ところで、GaN半導体は、化学的に安定であることから、従来におけるイオン注入法や熱拡散法を用いた場合、高濃度のSiをGaN半導体層にドーピングすることができず、低抵抗であるn型GaN層を選択的に形成することが困難であった。このため、低抵抗化領域の半導体層を取り除き、低抵抗化領域にn型GaN半導体を埋め戻す埋込方法が提案されている。この埋込方法においては、まず、図14(1)に示すように、Si基板101上にバッファ層102およびp型GaN層103aを積層した後、エッチングマスクであるSiO2膜105bを形成する。そして、図14(2)に示すように、エッチングマスクによる被覆領域以外のp型GaN層を所定深さまでSi基板101表面に対して垂直にエッチングし、メサ形状103bに形成する。次いで、図14(3)に示すように、Siを含むガス下でGaN半導体層を成長させることによって、高濃度のSiがドーピングされたn型GaN層104がp型GaN層103上およびメサ形状103b周囲に選択的に埋め込まれる。
しかしながら、図14に示す埋め込み法を用いた場合、図15に示すように、メサ形状103bがSi基板101表面に対して垂直に形成されているため、p型GaN層表面での結晶速度とメサ形状103b側面での結晶成長速度との差などに起因し、メサ形状103b周囲にn型GaN層が成長しない空隙Bが生じてしまう場合がある。この場合、空隙Bによってp型GaN層103とn型GaN層104とが電気的に接触できず、p型GaN層103とn型GaN層104との間の抵抗が高くなってしまう。この結果、この半導体素子が酸化膜半導体電界効果トランジスタ(MOSFET:Metallic Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である場合には、ON抵抗が目標値よりも高くなる不良が多く発生するという問題があった。特に、n型GaN層104の成長時における成長圧力が高いほど不良率が高くなり、n型GaN層104の成長条件を柔軟に設定することができなかった。
また、図14に示す埋め込み法を用いた場合、図16に示すように、エッチングマスクであるSiO2膜105b上の原料がSiO2膜105b周囲の半導体層に捕獲されることに起因し、n型GaN層が局所的に成長しSiO2膜105b周囲に突起部Pが生じてしまう場合がある。この場合、図17(1)に示すように、この突起部Pが生じた場合、フォトリソグラフィ工程において、マスク111を基板100上に形成されたレジスト110表面に密着できず、隙間ができてしまう。この結果、図17の基板に到達する光強度を示す曲線L0にあるように、マスク111およびレジスト110の隙間によって透過光の経路が拡大してしまい、図17(2)の矢印Yに示すように、本来レジスト110を除去すべき幅であるマスク111の光透過領域幅d0よりも広い幅d1のレジスト110が除去されてしまっていた。言い換えると、レジストパターンがマスク寸法どおりに形成されないため、各構成領域を正確な位置および正確な形状に形成することができず、半導体素子を所望の特性に設定することができないという問題があった。
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、メサ形状である第1の材料層の周囲に第2の材料を空隙なく平坦に埋め込むことができる埋込方法、半導体素子製造方法、および、メサ形状である第1の半導体層の周囲に第2の半導体が空隙なく平坦に埋め込まれた半導体素子を提供することを目的とする。
上述した課題を解決し、目的を達成するために、この発明にかかる埋込方法は、基板上に形成された第1の材料層上にエッチングマスクを形成するマスク形成工程と、前記エッチングマスク周縁が所定幅分突出するように前記第1の材料層をメサ形状にドライエッチングするエッチング工程と、前記エッチング工程後に第2の材料によって前記メサ形状周囲を選択的に埋め込む埋込工程と、前記エッチングマスクを除去するマスク除去工程と、を含むことを特徴とする。
