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JP4639772B2 - 車両制動装置 - Google Patents
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JP4639772B2 - 車両制動装置 - Google Patents

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Description

本発明は、回生制動装置と液圧制動装置とを含む車両制動装置に関するものである。
特許文献1には回生制動装置と液圧制動装置とを含む車両制動装置が記載されている。この車両制動装置においては、ブレーキシリンダがマスタシリンダから遮断された状態で制動力の制御が行われる。回生制動トルクが最大値に達する以前は、回生制動トルクによって要求総制動トルクが満たされ、回生制動トルクが最大値に達した後は、液圧制動トルクと回生制動トルクとによって要求総制動トルクが満たされる。
特許文献2には、回生制動装置とエアブレーキ装置とを含む車両制動装置が記載されている。エアブレーキ装置は、(a)エアタンクと、(b)そのエアタンクの下流側に設けられ、ブレーキペダルの開度に応じた開度で開閉させられるブレーキバルブと、(c)そのブレーキバルブの出力側に設けられ、前後の差圧が設定圧に達すると閉状態から開状態に切り換えられる差圧弁(減圧弁)と、(d)その差圧弁の下流側に設けられたサービスブレーキとを含む。差圧弁の閉状態においては、回生制動トルク(補助ブレーキにより車輪に加えられる回生制動トルク)により車輪の回転が抑制され、開状態においては、回生制動トルクとサービスブレーキによる制動トルクとによって車輪の回転が抑制される。
特開2001−260834号公報 特開平6−1220号公報
本発明の課題は、簡単な構造の車両制動装置において制動力制御が行われる場合に、エネルギ効率の向上を図ることである。
課題を解決するための手段および効果
請求項1に係る車両制動装置は、(a)車両の駆動輪に接続された電動モータの回生制動により、回生制動トルクを付与し、駆動輪の回転を抑制する回生制動装置と、(b)ブレーキシリンダへの液圧の供給により作動して液圧制動トルクを付与し、前記車両の前記駆動輪を含む複数の車輪の回転をそれぞれ抑制する複数の液圧ブレーキを含む液圧制動装置と、(c)それら回生制動トルクと液圧制動トルクとを含む総制動トルクが運転者の要求する要求総制動トルクに近づくように、少なくとも前記回生制動装置を制御する制動力制御装置とを含む車両制動装置であって、前記液圧制動装置が、(1)ブレーキ操作部材と、(2)そのブレーキ操作部材に連携させられた作動ピストンを含み、その作動ピストンの前進により液圧を発生させるマニュアル液圧源であって、(i)(a)ブースタ入力部材と、(b)そのブースタ入力部材に連携させられた前記作動ピストンとしてのパワーピストンとを備え、前記ブレーキ操作部材に加えられた操作力を倍力してブースタ出力部材に出力するブースタと、(ii)前記ブースタ出力部材に連携させられた加圧ピストンを備え、その加圧ピストンの前進により液圧を発生させるマスタシリンダとを含むものと、(3)そのマニュアル液圧源に発生させられた液圧を前記複数のブレーキシリンダに供給して、前記液圧ブレーキを作動させるマニュアル液圧伝達装置と、(4)前記ブースタの外部の、前記ブレーキ操作部材と前記ブースタ入力部材との間に設けられ、(i)前記ブレーキ操作部材に連携させられたブレーキ操作入力部材と、(ii)前記ブースタ入力部材に連携させられたブレーキ操作出力部材と、(iii)これらブレーキ操作入力部材とブレーキ操作出力部材との間に設けられ、これら両部材間の力の伝達を行うとともに、前記ブレーキ操作入力部材の前記ブレーキ操作出力部材に対する軸方向の相対移動を許容する相対移動許容状態と、これらの軸方向の相対移動を阻止する相対移動阻止状態とをとり得る伝達機構と、(iv)その伝達機構を、電気的信号によって前記相対移動許容状態と前記相対移動阻止状態とに切り換えるとともに、前記回生制動装置が異常である場合に前記相対移動阻止状態とし、前記回生制動装置が正常である場合に前記相対移動許容状態とする伝達制御装置とを備え、前記伝達機構が、前記相対移動許容状態において、前記ブレーキ操作部材の操作ストロークが前記回生制動装置において出力可能な最大の回生制動トルクの大きさに基づいて決まる設定ストロークより大きくなると、前記相対移動阻止状態に切り換わる液圧勾配抑制装置とを含むものとされる。
本項に記載の車両制動装置は回生制動装置と液圧制動装置とを含む。液圧制動装置においては、マニュアル液圧源において発生させられた液圧がマニュアル液圧伝達装置によってブレーキシリンダに供給され、その供給されたマニュアル液圧によって液圧ブレーキが作動させられる。そして、ブレーキシリンダがマニュアル液圧源から遮断されるのではなく、マニュアル液圧源から作動液が供給され得る状態で制動力の制御が行われる。その結果、フェールセーフのための機構等が不要となり、その分、構造を簡単にすることができる。
また、制動力の制御が行われる場合には、回生制動トルクがその時点において出力可能な最大値に達する以前においては、要求総制動トルクが回生制動トルクによって満たされるようにすることがエネルギ効率を高める点において望ましい。それに対して、マニュアル液圧伝達装置によりマニュアル液圧源の液圧がブレーキシリンダに伝達されて液圧ブレーキが作動させられる場合には、マニュアル液圧源に液圧が発生させられると必ず液圧制動トルクが加えられることになる。この場合には、回生制動トルクと液圧制動トルクとの和が要求総制動トルクとなるようにするために、回生制動トルクを抑制しなければならず、エネルギ効率が低下する。
そこで、本項に記載の車両制動装置においては、操作ストロークが設定ストローク以下の状態では設定ストロークより大きい状態より、ブレーキ操作部材の操作ストロークの増加に対するマニュアル液圧源の液圧の増加勾配が小さくされる。増加勾配が小さくされることにより、要求総制動トルクが小さい間、すなわち、ブレーキ操作部材の操作ストロークが設定ストローク以下の状態においては、マニュアル液圧源において発生させられる液圧が抑制され、ブレーキシリンダの液圧が抑制される。その結果、要求総制動トルクを満たすために回生制動トルクを大きくすることができ、エネルギ効率を向上させることができる。
なお、マニュアル液圧伝達装置は、ブレーキ回路のうちの、マニュアル液圧源とブレーキシリンダとを連通させる液通路等によって構成されるものとすることができるが、それに限らない。マニュアル液圧源とブレーキシリンダとの間に設けられ、それらを少なくとも連通状態と遮断状態とに切り換え可能な電磁制御弁およびその電磁制御弁を連通状態とする電磁制御弁制御部等を含む。少なくとも制動力制御装置によって制動力の制御が行われる場合において、マニュアル液圧源とブレーキシリンダとが連通状態に保たれればよい。
換言すれば、本発明は、ブレーキ回路の構造によってマニュアル液圧源とブレーキシリンダとが常に連通状態にある液圧制動装置は勿論、ブレーキ回路の構造は問わず、制動力の制御が行われる場合に、ブレーキシリンダとマニュアル液圧源とが連通状態にある液圧制動装置にも適用することができる。
設定ストロークは、液圧勾配抑制装置が設けられない場合において、操作ストロークが設定ストロークである場合にマニュアル液圧源において発生させられた液圧がブレーキシリンダに伝達されることにより液圧ブレーキが作動して車輪に加えられる液圧制動トルクが、回生制動装置において発生させられる回生制動トルクの最大値に基づいて決まる設定制動トルクに対応する大きさとなる大きさである。上述のマニュアル液圧源の液圧により液圧ブレーキが作動させられた場合の液圧制動トルクは、操作ストロークが設定ストロークである場合の要求総制動トルクに対応する大きさであると考えることができる。
設定制動トルクは、回生制動トルクの最大値としても、最大値より大きい値としても、最大値より小さい値としてもよい。しかし、マニュアル液圧伝達装置によりマニュアル液圧源に液圧が発生させられると、必ず、その液圧がブレーキシリンダに供給される場合等液圧制動トルクをマニュアル液圧源の液圧に対応する値より小さくできない場合には、設定制動トルクは、回生制動トルクの最大値以上とすることが望ましい。設定制動トルクが最大値より小さくされると、回生制動トルクを最大値まで大きくすることができず、望ましくないからである。
各時点において回生制動装置によって発生させられる回生制動トルクの最大値は、蓄電装置における充電可能な容量、電動モータの回転数等によって決まる。一方、回生制動装置において発生可能な回生制動トルクの最大値は、回生制動装置の構造(例えば、電動モータの種類、電動モータと車輪との間の駆動伝達機構における減速比、電動モータに加わる負荷、蓄電装置の能力等)によって決まるが、例えば、蓄電装置について考えると、蓄電装置における充電量(実際に充電されている電気エネルギの量をいう)は設定範囲内に保たれるように制御されるのが普通であるため、充電可能な電気エネルギの容量は充電量が0の状態からフルの状態まで蓄えられることを想定しているのではなく、上述のように充電量が設定範囲内に保たれることを前提として決まるものである。このように、回生制動装置において発生させられる回生制動トルクの最大値は、回生制動装置の作動状態を想定して、それに基づいて決められる値であり、回生制動装置の構造、能力を最大限に利用した場合に出力可能な大きさという意味ではない。
マニュアル液圧源は、ブレーキ操作部材に連携させられた作動ピストンとしてのパワーピストンを備え、ブレーキ操作部材に加えられた操作力を倍力するブースタと、ブレーキ操作部材に連携させられた作動ピストンとしての加圧ピストンを備え、加圧ピストンに加えられた前進方向の力に応じた液圧を発生させるマスタシリンダとの少なくとも一方を含む。ブースタは、バキュームブースタであっても、液圧ブースタであってもよく、バキュームブースタである場合には、マニュアル液圧源は、バキュームブースタとマスタシリンダとを含み、マスタシリンダにおいて、バキュームブースタの出力部材に連携させられた加圧ピストンの前進によって液圧が発生させられる。ブースタが液圧ブースタである場合には、この液圧ブースタの液圧がブレーキシリンダに供給されるようにしても、マスタシリンダにおける加圧ピストンが液圧ブースタの出力部材に連携させられ、加圧ピストンの前方の加圧室の液圧がブレーキシリンダに供給されるようにしてもよい。また、ブースタを含まないで、マスタシリンダを含むものとすることもできる。
いずれにしても、ブレーキ操作部材の操作ストロークが設定ストローク以下の状態においては設定ストロークより大きい状態におけるより、液圧ブースタあるいはマスタシリンダにおける液圧の増加勾配が小さくされる。マスタシリンダにおける液圧の増加勾配が小さくされる場合には、マスタシリンダ自体において液圧の増加勾配が小さくされる場合とブースタにおける出力の増加勾配が小さくされることによってマスタシリンダにおける液圧の増加勾配が小さくされる場合とがある。いずれにしても、マニュアル液圧源において無駄に液圧が発生させられることを回避することができる。
