従来、ディスク/ローラ型無段変速機や無端ベルト型無段変速機に於いては、その変速制御用ピストンは、それを変速比増大側(減速側)へ偏倚させるための第一の受圧面とそれを変速比減小側(増速側)へ偏倚させるための第二の受圧面とが同一面積を呈するものとされてきた。そのため油流制御弁が弁座部に於ける固形物の噛込み等により第一のピストン受圧面に対し油圧を供給し続ける状態に固着(スティック)すると、第二のピストン受圧面に対しても油圧を連続して供給するよう油圧回路装置に臨時の切換えが施されても、ディスク/ローラ型無段変速機においては、トラニオンはディスクよりローラに作用する駆動トルクにより変速比増大側へ偏倚され、また無端ベルト型無段変速機に於いても、駆動側プーリ対間には駆動トルクによりプーリ対を押し広げようとする力が作用するので、変速機は最大変速比まで減速されてしまう。
本発明は、ディスク/ローラ型や無端ベルト型の無段変速機に於ける上記の問題に対処し、その変速制御用油流制御弁に上記の如く減速側ピストン受圧面に油圧を供給し続ける状態の固着が生じても、変速機が最大変速比まで減速されてしまうことのないよう、その変速制御装置を改良することを課題としている。
上記の課題を解決するものとして、本発明は、無段変速機を減速側へ変位させるための第一の受圧面と該無段変速機を増速側へ変位させるための第二の受圧面とを有するピストンと、前記ピストンの前記第一および第二の受圧面に対し第一および第二の油圧室を形成する油圧シリンダと、前記第一および第二の油圧室に対する油圧の給排を制御する油流制御弁と、前記油流制御弁の作動を制御する弁制御手段とを有する変速制御装置にして、前記ピストンの前記第一の受圧面は該ピストンの前記第二の受圧面より小さくされていることを特徴とする変速制御装置を提案するものである。
前記ピストンは前記第一および第二の油圧室を貫通する第一および第二の軸部を有し、前記第一の軸部の径は前記第二の軸部の径より大きくされていてよい。
前記油流制御弁は前記第一のピストン受圧面に対し油圧を給排する第一の油流制御弁と前記第二のピストン受圧面に対し油圧を給排する第二の油流制御弁とが個別に構成されていてよい。
変速制御装置は、前記第一の油流制御弁が前記第一のピストン受圧面に対し油圧を供給し続ける状態に固着したとき、該固着による前記第一のピストン受圧面に対する油圧の増大に対抗して前記第二の油流制御弁により前記第二のピストン受圧面に対する供給油圧を増大させて変速制御を行なうようになっていてよい。
また、無段変速機は動力源により車輌を駆動する変速機であり、変速制御装置は、前記第一の油流制御弁が前記第一のピストン受圧面に対し油圧を供給し続ける状態に固着したとき、該固着による前記第一のピストン受圧面に対する油圧の増大に対抗して前記第二の油流制御弁により前記第二のピストン受圧面に対する供給油圧を増大させると共に、前記動力源の出力トルクを制御して変速制御を行なうようになっていてよい。この場合、前記動力源の出力トルクの制御は該動力源の出力トルクの上限を下げる制御であってよく、或はまた、前記第二のピストン受圧面に対する供給油圧を増大させる制御は該第二のピストン受圧面に対する供給油圧を最大値まで増大させる制御とされ、前記動力源の出力トルクの制御による変速制御は前記第二のピストン受圧面に作用する油圧力と前記第一のピストン受圧面に作用する油圧力の差に対し前記動力源の出力トルクを増減させる制御とされてもよい。
本発明の変速制御装置の適用対象は、一対のディスク間に複数のローラが挾圧されて該一対のディスク間に変速比可変に回転力を伝達するディスク/ローラ型無段変速機であってよく、或はまた互いに円錐面を対向させた複数のプーリ対間に無端ベルトが掛け渡され、駆動側プーリ対と被駆動側プーリ対に於ける対向円錐面間距離が相反的に変更されることにより変速比可変に回転力を伝達する無端ベルト型変速機であってもよい。
