JP4649622B2 - 栽培植物の着果・生育促進方法および着果・生育促進装置 - Google Patents
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Description
さらに,農業生産人口の減少と高齢化により、夏期の生鮮野菜の輸入は急増している。しかし、食の安全と多様性の維持のためには国内の園芸生産基盤を維持する必要があり、園芸作物の周年栽培技術の確立は急務とされている。また、地球温暖化については日本だけでなく、世界的な農業への影響が懸念されていることから、様々な高温ストレスの対処法が提案されている。
温室などの栽培施設全体を冷房することは、大規模栽培の場合、非効率的・非経済的であり、決定的な解決策とはならない。
(従来技術2、特許文献1)
農園芸用高温ストレス耐性賦与剤が開示されている。しかし、環境保護上、薬剤を使用することは避ける方が望ましい。
(従来技術3、特許文献2)
形質転換植物、特にトマト等への適用が開示されている。しかし、食品安全性等の確保から、遺伝子操作による作種は、商品化まで慎重な検証が必要である。
(従来技術4、特許文献3)
水耕栽培装置において,培養液を冷却する方法が開示されている。しかしながら、地下部(根)のみの冷却もしくは加温であり,その生殖器官の温度感受性が最も高い果菜類に対する効果は不明瞭である。(特許文献3)
本発明者は、これまで植物の高温ストレス応答を研究してきており、栽培作物に対する高温ストレスのもたらす影響について、以下の参考文献に示すように、その成果を発表している。本発明者の研究結果から、例えば、トマトでは、生育適温の上限から平均気温が1℃上昇しても果実収量が低下すること、しかし、そのようなわずかな温度上昇には光合成や呼吸などは影響されず、発達途中の葯(雄しべ)だけが障害を受けることなどを明らかにしてきた。さらに,このようなストレスに対する感受性が最も高い花の発達段階も明らかにしてきた。
これらの研究結果から、本発明者は、高温に対する感受性の最も高い雄しべを含む発達途中の蕾だけを効果的に生育適温まで冷却する本発明を思いつくに至った。即ち、本発明は、簡易な構成であって、経済的で、環境にやさしくかつ食品安全性の懸念がない栽培植物の着果・生育促進方法および着果・生育促進装置を提供することを目的とする。
(参考文献)
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本発明は、栽培植物において収穫物の品質に影響しかつ温度感受性の高い部分を、該栽培植物の着果適正温度範囲に、冷却または加温により制御することを特徴とする栽培植物の着果・生育促進方法である。
(請求項2に係る発明)
本発明は、栽培植物体の花房を、着果適正温度範囲に保持するように、冷却または加温することを特徴とする請求項1記載の栽培植物の着果・生育促進方法である。
(請求項3に係る発明)
本発明は、栽培植物において収穫物の品質に影響しかつ温度感受性の高い部分を、該栽培植物の生育適正温度範囲または着果適正温度範囲に、冷却または加温により制御する手段を有することを特徴とする栽培植物の着果・生育促進装置である。
(請求項4に係る発明)
本発明は、栽培植物体の花房を、該栽培植物の生育適正温度範囲または着果適正温度範囲に、冷却または加温する手段を有することを特徴とする請求項3記載の栽培植物の着果・生育促進装置である。
(請求項5に係る発明)
本発明は、栽培植物体の花房を、着果適正温度範囲に保持するように、空気で冷却または加温する手段を有することを特徴とする請求項4記載の栽培植物の着果・生育促進装置である。
(請求項6に係る発明)
空気を冷却または加温する手段が、空気温度調整部と、該空気温度調整部により、栽培植物の生育適正温度範囲または着果適正温度範囲に調節された空気を送出する送出手段と、
該送出手段に接続され栽培植物の着果・生育に影響する部分へ冷却・加温された空気を供給する冷却・加温空気供給手段により構成されていることを特徴とする請求項5に記載の栽培植物の着果・生育促進装置。
