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JP4633930B2 - タンパク質工学 - Google Patents
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Description

【0001】
発明の分野
本発明は、タンパク質工学に適したタンパク質を同定する方法に関する。特に、本発明は、タンパク質を三次構造的外観によって同定するコンピュータデータベース検索法、さらに、そのようにして同定されたタンパク質を1種以上の望ましい特性を有するように改変する方法に関する。本発明は、サイトカイン模倣体などの人工タンパク質に関するが、それに限定されるわけではない。
【0002】
発明の背景
タンパク質は、生化学反応の酵素触媒作用、核酸の転写および複製の制御、ホルモン調節、シグナルトランスダクションカスケードおよび免疫応答時の抗原識別などの多様な生物学的プロセスに極めて重大なかかわりを有しているために、生命現象の中心となっている。
【0003】
多くの場合、それらの必要な「機能領域」と称されるタンパク質の1つ以上の構造領域が、ある特定の機能を果たしている。これらの領域は、タンパク質酵素の活性部位、転写因子の核酸結合ドメイン、特定のサイトカインレセプターとの結合に重要なタンパク質サイトカイン領域、または抗原レセプターの抗原結合領域を構成し得る。
【0004】
タンパク質の機能領域は、通常、その特定の機能を果たすのに必要とされる、すなわち、その機能を果たすのに必須である1個以上のアミノ酸を含んでいる。 多くの場合、それらの必要なアミノ酸残基は、トポグラフィー上では互いに隣接しているが、一次アミノ酸配列に関しては明確に離れている、すなわち、連続していない。さらに、あるタンパク質の機能領域が2つ以上存在する場合、これらの領域もトポグラフィー上では隣接しているが、一次アミノ酸配列に関しては明確に離れている。しかし、ある特定の機能に2つ以上の機能領域が関与している場合には、これらの機能領域は、トポグラフィー上でも十分に離れていることもある。これは、サイトカインの機能領域に関して特に重要な点である。
【0005】
本明細書に使用する場合、「サイトカイン」は、同種細胞表面レセプターをすると共に、細胞の成長、死滅および分化に関する多様なプロセスの開始、制御および調節に関与する可溶性タンパク質分子を一部として包含する。サイトカインは、典型的には、インターフェロン(例えば、IFN−γ)、インターロイキン(例えば、IL−2、IL−4およびIL−6)、成長および分化因子〔例えば、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)およびエリトロポエチン(EPO)〕ならびに成長ホルモン(GH)、プロラクチン、TGF−β、腫瘍壊死因子(TNF)およびインスリンなどの他のものによって例示される。これらの分子は、それぞれ、特定のレセプターに結合し、それによって、ある特定の生物学的応答または一連の応答を誘起させ得る。
【0006】
あるタンパク質のある特定の機能がそのタンパク質の1つ以上の機能領域によるという事実が、あるタンパク質の機能を改変するために機能領域を付加または削除して、そのタンパク質を改変することを目的とする戦略の基礎となっている。
【0007】
これに関して、多くのサイトカイン−サイトカインレセプター相互作用が多様な生物学的プロセスの調節に極めて重要であるために、サイトカイン模倣体の設計および人工合成が極めて重要な研究分野となっている。したがって、新規な模倣体は、サイトカイン−サイトカインレセプター相互作用に対する生物学的応答を模倣または阻害する重要な新規治療薬になると予想される。
【0008】
「模倣体」とは、別の分子に類似しているか、もしくは別の分子より強力な生物学的応答を誘起する(「アゴニスト」)か、または他の分子の作用を阻害する(「アンタゴニスト」)分子である。他の分子とは、例えば、サイトカインであってよい。
【0009】
サイトカインをベースとする模倣体の設計および人工合成に関して、多くの人工模倣体がしばしば遭遇する問題は、それらの模倣体の生物学的半減期が短く、したがって、生体利用率および効力が極めて低いことである。これに関して、システインリッチな小タンパク質が、それらの安定性の故に、模倣体を人工的に合成するためのベースとしてのタンパク質の「足場」として有用であり得ることが提唱された(Vitaら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,第92巻,6404ページ,1995年)。これらのシステインリッチな小タンパク質は、ジスルフィド結合したコアと、タンパク質表面に露出されたアミノ酸側鎖とを含んでいる(Neilsenら,J.Mol.Biol.,第263巻,297ページ,1996年)。しかし、これらのタンパク質の潜在能力は、典型的な従来技術のタンパク質工学法がループやヘリックスまたはβシートなどの個々の二次構造要素内の隣接アミノ酸群の転移または置換に限られており、かつ、最も適切なジスルフィドリッチな候補を選択するための設計戦略が存在していないために、十分に実現されてはいない。
【0010】
上記従来法の例としては:アンギオゲニンにRNアーゼ活性を付与する(Harperら,Biochemistry, 第28巻,1875ページ,1989年)か、または、RNアーゼにアンギオゲニン活性を付与する(Rainesら,J.Biol.Chem.,第270巻,17180ページ,1995年)ためのRNアーゼとアンギオゲニンとの間の二次構造領域の交換;エラスターゼのプロテアーゼインヒビターループをIL−1β骨格に転移させることによるIL−1βへのエラスターゼ阻害活性の挿入(Wolfsonら,Biochemistry,第32巻,5327ページ,1993年);枯草菌(Basillus subtilis)中性プロテアーゼへのサーモリシンの10アミノ酸カルシウム結合ループの挿入(Tomaら,Biochemistry,第30巻,97ページ,1991年);カリブドトキシンのβシートと置換するための蛇毒由来のβシートの挿入(Drakopolouら,J.Biol.Chem.第271巻,11979ページ,1996年);およびカリブドトキシンのβシートへの炭酸脱水酵素由来のβシートの組込み(Pierretら,J.Med.Chem.,第352巻,2145ページ,1995年)が挙げられる。
【0011】
タンパク質工学においては、低分子および高分子の3D(三次元)構造の解明と相まってコンピュータベーステクノロジーの使用が重要度を増している。X線結晶学およびNMR技術などにより、3D分子構造が急速に生成されている。これらの3D構造は、BROOKHAVENデータベースなどの一般的にアクセス可能な検索可能データベースに格納することができる。
【0012】
本明細書の目的に合ったデータベースは、「エントリ」コレクションを含んでおり、各エントリは、枠組みタンパク質(framework protein)の3D構造外観の表示に対応する。枠組みタンパク質とは、単に、実験的解明またはコンピュータモデリングなどの予測手段により3D構造が存在することがわかっている任意のタンパク質である。枠組みタンパク質は、特定の機能を付与するために構造を改変し得る骨格として有用である。
【0013】
本明細書において「クエリ(query)」とは、目的とする機能を示すタンパク質の3D構造外観の表示を指す。3D構造の表示は、「ヒット」を同定する目的でデータベースを検索するのに適した形式である。ヒットとは、検索の実施に用いられる特定のクエリおよびアルゴリズムに従って同定されるエントリである。
【0014】
3D構造を、「デカルト空間」ではなく、「距離空間」に位置する原子間の関係の点から表示することによって、データベース検索における重要な進歩が達成された(Jakes & Willett,J.Mol.Graphics,第4巻,12ページ,1986年;Ho& Marshall,J.Comp.Aided.Mol.Des.,第7巻,3ページ,1993年)。デカルト空間における位置は3つの座標(x、y、z)によって定義されており、各座標は、それぞれ3つの軸(X、Y、Z)に沿った位置に対応しており、各軸は他の2つの軸に対して直角に配向されている。
【0015】
しかし、距離空間における位置は、距離行列の形式で表されると共に、原子間の距離を詳述する原子間距離によって定義されている。したがって、距離行列は座標独立性であり、距離行列間の比較は、デカルト空間を用いた場合に要求されるような特定の基準座標系に制限されずに行うことができる。
【0016】
原子の配置およびその鏡像が同一の距離行列で記述されることを強調することは重要である。このあいまいさは、二乗平均平方根値(RMS)を用いて軽減することができる。
【0017】
タンパク質の3D構造に関して、McKieら,Peptides:Chemistry,Structure & Biology,354−355ページ,1995年で論じられているように、3D構造を「Cα−Cβベクトル」に換算することにより、タンパク質構造を簡素化することができる。Cα−Cβベクトルは、3D空間中に位置を占め、その位置は、アミノ酸のα炭素原子とβ炭素原子の間の共有結合の配向によって定義される(Lauri & Bartlett,J.Comp.Aid.Mol.Des.,第8巻,51ページ,1994年)。タンパク質を構成する(グリシン以外の)20個の天然構成アミノ酸は、それぞれ、「中心の」α炭素と構成成分側鎖のβ炭素との間の共有結合のためにCα−Cβを有していることが理解されよう。
【0018】
データベース中のGlyを含むタンパク質に関しては、GlyをAlaに変異させて、データベース検索に要求されるCα−Cβベクトルを生成させることができる。
【0019】
Cα−Cβベクトルの有用性は、これらのベクトルが3D構造を簡素化させることである。したがって、タンパク質のある機能領域のアミノ酸側鎖のみをCα−Cβベクトルマップによって表示するだけでよく、それによって、その特定の機能に直接関与しないタンパク質の実質的な部分が除外される。Cα−Cβベクトルは、必要とされる基本的な3D構造情報を構成しているので、データベース検索のためには理想的である。
【0020】
タンパク質またはその機能領域に対応するCα−Cβベクトルを同定した後、クエリに応答して迅速に検索を実施し得るように、各ベクトルを特徴付けるパラメータをデータベースに記憶させなければならない。Cα−Cβベクトルの適当な表示には、データベースエントリとしてまたはクエリとして以下のようなオプションが利用可能である。
【0021】
(A) 距離行列
(B) 各Cα−Cβベクトル間に形成された二面角
(C) 各Cα−Cβベクトル間に形成された角度α1およびα2
これらの表示についての簡単な説明が、Lauri & Bartlett,1994年(前掲)に提供されており、この文献は以下に文献援用される。データベース検索を成功させる秘訣は速度と効率である。したがって、データベース中のおびただしいエントリの大部分を予備スクリーニングステップで除去する方法を用いるコンピュータ検索アルゴリズムが開発された。
【0022】
これらのアルゴリズムは、コンピュータ資源を要求しており、したがって、検索は、通常、2つの段階で実行される。
(1) ヒットを構成しないエントリを除去するためのスクリーニング検索
(2) 1つ以上のヒットを同定するための、クエリと(1)で除去されなかった各エントリとの原子単位での比較
【0023】
(1)での検索により、エントリを、クエリの幾何属性(Lesk,Commun.ACM,第22巻,219ページ,1979年)、原子間距離および原子の種類(Jakes & Willett,1986年,(前掲))、芳香族性、ハイブリッド形成、結合性、電荷、孤立電子対の電子の位置、または環構造の質量中心(Sheridanら,Proc.Natl.Acad.Sci.,第86巻,8165ページ,1989年)に基づいてスクリーニングすることができる。このスクリーニング法により、クエリの3D制約条件を満足する見込みのないエントリが排除されるであろう。
【0024】
この方法は、迅速ではあるが、エントリをヒットとして登録するためには、エントリが、指定されたどのクエリ成分をも含んでいなければならないことを必要とする。クエリ成分の数が増大するにつれ、ニアミスの数も増大し、ヒットを見つけ出す可能性が減少する。
【0025】
最近、検索プログラムFOUNDATION(Ho & Marshall,1993年,(前掲))によって、各ニアミスと各ヒットの相対メリットを査定するさらに有用な検索法が提供された。FOUNDATIONは、3D構造特徴における種々の原子および/または結合の座標からなるユーザー定義クエリに対するエントリについて3Dデータベースを検索するクリーク検出アルゴリズムを用いる(種々のアルゴリズムが、Brint & Willett,J.Mol.Graphics,第5巻,49ページ,1987年、およびBrint & Willet,Chem.Inf.Comput.Sci.,第27巻,152ページ,1987年で検討、比較されている)。FOUNDATIONは、ヒットとしてユーザー指定の最小数のマッチング原子および/または結合の組合せを含むすべての可能なエントリを同定する。
【0026】
構造的に関連するタンパク質を同定する手段としての3Dデータベース検索の有用性にも拘わらず、この方法は、所望の機能を有するタンパク質の人工合成に関して十分に利用されてはいない。
【0027】
発明の目的
本発明者らは、3Dデータベース検索が1つ以上の所望の構造特徴を有するタンパク質の同定に有用であると共に、そのようなタンパク質が、その後、所望の特性または機能を有するタンパク質を人工合成するための候補「枠組み」であることを確認した。さらに、本発明者らは、タンパク質工学が、ループまたはへリックスなどの二次構造の全要素を組み込むよりも、ある特徴、特性または機能に必要な特定のアミノ酸残基を組み込んで枠組みタンパク質を改変することによって、もっとも良く達成されることを認めた。これは、機能的に重要なアミノ酸がタンパク質中に散らばっており、一次または二次構造の特定の領域に制限されていない場合に特に適している。