無段変速機の変速制御装置が、無段変速機を減速側へ変位させるための第一の受圧面と無段変速機を増速側へ変位させるための第二の受圧面とを有するピストンと、前記ピストンの前記第一および第二の受圧面に対し第一および第二の油圧室を形成する油圧シリンダと、前記第一および第二の油圧室に対する油圧の給排を制御する油流制御弁と、前記油流制御弁の作動を制御する弁制御手段とを有し、前記ピストンの前記第一の受圧面が該ピストンの前記第二の受圧面より小さくされていれば、油流制御弁が弁座部に於ける固形物の噛込み等により第一のピストン受圧面に対し油圧を供給し続ける状態に固着したときには、前記第二のピストン受圧面に対して前記第一のピストン受圧面に対する油圧と同じ油圧かそれに近い油圧を供給するよう前記油流制御弁を臨時に切り換え、前記第一および第二のピストン受圧面の差に対応して、無段変速機の減速側への変速を阻止するか或は無段変速機を増速側へ変速させことが可能となる。
前記ピストンが前記第一および第二の油圧室を貫通する第一および第二の軸部を有し、前記第一の軸部の径が前記第二の軸部の径より大きくされていれば、ピストンをシリンダ室に対しその両側の軸部にて安定して案内し、且つ第一および第二の油圧室に対するピストン径を同一に保ってその一方の側に展開される第一のピストン受圧面をその他方の側に展開される第二のピストン受圧面に対し小さくすることができる。
前記油流制御弁が前記第一のピストン受圧面に対し油圧を給排する第一の油流制御弁と前記第二のピストン受圧面に対し油圧を給排する第二の油流制御弁とが個別に構成されたものとされれば、これら第一および第二の油流制御弁を互いに相反的に切り換えることにより無段変速機を変速比増大側或は変速比減小側に自由に変速させることができ、また第一の油流制御弁が弁座部に於ける固形物の噛込み等により第一のピストン受圧面に対し油圧を供給し続ける状態に固着したときには、第二の油流制御弁を第二のピストン受圧面に対し油圧を供給する側に切り換えることにより、無段変速機の変速比増大側への変速を抑制することができる。
変速制御装置が、前記第一の油流制御弁が前記第一のピストン受圧面に対し油圧を供給し続ける状態に固着したとき、該固着による前記第一のピストン受圧面に対する油圧の増大に対抗して前記第二の油流制御弁により前記第二のピストン受圧面に対する供給油圧を増大させて変速制御を行なうようになっていれば、該固着による前記第一のピストン受圧面に対する油圧の増大と無段変速機に掛かる駆動トルクに対抗して前記第二のピストン受圧面に対する油圧を制御すべく前記第二の油流制御弁の切換えを制御することにより、前記第一の油流制御弁が開固着した状態でも変速制御を行うことが可能となる。
また、無段変速機が動力源により車輌を駆動する変速機であり、前記第一の油流制御弁が前記第一のピストン受圧面に対し油圧を供給し続ける状態に固着したとき、該固着による前記第一のピストン受圧面に対する油圧の増大に対抗して前記第二の油流制御弁により前記第二のピストン受圧面に対する供給油圧を増大させると共に、前記動力源の出力トルクを制御して変速制御を行なうようになっていれば、該固着による前記第一のピストン受圧面に対する油圧の増大と無段変速機に掛かる駆動トルクに対抗して前記第二のピストン受圧面に対する油圧を制御すると共に、動力源の出力トルクを制御して無段変速機に掛かる駆動トルクの大きさを制御することにより、前記第一の油流制御弁が開固着した状態でも変速制御を行うことが可能となる。この場合、動力源の出力トルクの制御が動力源の出力トルクの上限を下げる制御とされれば、開固着による前記第一のピストン受圧面に対する油圧の増大に対抗して前記第二のピストン受圧面に対する油圧を増大させて変速制御を行うに当り、動力源の出力トルクによる無段変速機への減速圧力が緩和されるので、前記第二のピストン受圧面に対する油圧の増減により変速比を制御できる制御幅が拡大される。また、前記第二のピストン受圧面に対する供給油圧を増大させる制御が該第二のピストン受圧面に対する供給油圧を最大値まで増大させる制御とされ、動力源の出力トルクの制御による変速制御が前記第二のピストン受圧面に作用する油圧力と前記第一のピストン受圧面に作用する油圧力の差に対し動力源の出力トルクを増減させる制御とされれば、開固着により前記第一のピストン受圧面に対する油圧が増大したときにも、動力源出力トルクの増減により変速比を増減制御することが可能となる。
