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JP4622366B2 - ポリベンザゾール系フィルムおよびその製造法 - Google Patents
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JP4622366B2 - ポリベンザゾール系フィルムおよびその製造法 - Google Patents

ポリベンザゾール系フィルムおよびその製造法 Download PDF

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本発明は高強度、高弾性率を有し、かつ表面平滑性と滑り性とを兼ね備えたポリベンザゾール系フィルムおよびその製造法に関するものである。特に磁気記録用基材フィルムとして好適なポリベンザゾール系フィルムに関するものである。
磁気テープ用基材フィルムとしては、2軸配向ポリエチレンテレフタレートフィルムが広く一般的に使用されている。しかし、基材フィルムを薄くすることで記録時間と記録容量を増やしたい要求に対して機械的強度において限界があった。そこでより高強力な全芳香族ポリアミドや全芳香族ポリエステルなどのフィルムの開発が行われている。ポリベンザゾール、特にポリベンザゾールは、棒状ポリマーでそれの配向フィルムは極めて高い機械的強度を有することが開示されている(特許文献1参照)。しかし、磁気テープ用ベースとして使用する場合、フィルム表面には平滑性と無欠点性が必要であると同時に走行性を得るため微細な表面凹凸が必要である。
以上の方法はいずれも、剛直性高分子の溶液(厳密な意味での溶液としてではなく、溶液と称するものである。以下同じ)が光学的異方性すなわち液晶性を示す高濃度領域で加工時のせん断粘度が比較的低くなる特性に着目したものであるが、光学的異方性を示す溶液で製膜すると、フィルムの長手方向(MD、フィルムの流れ方向、マシンダイレクション)および幅方向(TD、MDと直角の方向、トランスバースダイレクション)方向の機械的物性のバランスをとるのが難しい。力学特性のバランスに関する問題を解決する方法として、ダイ押出しまでを光学的異方性相で実施し、ダイ押出し後は組成変化若しくは温度変化により光学的等方相へ相転移させる製膜方式が開示されている(特許文献2参照)。ところが、光学的に異方性を示すポリベンザゾール系溶液をダイ押出しすると、押出されたシート表面はその液晶性に由来し発生すると考えられる著しい荒れが観察される。また、光学的に異方性を有するポリベンザゾール溶液を支持体上に流延し、その後光学的に等方性を示す状態に変化させることにより得られる、高弾性率かつ適度な伸度を示すポリベンザゾール系フィルムが開示されている(特許文献3参照)。
米国特許第4,973,442 特開平9−118758号公報 特開平2000−273214号公報
しかし上記のいずれの方式においても液晶性非等方性溶液から形成されたフィルムであり、液晶相の高配向性のため、長手方向と幅方向の機械的物性のバランスも十分に解決されているとはいえない。さらに、液晶性非非等方性溶液をTダイ等により押出されると、押出されたシート状物には表面荒れが観察されるが、これらの問題はいまだ解決されていない。
この点についての検討は全くなされておらず、従来開示されているポリベンザゾールフィルムは表面に粗いフィブリル状の突起を有し実用的な磁気テープとして使用することは難しかった。これに対する改良も試みられてはいるが、表面平滑性の良好なフィルムは得られていないのが現状である(特許文献4、5参照)。
特表平6−503521号公報 特開平11−171993号公報
本発明は、上記の点を解決しようとするもので、高強度、高弾性率を有し、かつ表面平滑性と滑り性とを兼ね備えた積層ポリベンザゾール系フィルムおよびその製造法を提供することを課題とする。
すなわち本発明は、光学的に異方性のポリベンザゾール系溶液から形成したコア層と該コア層の両表面に微粒子をポリベンザゾール系ポリマーに対して0.20〜2.00質量%含有した光学的に等方性であるポリベンザゾール系溶液から形成したスキン層とで構成されたポリベンザゾール系フィルムであり、また下式(1)〜(6)の全てを満たす前記のポリベンザゾール系フィルムである。
