JP4610044B2 - プロモーター遺伝子及び発現ベクター - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、担子菌シイタケのキチン合成酵素遺伝子における転写開始を指令するプロモーター、キチン合成酵素遺伝子の転写終結を指令するターミネーター、該プロモーター及び/又は該ターミネーターを含む発現用組換えベクター、該プロモーター及び/又は該ターミネーターを含む組換えベクター、該発現用組換えベクター又は該組換えベクターを含む形質転換体、並びに該形質転換体を用いるポリペプチドの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年の組換えDNA技術の進歩により、大腸菌、枯草菌、放線菌、酵母、糸状菌、動物細胞、植物細胞などの様々な細胞を宿主として用いる異種遺伝子発現用宿主ベクター系の開発が行われている。例えば、現在までに、大腸菌の宿主ベクター系を用いて、インシュリン、成長ホルモン、インターフェロンなどの様々な有用物質が生産されている。また、植物の育種においては、従来の古典的な交配法では不可能であった種を越えての異種生物由来の遺伝子導入が、アグロバクテリウム・チュメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)のTiプラスミドなどの宿主ベクター系を用いることにより行われ、所望の性質を有するトランスジェニック植物が作出されている。
【0003】
上記の宿主ベクター系のうち、現在までに最も多く実用化されているのは大腸菌の宿主ベクター系である。しかし、大腸菌を宿主として用い、ヒトなどの高等動物由来のポリペプチドを生産させた場合、生産されたポリペプチドに糖鎖が付加されないことやポリペプチド鎖が本来の高次構造にフォールディング(folding)されないことなどが原因で、元来の生理活性を示さないことが多い。さらに、大腸菌は目的ポリペプチドの生産過程において、該ポリペプチド以外にも様々な毒性物質を産生するため、多段階の精製過程を必要とするなどの問題点がある。
【0004】
そこで、それらの問題を解決するため、糖鎖付加機能及び適正なフォールディング機能を有する宿主として、酵母細胞や動物細胞などの真核細胞を用いる宿主ベクター系の開発が行われてきた。しかし、酵母細胞を用いてヒトなどの高等動物由来のポリペプチドを生産させた場合、ヒト由来のものとは異なる高マンノース型の糖鎖が付加される場合があること、あるいは目的ポリペプチドの生産が低いことなどの問題点が挙げられる。一方、動物細胞を用いた場合であっても、目的産物の収量が極めて少ないことや高価な培地を必要とすることなどの問題点が多い。そのような観点から、高等動物細胞と同等の糖鎖が付加されかつ安価に培養でき、そして安全性が高いなどの要件を満たす宿主ベクター系が求められていた。ところで、担子菌は一般に酵母よりも動物に近縁である[T. L. Smith : Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 86: 7063 (1989)]ため、適正な糖鎖付加機能及び適正なフォールディング機能を有していると考えられている。特に、シイタケ(Lentinula edodes)は、長年食用に用いられてきた実績もあり、安全性に優れている。また、シイタケの栄養学的な特徴の一つとして、ビタミンD前駆物質であるエルゴステロール含量の高いことが挙げられ、特に乾しシイタケではその含量が高い。一方、シイタケには抗癌性多糖レンチナンが含まれ、近年コレステロール低下作用を有するエリタデニンの存在なども明らかになっている。このことは、シイタケが食品としてだけでなく、医薬の原料としても有望であることを示唆している。したがって、シイタケにおける遺伝子工学的手法の確立は、シイタケ育種を考える上で非常に重要である。
【0005】
シイタケの属する食用担子菌の遺伝子工学的な処方による形質転換の技術開発は、これまで、Miranda D.らが、エレクトロポレーション法によるマッシュルームの形質転換[Miranda D. van de Rhee, et.al., Mol.Gen.Genet., 250, 252-258, (1996)]、Ming Pengらがエレクトロポレーション法によるヒラタケの形質転換[Peng, M., et.al., Curr. Genet., 22, 53-59, (1992)]そして、 Yanai, K.らがポリエチレングリコール法によるヒラタケの形質転換[Yanai, K. et. al., Biosci. Biotech. Biochem., 60, 472-475 (1996)]について報告し、 Noёl らがポリエチレングリコール法によるフミヅキタケの形質転換[Noёl, T and Labarere, J. , Curr. Genet., 25: 432-437 (1994), Noёl, T. et al., Theor. Appl. Genet., 90: 1019-1027 (1995)]について報告している。
【0006】
しかし、食用担子菌属のなかでもシイタケの宿主ベクター系は、これまで有効なものが確立されていなかった。また、シイタケにおいて、マーカー遺伝子を有し、なおかつ同一ベクター内で外来遺伝子を発現させるための発現ベクターは開発されていない。一般に、より高い発現量をもたらす発現ベクターを構築するためには、mRNAへの転写効率が高いプロモーターを用いることが必要である。これまで、我々は鋭意検討を重ね、有効なシイタケの形質転換方法[Sato, T. et. al., Biosci. Biotech. Biochem., 62, 2346-2350 (1998)、佐藤ら、特開平11−155568号公報(特願平9-331611号)]及び発現ベクター(pLG 及び pLT)を開発してきた(平野ら、特開平2000−69975号公報(特願平10−247470号)、及び、佐藤ら、特願平11−342347号)。
【0007】
一方、キチンは、シイタケの菌糸構成成分であり、したがってキチンを合成する遺伝子であるキチン合成酵素遺伝子(以下「chs遺伝子」という。)は、シイタケの生育ステージで発現していると考えられる。したがって、シイタケchs遺伝子のプロモーター領域は、外来遺伝子を発現させるためのプロモーターとして有効であり、ベクターへの利用は有用であると考えられる。
しかし、現在までにシイタケ由来のchs遺伝子のプロモーターを含む組換えベクターは知られていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、担子菌シイタケのchs遺伝子の転写開始を指令するプロモーター、該chs遺伝子の転写終結を指令するターミネーター、該プロモーター及び/又はターミネーターを含む発現用組換えベクター、該プロモーター及び/又は該ターミネーターを含む組換えベクター、該発現用組換えベクター又は該組換えベクターを含む形質転換体、並びに該形質転換体を用いるポリペプチドの製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため、鋭意研究を行った結果、シイタケ菌糸から調製したcDNA及びゲノムDNAライブラリーからchs遺伝子を単離し、さらにそのプロモーター領域及びターミネーター領域を単離することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明に係るDNAは、以下の(a)又は(b)に示される、プロモーターとして機能し得るDNAである。
(a)配列番号1で表される塩基配列における第1塩基から第2229塩基までの配列を含むDNA。
(b)配列番号1で表される塩基配列における第1塩基から第2229塩基までの配列において少なくとも1個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を含み、かつプロモーター活性を有するDNA。
【0011】
また、本発明は、請求項1記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつプロモーター活性を有するDNAであってもよい。
さらに、本発明は、請求項1又は2記載のDNAを含有する発現用組換えベクターである。
さらにまた、本発明は、請求項3記載の発現用組換えベクターに、ターミネーター活性を有する任意のDNAが組み込まれた発現用組換えベクターである。
【0012】
一方、本発明に係るDNAは、以下の(c)又は(d)に示される、ターミネーターとして機能し得るDNAである。
(c)配列番号2で表される塩基配列における第20塩基から第920塩基までの配列を含むDNA。
