JP4660936B2 - 非線形位相歪補償装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高周波信号を増幅する増幅器で発生する非線形位相歪を補償する非線形位相歪補償装置に関し、無線通信システムの基地局または移動局通信機などの送信部の増幅器で発生する非線形位相歪を補償する非線形位相歪補償装置に係るものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、無線通信機送信部などの電力増幅器で発生する非線形位相歪を補償する方法としては、いくつかの方式が提案されている。一般的には、負帰還法、プレディストータ法があげられる。
【0003】
負帰還法とは、電力増幅器の出力信号を再び帰還させ、負帰還回路で非線形位相歪を補償する方法である。具体的には帰還信号を同相、直交成分に分解するカーテシアンループ(Cartesian Loop)法が例としてあげられる。
【0004】
しかしながら、負帰還法は、送信のためだけに復調器が必要になることや、負帰還回路での安定性の点で問題があることなどにより、ほとんど用いられていないのが現状である。
【0005】
プレディストータ法とは、電力増幅器で発生する非線形位相歪を打ち消すように、前もって歪ませた信号を電力増幅器に入力する方法である。
【0006】
プレディストータ法は、位相歪補償用のデータを大量に保持しなければならない点が問題とされているが、負帰還法とは異なり開ループ制御であるので、安定性に優れ電力効率の点でも注目されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述した従来のプレディストータ法では、精度の良い位相歪補償効果を得るためには、増幅電力のダイナミックレンジ全般にわたり位相歪を補償しなければならない。
【0008】
例えば、携帯電話移動機の場合では、送信電力レベルは、外部からの受信電力レベルや基地局からの指定パラメータによって決定されるものであるが、そのダイナミックレンジは80dB程度と非常に大きく、発生する位相歪は20度近くになる。一方、上記の位相歪を補償する移相器では、通過利得は一定のまま、通過位相だけを制御する必要がある。
【0009】
よって、従来の非線形位相歪補償装置では、広い送信電力ダイナミックレンジでの位相歪を補償するために、通過利得が一定で、例えば移相量20度以上の広い範囲の位相制御が必要であった。
【0010】
図4を用いて、従来のプレディストータ法を用いた非線形位相歪補償装置の位相制御の説明をする。C1は電力増幅器の送信電力レベルと非線形位相歪補償装置での制御位相量との関係を表す特性曲線である。従来の位相制御では、送信電力レベルのダイナミックレンジにわたり電力増幅器で発生する全位相歪を可変量で位相制御する必要があったため、移相器に要求される最大制御位相量は、図のように最大送信電力レベルPWMAXにおける制御位相量PHMAX1であった。このため、例えば20度以上の広い範囲の位相制御ができる可変移相器が必要であった。
【0011】
しかし、上記のように広い範囲の位相制御をしようとすると、通過利得を一定にすることが難しくなる。広い範囲の位相制御ができるという条件と、通過位相が一定であるという条件の両方を満たす可変移相器は、サイズが大きくかつ高価であるという問題がある。例えば、通過利得が一定で、上記のような20度以上の広い範囲の位相制御が可能な可変移相器は、大きくかつ高価で、携帯電話移動機に実装することは、実装面・コスト面で困難である。現在の実装面・コスト面で現実的な移相器は、例えば移相量10度程度である。このため、従来はプレディストータ法を用いた非線形位相歪補償装置の実現が困難であるという問題があった。
【0012】
そこで、本発明は、以上の実情に鑑み、プレディストータ法を用いて、無線通信装置の送信部等の電力増幅器における非線形位相歪の補償を行う場合に、現実的な移相器を用いて、精度の良い位相歪補償効果を得るようにする非線形位相歪補償装置を提供することを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明に係る非線形位相歪補償装置は、 