添付の図1は本発明をディスク/ローラ型無段変速機の変速制御装置に適用した一つの実施の形態を示す概略図である。図に於いて、10はディスク/ローラ型無段変速機としては周知の構造に於けるローラ(パワーローラ)であり、トラニオン12より偏心軸14を経て支持されて図には示されていない一対のディスクの間に挾圧された状態に配置され、一対のディスクに対する傾動角を変えることにより一対のディスク間に伝達される回転動力の変速比を変更するようになっている。一対のディスクに対するローラの傾動角の変更は、トラニオン12が油圧アクチュエータ16により図にて上下に一時的に変位されることによりもたらされる。
即ち、ローラの中心軸線がディスクの中心軸線に交差しているときには、ローラがディスクに対し如何なる傾動角にあっても、駆動側ディスクがローラとの接触点に於いてローラに及ぼす力はローラの傾動軸線に平行に作用し、ローラには傾動角を変更させる力は作用しないが、ローラの中心軸線がディスクの中心軸線に対し上下何れか一方に変位されると、ローラにはディスクより偏向力を受ける。この場合、ローラと駆動側ディスクとの接点で見て、ローラの変位方向がディスクの回転方向に沿う方向であれば、ローラにはそれを駆動側ディスクの中心へ向かわせる方向の力が作用することから、ローラは変速比を増大させる方向(即ちダウンシフト方向)に傾動され、また逆に、変位方向がディスクの回転方向に逆らう方向であれば、ローラにはそれを駆動側ディスクの中心より遠ざける方向の力が作用することから、ローラは変速比を減小させる方向(即ちアップシフト方向)に傾動される。
こうして変速比を一定に保つべきときには、駆動側ディスクよりローラに及ぼされる駆動力に抗するだけの力をトラニオンに与えてローラをその中心軸線が駆動ディスク(従ってまた被駆動ディスク)の中心軸線に交差する位置に維持し、変速比を変更すべきときには、一時的にローラの中心軸線をディスクの中心軸線に対し変位させることにより変速比を増減させることができる。図示の実施の形態に於いては、ローラ10は図には示されていない駆動ディスクとの接触点に於いて下向きに駆動されるようになっており、ローラ10がその中心軸線を駆動ディスクの中心軸線に交差させる中立位置より下方へ変位されると変速比は増大側に変更され(即ちダウンシフトされ)、ローラ10がその中立位置より上方へ変位されると変速比は減小側に変更される(即ちアップシフトされる)ようになっている。尚、ローラは通常一対のディスク間に一対として或は3個が3つ巴状に配置されるので、ローラが一対として配置される場合には、図示のローラ10と対をなす他方のローラは他の一つのトラニオンにより対称に支持されるが、この他方のローラは、ダウンシフトに際しては一時図にて上方へ変位され、アップシフトに際しては一時図にて下方へ変位されることになる。
油圧アクチュエータ16はトラニオン12の下端と連結されたピストン18と、該ピストンの下方に形成された油圧室20と、該ピストンの上方に形成された油圧室22とを有しており、ポート24より油圧室20内へ油が給入され、ポート26より油圧室22内の油が排出されることによりピストン18が上向きに変位されてアップシフトを生じ、逆にポート26より油圧室22内へ油が給入され、ポートを24より油圧室20内の油が排出されることによりピストン18が下向きに変位されてダウンシフトを生ずるようになっている。ピストンは下方の油圧室20を貫通する下方の軸部28と上方の油圧室22を貫通する上方の軸部30とを有しており、上方の軸部30の径が下方の軸部28の径より大きくされていることにより、トラニオン12を減速側へ変位させるための上方のピストン受圧面32は、トラニオン12を増速側へ偏倚させるための下方の受圧面34より小さくされている。
36は油圧室20および22に対する圧油の供給源となる油圧ポンプであり、38は油圧室20および22より排出される油を受ける排油溜である。油圧ポンプ36より油圧室20、22への圧油の供給および油圧室20、22から排油溜38への油の排出は、個別の油流制御弁40および42により制御されるようになっている。