(請求項7に係る発明)
本発明は、空気温度調節部は、チラーにより冷却またはヒーターにより加温された水槽と該水槽内に配置されたコイル状パイプまたは小型クーラーもしくはヒーターにより冷却または加温された外気を保存する断熱容器であることを特徴とする請求項6に記載の栽培植物の着果・生育促進装置である。
(請求項8に係る発明)
本発明は、空気温度調整部は、
小型冷房・加温室であることを特徴とする請求項6記載の栽培植物の着果・生育促進装置である。
(請求項9に係る発明)
本発明は、冷却・加温空気供給手段は、空気を送出するポンプと、該ポンプに接続されたメインパイプと、該メインパイプに接続され冷却・加温空気吹き出し口を有する分枝パイプとを有することを特徴とする請求項6ないし8いずれかに記載の栽培植物の着果・生育促進装置である。
(請求項10に係る発明)
本発明は、冷却・加温空気供給手段は、植物体が発達して行くにしたがい、栽培植物に順次形成される温度感受性の高い部分にあわせて高さを調節できる高さ調整手段を有することを特徴とする請求項9記載の栽培植物の着果・生育促進装置である。
(請求項11に係る発明)
高さ調整手段は、植物体が発達して行くにしたがい、栽培植物に順次形成される温度感受性の高い部分にあわせて高さを調節できる高さ調節用パイプと、該高さ調整パイプに配置されたつり下げワイヤー巻き取りコイルと、該つり下げワイヤー巻き取りコイルにより巻き上げおよび巻き戻しが可能なつり下げワイヤーとを備え、該つり下げワイヤーとメインパイプが接続されていることを特徴とする請求項10記載の栽培植物の着果・生育促進装置である。
(請求項12に係る発明)
本発明は、冷却・加温空気吹き出し口は、感圧式バルブまたは電磁弁を有することを特徴とする請求項9ないしは11いずれか記載の栽培植物の着果・生育促進装置である。
(請求項13に係る発明)
本発明は、栽培植物に順次形成される温度感受性の高い部分が、花房であることを特徴とする請求項10ないし12いずれかに記載の栽培植物の着果・生育促進装置である。
(1)着果性
我が国においては、夏期は高温であるために果菜類の着果性、収量が低下する。そこで、夏期の生産性を向上させるために、植物ホルモン処理などが行われているが、合成植物ホルモンは農薬として登録されていること、また、その処理には人件費がかかる事などから、絶対的な解決策とはなっていない。
本発明では、今までの研究(上記参考文献1,2,3,4)から、発達途中の蕾が微少な平均気温上昇もストレスとして関知する事から、高温ストレス感受性が最も高い発達段階に冷却空気を送り蕾を取り巻く気温を生育適温まで低下させるので、本発明による着果性向上効果は極めて高いと期待することができる。
さらに本発明は、空気吹き出し口に感圧式バルブ、もしくは電磁弁による開閉機能を持ったバルブを有していることから、冷却された空気が勢いよく花房に吹き出されることで、開花している花は振動し、花粉が放出されることで着果がさらに促進されることが期待できる。
従来の合成植物ホルモンによる着果率向上については薬剤が適宜必要になることに加え、ホルモン剤を発達途中の蕾に一つずつ、手作業により処理しなければならないことから、人件費の負担が極めて大きい。それに対し,本発明は発達して植物と花房に合わせて冷却空気吹き出し口の位置をつり下げワイヤーにより調節できることから,装置を設置後は高さ調節が必要なだけで、ほぼ自動で着果を促進することができる。
また、一部には温室全体を空調する考えも提唱されている。しかし,施設栽培に使われている温室は断熱性が極めて低いため、温室全体の冷房による着果性の促進は経済性が極めて低いと考えられる。それに対し、本発明ではごく少量の空気を冷却し,断熱されたパイプにより花房まで輸送されることから、消費電力は極めて小さく、経済性も高い。