高周波信号を増幅する増幅器で発生する非線形位相歪を補償する非線形位相歪補償装置において、上記増幅器の全出力電力のダイナミックレンジにわたる上記非線形位相歪を補償するための補償情報を記憶するものであって、上記ダイナミックレンジを予め複数の領域に分割した際の各領域に対応する補償情報を、それぞれ、複数の記憶領域に分割して記憶する補償情報記憶手段と、上記高周波信号の包絡線成分信号を検出する包絡線検出手段と、上記決定された上記増幅器の出力電力に応じて入力基準電圧を切替えながら、上記包絡線成分信号をデジタル信号に変換するアナログ−デジタル変換手段とを有し、上記デジタル信号に基づいて、上記補償情報記憶手段における上記複数の記憶領域のうち選択された上記一の記憶領域から補償情報を参照し、上記補償情報に基づいて、上記非線形位相歪を補償するための補償信号を生成する補償信号生成手段と、上記複数の領域毎に対応して設けられ、入力された上記高周波信号の通過位相を固定量移相する複数の固定量移相手段と、上記補償信号に基づいて、上記固定量移相手段から入力された上記高周波信号の通過位相を可変量移相する可変量移相手段とを備え、決定された上記増幅器の出力電力に応じて、上記補償情報記憶手段における上記複数の記憶領域のうち一の記憶領域が選択されるとともに、上記複数の固定量移相手段のうち一の固定量移相手段が選択され、上記選択された上記一の記憶領域から参照された補償情報に基づいて上記補償信号生成手段によって生成された上記補償信号により移相量が決定された上記可変量移相手段と、選択された上記一の固定量移相手段とを用いて、上記高周波信号の位相制御を行い、上記補償情報記憶手段における分割された各領域の境界を越えて、複数の領域にまたがるような上記増幅器の出力電力の変動がある場合には、上記増幅器の出力電力に応じて、上記固定量移相手段の再選択及び上記補償信号の再生成が行われる。
【0014】
このような本発明に係る非線形位相歪補償装置は、選択された一の記憶領域から参照された補償情報に基づいて補償信号生成手段によって生成された補償信号により移相量が決定された可変量移相手段と、選択された一の固定量移相手段を用いて、高周波信号の位相制御を行う。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この実施の形態は、図1に示すように無線通信システムで用いられる無線通信システム通信機10である。無線通信システム通信機10は、本発明に係るプレディストータ法を用いた非線形位相歪補償装置を備えていて、無線通信システム基地局20と各種信号を無線通信するものである。
【0016】
図1に示す無線通信システムは、例えば携帯電話移動機と携帯電話基地局からなる携帯電話システムであり、無線通信システム通信機10と、無線通信システム基地局20とから構成され、相互に各種信号を無線通信する。無線通信システム通信機10は、送信及び受信兼用のアンテナ1と、送信及び受信の各状態を切替えるスイッチ2と、受信信号を復調して出力する受信部4と、通信に伴う信号処理及び制御を行う信号処理・制御部3と、信号処理・制御部3からの送信信号を変調してアンテナ1に出力する送信部30と、受信音声や着信音などを音声出力するスピーカ5と、送信音声を電気信号に変換するマイク8と、通信に関する各種情報を表示する表示部7と、利用者が各種通信に関するキー入力操作などを行う操作部6とを備えている。
【0017】
以上のような無線通信システム通信機10はアンテナ1を介して、無線通信システム基地局20と各種信号の無線通信を行う。
【0018】
本発明に係る非線形位相歪補償装置は、上記無線通信システム通信機10の送信部30、若しくは上記無線通信システム基地局20の図示しない送信部に適用可能である。
【0019】
図2に、本発明の実施の形態に係る無線通信システム通信機10の送信部30の構成を示す。無線通信システム通信機の送信部30は、外部信号S0により電力増幅器33での出力電力を決定して制御信号S11と制御信号S12を出力する送信電力制御器31と、制御信号S11に応じて高周波信号S1の利得を制御する自動利得制御器32と、制御信号S12に基づき高周波信号S8に歪を加えて、電力増幅器33で発生する非線形位相歪を補償する補償済信号S9を出力する非線形位相歪補償器40と、非線形位相歪補償器40から出力された補償済信号S9を増幅して送信信号S10を出力する電力増幅器33とを備える。
【0020】
送信電力制御器31は、外部信号S0に応じて電力増幅器33での出力電力を決定し、制御信号S11及び制御信号S12を出力する。ここで、送信電力制御器31に入力される外部信号S0は、例えば受信電力レベルや無線通信システム基地局20からの指定パラメータなどであり、外部信号S0に応じて決定される電力増幅器33の出力電力のダイナミックレンジは、例えば80dB程度と非常に大きい。