(1)長手方向および幅方向の引張弾性率≧10.0GPa、
(2)長手方向および幅方向の引張破断強度≧350MPa、
(3)長手方向および幅方向の引張破断伸度≧10%、
(4)0.85≦(幅方向の引張弾性率)/(長手方向の引張弾性率)≦1.20、
(5)0.85≦(幅方向の引張破断強度)/(長手方向の引張破断強度)≦1.20、
(6)0.85≦(幅方向の引張破断伸度)/(長手方向の引張破断伸度)≦1.20。
好ましい態様はフィルム表面の3次元平均粗さSRaが5nm以上かつ50nm以下であり、1μm以上の粗大突起が10個/mm以下である前記のポリベンザゾール系フィルムであり、更に好ましい態様は、光学的に異方性のポリベンザゾール系溶液から形成させるコア層の厚みがフィルム全厚み(積層体の全体厚み)の25〜75%である前記のポリベンザゾール系フィルムであり、ポリベンザゾールがポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾールである前記のポリベンザゾール系フィルムである。
また本発明は、光学的に異方性のポリベンザゾール系溶液からコア層を形成し、該コア層の両表面に微粒子をポリベンザゾール系ポリマーに対して0.20〜2.00質量%含有した光学的に等方性であるポリベンザゾール系溶液からスキン層を積層形成する工程を含むことを特徴とするポリベンザゾール系フィルムの製造法であり、より好ましくは、光学的に異方性のポリベンザゾール系ポリマー溶液のポリマー濃度が8.0〜16.0質量%、光学的に等方性ポリベンザゾール系ポリマー溶液の濃度が0.5から5質量%である前記のポリベンザゾール系フィルムの製造法である。
本発明のポリベンザゾール系フィルムは、前記のとおりの構成を採用することにより、滑り性が良好でフィルムの取り扱い性や磁気テープにした時などの走行性が良好である。また表面が平滑で粗大突起を持たないので磁気記録特性が良好である。更に異方性ポリマー溶液からのみ作製されるフィルムの持つ欠点を補正改良し得て、かつフィルムの長手方向(MD)と幅方向(TD)での強伸度などの物性バランスが良好であり、極めて高い引張弾性率など優れた物性を有するので薄膜基材フィルムとして使用できる。特に磁気記録用の薄膜基材フィルムとして有用である。
本発明におけるポリベンザゾール系ポリマーとは、ポリベンゾオキサゾール(PBO)ホモポリマー、ポリベンゾチアゾール(PBT)ホモポリマー及びポリベンズイミダゾール(PBI)ホモポリマー、もしくは、それらPBO、PBT、および/又はPBIのランダム共重合ポリマー、交互共重合ポリマーあるいはブロック共重合ポリマーをいう。ここでポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール及びそれらのランダム、交互あるいはブロック共重合ポリマーは、例えば米国特許第4703103号、米国特許4533692号、米国特許第4533724号、米国特許第4533693号、米国特許第4539567号、米国特許第4578432号等に記載されたものである。
ポリベンザゾール系ポリマーに含まれる構造単位としては、好ましくはライオトロピック液晶ポリマーから選択される。構造単位は構造式(a)〜(n)に記載されている構造単位からなり、さらに好ましくは、構造式(a)〜(f)から選択された構造単位からなる。特に好ましくは、構造式(a)〜(b)から選択されたモノマー単位からなるPBOポリマーである。
Figure 0004622366
Figure 0004622366
本発明においては上記したポリベンザゾール系ポリマーが80質量%以上を含有することが好ましく、20質量%未満は他のポリマー、例えば芳香族ポリイミド等を含有してもよい。より機械的特性に優れるポリベンザゾール系フィルムを得る為には、ポリベンザゾール系ポリマーの含量は90質量%以上が望ましい。
