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JP4639764B2 - 円筒状ターゲット及び成膜方法 - Google Patents
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JP4639764B2 - 円筒状ターゲット及び成膜方法 - Google Patents

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本発明は、薄膜形成に用いられるマグネトロンスパッタリング装置、特に、アーキングが少なく安定して薄膜を成膜できる、交流マグネトロンスパッタリング装置に適用される円筒状ターゲット及び成膜方法に関する。
ガラスやプラスチックなどの基材に薄膜を形成する技術の一つとしてマグネトロンスパッタリング法が知られている。特許文献1には、回転する円筒形のターゲットを使用するスパッタリングシステムが開示されている。この装置は、円筒状ターゲットの内側に磁石を有し、ターゲットの内側に冷却液を流すことによりターゲットを冷却しつつ、ターゲットを回転させながらスパッタを行う装置である。円筒状ターゲットは、プレーナー型と称される平板形状ターゲットと比較して使用効率が高く、高速成膜が可能であるという利点がある。
また、本願出願人は特許文献2において、Si含浸SiC(ケイ素含浸炭化ケイ素)で製作されたターゲット材料、SUSで製作されたバッキングチューブ、及びターゲット材料とバッキングチューブとを接合する接合材として圧縮変形可能なシート状の緩衝部材を提案している。この円筒状ターゲットによれば、カーボンフェルト等の緩衝部材の介在により、使用時におけるターゲット材料とバッキングチューブとの熱膨張差に起因するターゲット材料の割れを防止している。
特表平5−501587号公報 特開2002−155356号公報
しかしながら、接合材としてカーボンフェルトを使用した特許文献2の円筒状ターゲットは、冷却液が流れるバッキングチューブは冷却されるものの、カーボンフェルトの断熱性の高さに起因してターゲット材料が効果的に冷却されず、ターゲット材料の温度が過度に上昇し、成膜装置(コーター)の構成部品であるフッ素ゴム製のOリングが損傷したり、アルミニウム製の防着板が変形したりするという問題があった。
この不具合は、カーボンフェルトをカーボンシートに交換することにより解消できる。つまり、カーボンシートはカーボンフェルトと比較して熱伝導性が数倍よいため、バッキングチューブに供給されている冷却液によって効果的に冷却されるからである。
しかしながら、接合材としてカーボンシートを用いるとともにSUS製のバッキングチューブを用いた円筒状ターゲットは、スパッタレート(成膜速度)を上げるためにターゲット材料に投入する電力の電力密度を上げると、バッキングチューブが熱膨張して焼結体のターゲット材料が破損するという問題があった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、ターゲット材料を損傷させることなく成膜速度を上げることができる円筒状ターゲット及び成膜方法を提供することを目的とする。
請求項1に記載の円筒状ターゲットの発明は、前記目的を達成するために、円筒状のバッキングチューブの外周に、中空円筒形状のターゲット材料が配置されるとともに、前記バッキングチューブと前記ターゲット材料の間に接合材を介在させてバッキングチューブとターゲット材料とが接合されてなる円筒状ターゲットにおいて、前記ターゲット材料は、Si含浸SiCであり、前記バッキングチューブは、JIS R1618の規定による20〜600℃での平均線膨張率(以下、単に平均線膨張率という)が前記ターゲット材料よりも高く、且つ12×10−6/K以下の材料で製作され、前記接合材は、インジウム金属であることを特徴としている。
請求項1に記載の円筒状ターゲットによれば、まず、ターゲット材料としては、平均線膨張率が3.5〜5.5×10-6/KのSi含浸SiCを使用する。ここでSi含浸SiCとは、後述の通り炭化ケイ素の焼結体にケイ素を含浸させたものである。