(d)配列番号2で表される塩基配列における第20塩基から第920塩基までの配列において少なくとも1個の塩基が欠失、置換若しくは付加された塩基配列を含み、かつターミネーター活性を有するDNA。
【0013】
また、本発明は、請求項5記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつターミネーター活性を有するDNAであってもよい。
さらに、本発明は、請求項5又は6記載のDNAを含有する発現用組換えベクターである。
さらにまた、本発明は、請求項7記載の発現用組換えベクターに、プロモーター活性を有する任意のDNAが組み込まれた発現用組換えベクターである。
【0014】
さらにまた、請求項1又は2記載のDNA及び請求項5又は6記載のDNAを含有する発現用組換えベクターである。
さらにまた、本発明は、請求項3、4、7又は8記載の発現用組換えベクターに任意のポリペプチドをコードする遺伝子が組み込まれた組換えベクターである。
さらにまた、本発明は、請求項3、4、7又は8記載の発現用組換えベクターを含む形質転換体である。
【0015】
さらにまた、本発明は、請求項10記載の組換えベクターを含む形質転換体である。
さらにまた、本発明は、請求項12記載の形質転換体を培養又は栽培し、得られる培養物又は栽培物からポリペプチドを採取することを特徴とする前記ポリペプチドの製造方法である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
1.シイタケchs遺伝子のプロモーター領域及びターミネーター領域の単離
本発明のプロモーターは、chs遺伝子の5'末端上流域から単離したものであり、ターミネーターは、chs遺伝子の3'末端下流域から単離したものである。
本発明のプロモーター及びターミネーターは、(1)シイタケのmRNA及びcDNAライブラリーの調製、(2)シイタケのゲノム及びゲノムDNAライブラリーの調製、(3)chs遺伝子の単離、(4)chs遺伝子を含む塩基配列の決定並びに(5)プロモーター及びターミネーター領域の単離という手順で得ることができる。以下、各工程について順に説明する。
【0017】
(1)mRNA及びcDNAライブラリーの調製
mRNAの供給源は、シイタケ(Lentinula edodes)の傘、菌褶、菌輪、菌柄、脚苞、菌糸など子実体の一部でもよく、子実体全体でもよい。また、胞子又は一次菌糸若しくは二次菌糸を0.25×MYPG培地、SMY培地、グルコース・ペプトン培地などの固体培地で培養後、菌糸を液体培地に接種し、生育してきた菌体も用いることができる。
【0018】
mRNAの調製は、通常行われる手法により行うことができる。例えば、液体培地により得られた菌糸を、濾過によって回収後、液体窒素で凍結する。次いで、凍結した菌糸を磨砕後、ISOGEN(ニッポンジーン社製)などを加えて核酸を抽出する。抽出した核酸を、クロロホルムやフェノール試薬などで処理して全RNAを得た後、オリゴ dT-セルロースやセファロース2Bを担体とするポリU-セファロース等を用いたアフィニティーカラム法、若しくはStraight A's mRNA Isolation System(Novagen社製)などのキットを用いてmRNA(ポリ(A)+RNA)を調製することができる。
【0019】
このようにして得られたmRNAを鋳型として、市販のキット(例えば、ZAP ExpressTMcDNA Synthesis Kit (Stratagene社製)を用い、オリゴdT20及び逆転写酵素によって一本鎖cDNAを合成した後、該一本鎖cDNAから二本鎖cDNAを合成する。次いで、得られた二本鎖cDNAにEco RIアダプターなどの適切なアダプターを付加後、Uni-ZAP XR Vector(Stratagene社製)やλgt10(Amersham社製)などの適当なクローニングベクターに組み込んで、組換えベクターを作製する。
【0020】
クローニングベクターとしてプラスミドベクターを用いた場合、得られた組換えベクターを大腸菌に形質転換する。ここで、大腸菌の形質転換はHanahanの方法[Hanahan, D., J. Mol. Biol. 166: 557-580 (1983)]、すなわち塩化カルシウム、塩化マグネシウム又は塩化ルビジウムを共存させて調製したコンピテント細胞に、組換えベクターを加える方法等により行うことができる。なお、ここで用いたプラスミドベクターには、プレート上でのコロニーの選択用にテトラサイクリン、アンピシリン等の薬剤耐性遺伝子が含有されていることが必要である。次いで、二本鎖cDNAを含むプラスミドベクターにより大腸菌を形質転換後、テトラサイクリン耐性、アンピシリン耐性を指標として形質転換体を選抜することにより、cDNAライブラリーを得ることができる。
【0021】
一方、クローニングベクターとしてファージベクターを用いた場合には、得られた組換えベクターをGiga Pack III Gold Packaging Extract(Stratagene社製)などのキットを用いてin vitroパッケージング後、形成されたファージを大腸菌に感染させる。これをLB Agarなどの寒天培地を用いて培養し、プラークを形成させることによりcDNAライブラリーを得ることができる。
【0022】
(2)シイタケのゲノムDNA及びゲノムDNAライブラリーの調製
ゲノムDNAの供給源は、上記(1)と同様に、シイタケの傘、菌褶、菌輪、菌柄、脚苞、菌糸など子実体の一部でもよく、子実体全体でもよい。また、胞子又は一次菌糸若しくは二次菌糸を0.25×MYPG培地、SMY培地、グルコース・ペプトン培地などの固体培地で培養後、菌糸を液体培地に接種し、生育した菌体を用いることができる。
【0023】
ゲノムDNAの調製は、通常行われる手法により行うことができる。すなわち、例えば、先ず、液体培養したシイタケの菌体を濾過などにより集菌後、菌体を液体窒素で凍結し、凍結菌体を乳鉢を用いて磨砕する。次いで、磨砕した菌体にDNA抽出用緩衝液を加え、さらにクロロホルムを加えて激しく撹拌する。その後、クロロホルムを除去後、水層部分にエタノールを徐々に添加し、DNAが析出したところでゲノムDNAを巻取り、TE緩衝液に溶解することにより、ゲノムDNA溶液を得ることができる。あるいは、磨砕した菌体から、市販のキット(例えばISOPLANT(ニッポンジーン社製))を用いてゲノムDNAを得ることもできる。
【0024】
ゲノムDNAライブラリーの作製は、通常行われる手法により行うことができる。すなわち、例えば、先ず、ゲノムDNAを制限酵素Sau3AIなどの制限酵素で消化し、フェノール・クロロホルム処理後、エタノール沈殿によりDNA断片を回収する。次いで、市販のキット(例えばLambda EMBL3/Bam HI Vector Kit(Stratagene社製))を用い、該断片を、例えば、λ EMBL3-Bam HIアームにT4 DNAリガーゼを用いて連結し、得られたファージDNAを大腸菌に感染させる。その後、これをLB Agarなどの寒天培地を用いて培養し、プラークを形成させることによりゲノムDNAライブラリーを得ることができる。
【0025】
(3)chs遺伝子の単離
chs遺伝子は、上記(1)で調製したcDNAライブラリー又は上記(2)で調製したゲノムDNAライブラリーから通常の方法(例えばPCR法、プラークハイブリダイゼーション法など)によりスクリーニングすることができる。すなわち、既知の糸状菌類のchs遺伝子において保存性の高いアミノ酸配列[A. R. bowen,et. al.: Proc.Natl.Acad.Sci.USA., 89: 519-523 (1992)]をもとに縮重センスプライマー及び縮重アンチセンスプライマーを設計し、合成する。そしてこれらを用いて縮重ポリメラーゼ連鎖反応(縮重PCR)を行う。次いで得られた断片をプローブとして、シイタケcDNAライブラリーからスクリーニングする方法等が挙げられる。
【0026】
縮重PCRに用いられる鋳型DNAとしては、上記(2)で調製したゲノムDNAが挙げられる。また、この縮重PCRに用いられる縮重センスプライマーとしては、U1(5'-CTGAAGCTTACNATGTAYAAYGARGAY-3':配列番号3)を、縮重アンチセンスプライマーとしては、L1(5'-GTTCTCGAGYTTRTAYTCRAARTTYTG-3':配列番号4)を用いることができる。ここで、YはT又はCを示し、RはG又はAを示し、NはA又はC又はG又はT又はその他の塩基を示す。但し、本発明において、縮重PCRに用いるプライマーとしては、これらのプライマーに限定されず、糸状菌類等のchs遺伝子において高度に保存されたアミノ酸配列に基づいて設計されたものであれば如何なる配列を有するものであってもよい。