本発明においては、請求項5に記載のごとく、前記したポリベンザゾール系ポリマーがポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾールであることが好ましい実施態様である。該ポリマーにすることで優れた耐熱性と機械的物性が得られる。
本発明でスキン層形成のために用いられるポリベンザゾール溶液には、ポリベンザゾールのポリリン酸溶液に対して不活性な微粒子を含有させる必要がある。不活性な微粒子はポリベンザゾールに対し0.20〜2.0質量%以下の範囲で含有させることが必要である。不活性な微粒子の含有量が0.20質量%未満であると例えば磁気テープに加工した時の走行性が低下し好ましくない。一方2.0質量%を超えると磁気記録特性が低下するので好ましくない。不活性な微粒子としては、シリカ、シリカアルミナなどの無機微粒子や架橋有機高分子微粒子などが好適である。
該微粒子は表面処理によって溶液に対して不活性化しているのが好ましい。該微粒子は、ポリベンザゾールの溶液もしくはその原料に添加して2軸混練り機などで混練り分散される。この際に副反応が生じるのは好ましくないので、副反応を最小限に抑える必要がある。該微粒子の重量平均粒子径は50〜2000nmが好適である。特に重量平均粒子径が70〜700nmで粒度分布の幅の小さいものが好適である。特に5000nm以上の粒子径の微粒子を実質的に含まないものが好適である。微粒子の重量平均粒子径が50nm以下の場合、フィルム表面にフィルム走行性に有効な突起を形成させることができない。重量平均粒子径が1000nmより大きいと表面に形成される突起が大きく、磁気テープにした時の磁気記録特性が悪くなる。重量平均粒子径が5000nm以上の粒子が存在するとフィルム表面に粗大突起ができ磁気テープにした時の磁気変換特性が悪くなる。本特許の表面特性を有するポリベンザゾールを得る上で、適切な不活性微粒子の混練り分散が重要である。該微粒子を適切なスクリューの2軸押出機で混練りした後、フィルターを通すことで更に分散させるとともに凝集した微粒子や系外から入った異物由来の粗大な粒子を除く必要がある。
本発明の積層ポリベンザゾール系フィルムは少なくとも一方のスキン層に微粒子を0.20〜2.00質量%含有するポリベンザゾール系フィルムであって、このましくは下式(1)〜(6)を満たすことを特徴とする。
(1)長手方向および幅方向の引張弾性率≧10.0GPa、
(2)長手方向および幅方向の引張破断強度≧350MPa、
(3)長手方向および幅方向の引張破断伸度≧10%、
(4)0.85≦(幅方向の引張弾性率)/(長手方向の引張弾性率)≦1.20、
(5)0.85≦(幅方向の引張破断強度)/(長手方向の引張破断強度)≦1.20、
(6)0.85≦(幅方向の引張破断伸度)/(長手方向の引張破断伸度)≦1.20。
引張弾性率が10.0GPa未満であると後加工速度が上げられない、あるいは使用される際の高速巻き取り時の高張力や張力でフィルム変形が生じ好ましくなく、さらに製膜時の薄膜化が困難となる。本発明のポリオベンザゾール系フィルムの引張弾性率はより好ましくは12.0GPa以上である。さらに、引張破断強度が350MPa未満の場合は高速かつ高張力化で後加工した場合、フィルムの破断の原因となり好ましくない。また、引張破断伸度は10%以上が好ましい。伸度がこれ未満である場合、加工時のハンドリングが困難になるのみならず、使用時にフィルムが脆くなり好ましくない。
また、本発明のポリベンザゾール系フィルムは長手方向の引張弾性率、引張破断強度および引張破断伸度と幅方向の引張弾性率、引張破断強度および引張破断伸度との関係が上記(1)〜(3)と共に、(4)〜(6)式を同時に満足する必要がある。上記の(4)〜(6)式を同時に満足することにより、フイルムの長手方向と幅方向の機械的物性値のバランスが取れるので、特定方向に裂け易いという従来公知の製造法で得られるフィルムの持っていた欠点を改善でき、各種用途に好適に展開することができる。
本発明の微粒子を含有するポリベンザゾール系フィルムの3次元平均表面粗さ(SRa)は、好ましくは5nm〜50nmである。また、フィルム表面に存在する1μm以上の突起は10個/mm以下である必要がある