油流制御弁40は、油圧ポンプ36より圧油の供給を受ける給油ポート44、排油溜38へ向けて油を排出する排油ポート46、油圧室20に接続された出入ポート48を備えた弁ハウジング50と、ポート44,46,48間の連通および遮断を制御する弁スプール52と、弁スプール52を図にて左方へ向けて付勢する圧縮コイルばね54と、圧縮コイルばね54のばね力に抗して弁スプール52を図にて右方へ駆動する電磁駆動装置56とを有している。出入ポート48は、弁スプール52の移動位置に応じて、給油ポート44のみに連通されるか、排油ポート46のみに連通されるか、或いは給油ポート44および排油ポート46のいずれからも遮断される。即ち、弁スプール52が図にて下半に示されている切換え位置にあると、出入ポート48は給油ポート44に連通されて排油ポート46より遮断され、弁スプール52が図にて上半に示されている切換え位置にあると、出入ポート48は給油ポート44より遮断されて排油ポート46に連通され、弁スプール52がこれらの中間位置にあると、出入ポート48は給油ポート44および排油ポート46のいずれよりも遮断されるようになっている。
同様に、油流制御弁42は、油圧ポンプ36より圧油の供給を受ける給油ポート58、排油溜38へ向けて油を排出する排油ポート60、油圧室22に接続された出入ポート62を備えた弁ハウジング64と、ポート58,60,62間の連通および遮断を制御する弁スプール66と、弁スプール66を図にて左方へ向けて付勢する圧縮コイルばね68と、圧縮コイルばね68のばね力に抗して弁スプール66を図にて右方へ駆動する電磁駆動装置70とを有している。出入ポート62は、弁スプール66の移動位置に応じて、給油ポート58のみに連通されるか、排油ポート60のみに連通されるか、或いは給油ポート58および排油ポート60のいずれからも遮断される。即ち、弁スプール66が図にて上半に示されている切換え位置にあると、出入ポート62は給油ポート58に連通されて排油ポート60より遮断され、弁スプール66が図にて下半に示されている切換え位置にあると、出入ポート62は給油ポート58より遮断されて排油ポート60に連通され、弁スプール66がこれらの中間位置にあると、出入ポート62は給油ポート58および排油ポート60のいずれよりもより遮断されるようになっている。
電磁駆動装置56および70への通電は、マイクロコンピュータを備えた弁制御手段72により制御されるようになっている。
上記の如き構造に於いて、変速比を減小させるべきときには、弁制御手段72により油流制御弁40および42の電磁駆動装置56および70への電流の供給を制御し、油流制御弁40の出入ポート48を一時的に給油ポート44に連通させて油圧室20へ油を送り込むと同時に、油流制御弁42の出入ポート62を一時的に排油ポート60に連通させて油圧室22より油を排出させ、ピストン18を図にて上向きに駆動し、ローラ10の中心軸線を図には示されていないディスクの中心軸線に対し上方へ偏倚させる。ローラ10の中心軸線がディスクの中心軸線に対し上方へ偏倚されると、ローラは変速比を減小させる方向に偏向されるので、その結果生じた変速比の変化が図には示されていないローラの偏向角度を検出するセンサ等により検出され、その信号が弁制御手段72へ送られ、変速比の変化につれて弁制御手段72は適当なフィードバック制御を実行し、ローラ10に所望の傾動が生じ或いは生ずる見通しが立ったところで、電磁駆動装置56および70への供給電流を制御し、ピストン18を中立位置まで戻す。
また、逆にディスク/ローラ型無段変速機の変速比を増大させるべきときには、弁制御手段72により油流制御弁40および42の電磁駆動装置56および70への電流の供給を制御し、油流制御弁40の出入ポート48を一時的に排油ポート46に連通させて油圧室20より油を排出させると同時に、油流制御弁42の出入ポート62を一時的に給油ポート58に連通させて油圧室22内へ油を送り込み、ピストン18を図にて下向きに駆動し、ローラ10の中心軸線を図には示されていないディスクの中心軸線に対し下方へ偏倚させる。この場合にも、ローラ10の中心軸線がディスクの中心軸線に対し下方へ偏倚されると、ローラは変速比を増大させる方向に偏向されるので、その結果生じた変速比の変化が図には示されていないローラの偏向角度を検出するセンサ等により検出され、その信号が弁制御手段72へ送られ、変速比の変化につれて弁制御手段72は適当なフィードバック制御を実行し、ローラ10に所望の傾動が生じ或いは生ずる見通しが立ったところで、電磁駆動装置56および70への供給電流を制御し、ピストン18を中立位置まで戻す。