【0027】
上記縮重PCRによって得られたDNA増幅断片の塩基配列を公知の方法を用いて決定し、シイタケ以外の他の担子菌における公知のchs遺伝子とホモロジーが高いことを確認する。その後、該DNA増幅断片をペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼなどの酵素による酵素直接標識又は32P、35Sなどの放射性同位元素による放射性標識を行なった後、プローブとして用い、上記(2)で得られたゲノムDNAライブラリーを変性固定したニトロセルロースやナイロンメンブレンフィルターとハイブリダイズさせる。そして得られたポジティブシグナルからファージクローンを同定し、シイタケのchs遺伝子をクローニングすることができる。
【0028】
その後、該DNA増幅断片をペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼなどの酵素による酵素直接標識又は32P、35Sなどの放射性同位元素による放射性標識を行なった後、プローブとして用い、上記(2)で得られたゲノムDNAライブラリーを変性固定したニトロセルロースやナイロンメンブレンフィルターとハイブリダイズさせる。そして得られたポジティブシグナルからファージクローンを同定し、シイタケのchs遺伝子をクローニングすることができる。
【0029】
(4)塩基配列の決定
上記(3)のスクリーニングにより得られたファージクローンは、pBlueScript SK(+)(Stratagene社製)やpCR2.1(Invitrogen社製)等の市販されている適切なプラスミドベクターにサブクローニングし、例えばサイクルシークエンス法などの塩基配列の解析を行う。塩基配列の決定は、自動塩基配列決定機(例えば、Perkin Elmer 社製、ABI PRISM 310 Genetic Analyzer)を用いて行われる。これにより、chs遺伝子の開始コドンを含む約2.3kbpの塩基配列(配列番号1)及びchs遺伝子の終止コドンを含む約0.9kbpの塩基配列(配列番号2)が決定される。
【0030】
(5)chs遺伝子のプロモーター領域及びターミネーター領域の単離
chs遺伝子のプロモーター領域及びターミネーター領域の単離は、先ず、上記(4)において決定された塩基配列に基づいて、該プロモーター領域を含むchs遺伝子の上流約 2.2 kbpの領域を挟み込むようにセンスプライマー及びアンチセンスプライマーを合成し、また、該ターミネーター領域を含むchs遺伝子の下流約 0.9 kbpの領域を挟み込むようにセンスプライマー及びアンチセンスプライマーを合成する。次いで、これら合成したプライマーを用いて、上記(2)で調製したゲノムDNAライブラリーからクローニングしたゲノムchs遺伝子や 、上記(2)で調製したゲノムDNAなどを鋳型としたPCRによって、chs遺伝子のプロモーター領域及びターミネーター領域を増幅する。これによりchs遺伝子のプロモーター領域及びターミネーター領域を単離することができる。
【0031】
ここで、プロモーター領域を単離する際には、センスプライマーとして、例えば、CproU (5'-ATAAGAATAATCAGGCTTGTCGTCGAACCG-3':配列番号5)を用い、アンチセンスプライマーとして、例えば、CproL (5'-CCTTAGTTGTAGATGGAAATGGTGGGGTGG-3':配列番号6)を用いることができる。これらCproU及びCproLを用いたPCRによれば、配列番号1における第1塩基から第2229塩基に挟まれる領域を増幅することができる。また、ターミネーター領域を単離する際には、センスプライマーとして、例えば、CterU(5'-AACGCGTTGATTCTGATA-3':配列番号7)を用い、アンチセンスプライマーとして、例えば、CterL(5'-TTGTGGATGTCGGAGTAG-3':配列番号8)を用いることができる。これらCterU及びCterLを用いたPCRによれば、配列番号2における第20塩基から第920塩基に挟まれる領域を増幅することができる。
【0032】
配列番号1における第1塩基から第2229塩基に本発明のプロモーター活性を有するDNAの塩基配列、配列番号2における第20塩基から第920塩基に本発明のターミネーター活性を有するDNAの塩基配列を例示するが、前者の場合であればプロモーター活性、後者の場合であればターミネーター活性を有する限り、当該塩基配列において少なくとも1個の塩基の欠失、置換、付加等の変異が生じてもよいし、該変異を導入しても良い。ここで、欠失、置換、付加とは、1〜10個の短い欠失、置換、付加のみならず、10〜50塩基、さらには50〜100塩基の長い欠失、置換、付加も含む。
【0033】
なお、DNAに変異を導入するには、Kunkel法やGapped duplex法等の公知の手法又はこれに準ずる方法を採用することができる。例えば、部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット(例えばMutant-KやMutant-G(TaKaRa社製))などを用いて、あるいはTaKaRa社のLA PCR in vitro Mutagenesisシリーズキットを用いて変異を導入することができる。
【0034】
また、上記プロモーター領域又はターミネーター領域とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつプロモーター活性又はターミネーター活性を有するDNAも本発明のDNAに含まれる。
【0035】
また、本発明のDNAは、配列番号1又は配列番号2で表わされる塩基配列を少なくとも90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは98%以上の相同性を有し、且つ、プロモーター活性又はターミネーター活性を有するDNAをも包含する。上記相同性の数値は、配列解析ソフトウェアであるDNASIS(日立ソフトウェアエンジニアリング)を用いて、例えば、マキシムマッチング法のコマンドを実行することにより求められる。その際のパラメータは、デフォルトの設定(初期設定)とする。
【0036】
上記のような、配列番号1以外の塩基配列を有するDNAがプロモータ活性を有するか又は、配列番号2以外の塩基配列を有するDNAがターミネーター活性を有するかは、例えば、マーカーとなる遺伝子の上流又は下流に、対象となるDNAを有する発現ベクターを構築し、マーカーとなる遺伝子の発現について試験することにより確認することができる。
【0037】
一旦、本発明のDNAの塩基配列が確定されると、その後は化学合成によって、又は本発明のDNAを含むcDNAないしゲノムDNAを鋳型としたPCRによって、あるいは該塩基配列を有するDNA断片をプローブとしてハイブリダイズさせることにより、本発明のDNAを得ることができる。
【0038】
2. 本発明の発現用組換えベクターの構築
本発明の発現用組換えベクターは、上記1.において得られたchs遺伝子のプロモーター領域及び/又はターミネーター領域を適当なプラスミドベクター(例えばpUC19ベクターなど)に連結することにより構築することができる。
【0039】
その一例として、chs遺伝子のプロモーター領域及びターミネーター領域をpUC19ベクターに連結することにより発現用組換えベクターpLCHS1を構築することができる。また、chs遺伝子のプロモーター領域と特開平6-319547号公報で開示されたpLG ベクターのgpdターミネーター領域とを適当なプラスミドベクターに連結することにより発現用組換えベクターpLCHS を構築することができる。さらに、pLCHS ベクターとpLGベクターを組み合わせることにより、元来pLGベクターが有していた選抜のためのマーカー遺伝子を含む外来遺伝子発現ベクターpChG ベクターを構築することができる。
【0040】
発現用組換えベクターには、外来遺伝子の導入を実際に確認する上で有効なマーカー遺伝子を併用して使用することが望ましい。そのため本発明の発現用組換えベクターには、chs遺伝子のプロモーター領域の下流に、例えば抗生物質ハイグロマイシンBに対する抵抗性を付与するハイグロマイシンBホスホトランスフェラーゼ(hph)遺伝子[Griz and Davis, Gene, 25: 179-188 (1983)]、除草剤ビアラフォスに対する抵抗性を付与するホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ(bar)遺伝子[Murakami et al., Mol. Gen. Genet., 205: 42-50 (1986)]などを連結するとよい。こうして作出した発現用組換えベクターをPEG法、エレクトロポレーション法、REMI法(Restriction Enzyme-Mediated Integration法、特開平11−155568号公報を参照。)などの様々な遺伝子導入法でシイタケに導入し、その薬剤に対する抵抗性を指標として形質転換体を得ることができる。