SRaが3nmより小さい場合は、フィルムを巻き取る作業性や磁気テープにした時の走行性、ガイドロールに対する耐摩耗性などが不足する。一方、SRaが50nm以上の時は、磁気テープやフレキシブルディスクにした時に電磁変換特性が不十分となる。高密度記録用の磁気記録基材として使用する場合のフィルム(基材フィルムとのいう)のSRaは20nm以下が好ましい。また、フィルム表面の1μm以上の突起が10個/mm以上の時は、磁気テープやフレキシブルディスクにした時に信号欠陥が生じるので好ましくない。特に高記録密度用の磁気記録基材として使用する場合は1個/mm以下である必要がある。3次元平均表面粗さ(SRa)と1μm以上の粗大突起数を本発明の範囲にするためには、該不活性微粒子の粒径分布と添加量、分散方法を適切なものを用いるとともに、延伸や凝固の条件も適切に選ぶ必要がある。また、異物の混入の防止措置と混入した異物の除去する対策を行うことが望ましい。
本発明で用いられるポリベンザゾール系フィルムの厚みは特に限定されないが、例えば、高密度の磁気テープとして使用する場合は0.5〜10μmが好適である。フィルムが厚い場合は、敢えて本発明の高強度フィルムを使用する必要はない場合が多い。加工工程やテープ走行の時の張力に耐える必要から一般的に0.5μm以上の厚みが好適である。
本発明の微粒子を含有するポリベンザゾール系フィルムに微粒子を含有しないポリベンザゾール系フィルム層を積層することもできる。
本発明においては、前記した特性を発現するには請求項3及び請求項6に記載のごとく、光学的に異方性のポリベンザゾール系溶液から形成させるコア層の両表面に光学的に等方性であるポリベンザゾール系溶液から形成されるスキン層を積層するし製膜する必要がある。該方法により製膜することにより、光学的異方性のポリベンザゾール系ポリマー溶液のみを用いて製膜した場合に発生する流動方向にポリマー分子鎖が配向し、この分子鎖の配向により発現されるフィルムのフィルムの長手方向と幅方向との機械的物性バランスが崩れるという従来公知技術の欠点及びダイ押出し時等に発生するフィルム表面の荒れが著しく改善される。
ポリベンザゾール系溶液が光学的に等方性であるかどうかの確認は、該溶液をスライドガラス上に薄く延ばしカバーガラスで挟んだプレパラートを偏光顕微鏡により直交ニコル下での観察することにより行う。すなち、光学的に異方性を示す液晶状態であれば、サンプルステージを回転させると液晶構造に由来するドメイン構造が観察され明視野となるが、光学的に等方性な溶液であればサンプルステージを回転させても暗視野のままであり、両者違いを区別することができる。
本発明においては、積層ポリベンザゾール系フィルムは前記した光学的に等方性を示す溶液と光学的に異方性を示す溶液から製膜する。光学的に異方性を示す溶液と光学的に等方性を示す溶液を共押出により積層し薄膜状に成形してもよいが、コア層となる光学的異方性の溶液をTダイより薄膜化し、ついで、コア層の両表面に光学的に等方性の溶液を塗布しスキン層を形成してもよい。その後得られた薄膜状積層体を凝固、洗浄および乾燥等を実施することにより積層ポリベンザゾール系フィルムを得ることができる。薄膜状に成形する工程おいては、Tダイ方式やサーキュラーダイ方式等公知の方法により成形することができるが、機械的物性の制御の点で、凝固前に長手方向及びもしくは幅方向の延伸処理を施してもよい。
延伸処理を施す場合は以下の方法が例示できる。すなわち、共押出法によりコア層に光学的異方性を示すポリベンザゾール溶液、両スキン層に光学的に等方性を示すポリベンザゾール溶液からなる積層体を形成し、次いで対抗ロール、圧延装置あるいはプレス装置を介して、少なくとも二枚の支持体の間に該積層体を挟んだ、支持体と積層ポリベンザゾールフィルム前駆体との複合積層構造体を形成する。得られたサンドイッチ状の複合積層体は凝固浴に導かれ、凝固浴中で支持体を剥離、凝固させることを特徴とするものである。対向ロール、圧延装置およびプレス装置等の構成および配置はさまざまな組合わせをとることができる。望ましくは、少なくとも二枚の支持体の間に挟んだ積層ポリベンザゾールフィルム前駆体を、少なくとも一対の対向ロールにはさみ、向かい合ったロールを反対方向に回転させ、支持体/積層ポリベンザゾールフィルム前駆体/支持体のサンドイッチ状の複合積層体を形成する方式である。得られた支持体/積層ポリベンザゾールフィルム前駆体/支持体のサンドイッチ状の複合積層体は、縦延延伸機及びまたはテンター等の横延伸機にて延伸される。