また、この発明にかかる埋込方法は、前記エッチング工程は、前記エッチングマスクをもとに前記第1の材料層を前記基板表面に対して側面がほぼ垂直である凸形状に形成する第1のエッチング工程と、前記エッチングマスクの所定幅が突出するように前記凸形状の表層部をエッチングして前記基板表面に対し傾斜した側面を有する前記メサ形状を形成する第2のエッチング工程と、を含むことを特徴とする。
また、この発明にかかる埋込方法は、前記第2のエッチング工程におけるガス流量およびエッチング圧力に応じて前記メサ形状から突出する前記エッチングマスクの所定幅を決定することを特徴とする。
また、この発明にかかる埋込方法は、前記第2のエッチング工程は、前記第1のエッチング工程に比してラジカル生成率を高めてエッチング方向を等方化させることを特徴とする。
また、この発明にかかる半導体素子製造方法は、半導体素子を製造する半導体素子製造方法において基板上に形成された第1の半導体層上にエッチングマスクを形成するマスク形成工程と、前記エッチングマスク周縁が所定幅分突出するように前記第1の半導体層をメサ形状にドライエッチングするエッチング工程と、前記エッチング工程後に第2の半導体によって前記メサ形状周囲を選択的に埋め込む埋込工程と、前記エッチングマスクを除去するマスク除去工程と、少なくとも前記メサ形状上にゲート絶縁膜を形成するゲート絶縁膜形成工程と、を含むことを特徴とする。
また、この発明にかかる半導体素子製造方法は、前記エッチング工程は、前記エッチングマスクをもとに前記第1の半導体層を前記基板表面に対し側面がほぼ垂直である凸形状に形成する第1のエッチング工程と、前記エッチングマスクの所定幅が突出するように前記凸形状の表層部をエッチングして前記基板表面に対し傾斜した側面を有する前記メサ形状を形成する第2のエッチング工程と、を含むことを特徴とする。
また、この発明にかかる半導体素子製造方法は、前記第2のエッチング工程におけるガス流量およびエッチング圧力に応じて前記メサ形状から突出する前記エッチングマスクの所定幅を決定することを特徴とする。
また、この発明にかかる半導体素子製造方法は、前記第1のエッチング工程に比して前記第2のエッチング工程は、ラジカル生成率を高めてエッチング方向を等方化させることを特徴とする。
また、この発明にかかる半導体素子製造方法は、前記第1の半導体は、p型半導体であり、前記第2の半導体は、n型半導体であることを特徴とする。
また、この発明にかかる半導体素子製造方法は、前記第2のエッチング工程は、0.5μm以上1.0μm以下の幅分前記エッチングマスクが突出するように前記メサ形状を形成することを特徴とする。
また、この発明にかかる半導体素子は、基板表面に対し傾斜した側面を有するメサ形状の第1の半導体層と、前記メサ形状の周囲に埋め込まれた第2の半導体層と、を備えたことを特徴とする。
また、この発明にかかる半導体素子は、前記メサ形状は、前記基板表面に対し60°以上75°未満である角度の側面を有することを特徴とする。
本発明は、エッチングマスクの所定幅が突出するように第1の材料層をメサ形状にドライエッチングすることによって、第2の材料層が成長する結晶面差に起因した空隙やエッチングマスク上の材料捕獲に起因する突起部を形成することなく、第2の材料層をメサ周囲に平坦に埋め込むことができる。
以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。図面の記載において、同一部分には同一の符号を付している。さらに、図面は模式的なものであり、各層の厚みと幅との関係、各層の比率などは、現実のものとは異なることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
まず、実施の形態にかかる埋込方法を用いた半導体素子製造方法について説明する。本実施の形態においては、半導体素子製造方法の一例としてMOSFET製造方法について説明する。図1〜図4は、実施の形態にかかるMOSFET製造方法の各工程におけるMOSFETの断面図である。