【0028】
したがって、本発明の目的は、新規なタンパク質工学法を提供することである。
発明の要旨
1つの態様において、本発明は以下のステップから成るタンパク質工学法に関する。
【0029】
(i) 複数のエントリを含み、各エントリが枠組みタンパク質のアミノ酸残基側鎖の3D空間における位置および配向の記述に対応するコンピュータデータベースを構築するステップであって、各側鎖の位置および配向がCα−Cβベクトルとして簡略化されるステップ
【0030】
(ii) サンプルタンパク質のある機能に必要な該サンプルタンパク質の2つ以上のアミノ酸残基それぞれの側鎖の3D空間における位置および配向の記述に対応するクエリを作成するステップであって、各側鎖の位置および配向がCα−Cβベクトルとして簡略化されるステップ
【0031】
(iii) 該クエリを使ってデータベースを検索し、それによって1つ以上のヒットを同定するステップであって、該ヒットのうち少なくとも1つが、該サンプルタンパク質と構造類似性を有する各枠組みタンパク質に対応するステップ
【0032】
好ましくは、枠組みタンパク質は内部ジスルフィド結合を形成し得る。より好ましくは、枠組みタンパク質は、2〜11のジスルフィド結合を有し、70以下のアミノ酸を含むシステインリッチな小タンパク質である。
【0033】
別の態様において、本発明は以下のステップから成るタンパク質工学法を提供する。
(i)複数のエントリを含み、各エントリが内部ジスルフィド結合を形成し得る枠組みタンパク質のアミノ酸残基の3D空間における位置および配向の記述に対応するコンピュータデータベースを構築するステップ
【0034】
(ii)サンプルタンパク質のある機能に必要な該サンプルタンパク質の2つ以上のアミノ酸残基の3D空間における位置および配向の記述に対応するクエリを作成するステップ
【0035】
(iii)該クエリを使ってデータベースを検索し、それによって1つ以上のヒットを同定するステップであって、該ヒットのうち少なくとも1つが、該サンプルタンパク質と構造類似性を有する各枠組みタンパク質に対応するステップ
【0036】
好ましくは、枠組みタンパク質は、2〜11のジスルフィド結合を有し、70以下のアミノ酸を含むシステインリッチな小タンパク質である。
好ましくは、枠組みタンパク質および前記サンプルタンパク質の各アミノ酸側鎖の位置および配向が、Cα−Cβベクトルとして表される。
【0037】
上記第1および第2の態様に適用可能な1つの実施態様において、本発明の方法は、ヒットに対応する枠組みタンパク質のアミノ酸配列を、該枠組みタンパク質の少なくとも1つのアミノ酸残基をサンプルタンパク質の少なくとも1つのアミノ酸残基で置換して改変するステップを含む。
【0038】
サンプルタンパク質の少なくとも1つのアミノ酸残基が、サンプルタンパク質の機能領域の少なくとも一部を構成するのが好ましい。
枠組みタンパク質のアミノ酸残基を置換するサンプルタンパク質のアミノ酸残基のうちの少なくとも2つが一次配列中で隣接していなければなお好ましい。
【0039】
改変枠組みタンパク質はサンプルタンパク質よりも安定性が増大していることが望ましい。
そのようにして改変された枠組みタンパク質は、サンプルタンパク質との構造類似性が増大しているのが好ましい。
【0040】
改変された枠組みタンパク質は、サンプルタンパク質の機能に類似する機能か、またはその機能を阻害する機能を示し得るのが有利である
つの実施態様において、サンプルタンパク質は、GH、IL−4、IL−6およびG−CSFからなる群から選択されるサイトカインである。
【0041】
さらに別の態様において、本発明は、枠組みタンパク質の70以下のアミノ酸残基および枠組みタンパク質の2〜11のジスルフィド結合を含むと共に、一次配列中で隣接していない別のタンパク質の機能領域の少なくとも一部を構成する2つ以上のアミノ酸を含む人工タンパク質を提供する。
【0042】
人工タンパク質は上記の別のタンパク質より高い安定性を有しているのが好ましい。
人工タンパク質が、上記別のタンパク質に類似する機能か、またはそのタンパク質を阻害する機能を示すものであればなお好ましい。
【0043】
1つの実施態様において、上記別のタンパク質は、GH、IL−4、IL−6およびG−CSFからなる群から選択されるサイトカインである。
1つの特定の実施態様において、人工タンパク質は、SCY01、SCY02、SCY03、ERP01、ERP02、ERP03およびVIB01のアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0044】
さらに別の態様において、本発明は、タンパク質構造データベースを検索するためのコンピュータプログラムに関する。
1つの実施態様において、このコンピュータプログラムは、複数のエントリを含み、各エントリが2つ以上のCα−Cβベクトルの距離行列表示に対応する、タンパク質データベースを検索するためのものであり、このプログラムは以下のステップから成る。
【0045】
(i) 2つ以上のCα−Cβベクトルの距離行列表示に対応するクエリと各データベースエントリとを比較するステップ
(ii) クリーク検出により、クエリと各エントリとの間でマッチした最小数のCα−Cβベクトルによって定義されるヒットを同定するステップ
【0046】
特に断りのない限り、本明細書および付随する請求の範囲全体を通じて、「含む」および「含んでいる」とは、包括的に用いられており、したがって、記載されている整数または整数群は、他の整数または整数群を除外するものではない。
【0047】
また、本明細書および特許請求の範囲全体を通して、科学用語は通常の科学的意味を示すが、本文中、いくつかの用語は、当業者による解釈を支援するように定義される。
【0048】
好ましい実施態様の詳細な説明
本発明は少なくとも一部が、タンパク質工学によるさらなる改変に適した枠組みタンパク質を同定するためには、エントリのサブジェクトであるサンプルタンパク質の構成アミノ酸側鎖に関して、枠組みタンパク質の構成アミノ酸側鎖の3D空間における配向に従ってデータベースを検索するのが有利であるという本発明者らの認識に基づいて説明されていることが理解されよう。そのようにして同定された枠組みタンパク質「ヒット」は、トポグラフィーおよび化学などに関してサンプルタンパク質「クエリ」との類似性を適切に共有しており、したがって、さらなる改変に適した候補であると言える。本発明の特定の態様では、改変された枠組みタンパク質が、向上された安定性などの1つ以上の望ましい特性と、場合によって、サンプルタンパク質と類似する機能、またはサンプルタンパク質を阻害する機能とを示し得る。
【0049】
上記第1および第2の態様の方法に関して、各エントリは、Cα−Cβベクトルの距離行列表示形式の記述に対応するのが好ましい。
あるいは、Cα−Cβベクトルは、二面角またはα1およびα2角で表示してもよい。
【0050】
本明細書に使用する場合、「タンパク質」および「ポリペプチド」は、アミノ酸ポリマーに関して交換可能に用いられている。「ペプチド」とは、50以下のアミノ酸を有するタンパク質である。
【0051】
本明細書に使用する場合、「枠組みタンパク質」とは、サイズ、溶解度および/または安定性を含む利点を提供する1つ以上の望ましい構造的特徴を示す任意のタンパク質である。この文脈での「安定性」には、タンパク質分解酵素および/もしくは温度変動による分解に対する耐性ならびに/またはカオトロピック剤および/もしくは変性界面活性剤、pH変化、pH極値、および/またはレドックス極値および/もしくは変化による変性に対する耐性が含まれる。
【0052】
枠組みタンパク質は、内部ジスルフィド結合を生成し得る。好ましくは枠組みタンパク質が、70以下のアミノ酸を含み、かつ2〜11のジスルフィド結合を有するが、これはシステインリッチな小タンパク質の例である。
【0053】
各エントリの作成に用いられるアミノ酸は、枠組みタンパク質構成アミノ酸の一部またはすべてを含み得る。
本明細書に使用する場合、「サンプルタンパク質」とは、タンパク質をタンパク質工学用に望ましいものとする1つ以上の目的機能特性を有するタンパク質である。
【0054】
サンプルタンパク質は、酵素、核酸結合タンパク質、サイトカイン、抗原、レセプター、イオンチャンネル、シャペロニン、または目的とする機能を有する任意のタンパク質であるのが適当である。
【0055】
1つの実施態様において、サンプルタンパク質は、GH、IL−4、G−CSF、IL−6およびEPOからなる群から選択されるサイトカインである。
サンプルタンパク質の機能は、特定のレセプターに結合し、それによって生物学的応答を誘起させることを含むのが好ましい。しかし、触媒作用、カチオン(Zn++、Ca++、Mg++)の結合、イオン(例えば、Cl−、K+、Na+)の輸送、脂質の結合、転写調節またはDNA複製調節の手段としての核酸の結合、タンパク質の折り畳みおよび輸送の支援、ならびにタンパク質が達成する他の機能などの、多様な他の機能も考えられる。
【0056】
クエリの作成に関して、前記各クエリは、Cα−Cβベクトルの距離行列表示形式での記述に対応するのが好ましい。しかし、二面角またはα1およびα2角などの他の表示も適当である。
【0057】
データベースの検索に用いられるコンピュータプログラムは、以下に詳細に説明するようなVECTRIXプログラムであるのが好ましい。VECTRIXには、FOUNDATIONアルゴリズム〔Ho & Marshall,1993年,(前掲)(この文献は、本明細書に文献援用される)〕が組み込まれている。FOUNDATIONプログラムは、ユーザー指定の最小数のユーザー定義クエリマッチング要素の任意の組み合わせを含む構造を同定するために、有機低分子の3Dデータベースを検索する。これは、先ず、距離行列を使ってクエリ原子のトポグラフィーを定義し、次いで、その構造の化学的性質を定義する種々のクエリ制約条件を用いてスクリーニングすることによって達成される。この場合も、その構造中の原子のトポグラフィーは、距離行列を用いて表示される。距離の記述がエントリのものとマッチする、データベース中の構造フラグメントは、グラフ理論(Gibbons Algorithmic Graph Theory,Cambridge University Press:Cambridge,1988年)を用いて同定される。
【0058】
グラフ理論において、グラフとは、辺によって接続されたノード(頂点)からなる構造である。グラフは、すべてのノードが互いに接続されたときに完全に接続される。サブグラフは、大きなグラフの任意のサブセットである。任意のグラフの最大の完全接続サブグラフはクリークと称される。したがって、クエリは、すべての原子間距離が距離行列で測定されるので、完全に接続されたグラフである。次のタスクは、少なくともユーザー定義数のマッチングノードを含むすべてのクリークを検出するために構造データベースを検索することである。
【0059】
多くのクリーク検出アルゴリズムが存在する。よく知られている手順には、Bonner,IBM J.Res.Develop.,第8巻,22ページ,1964年;Gerhards & Lindenberg,Computing,第27巻,349ページ,1981年;およびBron & Kerbosch,Commu.ACM,第16巻,575ページ,1973年によるものが含まれる。コンピュータ計算化学者は、データベース中の3D構造の検索を容易にするために、上記アルゴリズムを適合するかまたは類似の考えを実行した(Kuntzら,J.Mol.Biol.,第161巻,269ページ,1982年;DesJarlaisら,J.Med.Chem.,第31巻,722ページ,1988年;DesJarlaisら,Proc.Natl.Acad.Sci.,第87巻,6644ページ,1990年;Crandell & Smith,J.Chem.Infr.Comput.Sci.,第23巻,186ページ,1983年;Brint & Willett,J.Mol.Graphics,第5巻,49−56ページ,1987年;Kuhlら,J.Comput.Chem.,第5巻,24ページ,1984年;およびSmellieら,J.Chem.Inf.Sci.,第31巻,386ページ,1991年)。
【0060】
コンピュータデータベース検索
VECTRIX
本発明者らは、Ho & Marshallによって、J.Comp.Aided.Mol.Des.,第7巻,3−22ページ,1993年に記載されているようなプログラムFOUNDATIONのクリーク検出アルゴリズムの変形版であるプログラム「VECTRIX」を作成した。この検索手順は図式Aに示されている。Ho & Marshall,1993年,(前掲)と比べて変っている主な点には以下が含まれる。
【0061】
・ クエリおよびデータベースは共にタンパク質である。
・ クエリ要素は、FOUNDATIONにおけるような個々の原子ではなく、Cα−Cβベクトルのトポグラフィーを定義する距離行列である。
同様に、データベース構造も、FOUNDATIONにおけるような原子毎ではなく、Cα−Cβベクトル距離行列と定義される。
【0062】
・ FOUNDATIONにおいては、クエリの原子対は、原子の種類および原子対間の距離がマッチしていれば、データベース中のエントリの原子対とマッチするとみなされ;VECTRIXでは、クエリのCα−Cβベクトル対は、このベクトル対間の4つの距離(Cα1−Cα2;Cα1−Cβ2;Cβ1−Cα2;Cβ1−Cβ2)がマッチしていれば、データベース中のエントリのCα−Cβベクトル対とマッチするとみなされる。
【0063】
・ FOUNDATIONプログラムは、クリーク検出、立体フィルタリングおよびサブセットフィルタリングを一緒に実行し、これら3種の基準を満足するヒットを出力する;設計として、VECTRIXプログラムは、MIN_MATCH以上のマッチ数を有するすべてのヒットを出力する。次いで、POSTVECを用い、それらのヒットを、立体フィルタリング、新規MIN_MATCHおよびサブセットの考察に基づいてフィルターする;クリーク検出ヒットとフィルタリングプロセスとを分離させることにより、VECTRIXプログラムはよりフレキシブルになる。