その後、凝固浴に導かれ、凝固浴中で支持体を剥離することにより、該ポリベンザゾール系溶液は凝固される。上記支持体としてはPETフィルムに代表されるポリエステル系フィルムやポリプロピレン(PPともいう)フィルムなどのポリオレフィン系フィルム等のプラスチックフィルムを用いることが出来る。さらに支持体として透湿性を有する多孔質フィルムや布帛、不織布をそのまま、あるいは上記プラスチックフィルム支持体と併用してもよい。プラスチックフィルムを支持体とした場合は支持体剥離後の凝固時間が、多孔質フィルムを単独で支持体とした場合では上記サンドイッチ状の複合積層体を凝固浴に浸漬後支持体剥離までの時間および支持体剥離後の凝固浴浸漬時間が得られる凝固湿潤フィルムの膜構造および物性に影響し重要である。
本発明の積層ポリベンザゾールフィルムでは光学的に異方性のポリベンザゾール系溶液から形成させるコア層の厚みがフィルム全厚み(積層体の全体の厚み)の25〜75%が重要である。コア層の厚みが、フィルム全厚みに対して25%より小さくなると、長手方向及び幅方向の機械的物性のバランスは優れるものの、機械的強度の低下につながる。一方、コア層の厚みが、フィルム全厚みに対して75%より大きくなると、特に長手方向の機械的物性は向上するが、長手方向及び幅方向の機械的物性のバランスが崩れてしまうという問題が生じる。
本発明においては、前記した光学的に異方性を示す溶液を得る為には、ポリマー濃度を8.0〜16.0質量%にするのが望ましい。8%質量%を下回ると光学的異方性が発現しにくく、16質量%をこえると溶液の粘度が上昇し成形加工が困難となる。光学的に等方性の溶液を得るためには、ポリベンザゾール系ポリマーの濃度を0.5〜5質量%にするのが好ましい。より好ましくは3質量%以下である。一方、0.5質量%未満の濃度では、ポリマー溶液の粘度が小さくなり、適用できる製膜方法が限られるほか、得られるポリベンザゾール系フィルムの引張弾性率や引張破断強度及び引張破断伸度等の機械的物性が小さくなるため好ましくない。経済的にも不利になるので、0.5質量%以上が好ましい。溶液濃度が5質量%を超えると溶液の光学的な異方性が発現し易くなり、かつ溶液粘度が増大し成形性が困難となる。
ポリベンザゾール系ポリマー溶液の濃度を上記で示したような範囲に調整するには次に示すような方法をとる事ができる。すなわち、重合されたポリベンザゾール系ポリマー溶液から一旦ポリマー固体を分離し、再度溶媒を加えて溶解することで濃度調整を行なう方法。さらには、ポリ燐酸中で縮合重合されたままのポリマー溶液からポリマー固体を分離することなく、そのポリマー溶液に溶媒を加えて希釈し、濃度調整を行なう方法。さらにはポリマーの重合組成を調整することで上記濃度範囲のポリマー溶液を直接得る方法などである。
ポリマー溶液の濃度調整に用いるのに好ましい溶媒としては、メタンスルホン酸、ジメチル硫酸、ポリ燐酸、硫酸、トリフルオロ酢酸などがあげられ、あるいはこれらの溶媒を組み合わせた混合溶媒を用いることもできる。中でも特にメタンスルホン酸、ポリリン酸が好ましい。
本発明のポリベンザゾール系フィルムを得る為に用いられる、前記ポリベンザゾール系ポリマー溶液中のポリマーの重合度は極限粘度で表される。この極限粘度は15dl/g以上35dl/g以下が好ましく、20dl/g以上30dl/g以下であることがより好ましい。この範囲未満では、得られるポリベンザゾール系フィルムの力学物性が低下し、またこの範囲を越えると、溶液の粘度が高く加工困難となる。