液圧勾配抑制装置はマニュアル液圧源の外部に設けられるが、マニュアル液圧源と同じハウジング内に設けられる場合と異なるハウジングに設けられる場合とがある。
特許請求可能な発明
以下に、本願において特許請求が可能と認識されている発明(以下、「請求可能発明」という場合がある。請求可能発明は、少なくとも、請求の範囲に記載された発明である「本発明」ないし「本願発明」を含むが、本願発明の下位概念発明や、本願発明の上位概念あるいは別概念の発明を含むこともある。)の態様をいくつか例示し、それらについて説明する。各態様は請求項と同様に、項に区分し、各項に番号を付し、必要に応じて他の項の番号を引用する形式で記載する。これは、あくまでも請求可能発明の理解を容易にするためであり、請求可能発明を構成する構成要素の組み合わせを、以下の各項に記載されたものに限定する趣旨ではない。つまり、請求可能発明は、各項に付随する記載,実施例の記載等を参酌して解釈されるべきであり、その解釈に従う限りにおいて、各項の態様にさらに他の構成要素を付加した態様も、また、各項の態様から構成要素を削除した態様も、請求可能発明の一態様となり得るのである。
以下の各項のうち、(4)項、(5)項に従属する(6)項、(8)項が請求項4〜6に対応する。また、(15)項に従属する(17)項が請求項2に対応し、(18)項が請求項3に対応し、(21)項が請求項1に対応する。
(1)(a)車両の駆動輪に接続された電動モータの回生制動により、回生制動トルクを付与し、駆動輪の回転を抑制する回生制動装置と、(b)ブレーキシリンダへの液圧の供給により作動して液圧制動トルクを付与し、前記車両の前記駆動輪を含む複数の車輪の回転をそれぞれ抑制する複数の液圧ブレーキを含む液圧制動装置と、(c)それら回生制動トルクと液圧制動トルクとを含む総制動トルクが運転者の要求する要求総制動トルクに近づくように、少なくとも前記回生制動装置を制御する制動力制御装置とを含む車両制動装置であって、
前記液圧制動装置が、
ブレーキ操作部材と、
そのブレーキ操作部材に連携させられた作動ピストンを含み、その作動ピストンの前進により液圧を発生させるマニュアル液圧源と、
そのマニュアル液圧源に発生させられた液圧を前記複数のブレーキシリンダに供給して、前記液圧ブレーキを作動させるマニュアル液圧伝達装置と、
そのマニュアル液圧伝達装置の外部に設けられ、前記ブレーキ操作部材の操作ストロークが前記回生制動装置において出力可能な最大の回生制動トルクの大きさに基づいて決まる設定ストローク以下の状態では設定ストロークより大きい状態より、操作ストロークの増加に対する前記マニュアル液圧源の液圧の増加勾配を小さくする液圧勾配抑制装置と
を含むことを特徴とする車両制動装置。
(2)前記液圧勾配抑制装置が、前記ブレーキ操作部材の操作ストロークが前記設定ストローク以下の状態で、前記マニュアル液圧源の液圧を予め定められた設定液圧に保ち、前記ブレーキ操作部材の操作ストロークの増加に対する前記マニュアル液圧源の液圧の増加勾配を0とする液圧保持部を含む(1)項に記載の車両制動装置。
本項に記載の車両制動装置においては、操作ストロークが設定ストローク以下の状態で、液圧が予め定められた設定液圧に保たれる。マニュアル液圧源の液圧の増加勾配は0とされる。設定液圧は小さい方が大きい場合より回生制動トルクを大きくすることができ、エネルギ効率を高める点で望ましく、例えば、0より多少大きい設定値以下の値とすることができる。また、設定液圧は、後述するように、ファーストフィルが終了する場合の液圧に応じて決まる値としたり、出力可能な回生制動トルクの最大値に応じて決まる値としたりすることができる。
(3)前記液圧勾配抑制装置が、前記ブレーキ操作部材の操作ストロークが前記設定ストローク以下の状態で、前記マニュアル液圧源の液圧を大気圧に保ち、前記ブレーキ操作部材の操作ストロークの増加に対する前記マニュアル液圧源の液圧の増加勾配を0とする液圧発生遅延部を含む(1)項または(2)項に記載の車両制動装置。
本項に記載の車両制動装置においては、ブレーキ操作部材の操作ストロークが設定ストローク以下の状態では、マニュアル液圧源に液圧が発生させられることがないのであり、増加勾配が0とされる。したがって、操作ストロークが設定ストローク以下の状態において、回生制動トルクをできる限り大きくすることができ、エネルギ効率を向上させることができる。
(4)前記液圧制動装置が、動力の供給により液圧を発生させ得る動力式液圧源を備えて、その動力式液圧源の液圧により前記複数の液圧ブレーキが作動させられた状態において、前記複数のブレーキシリンダの液圧を電気的に制御可能な動力式ブレーキシリンダ液圧制御装置を含み、前記制動力制御装置が、前記総制動トルクが前記要求総制動トルクに近づくように、前記動力式ブレーキシリンダ液圧制御装置を制御する動力液圧制動トルク制御部を含む(1)項ないし(3)項のいずれか1つに記載の車両制動装置。
設定ストロークが回生制動トルクの最大値より大きい設定制動トルクに対応する値として決められた場合において、操作ストロークが設定ストローク以下の状態において、マニュアル液圧源の液圧によって発生させられる液圧制動トルクであるマニュアル液圧制動トルクと、回生制動トルクと、動力液圧制動トルク(動力式液圧源の液圧が利用されて発生させられる液圧制動トルク)との和が要求総制動トルクとなるように動力式ブレーキシリンダ液圧制御装置が制御される。回生制動トルクが最大値に達しても要求総制動トルクの方が大きい場合には、動力液圧制動トルクが加えられる。
また、設定制動トルクが回生制動トルクの最大値とされた場合であっても、その時点における回生制動装置の状態によっては、回生制動トルクを予定された最大値まで出力できないことがあり、その場合においても動力液圧制動トルクが加えられる。
この事情は、操作ストロークが設定ストロークを越えて、マニュアル液圧源の液圧がブレーキシリンダに供給されることによってマニュアル液圧制動トルクが加えられる場合において同様であり、マニュアル液圧制動トルクと回生制動トルクとの和が要求総制動トルクより小さい場合には、動力液圧制動トルクが加えられる。また、最大の回生制動トルクが出力された場合において、実回生制動トルク、マニュアル液圧制動トルク、動力液圧制動トルクの和が要求総制動トルクに近づくように、動力液圧制動トルクが制御されることになる。
回生制動トルクは、蓄電装置における充電可能な容量、電動モータの回転数等で決まるため、これらの状態によっては、十分な大きさの回生制動トルクが出力されないことがある。また、回生制動装置の異常等に起因して、出力されないこともあるのである。
(5)前記動力液圧制動トルク制御部が、前記動力式ブレーキシリンダ液圧制御装置を、前記ブレーキ操作部材の操作ストロークが設定ストローク以下である場合に、前記動力式液圧源の液圧による前記液圧ブレーキの作動により車輪に加えられる液圧制動トルクである動力液圧制動トルクと前記回生制動トルクとを含む総制動トルクが前記要求総制動トルクに近づくように制御する第1制御部を含む(4)項に記載の車両制動装置。
操作ストロークが設定ストローク以下である場合に、マニュアル液圧制動トルクが0である場合、あるいは、0より大きいが0であるとみなし得る値である場合には、回生制動トルクと動力液圧制動トルクとの和が要求総制動トルクとなるように動力液圧制動トルクが制御される。回生制動トルクはできる限り大きい値とすることが望ましい。
(6)前記動力液圧制動トルク制御部が、前記動力式ブレーキシリンダ液圧制御装置を、前記ブレーキ操作部材の操作ストロークが設定ストロークを越えた後に、前記動力液圧制動トルクと前記回生制動トルクとの和が、前記ブレーキ操作部材が前記設定ストロークで操作された場合の要求総制動トルクに基づいて決まる大きさに保たれるように制御する第2制御部を含む(4)項または(5)項に記載の車両制動装置。
操作ストロークが設定ストロークを越えた後に、マニュアル液圧源において操作ストロークから設定ストロークを引いた値に応じた大きさの液圧が発生させられ、それに応じたマニュアル液圧制動トルクが発生させられる場合には、マニュアル液圧制動トルクと、操作ストロークが設定ストロークである場合の要求総制動トルクとの和が、操作ストロークが設定ストロークを越えた場合における要求総制動トルクとなる。したがって、操作ストロークが設定ストロークを越えた後においては、回生制動トルクと動力液圧制動トルクとの和が操作ストロークが設定ストロークである場合の要求総制動トルクに保たれるように制御されるようにすることは妥当なことである。
ブレーキ操作部材が設定ストロークで操作された場合の要求総制動トルクは、『液圧勾配抑制装置が設けられていないと仮定した場合に、前記ブレーキ操作部材の設定ストロークの操作により前記マニュアル液圧源において発生させられる液圧により液圧ブレーキが作動して車輪に加えられる液圧制動トルク』である。この液圧制動トルクを遅延作動開始時制動トルクと称することができるが、操作ストロークが設定ストロークを越えた後においては、遅延作動開始制動トルクとマニュアル液圧制動トルクとの和が、その時点の要求総制動トルクに対応する大きさとなる。そのため、操作ストロークが設定ストロークより大きく、マニュアル液圧制動トルクが加えられる状態において、回生制動トルクと動力液圧制動トルクとの和が遅延作動開始時制動トルクと等しくなるように制御されれば、総制動トルクによって要求総制動トルクが満たされることになる。
この意味において、設定ストロークを遅延作動開始時ストロークと称することができる。また、動力液圧制動トルクは制御液圧制動トルクと称することもできる。
(7)前記車両制動力制御装置が、前記回生制動トルクと前記マニュアル液圧制動トルクと前記動力液圧制動トルクとを含む総制動トルクが、前記ブレーキ操作部材の操作状態に応じて決まる要求総制動トルクとなるように、前記回生制動トルクと前記動力液圧制動トルクとの少なくとも一方を制御する回生協調制御装置を含む(4)項ないし(6)項のいずれか1つに記載の車両制動装置。
(8)前記液圧勾配抑制装置が、前記作動ピストンに前記ブレーキ操作部材に加えられる操作ストロークを伝達する装置であって、操作ストロークが前記設定ストローク以下の状態では前記設定ストロークより大きい状態より、前記ブレーキ操作部材の操作ストロークの増加に対する前記作動ピストンのストロークの増加勾配を小さくするストローク伝達勾配抑制装置を含む(1)項ないし(7)項のいずれか1つに記載の車両制動装置。
本項に記載の車両制動装置においては、ブレーキ操作部材の操作ストロークに対する作動ピストンのストロークの増加勾配が、操作ストロークが設定ストローク以下の状態では設定ストロークより大きい状態より小さくされる。それによって、マニュアル液圧源において発生させられる液圧の増加勾配を小さくすることができる。
(9)前記ストローク伝達勾配抑制装置が、前記ブレーキ操作部材の操作ストロークが前記設定ストローク以下である状態で、前記ブレーキ操作部材に加えられるべき操作力に応じた反力を付与する反力付与部を含む(8)項に記載の車両制動装置。