【0041】
3.本発明の発現用組換えベクターを用いるポリペプチドの生産
本発明の発現用組換えベクターを用いて、シイタケにおいて目的のポリペプチドを遺伝子工学的に得ることができる。
【0042】
上記2.の発現用組換えベクターに、目的のポリペプチド、例えば、インシュリン、成長ホルモン、チロシナーゼ、ラッカーゼ、ペルオキシダーゼなどの有用タンパク質等をコードする遺伝子を連結(挿入)することにより組換えベクターを作製することができる。本発明のベクターに目的のポリペプチドをコードする遺伝子を挿入する方法としては、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、本発明のベクターの制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結する方法などが挙げられる。得られた組換えベクターをシイタケにPEG法、エレクトロポレーション法、REMI法などの方法により導入することにより、形質転換体を得ることができる。
【0043】
次いで、得られた形質転換体を培養又は栽培し、その培養物又は栽培物から採取することにより、目的のポリペプチドを得ることができる。目的のポリペプチドがシイタケ菌糸において生産される場合には、該菌糸を培養する。
本発明において形質転換体の菌糸を培養する方法としては、シイタケの培養に用いられる通常の方法に従って行われる。
【0044】
シイタケを宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、シイタケが資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類などを含有し、形質転換体の培養を
効率的に行える培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。
炭素源としては、グルコース、フルクトース、スクロース、デンプン、マルトース、デキストリン等の炭水化物が用いられる。
【0045】
窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機塩類若しくは有機酸のアンモニウム塩又はその他の含窒素化合物のほか、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカー、カザミノ酸、NZアミン等が用いられる。
【0046】
無機物としては、リン酸第1カリウム、リン酸第2カリウム、塩化カルシウム、硫酸マグネシウム、炭酸ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸亜鉛、塩化マンガン、炭酸カルシウム等が用いられる。
【0047】
菌糸の培養は、液体培地での振盪培養、通気撹拌培養、固体培地での静置培養等の好気〜微好気条件下、25℃で数日間〜2ヶ月程度行うことが好ましい。継代は生育した菌糸の一部を新たな培地に接種することにより行うことができる。培養中は、必要に応じてハイグロマイシンやビアラフォス等の抗生物質を培地に添加してもよい。
【0048】
培養後、目的のポリペプチドが菌糸内に生産される場合には菌糸を破砕する。
一方、目的のポリペプチドが菌糸外に分泌される場合には、培養液をそのまま使用するか、遠心分離等により菌糸を除去し、上清を得る。そして、ポリペプチドの単離精製に用いられる一般的な生化学的方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿、ゲルクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を単独で又は適宜組み合わせて用いることにより、上記培養物中から目的のポリペプチドを単離精製することができる。
【0049】
また、目的のポリペプチドがシイタケ子実体において生産される場合には、シイタケ菌株を用いて子実体を立ち上げることができる。シイタケ子実体を立ち上げる方法としては、例えば、菌床培養が挙げられる。
【0050】
菌床培養を行うためには、まず、種菌を調製する。ここで、「種菌」とは、シイタケ栽培において種として使用するもので、適度な条件下で純粋に培養した菌体又は培養物をいう。このような種菌としては、液体培地にて調製した液体種菌、菌糸を断片化した液体種菌、寒天培地で調製したもの、オガクズ種菌等が挙げられる。
【0051】
種菌の調製は、公知の方法を用いて行うことができ、その方法は特に制限されないが、ここでは1例としてオガクズ種菌培養法を用いた例を示す。培地は、オガクズと米ヌカとを10:1の割合で混合し、含水率63%に調製する。これをポリプロピレン製培養器(800ml)に500g充填し、蓋をして121℃で40分間加圧蒸気滅菌をする。室温まで放冷した後、シイタケ菌株を接種し培養する。培養の条件は、当業者であれば適切に設定することができるため、特に制限されない。このような培養は、例えば、20℃、相対湿度65%にて約50日間培養することにより行うことができる。
【0052】
次に、上記のようにして得られる種菌を用いて、菌床培養を行う。ここで、「菌床」とは、シイタケの栽培を目的として調製された培地に種菌を接種したもの、又はその菌が蔓延したものをいう。また、ここで、種菌接種後から菌床が完熟するまでの期間を「培養期間」といい、子実体の芽出しから収穫までの期間を「発生期間」という。この菌床培養は、当業者であれば適切に行うことができるため、その方法は特に制限されないが、1例として以下のような方法を挙げることができる。
【0053】
オガクズ:北研バイデル(10:1)からなる培地の水分を63%に調整し、フィルター付きポリプロピレン製袋に、培地を2.5kg詰め込み、直方体(密度0.7g/cm)に成形する。培地中央部に直径2cmの穴を底部に到達するまで開け、これをオートクレーブにて、121℃で40分間滅菌し、室温で一晩放冷したものを培養基とする。この培養基に上記オガクズ種菌を約17gずつ接種し、ヒートシーラーにて速やかに袋を閉じる。これを20℃、相対湿度65%の条件下において暗黒下で培養する。この培養は、菌糸が菌床全面に蔓延し、完熟するまで行うが、通常、培養期間は102〜116日間である。
【0054】
最後に、上記の菌床培養によって得られる菌床から子実体を発生させる。この操作は当業者であれば適切に行うことができるため、その方法は特に制限されないが、1例として以下のような方法を挙げることができる。
【0055】
完熟するまで菌床培養した袋を開封して菌床を取り出し、温度16℃、湿度85%、照度300ルックス(12時間おき)の条件下で子実体を発生させ、収穫する。この発生期間は、当業者であれば適切に設定することができるため、特に制限されない。発生終了後、浸水処理(約20時間)を施した後に、再度発生のための培養を行って2回目の発生を行う。さらに、収穫後、再度浸水処理を行い、2回目と同じく子実体の発生を行うことができる。
【0056】
その後、目的のポリペプチドが菌体内あるいは子実体内に生産される場合には菌体あるいは子実体を破砕する。一方、目的のポリペプチドが菌体外に分泌される場合には、液体培養液をそのまま使用するか、遠心分離等により菌体を除去し、上清を得る。そして、ポリペプチドの単離精製に用いられる一般的な生化学的方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿、ゲルクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を単独で又は適宜組み合わせて用いることにより、上記培養物中から目的のポリペプチドを単離精製することができる。
【0057】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本発明をより具体的に説明する。ただし、これらの実施例は説明のためのものであり、本発明の技術的範囲を制限するものではない。
〔実施例1〕
chs遺伝子のプロモーター領域及びターミネーター領域の単離
(1)シイタケ菌糸の調製