上記の凝固液としては前記した溶液を形成する溶媒と相溶し、かつポリマーの貧溶媒であるものであれば限定されず任意であるが、例えば、水、金属塩水溶液、多価アルコール、非プロトン性極性溶媒、プロトン性極性溶媒等が挙げられる。
凝固されたフィルムはポリマー溶液の溶媒である酸等を含むため、酸の洗浄、除去をおこなう必要がある。洗浄液は通常、水が用いられるが、必要に応じて温水で行ったり、アルカリ水溶液で中和洗浄した後、水等で洗浄してもよい。洗浄は、例えば洗浄液中でフィルムを走行させたり、洗浄液を噴霧する等の方法がある。
本発明における乾燥工程とは、緊張下、定張下フィルムの収縮を制限して行うことが望ましい。自由収縮で乾燥させた場合には、部分収縮がおこるため厚み斑となったり、さらにはフィルムの平面性が損なわれる場合がある。収縮を制限しつつ乾燥するには、例えばテンター乾燥機や金属枠に挟んでの乾燥などをおこなうことができる。乾燥に懸かる他の条件は特に制限されるものではなく、空気、窒素などの加熱気体や常温気体を用いた乾燥方法や、ヒーターや赤外線ランプを用いた乾燥方法等が挙げられる。
フィルム状に成形する工程、凝固工程、洗浄工程および乾燥工程等は連続的に行ってもよく、また、バッチ式で行ってもよい。さらに各工程の間に、その他の特別な工程を加えてもよい。
本発明で用いられるポリベンザゾール系フィルムは、磁気記録層や金属蒸着層などとの接着力を上げるために、アンカー剤を塗布したり、ケミカルエッチング処理、コロナ処理、プラズマ処理などを行ってもよい。
本発明のフィルムには公知の添加剤、たとえば、紫外線吸収剤、熱安定剤、延伸助剤、滑剤などが添加されていてもよい。
本発明における、コア層とスキン層とは同一のポリベンザゾール系ポリマーを使用してもよく、異なるポリベンザゾール系ポリマーを使用してもよい。ポリベンザゾール系ポリマーにおける、ポリオキサゾール系ポリマー、ポリチアゾール系ポリマー、ポリイミダゾール系ポリマーの中から選んだ一種のポリベンザゾール系ポリマーの異方性溶液からコア層を、ポリベンザゾール系ポリマーにおける、ポリオキサゾール系ポリマー、ポリチアゾール系ポリマー、ポリイミダゾール系ポリマーの中から選んだ一種のポリベンザゾール系ポリマーの等方性溶液からスキン層を積層し、本発明のポリベンザゾール系フィルムとすることが出来る。
以下、本発明の内容および効果を実施例によって説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例における測定・評価方法は以下の通りである。
1.極限粘度
メタンスルホン酸を溶媒として、0.5g/lの濃度に調整したポリマー溶液の粘度をオストワルド粘度計を用いて30℃恒温槽中で測定し、算出した。
2.ポリマー溶液の光学的等方性評価
溶液をスライドガラス上にのせ、カバーガラスで挟み薄く伸ばしたものを、偏光顕微鏡を用いた直交ニコル下の観察することにより行った。サンプルステージを回転させても暗視野であり、ドメイン構造が観察されない場合を、光学的に等方性な溶液であると判断した。サンプルステージを回転させることによって暗視野から明視野に変化するドメイン構造が観察される場合、光学的に異方性な溶液であると判断した。
3.微粒子の平均粒子径
微粒子を島津製作所(株)製遠心沈降式粒度分布計SA−CP4を用いて重量平均粒子径を計算することで求めた。
4.引張弾性率、引張破断強度及び引張破断伸度
乾燥後のフィルムを長手方向(MD方向)および幅方向(TD方向)にそれぞれ長さ100mm、幅10mmの短冊状に切り出して試験片とし、引張試験機(島津製作所(株)製オートグラフ(R)、機種名AG−5000A)を用い、引張速度50mm/分、チャック間距離40mmで測定し、引張弾性率、引張破断強度及び引張破断伸度を求めた。
5.フィルムの3次元表面粗さ
フィルム表面を触針式3次元表面粗さ計(SE−3AK、株式会社小坂研究所製)を用いて、針の半径2μm、荷重30mgfの条件下に、フィルムの機械方向にカットオフ値0.25mm測定長1mmにわたって測定し、2μmピッチで500点に分割し、各点の高さを3次元粗さ解析装置(SPA−11)に取り込ませた。これと同様の操作をフィルムの幅方向について2μm間隔で連続的に150回、即ちフィルムの幅方向0.3mmにわたって行い、解析装置にデータを取り込ませた。そして解析装置に3次元平均表面粗さSRaを計算させた。