図2は本発明を無端ベルト型無段変速機の変速制御装置に適用した一つの実施の形態を示す概略図である。図に於いて、74および76は円錐面を互いに対向させた駆動側のプーリであり、78および80は円錐面を互いに対向させた被駆動側のプーリであり、これらのプーリ対の円錐面間に無端ベルト82が掛け渡されている。駆動側に於いては、プーリ74は軸線方向の動きに対し固定されており、これ対しプーリ76は油圧アクチュエータ84により軸線方向に変位されるようになっている。同様に、被駆動側に於いては、プーリ78は軸線方向の動きに対し固定されており、これ対しプーリ80は油圧アクチュエータ86により軸線方向に変位されるようになっている。
駆動側の油圧アクチュエータ84に於いては、シリンダ88内にポート90を経て圧油が供給され、シリンダ88内よりポート92を経て油が排出されるとき、シリンダ88内にて摺動するピストン94が図にて左方へ駆動され、プーリ74と76の間の隔置距離を縮小し、逆にシリンダ88内にポート92を経て圧油が供給され、シリンダ88内よりポート90を経て油が排出されるとき、シリンダ88内にて摺動するピストン94が図にて右方へ駆動され、プーリ74と76の間の隔置距離を拡大するようになっている。シリンダ88内をピストン94より図にて左方の領域にて貫通するピストンの軸部はシリンダ88内をピストン94より図にて右方の領域にて貫通するピストンの軸部より太くされており、これによってピストン94の図に於ける左方の受圧面は図に於ける右方の受圧面より小さくされている。
同様に、被駆動側の油圧アクチュエータ86に於いては、シリンダ96内にポート98を経て圧油が供給され、シリンダ96内よりポート100を経て油が排出されるとき、シリンダ96内にて摺動するピストン102は図にて左方へ駆動され、プーリ78と80の間の隔置距離を拡大し、逆にシリンダ96内にポート100を経て圧油が供給され、シリンダ96内よりポート98を経て油が排出されるとき、シリンダ96内にて摺動するピストン102が図にて右方へ駆動され、プーリ78と80の間の隔置距離を縮小するようになっている。シリンダ96内をピストン102より図にて右方の領域にて貫通するピストンの軸部はシリンダ96内をピストン102より図にて左方の領域にて貫通するピストンの軸部より太くされており、これによってピストン102の図に於ける右方の受圧面は図に於ける左方の受圧面より小さくされている。尚、被駆動側プーリ対に於けるプーリ間隔置距離は、駆動側プーリ対に対するプーリ間隔置距離制御に追従して、ばね装置により自動的に変更されるようになっていてもよい。
駆動側プーリ74と76の間の隔置距離が拡大され、被駆動側プーリ78と80の間の隔置距離が縮小されるとき、変速比が増大されてダウンシフトが生じ、逆に駆動側プーリ74と76の間の隔置距離が縮小され、被駆動側プーリ78と80の間の隔置距離が拡大されるとき、変速比が減小されてアップシフトが生じる。従って、この場合にも、無段変速機を減速側へ偏倚させるための第一の受圧面と該無段変速機を増速側へ偏倚させるための第二の受圧面とを有するピストンに於いて、ピストンの第一の受圧面は該ピストンの第二の受圧面より小さくされている。かかる無端ベルト型無段変速機の変速のための油圧アクチュエータ84および86の各ポートに対する油圧の給排は、図1に示した油圧給排手段と同様の油圧給排手段により同様の要領にて行われてよいので、同様の説明は明細書の冗長化を避けるため省略する。
図3は、本発明の変速制御装置により無段変速機の変速比を制御する要領の一例を示すフローチャートである。かかるフローチャートによる制御は、数ミリセカンド〜数100ミリセカンドの周期にて、その都度各種のセンサ等より必要な情報を読み取りつつ行われる。
制御が開始されると、読みとられた情報に基づき、ステップ1(S1)にて、無段変速機の変速比を増大側へ変化させる図1に於ける油流制御弁42に固形異物の噛込み等により開状態での固着(スティック)が生じていないか否かの判断が行われる。無段変速機の変速制御装置に変速比を増大させる状態での固着が生ずると、従来の変速制御装置の構造では、無段変速機に作用する駆動力の下で変速比は最大値まで増大し、そこに保持されたままとなるので、車輌走行に困難を来たす虞れがある。本発明はかかる障害に対処する構成を備えるものであり、先ずステップ1にてこの点に関するチェックが行われる。そして答がノー(N)であれば、制御はステップ2へ進み、以下の要領にて変速要求に応じた変速制御が行われる。