まず、図1(1)に示すように、1040℃で10分間のサーマルクリーニングをSi基板1に行なった後、Si基板である基板1上に有機金属気相成長(MOCVD)法によってバッファ層2およびp型GaN層3aを積層する。バッファ層2は、たとえば、水素100%のキャリアガス、1050℃の成長温度および50Torrの成長圧力によって、厚さ40nmのAlN層を成長させた後、20nmのGaN層と5nmのAlN層とをそれぞれ60ペア積層する。バッファ層2の積層においては、トリメチルガリウム(TMG)、トリメチルアルミニウム(TMA)およびアンモニア(NH3)を反応ガスとして用いる。次いで、たとえば、シクロペンタジェニエルマグネシウム(Cp2Mg)を用い、水素100%のキャリアガス、1050℃の成長温度および200Torrの成長圧力によって、Mgをp型の不純物としてドーピングした厚さ500nmのp型GaN層3aを積層する。このp型GaN層3aの積層においては、トリメチルガリウム(TMG)およびアンモニア(NH3)を反応ガスとして用いる。また、Mgの添加量は、たとえば1×1017cm-3に設定される。なお、MOCVD法に代えて、ハライド気相エピタキシー法(HVPE法)、分子線エピタキシー法(MBE)を用いることも可能である。
そして、図1(1)に示すように、p型GaN層3a上に、プラズマ化学気相成長法(PCVD)またはスパッタ法などを用いて、100nmの膜厚のSiO2層5aを形成する。次いで、図1(2)に示すように、Si基板1上に形成されたp型GaN層3a上にエッチングマスクを形成するマスク形成工程を行なう。このエッチングマスク工程においては、フォトリソグラフィ工程およびエッチング工程を行なうことによって、エッチングマスクとして機能するSiO2膜5b以外の領域、すなわちn型GaN層が積層される領域のSiO2層を除去する。このエッチング工程においては、誘電体エッチング工程として、緩衝フッ酸エッチングを行なう。
つぎに、エッチングマスクであるSiO2膜5b周縁が所定幅分突出するようにp型GaN層3aをメサ形状にドライエッチングするエッチング工程を行なう。なお、このエッチング工程を行なう装置として、ICP−RIE(Inductively Coupled Plasma−Reactive Ion Etching)方式のエッチング装置が用いられる。
まず、図2(1)に示すように、エッチングマスクであるSiO2膜5bをもとにp型GaN層3aを所定深さまでエッチングし、Si基板1表面に対して側面がほぼ垂直である凸形状3cに形成する第1のエッチング工程を行なう。この第1のエッチング工程は、この第1のエッチング工程は、図2(1)の矢印に示すように、イオン生成率を高めて、エッチング方向をSi基板1の表面に対して垂直方向に制御することによって、エッチングマスクであるSiO2膜5bの幅を忠実に再現した凸形状を形成する。
そして、図2(2)に示すように、第1のエッチング工程において形成した凸形状3cの表層部をエッチングしてSi基板1表面に対し傾斜した角度θの側面を有するメサ形状3dを形成する第2のエッチング工程を行なう。この角度θは、後述するように、90°未満であれば足りるが、特に60°〜75°程度であることが望ましい。この第2のエッチング工程は、エッチングマスクであるSiO2膜5bが影響を受けない条件である。さらに、図2(2)の各矢印に示すように、第2のエッチング工程は、第1のエッチング工程に比してラジカル生成率を高めてエッチング方向を等方化させることによって、p型GaN層3の表層部をエッチングしている。言い換えると、第2のエッチング工程においては、p型GaN層3の表層部がエッチングによって除去されるのに対しSiO2膜5bはほとんどエッチングされない。このため、第2のエッチング工程においては、SiO2膜5b周縁を所定幅分メサ形状3dから突出させることができる。このメサ形状3dから突出した突出部Dは、後述するように、0.50μm以上1μm以下の幅であることが望ましい。
