推定される。しかしながら、こうした有機物質について、展開溶媒を選択してゲル濾過クロマトグラフィーを用いて分析すると、波長280nmにおける紫外線検出分析においては分子量100万以上の第1画分、分子量3万〜100万の第2画分、分子量5000〜3万の第3画分、および、分子量5000以下の第4画分よりなる画分の少なくとも1の画分にピークを有する有機物質が含有されていることがわかった。
【0018】
そして、本発明はこのような海洋深層水中に含有される有機物質を選択的に収集して、たとえば繊維芽細胞に対する挙動および好酸球活性などの細胞活性について調査したところ、これらの有機物質に繊維芽細胞エネルギー代謝・増殖活性および好酸球活性などの細胞活性があるとの知見を得て本発明を完成したものである。
【0019】
すなわち、従来は、海洋深層水中に含有される塩化物系以外の無機物である天然ミネラルが注目されており、こうした天然ミネラルを例えば化粧品などの皮膚外用薬に配合することにより、希少天然ミネラルが繊維芽細胞活性および好酸球活性を有する活性物質として作用すると考えられ検討されていたが、こうした海洋深層水に微量に含有される有機物質に関しては、細胞エネルギー代謝・増殖活性などに関する詳細な検討はされていない。これは海洋深層水中における無機塩の含有率が高く、通常の分離方法では、無機塩により阻害されて極微量に含有される有機物質を無機塩から分離することさえも極めて困難であると共に、こうした無機塩の影に隠れて極微量の有機物質の作用効果を特定すること自体に著しい困難性があったためである。
【0020】
しかしながら、本発明者が、海洋深層水を繰り返し濃縮しながら無機塩をでき得る限り分離除去して有機物質の濃度を高めて、この有機物質を比較的高い濃度で含有する濃縮液を例えば繊維芽細胞、好酸球に作用させてみたところ、繊維芽細胞のエネルギー代謝・増殖活性物質として優れた効果を奏し、好酸球活性物質としても優れた効果を奏したのである。
【0021】
【発明の具体的な説明】
以下に、皮膚細胞活性物質として繊維芽細胞活性物質を例に採り、また、免疫細胞活性物質として好酸球活性物質を例に採って、本発明の細胞活性物質である皮膚細胞活性物質および免疫細胞活性物質、それらの製造方法、ならびにこの細胞活性物質を含む医薬品、化粧料および食品について具体的に説明する。
【0022】
本発明において、皮膚細胞活性物質とは、繊維芽細胞等を活性化し得る物質をいう。
また、免疫細胞活性物質とは、白血球、すなわち、マクロファージなどの単球、NK細胞、T細胞、K細胞、B細胞などのリンパ球、好酸球、好中球、好塩基球などの顆粒球等を活性化し得る物質をいう。
【0023】
図1に、本発明の細胞活性物質を得るための代表的な操作の例を示す。なお、本発明の細胞活性物質(皮膚細胞活性物質および免疫細胞活性物質)は、それぞれ上記操作によって得られ得るものであるが、この操作のみによって得られる物質に限定的に解釈されるべきではない。
まず本発明の細胞活性物質について、図1に例示した製造フローに沿って具体的に説明する。
【0024】
図1に示すように、本発明の細胞活性物質は海洋深層水を原料として用いて製造される。
本発明においては、細胞活性物質には、皮膚細胞活性物質および/または免疫細胞活性物質が、特に好ましくは、繊維芽細胞エネルギー代謝・増殖活性物質および/または好酸球活性物質が含まれる。すなわち、本発明の細胞活性物質は、皮膚細胞活性を有すると同時に免疫細胞活性を有するものであってもよく、また、皮膚細胞活性または免疫細胞活性のみを有するものであってもよい。
【0025】
本発明では、少なくも太陽光が到達しない水深200m以上、好ましくは300m以上の深度の海洋深層水を使用する。また、水深は200m以内だが、海水の湧昇による海面付近に湧き上がる海洋深層水も利用できる。
一般に海洋水中、太陽光が到達可能な深度は約200mである。したがって、水深約200m以下の海洋の深層に存在する海洋深層水には、太陽光は当然到達しないから、この海洋深層水中においては藻あるいは水性植物などによる光合成は行われることなく、またプランクトンなどの繁殖もほとんど見られないというのが一般的な見解である。このように海洋深層の海流中には、有機物質はほとんど含有されていないと考えられているが、反面、通常の海洋水(海洋深層水以外の海洋水の意味)よりも高い濃度でミネラル分を含有しており、これらのミネラル分には、現在の通常の食生活などにおいて不足しがちな稀少ミネラル分も含有されていることが知られている。したがって、従来の海洋深層水においては、上記のような稀少ミネラル分が複合的に作用して、繊維芽細胞あるいは好酸球に対して活性を有すると考えられていた。
【0026】
しかしながら、本発明者が海洋深層水を詳細に分析してみると、海洋深層水中には意外に多くの有機物質が溶存していることがわかった。したがって、このような溶存している有機物質が、細胞活性を有している可能性が高く、このような成分を得ることができれば、高い細胞活性、具体的には、繊維芽細胞エネルギー代謝・増殖活性物質(繊維芽細胞活性物質)などの皮膚細胞活性物質、あるいは、好酸球活性物質などの免疫細胞活性物質を得ることができる。こうした繊維芽細胞エネルギー代謝・増殖活性物質は、皮膚の老化防止あるいは老化した皮膚の機能改善に有効であり、また、こうした好酸球活性物質はアトピーなどのアレルギー性疾患の治療薬として非常に有用性が高い。
【0027】
このように採取された海洋深層水は、採取の際に混入することもある浮遊物を除去するため、メンブランフィルターのように比較的目開きの小さいフィルターを用いて濾過する。本発明では通常は0.01〜2μm、好ましくは0.1〜1μmの目開きのフィルター、特にメンブランフィルターを用いて濾過することが好ましい。このようなフィルターを用いることにより、肉眼では確認することができない微細成分まで濾別することができる。なお、この段階で析出してくる析出物あるいは無機塩がある場合には、この段階でこのような析出物等が分離されてもよい。
【0028】
本発明では上記のようにして濾過した濾液を用いるので、フィルターを透過できなかった物質(残渣)は廃棄される。
本発明では、上記のようにして得られた濾液を減圧下に蒸留して、この濾液中に含有される水分の少なくとも一部をこの減圧蒸留操作により除去する。最初に採取した海洋深層水を100容量部としたときに、この減圧下における蒸留操作によって、最初の海洋深層水採取量に対して、通常は1〜50容量部、好ましくは1〜30容量部、さらに好ましくは2〜25容量部、特に好ましくは5〜20容量部になるように、減圧蒸留を行う。具体的には、1〜40torr、好ましくは5〜30Torrの減圧下に、50℃以下の温度、好ましくは40℃以下の温度で、10分〜3.0時間、好ましくは30分〜1.0時間かけて減圧蒸留する。なお、この減圧蒸留の際の蒸留温度は、海洋深層水に溶存している溶存物質の分解を防止等するため、上記範囲のようなできるだけ低いことが好ましく、従って、ここで使用する減圧蒸留時の圧力を低くすることにより、より低い温度でこの減圧蒸留操作を行うことができる。この減圧蒸留操作によって海洋深層水中の水の一部が分離され、この分離された水(真水)は廃棄される。また、無機塩を分離する設備の処理能力が充分であれば、上記の濃縮作業は省略できる。
【0029】