ステップ2に於いては、アクセル開度θと車速Vとに基づき、予め設定されたマップ等を参照し、θとVの関数γt=f(θ,V)として目標変速比γtが算出される。次いで、ステップ3に於いて、上に算出された目標変速比γtと現在の変速比γの偏差Δγが算出される。
次いで、ステップ4に於いて、Δγが或る正の微小値δa以上であるか否かが判断される。答がイエス(Y)であれば、制御はステップ5へ進み、図1の例では、油流制御弁42の給油ポート58を出入ポート62に対し開いて油圧アクチュエータ16の油圧室22内の油圧Pdをk1(Au/Ad)Δγだけ上昇させ、また同時に油流制御弁40の排油ポート46を出入ポート48に対し開いて油圧アクチュエータ16の油圧室20内の油圧Puをk1(Ad/Au)Δγだけ低下させ、ピストン18を図にて下方へ変位させることが行われる。AdおよびAuはそれぞれピストン18のダウンシフト側(上側)受圧面32およびアップシフト側(下側)受圧面34の面積であり、k1は適当な比例定数である。
一方、ステップ4の答がノーであれば、制御はステップ6へ進み、Δγが或る負の微小値−δa以下であるか否かが判断される。答がイエスであれば、制御はステップ7へ進み、油流制御弁40の給油ポート44を出入ポート48に対し開いて油圧アクチュエータ16の油圧室20内の油圧Puをk1(Ad/Au)Δγだけ上昇させ、また同時に油流制御弁42の排油ポート60を出入ポート62に対し開いて油圧アクチュエータ16の油圧室22内の油圧Pdをk1(Au/Ad)Δγだけ低下させ、ピストン18を図にて上方へ偏倚させることが行われる。
ステップ6の答がノーであれば、制御はそのままリターンし、油流制御弁40および42の開閉制御は行われず、油圧アクチュエータ16に於けるピストン18はそのままの位置に保持される。
油流制御弁42に固形異物の噛込み等による開状態での固着(スティック)が生じ、ステップ1の答がイエスになると、制御はステップ8へ進み、今動力源は内燃機関であるとして、アクセルペダルの踏込みに対するアクセル開度θを或る比較的小さいθo以下に制限すること行われ、これによって内燃機関の出力トルクTeは或る比較的小さい値Teo以下に制限される。その後制御はステップ9へ進み、制限された範囲でのスロットル開度θと車速Vとに基づき、ステップ2に於けると同じく、予め設定されたマップ等を参照し、θとVの関数γt=f(θ,V)として目標変速比γtが算出される。次いで、ステップ10に於いて、上に算出された目標変速比γtと現在の変速比γの偏差Δγが算出される。
次いで、ステップ11に於いて、Δγが正の微小値δa以上であるか否かが判断される。この場合、ピストン18の上側受圧面32には開状態に固着した油流制御弁42の給油ポート58より連続して圧油が供給されており、加えてピストン18にはディスクからローラ10へ伝えられた駆動トルクによる図にて下向きの力が作用しているが、それでも尚現在の変速比γより目標変速比γtが高く、ステップ11の答がイエスであれば、制御はステップ12へ進み、油流制御弁40の排油ポート46を出入ポート48に対し開いて油圧アクチュエータ16の油圧室20内の油圧Puをk2Δγずつ低下させ、ピストン18を図にて下方へ偏倚させることが行われる。k2は或る適当な定数である。
しかし、油流制御弁42が開状態に固着し、給油ポート58より出入ポートへ連続して圧油が供給され、またピストン18にディスクからローラ10へ伝えられた駆動トルクによる図にて下向きの力が作用している状態では、やがてステップ11の答はノーとなり、更にステップ13の答はイエスとなる。このとき制御はステップ14へ進み、油流制御弁40の給油ポート44を出入ポート48に対し開いて油圧室20の油圧Puをk2Δγずつ増大させることが行われる。このとき、ピストン18が従来のこの種のアクチュエータに於ける如く上下同一の受圧面積を有する構造であれば、油圧室20の油圧Puを増大させても、ピストン18はディスクからローラ10へ伝えられた駆動トルクによる図にて下向きの力により結局は下方の最大変速比位置まで変位されてしまうが、ピストン18のダウンシフト側受圧面32がアップシフト側受圧面34より小さくされていれば、ステップ8にてエンジントルクが制限されることと相俟って、ピストン18のダウンシフト方向への変位を途中で止め、また場合によってはピストン18をアップシフト方向へ押し戻すことも可能となる。
