JP4640254B2 - 擦傷の測定装置と測定方法 - Google Patents
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Description
引用文献1には、擦傷の目立ちにくさを評価する技術が記載されている。引用文献1の技術では、塗装面に擦傷を形成する処理に代えて、擦傷を形成した透明フィルム材を用意し、その透明フィルム材を評価対象である塗装面に密着させる。そして、塗装面に密着させた透明フィルム材の擦傷が形成されている部位と、擦傷が形成されていない部位の明度をそれぞれ測定する。このとき、擦傷が目立ちやすい塗装面では、擦傷が形成されている部位を測定した明度と、擦傷が形成されていない部位を測定した明度との間の明度差が大きくなる。一方、擦傷が目立ちにくい塗装面ではその明度差は小さくなる。この技術では、擦傷の有無による明度変化量によって、擦傷の目立ちにくさを定量的に評価する。
本発明は、上記の問題を解決する。本発明は、塗装面等の物体表面に形成された擦傷を正しく測定することができる技術を提供する。
ここでいう入射面とは、照明光が物体表面に入射するときの入射軸と物体表面の法線とを含む平面を意味している。
表面傷と内部傷は、その形成メカニズムが異なっている。そのことから、例えば塗装面の耐擦傷性を向上するために塗料の配合等を調整する場合、表面傷に対する耐性を向上するための方策と、内部傷に対する耐性を向上するための方策は、互いに異なることとなる。塗装面の耐擦傷性を向上するための方策を適切に行うためには、表面傷に対する耐擦傷性と、内部傷に対する耐擦傷性を区別して評価する必要がある。そのためには、塗装面に形成された擦傷を、表面傷と内部傷とに区別して定量的に測定することが必要となる。
この測定装置によると、物体表面に形成された擦傷の程度を、表面傷と内部傷とに区別して、定量的に測定することができる。
第1明度変化量から第2明度変化量を二倍して減算した第1擦傷指標は、物体表面に形成された表面傷に起因する明度変化量に相当する。第2明度変化量を二倍した第2擦傷指標は、物体の表層に形成された内部傷に起因する明度変化量に相当する。この装置によると、物体表面に形成された表面傷の程度を定量的に示す第1擦傷指標や、物体の表層に形成された内部傷の程度を定量的に示す第2擦傷指標を得ることができる。
先に説明したように、物体表面における表面反射では、入射面に対して平行に振動する成分については比較的に低い反射率によって反射される。この反射率は、照明光が物体表面へ入射するときの入射角に応じて変化し、所定の入射角ではその反射率がゼロとなる。このときの入射角は、一般にブリュースタ角と呼ばれている。照明光の入射角がブリュースタ角に等しい場合、表面反射光は入射面に対して垂直に振動する成分のみを持つ直線偏光となる。従って、照明光の入射角がブリュースタ角に等しければ、偏光フィルタによって表面反射光を完全に排除することが可能となる。それにより、前記した第1擦傷指標は表面傷に起因する明度変化量に正確に対応し、第2擦傷指標は内部傷に起因する明度変化量に正確に対応する。物体表面に形成された擦傷の程度を、表面傷と内部傷とに正確に区別して、定量的に測定することができる。
物体表面のブリュースタ角は、物体表面における光屈折率に応じて変化する。この測定装置では、物体表面の光屈折率を入力すれば、照明光の入射角がブリュースタ角に等しく調整される。それにより、光屈折率が異なる様々な物体表面に関して、形成された擦傷を定量的に測定することができる。
それにより、二つの光度計を用いることなく、本発明を具現化した測定装置を実現することができる。
自動車ボディ等の塗装面では、その表面にクリアコート層が形成されている。クリアコート層の多くは、その屈折率が1.48〜1.60の範囲にあり、そのブリュースタ角は57度に略等しい。従って、照明光の入射角が略57度であると、自動車ボディ等の塗装面に形成された擦傷を、表面傷と内部傷とに区別して、定量的に測定することができる。
この測定方法によると、物体表面に形成された擦傷の程度を、表面傷と内部傷とに区別して、定量的に測定することができる。
(特徴1) 測定装置は、回動可能な試料台を備えている。測定装置は、試料台を回動させることによって、照明手段による照明光が物体表面に入射するときの入射角を調整する。
(特徴2) 測定装置は、物体表面によって反射された反射光を受光し、反射光の強度を測定する光度計を備えている。
(特徴3) 測定装置は、照明光の正反射方向と光度計の受光軸とがなす変角を調整する手段を備えている。
(特徴4) 測定装置は、第1擦傷指標と第2擦傷指標を複数の変角毎に計算する。