北研産業(株)のシイタケ菌株北研57の2核菌糸を0.25×MYPG寒天培地(0.25% 麦芽エキス、0.1% 酵母エキス、0.1% ペプトン、0.5% グルコース及び1.5%寒天を含む。)に接種し、約2週間、25℃で培養した。生育した菌糸を寒天培地上からかきとり、100mlの0.25×MYPG液体培地の入った200ml容三角フラスコに接種した。接種後、25℃で約2〜4週間振盪培養し、菌糸を生育させた。
【0058】
(2)シイタケ菌糸cDNAライブラリーの調製
上記(1)で得られた液体培養液を、ガラスフィルターで濾過することにより、菌糸を回収した。水分をペーパータオルで十分に除去し、湿重量約1gの菌糸を液体窒素存在下で乳鉢および乳棒を用いて、パウダー状になるまで磨砕した。液体窒素を除くため2分間ほど放置した後、磨砕した菌糸をポリプロピレン製の遠心チューブに移し、10mlのISOGEN(ニッポンジーン社製)を加えて、室温で10分間激しく撹拌後、さらに2mlのクロロホルムを加えて、室温で1分間激しく撹拌した。これを粉砕液とする。
【0059】
この磨砕液を10,000×g、4℃で5分間遠心した後、水層を回収した。水層におけるタンパク質やDNAなどを取り除くため、再度、5mlのISOGENおよび1mlのクロロホルムを加えて、激しく撹拌した。その後、10,000×g、4℃で5分間遠心後、再び水層を回収し、フェノール・クロロホルム処理及びイソプロパノール沈殿を行い、沈殿物を得た。
【0060】
この沈殿物を1mlのDEPC処理水(滅菌水にジエチルピロカーボネイトを0.1%になるように溶解し、オートクレーブしたもの)に溶解後、250μlの10M塩化リチウム溶液を加え、-80℃で1時間冷却した。次いで、12,000×g、4℃で15分間遠心した。上清を除去した後、ペレットを70%エタノールで洗浄後、200μlのDEPC処理水に溶解した。10,000×g、4℃で5分間遠心し、上清を回収し、次いでエタノール沈殿を行うことにより全RNAを得た。得られた全RNAを200μlのDEPC処理水に溶解し、吸光度測定法及びホルムアルデヒド変性アガロースゲル電気泳動により、全RNAが良質に調製されたことを確認した。
【0061】
次いで、全RNAからStraight A'sTMmRNA Isolation System (Novagen社製)を用いて、ポリ(A)+RNAを精製した。得られたRNAの量をUV分光器により測定したところ、20μgであった。得られたポリ(A) +RNAを鋳型として、ZAP ExpressTMcDNA Synthesis Kit (Stratagene社製)を用いて二本鎖cDNAの合成を行った。すなわち、まず、表1に示す組成の溶液に、逆転写酵素(MMLV-RTase)3.5μl(20U/μl)を添加して、37℃、1時間インキュベートすることにより一本鎖cDNAを合成した。インキュベート後、反応液を氷中で冷却した。
【0062】
【表1】
【0063】
次に、得られた一本鎖cDNAの反応液に、表2に示す試薬を順に加16℃で2.5時間インキュベートすることで第2鎖cDNAを合成した。インキュベート後、反応液を氷中で冷却した。
【0064】
【表2】
【0065】
合成した二本鎖cDNAに2μlの2.5U/μl Cloned Pfu DNA polymerase(Stratagene社製)を加え、72℃で30分間インキュベートすることで、合成した二本鎖cDNAの両末端を平滑化した。次いで、フェノール・クロロホルム抽出及びエタノール沈殿を行った後、得られた沈殿を9.0μlのEco RIアダプター溶液に溶解した。得られた溶液9.0μlのうち1.0μlを1.0%アルカリアガロースゲル電気泳動に供試することによって、合成した二本鎖cDNAのサイズを確認した。
次に、残った溶液(8.0μl)に溶解した二本鎖cDNAに、表3に示す組成の溶液を加えて、8℃で一晩インキュベートすることにより、二本鎖cDNAの両末端にEco RIアダプターを付加した。
【0066】
【表3】
【0067】
アダプター付加後、反応液を70℃で30分間熱処理し、T4 DNAリガーゼを失活させた。
次いで、ベクターとのライゲーションを行うために、表4に示す組成の溶液を調製し、37℃で30分間インキュベートすることで二本鎖cDNAのEco RI末端のリン酸化を行った。
【0068】
【表4】
【0069】
Eco RI末端のリン酸化後、反応液を70℃で30分間熱処理し、T4ポリヌクレオチドキナーゼを失活させた。
二本鎖cDNAがベクターにセンス方向に組み込まれるように、上記二本鎖cDNAをXho Iで消化し、5'末端にEco RIサイト、3'末端にXho Iサイトが生じるように、表5に示す反応液組成で37℃で90分間反応させることにより、3'末端にXho Iサイトを生じさせた。
【0070】
【表5】
【0071】
反応後、反応液を室温にまで冷却し、5μlの10×STE緩衝液を加えた。
上記溶液を、1×STE緩衝液で平衡化したSephacryl S-500カラム(Stratagene社製)に供して、未付加のEco RIアダプターとXho I消化産物を除去した。次いで、カラムの溶出画分にフェノールクロロホルム抽出、エタノール沈殿を行い、得られた沈殿を5μlの滅菌水に溶解した。得られたcDNA溶液の濃度は吸光度測定法により定量した。
【0072】
上記のようにして得られた、5'末端にEco RIサイト、3'末端にXho Iサイトを有するcDNA(100ng)を、クローニングベクターであるZAP Express Vector arms(Stratagene社製)に2UのT4 DNA リガーゼを用いて挿入した。反応は12℃で14時間行った。このライゲーション反応液5μlのうち2μlを、Giga Pack III Gold Packaging Extract(Stratagene社製)を用いて、in vitro パッケージングに供した。
【0073】
in vitroパッケージングされた組換えバクテリオファージを含むパッケージング溶液30μlに、10mM MgCl2でOD.600 = 0.5に調整したE. coli XL1-blue MRF'株(Stratagene社製)を600μl加え、37℃で15分間培養した。これを48℃に保温した6.5mlのNZYトップアガロース(0.5%塩化ナトリウム、0.2%硫酸マグネシウム7水和物、0.5%酵母エキス、1%NZアミン及び0.7%アガロースを含み、pH7.5に調整されたもの。)に加え、90mm×130mmの角型シャーレを用いたNZYプレート(0.5%塩化ナトリウム、0.2%硫酸マグネシウム7水和物、0.5%酵母エキス、1%NZアミン及び1.5%アガーを含み、pH7.5に調整されたもの。)上に、1枚当たり約5万個のプラークが形成されるように、計15枚のプレートに播き、合計75万個のプラークからなるcDNAライブラリーを作製した。
【0074】
(3)シイタケのゲノムDNAライブラリーの調製
液体培養により生育させた菌糸をガラスフィルターで回収し、ペーパータオルで菌糸の水分を可能な限り搾り取った。回収した菌糸約1gを乳鉢に入れ、液体窒素を適量加えて磨砕した。磨砕した菌糸を50mlポリプロピレンチューブに移し、20mlのTESS緩衝液(0.73M シュクロース、10mM トリス緩衝液(pH 8.0)、1mM EDTA(pH8.0)及び1%SDSを含む。)を加えて、65℃で1時間インキュベートした。これに終濃度が1Mとなるように5M NaClを加えて、8,000×gで20分間遠心し、上清を回収した。回収した上清に等量のフェノール・クレゾール試薬(まず、100gのフェノールに、4.7mlのm-クレゾールを加えて50℃で溶解させる。次に、これに8-キノリノールを0.05%となるように加えて、さらに等量の1M NaClで平衡化させた試薬)を加え、1,300×gで5分間遠心して、上清(水層)を回収した。さらに、クロロホルム処理、エタノール沈殿を行って、1mlのTE緩衝液に溶解した。その溶液をRNase Aおよびproteinase Kで処理し、フェノール・クロロホルム処理とエタノール沈殿を行って、適当量のTE緩衝液に溶解し、ゲノムDNA試料とした。
【0075】
得られたゲノムDNA試料を制限酵素Sau 3AIによって消化し、フェノール・クロロホルム処理後、エタノール沈殿を行って適当量のTE緩衝液に溶解した。得られたDNA断片を用い、Lambda EMBL3/Bam HI Vector Kit(Stratagene社製)によりゲノムDNAライブラリーを作製した。
【0076】
(4)縮重プライマーの作製