そして、平均線膨張率がターゲット材料よりも高く、且つ12×10-6/K以下の材料からなるバッキングチューブを使用することにより、平均線膨張率が17.3×10-6/KのSUS製のバッキングチューブに対して温度上昇による熱膨張量を抑える。なお、本願明細書において、平均線膨張率を20〜600℃の範囲に規定した理由は、一般にターゲット材料の内側及びバッキングチューブは、スパッタ成膜時の温度が20〜600℃の範囲内にあると考えられているからである。
そして更に、バッキングチューブとターゲット材料を接合する接合材として、インジウム金属を採択し、バッキングチューブとターゲット材料との間の熱伝導性を高め、ターゲット材料に高電力密度の電力を投入した際のターゲット材料の過度の温度上昇を阻止し、コーターの内部部品の損傷を防止する。
これにより、Si含浸SiCで製作されたターゲット材料を高速成膜で使用した場合の割れを防止することができる。また、バッキングチューブの平均線膨張率を、ターゲット材料の平均線膨張率よりも大きく設定する理由について説明すると、バッキングチューブの平均線膨張率がターゲット材料の平均線膨張率よりも小さいと、温度上昇時にバッキングチューブとターゲット材料との間の隙間が初期値よりも大きくなり、この結果、接合材による熱伝導がしにくくなりターゲット材料が高温化し、コーターを損傷させるという問題が発生するからである。また、接合材の接合力も低下するため、ターゲット材料が回転不能になるという問題も発生するからである。また、バッキングチューブの平均線膨張率が12×10-6/Kを超えると、バッキングチューブが熱膨張することにより、バッキングチューブがターゲット材料を内側から外側へ圧迫するため、ターゲット材料に応力が発生し、ターゲット材料に割れが発生するおそれがあるので好ましくない。
なお、接合材の役割は、放電によりターゲット上に発生した熱をバッキングチューブの内側を流れる冷却液で放熱するため、ターゲット材料とバッキングチューブとの熱的な伝達を行うことにある。接合材がインジウム金属の場合は、インジウムの熱伝導率が81.6W/m・kと熱伝導性に優れることから好ましく、また、液化して固化させることにより接合するため、ターゲット材料とバッキングチューブを密着性よく接合できることから好ましい。また、カーボンシートの場合は、常温で接合することができ、また、バッキングチューブの再利用が容易であることから好ましい。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記バッキングチューブは、チタン若しくはモリブデンを60質量%以上含有する合金、又はチタン若しくはモリブデンからなることを特徴としている。
請求項2に記載の円筒状ターゲットによれば、例えばバッキングチューブとして、平均線膨張率が8.8×10-6/Kのチタン、平均線膨張率が5.1×10-6/Kのモリブデンを採択できる。モリブデンを採択する場合は、Si含浸SiCターゲット材料の平均線膨張率が、モリブデンよりも小さいものを使用する。また、チタンを60質量%以上含有するチタン合金の添加元素は、Pd、Mo、Ni、Ta、Al、Sn、Zr、Nb、Si、Cu、V、Bi、Mn、Cr、Ru、及びFeからなる群より選ばれる一つ以上の元素である。また、モリブデンを60質量%以上含有するモリブデン合金の添加元素は、Ti、Zr、W、Nb、及びCからなる群より選ばれる一つ以上の元素である。
請求項に記載の成膜方法の発明は、請求項1又は2のうちいずれか一つに記載の円筒状ターゲットを使用して、電力密度1〜10W/cmの電力でスパッタリングを行うことにより基材に成膜することを特徴としている。
本発明の円筒状ターゲットは、高電力密度の電力をターゲット材料に投入しても割れ等の損傷は発生しないが、電力密度が10W/cm2 を超えると、ターゲット材料の温度が上昇していき、バッキングチューブ内を流れる冷却液の冷却能ではターゲット材料が十分に冷却されなくなるので、コーターの損傷を引き起こす。これにより、電力密度の上限を10W/cm2 に設定する。
ここで、電力密度Q(W/cm2 )とは、交流電源電力:P(W)、円筒状ターゲット材料の外径:D(cm)、円筒状ターゲット材料の長さ:L(cm)としたときに、ターゲット材料一本につき、スパッタリングされる外面の面積は、πDL(cm2 )であるので、コーター内にターゲット材料を一本設置した場合の電力密度は、Q=P/πDL(W/cm2 )の式で導くことができ、また、コーター内にターゲット材料を二本設置した場合の電力密度は、Q=P/2πDL(W/cm2 )の式で導くことができる。