【0021】
自動利得制御器32は、送信電力制御器31からの制御信号S11に基づいて、高周波信号S1に対して自動利得制御を行い、高周波信号S8を出力する。
【0022】
非線形位相歪補償器40については後述するが、ここでは制御信号S12に基づき高周波信号S8に歪を加えて、電力増幅器33で発生する非線形位相歪に対して補償された状態の補償済信号S9を出力する。電力増幅器33は補償済信号S9を増幅して送信信号S10を出力する。
【0023】
次に、送信部30の動作について説明する。送信電力決定器31は外部信号S0を入力として電力増幅器33の出力電力を決定し、それに応じた制御信号S11、及び制御信号S12を出力する。制御信号S11は自動利得制御器32を制御し、制御信号S12は非線形位相歪補償器40を制御する。自動利得制御器32では、送信電力決定器31からの制御信号S11に基づき、入力される高周波信号S1を利得制御して、高周波信号S8を出力する。高周波信号S8が入力される非線形位相歪補償器40では、制御信号S12に基づいて、電力増幅器33で発生する非線形位相歪を打ち消すように高周波信号S8の位相を歪めて、補償済信号S9として出力する。電力増幅器33では、入力される補償済信号S9を電力増幅し、送信信号S10として出力する。
【0024】
本発明に係る非線形位相歪補償装置は、上記非線形位相歪補償器40に適用可能である。
【0025】
本発明の実施の形態に係る送信部30の非線形位相歪補償器40の構成について説明する。図2に示す無線通信システム通信機の送信部30の非線形位相歪補償器40は、非線形位相歪を補償するための補償情報が記憶される補償情報記憶手段としての補償情報メモリー41と、後段の可変量移相手段としての可変移相器43での移相量を決定する信号を出力する補償信号生成手段としての補償信号生成器50と、入力される信号の通過位相を固定量移相する固定量移相手段としての固定移相器42と、入力される信号の通過位相を補償信号生成器50からの補償信号に基づいて可変量移相する可変移相器43とを備える。
【0026】
補償情報メモリー41は、図3に示すように電力増幅器33の出力電力ダイナミックレンジを予め複数の領域A1乃至A3に分割した際の各領域に対応する可変移相部分Av1乃至Av3の非線形位相歪を補償するための補償情報を、予め複数の記憶領域41−1乃至41−3に分割して記憶している。そして、送信電力決定器31からの制御信号S12に基づいて複数の記憶領域41−1乃至41−3から一の記憶領域が選択され、その中から補償信号生成器50によって補償情報が参照される。
【0027】
例えば、決定された出力電力が図3に示す領域A2に属しているときは、制御信号S12に基づき可変量移相部分Av2の範囲の補償情報が記憶される記憶領域41−2が選択され、補償信号生成器50によって補償情報が参照されるといった具合である。
【0028】
補償信号生成器50は、高周波信号の包絡線成分信号を検出する包絡線検出手段としての包絡線検出器51と、包絡線成分信号をアナログ−デジタル変換するアナログ−デジタル変換手段としてのアナログ−デジタル変換器(Analog to Digital Converter)52と、補償情報メモリー41より補償情報を参照して得られる補償信号をデジタル−アナログ変換するデジタル−アナログ変換手段としてのデジタル−アナログ変換器(Digital to Analog Converter)53と、所定の周波数成分であるアナログ−デジタル変換時の雑音成分を除去するフィルタ手段としての低域通過フィルタ(Low Pass Filter)54とを有している。
【0029】
包絡線検出器51は、包絡線変動を有する高周波信号S8の一部を入力信号S2として、その包絡線成分信号である包絡線S3を検出して出力する。
【0030】
アナログ−デジタル変換器52は、制御信号S12に基づいて入力基準電圧を切替えながら包絡線S3をアナログ−デジタル変換し、デジタル信号S4として出力する。
【0031】
デジタル−アナログ変換器53は、デジタル信号S4をアドレスとして、補償情報メモリー41の複数の記憶領域41−1乃至41−3のうち選択された一の記憶領域より、このアドレスに対応した補償情報を参照して得られる補償信号S5をデジタル−アナログ変換してアナログ信号S6を出力する。
【0032】