また、上記のようにして減圧蒸留により海洋深層水を濃縮して無機塩を分離する代わりに、荷電モザイク膜を用いて海洋深層水中の電解質(無機塩)を分離することもできる。荷電モザイク膜を用いることにより海洋深層水中の無機塩を選択的に除去することができ、しかもこの無機塩の選択的な除去に際して海洋深層水を加熱する必要がないので、この方法を採用することにより溶存する有機物などに対する熱影響を低減することができる。
【0030】
一方、上記のように減圧蒸留によって水を分離することにより濃縮された海洋深層水(以下、濃縮海洋深層水という)中には、無機塩などが析出する。この析出物は、塩化ナトリウム、硫酸カルシウム、塩化マグネシウムなどの無機塩を主成分とするものであり、蒸留残渣を充分に冷却(通常は室温(25℃)以下)した後、好ましくは2〜10℃に冷却することにより析出した析出物を分離する。この析出物の分離には、濾過、遠心分離、デカンテーションなどの一般的な分離方法を利用することができる。また、これらの分離操作を組み合わせることもできる。上記のようにして減圧下に濃縮することにより析出する析出物の量(主として無機塩化物)は比較的多く、またこの析出物はほとんどが結晶化した無機塩であることから、濾過による分離が効率的である。
【0031】
ここで無機塩などの析出物の分離に使用される濾過装置に特に限定はないが、目開きが通常0.01〜2μm、好ましくは0.1〜1.0μmのフィルターを使用する。上記のようなフィルターを用いて減圧濾過することにより、効率よく析出物と濾液とを分離することができる。上述のようにここで分離される析出物は主として無機塩化物であり、この分離操作によって最初に使用した海洋深層水中に溶存している無機塩化物などの無機塩(主として、塩化ナトリウム、塩化マグネシウムの他、硫酸カルシウムなど)の50重量%以上、好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上が除去される。上記のようにして分離された析出物(主として無機塩化物)は、本発明では使用せず廃棄される。
【0032】
本発明では、上記のようにして析出物が分離された分離液、即ち、上記例で示すと濾過により分離した場合には上記脱塩濾液を次の工程で使用する(以下、(濃縮)脱塩海洋深層水という)。
即ち、本発明の細胞活性物質は、上記の工程で得られた脱塩濾液((濃縮)脱塩海洋深層水)を濃縮し、この濃縮により析出した析出物を分離する工程を少なくとも1回行うことにより得られ得る高濃縮脱塩海洋深層水中に高い濃度で含有されている。
【0033】
ここで濾液は、通常は減圧蒸留により濃縮される。
本発明において、濃縮操作(工程)とは、海洋水中に溶存する溶在塩の除去操作をいい、本工程においては、海洋水が濃縮され真水が除去されていてもよい。このときの圧力は、通常は1〜40Torr、好ましくは5〜30Torrの範囲内に設定することができ、蒸留温度は、通常は5〜50℃、好ましくは10〜40℃である。上記のような条件で一回の操作で、もとの濾液の量100容量部に対して好ましくは5〜30容量部、さらに好ましくは5〜20容量部の範囲内になるように蒸留する。このように蒸留することにより、この濾液中に溶存した成分(主として無機塩)が析出する。次いで、本発明では、このようにして析出した析出物(主として無機塩)を分離する。
【0034】
この析出物あるいは無機塩の分離、すなわち、溶存塩の除去は、半透過膜を用いた分離操作、残留イオン性物質を電気的に分離する操作、遠沈操作、ゲル濾過操作、荷電モザイク膜を用いた分離操作および、限外濾過操作のいずれかの方法を採用することが好ましい。即ち、この工程における析出物は、前の工程における析出物よりも粒子径が小さくなる傾向があり、一部はコロイド状あるいはゲル状になることさえあるため、通常の濾過などの操作では析出物を分離しにくい。
【0035】
そこで、この工程における析出物あるいは無機塩と液との分離には、半透過膜の浸透圧の差を利用して分散媒から分離する方法、電圧を印加して残留するイオン性物質の電気的特性を利用して収集し分散媒から分離する方法、遠心力のような外部応力を用いて析出物を収集し分散媒から分離する方法、限外濾過膜など所望の透過性を有する濾過膜を用いて加圧下に濾過する方法、ゲル濾過を用いて低分子量の粒子を分散媒から分離する方法などを利用することにより、析出物と分散媒とを分離することができる。
【0036】
本発明の細胞活性物質は、上記のような濃縮操作と分離操作を少なくとも1回、好ましくは2回以上行うことにより得られる分散媒(高濃縮脱塩海洋深層水)である。なお、上記の工程を繰り返し行う場合、前の操作で行った濃縮操作および分離操作と、次に行う濃縮操作および分離操作とは、同一の操作である必要はなく、その析出物の状態などに対応させて適宜操作を組み合わせることができる。こうして分離された析出物は、主として残存していた無機塩、溶存金属化合物などであると考えられ、本発明ではこの析出物は廃棄される。
【0037】
上記のような濃縮および分離を繰り返すことによって得られる分散媒(高濃縮脱塩海洋深層水)は、細胞活性物質を高濃度で含有する液体であり、この細胞活性物質(すなわち、繊維芽細胞代謝活性物質および好酸球活性物質)を高濃度で含有する液体の量は、最初に使用した海洋深層水100容量部に対して通常は0.00001〜50.0容量部、好ましくは0.0001〜30.0容量部、さらに好ましくは0.001〜5.0容量部、特に好ましくは0.01〜0.5容量部の量である。
【0038】
上記のようにして得られた高濃縮脱塩海洋深層水中には、種々の有機物質が含有されており、逆に無機物質の含有率は、非常に低く、通常は2.0重量%以下、好ましくは0.9重量%以下、さらに好ましくは0.1重量%以下、特に好ましくは0.01重量%以下であり、この細胞活性物質の強熱残分は通常は1.0重量%以下、好ましくは0.1重量%以下、特に好ましくは0.01重量%以下である。特に、この高濃縮脱塩海洋深層水中における無機塩化物の含有率は著しく低く通常は1000ppm以下、好ましくは100ppm以下である。また、この高濃縮脱塩海洋深層水中に含有される有機物質の総合量は、通常は0.001〜50重量%、好ましくは0.01〜50重量%、特に好ましくは0.1〜10重量%の範囲内にある。
【0039】
上記のようにして得られた高濃縮脱塩海洋深層水中には、たとえば、人皮の繊維芽細胞を活性化する物質のような皮膚細胞活性物質、および/または、たとえば、好酸球の活性を高める物質のような免疫細胞活性物質などの細胞活性物質が含有されている。この高濃縮脱塩海洋深層水中に含有される皮膚細胞活性物質および免疫細胞活性物質についての詳細は不明であるが、少なくとも上記のようにして海洋深層水を処理することにより得られる高濃縮脱塩海洋深層水は繊維芽細胞にエネルギー代謝・増殖活性を賦与する成分および/または好酸球活性を有する成分を含有している。そして、本発明者の検討によると、この物質は、高濃縮脱塩海洋深層水に含有される有機物質のいずれかであろうと推定される。
【0040】