【0064】
本発明者によって書かれたプログラムの概略は、図式Aに示されている。
VECTRIXプログラムは4種のパラメータを必要とする:(1)query.file;(2)database.file;(3)steric.fileおよび(4)MIN_MATCH。これらのパラメータを以下に詳細に説明する。
【0065】
(1) query.file
(例えば、表1におけるような)query.fileは、クエリの定義、各クエリ原子の許容度の定義、およびサブセットの定義を含む。これら3種の定義を以下に説明する。
【0066】
クエリ定義: VECTRIXプログラムを実行する前に、特定の標的タンパク質を選択する。標的タンパク質の三次構造は、当業において周知の実験的または理論的手段により決定されている筈である。標的タンパク質の機能性アミノ酸を定義し、それらの機能性残基用のCα−Cβベクトルを抜き出してquery.fileに入れなければならない。表1は、4つの機能性残基のCα−Cβベクトルの定義を示している。第7、第8および第9列の数字は、それぞれ、ベクトルのx、yおよびz座標を表している。
【0067】
許容度定義: 許容度は、各原子の配向における許容可能な不確定性を範囲限定する。原子Aから原子Bまでのベクトルの最終許容度は、原子AとBの個々の許容度の合計である。表1において、個々の原子の許容度は、第10列では0.5Åと定義されており、したがって、2個の原子間の距離の許容度は1.0Åである。
【0068】
サブセット定義: 原子のリストはSUBSETにグループ分けすることができる。query.fileは、必要とされる限り多くのSUBSETの定義を見込んでいる。SUBSET定義は、POSTVECプログラムにおいて、より関連性の高いヒットを得るためにヒットをフィルターするのに用いられる。表1において、第1SUBSETコマンドはサブセット1と定義され、Cα−Cβベクトル番号1、3および4からなる。第2SUBSETコマンドはサブセット2と定義され、Cα−Cβベクトル番号2からなる。
【0069】
(2) database.file
database.fileは、データベースを構成するエントリに対応するファイル名のリストを含んでいる。
(3) steric.file
steric.fileは、リガンドまたはレセプター空間を表示するグリッド点の座標を含んでいる。レセプターまたはリガンドの3D構造の利用可能性に基づいて2つの形式の立体フィルタリングが存在する。レセプターの構造が分っており、かつ、クエリがリガンドのレセプター結合アミノ酸側鎖に対応するCα−Cβベクトル由来である場合、ヒットは、例えば、レセプターがサイトカインと結合するとアクセスする3D空間に該ヒットが侵入するかどうかについて評価しなければならない(レセプターベースフィルタリング)。さらに、リガンドの構造が分っており、かつ、クエリがリガンドのレセプター結合アミノ酸側鎖に対応するCα−Cβベクトル由来である場合、ヒットは、リガンドが占めていない3D空間に侵入するかどうかについて評価しなければならない(リガンドベースフィルタリング)。このモードは、「steric.file」の第1行で識別される。本発明の立体フィルタリングアルゴリズムの第1ステップは、プログラムPREPARE_STERIC_FILTERを用いてリガンドまたはレセプターの3D空間を表示するグリッド点を計算することである。このプログラムは、先ず、x、yおよびz次元における最大および最小を決定することにより構造の限界を範囲限定する。次いで、限界内の各グリッド点(1Å間隔)に対して、そのグリッド点がレセプターまたはリガンドと立体接触している場合には、xyz座標を「steric.file」に出力する。
【0070】
(4) MIN_MATCH
MIN_MATCHは、VECTRIXがクリークをヒットとみなす前に要求されるクエリとデータベース中のエントリとの間でマッチする最小数のCα−Cβベクトルを定義する整数である。
【0071】
適切なパラメータを入力した後、VECTRIXプログラムの最初のステップは、クエリのCα−Cβベクトル距離行列を計算することである(図式A参照)。次いで、各データベースエントリを読出して、枠組みタンパク質のCα−Cβ距離行列を計算する。Ho & Marshall,1993年,(前掲)のクリーク検出アルゴリズムを用いて、クエリとデータベースエントリとの間の幾何マッチを同定する。マッチが検出されない場合、別のデータベースファイルを読出して処理する。ヒットが検出された場合には、クリーク検出アルゴリズムがクエリのCα−CβベクトルとマッチするCα−Cβを有するエントリのみを検出するので、いくつかのさらなる処理が必要になる。このアルゴリズムは、立体整合性(steric integrity)、すなわち、各ヒットが存在していなければならない3D空間に関して有している構造相補性についてはチェックしない。VECTRIXプログラムは、「steric.file」を用いて、レセプターベースまたはリガンドベースのフィルタリングモードであるかどうかに応じて、レセプター空間すなわち非リガンド空間に侵入するヒット中の原子数を計算する。枠組みタンパク質には、「マッチング」機能性残基を介して標的タンパク質に結合するのに必須ではない部分がある。必須でない部分としては、マッチには存在しない側鎖、マッチした残基または最初のシステイン残基までのNまたはC末端残基が含まれる。残基の必須原子は、主鎖原子(N、H、CA、HA、C、O)およびCA原子に結合している側鎖原子(CB、1HAおよび2HA)である。必須残基は、最初のシステインと最後のシステインの間にある。タンパク質中にシステインが全く検出されない場合、必須残基は、最初のマッチ残基と最後のマッチ残基の間にあるとみなされる。VECTRIXプログラムは、必須原子数およびレセプター空間すなわち非リガンド空間に侵入する必須原子数を計数し、出力する。さらに、VECTRIXプログラムは、query.fileに定義されているベクトルの各サブセットについて、サブセット中のマッチしたベクトルの数を計数し、出力する。その結果は、出力ファイルに書き込まれ、次いで、別のデータベースエントリが読出され、このプロセスは、データベースの最後に到達するまで繰り返される。
【0072】
POSTVEC
設計により、VECTRIXプログラムは、MIN_MATCH以上のマッチ数を有するすべてのヒットを出力する。POSTVECプログラムは、VECTRIX後フィルタリング用に書かれている。このフィルタリングは、query.fileに定義されている各SUBSETの立体接触、新規マッチ数およびマッチ計数に基づいている。POSTVECプログラムは、少なくとも3種のパラメータ、すなわち:
【0073】
postvec vectrix_out.file min_match max_invade_fraction
<subset1_num><subset2_num>...<subsetX_num>
【0074】
を必要とする。この場合:
・ vectrix_out.fileは、vectrix出力ファイルの名前である。
・ min_matchは、必要な新規の最小マッチ数を表す。
・ max_invade_fractionは、レセプター/非リガンド空間の許容可能な侵入最大部分と定義される。すなわち、ヒットは、侵入部分がmax_invade_frac.より大きい場合、例えば、10%に対して0.1になると、リジェクトされる。
【0075】
・ subset1_numは、サブセット1に必要なマッチ数を表す。
・ subset2_numは、サブセット2に必要なマッチ数を表す。
・ 括弧<>は、任意選択パラメータを示す。すなわち、サブセットパラメータは任意選択であり、サブセットパラメータが定義されていない場合には、サブセットのフィルタリングは存在しない。
【0076】
POSTVECの出力は、フィルターされたヒットのpdbファイルである。これらのpdbファイルは、簡単な表示および比較を可能にするクエリファイルと同じ基準座標系にある。
【0077】
Insight IIを用いたヒットの検査
POSTVECから得たヒットを容易に検分することができるように、Insight IIマクロ、EXAMINE_HIT.BCL、が作成された。EXAMINE_HIT.BCLを用いる前に、Insight IIの .psvファイルである、EXAMINE.PSVを創製しなければならない。このファイルは、クエリベクトルと同じ基準座標系中にリガンドまたはレセプターを含んでいる。このファイルは、ヒットを表示するためのバックグラウンドとして用いられる。通常、リガンド/レセプターは、薄い色に設定されており、クエリベクトルは濃い線で強調され、Cαは赤い色、Cβは黄色に彩色されている。Insight IIでは、EXAMINE_HIT.BCLファイルを展開すると、次または前のボタンを介するか、またはヒットのファイル名をクリックすることによりヒットを視覚化する準備ができる。ヒットは、クエリおよびレセプター/リガンドと一緒に表示される。立体接触およびマッチしたベクトルが強調される。
【0078】
VECTRIXプログラムの代替表示が図式Bに示されている。
代案として、他の適当なクリーク検出アルゴリズムが、Brint & Willett,J.Mol.Graphics,1987年,(前掲)およびBrint & Willett,Chem.Inf.Comput.Sci.1987年,(前掲)(これらの文献は本明細書に文献援用される)により提供されている。
【0079】
図式Cに略述されている一連の自動化スクリプトを用い、適当な候補を見つけるためにBROOKHAVENデータベースを検索して、システインリッチな小タンパク質のデータベースを毎週更新する。
【0080】
1つ以上のヒットがクエリに従って上記アルゴリズムによって同定された各エントリに対応しているのが適当である。
ヒットが2つ以上ある場合には、各ヒットを評価し、ランク付けするのが望ましい。ヒットの評価において最も重要な要素は、クエリと比較したときのヒットの「立体整合性」すなわち3D構造相補性である。この目的に利用可能ないくつかのアルゴリズムが開発された。そのようなアルゴリズムには、FOUNDATIONプログラムで使用されたアルゴリズム、各ヒットのファンデルワールスとクエリとのオーバーラップを調べるアルゴリズム〔Alingerら,1972年,(前掲)、(この文献は本明細書に文献援用される)〕または各ヒットおよびクエリに関する共通容量およびエクストラ空間容量を計算するアルゴリズム〔Marshallら,1979年,(前掲)(この文献は本明細書に文献援用される)〕が含まれる。
【0081】
他のアルゴリズムも有用であると考えられる。例えば、重ね合わさせた後のヒットとクエリとの間の単純な距離計算を用いて両者間の3D空間差を同定することができる。
【0082】
現在スコアリングに用いられているプロセスの概略が図式Dに示されている。これらの手順は、POSTVECプログラムからの出力データを後処理するものであるが、これらの手順は、最後には、半自動化プロセスを提供するためにPOSTVECプログラムに組み込まれるであろう。現在のフィルタリングプロセスでは、ステップ1および2は、人工ヒットのコンフォメーション安定性を評価し、ステップ3は、レセプターとヒットとの適合度の最適化をもたらす。このフィルタリングプロセスは、ヒットとレセプター、例えば、サイトカインとサイトカインレセプターとの予測相互作用の点から見たヒットのスコアリングに関して記述されていることに留意されたい。当業者は、図式Dに略述されている原理はどのタンパク質−タンパク質相互作用にも適していることに気付くであろう。例えば、結晶構造が分っていない場合、ヒットがリガンドの立体表面に組み込まれていることを確認するためにスコアリング手順を実行することができる。
【0083】
また、各ヒットの評価およびランク付けは、当業者が手動で実施し得るが、これは、特に、評価かつランク付けすべきヒットが複数ある場合には、あまり好ましくない方法であると考えられる。
【0084】
上述に鑑み、本発明の方法がさらなる改変の主題である枠組みタンパク質「ヒット」を提供することが当業者には理解されよう。
本明細書に使用する場合、枠組みタンパク質ヒットは、アミノ酸配列類似性、トポグラフィー類似性および/または化学類似性を有することによって、サンプルタンパク質との「構造類似性」を有している。例えば、枠組みタンパク質「ヒット」は、サイトカインのレセプター結合領域のものと類似の表面トポグラフィーおよび/または化学を有している。枠組みタンパク質アミノ酸をサンプルタンパク質アミノ酸で置換すると、類似度が好ましく増大される。
【0085】
ヒットとして同定された枠組みタンパク質は、サンプルタンパク質より高い安定性を有している。
本明細書に使用する場合、「安定性」には、タンパク質分解酵素および/もしくは温度変動による分解に対する耐性ならびに/またはカオトロピック剤および/もしくは変性界面活性剤、pH変化、pH極値、および/またはレドックス極値および/もしくは変化による変性に対する耐性が含まれる。
【0086】
本発明の方法のステップ(iii)でクエリの作成に用いられる2つ以上のアミノ酸は、サンプルタンパク質の1つ以上の機能領域の少なくとも一部を構成することが理解されよう。これらのアミノ酸は、ヒットの改変に用いられる少なくとも1つのアミノ酸と同じであっても異なっていてもよい。
【0087】
1つの実施態様において、ヒットに対応する枠組みタンパク質のアミノ酸配列は、その少なくとも1つのアミノ酸残基をサンプルタンパク質の少なくとも1つのアミノ酸残基で置換して改変する。サンプルタンパク質の少なくとも1個のアミノ酸は、サンプルタンパク質のある機能に要求されるアミノ酸から選択するのが好ましい。この工学プロセスは、所望により、アミノ酸の付加、削除または挿入を含み得る。
【0088】