6.フィルム表面の1μm以上の粗大突起数
フィルム表面にアルミニウムを薄く蒸着した後、Nache社製二光束干渉顕微鏡を用い、400倍で1mmの面積を観察し、突起高さ対応してできる干渉縞をもつ突起を数えた。
7.フィルムの動摩擦係数
20℃、65RH%における動摩擦係数を、ASTM−D1894に準じて測定した。動摩擦係数が0.8以下のフィルムは、滑り性が良好で、作業性に優れる。
8.フィルムの耐スクラッチ性
幅10mm長さ1mに裁断したポリベンザゾールフィルムの両端リードフィルムは接続し、プラスチック性ピンに張力100gf、巻き付け角90度、走行速度150m/分で摩擦させつつ走行させた後、ポリベンザゾールフィルム部の摩擦面にアルミニウムを蒸着して表面の傷の量を実体顕微鏡で観察して、以下の様にランク分けした。
優:傷が全く認められない。
良:かすかに傷が認められるが、極めて微量である。
可:少量の傷が認められる。
不可:多量の傷が認められる。
(ポリベンザゾール溶液の調整)
(1)微粒子含有ポリマー溶液(溶液(A))の作製
1バッチ当たり116質量%のポリリン酸43.86kgに窒素気流下、五酸化二リン14.49kgを加えた後、4,6−ジアミノレゾルシノール二塩酸塩9.10kg、及び、平均粒径2μmにまで微粉化したテレフタル酸7.10kg、及び日本触媒化学工業製の平均粒径200nmの単分散球状シリカ微粒子250gを加え、80℃で槽型反応器内で、撹拌混合した。さらに150℃で10時間加熱混合した後、200℃に加熱した2軸押し出し機を用いて重合し、公称目開き50μmフィルターを通してポリパラフェニレンベンゾオキサゾール(PBO)の14質量%溶液を得た。ポリマー溶液の色は黄色であり、メタンスルホン酸溶液で測定した極限粘度は27dl/gであった。
(2)微粒子を含まないポリマー溶液(溶液(B))
単分散球状シリカを添加しない以外は(1)と同様の方法で、微粒子無添加PBO溶液を得た。得られた溶液の極限粘度は27dl/gであった。
(3)光学的に等方性なポリマー溶液
溶液(A)と溶液(B)を質量比1/3で混合し、ポリリン酸を加えて希釈し、PBO濃度1.0質量%の製膜用ポリマー溶液(溶液(C))を調製した。更に別途溶液(A)と溶液(B)を質量比1/1で混合しポリリン酸を加えて希釈し、PBO濃度1.0質量%の製膜用ポリマー溶液(溶液(D))を調製した。溶液(C)及び溶液(D)はいずれも光学的に等方性を示した。
(実施例1)
マルチマニホールド方式の2種3層積層Tダイ式押出機を用い、コア層に溶液(B)、スキン層に溶液(C)とした積層PBOフィルム前駆体を作製し、0.30m/分の速さで引き取りつつ、20℃の凝固水槽に導入した。凝固水槽中での滞留時間は約2分とし、凝固した積層PBOフィルムは0.31m/分で巻き上げた。さたに凝固させたフィルムを十分に水洗した後にテンターで両端を把持しつつ150℃で30秒間熱固定して厚み5.0μmのPBOフィルムを得た。この際、完成した積層フィルムの全体厚みが約5.0μm、コア層の厚みが2.5μmになるよう、各種溶液の吐出量とリップギャップを調整した。尚、押出し時の溶液温度は170℃となるように設定した。
(実施例2)
コア層の厚みを1.3μmとした以外は実施例1と同様の方法で厚み4.9μmの積層PBOフィルムを得た。
(実施例3)
スキン層のポリマー溶液を溶液(D)とした以外は実施例1と同様の方法で厚み5.0μm、コア層の厚みが2.5μmの積層PBOフィルムを得た。
(比較例1)
溶液(B)をポリリン酸で希釈しPBO濃度1.0質量%溶液(溶液(E))を作製した。この溶液は光学的に等方性であった。この溶液(E)をスキン層とした以外は実施例1と同様の方法で厚み5.0μm、コア層の厚みが2.5μmの積層PBOフィルムを得た。
(比較例2)
溶液(A)をポリリン酸で希釈しPBO濃度1.0質量%溶液(溶液(F))を作製した。この溶液は光学的に等方性であった。この溶液(F)をスキン層とした以外は実施例1と同様の方法で厚み5.0μm、コア層の厚みが2.5μmの積層PBOフィルムを得た。