そこで、この高濃縮脱塩海洋深層水を展開溶媒としてリン酸バッファー生理食塩水(PBS-)を用い、カラムとして商品名セファクリルS-300(ファルマシヤ社製)を用いて、ゲル濾過クロマトグラフィーにより波長280nmにおける紫外線検出で分析し、この分析結果を、分子量100万以上の第1画分、分子量3万〜100万の第2画分、分子量3万〜5000の第3画分、および、分子量5000以下の第4画分に分割して各画分におけるピークの有無を調べてみると、上記のようにして得られた高濃縮脱塩海洋深層水は、少なくとも上記第1〜第4画分のいずれかの画分に少なくとも1個のピークが観察される。上記のような分子量で区画した画分にピークが表れることは、この高濃縮脱塩海洋深層水が上記画分に該当する分子量の有機化合物を含有していることを意味する。因みに、標識物質として数平均分子量13700のRibonuclease Aを添加した場合、このRibonuclease Aに対応する部分は第3画分に表れ、また、標識物質として数平均分子量440000のFerritinを添加した場合には、このFerritinに対応する部分は、第2画分に表れる。
【0041】
上記のようにして得られた高濃縮脱塩海洋深層水について測定したゲル濾過クロマトグラフィーのチャートの例を図2に示す。図2において、破線で示したのは標識物質として使用した数平均分子量13700のRibonuclease Aおよび数平均分子量440000のFerritinのピークである。
図2に示すチャートでは、第3、第4画分(分子量3万以下)にピークが表れ、また、第1画分(分子量100万以上)にも小さいながらピークが表れている。また、第2画分にはピークは表れないが、繊維芽細胞活性が確認されたことから、当該第2画分に含まれる物質は、UV吸収のない有機成分、例えば多糖成分であると考えられる。これらのピークとなって表れている物質の構造などについては、これらのピークが単一の物質を表すものではなく、複数の化合物に起因するピークであることから、その詳細は解明するに至っていない。しかしながら、標識物質のピークとの対比からすると、重合体化した生体関連物質である可能性が高い。
【0042】
上記のような高濃縮脱塩海洋深層水は、皮膚細胞活性および/または免疫細胞活性を有している。以下に、上記高濃縮脱塩海洋深層水が示す皮膚細胞活性および免疫細胞活性について、それぞれ、繊維芽細胞に対する細胞エネルギー代謝・増殖促進活性および好酸球活性を例にとって説明する。
まず上記高濃縮脱塩海洋深層水中に高濃度で含まれる細胞活性物質(繊維芽細胞エネルギー代謝・増殖活性物質)の有する繊維芽細胞に対する細胞エネルギー代謝・増殖促進活性について説明する。
【0043】
例えば、上記高濃縮脱塩海洋深層水を、ヒト真皮由来繊維芽細胞の三次元細胞組織モデルを用いてMTT法により細胞のミトコンドリアのエネルギー代謝活性を評価すると、上記高濃縮脱塩海洋深層水は、固体分濃度0.1重量%の添加で、繊維芽細胞に対する明らかな代謝活性の改善効果が認められる。
さらに、画分別に成分を分離して繊維芽細胞のエネルギー代謝・増殖活性を調べると、図3に示したように、第2画分の成分が最も高いエネルギー代謝・増殖活性を示す傾向がある。図2において、この画分には、UVのピークが表れていないことから、第2画分に含まれる活性成分は、UV吸収のない多糖成分であると考えられる。
【0044】
上記のように本発明の繊維芽細胞エネルギー代謝・増殖活性物質、すなわち、繊維芽細胞活性物質は海洋深層水から得られ、特に繊維芽細胞に対してエネルギー代謝・増殖活性を示すことから、この細胞エネルギー代謝・増殖活性物質(繊維芽細胞活性物質)は、医薬品・化粧料、食品などに添加して用いることが好ましい。
【0045】
医薬品・化粧料においては、特に皮膚外用剤として使用することができる。なお、本発明の効果を達成し得る限り、医薬品・化粧料の剤型、投与方法は、制限されないことはいうまでもなく、本発明においては、当該細胞活性物質は、内服薬であってもよく、経口投与も可能である。
本発明の皮膚外用薬は、海洋深層水中に溶存される無機塩の少なくとも一部を分離する操作を経た(濃縮)脱塩海洋深層水を、さらに濃縮する操作を少なくとも1回行うことにより得られ得る繊維芽細胞エネルギー代謝・増殖活性物質を含有している。
【0046】
本発明の細胞活性物質である繊維芽細胞エネルギー代謝・増殖活性物質は、例えば水性媒体に配合して化粧水のようにして使用することもできるし、軟膏基材に配合してクリームとして使用することもできる。さらに、エマルジョンに配合することにより乳液のように使用することができ、また、この細胞エネルギー代謝・増殖活性物質を水性媒体に配合し、この水性媒体に増粘剤を配合することにより、ジェルのようにして使用することもできる。
【0047】
本発明の皮膚外用剤に配合することができる細胞エネルギー代謝・増殖活性物質以外の成分としては、鉱油、植物油、ワックス、脂肪酸、脂肪族アルコール、エステル油、界面活性剤、湿潤剤、ポリマー、動植物抽出油、アミノ酸類、ビタミン剤、ステロイド剤、消炎剤、防腐剤、紫外線吸収剤、金属キレート剤、酸化防止剤、pH調整剤、色剤、香料など、皮膚の外用剤に通常使用される成分を配合することができる。
【0048】
本発明の皮膚外用剤は、その用途に対応させて細胞エネルギー代謝・増殖活性物質(繊維芽細胞活性物質)の含有量を調整することができる。即ち、本発明の皮膚外用剤は、人の皮膚の細胞の代謝・増殖活性を改善することにより、ヒト皮膚のしわ、しみ、たるみの発生といった老化症状を予防あるいは治療するものであり、その使用方法などに対応させて、配合する細胞エネルギー代謝・増殖活性物質(繊維芽細胞活性物質)を調整することができる。この細胞エネルギー代謝・増殖活性物質(繊維芽細胞活性物質)は、上述のように通常は水に溶解もしくは分散した状態で得られるが、ヒト皮膚のしわ、しみ、たるみの発生といった老化症状の予防あるいは治療には、この水溶液あるいは分散液中の溶存あるいは分散成分が作用することから、本発明では固形分換算重量として細胞エネルギー代謝・増殖活性物質の使用量を特定することが好ましい。そして、本発明の皮膚外用薬(剤)100重量部中における細胞エネルギー代謝・増殖活性物質(繊維芽細胞活性物質)の量は、固形分換算で、通常は0.00001〜50.0重量部、好ましくは0.0001〜30.0重量部、さらに好ましくは0.001〜5.0重量部、特に好ましくは、0.01〜1.0重量部である。本発明の細胞エネルギー代謝・増殖活性物質(繊維芽細胞活性物質)は、分子量による上記画分に含有される成分の構造などの詳細が必ずしも明らかではなく、従ってこれらの画分に含有される成分の作用効果を明確にすることは非常に困難であると共に、それぞれの画分に含有される成分の相互作用による作用効果の向上もあると考えられる。上記の理由から、本発明では各画分に含有される成分の複合体である上記のようにして得られた細胞エネルギー代謝・増殖活性物質を含有する水溶液あるいは分散液をそのまま使用することが好ましく、そして、その際に使用量は、水溶液あるいは分散液中に溶存もしくは分散している固形分として表記する。
【0049】
上記のような量で細胞エネルギー代謝・増殖活性物質(繊維芽細胞活性物質)を含有する本発明の皮膚外用剤を使用することにより、この細胞エネルギー代謝・増殖活性物質(繊維芽細胞活性物質)がヒトの皮膚細胞、特に繊維芽細胞を活性化して、例えばコラーゲンなどの皮膚老化防止性の成分の分泌を促進すると共に、色素の沈着、ヒアロルン酸生成の低下などを有効に防止することができる。
【0050】
そして、これらが総合して、ヒト皮膚のしわ、しみ、たるみの発生といった老化症状を予防することができ、あるいはこうして老化症状に陥った皮膚を治療し、改善することができる。