既知の糸状菌類のchs遺伝子において保存性の高いアミノ酸配列[A. R. bowen,et. al.: Proc.Natl.Acad.Sci.USA., 89: 519-523 (1992)]をもとに縮重センスプライマー及び縮重アンチセンスプライマーを合成した。縮重センスプライマーとしては、U1(5'-CTGAAGCTTACNATGTAYAAYGARGAY-3':配列番号3)を、縮重アンチセンスプライマーとしては、L1(5'-GTTCTCGAGYTTRTAYTCRAARTTYTG-3':配列番号4)を合成した。ここで、YはT又はCを示し、RはG又はAを示し、NはA、C、G又はTを示す。なお、これら縮重センスプライマー及び縮重アンチセンスプライマーは、日本製粉(株)中央研究所カスタムサービスに委託して合成した。
【0077】
(5)縮重PCR
上記(3)において得られたゲノムDNA試料を鋳型に、上記(4)において調製した縮重センスプライマー及び縮重アンチセンスプライマーを用いて、縮重PCRを行った。縮重PCRの反応液の組成は表6の通りである。
【0078】
【表6】
【0079】
縮重PCR反応は、96℃で30秒間の熱変性、続いて50℃で30秒間のアニーリング、続いて72℃で1分間の伸長反応の条件を1サイクルとして、30サイクル行った。反応終了後、反応液を新しいマイクロチューブに移し、そのうち5μlを1.0%アガロースゲルによる電気泳動に供し、増幅断片の確認を行った。次いで、残りの反応液にフェノール・クロロホルム処理とエタノール沈殿を行い、ペレット化したPCR産物を20μlのTE緩衝液に溶解した。
【0080】
得られたPCR産物を1%低融点アガロースゲル電気泳動に供し、約 0.9 kbp(既知の糸状菌類のアミノ酸配列等から予測される大きさ)の断片を切り出し、QIAEX II(QIAGEN社製)を用いてゲルからDNAを抽出し、所望のPCR産物を回収した。次いで、回収したPCR産物をTA Cloning Kit(Invitrogen社製)でpCR2.1ベクターにサブクローニングした後、蛍光自動DNAシーケンサー(Parkin Elmer社製、ABI PRISM 310型)により塩基配列を解析した。その結果、得られたPCR産物におけるイントロンを除く領域を配列番号9に示す。また、この配列番号9から考えられるアミノ酸配列を配列番号10に示す。
【0081】
そして、この配列番号10に示すアミノ酸配列と公知のchsとの相同性を調べた結果を図1及び図2に示す。図1から判るように、配列番号10に示すアミノ酸配列は、ノイロスポラ・クラッサ(Neurospora crassa)におけるchsと高い相同性を示している。また、図2から判るように、配列番号6に示すアミノ酸配列は、スエヒロダケ(Schizophyllu commune)におけるchsと高い相同性を示していた。そこで、プロモーター及びターミネーター領域を含むchs遺伝子の全長配列をクローニングするために、回収したPCR産物を、シイタケ菌糸cDNAライブラリーおよびシイタケゲノムDNAライブラリーをスクリーニングするためのプローブとして用いた。
【0082】
(6)cDNAライブラリーからのchs遺伝子の単離
chs遺伝子のスクリーニングにおいて、プラークの形成およびライブラリーの増幅はZAP Express cDNA synthesis Kit(Stratagene社製)のマニュアルに基づいて行った。すなわち、上記(2)において調製したcDNAライブラリーから合計50万個のプラークをスクリーニングするため、1×107pfu/mlのファージ溶液5μlを10本用意し、それぞれに10mM MgSO4でOD600=0.5に調整した大腸菌XL1-Blue MRF'株600μlを加えて、37℃で15分間インキュベートした。次いで、6.5mlのNZYトップアガーを加えて、90mm×130mmの角型NZYプレートに重層し、37℃で6〜8時間インキュベートし、プラークを形成させた。プラークが形成したプレートは4℃で保存した。
【0083】
予め大きさを合わせて切断したHybond N+ナイロンメンブレン(90mm×130mm、Amersham Life Science社製、以下、単に「メンブレン」という。)をプレートに重ね、2分間放置し、ファージDNAをメンブレンに転写した。次いで、メンブレンをアルカリ変性溶液(0.25 M NaOH及び1.5 M NaClを含む。)で20分間処理し、ファージDNAをアルカリ変性させた。変性後、メンブレンを中和液(0.5M Tris-HCl (pH8.0)、1.5M NaCl)に浸して、室温で5分間振盪し、続いて、リンス溶液(0.2M Tris-HCl (pH7.5)、2×SSC)中で30秒間メンブレンを洗浄後、ペーパータオルにメンブレンを挟んで、80℃で2時間加温することで、ファージDNAをメンブレンに固定した。
【0084】
次いで、プラークハイブリダイゼーション及びシグナルの検出をECL direct nucleic acid labelling and detection system(Amersham Life Science社製)を用いて行った。すなわち、DNAを固定したメンブレンをハイブリバック(コスモバイオ社製)に入れ、キット付属のハイブリダイゼーション緩衝液を適量加えて、密閉し、42℃で1時間プレハイブリダイゼーションを行った。次いで、溶液を除去し、上記(5)において調製したプローブをペルオキシダーゼ標識したもの50ngを含む5mlのハイブリダイゼーション緩衝液を加え、42℃で4時間ハイブリダイゼーションを行った。ハイブリダイゼーション完了後、メンブレンを0.4% SDS、36%Ureaを含む0.5×SSCを用い、42℃で20分間の洗浄を2回行った。さらに、2×SSCを用い、室温で5分間の洗浄を2回行った。
【0085】
このメンブレンを1mlのECL detection reagentで1分間処理し、サランラップで包み、フィルムカセットに入れ、生じたシグナルをHyperfilm-ECL(Amersham Life Science 社製)に感光させた。フィルムを現像したところ、16個の陽性シグナルが得られた。得られたシグナルに対応するプラークをピペットで吸い取り、それを1mlのSM緩衝液(100mM NaCl、100mM MgSO4、50mM Tris-HCl (pH7.5)及び0.01%ゼラチンを含む。)に懸濁し、20μlのクロロホルムを加えて撹拌した。このファージ懸濁液を適当に希釈して、プレーティングし、その後、上記と同様の手法を複数回繰り返して精製を行い、陽性プラークを得た。
【0086】
スクリーニング後、ファージミド形成は Zap Express cDNA synthesis kit(Stratagene社製)のマニュアルに基づいて行った。すなわち、1mlのSM緩衝液に懸濁した陽性組換えファージ250μlに、10mM MgSO4でOD600=1.0に調整した大腸菌XL1-Blue MRF'株200μlと、ExAassist ヘルパーファージを加えて、37℃で15分間インキュベートした。そこへ、3mlのNZY 培地を加えて、さらに37℃で2.5時間インキュベートした。インキュベート後、70℃で20分間加温し、1000×gで15分間遠心して、上清を回収し、ファージミド溶液を得た。次に、ファージミドを大腸菌に組み込むため、ファージミド溶液100μlもしくは10μlに、10mM MgSO4でOD600=1.0に調整した大腸菌XLOLR株(Stratagene社製)200μlを加えて、37℃で15分間インキュベートした。培養液200μlを50μg/mlのカナマイシンを含むLB固体培地に播き、37℃で一晩インキュベートし、生じたコロニーからファージミドを調製した。
【0087】
ファージミドの調製はRPM Kit(BIO 101社製)を用いて行った。すなわち、上記で得られたコロニーを50μg/mlのカナマイシンを含む3mlのLB液体培地に接種し、37℃で一晩インキュベートした。培養液をマイクロチューブに取り、10,000×gで1分間遠心して、集菌した。回収した菌体にPre-Lysis緩衝液50μlを加えて、激しく撹拌し、菌体を懸濁した。さらに、100μlのアルカリLysis緩衝液を加えて、穏やかに撹拌し、菌体を完全に溶解させた。次に、100μlの中和溶液を加えて激しく撹拌し、10,000×gで2分間遠心して、上清を回収した。キット付属のSPIN FILTERによく混ぜたGlass Milkを250μl加えて、そこへ回収した上清を加えてよく撹拌し、マイクロチューブにSPIN FILTERをのせた。10,000×gで1分間遠心し、さらにWash緩衝液350μlを加えて同様に遠心した後、新しいマイクロチューブにSPIN FILTERをのせ、TEを50μl加えて10,000×gで30秒間遠心し、Glass Milkからファージミドを溶出させた。エタノール沈殿後、得られた沈殿を20μlのTE緩衝液に溶解し、塩基配列の決定に供した。