以上説明したように本発明に係る円筒状ターゲット及び成膜方法によれば、ターゲット材料をSi含浸SiCで製作し、平均線膨張率がターゲット材料よりも高く、且つ12×10-6/K以下の材料でバッキングチューブを製作し、接合材をカーボンシート又はインジウム金属としたので、ターゲット材料を損傷させることなく成膜速度を上げることができる。また、円筒状ターゲットに投入する電力の電力密度の上限を10W/cm2 に設定したので、装置部品を損傷させることがない。
以下添付図面に従って本発明に係る円筒状ターゲット及び成膜方法の好ましい実施の形態について説明する。
図1は、本発明の実施の形態である円筒形ターゲットが適用されたマグネトロンスパッタリングシステム12の構成図である。同図に示す円筒状ターゲット10については、内部構造を示すため切断面図として示されている。プラズマが生成される密閉反応室14内は真空が保たれ、成膜対象の基材16が2本の円筒状ターゲット10、10の下方に設置される。
基材16としては、ガラス、プラスチックが挙げられる。プラスチックとしては、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC)、トリアセテート(TAC)、ポリエーテルサルフォン(PES)、ポリエチレンナフタレートフィルム(PEN)、ポリイミド(PI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルエーテルケトンが挙げられる。基材16は、いずれの材質のものも、厚さ15mm以下のものが好ましく、ガラスの場合は0.5〜15mmのものが特に好ましい。
円筒状ターゲット10は、バッキングチューブ18の外周に中空円筒状のターゲット材料20が配置されるとともに、バッキングチューブ18とターゲット材料20との間に図2、図3に示すカーボンシート22が挿入されてバッキングチューブ18とターゲット材料20とが接合されている。
ターゲット材料20とは、炭化ケイ素(SiC)とケイ素(Si)を含み、Siに対するCの原子比が0.5〜0.95であり、かつ密度が2.75×103 〜3.1×103 kg/m3 の材料である。
ターゲット材料20の製造方法は、第1工程として、SiC粉末原料を金型及びゴム型に充填し、CIP(冷間静水圧プレス)成形法にて円筒状の成形体を得る。第2工程として、必要に応じて成形体加工により必要な寸法に仕上げる。第3工程として、成形体を真空中またはアルゴン、窒素等の非酸化性雰囲気下で1450℃〜2300℃の温度で焼成して焼結体を得る。第4工程として、得られた成形体または焼結体に、溶融ケイ素を、真空中または減圧非酸化雰囲気中、1450℃〜2200℃の温度で含浸させ、成形体または焼結体の気孔をケイ素で満たしてSi含浸SiCのターゲット材料を得る。第5工程として、必要に応じてSi含浸SiCを研削加工により必要な寸法に仕上げてターゲット材料とする。以上の工程によりターゲット材料20が製作される。
なお、カーボンシート22は、天然黒鉛を主原料とし、これに特殊な化学処理を加えて得た膨張黒鉛粒子を圧延加工してシート状にした可撓黒鉛材料である。前記化学処理は、天然黒鉛を膨張させるための酸処理であり、これを高温にすることにより絡み合いのある綿状の膨張黒鉛が得られ、これを圧延加工することによりカーボンシート22が製造される。カーボンシート22の性質としては耐熱性、耐薬品性、潤滑性、柔軟性に優れ、厚さ0.2〜2mmであり、密度0.5〜1.5g/cm3 、厚さ方向熱伝導率2〜6W/m・K、厚さ方向体積固有抵抗0.01〜0.1Ω・cmである。また、図1に示したように、バッキングチューブ18内には磁石ユニット24が収容されている。バッキングチューブ18は、水その他の冷却液がその内部に通されることにより冷却され、バッキングチューブ18が冷却されることにより、カーボンシート22を介してターゲット材料20が所定の温度に冷却される。
ターゲット材料20を保持したバッキングチューブ18は、ターゲット駆動装置26により長手方向の軸の回りに回転可能に支持されている。図1では、平板状の基材16が水平に保持され、円筒状ターゲット10の長手方向の軸も水平に保持されているが、基材16と円筒状ターゲット10の配置関係はこれに限定されない。
磁石ユニット24は、バッキングチューブ18の軸に沿って平行な3列の磁極28、30、32を含む。磁極28、30及び32はそれぞれ、N極、S極、及びN極を有するように配置され、磁力線はバッキングチューブ18を貫通して反対の極性を有する隣接の磁極に入る。この磁極配置により、磁気トンネルが生成され、スパッタリング速度の高速化が達成されている。