操作ストロークが設定ストローク以下の状態において、反力が付与されるようにすることにより操作力が得られるのであり、運転者の操作フィーリングの低下を抑制することができる。ストローク伝達抑制装置は、ストロークシミュレータと称することができる。
(10)前記ストローク伝達勾配抑制装置が、前記ブレーキ操作部材の操作ストロークが前記設定ストローク以下である状態において、前記回生制動装置によって実際に出力可能な回生制動トルクの最大値が予め定められた設定回生制動トルク以下である場合に前記設定回生制動トルクより大きい場合より、前記ブレーキ操作部材の操作ストロークの増加に対する前記作動ピストンのストロークの増加勾配を大きくする回生低下時伝達勾配増加部を含む(8)項または(9)項に記載の車両制動装置。
(11)前記液圧勾配抑制装置が、前記ブレーキ操作部材の操作ストロークが前記設定ストローク以下である状態において、前記回生制動装置によって実際に出力可能な回生制動トルクの最大値が予め定められた設定回生制動トルク以下である場合に前記設定回生制動トルクより大きい場合より、前記ブレーキ操作部材の操作ストロークの増加に対する前記マニュアル液圧源の液圧の増加勾配を大きくする回生低下時液圧勾配増加部を含む(1)項ないし(10)項のいずれか1つに記載の車両制動装置。
ブレーキ操作部材の操作ストロークが設定ストローク以下の状態であっても、出力可能な回生制動トルクが設定回生制動トルク以下である場合に設定回生制動トルクより大きい場合より、ブレーキ操作部材の操作ストロークの増加に対する作動ピストンのストロークの増加勾配が大きくされる。この場合の増加勾配は、例えば、操作ストロークが設定ストロークより大きい状態における勾配と同じ大きさとすることができる。また、設定ストロークより大きい状態における勾配より大きい勾配、あるいは、小さい勾配としてもよい。
回生制動装置によって実際に出力可能な回生制動トルクの最大値が設定回生制動トルク以下である状態とは、回生制動装置が異常である状態、回生制動装置は正常であるが、蓄電装置や電動モータの回転数等によって、出力可能な回生制動トルクが設定回生制動トルク以下である状態が該当する。これらの場合には、前述の動力式ブレーキシリンダ液圧制動装置によって動力液圧制動トルクが発生させられるようにすることもできるが、マニュアル液圧制動トルクが大きくされるようにした方が、消費エネルギを低減させることができる。また、動力式液圧源等の事情により、マニュアル液圧源の液圧を利用する方がより速やかに要求総制動トルクを満たすことができる場合もある。例えば、動力式液圧源がポンプ装置を含む場合に、ブレーキシリンダの液圧を早急に目標液圧まで増加させるためには、ポンプ装置を、吐出容量を大きいものとする必要がある。それに対して、マニュアル液圧源の作動液が供給されるようにすれば、ポンプ装置を吐出容量を大きいものとする必要がなくなり、コストアップを回避することができる。
(12)前記ブレーキ操作部材の操作ストロークが前記設定ストローク以下である状態の一時期に、前記ブレーキ操作部材に加えられる操作ストロークの増加に伴って前記マニュアル液圧源の液圧を増加させることにより、前記ブレーキシリンダに予め定められた設定量の作動液を供給するフィルアップ装置を含む(1)ないし(11)項のいずれか1つに記載の車両制動装置。
操作ストロークが設定ストローク以下である一時期にマニュアル液圧源からブレーキシリンダに設定量以上の作動液を供給しておけば、操作ストロークが設定ストロークより大きくなり、操作ストロークの増加に伴って作動液がブレーキシリンダに供給された場合に、ブレーキシリンダ液圧の増加遅れを小さくすることができる。
ブレーキシリンダにおける作動液量と液圧との間には、図9(b)に示すように、作動液の流入当初の流入流量の増加量に対する液圧の増加量が小さい領域(液圧増加勾配が小さい領域)と、その後の流入流量の増加量に対する液圧の増加量が大きい領域(液圧増加勾配が大きい領域)とがあるが、操作ストロークが設定ストローク以下の状態において、液圧の増加勾配が小さい領域が終了するまでに供給される量Qsの作動液を予め供給しておけば、設定ストロークを越えた後にブレーキシリンダの液圧を速やかに増加させることができる。しかし、予めブレーキシリンダに供給しておく作動液の量は、上述の作動液量Qsと同じ量としなくても、それにより少なくてもよい。例えば、作動液量Qsの1/3以上、1/2以上、2/3以上、3/4以上としてもよい。いずれにしても、予め作動液が供給されない場合に比較して、ブレーキの効き遅れを小さくすることができる。
なお、マニュアル液圧源の作動液によらなくても、動力式液圧源の作動液を別個供給することも可能である。この場合には、動力式液圧源が作動液を大きな流量で供給可能なもの、例えば、容量が大きいポンプ装置を含むものとすることが望ましい。換言すれば、マニュアル液圧源の作動液が供給されるようにした場合には、ポンプ装置の吐出容量を大きくする必要がなくなるという利点がある。
フィルアップ装置は、マニュアル液圧源の液圧を、操作ストロークが設定ストロークより大きい状態における増加勾配と同じ勾配で増加させても、設定ストロークより大きい状態における増加勾配より大きい勾配、あるいは、小さい勾配で増加させてもよい。
また、フィルアップ装置は液圧勾配抑制装置に含まれるものとすることができるが、液圧勾配抑制装置とは別個のものとすることもできる。
(13)前記マニュアル液圧源が、(i)(a)ブースタ入力部材と、(b)そのブースタ入力部材
に連携させられた前記作動ピストンとしてのパワーピストンとを備え、前記ブレーキ操作部材に加えられた操作力を倍力してブースタ出力部材に出力するブースタと、(ii)前記ブースタ出力部材に連携させられた加圧ピストンを備え、加圧ピストンの前進により液圧を発生させるマスタシリンダとを含み、前記液圧勾配抑制装置が、前記ブースタの外部において、前記ブレーキ操作部材と前記ブースタ入力部材との間に設けられた(1)項ないし(12)項のいずれか1つに記載の車両制動装置。
本項に記載の車両制動装置においては、液圧勾配抑制装置が、ブースタの外部において、ブースタ入力部材とブレーキ操作部材との間に設けられる。
ブースタ入力部材と作動ピストンとしてのパワーピストンとは連携させられているが、これら2つの可動部材は固定されている場合とそうでない場合とがある。固定されている場合には、2つの可動部材のいずれか一方の軸方向の双方向の移動に伴って必ず他方も同じ向きに移動させられるが、固定されていない場合には、例えば、いずれか一方の予め定められた一方向への移動によって他方も同じ向きへ移動させられるが、いずれか一方が逆向きに移動させられても他方は移動しない場合がある。以下、本明細書において記載された「連携させられる」は同じ意味を有する。
(14)前記液圧勾配抑制装置が、(a)前記ブレーキ操作部材に連携されたブレーキ操作入
力部材と、(b)前記作動ピストンに連携させられたブレーキ操作出力部材と、(c)これらブレーキ操作入力部材とブレーキ操作出力部材との間に設けられ、ブレーキ操作入力部材のブレーキ操作出力部材に対する軸方向の相対移動を許容する状態と、これらの軸方向の相対移動を阻止する状態とをとり得る伝達機構とを含む(1)項ないし(13)項のいずれか1つ
に記載の車両制動装置。
ブレーキ操作入力部材のブレーキ操作出力部材に対する軸方向の相対移動が許容された状態においてブレーキ操作入力部材のストロークの増加に対するブレーキ操作出力部材のストロークの増加勾配が小さくされ、相対移動が阻止された状態においては、上述の増加勾配が大きくされる。相対移動が阻止された状態においては、ブレーキ操作入力部材とブレーキ操作出力部材とは一体的に移動させられることになる。
本項に記載の液圧勾配抑制装置は、ストローク伝達勾配抑制装置の一態様であると考えることができる。
(15)前記伝達機構が、前記ブレーキ操作出力部材と前記ブレーキ操作入力部材とに対する相対回転に伴って前記ブレーキ操作出力部材に対して軸方向に相対移動可能に設けられた回転部材を含む(14)項に記載の車両制動装置。
回転部材は、ブレーキ操作入力部材とブレーキ操作出力部材とに軸方向において当接可能な軸方向当接部であって、ブレーキ操作入力部材に加えられた操作ストロークをブレーキ操作出力部材に伝達するストローク伝達部を含むものとすることができる。ストローク伝達部が、ブレーキ操作入力部材に当接し、ブレーキ操作出力部材から離間した状態においては、ブレーキ操作入力部材の前進に伴って回転部材が相対回転しつつブレーキ操作出力部材に対して軸方向に相対移動させられる。それに対して、ストローク伝達部がブレーキ操作出力部材にも当接した状態においては、ブレーキ操作入力部材に加えられる操作ストロークがストローク伝達部を介してブレーキ操作出力部材に伝達され、回転部材、ブレーキ操作入力部材およびブレーキ操作出力部材が軸方向に一体的に移動させられ、ブレーキ操作入力部材のブレーキ操作出力部材に対する軸方向の相対移動が阻止される。
(16)前記伝達機構が、(a)前記ブレーキ操作入力部材と前記ブレーキ操作出力部材とに
、それらの両方に対して相対回転不能に保持された第1部材と、(b)その第1部材に係合
させられ、前記ブレーキ操作入力部材とブレーキ操作出力部材との両方に対して相対回転可能に設けられた前記回転部材としての第2部材とを含む(15)項に記載の車両制動装置。
第1部材と第2部材とのいずれか一方を、回転方向と軸線方向との両方の成分を有する状態で形成された溝部を含むものとし、他方を、その溝部に係合させられた突部を含むものとすることができる。第2部材は、第1部材に対する相対回転に伴って軸方向に移動させられることになる。
また、第1部材を外周面にねじ部を有する軸方向に延びたねじ部材(軸状部材)とし、第2部材を、自身の内周面にねじ部を有し、第1部材の外周面に螺合するナット部材とすることができる。逆に、第1部材を内周面にねじ部を有する円筒部材とし、第2部材を外周面にねじ部を有し、第1部材の内周面に螺合する円筒部材とすることができる。後者の場合において、第1部材は、ブレーキ操作出力部材、ブレーキ操作入力部材の内周面に直接形成されたものとすることができる。これらの場合には、伝達機構がボールねじ機構を含むものとすることができる。
なお、第1部材は、ブレーキ操作出力部材とブレーキ操作入力部材とのいずれか一方に軸方向に相対移動不能に、他方に相対移動可能に保持される。第1部材は、ブレーキ操作出力部材に軸方向に相対移動不能とされることが望ましい。
(17)前記伝達機構が、前記回転部材と、前記ブレーキ操作入力部材と前記ブレーキ操作出力部材との少なくとも一方との間に設けられ、前記回転部材の前記少なくとも一方に対する相対回転を許容する状態と阻止する状態とに制御する伝達制御装置を含む(15)項または(16)項に記載の車両制動装置。
伝達制御装置は、電気的信号によって相対回転許容状態と相対回転阻止状態とに切り換えるものとすることができる。伝達制御装置は、例えば、回生制動装置の異常時等に相対回転阻止状態とする異常時相対回転阻止部を含むものとすることができる。また、回生制動装置の異常時に限らず、回生制動装置が正常であっても、その時点において出力可能な回生制動トルクが設定値以下である場合にも相対回転が阻止されるようにすることもできる。蓄電装置等の充電量に基づき、設定値より大きな回生制動トルクを期待できない場合には、マニュアル液圧制動トルクが加えられるようにした方がエネルギ消費量を少なくし得ることもある。