先に説明したように、そのような改変の目的は、枠組みタンパク質に特定の特性、特徴または機能を付与することである。本発明の方法は、特定の機能に必須の複数のアミノ酸残基が一次配列に関して連続していないことが多いという事実を考慮に入れている。しかし、これらの「分散」したアミノ酸残基は、1つ以上の機能領域の少なくとも一部を構成し得、各領域は3D空間の固有の位置および配向を占める。
【0089】
枠組みタンパク質ヒットの改変は、枠組みタンパク質に、サンプルタンパク質の1つ以上の機能領域を効率的に「転移」させるように実施するのが有利であろう。転移は、サンプルタンパク質の(上記に定義されているような)1つ以上の機能領域由来のアミノ酸残基を枠組みタンパク質のアミノ酸配列に組み込むことにより達成される。そのような改変は、3D空間に適切に所在かつ配向されている1つ以上の機能領域のアミノ酸残基を組み込んだタンパク質を人工合成するように実施されるであろう。
【0090】
1つの実施態様において、枠組みタンパク質は、サイトカイン模倣体として機能するように改変される。これに関連して、枠組みタンパク質の改変は、枠組みタンパク質が、(アゴニストの場合におけるように)サンプルタンパク質のものと類似の機能を示し得るように、あるいは、(アンタゴニストの場合におけるように)サンプルタンパク質の機能を阻害するように実施し得る。
【0091】
しかし、本発明の範囲は、枠組みタンパク質のアミノ酸残基を置換して所望の機能を有するタンパク質を人工的に合成することにまで及ぶ。例えば、酵素を、基質の変換を触媒するように人工合成したり、または、転写因子を、その同種DNA配列に結合させ、転写の促進に必要な他の転写因子との複合体を形成するように人工的に合成したりし得る。
【0092】
サイトカイン模倣体を人工的に合成しようとする場合に、適当な方法は、(ヒットに対応する)枠組みタンパク質のアミノ酸配列を、そのアミノ酸残基をサイトカインの特定のレセプターとの結合に必要なアミノ酸残基から選択されたサイトカインのアミノ酸残基で置換して改変するものである。生物学的応答は、2つ以上のレセプター分子に結合し、それによってレセプター分子を架橋させるサイトカインにより誘起されることが多い。したがって、サイトカインアンタゴニストは、枠組みタンパク質を、一方のレセプター分子には結合するが他方のレセプター分子には結合しないために必要とされる1つの機能領域のアミノ酸残基を含むように改変して人工合成し、アゴニストは、2つのレセプター分子の結合および架橋に共に必要な2つの機能領域のアミノ酸残基を含むように人工合成される。2つのレセプタータンパク質を結合するのに必要な機能領域は、3D空間においてそれぞれ固有の位置および配向にある。したがって、アゴニストを人工的に合成するには、各機能領域の相対3D位置および配向がレセプターの結合および架橋を達成し得るようになっていることを必要とする。
【0093】
サイトカインを特定のレセプターに結合させるのに必要なアミノ酸残基から選択された、前記サイトカインのアミノ酸残基の直接置換に加えて、いくつかの他の設計法を用いることもできる。サンプルタンパク質およびそのレセプターの原子構造が分っている場合、X−SITE〔Laskowskiら,Journal of Molecular Biology,175,1996年;Bohm,J.Comput.Aided.Mol.Des.第6巻,69ページ,1992年(これらの文献は本明細書に文献援用される)〕などの新規な設計プログラムを用いて、ヒット中に、活性を変化させる補助結合エピトープの人工合成を誘導し得る。補助結合エピトープは、合成ペプチド化学に用いられる保護基などの追加官能基に接合し得る天然または非天然のアミノ酸であり得る。
【0094】
DelPhi〔Honig & Nicholls A,‘DelPhi’,Computer Program,Department of Biochemistry and Molecular Biophysics Columbia University,1987年(この文献は、本明細書に文献援用される)〕などの、変異枠組みとサンプルタンパク質との静電的類似性または変異枠組みとサンプルタンパク質レセプターとの静電的相補性を測定するプログラムを用いて、活性に有害であり得る、変異枠組みの非変異領域を決定することができる。
【0095】
Naccess〔Hubbard & Thornton,‘NACCESS’,Computer Program,Department of Biochemistry and Molecular Biology,University College London,1993年(この文献は本明細書に文献援用される)〕などの、埋もれている表面積を測定するプログラムを用いて、サンプルタンパク質と変異枠組みの埋もれている表面積を分析、比較し得る。
【0096】
タンパク質中の領域は、無秩序で、X線またはNMR構造からは見えないことが多い。サンプルタンパク質の結合領域に残基が見当たらない場合、ホモロジ−モデル化またはループ検索などの方法を用いて原子座標の完全モデルを構築することができる。
【0097】
どの方法をとるにせよ、枠組みタンパク質のアミノ酸配列の改変には、立体化学および二次構造の整合性の維持を考慮する必要がある。したがって、そのような改変によって枠組みタンパク質中に誘起される構造的効果を予測できることが重要である。これは、Bowieら,Science,第253巻,164−170ページ,1991年;Luthyら,Nature,第356巻,83−85ページ,1992年;およびLaskowskiら,J.Appl.Cryst.,第26巻,283−91ページ,1993年に記載されているような、当業では周知のアルゴリズムを用いて達成し得る。
【0098】
改変枠組みタンパク質は、化学合成されるのが好ましい。あるいは、これは、改変枠組みタンパク質のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列を化学合成して達成することもできる。タンパク質および核酸の化学合成に用い得る方法は当業において周知であり、そのような方法の例を以下に提供する。
【0099】
あるいは、ヒットに対応する枠組みタンパク質のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド配列を試験管内突然変異誘発法により改変して、改変枠組みタンパク質のアミノ酸配列をコードする改変ポリヌクレオチド配列を生成してもよい。Chapter 8 CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY〔Ausubelら,編;John Wiley & Sons Inc.,1995年(この文献は本明細書に文献援用される)〕に記載されているものなどの適当な試験管内突然変異誘発法は当業において周知である。ファージの表示も企図されており、その方法は当業では周知である。一般的な代表的なファージ表示法は、Smithら,J.Mol.Biol.,第277巻,317ページ,1998年(この文献は本明細書に文献援用される)に提供されている。
【0100】
本発明の1つの実施態様によれば、データベース中の各エントリは、初期にはデカルト座標形式で表示されるが、その後、検索に先だってCα−Cβベクトルの距離行列表示にプロセスされる、70以下のアミノ酸残基を有するシステインリッチな小タンパク質に対応する。クエリは、サンプルタンパク質のアミノ酸側鎖に対応するCα−Cβの距離行列表示の形式であり、これらのアミノ酸側鎖は、サンプルタンパク質とレセプタータンパク質との高親和性結合に必要である。1つの特定の実施態様において、サンプルタンパク質は、GH、IL−4、G−CSFおよびIL−6からなる群から選択される。
【0101】
サンプルタンパク質がヒト成長ホルモン(hGH)、レセプタータンパク質がヒト成長ホルモンレセプター(hGHR)の場合、hGHのCα−Cβベクトルは、高親和性結合時にhGHRと接触し、そのような結合に必要とされる、hGHのアミノ酸側鎖の3D位置および配向の簡略型である。
【0102】
この場合では、ヒットに対応するシステインリッチな小タンパク質はシラトキシンであり、(図1に示されている)そのアミノ酸配列は、この配列を用いて産生されるタンパク質が潜在的にhGHアンタゴニストとして機能し得るように改変されている。その検索プロセスに用いた特定のCα−Cβベクトルは、Asp A171;Lys A172;Glu A174;Thr A175;Phe A176;Arg A178; Ile A179;Lys A41;Leu A45;Pro A48;Glu A56;Arg A64;およびGln A68であった。シラトキシンのアミノ酸配列に組み込まれるhGHの特定のアミノ酸残基は、(上記に示されているような)hGHとhGHRとの高親和性結合に必要であり、かつトポグラフィーがシラトキシンの残基とマッチしたものから選択した。シラトキシンのどのアミノ酸を構造整合性に大きな影響を与えることなく置換し得るかは、INSIGHT IIモデリングプログラムの助けを借りて決定した。
【0103】
可能性のあるhGHアンタゴニストとして設計されたSCY01−SCY03ペプチドを、図1に示されている各アミノ酸配列を用いて化学合成した。
別の場合では、ヒットに対応するシステインリッチな小タンパク質はマリーンウォームトキシン(marine worm toxin)(VIB)である。このヒットは、以下のhGHアミノ酸残基:Lys A41;Leu A45;Pro A48;Glu A56;Arg A64;Gln A68;Asp A171;Lys A172;Glu A174;Thr A175;Phe A176;Arg A178;Ile A179;Arg A8;Leu A9;Asn A12;Leu A15;Arg A16;His A18;Arg A19;Tyr A103;Asp A116;Leu A117;Glu A119;およびThr A123を含むクエリを用いたデータベース検索により同定した。
【0104】
ヒット(VIB)のアミノ酸配列は図2に示されており、ヒット(VIB01)の1つ以上のアミノ酸を改変して人工合成したタンパク質のアミノ酸配列は図2に示されている。ヒットの改変に用いたhGHの特定のアミノ酸残基は、図2に示されているようなhGHのアゴニスト結合機能領域を構成するものから選択した。hGHとマリーンウォームトキシンとのオーバーラップが図3に示されており、これは、サイトカインアゴニストの機能領域とマッチするヒットを同定するための本発明の方法の能力を強調するのに十分である。
【0105】
hGHアゴニスト領域に従って設計されたペプチドは、候補hGHアゴニストを構成する。
上記に鑑み、本発明は上記第2の態様によるような人工タンパク質を企図していることが理解されよう。
【0106】
1つの実施態様において、人工タンパク質中に存在する別のタンパク質のアミノ酸は、該別のタンパク質の少なくとも1つの機能領域に対応する。
別の実施態様において、人工タンパク質中に存在する別のタンパク質のアミノ酸は、該別のタンパク質の2つの機能領域に対応する。
【0107】
この別のタンパク質は、一次配列中で隣接していないアミノ酸を提供するだけでなく、一次配列中で隣接しているアミノ酸も提供し得る。
1つの実施態様において、人工タンパク質は、SCY01、SCY02、SCY03、ERP01、ERP02、ERP03およびVIB01からなる群から選択されるアミノ酸配列を有する。
【0108】
また、本発明の第1および第2の態様に従って、人工タンパク質のホモログが企図されることも理解されよう。保存性アミノ酸の置換、削除および付加を、アミノ酸配列におけるそのような変化にもかかわらず、タンパク質が特定の機能を保持するように実施し得ることが当業者には理解されよう。そのようなホモログは、本明細書に記載の本発明の範囲内に包含される。
【0109】
本発明をさらに詳細に理解するために、当業者は以下の本発明を限定するわけではない実施例を参照されたい。
実施例
実施例1
データベース検索法の概観
本発明者により開発されたコンピュータアプローチであるプログラムVECTRIXの概略を図4に示す。第1ステップは小さなシステインリッチなタンパク質のライブラリーの作成である。現在、3779を超える実験により導かれた3D構造を含む344のそのようなタンパク質(それぞれが70未満のアミノ酸残基を有する)がBROOKHAVENデータベースから抽出されている。しかしながら、例えば相同モデリング、スレッディング(threading )あるいはこの分野では周知の技術により、理論的に導かれた特徴を用いてデータベースを作成するのも可能である。
【0110】
それぞれの構造は続いて簡略化してCα−Cβベクトルとされ(ステップa)、本質的にはエントリデータベースが得られる(ステップb)。データベースを検索するために、それぞれのクエリはCα−Cβベクトルの距離行列表示の型とされる(ステップc)。しかしながら、2面角(δ)あるいはα1およびα2角などの他の手段によりCα−Cβベクトルを表すことは可能である。Cα−Cβベクトル対に関するこれらの表示の型の簡単な説明を図5に示す。
【0111】
検索アルゴリズムは、クエリCα−Cβベクトルを表す距離行列を各エントリのCα−Cβベクトルを表す距離行列と比較する(ステップd)。トポグラフィー類似性の比較を選択した。というのは、Cα−Cβベクトルはすべてのアミノ酸側鎖(グリシンを除く)に共通であり、本質的に骨格に固定されているからである。そのため、Cα−Cβベクトルは、アミノ酸側鎖の3D空間における最初の配向を表し、その配向はおそらく他のタンパク質との相互作用ではそれほど変化しない。側鎖の余分な原子により、そのような相互作用の間におけるある程度の適合が導かれると考えられる。
【0112】
その代わりに、より限定されたアプローチは、この分野では周知の適したアルゴリズム(ホルム&サンダー(Holm&Sander)、1994年、(前掲);アレキサンドロフ(Alexandrov)、1996年、(前掲);アレキサンドロフ&フィッシャー(Fisher)、1996年、(前掲);オレング(Oreng)、1994年、(前掲))と共に、α−炭素骨格構造などの二次構造特徴を使用する。