そして、図3(1)に示すように、エッチング工程後にn型GaN層4によってメサ形状3d周囲およびp型GaN層3上を選択的に埋め込む埋込工程を行なう。この埋込工程は、MOCVD法を用い、たとえば、1050℃の成長温度および200Torrの成長圧力において、2μm/hrの成長速度に調整している。そして、Siをn型の不純物としてドーピングした厚さ1.2μmのn型GaN層4を成長させている。Siの添加量は、たとえば1×1018cm-3に設定される。Si基板1表面に対し角度θに傾斜した側面を有するメサ形状3dが形成されているため、Si基板1表面に対し側面が垂直であるメサ形状と比較し、このメサ形状3dの側面には各結晶面が現れることとなる。言い換えると、p型GaN層3のSi基板1表面に対して水平である面上に現れる結晶面と、同じ結晶面がメサ形状3d側面に現れる領域もあるため、p型GaN層3水平面上での結晶速度とメサ形状3d側面での結晶成長速度との差が縮まり、p型GaN層表面での結晶成長とメサ形状3d側面の結晶成長とは、ともに円滑に進行する。この結果、従来発生していたメサ形状周囲の空隙は、ほとんど生じない。また、この埋込工程においては、メサ形状3dからSiO2膜5b周縁が所定幅分突出した状態でn型GaN層4を埋め込むため、SiO2膜5b上の材料は、SiO2膜5b膜周囲の半導体層に捕獲されSiO2膜5b突出部Dの真下で成長する。このため、従来発生したSiO2膜周囲の突起部もほとんど発生しない。
そして、埋込工程が終了した後、図3(2)に示すように、エッチングマスクであるSiO2膜5bを除去するマスク除去工程を行なう。埋込工程においては、前述したように、従来技術において問題となっていた空隙および突起部の発生も抑制できるため、マスク除去工程後には、p型GaN層3に構成されるメサ形状3dの周囲に隙間なくn型GaN層4が埋め込まれるとともに、領域S1に示すように、p型GaN層3表面とn型GaN層4表面とが平坦に接触した層形成を実現することが可能になる。
つぎに、図4(1)に示すように、p型GaN層3およびn型GaN層4の表面上に、たとえばPCVD法を用いてSiO2層を形成した後、フォトレジスト(図示しない)を塗布し露光現像するフォトリソグラフィ工程後にエッチング工程を行なうことによって、ゲート絶縁膜6を形成する。
そして、図4(2)に示すように、n型GaN層4におけるソース領域およびドレイン領域に対応する領域上にTi/Alからなるソース電極7とドレイン電極8を形成する。ソース電極7とドレイン電極8は、たとえば、電極形成領域以外の領域をフォトレジストで覆った状態でスパッタリング法やEB法によって金属を形成した後にフォトレジストを除去するリフトオフ法を用いて形成される。ソース電極7およびドレイン電極8は、Siが高濃度にドーピングされているn型GaN層4とそれぞれオーミック接触する。なお、ソース電極7およびドレイン電極8は、n型GaN層4とのオーミック接触を実現できれば足りるため、Ti/Al以外の材料を用いて形成してもよい。
次いで、多結晶シリコン(poly−Si)層を減圧(LP)CVD法やスパッタリング法を用いて素子全面に形成した後、三塩化リン(POCl3)ガス中における熱処理を行なうことによって、poly−Si層にPのドーピングを行なう。その後、フォトリソグラフィ工程およびエッチング工程を経ることによって、poly−Si層をパターニングし、図4(2)に示すゲート電極9をゲート絶縁膜6上に形成する。なお、poly−Si層への不純物のドーピングは、成膜時に不純物を含ませるほか、成膜後に熱拡散を行なうことによって行ってもよい。また、ゲート電極8は、ホウ素がドープされたpoly−Si層、多結晶シリコンゲルマニウム(SiGe)膜、アルミニウム(Al)、金(Au)、パラジウム(Pd)、プラチナ(Pt)、ニッケル(Ni)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、あるいは、これら金属のシリサイド膜などを用いて形成してもよい。