(18)前記伝達機構が、(a)前記ブレーキ操作出力部材と前記ブレーキ操作入力部材とに
対する相対回転に伴って前記ブレーキ操作出力部材に対して軸方向に相対移動可能に設けられた回転部材と、(b)その回転部材と前記ブレーキ操作出力部材との間に設けられたス
プリングとを含む(14)項ないし(17)項のいずれか1つに記載の車両制動装置。
スプリングは、回転部材とブレーキ操作出力部材との間に、回転方向に沿って設けられる。回転部材のブレーキ操作出力部材に対する相対回転に伴ってスプリングが縮められて、弾性力が発生させられる。回転部材は、ブレーキ操作出力部材との間の相対回転に伴って発生させられるスプリングの弾性力を受けてブレーキ操作入力部材に伝達する反力伝達部とを含むものとすることができる。回転部材に加えられたスプリングの弾性力は、反力伝達部を介してブレーキ操作入力部材に伝達されて、ブレーキ操作部材に伝達される。反力伝達部は、回転方向力伝達部でもある。
(19)前記スプリングのセット荷重が、ファーストフィルが終了するブレーキ操作力に対応する大きさとされた(18)項に記載の車両制動装置。
ブレーキ操作力がセット荷重に対応する大きさより小さい場合には、回転部材が相対回転させられることがないため、操作ストロークが設定ストローク以下の状態であっても、ブレーキ操作入力部材、ブレーキ操作出力部材が一体的に前進させられ、マニュアル液圧源からブレーキシリンダに作動液が供給される。
(20)前記液圧勾配抑制装置が、乾式のものである(1)項ないし(19)項に記載の車両制動
装置。
液圧勾配抑制装置をマニュアル液圧源の内部に設ける場合等には、液密あるいは気密に設ける必要がある。また、ストロークシミュレータ等をマニュアル液圧源とブレーキシリンダとを接続する液通路に設ける場合等にも液密に設ける必要がある。それに対して、液圧勾配抑制装置を、乾式のものとし、かつ、マニュアル液圧源よりブレーキ操作部材側に設ければ、液密あるいは気密に保つ必要性が低くなるため、製造コストを低減し得、車両制動装置の信頼性を向上させることができる。
(21)(a)車両の駆動輪に接続された電動モータの回生制動により、回生制動トルクを付与し、駆動輪の回転を抑制する回生制動装置と、
(b)ブレーキシリンダへの液圧の供給により作動して液圧制動トルクを付与し、前記車両の前記駆動輪を含む複数の車輪の回転をそれぞれ抑制する複数の液圧ブレーキを含む液圧制動装置と、
(c)それら回生制動トルクと液圧制動トルクとを含む総制動トルクが運転者の要求する要求総制動トルクに近づくように、少なくとも前記回生制動装置を制御する制動力制御装置とを含む車両制動装置であって、
前記液圧制動装置が、
ブレーキ操作部材と、
そのブレーキ操作部材に連携させられた作動ピストンを含み、その作動ピストンの前進により液圧を発生させるマニュアル液圧源であって、(i)(a)ブースタ入力部材と、(b)そのブースタ入力部材に連携させられた前記作動ピストンとしてのパワーピストンとを備え、前記ブレーキ操作部材に加えられた操作力を倍力してブースタ出力部材に出力するブースタと、(ii)前記ブースタ出力部材に連携させられた加圧ピストンを備え、その加圧ピストンの前進により液圧を発生させるマスタシリンダとを含むものと、
そのマニュアル液圧源に発生させられた液圧を前記複数のブレーキシリンダに供給して、前記液圧ブレーキを作動させるマニュアル液圧伝達装置と、
前記ブースタの外部の、前記ブレーキ操作部材と前記ブースタ入力部材との間に設けられ、(a)前記ブレーキ操作部材に連携させられたブレーキ操作入力部材と、(b)前記ブースタ入力部材に連携させられたブレーキ操作出力部材と、(c)これらブレーキ操作入力部材とブレーキ操作出力部材との間に設けられ、これら両部材間の力の伝達を行うとともに、前記ブレーキ操作入力部材の前記ブレーキ操作出力部材に対する軸方向の相対移動を許容する相対移動許容状態と、これらの軸方向の相対移動を阻止する相対移動阻止状態とをとり得る伝達機構と、(d)その伝達機構を、電気的信号によって前記相対移動許容状態と前記相対移動阻止状態とに切り換えるとともに、前記回生制動装置が異常である場合に前記相対移動阻止状態とし、前記回生制動装置が正常である場合に前記相対移動許容状態とする伝達制御装置とを備え、前記伝達機構が、前記相対移動許容状態において、前記ブレーキ操作部材の操作ストロークが前記回生制動装置において出力可能な最大の回生制動トルクの大きさに基づいて決まる設定ストロークより大きくなると、前記相対移動阻止状態に切り換わる液圧勾配抑制装置と
を含むことを特徴とする車両制動装置。
本項に記載の車両制動装置には、(1)項ないし(20)項に記載の技術的特徴を採用することができる。
(22)(a)車両の駆動輪に接続された電動モータの回生制動により、回生制動トルクを付
与し、駆動輪の回転を抑制する回生制動装置と、(b)ブレーキシリンダへの液圧の供給に
より作動して液圧制動トルクを付与し、前記車両の前記駆動輪を含む複数の車輪の回転をそれぞれ抑制する複数の液圧ブレーキを含む液圧制動装置と、(c)それら回生制動トルク
と液圧制動トルクとを含む総制動トルクが運転者の要求する要求総制動トルクに近づくように、少なくとも前記回生制動装置を制御する制動力制御装置とを含む車両制動装置であって、
前記液圧制動装置が、
ブレーキ操作部材と、
そのブレーキ操作部材に連携させられた作動ピストンを含み、その作動ピストンの前進により液圧を発生させるマニュアル液圧源と、
前記マニュアル液圧源の外部の前記ブレーキ操作部材と前記作動ピストンとの間に設けられ、前記ブレーキ操作部材の操作ストロークが、前記回生制動装置において出力される回生制動トルクの最大値に基づいて決まる設定液圧制動トルクに対応する設定ストローク以下の状態では設定ストロークより大きい状態より、操作ストロークの増加に対する前記マニュアル液圧源の液圧の増加勾配を小さくするとともに、操作ストロークに応じた反力を付与するストロークシミュレータと
を含むことを特徴とする車両制動装置。
本項に記載の車両制動装置には、(1)項ないし(21)項のいずれかに記載の技術的特徴を
採用することができる。
また、本項に記載の車両制動装置には、マニュアル液圧伝達装置が設けられていない。ブレーキシリンダがマニュアル液圧源から遮断された状態で、制動トルクが制御される場合においても、ストロークシミュレータによって、エネルギ効率の低下を抑制し得、かつ、操作性の向上を図り得る。
ストロークシミュレータは、回生制動装置によって出力可能な回生制動トルクが設定制動トルク以下である場合に、前記操作ストロークが設定ストローク以下であっても、前記ブレーキ操作部材に加えられた操作ストロークを作動ピストンに伝達する機構を備えたものとすれば、特に、望ましい。
(23)(a)ブレーキ操作部材と、(b)そのブレーキ操作部材に連携させられた作動ピストンを含み、その作動ピストンの前進により液圧を発生させるマニュアル液圧源と、(c)その
マニュアル液圧源において発生させられた液圧がブレーキシリンダに供給されることにより作動させられて、第1制動トルクを付与することにより車輪の回転を抑制する液圧ブレーキとを含む第1制動系と、
前記マニュアル液圧源の液圧とは別の手段により、前記ブレーキ操作部材の操作状態とは関係なく、第2制動トルクを付与することにより前記車輪の回転を抑制するブレーキを含む第2制動系と、
前記マニュアル液圧源の外部の前記ブレーキ操作部材と前記作動ピストンとの間に設けられ、前記ブレーキ操作部材の操作ストロークが設定ストローク以下の状態に前記設定ストロークより大きい状態より、操作ストロークの増加に対する前記マニュアル液圧源の液圧の増加勾配を小さくする液圧勾配抑制装置と、
前記第2制動系を、前記ブレーキ操作部材の操作ストロークが前記設定ストローク以下の状態で、前記第2制動トルクが運転者のブレーキ操作部材の操作状態で決まる要求総制動トルクとなるように制御し、前記操作ストロークが設定ストロークより大きい状態で、前記第2制動トルクが予め定められた設定制動トルクとなるように制御する第2制動トルク制御装置と
を含む車両制動装置。
本項に記載の車両制動装置において、操作ストロークが設定ストローク以上の状態においては、マニュアル液圧源の液圧により車輪に加えられる液圧制動トルクと、第2制動トルクとの和が要求総制動トルクとなるようにされている。したがって、第2制動トルクが設定制動トルクとなるように制御されれば、第1制動トルクと第2制動トルクとの和によって要求総制動トルクが満たされることになる。
第2制動系は、回生制動装置と動力式液圧制動装置との少なくとも一方を含むものとすることができる。第2制動トルクは、回生制動トルクと動力液圧制動トルクとの少なくとも一方を含むものであり、回生制動トルクと動力液圧制動トルクとの少なくとも一方を制御することによって第2制動トルクが制御される。
本項に記載の車両制動装置には、(1)項ないし(22)項のいずれかに記載の技術的特徴を
採用することができる。
(24)ブレーキ操作部材と、
そのブレーキ操作部材に連携させられた作動ピストンを含み、その作動ピストンの前進により液圧を発生させるマニュアル液圧源と、
前記マニュアル液圧源の外部の前記ブレーキ操作部材と前記作動ピストンとの間に設けられ、当該車両制動装置が正常である場合に、前記ブレーキ操作部材の操作ストロークが設定ストローク以下の状態では設定ストロークより大きい状態より、前記マニュアル液圧源の液圧の操作ストロークの増加に対する増加勾配を小さくし、当該車両制動装置が異常である場合には、操作ストロークが前記設定ストローク以下であっても、前記作動ピストンのストロークの増加勾配を前記操作ストロークが設定ストロークより大きい状態と同じ勾配とするストローク伝達勾配抑制装置と
を含むことを特徴とするマニュアル液圧源装置。
本項に記載のブレーキ操作装置は、(1)項ないし(23)項のいずれかに記載の車両制動装
置に適用することができる。
(25)ブレーキ操作部材と、
(a)そのブレーキ操作部材の操作により圧力を発生させるマニュアル圧力源と、(b)そのマニュアル圧力源に発生させられた圧力が伝達されることにより作動させられるブレーキとを含み、そのブレーキの作動により車輪の回転を抑制するマニュアル制動装置と、
前記ブレーキ操作部材の操作量が設定量以下の状態では、前記マニュアル圧力源の圧力を予め定められた設定圧力以下とする圧力発生抑制装置と、
前記マニュアル圧力源の圧力とは別の手段により、前記ブレーキ操作部材が操作されなくても、前記車輪の回転を抑制する補助制動装置と
を含むことを特徴とする車両制動装置。
本項に記載の車両制動装置には、(1)項ないし(24)項に記載の技術的特徴を採用するこ
とができる。
設定圧力は0(大気圧)とすることもできるが、0より大きい値(大気圧より大きい値)とすることもできる。設定圧力が小さい場合は大きい場合より、要求総制動トルクが同じ場合の回生制動トルクを大きくすることができ、エネルギ効率をより向上させることができる。