例えば、トマトの着果促進には、前述の合成植物ホルモンに加え、マルハナバチも広く導入されている。しかしながら,マルハナバチは外環境に放出された場合、既存のミツバチと生育環境が競合してしまうことから、外来種としてその使用を制限するべきであるとの声もある。それに対し、本発明はごく少量の空気を冷却し、植物体に吹き付けるだけであることから、環境への負荷は極めて少ないと考えられる。
合成植物ホルモンは農薬として登録されておりその使用もきびしく制限されている。それに対し、本発明は単に冷却された空気であるため、果実の品質そのものを変化させる可能性は極めて低く,安全性は極めて高いと考えられる。
図1に示すように、本発明は、空気冷却部と、該空気冷却部により冷却された空気を送出する送出手段と、該送出手段に接続され栽培植物の着果に影響する部分へ冷却された空気を供給する冷却空気供給手段により構成されている。例えば、ポンプ13より押し出された空気をチラーにより冷却された水を貯蓄してある小型冷却器内にあるコイル内を通過することにより冷却し、栽培施設内につり下げられた断熱被覆してあるメインパイプ1を通り植物体7近辺まで送る。該冷却空気5は、植物体7付近から断熱被覆してある分枝パイプ3を通り、植物体7の花房付近まで送られ、分枝パイプ3の吹き出し口より、植物体7へ勢いよく吹き出す。以下に、さらに、本発明の栽培植物の着果・生育促進方法および着果・生育促進装置の要部について説明する。
図2、3および4に示すように、本発明の装置は、メインパイプ1が栽培施設の上部より、つり下げワイヤー2を使って設置される。その構成により、分枝パイプ3の位置は発達中の蕾6に的確に高さ調整をすることができ、また、分枝パイプ3は柔軟性を持つ材料を使うことにより上下左右位置の調整も可能となる。分枝パイプ3の先端には、エアーバルブ4を有する冷却空気吹き出し口を有しており、発達中の蕾6に対して、冷却空気5を噴出する。
一、冷却水槽を用いる場合
図1および2に示すように、ポンプ13より押し出された空気を、チラーにより冷却された水を貯蓄してある小型冷却器14内にあるコイル内を通過することにより冷却し、栽培施設内につり下げられた断熱被覆してあるメインパイプ1を通り、メンイパイプに接続された分枝パイプ3により、植物体7近辺まで送る。このように、極めて簡易な構成で送風することができる。または小型クーラーにより冷却された外気を断熱容器内に保存しても良い。
二、小型冷房装置を用いる場合
または、上記冷却水槽に代えて、図示はしないが、小型冷房室(14に相当)で発生させた冷却空気を用いることができる。大規模栽培では、栽培植物の生育温度範囲であって着果適正温度範囲に制御する場合は、温度制御のできる小型冷房装置が望ましい。小型冷房装置として、例えば、氷蓄熱装置を用いれば、効率の良い熱交換回路を構成できる。
上記空気冷却部によって発生した冷却空気5を、植物体7近辺まで送るメインパイプ1と、該メインパイプ1に接続され、栽培植物体7の発達中の蕾6へ、冷却空気5を吹き付ける空気吹き出し口を有する分枝パイプ3により構成する。
(メインパイプの構成)
図4に示すように、メインパイプ1は、例えば、高さ調整用パイプ11に配設されたつ
り下げワイヤー巻き取りコイル12を介して、高さが調整可能に構成され、栽培植物体成長による蕾6の位置に合わせて、メインパイプ1を上下させることができる。または、植物体7の蕾6の発達に合わせて、栽培植物体7の下部から上部へと位置を調整していくことができる。なお、冷却空気5を噴出した際、メインパイプ1の位置を安定させるために、支持台10を介して、固定ワイヤー8により、つり下げワイヤー2とメンンパイプ1を接続する。
図3、図4に示すように、分枝パイプ3は複数設け、メインパイプ1および栽培植物体
7の発達中の蕾6に対して、自由に接続できるように、例えば、ゴム、プラスチック等の柔軟性を持つ材料を使うことにより、上下左右位置の調整が可能とする。分枝パイプ3は、冷却空気5を栽培植物体の発達中の蕾6に対して吹き付けるため空気吹き出し口4を有している。