次に、上記高濃縮脱塩海洋深層水中に高濃度で含まれる免疫細胞活性物質(好酸球活性物質を含む)の有する好酸球活性について説明する。
【0051】
上記高濃縮脱塩海洋深層水を用いて、後述するような方法により、好酸球活性を調べると、コントロールとして用いたリン酸バッファー生理食塩水(PBS)およびポジティブコントロールとして用いたオプソニン化ザイモザン(OZ, 免疫賦活剤)よりも高い好酸球活性を示す。
また、上記のように分割した各画分について好酸球活性を調べた場合においても、いずれの画分においても、コントロールよりも高い好酸球活性が見られる。各画分の中では、第4画分の成分が最も高い高酸球活性を示す傾向にある(図4参照)。
【0052】
アトピーに代表されるアレルギーと好酸球活性の関係について簡単に説明する。
アトピー性皮膚炎のようなアレルギー反応においては、局所に遊走した好酸球がヒスタミラーゼ、アリルスルファターゼB、ホスホリパーゼD2を放出する。放出されたこれらの物質は炎症をメディエート(mediate)するヒスタミン、異種蛋白等の異物に対する異常過敏反応のエオジン好性細胞走化性因子(eosinophil chemotactic factor of anaphylaxis)および血小板活性化因子(platelet activating factor(PAF))を代謝してアレルギー反応の修復に働くことが知られている。さらに、最近では、好酸球は上記のような組織の修復作用以上に組織の障害性に働くと考えるようになってきてもいる。好酸球が組織障害に関与する上で役割を果たすのが好酸球の特殊顆粒内に存在する4種類の塩基性タンパク質(major basic protein(MBP), eosinophil peroxidase(EPO),eosinophil cationic protein(ECP),eosinophil-derived neurotoxin(EDN))と好酸球が産生するスーパーオキサイド(O2 -)由来の各種活性酵素分子種である。これらの4種類の塩基性タンパク質は、活性化された好酸球から脱顆粒によって組織に放出され、組織障害に関与すると考えられている。特にMBPは好塩基性球を、EPOは肥満細胞を活性化しヒスタミンを遊離させアレルギー反応を増長させていると考えられている。
【0053】
また、スーパーオキサイド(O2 -)は、好酸球がIgE複合体、PAF、オプソニン化ザイモザン(OZ)、phorbol myristate acetate などの種々の刺激によってNADPHオキシダーゼと呼ばれる細胞膜結合性酵素系が活性化することによって産生する。このNADPHオキシターゼは、急激なhexose monophosphate shunt 活性の増大で生成されるNADPHを酸化し、それによって酸素が1電子還元されたO2 -を生成する。このO2 -からは酵素的あるいは非酵素的反応により、H2O2、HO-1O2などの反応性の高い各種活性酸素分子種が生ずる。これらの活性酸素分子種は、殺菌などの重要な生体防御を担っている。したがって、好酸球は、好酸球の有するスーパーオキサイド(O2 -)産生を促進させる能力によって、アトピー性皮膚炎などのアレルギー反応の原因要素の抑制に非常に有効に作用する。
【0054】
本発明において、好酸球の活性化度は例えば以下に記載する方法により測定することができる。
まず、活性化度を測定するのに用いられる好酸球を調製する。具体的には、例えば、好酸球に選択的な増殖分化因子であるIL-5を恒常的に産生するトランスジェニックマウス(C3H/HeN-TgN(IL-5)Imeg)の15〜20週令の個体から、脾臓好酸球および脊髄好酸球を調製する。すなわち、脾臓および脊髄をCa2+フリーのKrebs-Ringer-phosphate buffer solution(KRP)(pH値7.4)中でホモジナイズし、細胞懸濁液をPercoll不連続密度勾配遠心法等の方法で分離することにより、好酸球を得ることができる。脾臓は通常は75%、脊髄は通常は80%をそれぞれ好酸球画分として使用することができる。なお、ここで使用されるマウスは、メタロチオネインプロモーター支配下にIL-5産生量を高める目的で実験の5日前に硫酸カドミウム20μgの腹腔内投与を行ったものであることが望ましい。
【0055】
また、上記の他、例えば、好酸球に選択的な増殖分化因子であるIL-5を恒常的に産生するトランスジェニックマウス(C3H/HeN-TgN(IL-5)Imeg)の末梢血から分離した好酸球も好ましく用いられる。
海洋深層水中に含有されている本発明の細胞活性物質(好酸球活性物質)による好酸球のスーパーオキサイド(O2 -)産生向上力は、好酸球により産生される過酸化水素により還元されたシトクロムc(Cyt. c)の量を測定することにより算定できる。
【0056】
この測定は、Nakagawa. A., Shibata. K., Takeshige. K., et al: Exp.Cell.Res.101:224-234(1976)に記載の方法で行うことができる。
すなわち、例えば、20μモルのシトクロムc(Cyt. c)、10mモルのグルコース、1mMのCaCl2を含み、37℃に保持されたKRPに上記由来の好酸球(5×105 cells/ml)を懸濁し、Cyt. cの還元に伴う550nmの吸光度の増大(A550-540)を経時的に測定する。なお、O2 -の生成量は、Cyt. cの分子吸光度21.0mM-1・cm-1から求めることができる。また、この測定には、反応液を攪拌しながら吸光度を測定できる装置(例えば、(株)島津製作所製、二波長分光光度計(UV-300))を使用することが望ましい。
【0057】
また、好酸球の活性化度は更に以下に記載する方法により測定することができる。
すなわち、例えば、好酸球が産生するスーパーオキサイド(O2 -)から派生した過酸化水素(H22)の量を測定することにより算定できる。この過酸化水素(H22)の量は好酸球の過酸化水素産生能を示すものであり、活性化指標として好酸球の活性化度を表すことができる。この測定は、Irene, A.M.Vint, John, C. Foreman, et al: Eur. J. Immunol. 24:1961-1965,1994に記載の方法で行うことができる。
【0058】
すなわち、好酸球が海洋深層水の好酸球活性物質により活性化され産生するスーパーオキサイド(O2 -)から派生した過酸化水素(H22)の量の測定は、2',7'-dichlorodihydrofluorescein diacetate(DCFH-DA)による蛍光を、フローサイトメーターを用いて解析することにより測定することができる。具体的には、5×105cells/mlの好酸球を2.5μモルDCFH-DAを含むPhosphate-buffer saline glucose(5mモルglucose)(PBSg)0.5ml中で37℃、15分間インキュベートし、その後、刺激物を添加して37℃で、30分間インキュベートを行い、最後にPBSgで数度細胞を洗浄した後、フローサイトメーターで解析測定することができる。
【0059】
なお、上記の測定方法は、好酸球の活性化度を測定する方法の例であり、本発明の好酸球活性物質の活性化度の測定方法は上記の方法に限定されるものではない。
本発明の細胞活性物質(好酸球活性物質)は、優れた好酸球活性を有するため、医薬品・化粧料に使用することができる。