以下、本発明の一実施例である車両制動装置について図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下、制動トルクと制動力とは1対1に対応する量として扱うこととする。
図1に示すように、本車両制動装置が搭載された車両はハイブリッド車であり、駆動輪としての左右前輪10,12は、電気的駆動装置14と内燃駆動装置16とを含む駆動装置18によって駆動される。駆動装置18の駆動力はドライブシャフト24,26を介して、前輪10,12に伝達される。
内燃駆動装置16は、エンジン30およびエンジン30の作動状態を制御するエンジンECU32等を含むものであり、電気的駆動装置14は、電動モータ34,蓄電装置としてのバッテリ36,モータジェネレータ38,電力変換装置40,モータECU42,動力分割機構44等を含むものである。動力分割機構44は、図示しないが、遊星歯車装置を含むものであり、サンギヤにモータジェネレータ38が連携され、リングギヤに出力部材46が接続されるとともに電動モータ34が連携され、キャリヤにエンジン30の出力軸が連携される。エンジン30,電動モータ34,モータジェネレータ38等の制御により、出力部材46に電動モータ34の駆動トルクのみが伝達される場合とエンジン30の駆動トルクと電動モータ34の駆動トルクとの両方が伝達される場合とに切り換えられる。出力部材46に伝達された駆動力は、減速機,差動装置を介してドライブシャフト24,26に伝達される。
電力変換装置40は、インバータ等を含むものであり、モータECU42によって制御される。インバータによる電流制御により、少なくとも、電動モータ34がバッテリ36から電気エネルギが供給されて回転させられる回転駆動状態と、回生制動により発電機として機能することによりバッテリ36に電気エネルギを充電する充電状態とに切り換えられる。充電状態においては、左右前輪10,12に回生制動力が加えられる。したがって、電気的駆動装置14は、電動モータ34の回生制動により左右前輪10,12に回生制動力を加える回生制動装置であると考えることができる。モータECU42は、電力変換装置40をハイブリッドECU48からの指令に基づいて制御する。
本車両においては、摩擦制動装置としての液圧制動装置50が設けられる。左右前輪10,12と共に回転するブレーキ回転体に摩擦部材としてのパッドがブレーキシリンダ52,54に液圧が伝達されることにより押し付けられることにより液圧ブレーキ55FL、55FR(図2参照)が作動させられ、左右前輪10,12に液圧制動力が加えられる。駆動輪である左右前輪10,12には、液圧制動力と回生制動力との少なくとも一方が加えられ、回転が抑制される。
液圧制動装置50は、左右前輪10,12のブレーキシリンダ52,54に加えて、図2に示す左右後輪56,58の液圧ブレーキ59RL,RRのブレーキシリンダ60,62、マニュアル液圧源としてのバキュームブースタ付きマスタシリンダ66、ブレーキ操作部材としてのブレーキペダル68、ブレーキペダル68とマニュアル液圧源66との間に設けられたストローク伝達勾配抑制装置70等を含む。
マニュアル液圧源66は、バキュームブースタ74(以下、単にブースタと略称する)とマスタシリンダ76とを含む。
バキュームブースタ74は、作動ピストンとしてのパワーピストン77により負圧室と変圧室とに仕切られ、ブースタ入力ロッド78のパワーピストン77に対する相対移動により、制御バルブが作動させられて、変圧室が負圧室から遮断されて大気に連通させられる。これら変圧室と負圧室との差圧によりブレーキ操作力が倍力されて、ブースタ出力ロッド79から出力される。パワーピストン77は、ブースタ入力ロッド78を介してブレーキペダル68に連携させられる。
マスタシリンダ76はタンデム式のものであり、2つの加圧ピストンを含む。加圧ピストンの一方はブースタ出力ロッド79に連携される。これら2つの加圧ピストンの前方がそれぞれ加圧室とされる。一方の加圧室には、左前輪10のブレーキシリンダ52と右後輪58のブレーキシリンダ62とが接続され、他方の加圧室には、右前輪12のブレーキシリンダ54と左後輪56のブレーキシリンダ60とが接続される。本液圧制動装置はX2系統である。
これら2系統の各々については構造が同じであるため、左前輪10、右後輪58のブレーキシリンダ52,62が属するブレーキ系統について説明し、他方の右前輪12,左後輪56のブレーキシリンダ54,60が属するブレーキ系統についての説明を省略する。
左前輪10、右後輪58のブレーキシリンダ52,62は、マスタシリンダ76の加圧室に液通路80によって接続される。液通路80は、共通通路82とブレーキシリンダ52,62に対応する個別通路83とを含み、共通通路82には圧力制御弁84が設けられ、個別通路83には、それぞれ、増圧制御弁86が設けられる。また、ブレーキシリンダ52,62とリザーバ88とを接続する個別通路89には、それぞれ、減圧制御弁90が設けられる。増圧制御弁86は、コイルに電流が供給されない場合に開状態にある電磁開閉弁であり、減圧制御弁90は、コイルに電流が供給されない場合に閉状態にある電磁開閉弁である。これら増圧制御弁86,減圧制御弁90は、アンチロック制御等のスリップ制御において利用される。
増圧制御弁86と並列にブレーキシリンダ52,62からマスタシリンダ76への作動液の流れを許容し、逆向きの流れを阻止する逆止弁92が設けられる。逆止弁92によれば、ブレーキ操作解除時にブレーキシリンダ52,62からマスタシリンダ76へ速やかに作動液を戻すことができる。
また、圧力制御弁84と並列にバイパス通路93が設けられ、バイパス通路93にマスタシリンダ76からブレーキシリンダ52,62への作動液の流れを許容し、逆向きの流れを阻止する逆止弁94が設けられる。逆止弁94によれば、圧力制御弁84の閉状態においても、ブレーキペダル68が踏み込まれることによりマスタシリンダ側の液圧がブレーキシリンダ側の液圧より高くなると、マスタシリンダ76からブレーキシリンダ52,62へ作動液が供給される。圧力制御弁84については後述する。
また、リザーバ88に接続されたポンプ通路100にはポンプ装置102が設けられ、共通通路82の圧力制御弁84のブレーキシリンダ側(下流側)の部分に接続される。ポンプ装置102は、ポンプ104およびポンプモータ106,吐出弁108,吸入弁110等を含む。なお、符号112はダンパを示し、符号114は絞りを示す。これらによってポンプ104から吐出された作動液の脈動が軽減される。
リザーバ88には作動液供給通路130が接続される。作動液供給通路130は、共通通路82の圧力制御弁84よりマスタシリンダ側(上流側)の部分に接続され、作動液供給弁132が設けられる。作動液供給弁132は、リザーバ88に蓄えられた作動液量が設定量以下になると開弁させられ、マスタシリンダ76あるいはマスタリザーバ134から作動液が供給される。
圧力制御弁84は、図3(a)に示すように、常開の電磁制御弁であり、スプリング150の付勢力により弁子152が弁座154から離間させられた状態にある。この状態においては、マスタシリンダ76とブレーキシリンダ52,62との間の双方向の作動液の流れが許容される。コイル156に電流が供給されると、図3(b)に示すように、弁子152を弁座154に着座させる向きの電磁駆動力F1が付与される。また、ブレーキシリンダ側の液圧とマスタシリンダ側の液圧との差圧に応じた差圧作用力F2、スプリング150の付勢力F3が弁子152を弁座154から離間させる向きに加えられるため、これら電磁駆動力F1、差圧作用力F2、スプリングの付勢力F3との関係(F1:F2+F3)によって、弁子152の弁座154に対する相対位置に決まるのであり、ポンプ装置102の液圧を利用してブレーキシリンダ52,62の液圧をマスタシリンダ76の液圧より供給電流Iに応じた大きさだけ大きくすることができる。
図4には、ブレーキシリンダの液圧PBからマスタシリンダの液圧PMを引いた値である差圧ΔPと供給電流Iとの関係を示す。
ストローク伝達勾配抑制装置70は、図5(a)、(b)に示すように、ブレーキペダル68に連携されたブレーキ操作入力部材170と、ブースタ74の入力ロッド78に連携されたブレーキ操作出力部材174と、これらブレーキ操作入力部材170とブレーキ操作出力部材174との間に設けられた伝達機構176とを含む。
ブレーキ操作入力部材170,ブレーキ操作出力部材174は、概して有底円筒状を成したものであり、ブレーキ操作出力部材174には回転阻止部材180が設けられ、本体(車体に対して固定の部材)に対して、相対回転不能、かつ、軸線方向に相対移動可能に保持される。ブレーキ操作入力部材170も本体あるいはブレーキ操作出力部材174に対して相対回転不能、かつ、軸方向に相対移動可能に取り付けられる。
伝達機構176は、ねじ部材182とナット部材184とを備えたボールねじ機構185を含む。ねじ部材182は外周面に雄ねじ部と雌ねじ部とのいずれか一方を備えたロッド状を成したものであり、軸方向の一端部においてブレーキ操作出力部材174に相対回転不能、かつ、軸方向に相対移動不能に保持され、他端部においてブレーキ操作入力部材170に相対回転不能、かつ、軸方向に相対移動可能に保持される。ナット部材184は、内周面に他方を有するものであり、ねじ部材182に螺合させられる一方、回転部材186が相対回転不能に取り付けられる。回転部材186は、ブレーキ操作入力部材170、ブレーキ操作出力部材174の内周側に、すべり軸受けを介して相対回転可能に取り付けられる。
回転部材186は、概して筒状を成した筒状部186aと軸線方向に延びた棒状の反力受け部186bとを含む。
反力受け部186bは、位相が互いに180度隔たった位置にそれぞれ設けられる。この反力受け部186bとブレーキ操作出力部材174に設けられた一対の突部190との間にはスプリング192が設けられる。突部190は、ブレーキ操作出力部材174の内周側の位相が互いに180度隔たった位置に設けられ、これら突部190と反力受け部186bとの間にそれぞれスプリング192が設けられるのである。スプリング192は、収縮させられることにより、それに応じた弾性力を発生させる。
スプリング192のセット荷重は、図9(b)に示すように、ブレーキシリンダ52,62に設定量QSWCの作動液が供給された場合のブレーキシリンダ液圧PSWC(マスタシリンダ76の液圧と同じ)を発生させ得るブレーキ操作力に対応する大きさとされる。ブレーキシリンダにおいては、作動液量と液圧との間に図9(b)に示す関係がある。作動液量の増加量が同じ場合に液圧の増加量が小さい領域と大きい領域とがあるのであり、作動液の供給開始当初においては、液圧の増加量が同じ場合に必要な作動液量が多くなる。それに対して、設定量QSWCの作動液を予め供給しておけば、その後、ブレーキ操作力の増加に伴ってブレーキシリンダ52,62に作動液が供給された場合に、ブレーキシリンダ52,62の液圧を速やかに増加させることができ、液圧ブレーキの効き遅れを抑制することができる。設定量QSWCは、増加勾配が小さい領域から大きい領域に変わるのに要する作動液量(ファーストフィルが終了するのに要する作動液量)Qsと同じ量とすることができるが、本実施例においては、設定量QSWCがこの作動液量Qsの1/2程度とされる。