スパッタリングを生じさせるために必要なカソード電位Vは、交流電源34から電力線36を介して一方のバッキングチューブ18に供給され、電力線38を介して他方のバッキングチューブ18にも供給される。また、スパッタリングに必要な低圧を得るために、密閉反応室14は真空ポンプ39と連結される出口チューブ40を備えている。
密閉反応室14には、スパッタリングに必要なガスを与えるためのガス供給手段42が設けられている。
図2は、図1に示した円筒状ターゲットの斜視図であり、図3は図2の3−3線に沿う断面図、図4はターゲット製造時の分解斜視図である。
これらの図面に示したように、円筒状ターゲット10は、内筒であるバッキングチューブ18と、外筒である円筒形のターゲット材料20の間に接合材としてのカーボンシート22を介挿させることにより両者が接合されて構成される。なお、カーボンシート22に代えて、ターゲット材料20とバッキングチューブ18との間の隙間に、溶かしたインジウム金属を流し込んで両者を接合することもできる。インジウム金属の厚さもカーボンシート22と同様に、0.2〜2mmである。
ターゲット材料20は、SiO2 (シリコン酸化物)膜を成膜するSi含浸SiC製の中空円筒形状体であり、例えば、長さ:0.4〜4m、外径:φ70〜180mm、内径:φ60〜140mm、厚さ:5〜20mmのものが用いられる。
ターゲット材料20を支持するバッキングチューブ18は、平均線膨張率がターゲット材料よりも高く、且つ12×10-6/K以下の材料、例えば平均線膨張率が8.8×10-6/Kのチタンによって製作されている。なお、チタン製のバッキングチューブ18に代えて、平均線膨張率が5.1×10-6/Kのモリブデン製のバッキングチューブでも使用できる。ただし、バッキングチューブ18の材質は、ターゲット材料20よりも平均線膨張率が大きい材質のもを採択する必要がある。Si含浸SiC焼結体の平均線膨張率は、20〜600℃において3.5〜5.5×10-6/Kである。
一方、バッキングチューブ18は、ターゲット材料20の寸法に対応して例えば、長さ:0.4〜4m、外径:φ60〜140mm、内径:φ50〜136mm、厚さ:2〜5mmのものが用いられる。
図4に示したように、ターゲット材料20の内面にカーボンシート22を設け、これを専用の治具(不図示)を用いてバッキングチューブ18の外側に挿嵌する。これにより、ターゲット材料20とバッキングチューブ18とがカーボンシート22を介して接合される。
また、ターゲット材料20の内周面は未加工の場合、内径精度が±0.5mmであるため、研削加工等により内径精度が±0.1mm(最大値と最小値との差≦0.2mm)に仕上げられている。また、バッキングチューブ18の外周面は未加工の場合、例えば引き抜き材の場合、外径精度が±0.3mmのため切削加工等により外径精度が±0.1mm(最大値と最小値との差≦0.2mm)に仕上げられている。バッキングチューブ18とターゲット材料20の間の隙間に、隙間とほぼ同等の厚みのカーボンシート22を配置することによりバッキングチューブ18とターゲット材料20とが隙間なく接合されている。すなわち、バッキングチューブ18とターゲット材料20との密着度が良好になる。
このように構成された実施の形態の円筒状ターゲットによれば、まず、バッキングチューブ18とターゲット材料20を接合する接合材として、カーボンシート22又はインジウム金属を採択した。
これにより、バッキングチューブ18とターゲット材料20との間の熱伝導性が高められるため、ターゲット材料20に高電力密度の電力を投入した際のターゲット材料20の過度の温度上昇を阻止することができ、結果的にコーターの内部部品の損傷を防止することができる。
次に、平均線膨張率がターゲット材料よりも高く、且つ12×10-6/K以下の材料、例えばチタンによってバッキングチューブ18を製作することにより、平均線膨張率が17.3×10-6/KのSUS製のバッキングチューブに対して温度上昇によるバッキングチューブ18の熱膨張を抑えることができる。