【0113】
Cα−Cβベクトルの分子内での幾何学的関係は、ホー&マーシャル(Ho&Marshall)、1993年、(前掲)のクリーク検出アルゴリズムを用いて比較する。このアルゴリズムはユーザが規定する最小ベクトル成分の数に従いヒットを識別する。しかしながら、これについては当技術分野において周知の他のアルゴリズムもまた有効である。
【0114】
ステップdの結果、1以上のヒットが識別され得る。1つのヒットが得られた場合、ランク付けは必要ない。ヒット数が小さい場合、熟練者であればそれぞれのヒットを個別に評価しランク付けすることが可能であろう(ステップe)。しかしながら、ヒット数が大きい場合、そのようなマニュアルによる比較はより困難となり、自動化されたプロセスが必要とされる。
【0115】
ヒットを評価しランク付けするのに最も重要な因子は立体的な完全性(integrity )、すなわち、各ヒットが存在すべき3D空間に関して有する構造相補性である。例えば、クエリがホルモンのレセプター結合アミノ酸側鎖に対応するCα−Cβベクトルの距離行列表示のタイプである場合、ヒットはサイトカインが結合した時にレセプターがアクセスする3D空間に侵入するかどうかの観点から評価されなければならない。この目的のために有効ないくつかのアルゴリズムが開発されている。例えば、1993のホー&マーシャルのFOUNDATIONプログラム((前掲))は様々なフラッドフィリングアルゴリズムを使用し、レセプターの結晶構造から決定されるレセプターにより占有される3D空間を規定する。このプログラムは原子チェックルーチンを使用して、ヒットの原子がレセプターの結合「穴」内に存在するかどうか確立する。他のアプローチは、格子点を含む立方体内に分子を配置するステップと、各分子のファンデルワールスオーバーラップをチェックするステップを含む(アリンジャー(Allinger)、1972年、薬理学と人の未来において、薬理学に関する第5回国際会議の議事録、pp57−63)。関連する方法は、2つの分子の共通体積と過剰空間の体積の計算を含む。(マーシャルら、1979年、薬物設計における立体配座パラメータ。活性アナログアプローチ、112、205)。
【0116】
クエリとヒットの間の簡単な距離計算を使用することも可能で、その2つを重ね合わせた後、そのヒットがクエリ構造により占有される空間からはみ出るかどうか認識される。これは、本発明者等が現在構成したアルゴリズムにおいて実行してきたアプローチである。
【0117】
ヒットを改変すると、アミノ酸配列変化から生じる劇的な構造効果を予想することができることも需要である。これは部分的には、改変されたヒットのアミノ酸配列とそのクエリが対応するタンパク質(あるいはタンパク質の領域)のアミノ酸配列との同一性の程度を最大にすることにより達成される。さらに、改変されたヒットの立体化学および二次構造妨害の程度は、アミノ酸を基本とするアミノ酸に関するタンパク質立体化学をチェックする標準アルゴリズムを使用して評価することができる。同様に、二次構造予測アルゴリズムを使用して、ヒットのアミノ酸配列改変が二次構造を妨害する可能性を評価することができる。
【0118】
最後に、本発明者らは分子表面を用いてクエリとヒットの様々な物理化学的性質を比較しようとしている。電荷、静電位、疎水性、占有、水素結合電位をすべてタンパク質表面にマップし、たんぱく質間で詳細な比較を行った。2つの分子表面の間の類似性の程度を定量するための方法は開発されている。この方法では、グノモン投影により所定の性質の計算された値が球面上に投影される(ダスンジンガー&ディーン(Dasnzinger&Dean)、1985年、J.Theor.Biol.116 215)。その後、2つのそのような表面は対応する原子の対を用いて重ね合わせることができる。このアルゴリズムはクエリタンパク質をヒットと比較するのに非常に有効であり、そのヒットに対応するタンパク質のアミノ酸残基の細かな調整が可能であり、立体および電気化学相補性が改良される。
【0119】
本発明の方法に適用することができるデータベース検索アルゴリズム(例えば、VECTRIXプログラムにより提供されるもの)により、部分的なヒットの識別が可能となるので、熟練者であれば分子モデリングを用いてデータベース検索において見落されたベクトルを模倣するために部分的なヒットに対応するタンパク質表面上の追加の領域の識別をする余地がある。これは、例えば模倣体を人為的に操作する際により高い類似性を達成するために、D−アミノ酸またはコードされていないアミノ酸の使用を含むことがある。
【0120】
以下の実施例では、VECTRIXプログラムを様々なサンプルタンパク質に適用している。
実施例2
高親和性hGHアンタゴニスト
成長ホルモン(GH)は多くの成長過程、例えば筋肉、骨および軟骨細胞の成長と分化を調整する下垂体サイトカインである。成長サイトカインレセプター(GHR)は3つのドメインからなる。
【0121】
(i)GHに結合する細胞外ドメイン
(ii)経膜ドメイン
(iii)サイトカイン結合時に細胞内信号を導き出すのに関係する細胞質ドメイン
細胞内シグナリングは、各レセプターが単一のGHリガンドに逐次結合した後、別個のGHRのニ量体化の結果により起こる。第1のGHRはGHの高親和性サイトに結合し、第2のGHRは続いてこの複合体に結合する。このモデルをサポートするものとして、この複合体の結晶構造は、単一のヒトGH分子上の異なるサイトに結合した2つの同一のレセプター分子を示す(hGH:デボス(De Vos)ら、1992年、サイエンス255 306)。
【0122】
hGH上の高親和性サイトは凹状で表面積約1200Å2が埋められるが、hGH上の第2の結合サイトでは表面積約900Å2が埋められる。複合体の安定性に寄与する第3の領域はレセプター−レセプター相互作用により埋められる500Å2の領域を含む。
【0123】
結晶構造により、hGHの高親和性サイトと低親和性サイトの両方の実際の接触領域は、レセプターとの複合体形成時に埋められることが明らかになっている。
【0124】
hGHのアンタゴニストを開発する際に、本発明者等はhGHの高親和性結合を模倣する分子を設計することを試みた。高親和性結合サイト内のアミノ酸残基の突然変異研究により、若干数のこれらのアミノ酸残基をアラニンに変換すると親和性が著しく減少することが示された(クニングハム&ウエルズ(Cunningham&Wells)、1993年、234 554)。これに関しては、埋められた側鎖を有する31のアミノ酸残基のうち、ほんの8つ(Lys A41;Lys A45;Pro A61;Arg A64;Lys A172;Thr A175;Phe A176;Arg A178)がアラニンによる置換により起こる結合エネルギーの総変化の約85%の原因となっていた。さらに5つの残基(Pro A48;Glu A56;Gln A68;Asp A171;Ile A179)が本質的には、結合エネルギーの残りの原因であった。
【0125】
アンタゴニストの設計において現在使用されているGH残基は、Asp A171;Lys A172;Glu A174;Thr A175;Phe A176;Arg A178;Ile A179;Lys A41;Leu A45;Pro A48;Glu A56;Arg A64;Gln A68である。データベース検索目的のクエリの基本となるのはhGHのこれらのアミノ酸残基である。
【0126】
hGH高親和性表面の最大7つのベクトルとマッチするヒット枠組みとしてシラトキシン(pdb1scy)がリターンされた。ヒット分子の識別後、分子モデリング研究を用いてそのヒットを最適化し、SCY01、SCY02、SCY03の設計を行った。
【0127】
例えば、(INSIGHT IIを用いる)分子モデリング研究では、シラトキシン系模倣体のC末端Hisは、レセプターとは相互作用しないので除去できることが示唆された。このことは、Hisはペプチド構築中にラセミ化する可能性があるため、標的分子を合成する際に好都合である。図1に示されるように、突然変異枠組みSCY01は、7つのマッチするhGH残基、R167、K168、D171、K172、E174、T175、F176の移入により作成した。同様に、SCY02はhGH残基、D171、K172、E174、T175、F176、R178、I179の移入により設計した。しかしながら、親和性成熟hGH突然変異E174SをSCY002中に組み入れた。同様に、SCY03は親和性成熟hGH突然変異D171SおよびE174Sを組み入れた。このように、単一のヒットを基に幾つかの類似体が設計された。この類似体は異なる機能性残基および親和性成熟残基を組み入れた。
【0128】
さらに、分子モデリング技術を用いて、新しい枠組みに移されたアミノ酸の機能性を最適化した。hGHRの原子構造を使用し、X−SITE(ラスコフスキー(Laskowski)ら、1996年、(前掲))により、ヒットペプチド内に組み入れることができる官能基に対する結合サイトを予想した。このように、プログラムX−SITE(ラスコフスキー(Laskowski)ら、1996年、(前掲))の助けを借りて、新規突然変異および補足官能基を組み入れてSCY02およびSCY03からSCY13を開発した。図1に示されるように、SCY13はD171Y突然変異、T175D突然変異およびF176E(Fm)突然変異を有する。さらに、天然シラトキシン配列中のN4R突然変異もまた、X−SITE(ラスコフスキー(Laskowski)ら、1996年、(前掲))結果を基に組み入れられた。これらの突然変異を組み入れ、静電相互作用を最適化し、モデルとしてのSCY−hGHR複合体の結合表面積を増加させた。
【0129】
分子モデリング研究により、SCY01、SCY02、SCY03では、hGHRに結合されると約700Å2が埋め込まれ、一方SCY13ではhGHRに結合されると約1000Å2が埋め込まれる。モデリングプログラムDelPhi(ホーニグ、B&ニコルス、A(Honig,B.&Nicholls, A)(1987)、「DelPhi」、コンピュータプログラム、コロンビア大学生物化学および分子生物物理学部)を使用してhGHとSCYペプチドの静電位マップを比較すると、hGHとSCYペプチドの間には良好な相補性があるという結論が得られた。
【0130】
シラトキシンペプチドSCY01−SCY03およびSCY−13(図1)をその後、固相技術(M.シュノルツァー(Schnolzer)ら、1992年、International Journal of Peptide and Protein Research、40 180−193)を用いて合成し、精製し、酸化させた。質量分析法、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)およびアミノ酸解析(AAA)を用いて、生成物のキャラクタリゼーションを十分行った。SCY01およびSCY02に関する円偏光二色性により、人工SCY分子の二次構造要素を決定した(図6)。スペクトルから天然SCY折り畳み(フォールド:fold )と一致する高いらせん量が示された。さらに、CDによりらせん構造は、TFEなどのらせん安定化剤やグアニジン、HClまたは温度などの不安定化剤を添加しても、温度によっても変化しないことが示された。これによりこれらの枠組みの好ましい化学的特性が強調される。
【0131】
新しく人為的に操作したSCY枠組みがクエリとして使用されるGHの領域の構造を模倣しているかについて決定するために、SCY01の構造をNMR分光法により決定した。図7に示されるように、GH上の官能基およびSCY01の人為的に操作された表面との間で配座のオーバーラップ(RMS0.45Å)があることが見出された。このように、標的タンパク質を選択するプロセスを確認し、機能的エピトープを簡略化しCα−Cβベクトルとし、これらをクエリとして使用しこのクエリの形状にマッチする新規枠組みを識別し、新しく枠組みを合成し、キャラクタリゼーションを行い、折り畳む。得られた新しい人工枠組みは、構造的に標的タンパク質の機能的エピトープの構造にマップし、このように設計プロセスが実証される。
【0132】
SCY02およびSCY03の折り畳みパターンのキャラクタリゼーションを行うために、再びNMR実験を実行した。しかしながら、今回は、人工SCYと天然SCYとの間で二次シフトを比較した(ウィシャート(Wishart)ら、J.Biomolecular NMR 5 67)。予測したように、天然SCY分子に比べCHαまたはNHαシフトにおいてずれはほとんどないかあるいは全くなく、正しい折り畳みおよびジスルフィド結合が示される。
【0133】
SCY01についてBaF3細胞系を用いた生物検定により生物学的機能の試験を行った。この細胞は通常、GHに応答する。結果を図8に示す。SCY01について様々な濃度で検定し、0.5ng/mLのhGHまたはコントロールである50単位/mLのIL−3に応答するBaF3細胞増殖の阻害能力をチェックした。これらの実験から計算したKiは約200μMであり、IL−3誘発増殖に関しては阻害活性は観察されなかった。このようにSCY01はGHに刺激される増殖に関し阻害活性を示した。この生物学的効果により、SCY01は作用メカニズムに関しさらに調査する対象候補である。
【0134】
72時間までの検定緩衝液中でのインキュベーションの後のさまざまな時間点でのペプチドのHPLCにより判定すると、SCYペプチドはhGH検定緩衝液中で非常に良好な安定性を示した。予備研究では、MATERIALS AND MEHODSに説明されているように、SCY01を様々なプロテアーゼ(トリプシン、キモトリプシンおよびペプシン)および血清タンパク質に暴露することによりSCY01の生体利用効率を評価した。血清安定性試験の結果を表2に示す。酵素安定性試験の結果を表3に示す。SCYペプチドはそれぞれの場合において24時間後において安定であることがわかった。一方コントロールペプチドは直ちに消化された。このように、ジスルフィドリッチなタンパク質の好ましい化学的特性が強調される。