【0060】
また、本発明の細胞活性物質(好酸球活性物質)を含有する医薬品(薬剤)は、アレルギー疾患、特にアトピー性皮膚炎に使用される医薬品の成分として有用性が高い。また、本発明の細胞活性物質は、同様の効果を得られる化粧品としても用いることができる。
すなわち、本発明の細胞活性物質(ここでは、好酸球活性物質)は、局所に遊走した好酸球を活性化してアレルギー反応におけるヒスタミン、異種蛋白等の異物に対する異常過敏反応のエオジン好性細胞走化性因子(eosinophil chemotactic factor of anaphylaxis)および血小板活性化因子 (platelet activating factor(PAF))を代謝させるヒスタミラーゼ、アリルスルファターゼB、ホスポリパーゼD2を放出する。さらに、好酸球が細胞膜結合性酵素系を活性化することによるスーパーオキサイド(O2 -)の生成により生体防御反応を向上させることができる。
【0061】
ただし、上記に述べたように、本発明の細胞活性物質(好酸球活性物質)は、分子量による上記画分に含有される成分の構造などの詳細が必ずしも明らかではなく、従ってこれらの画分に含有される成分の作用効果を明確にすることは非常に困難であると共に、それぞれの画分に含有される成分の相互作用による作用効果の向上もあると考えられる。したがって、本発明の医薬品・化粧料では、各画分に含有される成分の複合体である上記のようにして得られた細胞活性物質を含有する水溶液あるいは分散液をそのまま使用することが好ましい。
【0062】
本発明の細胞活性物質を好酸球活性物質として医薬品に用いる場合の用法等について、以下に説明する。
本発明の細胞活性物質(好酸球活性物質)は、基材に溶解もしくは分散させた外用薬として使用することもできる。このように外用薬として使用する場合、外用薬中における好酸球活性物質の量は、通常は0.00001〜50.0重量%、好ましくは0.00001〜30.0重量%、特に好ましくは0.001〜0.1重量%である。この場合の外用薬の基材としては、ワセリン、セレシン、パラフィン、スクワラン、ワックス類、オゾケライド等通常の外用薬の基材として使用されているものを用いることができる。また、剤形としては、エマルジョン状、油状、ワックス状、ローション状などに応用されることができる。
【0063】
また、本発明の細胞活性物質(好酸球活性物質)を水溶液とすることにより注射液として使用することもできる。この場合における好酸球活性物質の濃度は、通常は0.000001〜10.0重量%、好ましくは0.0001〜0.1重量%の範囲内に設定する。注射液として使用する場合、pH調整剤、酸化防止剤など注射液の安定性等を確保するために配合する成分を配合することができる。
【0064】
さらに、本発明の細胞活性物質(好酸球活性物質)は、粉剤、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、シロップなどの内服薬として使用することもできる。
本発明の細胞活性物質(好酸球活性物質)を使用する内服薬、注射薬として使用する場合、使用量は症状、使用者の状態などを考慮して適宜設定することができるが、体重1kgあたりの使用量は、一般には、0.0001〜10000mg、好ましくは0.1〜100mgの範囲内に設定することができる。
【0065】
また、本発明の細胞活性物質を含有する化粧料としては、化粧水、乳液、クリーム、ジェル、美白エッセンス、紫外線防止エッセンス、化粧オイル、パック、シャンプー、コンディショニングシャンプー、リンス、育毛剤、ヘアリキッド、液状歯磨き、洗口剤、ウェットティッシュ用薬液が挙げられる。表1に、これらの処方の一態様を示すが、本発明の化粧料は、以下の処方に限定されるものではない。なお、以下の処方例においては、%は重量%を示し、さらに添加剤の合計が100重量%となるように配合されている。
【0066】
【表1】
Figure 0004601891
【0067】
【表2】
Figure 0004601891
【0068】
【表3】
Figure 0004601891
【0069】
【表4】
Figure 0004601891
【0070】
本発明の細胞活性物質を含有する化粧料としては、さらに以下のものを例示することができる。
そのような化粧料としては、固形石鹸、クレンジングフォーム、クレンジングジェル、クレンジングクリーム、クレンジング乳液、クレンジングマスク、クレンジングオイル、洗顔パウダー、シェービングフォーム等の洗顔料類;
柔軟性化粧水、収れん性化粧水、洗浄化粧水、多層式化粧水などの化粧水類;
保湿、柔軟、血行促進、紫外線防御、化粧下地、メークアップベース、角質柔軟、毛髪保護、脱毛防止、整髪、防臭、ひげそり、ボディ用、ハンド用、マッサージ用などの各用途に用いられるオイル類、ジェル類、乳液類、またはクリーム類;
ピールオフタイプ、拭き取りタイプ、洗い流しタイプ、固化後剥離タイプ、貼付タイプ、含浸タイプなどの各タイプのパック・マスク類;
パウダー、白粉、打粉、ファンデーション、口紅、頬紅、アイライナー、マスカラ、アイブロー、ネールエナメル、アイシャドー、エナメルリムーバー、ネールトリートメントなどのメーキャップ化粧品類;
ヘアフォーム、ヘアムース、ヘアスプレー、ヘアジェル、ウォーターグリース、セットローション、ポマード、チック、ヘアクリーム、トリートメントローション、枝毛コート、ヘアオイル、パーマネントウェーブ用剤、染毛剤、ヘアブリーチなどの染毛用化粧料類;
石鹸、薬用石鹸、液体ボディシャンプー、ハンドソープ、フットソープなどの全身洗浄化粧料類;
サンスクリーン、サンタン化粧品、アフターサンケアなどのサンケア化粧料類;
デオドラントローション、デオドラントスプレー、デオドラントスティック、オーデコロン、香水等の防臭芳香化粧料類;
脱毛、除毛、浴用、インセクトリペラーなどの各用途に用いられる衛生用化粧料類;
歯みがき、洗口、防臭、清涼などの各用途に用いられる口腔用化粧料類;
ウエットティッシュ、おしり拭き用ウエットティッシュ、綿棒等の拭き取り用、塗布用紙綿類含浸薬液類;
エアゾール用薬液類などが挙げられる。
【0071】
上記に、本発明の細胞活性物質を医薬品・化粧料に用いる場合の好ましい態様の例を挙げたが、本発明の効果が得られる限り、本発明の医薬品・化粧料の剤型、投与方法、使用方法等は制限されることはない。また、上記以外にも、本発明の効果を達成し得る限り、本発明の医薬品および化粧料には、医薬品および化粧料の成分として通常使用される成分を配合することができる。
【0072】
さらに、本発明の細胞活性物質である繊維芽細胞エネルギー代謝・増殖活性物質は、食品に添加して用いることもできる。具体的には、食品を製造する際に、深層水脱塩濃縮液を使用するものであれば、その添加方法、添加量は特に制限されない。本発明の食品が細胞活性物質を含むことにより、消費者は手軽に繊維芽細胞エネルギー代謝・増殖活性物質を摂取することができ、老化症状を効率的に予防あるいは治療することができる。また、生体細胞を活性化することで、免疫力を強化することもできる。
【0073】
そのような本発明の食品としては、野菜・果汁飲料、炭酸飲料、乳酸菌飲料、珈琲飲料、加工乳飲料、スポーツ飲料、ミネラルウォーター、日本茶、中国茶、紅茶、ハーブティーなどのノンアルコール飲料;