これにより、平均線膨張率が3.5〜5.5×10-6/KのSi含浸SiCで製作されたターゲット材料の割れを防止することができる。また、バッキングチューブ18の平均線膨張率が12×10-6/Kを超えた材料では、バッキングチューブ18が熱膨張することによって、バッキングチューブ18がターゲット材料20を内側から外側へ圧迫するため、ターゲット材料20に応力が発生し、ターゲット材料20に割れが発生するおそれがあるので好ましくない。
また、バッキングチューブ18の平均線膨張率を、ターゲット材料20の平均線膨張率よりも大きく設定する理由について説明すると、バッキングチューブ18の平均線膨張率がターゲット材料20の平均線膨張率よりも小さいと、温度上昇時にバッキングチューブ18とターゲット材料20との間の隙間が初期値よりも大きくなり、この結果、熱伝導性が低下してターゲット材料20の温度が高温化し、コーターを損傷させるという問題が発生するからである。また、ターゲット材料20とバッキングチューブ18の接合力も低下するため、ターゲット材料20が回転不能になるという問題も発生するからである。
更に、バッキングチューブ18の平均線膨張率は、8〜10×10-6/Kの範囲であることが特に好ましい。これにより、他の変動因子(冷却液量、投入電力、接合密着性等) の影響を受けることがなく、バッキングチューブ18とターゲット材料20の密着度を良好に維持して安定した成膜ができる。
以上の理由から、バッキングチューブ18においては、平均線膨張率がターゲット材料よりも高く、且つ12×10-6/K以下の材料で製作することが重要となる。したがって、本発明の円筒状ターゲットによれば、Si含浸SiCのターゲット材料20を損傷させることなく成膜速度を上げることができる。
一方、バッキングチューブ18として、平均線膨張率が5.1×10-6/Kのモリブデンを採択することもできるが、バッキングチューブ18は、ターゲット材料20の種類によって、ターゲット材料20よりも平均線膨張率が大きい材質のものを採択する必要がある。
また、密閉反応室14による成膜方法によれば、円筒状ターゲットを使用して、電力密度1〜10W/cm2 の電力でスパッタリングを行うことにより基材16の上にシリコン酸化物の薄膜を形成する。また、特に好ましい電力密度の範囲は、3〜10W/cm2 である。
実施の形態の円筒状ターゲットは、高電力密度の電力をターゲット材料に投入しても割れ等の損傷は発生しないが、電力密度が10W/cm2 を超えると、ターゲット材料20の温度が過度に上昇し、バッキングチューブ18内を流れる冷却液の冷却能ではターゲット材料20が十分に冷却されなくなるので、コーターの損傷を引き起こす。これにより、実施の形態の成膜方法は、電力密度の上限を10W/cm2 に設定している。
また、平均線膨張率が12×10-6/K以下を満足するチタン合金であっても、本発明の円筒状ターゲットに適用できる。このチタン合金の添加元素は、Pd、Mo、Ni、Ta、Al、Sn、Zr、Nb、Si、Cu、V、Bi、Mn、Cr、Ru、及びFeからなる群より選ばれる一つ以上の元素である。また、平均線膨張率が12×10-6/K以下を満足するモリブデン合金であっても、本発明の円筒状ターゲットに適用できる。このモリブデン合金の添加元素は、Ti、Zr、W、Nb、及びCからなる群より選ばれる一つ以上の元素である。
(実施例1)
スパッタリング装置を用いて、下記の条件で連続放電実験を行った。スパッタリング装置には、2本の円筒状回転カソードおよびそこに交流電圧を印加する交流電源を設置した。
バッキングチューブ材質:チタン
バッキングチューブ外径(最大値と最小値との差≦0.2mm):φ134.6mm、内径:φ125mm
ターゲット材料:
・炭化ケイ素(SiC)とケイ素(Si)とを含有する円筒状ターゲット材料(炭化ケイ素(SiC)70体積%、ケイ素(Si)30体積%;原子数比C/Si≒0.7)
このターゲット材料は、炭化ケイ素粉末原料の円筒状成形体を1800℃の温度で焼成して焼結させた後、溶融ケイ素を1700℃の温度で含浸させることにより得られた。
ターゲット材料外径:φ156mm、内径(最大値と最小値との差≦0.1mm):φ136.5mm
・密度3.0×103 kg/m3 (相対密度約100%)
・比抵抗1.2×10-3Ω・m
・レーザーフラッシュ法で測定された熱伝導率150W/m・K
・X線回折分析でSiCとSiの結晶相のみが観測され、SiはSiC粒子の隙間を埋めるように存在し連続体となっていた。
・ICP(誘導結合型プラズマ発光分光分析)法による金属不純物の量は、ターゲットの総量に対して1質量%以下であった。