また、筒状部186aは、大径部194と小径部196とを備え、大径部194が、軸方向においてブレーキ操作入力部材170、ブレーキ操作出力部材174と当接することによって、操作ストロークを伝達する操作ストローク伝達部とされる。後退端位置において、操作ストローク伝達部194はブレーキ操作入力部材170と軸方向において当接した状態にある。
ブレーキ操作入力部材170と筒状部186aの小径部196との間には、ブレーキ操作入力部材170と回転部材186との間の相対回転を許容する状態と阻止する状態とに切り換え可能な伝達制御装置210が設けられる。伝達制御装置210は、可動部材212と、可動部材212を回転許容位置と回転阻止位置とに移動させる電磁駆動装置214と、ブレーキ操作入力部材170に設けられた貫通穴216と回転部材186に設けられたキー溝218(本実施例において、軸方向に延び、円周方向に延びていない溝をいう)とを含む。電磁駆動装置214はコイル220を含む。
コイル220に電流が供給されない場合には、可動部材212はスプリング222の付勢力によって回転阻止位置にある。可動部材212は貫通穴216を経て軸方向に延びたキー溝218に至り、ブレーキ操作入力部材170に対する回転部材186の相対回転を阻止する。可動部材212の先端部がピン状とされているため、可動部材212が貫通穴216を経て確実にキー溝218まで至り得る。キー溝218は、回転部材186が後退端位置にある場合に、貫通穴216との位相が一致する位置に設けられる。
コイル220に電流が供給されると電磁駆動力によりスプリング222の付勢力に抗して可動部材212が回転許容位置まで後退させられる。可動部材212の回転許容位置において、ブレーキ操作入力部材170に対する回転部材186の相対回転が許容される。
圧力制御弁84のコイル156、ストローク伝達勾配抑制装置70のコイル220等は、図1のブレーキECU300の指令に基づいて制御される。ブレーキECU300,ハイブリッドECU48,モータECU42,エンジンECU32等は、いずれも、実行部、記憶部、入・出力部等を有するコンピュータを主体とするものである。ハイブリッドECU48には、ブレーキECU300,モータECU42,エンジンECU32等が接続され、これらECUの間で情報の通信が行われる。エンジン30の制御については、本発明と関係がないため、ハイブリッドECU48とエンジンECU32との間の情報の通信についての説明は省略する。他のECU間の情報の通信についても発明に関連のある部分についてのみ説明する。
ブレーキECU300の入・出力部には、マスタシリンダ76の液圧を検出するマスタ圧センサ302,ブレーキペダル68の操作状態を検出する操作状態検出装置304等が接続されるとともに、各電磁制御弁(増圧制御弁86,減圧制御弁90,圧力制御弁84等を総称して電磁制御弁と称する)のコイル、ストローク伝達勾配抑制装置70のコイル220、ポンプモータ106等が図示しない駆動回路を介して接続される。操作状態検出装置304は、ブレーキペダル68が操作状態にあるか否かを検出するブレーキスイッチ、ブレーキペダル68のストロークを検出するストロークセンサ等を含む。
以上のように構成された液圧制動装置における作動について説明する。
本制動装置においては、回生協調制御が行われる。回生協調制御は、駆動輪に加わる回生制動力と、駆動輪と従動輪との両方に加わる液圧制動力との和である総制動力が運転者の要求する要求総制動力となるように行われる制御である。
ブレーキECU300において、ストロークセンサによる検出値とマスタ圧センサ302による検出値との少なくとも一方に基づいて要求総制動力が演算により求められる。ブレーキペダル68の操作ストロークが設定ストローク以下の状態では、マスタシリンダ76に発生させられる液圧が設定液圧以下であり操作ストロークに対応した大きさではないため、操作ストロークに基づいて要求総制動力が求められ、設定ストロークより大きい状態では、操作ストロークとマスタ圧との少なくとも一方に基づいて求められる。そして、ハイブリッドECU48から供給された情報(電動モータ34の回転数等に基づいて決まる回生制動力の上限値である発電側上限値、バッテリ36の充電容量等に基づいて決まる上限値である充電側上限値)と、上述の要求総制動力(運転者のブレーキペダル68の操作状態に応じて決まる操作側上限値)とのうちの最小値が要求回生制動力として決定され、この要求回生制動力を表す情報がハイブリッドECU48に供給される。
ハイブリッドECU48は要求回生制動力を表す情報をモータECU42に出力する。モータECU42は、電動モータ34によって左右前輪10,12に加えられる回生制動力が要求回生制動力となるように、電力変換装置40に制御指令を出力する。電動モータ34は電力変換装置40によって制御される。
電動モータ34の実際の回転数等の作動状態を表す情報がモータECU42からハイブリッドECU48に供給される。ハイブリッドECU48においては、電動モータ34の実際の作動状態に基づいて実際に得られた実回生制動力が求められ、その実回生制動力値を表す情報をブレーキECU300に出力する。
ブレーキECU300は、要求総制動力から実回生制動力を引いた値等に基づいて要求液圧制動力を決定し、ブレーキシリンダ液圧が要求液圧制動力に対応する目標液圧に近づくように、必要に応じてポンプモータ106、圧力制御弁84を制御する。
本実施例の車両制動装置においては、マニュアル液圧源66とブレーキペダル68との間にストローク伝達勾配抑制装置70が設けられ、ブレーキペダル68の操作ストロークが設定ストロークΔS以下の状態においては設定ストロークΔSより大きい場合より操作ストロークの増加に対するマニュアル液圧源66に発生させられる液圧の増加勾配が抑制される。本実施例においては、増加勾配が0あるいは非常に小さく0とみなし得る大きさとされるのであり、マニュアル液圧源66に発生させられる液圧が予め定められた設定液圧以下とされる(予め定められた設定液圧を越えることがない)。回生協調制御が行われる場合には、回生制動トルクがその時点において出力可能な最大値に達する以前においては、要求総制動力が回生制動力によって満たされるようにすることがエネルギ効率を高める点において望ましい。それに対して、本実施例における液圧制動装置50においては、マスタシリンダ76とブレーキシリンダ52,62とが、液通路80,バイパス通路83,逆止弁94を介して接続されており、しかも、回生協調制御が行われる場合に増圧制御弁86を閉状態にすることは予定されていないため、ブレーキシリンダ52,62の液圧をマスタシリンダ76の液圧より低くすることができない。したがって、回生制動トルクと液圧制動トルクとの和が要求総制動トルクとなるようにするために、回生制動トルクを抑制しなければならず、エネルギ効率が低下する。そこで、ストローク伝達勾配抑制装置70を設け、要求総制動トルクが小さい間、すなわち、ブレーキペダル68の操作ストロークが設定ストローク以下の状態においては、マスタシリンダ76の液圧を予め定められた設定液圧に抑制したのである。
ストローク伝達勾配抑制装置70において、ハイブリッドECU48、回生制動装置14等を含むハイブリッドシステムが正常である場合には、コイル220に電流が供給されることにより、可動部材212が回転許容位置に移動させられる。回転部材186のブレーキ操作入力部材170、出力部材174に対する相対回転が許容される。
この状態において、ブレーキペダル10が操作されると、回転部材186に回転方向の力が加えられる。その回転方向の力がスプリング192のセット荷重より小さい場合には、回転部材186が回転させられることがない。そして、回転方向の力がスプリング192のセット荷重より小さく、軸方向の力がマスタシリンダ76に設けられるリターンスプリング等のセット荷重より大きい場合には、ブレーキ操作入力部材170の操作ストロークが回転部材186,ナット部材184,ねじ部材182,ブレーキ操作出力部材174に伝達されて、入力ロッド78が移動させられ、マニュアル液圧源66が作動させられる(ブースタ74とマスタシリンダ76との両方が作動させられる場合とマスタシリンダ76のみが作動させられる場合とがある)。マスタシリンダ76からブレーキシリンダ52,62に、ブレーキ操作力がスプリング192のセット荷重に対応する大きさに達するまで作動液が供給されるのであり、その間に、ブレーキシリンダ52,62には、液量QSWCの作動液が供給されることになる。
回転部材186に加えられる回転方向の力がスプリング192のセット荷重を越えると、回転部材186がスプリング192の付勢力に抗してナット部材184と一体的にねじ部材182の回りを図5(b)の矢印の表す向きに回転させられる。回転部材186のブレーキ操作出力部材174に対する相対回転に伴ってスプリング192が収縮させられ、それに応じた弾性力(反力)が反力受け部186b、ブレーキ操作入力部材170を介してブレーキペダル68に付与される。スプリング192の弾性力に応じた操作力が加えられるのである。ストローク伝達勾配抑制装置70はストロークシミュレータとしての機能を果たす。
本実施例においては、スプリング192のばね定数が非常に小さくされているため、ブレーキ操作入力部材170がブレーキ操作出力部材174に対して相対的に前進させられる間、ブレーキ操作入力部材170に加えられる操作ストロークの増加に対するブレーキ操作出力部材174のストロークの増加勾配は非常に小さく、殆ど0であるとみなすことができる。
ブレーキ操作入力部材170がブレーキ操作出力部材174に対して相対的に設定ストロークΔS前進すると、回転部材186の操作ストローク伝達部194がブレーキ操作出力部材174に軸方向に当接する。ブレーキ操作入力部材170,回転部材186,ブレーキ操作出力部材174が軸方向において当接し、これらが一体的に軸方向に移動可能となる。ブレーキペダル10の操作ストロークの増加に伴ってブースタ74の入力ロッド78が前進させられ、ブースタ74が作動させられる。ブースタ74の入力ロッド78のストロークはブレーキペダル10の操作ストロークからストローク伝達勾配抑制装置70において消費されたストロークだけ小さい大きさとなる。