(比較例3)
コア層の厚みを4.5μmとした以外は実施例1と同様の方法で厚さ5.0μmの積層PBOフィルムを作製した。この際、Tダイから押出されたPBOフィルム前駆体の表面は著しい表面荒れが観察された。このため、三次元表面粗さは測定していない。
(比較例4)
コア層の厚みを1.0μmとした以外は実施例1と同様の方法で厚さ4.9μmの積層PBOフィルムを作製した。
(比較例5)
溶液(A)と溶液(B)を質量比1/3した溶液(溶液(C’))を作製した。溶液(C’)のみを用いて厚み5.2μmのPBOフィルムを作製した。尚、比較例3と比較しフィルムの表面荒れは改善されたが、三次元表面粗さを評価するレベルにはないと判断しSRaは測定していない。
上述の各実施例と各比較例で得たフィルムを評価した結果を表1に示す。
Figure 0004622366
本発明の積層ポリベンザゾール系フィルムは、前記のとおりの構成を採用することにより、滑り性が良好なのでフィルムの取り扱い性や磁気テープにした時などの走行性が良好で、かつ表面が平滑で粗大突起を持たないので磁気記録特性が良好なので磁気記録用の薄膜基材フィルムとして有用である。また、極めて高い引張弾性率を持ち薄膜で用いることができるので、特に高容量の磁気記録用媒体の基材フィルムとして有用である。

Claims (5)

  1. 偏光顕微鏡を用いた直交クロスニコル下での観察で溶液試料を回転させて暗視野から明視野に変化するドメイン構造が観察される光学的に異方性のポリベンザゾール系溶液から形成したコア層と該コア層の両表面に微粒子をポリベンザゾール系ポリマーに対して0.20〜2.00質量%含有した偏光顕微鏡を用いた直交クロスニコル下での観察で溶液試料を回転させても暗視野でありドメイン構造が観察されない光学的に等方性であるポリベンザゾール系溶液から形成したスキン層とで構成され、コア層の厚みがフィルム全厚みの25〜75%であることを特徴とするポリベンザゾール系フィルム。
  2. ポリベンザゾールがポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾールであり、下式(1)〜(6)の全てを満たす請求項1記載のポリベンザゾール系フィルム。
    (1)長手方向および幅方向の引張弾性率≧10.0GPa、
    (2)長手方向および幅方向の引張破断強度≧350MPa、
    (3)長手方向および幅方向の引張破断伸度≧10%、
    (4)0.85≦(幅方向の引張弾性率)/(長手方向の引張弾性率)≦1.20、
    (5)0.85≦(幅方向の引張破断強度)/(長手方向の引張破断強度)≦1.20、
    (6)0.85≦(幅方向の引張破断伸度)/(長手方向の引張破断伸度)≦1.20。
  3. フィルム表面の少なくとも一方面の3次元平均粗さSRaが5nm以上かつ50nm以下であり、1μm以上の粗大突起が10個/mm2以下であることを特徴とする請求項1、2記載のポリベンザゾール系フィルム。
  4. 偏光顕微鏡を用いた直交クロスニコル下での観察で溶液試料を回転させて暗視野から明視野に変化するドメイン構造が観察される光学的に異方性のポリベンザゾール系溶液からコア層を形成し、該コア層の両表面に微粒子をポリベンザゾール系ポリマーに対して0.20〜2.00質量%含有した偏光顕微鏡を用いた直交クロスニコル下での観察で溶液試料を回転させても暗視野でありドメイン構造が観察されない光学的に等方性であるポリベンザゾール系溶液からスキン層を積層形成する工程を含むことを特徴とするポリベンザゾール系フィルムの製造法。
  5. 光学的に異方性のポリベンザゾール系ポリマー溶液のポリマー濃度が8.0〜16.0質量%、光学的に等方性ポリベンザゾール系ポリマー溶液の濃度が0.5から5質量%である請求項に記載の積層ポリベンザゾール系フィルムの製造法。
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