以上の工程を行なうことによって、実施の形態にかかるMOSFET10を製造することができる。このMOSFET10は、MOSFET10を上方から見た場合、たとえば図5に示すように、内径200μmの円形状Asのソース電極7が形成され、その外側に内径205μm、外径220μmである環状Agのゲート電極9が形成され、その外側に、環状Adのドレイン電極8が形成される。エッチングマスクとして機能するSiO2膜5bは、マスク形成工程において、ゲート電極9である環状Agに対応するマスクを用いて形成される。
図4(2)に示すように、本実施の形態にかかるMOSFET10は、p型GaN層3aをエッチングマスクであるSiO2膜5b周縁が所定幅分突出するようにメサ形状3dにドライエッチングするエッチング工程を用いて製造することによって、高濃度の不純物をドープしたn型GaN層4を備えることができる。このため、MOSFET10は、電極のオーミック接触性を高め、電極の接触抵抗を低くすることが可能になる。また、MOSFET10は、従来発生していたp型GaN層とn型GaN層との間に隙間が生じないため、隙間によるp型GaN層とn型GaN層との間の高抵抗化が発生せず、ON抵抗を低く維持することができる。
また、MOSFET10は、従来発生していたゲート絶縁膜周囲の突起部がないため、図6(1)に示すように、フォトリソグラフィ工程において、マスク21を基板11上に形成されたレジスト20上に隙間なく密着させることが可能になる。この結果、図6の基板に到達する光強度を示す曲線L1にあるように、マスク21の透過領域幅d0に対応した幅の透過光がレジスト20に到達でき、図6(2)に示すように、マスク寸法どおりに正確にレジストパターンを形成することができる。したがって、MOSFET10は、p型GaN層3上およびn型GaN層4上における各構成領域を正確な位置および正確な形状に形成することができ、半導体素子を安定して所望の特性に設定することが可能になる。さらに、MOSFET10は、図4(2)の領域S1に示すように、平坦な表面でp型GaN層3とn型GaN層4とが接続しているため、p型GaN層3表面とn型GaN層4表面とが平坦に接触した層上にゲート絶縁膜6を形成することができる。この結果、各電極に操作電圧を印加した場合、ゲート絶縁膜6下において円滑に反転層が生じるため、MOSFET10は、安定して動作することが可能になる。
つぎに、図2に示す第1のエッチング工程および第2のエッチング工程におけるエッチング条件について詳細に説明する。図2に示す第1のエッチング工程および第2のエッチング工程は、図7に示す高周波誘導によって励起されたプラズマを利用するICP−RIE方式のエッチング装置30を使用する。図7に示すエッチング装置30は、エッチング室を形成する絶縁系31、エッチング室内に配置された下部電極32、エッチング室外に配置されたコイル33、下部電極32に高周波電力を供給する高周波電源34、高周波電源34から出力された高周波容量を制御するマッチングボックス34a、下部電極32に電源供給を行なうDC電源35、コイル33に高周波電力を供給する高周波電源36、高周波電源36から出力された高周波容量を制御するマッチングボックス36a、温度調整用のサーキュレータ37、エッチングガスを供給する供給系38、エッチング室内のガスを排出する排出系39を備える。基板11は、下部電極32上に配置される。コイル33は、高周波電力が供給されることによって、エッチング室内にラジカル、イオンを生成する。下部電極32は、高周波電力を供給されることによって、生成されたイオンの基板11への引き込みを行なう。エッチング装置30は、エッチング条件によって、等方的(高圧力側)にも異方的(低圧力側)にもエッチング処理を行なうことが可能である。