(特徴5) 測定装置は、計算した第1擦傷指標と第2擦傷指標を表示する表示手段を備えている。
測定装置10は、耐擦傷性の測定対象である試料100を載置するための試料台14を備えている。試料台14は、基準軸Cの回りに回動可能に設けられている。試料台14には、試料表面100a内に基準軸Cが位置するように、試料100が固定される。ここで、説明の便宜を図るために、z軸が基準軸Cに平行であるxyz直交座標系を定める。この場合、試料表面100aの法線Dbは、xy平面内に位置することとなる。試料台14が基準軸Cの回りに回動すると、試料表面100aの法線Dbはxy平面内において基準軸Cの回りに回動する
測定装置10は、試料台14上の試料100を照明するための光源器12を備えている。光源器12は、例えばハロゲンランプを用いて構成することができる。光源器12の光軸Daは、xy平面内において基準軸Cに向けて伸びている。測定装置10では、試料台14を回動させることによって、光源器12の光軸Daと試料表面100aの法線Dbとがなす角θ、即ち、照明光2の入射角θを調整することができる。また、光源器12の光軸Daと試料表面100aの法線Dbとを含む平面、即ち、照明光2の入射面は常にxy平面に平行となる。
偏光フィルタ20は、その吸収軸がz軸方向に伸びている直線偏光子を備えている。偏光フィルタ20は、反射光4が透過するときに、xy平面に対して垂直に振動する成分を吸収し、xy平面に対して平行に振動する成分のみを透過する。xy平面は、照明光2の入射軸Daと試料表面100aの法線Dbとを含む平面であり、照明光2が試料表面100aに入射するときの入射面である。即ち、偏光フィルタ20は、反射光4が透過するときに、入射面に対して垂直に振動する成分を吸収し、入射面に対して平行に振動する成分を透過する。それにより、偏光フィルタ20を取り付けた状態では、反射光4のなかで入射面に対して平行に振動する成分のみが光度計18に入射する。
回転台16は、変角αを調整するために設けられている。ここでいう変角αとは、光度計18の受光軸Ddと正反射方向Dcとがなす角αを示す。測定装置10では、回転台16を基準軸Cの回りに回動させることによって、変角αを調整することができる。
試料表面100aにおける表面反射では、照明光2のなかで入射面(xy平面)に対して平行に振動している成分と、照明光2のなかで入射面(xy平面)に対して垂直に振動している成分が、異なる反射率によって反射される。照明光2の入射面に対して平行に振動している成分の強度をHp、照明光2の入射面に対して垂直に振動している成分の強度をHs、表面反射光4aの入射面に対して平行に振動している成分の強度をJp、表面反射光4aの入射面に対して垂直に振動している成分の強度をJsとすると、フレネルの法則から以下の関係が成立する。
Rp=Jp/Hp=tan2(θ−φ)/tan2(θ+φ) ・・(1)
Rs=Js/Hs=sin2(θ−φ)/sin2(θ+φ) ・・(2)
上式のRp、Rsは、一般にフレネル係数と呼ばれる。一方のフレネル係数Rpは、入射面に対して平行に振動している成分に対する反射率を示す。他方のフレネル係数Rsは、入射面に対して垂直に振動している成分に対する反射率を示す。上記の(1)式から、θ+φ=π/2となるときに、フレネル係数Rpがゼロとなることがわかる。このときの入射角θを、ブリュースタ角θbという。照明光2がブリュースタ角θbに等しい入射角で試料表面100aに入射した場合、試料表面100aではxy平面に対して垂直に振動する成分のみが反射される。その結果、表面反射光4aは、xy平面に対して垂直に振動する成分Jsのみを持つ直線偏光となる。
n1・sinθ=n2・sinφ ・・(3)
上記の(3)式とθb+φ=π/2の関係から、ブリュースタ角θbは次式によって求めることができる。
tanθb=n2/n1 ・・(4)
測定環境が大気中であれば、空気の屈折率n1は1に近似することができるので、上記の(4)式は次式に近似することができる。
tanθb=n2 ・・(5)
ブリュースタ角計算部32は、上記の(5)式を用いて、ブリュースタ角θbを計算する。
ステップS2では、先ず、自動車ボディ用の塗装面を形成した試料(サンプル)100を用意する。図4に示すように、自動車ボディ用の塗装面を形成した試料100では、アルミニウム等で形成した基板106上に、着色顔料や光輝材を含む塗料層104と、無色透明のクリアコート層102等が形成されている。用意した試料100は、測定装置10の試料台14に載置する。