【0088】
(7)ゲノムDNAライブラリーからのchs遺伝子の単離
上記(3)において作製したゲノムDNAライブラリーから、上記(6)とほぼ同様の手順でchs遺伝子を単離した。プラークの形成及びライブラリーの増幅は、大腸菌XL1-blue MRA株を使用して、Lambda EMBL3 / Bam HI vector kit(Stratagene社製)のマニュアルに基づいて行い、プラークハイブリダイゼーション及びシグナルの検出は、cDNAライブラリーからのchs遺伝子の単離と同じ手順で行った。そして、得られたシグナル付近のプラークを掻き取り、それをSM緩衝液に懸濁した。このファージ懸濁液を適度に希釈して、プレーティングし、上記と同様のスクリーニングを行い、ゲノムにおけるchs遺伝子を含む組換え体ファージを得た。クローン化したファージをそれぞれプレーティングし、37℃で6〜8時間インキュベートしてプラークを形成させた。プラークが形成したプレートに10mlのSM緩衝液を重層し、4℃で12時間以上振盪培養して、ファージをSM緩衝液中に遊離させた。ファージを含むSM緩衝液を15mlのプロピレンチューブに回収し、クロロホルムを終濃度5%となるように加えて、室温に15分間放置し、それを1,500×gで10分間遠心し、上清を回収した。次いで、Wizard Lambda Preps DNA Purification System(Promega社製)を用いて、回収した上清からファージDNAを精製し、塩基配列の決定に供した。
【0089】
(8)塩基配列の決定
上記(6)および(7)において得られた陽性クローンの塩基配列を、ABI PRISM Dye Terminator Cycle Seqeuencing Ready Reaction Kit, FS(Perkin Elmer社製)を用いてそれぞれ決定した。PCR反応はそのマニュアルに基づいて行い、得られたPCR産物はABI PRISM 310 Genetic Analyzer(Perkin Elmer社製)によって解析した。いずれの陽性クローンに対しても5’末端及び3’末端の塩基配列を決定した。決定した配列は、配列番号1及び2に示す。配列番号1は、chs遺伝子の開始コドンを含む上流約2.3kbpの塩基配列であり、配列番号2はchs遺伝子の終止コドンを含む下流約0.9 kbp の塩基配列である。
【0090】
〔実施例2〕
発現用組換えベクターの構築
ここでは、chs遺伝子のプロモーター領域を含む発現用組換えベクターを構築した。なおchs遺伝子のターミネーター領域を含む発現用組換えベクターを構築する際も、以下に示す手法を同様に使用することができる。
(1)chs遺伝子のプロモーター領域の単離
単離したchs遺伝子の開始コドンより上流域約 2.2 kbpの塩基配列(配列番号1)より、各種プロモーターに見出される特定塩基配列(TATA box、CAAT box など)が存在していることが判る。そこで、この開始コドンより上流約 2.2 kbpをプロモーター領域(配列番号1における第1塩基から第2229塩基に挟まれる領域)とみなし、ゲノムchs遺伝子を鋳型としてPCRを行い、chs遺伝子のプロモーター領域を大量に調製した。
【0091】
このPCRに際して、センスプライマーとして、翻訳開始点から-2256〜-2227bpの位置に存在する配列CproU(5'-ATAAGAATAATCAGGCTTGTCGTCGAACCG-3':配列番号5)を有するものを用い、アンチセンスプライマーとして、翻訳開始点から-57〜-28bpの位置に存在する配列CproL(5'-CCTTAGTTGTAGATGGAAATGGTGGGGTGG-3':配列番号6)を有するものを用いた。なお、これらCproU及びCproLは、日本製粉(株)中央研究所カスタムサービスに委託して合成した。このときのPCRの反応液組成は表7の通りである。
【0092】
【表7】
【0093】
このとき、PCR反応は、96℃で30秒間の熱変性、続いて60℃で30秒間のアニーリング、続いて72℃で2分間の伸長反応の条件を1サイクルとして、30サイクル行った。反応終了後、反応液を新しいマイクロチューブに移し、そのうち5μlを1%アガロースゲルによる電気泳動に供し、増幅断片の確認を行った。次いで、残りの反応液にフェノール・クロロホルム処理とエタノール沈殿を行い、ペレット化したPCR産物を20μlのTE緩衝液に溶解した。
【0094】
得られたPCR産物を1%低融点アガロースゲル電気泳動に供し、約2.2 kbpの断片を切り出した。その断片をQIAEX II(QIAGEN社製)を用いてゲルから抽出し、chs遺伝子のプロモーター領域を単離、精製した。
【0095】
(2)組換えベクター(pLCHS)の構築
ここでは、組換えベクターの一構築例として、図1に示すように、上記(1)において単離したプロモーター領域と特開平6-319547で開示した pLG-hphプラスミドベクターとを利用し、シイタケを宿主とする組換えベクターpLCHS-hph を構築した。最初に、pLG-hphプラスミドベクターからgpd遺伝子のプロモーター領域を除き、代わりにchs遺伝子のプロモーター領域を組み込んだベクターを構築するため、pLG-hphプラスミドベクターを鋳型として、gpd遺伝子のプロモーター領域を除くようにPCRを行った。得られたDNA断片を1%Sea Plaque Agarose(FMC)を用いて、4℃、50Vの条件で電気泳動した。泳動後、目的のバンドをゲルから切り出し、QIAEX II Gel Extraction Kits(QIAGEN)によってDNAを精製した。エタノール沈澱後、得られたDNAペレットをDNA Blunting Kit(TaKaRa)を用いて平滑末端にし、さらにアルカリフォスファターゼ(Calf intestine)によって脱リン酸化し、フェノール・クロロホルム処理、エタノール沈澱を行って、pLG-hph (-Pgpd)プラスミドベクター(pLG-hphプラスミドベクターからgpd遺伝子のプロモーターを除いた断片)を得た。さらにその断片を平滑末端にし、さらに脱リン酸化を行って、Perfectly Blunt Cloning Kits(Novagen)を用いて、上記(1)で得られたchs遺伝子のプロモーターと連結させ、pLCHS-hphプラスミドベクターを得た。
【0096】
(3)組換え発現ベクター(pChG-bar)の構築
組換え発現ベクターpChG-barは、pLG-hphプラスミドベクターのhph遺伝子をビアラフォス耐性遺伝子(bar遺伝子)に入れ替えたpLG-barプラスミドベクターと上記(2)で得られたpLCHS-hphプラスミドベクターとを結合させて構築したものである。
【0097】
はじめに、図3に示すように、pLG-barプラスミドベクターを構築した。すなわち、先ず、pLG-hphプラスミドベクターからhph遺伝子を除去し、代わりにbar遺伝子を組み込んだベクターを構築するためにpLG-hphプラスミドベクターを鋳型として、hph遺伝子を除くようにPCRを行い、pLGプラスミドベクター断片(pLG-hphプラスミドベクターからhph遺伝子を除いた断片)を得た。得られたpLGプラスミドベクター断片は、1%Sea Plaque Agarose(FMC)を用いて、4℃、50Vの条件で電気泳動した。泳動後、目的のバンドをゲルから切り出し、QIAEX II Gel Extraction Kits(QIAGEN)によってDNAを精製した。エタノール沈澱後、得られたDNAペレットをDNA Blunting Kit(TaKaRa)を用いて平滑末端にし、フェノール・クロロホルム処理、エタノール沈澱を行った。一方、bar遺伝子は、pLC-barプラスミドベクター[Yanai, K. et. al., Biosci. Biotech. Biochem., 60, 472-475 (1996)]から単離した。すなわち、pLC-barプラスミドベクターを BamHI で消化し、得られたDNA断片を1%Sea Plaque Agarose(FMC)を用いて、4℃、50Vの条件で電気泳動した。泳動後、目的のバンドをゲルから切り出し、QIAEX II Gel Extraction Kits(QIAGEN)によってDNAを精製した。エタノール沈澱後、得られたDNAペレット Blunting Kit(TaKaRa)を用いて平滑末端にし、フェノール・クロロホルム処理、エタノール沈澱を行って、bar遺伝子断片を得た。そして、このbar遺伝子断片を、上記pLGプラスミドベクター断片と連結させ、pLG-barプラスミドベクターを得た。