低域通過フィルタ54は、アナログ信号S6をアナログ−デジタル変換する際に生じた雑音成分を除去して補償信号S7を出力する。
【0033】
このような構成の補償信号生成器50は、制御信号S12に基づいて補償情報メモリー41の中から選択された一の記憶領域から、入力信号S2の包絡線成分信号の包絡線S3をデジタル変換した値をアドレスとして補償情報を参照して得た補償信号を、アナログ変換及び雑音成分除去を行った後、可変移相器43での移相量を決定する補償信号S7として出力する。
【0034】
固定移相器42は、図3に示すように電力増幅器33の出力電力ダイナミックレンジを予め複数の領域A1乃至A3に分割した際の固定移相部分Af1乃至Af3の各部分に対応する複数の固定移相器42−1乃至42−3を有している。また、固定移相器42では、送信電力決定器31からの制御信号S12に基づいて複数の固定移相器42−1乃至42−3から一の固定移相器を選択し、入力される高周波信号S8の通過位相を、選択した一の固定移相器で固定量移相して出力する。
【0035】
例えば、決定された出力電力が図3に示す領域A2に属しているときは、制御信号S12に基づき固定移相部分Af2の範囲の固定量移相を行う固定移相器42−2が選択され、高周波信号S8の通過位相が固定量PHf2だけ移相されて、高周波信号S13として出力されるといった具合である。固定移相器42の移相量は、図3の固定移相部分Af1で示されるように、移相量PHf1=0であってもよい。これらの固定移相器は、予め設計した値でコンデンサやコイルを用いて、あるいは移相量が0の場合には単なる信号線とすることで容易に実現できる。
【0036】
可変移相器43は、固定移相器42から出力される高周波信号S13を入力として、その高周波信号S13の通過位相を補償信号生成器50からの補償信号S7に基づいて可変量移相して補償済信号S9を出力する。ここで、送信信号の電力変動である包絡線S3の変動レンジは、それぞれの無線通信方式で決定されるが、比較的限定されており、時間軸を固定すれば例えば10dB程度で充分であるため、可変移相器43に要求される変動レンジも、例えば10dB程度で充分である。
【0037】
本発実施の形態に係る非線形位相歪補償器40の動作について図2及び図3を用いて説明する。図3において、C2は電力増幅器33の出力電力レベルと非線形位相歪補償器40での制御位相量の特性曲線である。本発明の実施の形態では、図3のように出力電力のダイナミックレンジを、後述する所定の条件をもとに予め複数の領域A1乃至A3に分割して、それぞれの領域での位相制御を、固定移相部分Af1乃至Af3と、可変移相部分Av1乃至Av3とで分けて位相制御を行う。前述の出力電力のダイナミックレンジを複数の領域に分割するための所定の条件とは、予め把握された電力増幅器33で発生する非線形位相歪特性に対応するためにシステム全体で必要とされる最大制御位相量と、予め把握された可変移相器43の最大制御位相量であり、これらに応じて分割数や分割領域を決めればよい。ここで、システム全体で必要とされる最大制御位相量とは、図3及び図4においてPHMAX1である。また、図3において領域A1乃至A3それぞれに対応する可変移相器43の可変移相量をPH1乃至PH3として、その大小関係を今(PH3>PH2>PH1)とすれば、予め把握された可変移相器43の最大制御位相量とは、可変移相量の最大値PH3に相当するPHMAX2である。
【0038】
非線形位相歪補償器40の動作を説明する。主たる信号経路として、高周波信号S8が固定移相器42に入力されると、制御信号S12に基づいて選択された一の固定移相器により、固定量だけその通過位相が移相され、高周波信号S13として出力される。
【0039】
一方、補償信号生成経路として、高周波信号S8の一部が入力信号S2として、補償信号生成器50に入力される。補償信号生成器50では、包絡線検出器51、アナログ−デジタル変換器52、デジタル−アナログ変換器53、及び低域通過フィルタ54を経て移相量を決定する補償信号S7が可変移相器43に出力される。
【0040】
ここで、補償信号生成器50での動作を詳しく説明する。包絡線検出器51では入力信号S2の包絡線成分が検出されて、アナログ−デジタル変換器52に包絡線S3が出力される。アナログ−デジタル変換器52で包絡線S3がアナログ−デジタル変換されてデジタル信号S4が出力される。
【0041】