カーボンシート厚み:1mm、密度:1.0g/cm3
バッキングチューブとターゲット材料との接合方法:バッキングチューブとターゲット材料との間の0.95mmの隙間に、厚み1mmのカーボンシートを充填してバッキングチューブとターゲット材料とを接合した。
ターゲット面積:3580cm2
雰囲気:Arガス210sccm、O2 ガス190sccm
成膜中圧力:4.1×10-3hPa
交流の周波数:31kHz
交流電源電力:30kW
電力密度:4.2W/cm2
円筒状ターゲットの回転速度:15rpm
放電開始から24時間経過してもターゲット材料には割れ等の異常は観察されず、正常な放電を続けることができた。
(実施例2)
バッキングチューブとターゲット材料との接合法をIn(インジウム)ボンディングに変更する以外は実施例1と同様の方法により、連続放電実験を行う。放電開始から24時間経過してもターゲットには割れ等の異常は観察されず、正常な放電を続けることができる。なお、Inボンディングの厚みは0.5mmである。
(比較例1)
バッキングチューブの材質をSUS304に変更した以外は実施例1と同様の方法により、連続放電実験を行った。放電開始から5時間後、ターゲット材料が割れ、それ以上放電を続けることができなかった。これは、SUS304の熱膨張量が、チタンの熱膨張量よりも大きいことが原因であった。
(比較例2)
バッキングチューブの材質をSUS304に変更する以外は実施例2と同様の方法により、連続放電実験を行う。放電開始から3時間後、ターゲット材料が割れ、それ以上放電を続けることができない。これも同様に、SUS304の熱膨張量が、チタンの熱膨張量よりも大きいことが原因と考えられる。
(比較例3)
バッキングチューブとターゲット材料との接合法を、厚み2mmのカーボンフェルトはさみ込みに変更する以外は比較例1と同様の方法により、連続放電実験を行う。放電開始から2時間後、コーターのフッ素ゴム製のOリングが焼損し、アルミニウム製の防着板が変形することが予測される。これは、カーボンフェルトの断熱効果により、ターゲット材料の温度が過剰に上昇したことが原因と考えられる。なお、カーボンフェルトとは、炭素繊維を原料としたフェルト状に加工した製品で、嵩密度が小さく圧縮性、断熱性に優れるものである。カーボンフェルトの初期状態の密度は0.12g/cm3 であり、初期状態の厚み方向の体積固有抵抗は8Ω・cmである。また、バッキングチューブとターゲット材料との間の隙間は平均で1mmであるため、この時のカーボンフェルトの圧縮率は50%である。
本発明の円筒状ターゲットが適用される円筒形マグネトロンスパッタリングシステムの構成図 本発明の実施形態に係る円筒状ターゲットの斜視図 図2の3−3線に沿う断面図 本例の円筒状ターゲットの製造時の分解斜視図
符号の説明
10…円筒状ターゲット、12…円筒形マグネトロンスパッタリングシステム、14…密閉反応室、16…基材、18…バッキングチューブ、20…ターゲット材料、22…カーボンシート、24…磁石ユニット、26…ターゲット駆動装置、28、30、32…磁極、34…交流電源、36、38…電力線、39…真空ポンプ、40…出口チューブ、42…ガス供給手段

Claims (3)

  1. 円筒状のバッキングチューブの外周に、中空円筒形状のターゲット材料が配置されるとともに、前記バッキングチューブと前記ターゲット材料の間に接合材を介在させてバッキングチューブとターゲット材料とが接合されてなる円筒状ターゲットにおいて、
    前記ターゲット材料は、Si含浸SiCであり、
    前記バッキングチューブは、JIS R1618の規定による20〜600℃での平均線膨張率が前記ターゲット材料よりも高く、且つ12×10−6/K以下の材料であり、
    前記接合材は、インジウム金属であることを特徴とする円筒状ターゲット。
  2. 前記バッキングチューブは、チタン若しくはモリブデンを60質量%以上含有する合金、又はチタン若しくはモリブデンからなることを特徴とする請求項1に記載の円筒状ターゲット。
  3. 請求項1又は2のうちいずれか一つに記載の円筒状ターゲットを使用して、電力密度1〜10W/cmの電力でスパッタリングを行うことにより基材に成膜することを特徴とする成膜方法。
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