ビール、発泡酒、日本酒、焼酎、泡盛、ワイン、ジン、ウォッカ、ラム、ブランデー、ウイスキー、シャンパン、中国酒、甘酒などのアルコール飲料;
ソース、ドレッシング、みりん、食酢、トマトケチャップなどの調味料;
味噌、納豆、醤油、漬物、ヨーグルトなどの発酵食品;
ゼリー、寒天、シャーベット、豆乳、豆腐、パン、クッキー、餅、炊飯済みライス、生麺、ベビーフードや介護食品等におけるレトルト食品や、乾燥食品、冷凍食品などの加工食品;
カプセル状や錠剤とされたサプリメント等が挙げられる。
【0074】
上記に、本発明の細胞活性物質を用いることができる食品の例を挙げたが、本発明の効果が得られる限り、これらに限定されるものではなく、かつ本発明の食品の製造方法等も制限されることはない。また、上記以外にも、本発明の効果を達成し得る限り、本発明の食品には、食品の成分として通常使用される成分を配合することができる。
【0075】
なお、上記好酸球活性物質以外の免疫細胞活性物質についても、好酸球活性物質と同等の効果が得られ、医薬品、化粧品、食品等の成分として有用である。
【0076】
【発明の効果】
本発明の細胞活性物質(繊維芽細胞エネルギー代謝・増殖活性物質などの皮膚細胞活性物質および好酸球活性物質などの免疫細胞活性物質を含む)は、海洋深層水に特定の処理をすることにより得られる溶液中に含有される物質であり、ゲル濾過クロマトグラフィーなどの適切な手段で水から分離して得られる一定の分子量を有する高分子化合物であろうと推定される。
【0077】
従来より、海洋深層水からの分離物を皮膚治療あるいはアレルギー治療に使用することは知られているが、これらは、海洋深層水中に含有される無機成分を用いたものである。即ち、海洋深層水中には塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウムのような塩化物のほかに、種々多様なミネラルが含まれており、これらのミネラルを皮膚治療またはアレルギー治療に利用することが知られていた。従って、皮膚治療およびアレルギー治療に海洋深層水を使用する場合には、海洋深層水を濃縮して析出した析出物(ミネラル分)を海水から分離して使用していた。さらに、海洋深層水中には皮膚治療またはアレルギー治療に有効な有機成分は含有されているとは考えられていなかったことから、海洋深層水中に含有される有機物質を分離して使用することは試みられていなかった。
【0078】
これに対して本発明者は、海洋深層水中には上記のような無機塩とは別に有機物質が含有されており、この有機物質は、海洋深層水中に含有されるミネラルとは全く異なる機能を有しており、この機能を利用することにより、皮膚を形成する繊維芽細胞のエネルギー代謝・増殖活性などの皮膚細胞活性および好酸球活性などの免疫細胞活性を向上させることができること見出したのである。
【0079】
本発明の細胞活性物質は、海洋深層水に特定の処理を施すことにより得られ得る有機物質を含有しており、この有機物質は繊維芽細胞のエネルギー代謝・増殖活性および好酸球活性を向上させることができる。
こうした細胞活性物質は、種々の有機物質の複合体であり、個々の成分を特定することが極めて困難であるが、海洋深層水に本発明で規定する処理をすることにより繰り返し得ることができる。
【0080】
そして、この細胞活性物質は、ゲル濾過クロマトグラフィーを用いて分子量により、複数の画分にピークを有する有機物質の複合体であることがわかった。これらの各画分に分離された成分は、単独では、例えば繊維芽細胞に対するエネルギー代謝・増殖活性あるいは好酸球活性が異なるが、これらの複合体をそのまま使用することにより、特に繊維芽細胞に対して優れたエネルギー代謝・増殖活性および好酸球に対する活性の向上効果を示すことが確認された。
【0081】
しかも、このような本発明の細胞活性物質(繊維芽細胞エネルギー代謝・増殖活性物質などの皮膚細胞活性物質および好酸球活性物質などの免疫細胞活性物質を含む)は、通常の細胞活性物質と比較して、副作用が著しく少なく、極めて安全性が高く、特に繊維芽細胞に対しては、副作用なしに優れた細胞エネルギー代謝・増殖活性(細胞活性)を示すとの特異的な効果が認められるため、特に皮膚外用剤として有用性が高い。また、同様な理由から、特にアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の治療薬として非常に有用性が高い。
【0082】
また、本発明の細胞活性物質(繊維芽細胞エネルギー代謝・増殖活性物質などの皮膚細胞活性物質および好酸球活性物質などの免疫細胞活性物質を含む)は、水に対する親和性がよいので、外用薬、内服薬、注射液など種々の形態で利用することができる。
さらに具体的には、本発明の繊維芽細胞活性物質によれば、上述のように、顕著に繊維芽細胞を活性化し得るので、人の皮膚の細胞のエネルギー代謝活性や増殖活性を改善することができ、ヒト皮膚のしわ、しみ、たるみの発生といった老化現象を予防あるいは治療することができる。
【0083】
また、たとえば、本発明の好酸球活性物質では、上述のように、好酸球を活性化させることができるため、好酸球が活性化して産生したスーパーオキサイドなどの作用により非常に優れた生体防御機能を有する。また、この物質は、炎症をメディエートするヒスタミンなどを代謝させてアレルギー反応の修復に働くヒスタミラーゼなどを放出する。さらに、この好酸球活性物質を好酸球に作用させることにより、好酸球からスーパーオキサイド(O2 -)が生成し、このスーパーオキサイド(O2 -)から酵素的反応あるいは非酵素的反応により反応性の高い各種活性酸素種を生成させることができる。そして、これらの活性酸素種に殺菌作用などの重要な生体防御を発現させることができる。
【0084】
そして、本発明の好酸球活性物質の有する上記のような機能が複合的に作用すると考えられるので、本発明の好酸球活性物質は、喘息や花粉症、皮膚炎などのアレルギー疾患の治療成分として、特にアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の治療成分として有用性が高い。
【0085】
【実施例】
次に、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0086】
【実施例1】
[細胞エネルギー代謝・増殖活性物質の調製]
駿河湾沖深度687mから海洋深層水20リットルを採取した。
この海洋深層水20リットルを目開き0.45μmのメンブランフィルターを用いて濾過し、この海洋深層水中の浮遊物を除去した。
【0087】
こうして濾過された海洋深層水を減圧蒸留装置に入れ、減圧度20Torr の圧力条件で、蒸留温度を40℃以下の温度に設定して、海洋深層水の量が約3.3リットル(元の海洋深層水の1/6の量)になるまで減圧蒸留した。
こうして減圧蒸留することにより、海洋深層水に溶存していた塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウムなどの無機塩が析出した。この析出した無機塩を目開き0.5μmのメンブランフィルターで濾過した。なお、濾別された無機塩は、本発明では使用しないので廃棄した。
【0088】
次いで、上記工程で得られた濾液をモザイク荷電膜(商品名:MC−55Bモザイク荷電膜、東ソー(株)製)を用いて低温8℃の条件で脱塩操作を行い、さらにこの脱塩された液を減圧蒸留装置に入れて、20Torrの減圧下に、40℃の温度を超えないように温度を管理して、液の容量が200ml(元の海洋深層水の約1/100の量)になるまで減圧下に水分を蒸留除去した。