さらに、アナログ−デジタル変換器52では、制御信号S12に応じて入力基準電圧を切替えている。そのため、切替えない場合のアナログ−デジタル変換器に比べて、そのビット幅を緩和することができる。
【0042】
そして、デジタル信号S4をアドレスとして、補償情報メモリー41から制御信号S12に基づき選択された一の記憶領域から補償情報が参照され、得られた補償信号S5はデジタル−アナログ変換器53でアナログ信号S6に変換されて出力される。アナログ信号S6は低域通過フィルタ54で雑音成分が除去されて、補償信号S7として可変移相器43に出力される。
【0043】
主たる信号経路に説明を戻す。固定移相器42より出力された高周波信号S13は、可変移相器43において、補償信号生成器50からの補償信号S7によって決定される移相量その通過位相が移相されて、補償済信号S9として電力増幅器33に出力される。
【0044】
以上のように、本発明の実施の形態の非線形位相歪補償器40は、電力増幅器33の出力電力のダイナミックレンジが予め複数の領域A1乃至A3に分割され、それぞれに対応した複数の固定移相器42−1乃至42−3及び、補償情報が記憶される複数の記憶領域41−1乃至41−3を有している。そして、出力電力が決定されたならば、送信電力決定器31からの制御信号S12に基づいて、複数の固定移相器42−1乃至42−3の中から、決定された出力電力が属する領域に対応する一の固定移相器が選択されて、入力信号の通過位相が固定量移相される。また、複数の固定移相器42−1乃至42−3の中から、決定された出力電力が属する領域に対応する一の記憶領域が選択され、その一の記憶領域から補償情報が参照されて、可変移相器43での移相量が決定される。
【0045】
例えば、決定された出力電力が属する領域を領域A2とすると、領域A2に対応する固定移相器42−2と、記憶領域41−2が選択されることになる。そして、選択された一の記憶領域41−2から参照された補償情報に基づいて補償信号生成器50によって生成された補償信号S7により移相量が決定された可変移相器43と、選択された一の固定移相器42−2を用いて、高周波信号S8が位相制御されて、電力増幅器33に入力される補償済信号S9として出力される。
【0046】
その動作の中で、仮に出力電力ダイナミックレンジの分割された各領域の境界を越えて、複数の領域をまたがるような出力電力の変動がある場合には、制御信号S12に基づいて、都度固定移相器の再選択及び、補償信号S7の再生成が行われる。
【0047】
上記においては、決定された出力電力が属する領域が領域A2の場合で説明したが、このようにして固定移相器42と可変移相器43とに分けて位相制御を行うことで、可変移相器43に要求される最大制御位相量は、図3においてPHMAX2となり、非線形位相歪補償装置としてシステムに要求される最大制御位相量PHMAX1と比較して大幅に緩和される。
【0048】
なお、図3では送信電力レベルのダイナミックレンジを領域A1乃至A3の3つの領域に分割し、それぞれの領域での位相を、固定移相部分Af1乃至Af3と、可変移相部分Av1乃至Av3とで分けて制御する場合を説明したが、その分割する数はシステムに応じて任意の数であっても良い。また、図2の非線形位相歪補償器40においては、固定移相器42で固定量の位相制御を行ってから、可変移相器43で可変量の位相制御を行うという順番で説明したが、その位相制御の順番を入れ換えても良い。さらに、図2の補償信号生成器50内においては、包絡線S3がデジタル変換された値をアドレスとして補償信号メモリー41から補償情報を参照し、最終的に補償信号S7を生成しているが、決定された電力増幅器33での出力電力に応じて、可変移相器43での移相量を決定する補償信号を補償情報メモリー41から参照して得られる構成であれば、本発明の実施の形態の構成に限定されるものではないことは言うまでもない。
【0049】
【発明の効果】
以上のように、本発明の非線形位相歪補償装置は、決定された電力増幅器の出力電力に応じて出力された制御信号により、補償情報記憶手段における複数の記憶領域のうち一の記憶領域が選択されるとともに、複数の固定量移相手段のうち一の固定移相手段が選択される。そして、選択された一の記憶領域から参照された補償情報に基づいて補償信号生成手段によって生成された補償信号により移相量が決定された可変移相手段と、選択された一の固定移相手段を用いて、高周波信号の位相制御を行う。
【0050】