さらに、本発明は空気吹き出し口4には、感圧式バルブ、もしくは電磁弁による開閉機能を持ったバルブを備えれば、冷却された空気が勢いよく花房に吹き出されることで、開花している花は振動し、花粉が放出されることで着果がさらに促進される。
なお、メインパイプ1と分枝パイプ3は、例えば、断熱材9で被覆して冷却空気5の温度を一定に保持すると良い。冷却空気5は、空気ポンプ13で送出する。または、液体の蒸発と凝縮の潜熱を利用した閉ループの電熱素子、例えば、ヒートパイプまたは冷却された細管を、分枝パイプ3に配置して、これを蕾6の近傍に配置する構成も考えられる。
上記のように構成した本発明により、高温に対する感受性の高いトマトについて実施して着果率を検証して、極めて高い効果を検証することができた。図5にその結果を説明する。
一、高温ストレス対する効果
(栽培植物の冷却する部分と時期)
栽培植物において収穫物の品質に影響し、かつ温度感受性の高い部分、トマト等の果菜の場合、特に、花房が望ましい。冷却する時期は、高温ストレス感受性が最も高い蕾の段階で実施した。
(温度条件)
トマトの生育温度範囲は、18から32℃である。また、トマトの発達中の花房が着果す
るための適正温度範囲は、昼夜によって異なるが、概ね、20から26℃である。従って空気を冷却するため、チラーによる水温を5℃に設置して、冷却空気の温度を、23℃程度として、上記のように構成した本発明により、蕾に吹き付けた。
(本発明による着果率)
昼/夜温度が28/22℃の時には落花率が10%程度であるのに対し、32/26℃では95%が落花し
た。一方,本発明の栽培方法により同一の栽培条件とした場合は、落花率は、20%程度に押さえることができ,落花率の大幅な改善ができた。低温ストレスに弱い果菜類または比較的低温に強いとされる葉根菜類でも、加温した空気を供給することにより着果率を向上させる効果が期待できる。
二、受粉に対する効果
本発明は、空気をポンプ13で送り出し、エアーバルブ4空気吹き出し口により蕾6に集中的に吹き出す構造を持ち,さらに,空気吹き出し口部分に感圧式のバルブを設置することにより、定圧に達した空気が勢いよく押し出され,花房をゆらすことで花粉が放出され,着果を促進させる効果も持たせた。
(経済性)
本発明は、温度制御した空気、例えば、冷却した空気のみを用いるため、経済性が高い。
2001年に農薬法が改正され着果促進剤を用いる必要がない。代替として用いられている外来生物としてマルハナ蜂も、受粉に対する効果が高いため、使用する必要がない。
(食品安全性)
自然に近い栽培法でも可能であり、何ら問題はない。
トマトが属するナス科はナス、ピーマン、とうがらし等の果菜類を含みそれらの着果特性もトマトと似ていることから,本発明をほかの栽培植物に応用することも可能であると思われる。
(まとめ)
本発明は、極めて簡易な構成により、発達途中の蕾が微少な平均気温上昇もストレスとして関知する栽培植物であっても、例えば、高温ストレス感受性が最も高い発達段階に冷却空気を送ることで、蕾を取り巻く気温を生育適温まで低下させる本発明による着果性工場効果は極めて高いと期待することができる。
さらに本発明は空気吹き出し口に感圧式バルブ、もしくは電磁弁による開閉機能を持ったバルブを有していることから、冷却された空気が勢いよく花房に吹き出されることで、開花している花は振動し、花粉が放出されることで着果がさらに促進されることが期待できる。
2…つり下げワイヤー
3…分枝パイプ
4…エアーバルブ
5…冷却空気
6…蕾
7…植物体
8…固定ワイヤー
9…断熱材
10…支持台
11…高さ調整用パイプ
12…つり下げワイヤー巻き取りコイル
13…ポンプ
14…小型冷却器
Claims (1)
- 栽培植物体の花房のみを、
着果適正温度範囲に保持するように冷却または加温することを特徴とする栽培植物の着果・生育促進方法。
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