ここで、図2(1)に示す第1のエッチング工程においては、エッチング方向をSi基板1の表面に対して垂直方向に制御している。すなわち、第1のエッチング工程は、異方性エッチングである。この第1のエッチング工程は、イオン生成率を高め、生成したイオンが基板11表面に対して垂直に引き込まれるエッチング条件に設定されている。具体的には、図8の表に示すように、コイル33への供給電力ICP電力が500W、下部電極32への供給電力バイアス電力が50W、キャリアガスである塩素ガスの流量が20sccm、エッチング圧力が0.4Paであるエッチング条件を用いる。このエッチング条件は、エッチング圧力を低くすることによって、イオン生成率を高くしている。さらに、下部電極32の供給電力が高いため、生成したイオンは下部電極32に強く引き込まれる。このため、生成したイオンが基板11表面に対して垂直に引き込まれ、エッチングマスクであるSiO2膜5bの幅を忠実に再現した図2(1)に示す凸形状3cを形成できる。
つぎに、図2(2)に示す第2のエッチング工程におけるエッチング条件について説明する。第2のエッチング工程においては、第1のエッチング工程に比してラジカル生成率を高めエッチング方向を等方化することによって、所定幅分のSiO2膜5b周縁をメサ形状3dから突出させている。図9は、コイル33への供給電力ICP電力を500Wとし、下部電極32への供給電力バイアス電力、塩素ガス流量およびエッチング圧力をそれぞれ変えて、SiO2膜5bにおけるメサ形状3dからの突出部Dを形成することができるエッチング条件を検証した結果を示す表である。図9に示す表T1には、列Ldに、各エッチング条件におけるSiO2膜5bの突出部Dの幅を示し、列Lkに、各エッチング条件で生成したメサ形状3dにおける角度θを示す。
まず、下部電極32へ供給されるバイアス電力について説明する。図9の表T1の条件1〜4は、エッチング圧力を第1のエッチング条件と同じ条件である0.4Paとし、下部電極32へ供給されるバイアス電力を50W〜5Wにまで下げた条件である。条件1〜3においては、バイアス電力を低くして、イオンの基板11表面に対する垂直方向の引き込みを弱めた場合であっても、図9の表T1の列Lkに示すように、メサ形状の側面の角度θは90°を維持したままであった。このため、条件1〜3においては、表T1の列Ldに示すように、SiO2膜5b周縁をメサ形状3dから突出させることができなかった。そこで、条件4に示すように、バイアス電力をさらに5Wまで低くした。この結果、角度θを87°に設定でき、0.05μmの突出部Dを形成することが可能になった。このため、第2のエッチング工程において、バイアス電力は、5Wに設定することが望ましいものと考えられる。
つぎに、エッチング圧力について説明する。図9の表T1の条件5〜7は、バイアス電力を5Wにし、エッチング圧力を1.0〜10.0Paまで上げた条件である。条件5のようにエッチング圧力を1.0Paに上げた場合には、図9の表T1に示すように、メサ形状3dの側面の角度θを85°に設定できたが、突出部Dの幅を0.10μmに広げられる程度にとどまった。そして、条件6のようにエッチング圧力を5.0Paに上げた場合には、メサ形状の側面の角度θを72°まで傾けることができ、SiO2膜5bの突出部Dの幅を0.5μmまで広げることができた。さらに、条件7のようにエッチング圧力を10.0Paまで上げた場合には、メサ形状の側面の角度θを67°まで傾けることができ、突出部Dの幅を0.75μmまで広げることができた。エッチング圧力を上げることによって、条件1〜5と比較し、ガス分子の平均自由工程を短くすることができたため、エッチング方向の等方化を促進することができたものと考えられる。また、条件5〜7においては、図3(1)に示す埋込工程において、SiO2膜5b周囲に突起部を形成することなくメサ形状3d周囲にn型GaN層を隙間なく埋めこむことができた。このため、第2のエッチング工程において、エッチング圧力は、10Paに設定することが望ましいものと考えられる。