ステップS4では、入力装置42等を用いて、試料表面100aにおける光屈折率を入力する。ここでは、試料表面100aを形成しているクリアコート層102の光屈折率を入力する。クリアコート層102の光屈折率は、予め測定しておくことができる。一般に、自動車ボディ用の塗装面のクリアコート層102の光屈折率は、1.48〜1.60の範囲にあることが多い。この光屈折率に対応するブリュースタ角は、56度〜58度となる。
なお、このステップS6では、照明光2の入射角θをブリュースタ角θbに厳密に調整する必要は必ずしもない。例えばクリアコート層102の光屈折率が1.53であって、略1%の測定誤差が許容される場合であれば、入射角を55度から59度の間に調整すればよい。逆に、入射角を57度に固定した場合でも、クリアコート層102の光屈折率が1.48〜1.60であれば、表面反射光4aでは入射面に対して平行に振動している成分の割合が略1%以内に抑えられる。即ち、入射角を57度に設定しておけば、表面反射光4aのほぼ全量を偏光フィルタ20によって吸収することができる。
E1(α)=(L3(α)−L1(α))
−2・(L4(α)−L2(α)) ・・(6)
前記した説明から明らかなように、第1擦傷指標E1(α)は、ステップS12における擦傷形成処理の前後において、表面反射光4aに生じた明度変化量dLa(α)に等しい。即ち、第1擦傷指標E1(α)は、擦傷形成処理によって試料100に形成された表面傷112を定量的に示している。第1擦傷指標E1(α)の絶対値が小さいほど、表面傷112に関して耐擦傷性が優れている(表面傷112がつきにくい)といえる。
E2(α)=2・(L4(α)−L2(α)) ・・(7)
前記した説明から明らかなように、第2擦傷指標E2(α)は、ステップS12における擦傷形成処理の前後において、拡散反射光4bに生じた明度変化量dLb(α)に等しい。即ち、第2擦傷指標E2(α)は、擦傷形成処理によって試料100に形成された内部傷114を定量的に示している。第2擦傷指標E2(α)の絶対値が小さいほど、内部傷114に関して耐擦傷性が優れている(内部傷114がつきにくい)といえる。
ステップS22では、ステップS18で計算された第1擦傷指標E1(α)と、ステップS20で計算された第2擦傷指標E2(α)が、表示装置40に表示される。
図9と図11を比較すると、サンプルXとサンプルYでは、測定された明度L1(α)、L2(α)、L3(α)は等しく、明度L4(α)のみが相違している。詳しくは、サンプルXで測定された明度L4(α)の方が、サンプルYで測定された明度L4(α)よりも大きい。このような場合、例えば偏光フィルタ20を用いた測定を行わなければ、明度L1(α)と明度L3(α)との変化量のみを比較することとなり、両者の耐擦傷性は同等であるという結論に至る。一方、本実施例の測定装置10によれば、図10、図12を比較して明らかなように、サンプルXとサンプルYでは、互いに異なる擦傷指標E1(α)、E2(α)が得られる。図10、図12に示す測定結果から、サンプルXは、サンプルYに比して、表面傷112はつきやすく、内部傷114はつきにくいことが判明する。
L1(α)=La(α)+Lb(α)
L2(α)=La(α)・Q+Lb(α)/2
L3(α)=La(α)+dLa(α)+Lb(α)+dLb(α)
L4(α)=(La(α)+dLa(α))・Q+(Lb(α)+dLb(α))/2
上式において、Laは表面反射光4aの強度に対応する明度を示し、Lbは拡散反射光4bの強度に対応する明度を示している。また、dLa(α)は表面傷112の形成に起因する表面反射光4aの強度変化に対応する明度変化量を示しており、dLb(α)は内部傷114の形成に起因する拡散反射光4bの強度変化に対応する明度変化量を示している。上記した明度L1(α)、L2(α)、L3(α)、L4(α)から、表面傷112に起因する明度変化量dLa(α)と、内部傷114に起因する明度変化量dLbは、次式のように計算できる。
dLa(α)=(L3(α)−L1(α))/(1−2・Q)
−2・(L4(α)−L2(α))/(1−2・Q) ・・(8)
dLb(α)=2・(L4(α)−L2(α))/(1−2・Q)
−2・Q(L3(α)−L1(α))/(1−2・Q) ・・(9)