【0089】
上記のモザイク荷電膜を用いた脱塩および減圧蒸留を繰り返して、5mlの濃縮物を得た。
この濃縮物中には、0.2重量%の有機物質が含有されており、さらにこの濃縮物中における無機塩の含有率は100ppm以下、無機塩化物の含有率は70ppm以下であった。
【0090】
この濃縮物をファルマシヤ社製のカラム(セファクリルS-300)を有するゲル濾過クロマトグラフィーを用い、展開溶媒としてリン酸バッファー生理食塩水(PBS-)を用いて含有成分を分析した。
この分析結果を、分子量に従って、
分子量100万以上の第1画分、
分子量3万〜100万の第2画分、
分子量5000〜3万の第3画分、および、
分子量5000以下の第4画分に分けてそれぞれの画分における波長280nmでの吸収ピークの有無を調べた。
【0091】
結果を図2に示す。
図2に示したように、第4画分に最も大きなピークが見られ、第3画分では、第4画分と裾が重なる形で、第4画分の半分以下の大きさのピークが見られた。また、第1画分にも小さいながらも明確なピークが見られた。しかし、第2画分には、UVのピークは見られなかった。
【0092】
なお、これらの画分に表れたピークの成分の解析の参考にするために、平均分子量13700のRibonuclease Aおよび平均分子量44万のFerritinを含有する液を調整し、上記と同様にして分析して、その結果を図2に破線で併せて記載する。
[繊維芽細胞エネルギー代謝・増殖活性の測定]
上記のような構成を有する細胞エネルギー代謝・増殖活性物質(繊維芽細胞物質を含む)を、固形分換算で0.1重量%となるように標準液であるリン酸バッファー生理食塩水(PBS-)に加えて本発明の試料を調整した。なお、各試料の最終塩分は標準液であるPBS−の塩分にあわせた。
【0093】
ヒト真皮由来繊維芽細胞の3次元細胞組織モデル(東洋紡(株)製、MATREX-LDM)を用いて、MTT法により細胞のミトコンドリアのエネルギー代謝活性を評価した。
ここでMTT法は、3-(4,5-Dimethyl-2-thiazoly)-2,5-diphenyltertrazolium Bromideを用いた細胞のエネルギー代謝活性を測定する方法である。即ち、MTTは、細胞のミトコンドリアのエネルギー代謝過程で生成したNADH(reduced nicotinamide adenine dinucleotide)あるいはNADPH(reduced nicotinamide adenine dinucleotide phosphate)によって還元され、青色のホルマザンを生成する。
【0094】
青色のホルマザンを波長570nmにおいて吸光測定し比色測定し、比色定量することによって細胞の代謝活性及び細胞の増殖活性を評価する方法である。この場合、青色が濃くなればなるほど活性が高いことを示している。
また、本発明では、コントロールとして、上記細胞エネルギー代謝・増殖活性物質を用いずに標準液(PBS-)のみを使用して、同様にしてMTT法により細胞のミトコンドリアのエネルギー代謝活性を調べた。
【0095】
さらに、ネガティブコントロールとして、典型的な細胞毒性のあるドデシル硫酸ナトリウム(SDS=Sodium dodecyl sulfate)を、0.1重量%配合してMTT法によりエネルギー代謝・増殖活性を調べた。このネガティブコントロールは、エネルギー代謝・増殖活性を全く示さない場合におけるMTT法の最低基準を示すものである。
【0096】
上記コントロールにより得られたMTT法の値を100とすると、ネガティブコントロールの値は33となる。
そして、同様の試験で測定した本発明の細胞エネルギー代謝・増殖活性物質を0.1重量部で含有する試料のMTT法における値は245であり、この細胞エネルギー代謝・増殖活性物質は、細胞エネルギー代謝・増殖活性を示すことが明らかである。
【0097】
また、この試験においてMTT試薬は、細胞のミトコンドリアの代謝過程で生成したNADHあるいはNADPHによって還元され青色になるのではなく、本発明の細胞エネルギー代謝・増殖活性物質自体に還元され青色になる可能性も考えられるため、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS=Sodium dodecyl sulfate)を、0.1重量%に、本発明の細胞エネルギー代謝・増殖活性物質を固形分換算で0.1重量%加え、同様な試験で調べた。その結果、同様な試験における値は27であり、ドデシル硫酸ナトリウムが単独の場合の値33とほぼ同様レベルであるため、本発明の細胞エネルギー代謝・増殖活性物質自体がMTT試薬を還元し青色に変色させることはなく、細胞のミトコンドリアが本発明の細胞エネルギー代謝・増殖活性物質を添加することによって代謝活性が活発になり、生成されたNADHあるいはNADPHがMTT試薬を還元して青色に変色させることがわかった。即ち、本発明の細胞エネルギー代謝・増殖活性物質により代謝活性が向上したことは明らかである。また、別の実験で、MTT試薬に上記の深層水細胞活性物質を添加しても、MTT試薬はまったく変色しないことから、上記の結論はさらに証明された。
【0098】
また、参考のために各画分の成分を固形分換算で0.1重量%となるように標準液であるリン酸バッファ生理食塩水(PBS-)に加えた試料を調整し最終塩分は標準液であるPBS−の塩分にあわせ、MTT法における細胞エネルギー代謝・増殖活性を調べた。結果を図3に示す。
その結果、
分子量100万以上の第1画分の成分の活性は、156、
分子量3万〜100万の第2画分の成分の活性は、257、
分子量3万〜5000の第3画分の成分の活性は、151、
分子量5000以下の第4画分の成分の活性は、155であった。
【0099】
なお、上記各画分の成分を用いた活性の評価値は、参考的な値であり、さらに詳細に実験を重ねることにより、また、実験の精度を上げることにより上記値がさらに明確な細胞エネルギー代謝・増殖活性を示す可能性が充分にある。
【0100】
【実施例2】
好酸球活性物質を、実施例1の細胞活性物質の調製と同様の方法にて調製し、得られた好酸球活性物質について、下記の方法により、活性化度を測定した。
[好酸球活性物質の活性化度測定]
本発明の細胞活性物質(好酸球活性物質を含む)の好酸球を活性化する能力(活性化度)は、好酸球が産生するスーパーオキサイド(O2 -)から派生した過酸化水素(H22)の量を指標にして測定した。前記好酸球活性物質により好酸球が活性化されて産生するスーパーオキサイド(O2 -)から派生した過酸化水素(H22)の量の測定は、具体的には、2',7'-dichlorodihydrofluorescein diacetate (DCFH-DA)による蛍光をフローサイトメーターを用いて解析することにより行った。
【0101】
5×105cells/mlの好酸球を、2.5μモルDCFH-DAを含むPhosphate-buffer saline glucose(5mモルglucose)(PBSg)0.5ml中で、37℃で、15分間インキュベートし、その後、刺激物(PMA50ng/ml)を添加し、37℃で、30分間インキュベートを行った。PBSgで2度細胞を洗浄した後、フローサイトメーターで解析・測定した。