【0098】
次に、シイタケ発現ユニットPchs-bar-Tgpd 断片を得るために、pLG-barプラスミドベクターを鋳型として、pLG-barプラスミドベクターにおけるgpd遺伝子のプロモーター(Pgpd)、bar遺伝子(bar)及びgpd遺伝子のターミネーター(Tgpd)を含む領域をPCRにより増幅した。得られたDNA断片を1%Sea Plaque Agarose(FMC)を用いて、4℃、50Vの条件で電気泳動した。泳動後、目的のバンドをゲルから切り出し、QIAEX II Gel Extraction Kits(QIAGEN)によってPgpd−bar−Tgpdを精製した。エタノール沈澱後、得られたDNAペレットをDNA Blunting Kit(TaKaRa)を用いて平滑末端にした。
【0099】
一方、pLCHS-hphプラスミドベクターをEhe Iで消化し、末端平滑化、脱リン酸化を行い、フェノール・クロロホルム処理、エタノール沈澱を行って、線状のpLCHS-hphプラスミドベクターを得た。これとPgpd-bar-Tgpd 断片とをPerfectly Blunt Cloning Kits(Novagen)を用いて連結させ、図3に示すようなpChG-bar プラスミドベクターを得た。こうして作出したプラスミドのうち、方向的に正しく挿入されたものを選抜して、大量に調製した。
【0100】
〔実施例3〕
REMI法によるシイタケの形質転換
(1)プロトプラストの調製
シイタケ菌株の二核菌糸を、0.25×MYPG寒天培地(0.25%麦芽エキス、0.1%酵母エキス、0.1%ペプトン、0.5%グルコース及び1.5%寒天を含む。)で、25℃2週間培養した。生育した菌糸をかきとり、50 ml の0.25×MYPG液体培地で1週間培養した。得られた菌糸はガラスフィルターで集菌し、50mlの0.25×MYPG液体培地に懸濁してポリトロンホモジナイザーで裁断し、100μmのナイロンメッシュで濾過した濾過菌糸をさらに0.25×MYPG液体培地中25℃で、5日間培養した。培養菌糸は100μmのナイロンメッシュで集菌後、クエン酸緩衝液(0.6 Mマンニトールを含む50mM クエン酸緩衝液を含有し、pH5.6に調整されたもの。)で2回洗浄し、菌糸1g当たり10mlの酵素溶液(2.5重量%セルラーゼ(ヤクルト社製)、0.1重量%キチナーゼ(シグマ社製)を含むクエン酸緩衝液を含有する)に菌糸を懸濁し、28℃で3〜4時間インキュベートした。酵素処理した菌糸を40μmのナイロンメッシュで濾過し、濾液を1,500×gで10分間遠心分離して、プロトプラストを沈殿させた。上清を捨て、プロトプラストをSTC 緩衝液(10mM塩化カルシウム、1.2Mソルビトールを含む10mM Tris-HClを含有し、pH7.5に調整されたもの。)で洗浄後、再び1ml のSTC 緩衝液にプロトプラストを懸濁し、顕微鏡でプロトプラストの数を計測した。最終的には、STC緩衝液100μlに0.5〜1.0×107protoplastsとなるように調整して、形質転換用のプロトプラストとした。
【0101】
(2)pLCHS-hph及びpChG-barプラスミドベクターの導入
形質転換は、pLCHS-hphプラスミドベクター及びpChG-barプラスミドベクターを1箇所で切断する制限酵素Hind IIIを用いたRestriction Enzyme Mediasted Integration(REMI)法によって行った(特開平11-155568号公報を参照)。すなわち、2.5μgのpLCHS-hphあるいはpChG-barプラスミドベクターと50ユニットのHind IIIとを含む150μlのSTC緩衝液に、上記のプロトプラスト懸濁液100μlを穏やかに加え、氷中で20分間インキュベートした。これに 62.5μlのPEG溶液(10mM塩化カルシウム、60% PEG4000を含む10mMTris-HClを含有し、pH7.5に調整されたもの)を加え、氷中で20分間インキュベートした。さらに3.125mlのPEG溶液を加えて、室温で20分間インキュベートした。次に、10mlのSTC緩衝液を加えて溶液全体を十分に懸濁し、1,500×gで10分間遠心し、プロトプラストを沈殿させた。回収したプロトプラストを4mlのMS(2%麦芽エキス、0.6Mスクロースを含有する)液体培地に懸濁し、25 ℃で3-4日間静置培養した。
【0102】
(3)ハイグロマイシン B 耐性菌糸の選抜
プロトプラストから菌糸を再生し、再生した菌糸を1,500×gで10分間遠心することで回収した。回収した菌糸を1mlのMS液体培地に再懸濁し、5μg/mlハイグロマイシンBを含む最少寒天培地(2%グルコース、0.2%酒石酸アンモニウム、0.05%硫酸マグネシウム、0.1%リン酸二水素カリウム、0.112%炭酸ナトリウム、0.132%フマル酸、10ppm硫化鉄、8.8ppm硫化亜鉛、7.2ppm塩化マンガン及び1.5%寒天からなり、pH4.5に調整されたもの)にまき、 25 ℃で5日間培養した。次に、一旦溶解し、50℃程度に冷却させた0.25×MYPG寒天培地に、20μg/mlハイグロマイシンBを加え、それを最少寒天培地上で生育した菌糸上に重層した。25℃で約5日間培養後、増殖してきた菌糸を分離し、新しい20μg/mlハイグロマイシンBを含むMYPG寒天培地に植え替えた。さらに1週間程度培養し、増殖してきた菌糸を新しい20μg/mlハイグロマイシンBを含むMYPG寒天培地に植え替えて培養し、ハイグロマイシン耐性を獲得した菌糸を選抜した。
【0103】
(4)ビアラフォス耐性菌糸の選抜
pChG-barプラスミドベクター導入株に関しては、上記(3)で選抜したハイグロマイシンB耐性菌糸を、さらに2μg/mlビアラフォス及び20μg/mlハイグロマイシンBを含むMYPG寒天培地にまき、25℃で約1週間培養後、増殖してきた菌糸を分離し、新しい2μg/mlビアラフォス及び20μg/mlハイグロマイシンBを含むMYPG寒天培地に植え替え、両薬剤耐性株を選抜した。
(5)結果
結果を表8に示す。なお、数値は3連の実験の平均値である。
【0104】
【表8】
【0105】
表8から判るように、pLG-hphプラスミドベクターによりハイグロマイシン耐性を獲得したシイタケ形質転換体が作出され、本発明の発現用組換えベクターが、シイタケを宿主とする異種遺伝子発現用ベクターとして有効であることを確認した。
【0106】
【発明の効果】
以上、詳細に説明したように、本発明によれば、シイタケキチン合成酵素遺伝子の転写開始を指令するプロモーター及び/又は該ターミネーターを含む組換えベクター、該組換えベクターを含む形質転換体、該形質転換体を用いるポリペプチドの製造方法が提供される。
【0107】
【配列表】
【0108】
【配列表フリーテキスト】
【配列番号3】
プライマー。第12塩基のnは、a、t、c又はgである。
【配列番号4〜8】
プライマー。
【図面の簡単な説明】
【図1】配列番号10のアミノ酸配列とノイロスポラ・クラッサにおけるchsアミノ酸配列との相同性を示す図である
【図2】配列番号10のアミノ酸配列とスエヒロダケにおけるchsアミノ酸配列との相同性を示す図である
【図3】 pChG-barプラスミドベクターの構築を表わす模式図である。
Claims (11)
- 配列番号1で表される塩基配列における第1塩基から第2229塩基までの配列を含むDNAであって、プロモーターとして機能し得るDNA。
- 請求項1記載のDNAを含有する発現用組換えベクター。
- 請求項2記載の発現用組換えベクターに、ターミネーター活性を有する任意のDNAが組み込まれた発現用組換えベクター。
- 配列番号2で表される塩基配列における第20塩基から第920塩基までの配列を含むDNAであって、ターミネーターとして機能し得るDNA。
- 請求項4記載のDNAを含有する発現用組換えベクター。
- 請求項5記載の発現用組換えベクターに、プロモーター活性を有する任意のDNAが組み込まれた発現用組換えベクター。
- 請求項1記載のDNA及び請求項4記載のDNAを含有する発現用組換えベクター。
- 請求項2、3、5又は6記載の発現用組換えベクターに任意のポリペプチドをコードする遺伝子が組み込まれた組換えベクター。
- 請求項2、3、5又は6記載の発現用組換えベクターを含む形質転換体。
- 請求項8記載の組換えベクターを含む形質転換体。
- 請求項10記載の形質転換体を培養又は栽培し、得られる培養物又は栽培物からポリペプチドを採取することを特徴とする前記ポリペプチドの製造方法。
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