従って、図3のステップ18では、上記した(8)式を用いることによって、第1擦傷指標E1(α)=dLa(α)を計算することができる。また、図3のステップ20では、上記した(9)式を用いることによって、第2擦傷指標E2(α)=dLb(α)を計算することができる。(8)、(9)式は、前記した(6)、(7)式を任意の入射角θに関して一般化したものとなる。(8)、(9)式を用いることによって、照明光2の入射角θをブリュースタ角θbに調整することなく、第1擦傷指標E1(α)と第2擦傷指標E2(α)を正しく測定することができる。この場合、ブリュースタ角計算部32に代えて、表面反射光4aのなかで入射面に対して平行に振動する成分の割合Q=Rp/(Rs+Rp)を計算する手段を付加するとよい。この割合Qは、照明光2の入射角θと試料表面100aにおける光屈折率を用いて計算することができる。この方式を採用すると、照明光2の入射角を調整する機構は不要となる。
例えば、上記した実施例では、測定(計算)した第1明度変化量L3(α)−L1(α)と第2明度変化量L4(α)−L2(α)を用い、第1擦傷指標E1(α)と第2擦傷指標E2(α)を計算して表示するが、第1擦傷指標E1(α)と第2擦傷指標E2(α)を計算する必要は必ずしもない。測定した明度L1(α)、L2(α)、L3(α)、L4(α)を用い、第1明度変化量L3(α)−L1(α)と第2明度変化量L4(α)−L2(α)を計算して表示するようにしてもよい。第1明度変化量L3(α)−L1(α)と第2明度変化量L4(α)−L2(α)が判明すれば、形成された表面傷112の程度と内部傷114の程度のそれぞれを、定量的に把握することができる。
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
12:光源器
14:試料台
16:回転台
18:光度計
20:偏光フィルタ
22:第1モータ
24:第2モータ
26:モータコントローラ
30:計算装置
32:ブリュースタ角計算部
34:擦傷指標計算部
40:表示装置
42:入力装置
Claims (7)
- 物体表面に形成された擦傷を定量的に測定する装置であって、
前記物体表面に所定の入射角で照明光を照射する照明手段と、
照明手段によって照明された前記物体表面の明度を測定する第1明度測定手段と、
照明手段によって照明された前記物体表面の明度を、入射面に対して垂直に振動している成分を吸収する偏光フィルタを介して測定する第2明度測定手段と、
第1明度測定手段によって測定された擦傷形成前の物体表面の明度と第1明度測定手段によって測定された擦傷形成後の物体表面の明度との間の第1明度変化量と、第2明度測定手段によって測定された擦傷形成前の物体表面の明度と第2明度測定手段によって測定された擦傷形成後の物体表面の明度との間の第2明度変化量とを計算する手段と、
を備える測定装置。 - 前記計算手段は、前記第1明度変化量から前記第2明度変化量を二倍して減算した第1擦傷指標と、第2明度変化量を二倍した第2擦傷指標の少なくとも一方を計算することを特徴とする請求項1の測定装置。
- 前記照明光の入射角は、前記物体表面のブリュースタ角に略等しいことを特徴とする請求項1又は2の測定装置。
- 前記物体表面における光屈折率を入力する入力手段と、
入力手段によって入力された光屈折率に基づいて、前記物体表面のブリュースタ角を計算するブリュースタ角計算手段と、
前記照明光の入射角を、ブリュースタ角計算手段によって計算されたブリュースタ角に調整する調整手段と、
が付加されていることを特徴とする請求項3の測定装置。 - 前記第1明度測定手段と第2明度測定手段は、共通の光度計を用いて構成されており、
前記偏光フィルタは、その共通の光度計と前記物体表面との間に着脱可能であることを特徴とする請求項1から4のいずれかの測定装置。 - 前記照明光の入射角は、略57度であることを特徴とする請求項1又は2の測定装置。
- 物体表面に形成された擦傷を定量的に測定する方法であって、
擦傷形成前の物体表面に所定の入射角で照明光を照射したときの物体表面の明度を測定する第1明度測定工程と、
擦傷形成前の物体表面に所定の入射角で照明光を照射したときの物体表面の明度を、照明光の入射面に対して垂直に振動している成分を吸収する偏光フィルタを介して測定する第2明度測定工程と、
擦傷形成後の物体表面に所定の入射角で照明光を照射したときの物体表面の明度を測定する第3明度測定工程と、
擦傷形成後の物体表面に所定の入射角で照明光を照射したときの物体表面の明度を、照明光の入射面に対して垂直に振動している成分を吸収する偏光フィルタを介して測定する第4明度測定工程と、
第1明度測定工程によって測定された明度と第3明度測定工程によって測定された明度との間の第1明度変化量と、第2明度測定工程によって測定された明度と第4明度測定工程によって測定された明度との間の第2明度変化量とを計算する計算工程と、
を備える測定方法。
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