次いで、塩素ガス流量について説明する。図9の表T1の条件8〜10は、バイアス電力を5Wとし、エッチング圧力を10.0Paとし、塩素ガス流量を30〜50sccmまで高めた条件である。条件8のように塩素ガス流量を30sccmに高めた場合には、図9の表T1に示すように、条件7と比較し、角度θを66°に設定することができ、SiO2膜5bの突出部Dの幅を0.80μmまで広げることができた。また、条件9のように塩素ガス流量を40sccmにまで高めた場合、角度θを65°にまで低くすることができ、突出部Dの幅を0.90μmまで広げることができた。さらに、条件10のように塩素ガス流量を50sccmにまで高めた場合、角度θを63°にまで低くすることができ、突出部Dの幅を1μmにまで広げることができた。これは、塩素ガス流量を高めることによって、エッチング室内のラジカル生成率を高めエッチング方向を等方化し、p型GaN層3aへの選択性を高くできたためであると考えられる。
また、条件8〜10においては、図3(1)に示す埋込工程において、従来発生していた突起部を形成することなくメサ形状3d周囲にn型GaN層を隙間なく埋めこむことができた。ここで、SiO2膜5bの突出部Dの幅が1μmを大きく超えた場合、図3(1)に示す埋込工程において、SiO2膜5bの突出部Dが折れてしまう場合があった。このため、SiO2膜5bの突出部Dの幅は、1μm程度に設定することが製造工程の安定化のため望ましいものと考えられる。このように、第2のエッチング工程における塩素ガス流用およびエッチング圧力に応じてメサ形状3dから突出するエッチングマスクであるSiO2膜5bの所定幅を決定できる。
つぎに、図10および図11を参照して、条件1および条件4〜10に示すエッチング条件を用いて第2のエッチング工程を行なったMOSFET10の特性について説明する。図10は、条件1および条件4〜10に対応する各MOSFET10の電流値を示す表である。図10は、各条件に対応する突出部Dの幅、メサ形状3d側面のSi基板1に対する角度θおよびMOSFET10の電流値について示す。図10の表T2においては、閾値電圧に2Vを加算した電圧をゲート電極9に印加し、ソース電極7とドレイン電極8との間に1Vの電圧を印加した場合のMOSFET10における電流値を示す。また、図11は、図10に示す角度θと電流値とを対応させたグラフを示す図である。
図10の表T2および図11のグラフに示すように、突出部Dが生成できない条件1においては、電流値は80mAと低い値を示した。これに対し、条件4〜10に示すように、角度θを低めて突出部Dを広げるにしたがって、MOSFET10に流れる電流値が高くなるという結果が得られた。ここで、従来使用されてきたSi半導体を用いたMOSFETにおいては、図11の直線Bに示すように、単一のMOSFETにおいて、100mA程度の電流値が得られていた。条件1、4および5のエッチング条件を用いた場合、すなわち、SiO2膜5bの突出部Dの幅が小さくメサ形状3dの角度θが85°以上である場合、従来のSiデバイスの電流値を超えることができなかった。特に図11の点P1に示すように、メサ形状3dの角度θが90°であるMOSFETにおいては、80mA程度の電流値しか得られなかった。
これに対し、条件6のエッチング条件を用いた場合、図11の点P6に示すように、条件6のエッチング条件を用いた場合、すなわち、SiO2膜5bの突出部Dの幅が0.5μmであり、MOSFET10のメサ形状3dの角度θが72°である場合、従来のSiデバイスの電流値を上回る131mAの電流値を得ることができる。さらに、条件7〜10のエッチング条件を用いた場合、すなわち、SiO2膜5bの突出部Dの幅が0.5μ以上1.0μmに広げ、メサ形状3dの角度θが63°〜67°である場合、従来のSiデバイスの電流値を大きく上回る電流値を得ることができる。したがって、第2のエッチング工程において、バイアス電力を5Wに下げ、エッチング圧力を10Paに上げ、塩素ガス流量を20〜50sccmのいずれかとしたエッチング条件を用いて、エッチングマスクであるSiO2膜5bの突出部Dの幅を0.5以上1.0μm以下とすることが望ましい。