【0102】
本実験において使用した好酸球は、好酸球に選択的な増殖分化因子であるIL-5を恒常的に産生するトランスジェニックマウス(C3H/HeN-TgN(IL-5)Imeg)の末梢血から分離した好酸球を用いた。末梢血を終濃度0.22%のクエン酸を含むCa++フリーのKrebs Ringerリン酸緩衝液(KRP)(0.9%NaCl、6mモルKCl、1mモルMgCl2、10mモルNa−リン酸緩衝液(pH7.4))中に採取し、赤血球、単球を除去する目的で、Percoll不連続密度勾配遠心法を行った。Percoll原液に対して、10倍濃度のKRPを1/10量添加したものを100%Percoll定義細胞混濁の下に60、70、80%Percollを重層し、350g、室温、20分間遠心した後、70、80%層を回収した。回収した細胞集団を分離用緩衝液(5mモルEDTA、0.5%BSA、10mモルモルNa−K−リン酸緩衝液(pH7.2))に更に懸濁(1×107cells/50μl)し、抗Thy1.2抗体結合磁気ビーズ(1×107beads/25μl)と抗B220抗体結合磁気ビーズ(1×107beads/25μl)に添加し、4℃で20分間反応させた後、永久磁石を用いネガティブセレクションで採取された細胞集団を好酸球集団として実験に供した。なお、分離後の細胞集団の純度はフローサイトメーター(BECTON DICKINSON社製のFACScan)で解析した。
【0103】
測定物質は、サンプル/1.8%NaClと精製水で調整し、等張に調整したものを終濃度100μg/mlで添加した。
なお、コントロールとしてリン酸バッファー生理食塩水(PBS)を用い、ポジティブコントロールとしてオプソニン化ザイモザン(OZ, 免疫賦活剤)を用いて同様の実験を行った。
【0104】
上記のように測定した各被験物質の好酸球活性化度の値(過酸化水素量生産相当)は、図4に示す。また、例として、図5にコントロール(PBS)を用いた場合の好酸球の過酸化水素産生量と、上記好酸球活性物質を用いた場合の好酸球の過酸化水素産生量のフローサイトメーター解析・測定した結果を示す。
図4に示したように、コントロール(PBS)の好酸球活性化度は3.35であるのに対し、上記好酸球活性物質の好酸球活性化度は7.09(コントロールの約2.1倍)であった。
【0105】
上記のようにして得られた好酸球活性物質について、好酸球活性を調べたところ、コントロール(PBS)およびポジティブコントロール(OZ:オプソニン化ザイモザン)よりも高い好酸球活性を示した。
また、参考のため、上記細胞エネルギー代謝・増殖活性物質と同様に、GPCにより分割した各画分について、好酸球活性を調べたところ、以下のように、いずれの画分においても、コントロール(PBS)およびポジティブコントロール(OZ:オプソニン化ザイモザン)よりも高い好酸球活性を示した。すなわち、
分子量100万以上の第1画分の成分の活性は、4.57、
分子量3万〜100万の第2画分の成分の活性は、5.48、
分子量3万〜5000の第3画分の成分の活性は、4.73、
分子量5000以下の第4画分の成分の活性は、8.63であった。
【0106】
なお、図3と図4の比較から、上記のようにして得られた高濃縮脱塩海洋深層水を用いた場合は、高分子量の画分では繊維芽細胞活性が高い傾向にあり、また、逆に、低分子量の画分では好酸球活性が高い傾向にあることが示された。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の細胞活性物質を得るための工程の例を示す工程図である。
【図2】図2は、本発明の細胞活性物質を、ゲル濾過クロマトグラフィーを用いて各画分に分けて、各画分に表れるピークの例を示した図である。
【図3】図3は、本発明の細胞活性物質の繊維芽細胞活性化度を示すグラフである。
【図4】図4は、本発明の細胞活性物質の好酸球活性化値を示すグラフである。
【図5】図5は、フローサイトメーターで解析・測定した好酸球の過酸化水素産生能のチャートである。

Claims (12)

  1. 海洋深層水中に溶存される無機塩の90重量%以上を分離する操作を経た濃縮脱塩海洋深層水を、さらに濃縮して析出物あるいは無機塩を荷電モザイク膜を用いて分離する操作を少なくとも1回行うことにより有機物質の総合量を0.1〜10重量%、無機塩の含有量を100ppm以下とした高濃縮脱塩海洋深層水に含有される細胞活性物質。
  2. 上記細胞活性物質が、皮膚細胞活性物質および/または免疫細胞活性物質であることを特徴とする請求項第1項記載の細胞活性物質。
  3. 上記海洋深層水が、深度200m以上の深海から採取されたものであることを特徴とする請求項第1項または第2項記載の細胞活性物質。
  4. 上記濃縮脱塩海洋深層水をさらに濃縮する操作を、2回以上経ることにより得られ得ることを特徴とする請求項第1項乃至第3項のいずれかの項記載の細胞活性物質。
  5. 上記濃縮脱塩海洋深層水が、海洋深層水を濾過精製した後、この濾過精製された海洋深層水を、最初に用いた海洋深層水の量100容量部に対して1〜30容量部の範囲内になるように濃縮して無機塩を分離して得られるものであることを特徴とする請求項第1項乃至第4項のいずれかの項記載の細胞活性物質。
  6. 上記細胞活性物質が、最初に用いた海洋深層水の容量を100容量部としたときに、0.0001〜30.0容量部の範囲内に濃縮された高濃縮脱塩海洋深層水中に含有されるものであることを特徴とする請求項第1項乃至第5項のいずれかの項記載の細胞活性物質。
  7. 上記細胞活性物質が、展開溶媒としてリン酸バッファー生理食塩水(PBS−)を用いたゲル濾過クロマトグラフィー分析による波長280nmにおける紫外線検出による分子量100万以上の第1画分、分子量3万〜100万の第2画分、分子量5000〜3万の第3画分、および、分子量5000以下の第4画分よりなる画分の少なくとも1の画分にピークを有することを特徴とする請求項第1項乃至第6項のいずれかの項記載の細胞活性物質。
  8. 上記細胞活性物質を含有する高濃縮脱塩海洋深層水の強熱残分が0.1重量%以下であることを特徴とする請求項第1項乃至第7項のいずれかの項記載の細胞活性物質。
  9. 海洋深層水中に溶存される無機塩の90重量%以上を分離して濃縮脱塩海洋深層水を得る工程、および、該濃縮脱塩海洋深層水をさらに濃縮して析出物あるいは無機塩を荷電モザイク膜を用いて分離する操作を少なくとも一回行う工程を経て、有機物質の総合量が0.1〜10重量%であり、無機塩の含有量が100ppm以下である、細胞活性物質を高い濃度で含有する高濃縮脱塩海洋深層水を得ることを特徴とする細胞活性物質の製造方法。
  10. 上記細胞活性物質が、皮膚細胞活性物質および/または免疫細胞活性物質であることを特徴とする請求項第9項記載の細胞活性物質の製造方法。
  11. 上記海洋深層水が、深度200m以上の深海から採取されたものであることを特徴とする請求項第9項または第10項記載の細胞活性物質の製造方法。
  12. 上記濃縮脱塩海洋深層水をさらに濃縮して析出物を分離する操作を2回以上繰り返し行うことを特徴とする請求項第9項乃至第11項のいずれかの項記載の細胞活性物質の製造方法。
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