【0135】
この実施例において、本発明者等はhGHの機能的エピトープを取り上げ、該機能的エピトープを新規ジスルフィドリッチな枠組み上で人為的に操作することに成功した。この枠組みは高分子タンパク質に比べ生体利用効率および生物活性の観点から興味のある化学的特性を有する。
【0136】
実施例2に対する実験
VECTRIX結果
検索したベクトルの数
15−R167、K168、D171、K172、E174、T175、F176、R178、I179、K45、P48、E56、R64、Q68。
選択した異なる枠組みの数(名称:pdbコード番号ベクトルマッチ)
シラトキシン:pdb1scy(7)
合成
一般的な材料および方法のセクションにおいて説明する通りである。ペプチドのキャラクタリゼーションは、質量分析、逆相高速液体クロマトグラフィー(RP−HPLC)およびアミノ酸分析(AAA)により十分行った。
【0137】
折り畳み
NH4HCO3の0.1M溶液を用いて一晩中室温で攪拌しながらペプチド濃度〜0.3μM/mlで純粋な還元ペプチドSCY01−03の折り畳みを行い、HPLCおよび質量分析によりモニタした。折り畳まれたペプチドを予備HPLCにより単離した。SCY01に対する正確なジスルフィド結合性をNMRによる全構造解析により決定した。100:10:1の比率のGSH:GSSG:ペプチド中酸化および還元グルタチオンを用いる折り畳み方法およびpH7.4のNaPO4緩衝液中で5mM GSSG対0.5mM GSHを用いる公表されている方法を実行し、同様に折り畳まれた材料を得た。純粋ペプチドを折り畳んだ後、全く同じように粗ペプチドを折り畳むことにより等価な収量のペプチドが得られた。SCY13の酸化はGluに付着したFm基により複雑になった。pH7.4のNaPO4緩衝液中、5mM GSSG対0.5mM GSHが存在する30%TFE溶液を用いてSCY13を酸化した。
【0138】
円偏光二色性(CD)
一般的な材料および方法のセクションにおいて概略を示すようにCDを実行した。
NMR
SCY01のNMR構造およびCHαとNHαの結合性を一般的な材料および方法のセクションにおいて概略を示すように決定した。
【0139】
ペプチド安定性試験
検定緩衝液中での安定性
SCYペプチドはhGH検定緩衝液(10%(v/v)の胎児ウシ血清(FBS)と100単位/mLのIL3が追加されたRPMI−1640媒質)中で非常に良好な安定性を示した。ペプチドを37℃、緩衝液中1mg/mlでインキュベートした。サンプルを様々な時間点で取りだし、HPLC分析を行い、72時間までのペプチド分解速度を求めた。
【0140】
血清
静脈穿刺によりへパリンを投与したチューブ中に血液を採集した。血液の遠心分離を5000rpmで20分行い、血清を静かに注いだ。血清を−20℃で保存した。血清サンプル(900μl)を37℃でストックペプチド溶液(H2O中1mg/mL)と共にインキュベートし、要求された時間にアリコート(100μL)を取り出した。50% CH3CH 0.1% TFAの溶液を添加し血清タンパク質を沈殿させ、13000rpmで5分遠心分離を行った。この溶液のサンプル(100μL)をRP−HPLC(Vydac C18 218TP54 250×4.1mm id 1%/分 勾配H2O/CH3CH 0.1%TFA)により分析し、ペプチド消化を検出した。
【0141】
酵素安定性試験
トリプシン
ペプチド溶液(NH4HCO3、pH8.3、0.87mg/mL)にトリプシン(5% w:v)を添加した。サンプルを37℃でインキュベートし、0,1,3,18時間にアリコートを取りだし、上記のようにRP−HPLCにより分析した。
【0142】
キモトリプシン
ストックペプチド溶液(100μL)に900μLのNH4HCO3(pH8.3)を添加した。5% w:vまでキモトリプシンを添加し37℃でインキュベートした。0,1,24時間にアリコートを取りだし、RP−HPLCにより分析した。
【0143】
ペプシン
ストックペプチド溶液(100μL)にH2O(800μL)と0.1M HCl(100μL)を添加しpH2.2とした。ペプシンを添加し1%w:v溶液とし、37℃でインキュベートした。0,1,24時間にアリコートを取りだし、RP−HPLCにより分析した。
【0144】
実施例3
成長ホルモン−低親和性サイト
成長ホルモンの低親和性サイトは少なくとも12の残基を含む。これらの12の残基のCα−CβベクトルをVECTRIX検索において使用した。1Åの許容度で適合された9つの検索ベクトルがマッチする最も良好なヒットとしてPdb1zdc(ZDC)がリターンされた。これらの残基はR8、L9、D11、N12、L15、R16、R19、D116、E119であった。分子モデリング(Insight II)を再び用いてヒットを最適化した。R29L(hGHのL9にマッチする)はZDCの折り畳みを妨害するかもしれないことが決定され、この突然変異は組み入れられなかった。さらに、追加の分子モデリング研究により、ZDCはhGHの他の7つの残基にマッチする可能性があることも示唆された。マッチしZDC05に組み入れられた残基(15残基−ヒットとhGHとの間のRMSd骨格原子−1.46オングストローム)はR8、D11、N12、L15、R16、Y111、D112、K115、D116、E118、E119、G120、Q122、T123であった。図9に示されるように、突然変異枠組みZDC05はhGHにマッチする上記15残基の移入により作成した。
【0145】
実施例3の実験
VECTRIX結果
検索したベクトルの数
12−R8、L9、D11、N12、L15、R16、R19、D112、L113、D116、E119、T123。
7以上のベクトルマッチでの異なるマッチの数:22
7以上のベクトルマッチでの固有の枠組みの数:6
選択された異なる枠組みの数(名称:pdbコード番号ベクトルマッチ)
タンパク質A人為的操作フラグメント:pdb1zdc(9)
実施例4
成長ホルモンアゴニストI
hGHのアゴニスト部位は25残基を含む。これらの25残基のCα−CβベクトルをVECTRIX検索において使用した。Pdv1vib(VIB)がマッチした8検索ベクトルにより最も良好なヒットとしてリターンされた。これらの残基はN12、R16、R19、D171、K172、E174、T175、F176であった。分子モデリングによりVIBはさらにhGHの9残基とマッチすることが決定された。マッチ(17残基−ヒットとhGHとの間のRMSd骨格原子−0.86オングストローム)し、VIB01に組み入れられた残基は、D11、N12、R16、R19、L20、H21、Q22、L23、F25、R167、K168、D169、D171、K172、E174、T175、F176であった。図2に示されるように、突然変異枠組みVIB01は上記17のマッチするhGH残基の移入により作成した。
【0146】
モデリングプログラムDelphi(ホーニグ&ニコルズ、1987、(前掲))を使用してhGHと模倣体の静電位マップを比較すると、hGHと模倣体との間には良好な相補性が存在するという結果が得られた。
【0147】
分子力学力場最小化および分子動力学の助けを借りて、VIB01が模倣hGHに対し適当な空間配向で突然変異された残基を配置し、本来の折り畳みを保持することが決定された。
【0148】
VIBペプチド(図2)を固相技術(M.シュノルツァ(Shnolzer)ら、International Journal of Peptide and Protein Research、(前掲))を用いて合成し、精製し、酸化した。生成物のキャラクタリゼーションを質量分析、HPLC、AAAを用いて十分行った。人工VIB分子の二次構造要素を図10に示されるように円偏光二色性によりチェックした。人工VIBペプチドは非常に安定した構造を有し、水溶液状態ではかなりのらせん特性を示す。これから本来の折り畳みがらせんループまたはらせんモチーフであることが予想される。
【0149】
さらに、VECTRIX検索により、7検索ベクトルがマッチしたヒットとしてペプチドERPが識別された。これらの残基はN12、L15、R16、H18、R19、T175、R178であった。分子モデリングによりERPはさらにhGHの6残基とマッチすることが決定された。マッチ(13残基−ヒットとhGHとの間のRMSd骨格原子−1.33オングストローム)し、ERP01に組み入れられた残基は、R8、D11、N12、M14、L15、R16、H18、R19、E174、T175、F176、R178、I179であった。図11に示されるように、突然変異枠組みERP01は上記13のマッチするhGH残基の移入により作成した。
【0150】
モデリングプログラムDelphi(ホーニグ&ニコルズ、1987、(前掲))を使用してhGHと模倣体の静電位マップを比較すると、hGHと模倣体との間には良好な相補性が存在するという結果が得られた。
【0151】
分子力学力場最小化および分子動力学の助けを借りて、ERP01が模倣hGHに対し適当な空間配向で突然変異された残基を配置し、本来の折り畳みを保持することが決定された。
【0152】
ERP02はhGH親和性成熟突然変異E174S、I179T、H18Dを含む点でEPR01とは異なる。ERP01およびERP02におけるG14F突然変異(F176模倣)は2つの主な突然変異、S6GとN11Gを必要とした。ERP03ではG14F突然変異およびこれらの変異に対する必要性を削除されより混乱の少ない配列を与える。
【0153】
ERPペプチド01−03(図11)を固相技術(M.シュノルツァ(Schnolzer)ら、International Journal of Peptide and Protein Research、(前掲))を用いて合成し、精製し、酸化した。生成物のキャラクタリゼーションを質量分析、HPLC、AAAを用いて十分行った。人工ERP分子の二次構造要素をERP03に関する円偏光二色性によりチェックした(図12)。これにより天然ERP分子の3らせん束構造と一致する程度の非常に高いアルファらせん特性が示された。
【0154】
ERP01およびERP03のNMRを実行し、3つのジスルフィド結合が正しく形成されているかチェックした。予想された通り、天然ERP分子からのずれは小さいものにすぎず、hGH分子を模倣する突然変異が形成されている(ERP03に対する図13)。天然ERP分子に比べCHαまたはNHαシフトにおいてずれがほとんどあるいは全くなく、正しい折り畳みおよびジスルフィド結合性が示される。再びジスルフィドリッチペプチド上への本来の折り畳みを維持したままの、新規表面を人為的に操作する可能性が強調される。
【0155】
実施例4の実験:VIB
VECTRIX結果
検索したベクトルの数
25−R8、L9、N12、L15、R16、H18、R19、K41、L45、P45、E56、R64、Q68、Y103、D116、L117、E119、T123、D171、K172、E174、T175、F176、R178、I179。
【0156】
異なるマッチの数
最小5ベクトルマッチで61292
固有枠組みの数
最小7ベクトルで10、最小8ベクトルで1
選択された異なる枠組みの数(名称:pdb コード:#ベクトルマッチ)
マリーンウォームトキシン:pdb1vib(8)
ペプチド合成
VIBペプチドの合成を一般的な材料および方法のセクションにおいて説明するように行った。
VIBペプチドの酸化
還元VIBペプチドの酸化をERPペプチドについて概略を示した方法により、30%TFE溶液およびGSSG:GSH酸化シャトルを用いて行った。
【0157】
円偏光二色性
一般的な材料および方法のセクションにおいて概略を示すようにCDを実行した。
実施例4の実験:ERP分子
ERPペプチドの合成
一般的な材料および方法のセクションにおいて説明する通りである。
ERPペプチドの折り畳み
ペプチドを低濃度で冷水中に溶解させ、トリフルオロエタノールを添加して30%とした。酸化させる前に4℃で2時間冷却し、還元グルタチオンを添加し(10:100:1/GSSG:GSH:ペプチド)、その後1MのNH4H
【0158】
CO3を添加しpH8.1の0.1M溶液を得た。酸化ペプチドをHPLCにより単離した。
円偏光二色性
一般的な材料および方法のセクションにおいて概略を示したようにCDを実行した。
【0159】
ERP01および03のNMR
ERP01およびERP03のNMR構造およびCα−CβおよびCα−NHα結合性を、一般的な材料および方法のセクションにおいて概略を示したように決定した。
【0160】
実施例5
インターロイキン4(IL−4)
インターロイキン4は喘息、鼻炎、結膜炎および皮膚炎におけるアレルギー応答メカニズムの基礎となる4つのらせん束サイトカインである。Igm、IgE、IgGを産出するB細胞を刺激することにより免疫グロブリンを誘発するのに重要な役割を果たす。IL−4は主にIL−4アルファレセプターと会合する。このレセプターはほとんど完全な結合親和性の原因である。IL−4レセプター複合体はその後共通のy鎖を起用し、細胞シグナリングへテロダイマーを形成する。
【0161】
レセプターα鎖への結合親和性を決定するIL−4の機能性エピトープは、突然変異分析および最近決定されたIL−4およびIL−4Rα複合体結晶構造から識別されている(ヘイジ(Hage)ら、1999、Cell 97 271)。鍵となる結合の発生には主にIL−4のらせんAおよびCからの荷電された残基、特にArg88およびGlu9が関連する。
【0162】
IL−4の結合表面の13のアミノ酸残基をプログラムVECTRIXに対するクエリとして使用した。この場合、検索すべきデータベースはGCN4の構造を含んでいた。これは31残基のロイシンジッパーペプチドである。GCN4分子はプログラムVECTRIXによりヒットとして識別された。IL−4の8ベクトルとマッチした(RMS0.39Å)。これらの8つのアミノ酸を含むこの分子を人為的に操作、合成すると、IL−4アゴニストはKd106μMの効能を有すると考えられる(ドミンケス(Dominques)ら、1999、Nat.Struct.Biol.6 152).