すなわち、第2のエッチング工程において、バイアス電力を5Wに下げ、エッチング圧力を10Paに上げ、塩素ガス流量を20〜50sccmのいずれかとしたエッチング条件を用いて、メサ形状3dの角度θを63°〜72°とすることが望ましい。このバイアス電力を5Wに下げ、エッチング圧力を10Paに上げ、塩素ガス流量を20〜50sccmのいずれかとしたエッチング条件を第2のエッチング工程に適用することによって、従来よりも性能の高いMOSFETを製造することが可能になる。なお、膜ばらつき、エッチングばらつきなどの各製造工程におけるばらつきを考慮すると、メサ形状3dは、Si基板1表面に対し60°以上75°未満の傾斜角度である側面となるものと考えられる。
さらに、図10および図11の点P10に示すように、特に条件10を用いてメサ形状3dの角度θを63°程度まで低くした場合には、179mAもの電流値を得ることができ、従来のSiデバイスの性能よりも格段に高い性能の半導体デバイスを実現することが可能になる。このため、第2のエッチング工程においては、塩素ガス流量を50sccmに設定し、望ましいものと考えられる。なお、条件4〜10のように第2のエッチング工程を等方化させることによって、図2(2)に示すメサ形状3dの深さhは深くなるものと考えられる。しかしながら、最も等方性が高いと考えられる条件10においても、MOSFET10は正常に動作できたため、第2のエッチング工程のエッチング条件を等方化することによる影響はないものと考えられる。
このように、本実施の形態によれば、エッチングマスク周縁が所定幅分突出するようにp型GaN層をメサ形状にドライエッチングすることによって、メサ形状周囲に高濃度の不純物がドープされたn型GaN層を空隙なく平坦に埋め込むことができるとともに、性能の高いMOSFETを製造することが可能になる。
なお、本実施の形態にかかる埋込方法を用いてMOSFETを製造した場合について説明したが、これに限らず、半導体レーザ装置を製造することも可能である。図12および図13を参照して、本実施の形態にかかる埋込方法を用いて半導体レーザ装置を製造する場合について説明する。図12(1)に示すように、エッチングマスクとなるSiO2膜49をもとに、n型基板42上に順次積層されたn型クラッド層43、活性層44、p型クラッド層45aをエッチングし、n型基板42表面に対して側面がほぼ垂直であるメサストライプ52に形成する第1のエッチング工程を行なう。この第1のエッチング工程は、図12(1)の矢印に示すように、エッチング方向をn型基板42の表面に対して垂直方向に制御することによって、SiO2膜49の幅を忠実に再現したメサストライプ52を形成する。
つぎに、図12(2)の矢印に示すように、エッチング方向を等方化することによって、メサストライプ52から突出部49aが突出するようにメサストライプ52の表層部をエッチングしてメサストライプ52の側面をn型基板42表面に対し傾斜させる第2のエッチング工程を行なう。
そして、図12(3)に示すように、メサストライプ52周囲およびn型クラッド層43の上面に、p型ブロック層47およびn型ブロック層48を順次埋め込み成長させる。この場合、SiO2膜49における突出部49aがあるため、SiO2膜49周囲に突起部を形成することなくメサストライプ52周囲に隙間なく各層を埋め込むことができる。
そして、図13に示すように、エッチングマスクであるSiO2膜49を除去し、p型クラッド層45aおよびn型ブロック層48の上面に、p型クラッド層45b、p型コンタクト層54およびp型電極55を形成する。そして、n型基板42の下面にn型電極56を形成することで半導体レーザ装置40を得ることができる。半導体レーザ装置40においては、メサストライプ52周囲に隙間なく各層が埋め込まれているため、空隙発生による特性劣化を防止でき、良好な特性を確保することができる。