なお、本実施例においては、回転部材186がブレーキ操作出力部材174に軸方向において当接した状態において、回転方向においては当接しないようにされている。これらの間隔は、ねじ部材182のリード角と、設定ストロークΔSとによって決まる。設定ストロークΔSは、仮に、ストローク伝達勾配抑制装置70が設けられていない場合において、操作ストロークによってマスタシリンダ76に発生させられる液圧により液圧ブレーキが作動させられた場合に、車輪に加えられる液圧制動力が、回生制動装置14において発生させられる回生制動力の最大値より設定値以上大きい値である設定制動力となる大きさとされる。回生制動力の最大値は、回生制動装置14の作動状態等で決まる値であり、例えば、バッテリ36の機能を最大限に利用することを想定した場合に出力される最大値ではない。バッテリ36の充電状態は予め定められた状態となるように(充電量が設定範囲内となるように)制御されるため、充電量がその設定範囲内にあることを前提として決められた値である。以下、マニュアル液圧源66の液圧がブレーキシリンダ52,62に伝達されることにより液圧ブレーキ55FL,59RRが作動させられた場合に、車輪に加えられる液圧制動力をマニュアル液圧制動力と称する。また、設定制動力は、遅延作動開始時制動力と称することもできる。
ブレーキ操作が解除されると、ブレーキ操作出力部材174等が後退させられる。また、スプリング192の付勢力によって回転部材186が図5(b)の矢印とは逆方向に回転させられ、それによってブレーキ操作入力部材170がブレーキ操作出力部材174に対して相対的に、後退端位置まで後退させられる。
コイル220に電流が供給されない場合には可動部材212が回転阻止位置にある。回転阻止位置において、回転部材186のブレーキ操作入力部材170に対する相対回転が阻止される。ブレーキ操作入力部材170が前進させらえると、それに伴って、回転部材186,ナット部材184,ねじ部材182,ブレーキ操作出力部材174が前進させられ、ブースタ入力ロッド78に伝達される。ブレーキペダル168の操作ストロークが、ストローク伝達勾配抑制装置70を介してそのままブースタ74に伝達される。
このように、操作ストロークが設定ストロークΔS以下の状態では、マニュアル液圧制動力(ブレーキシリンダ液圧PSWCに対応する液圧制動力であり、一定の大きさであり、以下、設定マニュアル液圧制動力と称する)と回生制動力と動力液圧制動力(ポンプ装置102から吐出された作動液がブレーキシリンダ52,62に供給されることにより液圧ブレーキ55FL,59RRが作動させられた場合に付与される液圧制動力を動力液圧制動力と称する。)との和が要求総制動力となるように、回生制動力と動力液圧制動力との少なくとも一方が制御される。
なお、操作ストロークが設定ストローク以下の状態において、設定マニュアル液圧制動力は小さいため、0であるとみなすこともできる。この場合には、回生制動力および動力液圧制動力の和が要求総制動力となるように、動力液圧制動力と回生制動力との少なくとも一方が制御されることになる。
出力可能な回生制動力(発電側上限値、蓄電側上限値の小さい方)が要求総制動力(操作側上限値)より大きい状態においては、回生制動力と設定マニュアル液圧制動力との和によって要求総制動力が満たされ、回生制動力が制御される。
出力可能な回生制動力と設定マニュアル液圧制動力との和が要求総制動力より小さい状態においては、ポンプ装置102の作動により動力液圧制動力が加えられる。この場合のブレーキシリンダ52,62の液圧は圧力制御弁84のコイル156への供給電流の制御により制御されるが、マスタシリンダ76に発生させられる液圧が小さいため、ブレーキシリンダ52,62の液圧は、ほぼ圧力制御弁84のコイル156への供給電流Iに応じた差圧ΔPに対応する大きさとなる。
なお、前述のように、遅延作動開始時制動力は、回生制動力の最大値より設定値以上大きい値とされているため、たとえ、最大回生制動力が出力されても、要求総制動力が満たされない場合があり、動力液圧制動力が加えられる。また、動力液圧制動力は、ポンプ104の吐出圧が圧力制御弁84により制御されてブレーキシリンダに供給されることによって加えられる大きさであるため、制御圧制動力と称することもできる。
操作ストロークが設定ストロークΔSを越えると、マニュアル液圧制動力、回生制動力および動力液圧制動力が加えられ、これらの和が要求総制動力となるように、動力液圧制動力が制御される。本実施例においては、回生制動力と動力液圧制動力との和が設定制動力(遅延作動開始時制動力)となるように制御されるのであり、遅延作動開始時制動力とマニュアル液圧制動力との和が要求総制動力となるようにされている。
図6のフローチャートで表される回生協調制御プログラムは予め定められた設定時間毎に実行される。図7のフローチャートで表される回生許可・禁止プログラムは割り込み等により予め定められた設定時間毎に実行される。
図7のフローチャートのステップ1(以下、S1と略称する。他のステップについても同様とする)において、ブレーキ操作中であるか否かが判定される。ブレーキ操作中である場合には、S2において、ハイブリッドシステムが正常であるか否かが判定される。ハイブリッドシステムが正常であるか否かは、本プログラムとは別の異常検出プログラムに従って検出される。ハイブリッドシステムが異常である場合には、S3において、コイル220に電流が供給されることがない。回生協調制御が禁止されるのであり、ストローク伝達勾配抑制装置70(伝達制御装置210)において回転阻止状態とされ、ブレーキペダル10の操作ストロークがストローク伝達勾配抑制装置70を介してブースタ74の入力ロッド78にそのまま伝達され、マニュアル液圧源66が作動させられる。マスタシリンダ76は、ブースタ74によって倍力されたブレーキ操作力で作動させられ、倍力されたブレーキ操作力に応じた液圧が発生させられる。マスタシリンダ76の液圧は、液通路80を経てブレーキシリンダ52,62に伝達され、それによって液圧ブレーキが作動させられる。図8に示すように、液圧制動力は、ブレーキペダル78に加えられる操作力がブースタ74、マスタシリンダ76に設けられるリターンスプリングのセット荷重等で決まる作動開始入力を越えた場合に、その操作力に応じた大きさとなり、操作ストロークの増加に伴って増加する。
このように、本実施例の車両制動装置によれば、ハイブリッドシステムに異常が生じても、ブレーキ操作力を倍力した大きさに対応した液圧制動力を加えることができる。また、電気系統に異常が生じ、無通電状態となった場合にも同様であり、ブレーキシリンダ52,62にマニュアル液圧源66の液圧を確実に供給することができ、液圧ブレーキ55FL,59RRを作動させることができる。さらに、イグニッションスイッチのOFF状態においてブレーキペダル68が操作されて場合に、それに応じて液圧ブレーキを作動させることができる。また、ブレーキシリンダ52,62がマニュアル液圧源66に連通した状態に保たれるため、フェールセーフ用の液通路等を設ける必要がない等の利点がある。
それに対して、ハイブリッドシステムが正常である場合には、S4において、コイル220に電流が供給される。回生協調制御が許可されるのであり、ストローク伝達勾配抑制装置70(伝達制御装置210)において回転許容状態とされる。図9(a)に示すように、操作開始当初において、ブレーキペダル78の操作に伴ってマスタシリンダ76から作動液がブレーキシリンダに供給される。その結果、ブレーキペダル68の操作ストロークが設定ストロークを越えた後に、操作ストロークの増加に伴ってブレーキシリンダの液圧を速やかに増加させることが可能となり、ブレーキの効き遅れを抑制することができる。この場合に、ポンプ装置102から吐出される作動液を利用することもできるが、その場合には、ポンプ104を吐出容量が大きいものとする必要があり、コストが高くなる。それに対して、マニュアル液圧源66の作動液が利用されるようにすれば、ポンプ104を吐出容量が小さいものとすることができ、コストアップを回避することができる。
また、ブレーキ操作が行われていない場合には、S3において、コイル220への供給電流は0とされる。
なお、本実施例においては、ハイブリッドシステムが正常である場合に、回生協調制御が許可されるようにされていたが、このようにすることは不可欠ではない。ハイブリッドシステムが正常であっても、蓄電装置36の充電可能な容量が設定容量以下である場合等、出力可能な回生制動力が設定値以下である場合には回生協調制御が禁止されるようにすることもできる。
回生協調制御プログラムのS11において、回生協調制御許可状態であるか否かが判定される。回生協調許可状態である場合には、S12において、ブレーキストローク、マスタ圧が検出され、S13において、要求総制動力が求められる。また、S14において、ハイブリッドECU48から供給された回生制動力の上限値に関する情報が取得され、S15において、要求回生制動力が求められ、ハイブリッドECU48に出力される。S16において、実際の回生制動力に関する情報が取得され、S17において、実際の液圧制動力が求められる。実際の液圧制動力は、マニュアル液圧制動力と動力液圧制動力との少なくとも一方を含み、マスタシリンダ圧と圧力制御弁84への供給電流とに基づいて取得される。マスタシリンダ圧に基づいてマニュアル液圧制動力が求められ、圧力制御弁84への供給電流に基づいて動力液圧制動力が求められる。動力液圧制動力、マニュアル液圧制動力は0の場合がある。
S18において、実回生制動力と実液圧制動力との和と要求総制動力とが比較される。
要求総制動力の方が大きく、制動力が不足している場合には、S19において、ポンプモータ106が作動させられ、圧力制御弁84への供給電流が増加させられる。それによって、ブレーキシリンダ52,62の液圧がマスタシリンダ76の液圧に対して大きくなり、動力液圧制動力が増加することによって、実液圧制動力が増加し、要求総制動力が満たされる。
要求総制動力の方が小さく、実際の制動力が要求総制動トルクに対して大きい場合には、S20において、圧力制御弁84への供給電流が低減させられる。この場合には、ポンプモータ106は非作動状態のままである。圧力制御弁84を経てブレーキシリンダ側からマスタシリンダ側へ作動液が流出し、ブレーキシリンダ液圧が低下させられ、実液圧制動力が減少させられる。
要求総制動力とこれらの和とがほぼ等しい場合には、S21において、圧力制御弁84の供給電流が保持される。動力液圧制動力の大きさも保たれる。
ブレーキペダル78の操作ストロークが設定ストローク以下である場合には、設定マニュアル液圧制動力、回生制動力および動力液圧制動力の和が要求総制動力となるように動力液圧制動力が制御される。
操作ストロークが設定ストロークより大きい場合には、回生制動力とマニュアル液圧制動力と動力液圧制動力との和が要求総制動力となるように動力液圧制動力が制御される。本実施例においては、前述のように、マニュアル液圧制動力と遅延作動開始時制動力(設定制動力)との和が要求総制動力となるようにされているため、動力液圧制動力実回生制動力との和が遅延作動開始時制動力となるように制御されることになる。
このように、本実施例においては、簡単な回路で、回生協調制御を行うことができる。また、回生制動力が最大値に達する以前においては、マニュアル液圧源66に無駄に液圧が発生させられることを回避することができる。さらに、ストローク伝達勾配抑制装置70が、乾式のものであるため、ストローク伝達勾配抑制装置70を液密、気密に作成する必要がない。したがって、その分、ストローク伝達勾配抑制装置70の製造コストを低減し、車両制動装置を信頼性の向上を図ることができる。