【0163】
10ベクトルとマッチする他の分子ZDCが見出された。人工枠組みを合成する際に、折り畳み検定する。
VECTRIX結果
検索したベクトルの数:13−K77、R81、K84、R85、R88、N89、W91、T13、E9、I5、R53、F82、K12
【0164】
7以上での異なるマッチの総数
396
固有枠組みの数
30
選択された異なる枠組みの数(名称:pdb コード:#ベクトルマッチ)
GCN4ペプチド:pdb1zta(8)
タンパク質Aフラグメント(人為的操作):pdb1zdc(10)
N.B. Arg53にマッチする検索において選択された分子はない
実施例6
CD4GP120
CD4−GP120相互作用は第1の結合事象であり、これによりヒト免疫不全症ウイルス(HIV)が細胞内に入ることができる。CD4の結晶構造は何かの時に周知となっている(ワン(Wang)ら、1990、Nature 348 411)が、CD4と非常に改変されたGP120複合体の構造は1998年6月になって解明された(ウォン(Kwong)ら、1998年、Nature 393、648)。CD4の突然変異分析(フロウリー(Fleury)ら、1991年、Cell 66 1037)のある時に、GP120への結合に関連する鍵となるアミノ酸は残基41−47および鍵となる結合残基Arg59を含むループ(CDR1)上に存在することが周知になっている。
【0165】
これらの残基のCα−CβベクトルをVECTRIX検索において使用した。2つの分子SCYおよびPTA(図14)が潜在的なマッチとして識別された。上述した設計手順を用いて、どちらの分子の最適化も行った。
【0166】
SCYの生物学的活性はビータ(Vita)らの研究、1998年、Biopolymer 47 93と一致する。
実施例6の実験
VECTRIX結果
検索したベクトルの数
7−K35、S42、F43、R59、D63、Q40、L44
異なるマッチの総数
4以上のマッチで409
固有枠組みの数
116
選択された異なる枠組みの数(名称:pdb コード:#ベクトルマッチ)
サソリ神経毒:pdb2pta(5)
シラトキシン:pdb1scy:(4)
Arg59とのマッチの絶対的な要求を取り除いた場合は、scy分子がvectrix検索において選択されるのみである。
【0167】
PTACD4およびSCYCD4分子の合成
一般的な材料および方法のセクションにおいて説明する通りである。
PTACD4分子の酸化
PTAペプチドを一晩中0.1MのNH4HCO3 pH8.1中で攪拌することにより酸化した。酸化ペプチド(2つの型)をHPLCにより回収した。両方の折り畳み型について別個に検定した。グルタチオンの存在下、異なる条件でペプチドの酸化を行うと折り畳まれたペプチドが得られなかった。
【0168】
SCY分子の酸化
pH7.4のNaPO4中5mMGSSG対0.5mM GSHを用いてSCY CD4分子を酸化した。酸化されたペプチドをHPLCにより精製した。
バイアコア(Biacore)アッセイ
CM−5バイアコアチップ上にカップリングしているNHSによりバイアコアチップにGP120を結合させる。その後、CD4をGP120表面上を通過させ、結合の程度をオン速度KAssociationおよびオフ速度kDissociationの両方により評価する。その後、CD4は阻害剤リガンドと平衡となり、GP120上を通過する。バイアコアモジュールにより、PTAまたはSCYリガンドがCD4のチップへの結合を妨害する程度を評価する。
【0169】
実施例7
インターロイキン6(IL−6)
インターロイキン6(IL−6)は炎症カスケード、神経の発達、骨の代謝、造血細胞の増殖および免疫応答メカニズムにおいて重要な役割を果たすサイトカインである。インターロイキン6はIL−6アルファレセプターおよび共通のレセプターモチーフGP130に結合する4らせん束サイトカインである。IL−6Rαサブユニットは細胞内シグナリングにおいて役割を果たさない。これは結合GP130レセプター分子のリガンド依存二量体化により実行される。全レセプター複合体は、2つのユニット、それぞれIL−6、IL−6R、GP−130を有するヘキサマーであると考えられる。IL−6の多面作用効果は、ヘテロ三量体レセプター複合体の複雑な配列により現れると考えられる。IR−6RαおよびGP−130の両方に対する相互作用サイトは、レセプター分子とIL−6分子の両方のサイト特異突然変異誘発によりよく研究されている。溶液および結晶の両方の型のIL−6の構造は解明されており、GP130レセプターの結晶構造は最近決定された。
【0170】
IL−6上のIL−6αレセプタ−結合サイト(サイトIとする)は主にらせんDの端に局在化されている。2つのその他のサイトIIおよびIIIが2つの異なるGP−130レセプター分子の結合に関係する。2つのGP130結合サイトはIL−6結合サイトに対し反対の分子端の広い領域にわたり広がっている。
【0171】
この中で説明したIL−6 VECTRIX検索はIL−6αレセプター相互作用のみに関係する。GP130レセプター相互作用および多レセプター相互作用には関係しない(しかし、VECTRIX検索はこれらの2つのサイトIIおよびIIIに対しても実行されている)。ヒット枠組みのいずれに対するIL−6残基のモデリングも実行されていない。可能な枠組みの標的の幾つかの例を以下に示す。
【0172】
VECTRIX結果
検索したベクトルの数:21 サブセット1(サイトI)8ベクトル:サブセット2(サイトIIおよびIII)13ベクトル。
サイト1に対する8以上のマッチでの異なるマッチの総数
179
固有枠組みの数
29
選択された異なる枠組みの数(名称:pdb コード:#ベクトルマッチ)
タンパク質Aフラグメント(人為的操作):pdb1zdc:(9)
モロニーネズミ白血病ウイルスフラグメント:Pdb1mof:(10)
シラトキシン:pdb1scy:(8)
実施例8
G−CSF
顆粒細胞コロニー刺激因子(G−CSF)は4らせん束サイトカインおよび成長因子のクラスの一部である。細胞の増殖および分化を促進し、成熟好中球の生成に導くのに関係する。生体内でこれらの好中球を補充する能力により魅力的な薬剤ターゲットとなる。G−CSFはCSFレセプターのレセプター二量体化により機能する。レセプター認識に関係する鍵となる残基を識別するために、G−CSF上でアラニン走査突然変異誘発が実行されている。G−CSFの結晶構造は1993年以降入手可能であり(ヒル(Hill)ら、1993年、Proceedings of the National Academy of Science USA 90 5167)、NMR構造は1994年以降入手可能である(ツィンク(Zink)ら、1994年、Biochemistry 33 8453)。
【0173】
重要なアミノ酸Phe145にマッチするベクトルに対する絶対要求を用いてVECTRIX検索を行った。しかしながら、得られたヒットはほとんどなく、おそらくPhe145ベクトルにマッチするあらゆるヒットの制限によるものであろう。この絶対要求の変更とVECTRIX検索の改良により、より多くのヒットが導かれるであろう。
【0174】
実施例8の実験
VECTRIX結果
検索したベクトルの数:18
異なるマッチの数
338
固有枠組みの数
115
選択された異なる枠組みの数(名称:pdb コード:#ベクトルマッチ)
有望なリガンド枠組みに関する選択の前に、更にVECTRIX検索を改良する必要がある。
一般的な材料&方法
設計
データベース検索およびすべての設計ステップをR10000あるいはR12000SGIオクタン(Octane)ワークステーション上で実行した。データベース検索はVECTRIXを用いて実行した。視覚化およびペプチドの突然変異および改変はそれぞれ、サンディエゴ−Insight IIのBiosym/MSIおよびバイオポリマーからのソフトウエアを用いて実行した。分子の静電位特性の分析はサンディエゴ−DelPhiのBiosym/MSIを用いて実行し、一方、表面積計算はNaccessを用いて実行した(ハバード&トルントン(Hubbard&Thornton)、1993年、「NACCESS」、コンピュータプログラム、ロンドン大学、生物化学および分子生物学部)。分子力学最小化および分子動力学計算を突然変異させた枠組み上で実行し本来の折り畳みが保持されているかどうか決定した。X−SITE(ラスコフスキー(Laskowski )ら、1996年、Journal of Molecular Biology、p175−201)などのプログラムを使用して突然変異させたペプチドに追加の機能を付加した。
【0175】
薬品および試薬
トリフルオロ酢酸(TFA)、ジクロロメタン(DCM)、ジメチルホルムアミド(DMF)およびジソプロピルエチルアミン(DIEA)はアウスペプ(Auspep)(オーストラリア、メルボルン)から入手した。2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)はリチェリョイ バイオテクノロジーズ(Richelieu Biotechnologies)(カナダ、ケベック、ヒアシンス通り)から入手した。アセトニトリルはBDHラボラトリーサプライズ(英国、プール)から、ジエチルエーテルはフルカバイオケミカルズ(Fluka Biochemicals)(メルボルン)から、2−メルカプトエタノールはシグマ(Sigma)(セントルイス、Mo、USA)入手した。トリフルオロエタノールはアルドリッチ(Aldrich、ミルウォーキー、WI、USA)から入手した。HFはボクゲイセス(Boc Gases)(ブリスベーン、オーストラリア)から購入した。以下のNα−Bocで保護されたL−アミノ酸Ala、Gly、Ile、Leu、Phe、Pro、Val、Arg(Tos)、Asp(Ochx)、Asn(Xanth)、Glu(OChx)、His(DNP)、Ser(Bzl)、Thr(Bzl)、Tyr(2BrZ)をノババイオケム(NovaBiochem)(ラホーヤ、CA、USA)あるいはバヒェム(Bachem)(スイス)から購入した。MBHAポリスチレン樹脂はPeptide Institute(京都、日本)から購入した。
【0176】
HPLC方法
モデル600溶剤送達システム、600E制御装置およびモデル484検出器を備えたウォーターズ(Waters)HPLCシステムを用いて、分析および予備HPLCを実行した。流速1ml/分の分析用Vydac C18およびC4カラム(4.6×250mm 内径)、流速3ml/分の半−予備カラム(10×250mm 内径)および流速8ml/分の予備カラム(22×250mm 内径)を使用した。0.1%のTFA水溶液(溶剤A)、90%水対アセトニトリルの0.09%のTFA(溶剤B)の直線勾配を用いてすべてのペプチドの精製を行った。
【0177】
ペプチド合成
改良ABI 430Aペプチド合成器(アレウッドら、1997年、(前掲))上で、急速マニュアルHBTU in−situ中和合成技術(シュノルツァら、1992年、(前掲))を用いてペプチドを合成した。0.79mmol/g NH2置換樹脂を用いて0.2mmolのスケールでMBHA樹脂上でペプチド合成を行った。各アミノ酸は、各カップリングに対し2mmolのAA 0.48M HBTU(4ml)および1ml DIEAを10分間用い、2度カップリングさせた。樹脂の1分DMF流洗浄を伴うTFAの2×1分処理によりBoc基を除去した。
【0178】
合成が完了すると、His(DNP)基が1つの特別な配列中に存在すれば、10% DIEA/DMF溶液中20% メルカプトエタノールを用い3×30分処理により除去した。ペプチド樹脂の開裂をスカベンジャーとしてHF:p−クレゾール:p−チオクレゾール(90:8:2)を用いて−5から0℃で2時間行った。Trp(CHO)が配列中に存在すると、エタノールアミンによる処理により除去する。HFを真空で除去し、そのペプチドを冷ジエチルエーテル(3×50ml)で粉砕し、沈殿したペプチドを収集し、その後0.1% TFAを含む50%アセトニトリル中に溶解、粗ペプチドを得た。粗ペプチド(〜80mgロット)をRPHPLCにより精製し、フラクションを収集し、分析RPHPLCおよびESMSにより分析した。精製したペプチドを含むフラクションを一緒にし凍結乾燥した。
【0179】
ABI 140B溶剤送達システムを備えたPerkin Elmer Sciex(トロント、カナダ)API III Biomolecular Mass Analyzerイオン噴霧質量分析計を用いて質量スペクトルデータを収集した。生データをプログラムMassSpec(パーキンエルマーシエックス(Perkin Elmer Sciex))を用いて分析した。プログラムMacProMass(スニルベムリ&テリーリー(Sunil Vemuri & Terry Lee)、シティーオブホープ、デュレート、CA)を用いて計算質量を求めた。