上記のような構成とすることで、可変量移相手段には1つの実用的な可変移相器を、固定量移相手段にはコンデンサやコイル、あるいは移相量が0の場合には単なる信号線により容易に実現できる複数の固定移相器を用いて、全出力電カレンジにわたって位相歪補償効果が得られる非線形位相歪補償装置を実現することができるため、高精度で高価な可変移相器を必要としない。したがって、装置のコストを抑えることができる。
【0051】
また、決定された出力電力に応じて、アナログ−デジタル変換手段への入力基準電圧を切替えているので、アナログ−デジタル変換手段に要求されるビット幅を緩和することができる。したがって、装置のコストを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る無線通信システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る無線通信システム通信機の送信部の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態の非線形位相歪補償処理の説明図である。
【図4】従来の非線形位相歪補償処理の説明図である。
【符号の説明】
31 送信電力決定器、 33 電力増幅器、 40 非線形位相歪補償器、 41 補償情報メモリー、 41−1,41−2,41−3 記憶領域、 50補償信号生成器、 42 固定移相器、 43 可変移相器
Claims (7)
- 高周波信号を増幅する増幅器で発生する非線形位相歪を補償する非線形位相歪補償装置において、
上記増幅器の全出力電力のダイナミックレンジにわたる上記非線形位相歪を補償するための補償情報を記憶するものであって、上記ダイナミックレンジを予め複数の領域に分割した際の各領域に対応する補償情報を、それぞれ、複数の記憶領域に分割して記憶する補償情報記憶手段と、
上記高周波信号の包絡線成分信号を検出する包絡線検出手段と、上記決定された上記増幅器の出力電力に応じて入力基準電圧を切替えながら、上記包絡線成分信号をデジタル信号に変換するアナログ−デジタル変換手段とを有し、上記デジタル信号に基づいて、上記補償情報記憶手段における上記複数の記憶領域のうち選択された上記一の記憶領域から補償情報を参照し、上記補償情報に基づいて、上記非線形位相歪を補償するための補償信号を生成する補償信号生成手段と、
上記複数の領域毎に対応して設けられ、入力された上記高周波信号の通過位相を固定量移相する複数の固定量移相手段と、
上記補償信号に基づいて、上記固定量移相手段から入力された上記高周波信号の通過位相を可変量移相する可変量移相手段とを備え、
決定された上記増幅器の出力電力に応じて、上記補償情報記憶手段における上記複数の記憶領域のうち一の記憶領域が選択されるとともに、上記複数の固定量移相手段のうち一の固定量移相手段が選択され、上記選択された上記一の記憶領域から参照された補償情報に基づいて上記補償信号生成手段によって生成された上記補償信号により移相量が決定された上記可変量移相手段と、選択された上記一の固定量移相手段とを用いて、上記高周波信号の位相制御を行い、
上記補償情報記憶手段における分割された各領域の境界を越えて、複数の領域にまたがるような上記増幅器の出力電力の変動がある場合には、上記増幅器の出力電力に応じて、上記固定量移相手段の再選択及び上記補償信号の再生成が行われる非線形位相歪補償装置。 - 上記補償信号生成手段は、上記一の補償情報を参照して生成したデジタル信号をアナログ信号に変換して出力するデジタル−アナログ変換手段を有する請求項1記載の非線形位相歪補償装置。
- 上記補償信号生成手段は、上記アナログ信号のうち、所定の周波数成分の信号を通過させて上記補償信号として出力するフィルタ手段を有する請求項2記載の非線形位相歪補償装置。
- 上記固定量移相手段のうち一の固定量移相手段は移相量が0である請求項1記載の非線形位相歪補償装置。
- 上記ダイナミックレンジは、予め把握された上記増幅器の位相歪特性に対応して必要とされる最大制御位相量と、予め把握された上記可変量移相手段の移相可能量とに応じて、上記複数の領域に分割されている請求項1記載の非線形位相歪補償装置。
- 上記増幅器は、無線通信機の送信部によって送信すべき高周波信号の送信電力を増幅するものである請求項1記載の非線形位相歪補償装置。
- 上記増幅器の出力電力は、外部から受信した信号に基づいて決定される請求項6記載の非線形位相歪補償装置。
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