図4は、油流制御弁42に固形異物の噛込み等による開状態での固着が生じ、ステップ1の答がイエスになって制御がステップ8へ進んだときの各種パラメータの変化を示すグラフである。この種の無段変速機の油圧アクチュエータによる変速制御は、通常、装置の可動部に於ける固着を防ぎ、制御の微調整を可能にするため、ピストンの両側の油圧室に対する油圧の付与は、各油圧室に対し油圧の給排を周期的にオンオフさせる割合を変える所謂デューティ比制御により行われ、油流制御弁40および42は常時少しずつ開閉されている。そのような制御過程に於いて、時点t1に於いて油流制御弁42に開スティックが生じ、この時点よりアクチュエータ16に於けるダウンシフト側油圧Pdが最大値に張り付いたままになったとする。これに対しては、ステップ8に於いて直ちにスロットル開度の制限が課せられ、エンジントルクがやや遅れて低減されるが、トラニオンに作用するダウンシフト方向の力(エンジントルクによる力Fe+ダウンシフト側油圧による力Fd−アップシフト側油圧による力Fu)は図示の如く一時高くなり、これによって変速比γは次第に増大してくる。しかし、低減されたエンジントルクと車速に見合って設定される目標変速比γtが適当であれば、時点t2よりアップシフト側油圧Puが高められ、それがピストンの上下の受圧面積の差により上向きの有効な力として作用するので、これより変速比の増大は抑えられ、時点t3以降、変速比を制御された目標変速比γtとすることができる。
図5は、本発明の変速制御装置により無段変速機の変速比を制御する要領の他の一例を示す図3と同様のフローチャートである。図5のフローチャートに於いて油流制御弁42に開固着が生じていないときの制御であるステップ1〜7は図3に於けるステップと同じであり、また油流制御弁42に開固着が生じたときの制御に於けるステップ9,10、11,13も図3に於けるステップと同じである。また図6は、油流制御弁42に開固着が生じたとき図5のフローチャートに従って変速制御が行われる場合の各種パラメータの変化を示す図4と同様のグラフである。
この例では、時点t1にて油流制御弁42に開固着が生じ、制御がステップ101へ進んだときには、ここで油流制御弁40を開いて給油ポート44を出入ポート48に連通させ、アップシフト側油圧室20の油圧Puを最大値Pumaxにすることが行われる。そうするとトラニオンに作用するダウンシフト方向の力Fe+Fd−Fuは大きく低下するので、変速比γはこれより次第に大きく低下していく。このことはステップ11の答がイエスとなることによって感知され、ステップ102に於いて目標変速比γtに対比した実変速比γの不足分Δγの増大に比例してエンジントルクTeを増大させることが行われる。k3は適当な比例定数である。そして、油流制御弁42が開状態に固着していても、或る程度の時間が経った時点t2にて、変速比γをスロットル開度θと車速Vに対応した目標値γtに落ち着けることができる。
以上に於いては、本発明をディスク/ローラ型無段変速機および無端ベルト型無段変速機の変速制御部のピストンに係る基本構造と、それを用いて無段変速機の変速制御を行う二つの態様について詳細に説明したが、これらの実施の形態について本発明の範囲内にて種々の変更が可能であることは当業者にとって明らかであろう。
10…ローラ、12…トラニオン、14…偏心軸、16…油圧アクチュエータ、18…ピストン、20,22…油圧室、24,26…ポート、28,30…軸部、32,34…ピストン受圧面、36…油圧ポンプ、38…排油溜、40,42…油流制御弁、44…給油ポート、46…排油ポート、48…出入ポート、50…弁ハウジング、52…弁スプール、54…圧縮コイルばね、56…電磁駆動装置、58…給油ポート、60…排油ポート、62…出入ポート、64…弁ハウジング、66…弁スプール、68…圧縮コイルばね、70…電磁駆動装置、72…弁制御手段、74,76…駆動側プーリ、78,80…被駆動側プーリ、82…無端ベルト、84,86…油圧アクチュエータ、88…シリンダ、90,92…ポート、94…ピストン、96…シリンダ、98,100…ポート、102…ピストン