【0180】
紫外線円偏光二色性(CD)
遠UV−CDスペクトルを関連する基本PCソフトウエアを備えたJasco 710 CD分光計を用いて記録した。CDスペクトルを1残基あたりの平均モル楕円率[θ]deg cm2 dmol−1対0.1nmインクリメントにおける波長のプロットとして示した。マッキントッシュ(Macintosh)上のKalidagraphプログラムを用いてデジタル化したデータをプロットした。定量アミノ酸分析によりすべてのペプチド濃度を決定した。
【0181】
1H NMR分光法
すべてのNMR実験の記録をZ−勾配ユニットを備えたBruker ARX500分光計上で行った。ペプチド濃度は95% H2O/5% D2O(T=293K)中で約3mMであった。記録されたスペクトルは400ミリ秒の混合時間でNOESY(クマール(Kumar)ら、1980年、Biochem.Biophys.Res.Comm.95 1;ジーナー(Jeener)ら、1979年、71 4546)を、85ミリ秒の混合時間でTOCSY(バックス&デイビス(Bax&Davis)、1985年、65 355)を含んだ。スペクトルは5550Hzにわたり、データポイントは4K、512FID、32−64のスキャン、リサイクル遅れ1秒であった。溶媒をWATERGATE配列を用いて抑制した(ピオット(Piotto)ら、J.Biomol.NMR、1992年、 2 661)。スペクトルをUXNMRを用いて処理した。フーリエ変換前に両方の次元において、FIDSに多項式関数をかけ、90℃シフトサイン−ベル関数を用いてアポダイズした。5次多項式を用いるベースライン較正を適用し、化学シフト値を外見上0.00ppmのDSSに対し示した。ウイシャート(Wishart)ら、1995年、J.Biomol. NMR 6 135のランダムコイルH化学シフト値を使用した。ウィスリッチ(Wuthrich)ら、1986年、タンパク質と核酸のNMR、ワイリー−インターサイエンス(Wiley−Interscience)NYの方法を用いてスペクトルを割り当てた。
【0182】
成長ホルモン増殖検定
安定してヒト成長ホルモンレセプター(hGHR)を発現するBaF−B03細胞(プロB細胞系)をこの検定で使用する。というのは、0.1ng/mL hGH(4.54pM)もの低い濃度でGH−特異応答を誘発することができる
【0183】
からである。これらの細胞はまたIL3レセプターの内因性発現を示し、培養中に生き残るためにIL3またはGM−CSFを必要とする。この検定はモスマン(Mossman)、1983年、J.Immunol.Meth.65 55の検定を基本とし、以下の手順を含む。
【0184】
(i)37℃、5%CO2下で、10%(v/v)胎児ウシ血清(FBS)および100単位/mL IL3が追加されたRPMI−1640培地において細胞を培養する。培養物をmid−log成長相に到達させる。
【0185】
(ii)500×gで細胞を遠心分離し、PBSで洗浄し、培地からIL3を除去する。遠心分離を繰り返し、1mLのRPMI−1640と0.5%(v/v)FBS中に再び懸濁させる。細胞を計数し、同じ培地中で8×105細胞/mL濃度まで希釈する。
【0186】
(iii)常に攪拌した懸濁液から、50μLの細胞を96ウエルプレートの各ウエルに添加する。
(iv)0.5%のFBS培地中で最終濃度が100nMから100μMの範囲となるようにした様々な濃度の試験すべき模倣体のストック溶液を調製する(最終体積は150μL、そのためストックは必要な最終濃度の3倍必要である)。50μLのこれらの溶液を同じ6つの細胞に添加する(すなわち、A1からA6までは同じである)。
【0187】
(v)最終濃度が0.5ng/mLとなるようにhGHのストック溶液(3倍)を調製し、1つのプレートの各ウエルに50mLを添加する。サイトカインを含まない陰性コントロールとして1つの列を含む。
【0188】
(vi)最終濃度が50単位/mLとなるようにIL−3のストック溶液(3倍)を調製し、もう1つのプレートの各ウエルに50μLを添加する。サイトカインを含まない陰性コントロールとして1つの列を含む。
【0189】
(vii)穴をあけた加湿箱内で上記インキュベーション条件下、(蒸発速度が不均一にならないように)ふたをせずにプレートをインキュベートする。インキュベーションを24時間続ける。
【0190】
(viii)50μLの4mg/mL MTT(3−[4,5−ジメチルチアゾール−2−イル]−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)を各ウエルに添加し、さらに3時間インキュベートする。
【0191】
(ix)検定を止めるために、インキュベータから取りだし、120μLのイソプロパノールを添加し、ウエルあたり数秒間あるいは細胞が明らかに溶離されるまで倍散することにより細胞を溶離する。読取前にプレートを暗闇で5分間静置する。
【0192】
(x)マイクロプレートリーダー上595nmでプレートの読取を行う。得られた値は細胞数に正比例する(ミトコンドリアデヒドロゲナーゼレベルにより測定した通り)。
【0193】
結論
これらの研究から、小さなシステインリッチタンパク質を人為的に操作することにより、望ましい生物学的特性、この場合hGHの生物学的作用を弱める能力を有する生体利用効率の高い安定した模倣体を作成することができることが示された。さらにこの発明にかかるデータベース検索戦略により、興味のある機能を有するサンプルタンパク質と共有する構造の観点から模倣体を人為的に操作するための安定した「枠組み」を識別することができることが示された。そのように識別された枠組みでは、好都合なことにサンプルタンパク質に比べ安定性が増加していた。最後に、本発明の方法により識別された枠組みは、他のアミノ酸配列改変に適しており、サンプルタンパク質の機能を付与したり、それに拮抗する機能を付与したりすることができる。
【0194】
そのため、本発明はタンパク質を人為的に操作するための新しい戦略を提供するものであり、その戦略は特に次世代の治療を構成する可能性のある模倣体の人為的操作に適用することができる。
【0195】
この発明はこの中で詳細に説明した特別な実施の形態に限定されず、この発明の広い精神および範囲と一致する他の実施の形態も含むことは当業者に理解されるであろう。
【0196】
表の簡単な説明
表1は、クエリCα−Cβベクトル、各クエリ原子の許容度およびサブセットを定義するクエリファイルの例。
表2は、SCY01溶液の血清安定性試験の結果。
表3は、SCY01溶液の酵素安定性試験の結果。
【0197】
【表1】
Figure 0004633930
【0198】
【表2】
Figure 0004633930
【0199】
【表3】
Figure 0004633930
【0200】
【表4】
Figure 0004633930
【0201】
【表5】
Figure 0004633930
【0202】
【表6】
Figure 0004633930
【0203】
【表7】
Figure 0004633930

【図面の簡単な説明】
【図1】 hGH高親和性部位アンタゴニスト枠組みシラトキシン、hGHアンタゴニストSCY01、SCY02、SCY03のアミノ酸配列およびそれらのhGH配列との整列。ジスルフィド結合はシステインをつなぐ線で示されている。
【図2】 hGHアゴニスト骨格VIB、人工分子VIB01のアミノ酸配列およびhGH配列とのアラインメント。ジスルフィド結合はシステインをつなぐ線で示されている。
【図3】 αへリックスの極めて高度のオーバーラップを示すhGH構造とhGHアゴニスト分子VIB01との比較。
【図4】 データベース検索法の図式的概観。
【図5】 1対のCα−Cβベクトルの3種の異なる表示の二次元描写:d=距離行列の構築に用いられる原子間距離;δ=二面角;α1およびα2角。
【図6】 温度変化またはへリックス安定剤トリフルオロエタノール(TFE)の添加に対してほとんど構造に変化を示さないSCY01の円偏光二色性スペクトル。
【図7】 天然シラトキシン分子と比較して示されている人工SCY01分子の構造。
【図8】 50U/ml IL−3ではなく、0.5ng/ml hGHへの細胞の増殖応答を阻害することによるBaF3細胞の増殖に及ぼすSCY01の生物学的作用。
【図9】 低親和性部位hGHアンタゴニスト枠組みZDCおよび人工hGHアンタゴニストZDC05のアミノ酸配列ならびにそれらと並置させたhGH配列。ジスルフィド結合はシステインをつなぐ線で示されている。
【図10】 VIB01の円偏光二色性スペクトル。
【図11】 hGHアゴニスト枠組みERP、人工分子ERP01、ERP02、ERP03のアミノ酸配列およびそれらのhGH配列とのアラインメント。ジスルフィド結合はシステインをつなぐ線で示されている。
【図12】 温度変化およびへリックス安定剤トリフルオロエタノールの添加に対してほとんど構造の変化を示さないERP03の円偏光二色性スペクトル。
【図13】 実質的に同一の構造およびジスルフィド結合度を示すERP01およびERP03に関する二次Hαシフトの比較。影つき帯域は、天然ERP分子の不変残基を示す。−■−=ERP03 δHA;−◆−=ERPδHA。
【図14】 CD4枠組みPTAおよびSCY、人工分子PTA CD4、SCY CD4のアミノ酸配列、ならびにそれらのCD4配列とのアラインメント。ジスルフィド結合はシステインをつなぐ線で示されている。

Claims (13)

  1. タンパク質工学方法であって、
    (i)複数のエントリを含み、各エントリが枠組みタンパク質のアミノ酸残基側鎖の3D空間における位置および配向の記述に対応するコンピュータデータベースを構築するステップであって、前記枠組みタンパク質は70以下のアミノ酸を含み、1〜11のジスルフィド結合を有し、各側鎖の位置および配向がCα−Cβベクトルとして簡略化されるステップと、
    (ii)サンプルタンパク質のある機能に必要な該サンプルタンパク質の2つ以上のアミノ酸残基それぞれの側鎖の3D空間における位置および配向の記述に対応するクエリを作成するステップであって、各側鎖の位置および配向がCα−Cβベクトルとして簡略化されるステップと、
    (iii)該クエリを使ってデータベースを検索し、それによって1つ以上のヒットを同定するステップであって、該ヒットのうち少なくとも1つが、該サンプルタンパク質と構造類似性を有する各枠組みタンパク質に対応するステップとから成る方法。
  2. Cα−Cβベクトルは距離行列表示の形式である請求項1に記載の方法。
  3. ヒットに対応する前記枠組みタンパク質のアミノ酸配列を、該枠組みタンパク質の少なくとも1つのアミノ酸残基をサンプルタンパク質の少なくとも1つのアミノ酸残基で置換して改変し、それによって改変枠組みタンパク質を作成するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
  4. 前記サンプルタンパク質の少なくとも1つのアミノ酸残基が、サンプルタンパク質の機能領域の少なくとも一部を構成する請求項3に記載の方法。
  5. 前記枠組みタンパク質のアミノ酸残基を置換する前記サンプルタンパク質のアミノ酸残基のうちの少なくとも2つが一次配列中で隣接していない請求項4に記載の方法。
  6. 改変された枠組みタンパク質は、サンプルタンパク質よりも安定性が増大している請求項3乃至5のいずれかに記載の方法。
  7. 改変された枠組みタンパク質は、サンプルタンパク質との構造類似性が増大している請求項3乃至6のいずれかに記載の方法。
  8. 改変された枠組みタンパク質は、前記サンプルタンパク質の機能に類似する機能か、またはその機能を阻害する機能を示し得る請求項7に記載の方法。
  9. サンプルタンパク質はサイトカインである請求項1乃至8のいずれかに記
    載の方法。
  10. サイトカインは、GH,IL−4,IL−6およびG−CSFからなる群から選択される請求項9に記載の方法。
  11. ステップ(iii)において、ヒットが前記サンプルタンパク質との構造類似性に従ってランク付けされる請求項1に記載の方法。
  12. ステップ(iii)の検索は、
    (a)クリーク検出による前記ヒットの同定
    (b)ステップ(a)で同定した前記ヒットのフィルタリング
    を含む請求項1に記載の方法。
  13. 前記枠組みタンパク質が、ZDC、VIB、SCYおよびERPから成る群から選択される請求項1乃至12のいずれかに記載の方法。
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