本実施例においては、ブレーキECU300,ハイブリッドECU48,モータECU42,電力変換装置40等により制動力制御装置が構成される。また、液通路80,バイパス通路93,逆止弁94等によりマニュアル液圧伝達装置が構成され、ストローク伝達勾配抑制装置70によって液圧勾配抑制装置が構成される。液圧勾配抑制装置は液圧発生遅延部でもある。また、ポンプ装置102等により動力液圧源が構成され、ポンプ装置102および圧力制御弁84等により動力式ブレーキシリンダ液圧制御装置が構成され、ブレーキECU300のS18〜21を記憶する部分、実行する部分等により動力液圧制動トルク制御部が構成される。動力液圧制動トルク制御部には保持制御部が含まれる。
また、ストローク伝達勾配抑制装置70は、反力付与部としてのスプリング192等を含む。さらに、伝達制御装置210等により回生低下時伝達勾配増加部、回生低下時液圧勾配増加部が構成される。また、スプリング192のセット荷重が設定操作力に対応する大きさとされること等によりフィルアップ装置が構成される。本実施例においては、フィルアップ装置がストローク伝達勾配抑制装置に含まれることになる。
なお、ストローク伝達勾配抑制装置70において、スプリング192のセット荷重を大きくすることは不可欠ではない。ポンプ104が吐出容量が大きいものである場合には、ポンプ104の作動によりブレーキシリンダ52,62にファーストフィルに対応する量の作動液を予め供給しておくことも可能である。操作ストロークが設定ストローク以下の状態において、ブレーキシリンダに作動液を予め供給しておくこと自体、不可欠のことではない。
また、回転部材186とブレーキ操作入力部材、出力部材170,174との間にねじ機構を設けることもできる。回転部材186の外周面に設けられた雄ねじ部と雌ねじ部とのいずれか一方がブレーキ操作入力部材、出力部材170,174の内周面に設けられた他方に螺合させられるようにするのである。
さらに、上記実施例においては、スプリング192のばね定数が非常に小さく、ブレーキペダル10の操作ストロークの増加に対するブレーキ操作出力部材174のストロークの増加勾配が非常に小さくなるようにされていたが、上記実施例における場合より、スプリング192のばね定数を大きくすれば、ブレーキペダル10の操作ストロークの増加に対する出力部材174のストロークの増加勾配を大きくすることができる。
図10に示すように、本実施例においては、操作ストロークが設定ストローク以下の状態においては、上記実施例における場合より大きな勾配で、ブレーキペダル10の操作ストロークが出力部材174に伝達される。ブレーキペダル10の操作ストロークが設定ストローク以下の状態において、マニュアル液圧制動トルクが予め定められた設定勾配で増加させられ、上記実施例における場合と同じ設定ストロークΔSにおいてマニュアル液圧制動力がFspとなる。この場合には、要求総制動力Frefからマニュアル液圧制動力Fspを引いた値が設定制動力(前述のように、回生制動力の最大値より設定値大きい値であり、遅延作動開始時制動力と称することもできる)より小さくなる。そこで、本実施例においては、設定ストロークが要求総制動力Frefからマニュアル液圧制動力Fspを引いた値が上記実施例における場合と同様に設定制動力となる大きさとされるのであり、設定ストロークΔS′が、マニュアル液圧制動力Fspに応じた分ΔSaだけ上記実施例における設定ストロークΔSより大きくされる(ΔS+ΔSa)。ストローク伝達勾配抑制装置70において、回転部材186と出力部材174との相対位置関係がそのようにされるのである。
また、マニュアル液圧源66は、バキュームブースタ74を含まないでマスタシリンダ76を含むものであってもよい。また、液圧ブースタを含むものとすることができ、液圧ブースタの液圧がブレーキシリンダに供給されるようにすることもできる。
さらに、ストローク伝達勾配抑制装置70は、ブレーキシリンダがマニュアル液圧源66から遮断された状態で制動力制御が行われるブレーキ装置に利用することもできる。ブレーキシリンダがマニュアル液圧源が遮断された状態で制動力制御が行われる場合に、本ストローク伝達勾配抑制装置70によれば、操作フィーリングの低下を抑制することができる。
また、上記実施例においては、駆動輪が前輪10,12の場合について説明したが、駆動輪が後輪52,54である車両、4輪10,12,52,54が駆動輪である車両に適用することもできる。
さらに、上記実施例においては、操作ストロークが設定ストローク以下の状態において、要求制動力がブレーキペダル68のストロークに基づいて取得されたが、踏力センサを設け、ブレーキペダル68に加えられる操作力に基づいて取得されるようにすることもできる。さらに、設定ストローク以下の状態において、設定マニュアル液圧制動力を0として回生協調制御が行われるようにすることも可能である。
本発明は、前述に記載の態様の他、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した態様で実施することができる。
本発明の一実施例である車両制動装置を概念的に示す図である。 上記車両制動装置の液圧制動装置の回路図である。 上記液圧制動装置に含まれる圧力制御弁を概念的に示す図である。 上記圧力制御弁における供給電流と液圧差との関係を示す図である。 上記液圧制動装置のストローク伝達勾配抑制装置の断面図である。 上記車両制動装置のブレーキECUの記憶部に記憶された回生協調制御プログラムを表すフローチャートである。 上記記憶部に記憶された回生協調許可・禁止プログラムを表すフローチャートである。 上記車両制動装置における作動状態を示す図である。 上記車両制動装置における別の作動状態を示す図である。 上記車両制動装置における別の作動状態を示す図である。
符号の説明
14:回生制動装置 34:電動モータ 48:ハイブリッドECU 50:液圧制動装置 55:マニュアル液圧源 68:ブレーキ操作部材 74:ブースタ 76:マスタシリンダ 77:パワーピストン 78:ブースタ入力ロッド 79:ブースタ出力ロッド 80;液通路 84:圧力制御弁 93:バイパス通路 94:逆止弁 70:ストローク伝達勾配抑制装置 102:ポンプ装置 170:ブレーキ操作入力部材 174:ブレーキ操作出力部材 176:伝達機構 192:スプリング 210:伝達制御装置 220:コイル 300:ブレーキECU

Claims (6)

  1. (a)車両の駆動輪に接続された電動モータの回生制動により、回生制動トルクを付与し
    、駆動輪の回転を抑制する回生制動装置と、
    (b)ブレーキシリンダへの液圧の供給により作動して液圧制動トルクを付与し、前記車両の前記駆動輪を含む複数の車輪の回転をそれぞれ抑制する複数の液圧ブレーキを含む液圧制動装置と、
    (c)それら回生制動トルクと液圧制動トルクとを含む総制動トルクが運転者の要求する要求総制動トルクに近づくように、少なくとも前記回生制動装置を制御する制動力制御装置とを含む車両制動装置であって、
    前記液圧制動装置が、
    ブレーキ操作部材と、
    そのブレーキ操作部材に連携させられた作動ピストンを含み、その作動ピストンの前進により液圧を発生させるマニュアル液圧源であって、(i)(a)ブースタ入力部材と、(b)そのブースタ入力部材に連携させられた前記作動ピストンとしてのパワーピストンとを備え、前記ブレーキ操作部材に加えられた操作力を倍力してブースタ出力部材に出力するブースタと、(ii)前記ブースタ出力部材に連携させられた加圧ピストンを備え、その加圧ピストンの前進により液圧を発生させるマスタシリンダとを含むものと、
    そのマニュアル液圧源に発生させられた液圧を前記複数のブレーキシリンダに供給して、前記液圧ブレーキを作動させるマニュアル液圧伝達装置と、
    前記ブースタの外部の、前記ブレーキ操作部材と前記ブースタ入力部材との間に設けられ、(a)前記ブレーキ操作部材に連携させられたブレーキ操作入力部材と、(b)前記ブースタ入力部材に連携させられたブレーキ操作出力部材と、(c)これらブレーキ操作入力部材とブレーキ操作出力部材との間に設けられ、これら両部材間の力の伝達を行うとともに、前記ブレーキ操作入力部材の前記ブレーキ操作出力部材に対する軸方向の相対移動を許容する相対移動許容状態と、これらの軸方向の相対移動を阻止する相対移動阻止状態とをとり得る伝達機構と、(d)その伝達機構を、電気的信号によって前記相対移動許容状態と前記相対移動阻止状態とに切り換えるとともに、前記回生制動装置が異常である場合に前記相対移動阻止状態とし、前記回生制動装置が正常である場合に前記相対移動許容状態とする伝達制御装置とを備え、前記伝達機構が、前記相対移動許容状態において、前記ブレーキ操作部材の操作ストロークが前記回生制動装置において出力可能な最大の回生制動トルクの大きさに基づいて決まる設定ストロークより大きくなると、前記相対移動阻止状態に切り換わる液圧勾配抑制装置と
    を含むことを特徴とする車両制動装置。
  2. 前記伝達機構が、前記ブレーキ操作出力部材と前記ブレーキ操作入力部材とに対する相対回転に伴って前記ブレーキ操作出力部材に対して軸方向に相対移動可能に設けられた回転部材を含み、前記伝達制御装置が、前記回転部材の前記ブレーキ操作入力部材と前記ブレーキ操作出力部材との少なくとも一方に対する相対回転を許容する状態と阻止する状態とに制御する部分を含む請求項1に記載の車両制動装置。
  3. 前記伝達機構が、前記回転部材と前記ブレーキ操作出力部材との間に設けられたスプリングを含む請求項2に記載の車両制動装置。
  4. 前記液圧制動装置が、さらに、動力の供給により液圧を発生させ得る動力式液圧源を備えて、その動力式液圧源の液圧により前記複数の液圧ブレーキが作動させられる状態において、前記複数のブレーキシリンダの液圧を電気的に制御可能な動力式ブレーキシリンダ液圧制御装置を含み、前記制動力制御装置が、前記総制動トルクが前記要求総制動トルクに近づくように、前記動力式ブレーキシリンダ液圧制御装置を制御する動力液圧制動トルク制御部を含む請求項1ないし3のいずれか1つに記載の車両制動装置。
  5. 前記動力液圧制動トルク制御部が、前記動力式ブレーキシリンダ液圧制御装置を、前記ブレーキ操作部材の操作ストロークが設定ストローク以下である状態で、前記動力式液圧源の液圧による前記液圧ブレーキの作動により車輪に加えられる液圧制動トルクである動力液圧制動トルクと前記回生制動トルクとを含む総制動トルクが前記要求総制動トルクに近づくように制御し、前記操作ストロークが設定ストロークを越えた後に、前記動力液圧制動トルクと前記回生制動トルクとの和が、前記ブレーキ操作部材が前記設定ストロークで操作された場合の要求総制動トルクに基づいて決まる大きさに保たれるように制御する制御部を含む請求項4に記載の車両制動装置。
  6. 前記液圧勾配抑制装置が、前記相対移動許容状態において、前記ブレーキ操作部材に加えられるべき操作力に応じた反力を前記ブレーキ操作部材に付与する反力付与部を含む請求項1ないし5のいずれか1つに記載の車両制動装置。
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