以下、本発明の代表的な実施の形態につき詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、その趣旨に反しない限りにおいて、種々変形して実施することができる。
〔1.フッ素置換インジウムフタロシアニン〕
<フッ素置換インジウムフタロシアニンの構造>
本発明のフッ素置換インジウムフタロシアニンは、下記一般式[1]で表わされることを特徴とする。
一般式[1]中、X1、X2、X3、X4は、フッ素原子を表わす。フッ素原子は、試薬の汎用性、製造時の置換基の熱に対する安定性、製造されるフタロシアニンの結晶に与える影響等の点で特に優れている。
k、l、m、nは各々独立して、0、1、又は2を表わす。但し、k、l、m、nのうち少なくとも一つは必ず1である。中でも、フッ素原子の数が少な過ぎると、所望の帯電性、残留電位を得られないことから、2≦k+l+m+nを満たすことが好ましく、より好ましくは3≦k+l+m+nである。一方、フッ素原子の数が多過ぎても、所望の帯電性、残留電位を得られないことから、k+l+m+n≦6の式を満たすことが好ましく、また、原料となるフタロニトリル、無水フタル酸、1,3−ジイミノイソインドリン等は置換基を有する数が多くなるほど単価が高くなる傾向があることから、製造コスト面を考慮すると、k+l+m+n≦5を満たすことがより好ましい。得られるフッ素置換インジウムフタロシアニンの光導電性の点から、k+l+m+n=4を満たすことが特に好ましく、製造原料の汎用性を考慮すると、k=l=m=n=1であることが最も好ましい。
Yは、インジウムと結合し得る1価の結合基を表わす。具体例としては、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、アリールオキシ基、チオアルキル基、チオアリール基等が挙げられる。中でも、製造の容易さの観点からは、ハロゲン原子、水酸基、炭素数1〜4程度の低級アルコキシ基が好ましく、フッ素置換インジウムフタロシアニンの物質安定性からは、ハロゲン原子がより好ましい。ハロゲン原子の中でも、試薬の汎用性を考えると、塩素原子、臭素原子が好ましい。特に、製造されるフッ素置換インジウムフタロシアニンの結晶に与える影響を考えると、体積の小さい原子の方が好ましく、塩素原子が最も好ましい。
X
1、X
2、X
3、X
4が対応する六員環に結合する位置としては、以下の式[2]の(a)〜(d)で表わされる4つの位置が挙げられる(なお、式[2]は、式[1]の六員環部分の構造を表わす。)が、その結合位置は特に制限されず、(a)〜(d)何れの位置に結合していてもよい。但し、一つの位置に二つのフッ素原子が結合することはない。
例えば、k=l=m=n=1の場合、後述する製造方法において用いる原料の種類を選択することにより、X1、X2、X3、X4が六員環の(a)又は(b)の位置に結合した構造と、(c)又は(d)の位置に結合した構造とをある程度製造し分けることが可能である。具体的には、原料の一つであるフルオロフタロニトリルの異性体のうち、4−フルオロフタロニトリルのみを使用すると、X1、X2、X3、X4全てが(a)又は(b)の位置に結合した構造のフッ素置換インジウムフタロシアニンが、また、3−フルオロフタロニトリルのみを使用すると、X1、X2、X3、X4全てが(c)又は(d)の位置に結合した構造のフッ素置換インジウムフタロシアニンが、それぞれ得られることになる。勿論、これらのフルオロフタロニトリルの異性体を適宜併用することにより、(a)、(b)、(c)、(d)の結合位置が混在するフッ素置換インジウムフタロシアニンを得ることも可能である。但し、製造コストを考慮すると、原料として4−フルオロフタロニトリルを使用することが好ましいことから、フッ素置換インジウムフタロシアニンの構造としては、X1、X2、X3、X4全てが(a)又は(b)の位置に結合した構造が好ましい。
また、X1、X2、X3、X4全てが(a)又は(b)の位置に結合したフッ素置換インジウムフタロシアニンについても、X1、X2、X3、X4各々の結合位置の組み合わせに応じて、6種類の構造異性体が存在することになる(これらの構造異性体に便宜上(I)〜(VI)の符号を付して表わす。)。各構造異性体(I)〜(VI)におけるX1、X2、X3、X4各々の結合位置の組み合わせを以下の表1に示す。構造異性体(III)〜(VI)については複数の組み合わせが考えられるが、表1ではそのうちの一つの組み合わせを代表例として示す。
本発明のフッ素置換インジウムフタロシアニンは、上述の構造異性体(I)〜(VI)の何れかに限定されるものではなく、何れか1種の単体でも2種以上の混合物でもよいが、通常は6種の構造異性体(I)〜(VI)全ての混合物として得られる。この場合、各構造異性体(I)〜(VI)の組成も特に限定されない。
<フッ素置換インジウムフタロシアニンの結晶性>
本発明のフッ素置換インジウムフタロシアニンは、結晶性を有していても良く、無定形(アモルファス)であっても良いが、光導電材料としての用途を考えると、以下に挙げる特定の結晶型又は無定形の性質を有することが好ましい。
即ち、X線回折スペクトルにおいて、ブラッグ角度(2θ±0.2゜)が
i)少なくとも7.0゜、16.6゜、25.4゜及び27.0゜に強いピークを有するもの(以下、適宜「結晶(I)」という。)、
ii)少なくとも6.9゜、13.0゜、16.2゜、25.7゜、及び28.0゜に強いピークを有するもの(以下、適宜「結晶(II)」という。)、及び
iii)3゜〜40゜の範囲内に明確なピークを有さないもの(以下、適宜「無定形物」と
いう。)
が、好ましい態様として挙げられる。
<フッ素置換インジウムフタロシアニンの形状>
本発明のフッ素置換インジウムフタロシアニンの形状は特に制限されないが、通常は粒子の形状である。粒子の粒径も特に制限されないが、光導電材料としての特性を十分に発揮させる観点からは、通常0.01μm以上、好ましくは0.03μm以上、また、通常0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.15μm以下の範囲とするのが好適である。
<フッ素置換インジウムフタロシアニンの製造方法>
本発明のフッ素置換インジウムフタロシアニンは、公知のフタロシアニンの製造方法を用いて製造することができる。その例としては、フッ素置換フタロニトリルと金属ハロゲン化物等の金属塩とを加熱融解又は有機溶媒の存在下で加熱するフタロニトリル法、フッ素置換1,3−ジイミノイソインドリン等のインドリン系化合物と金属ハロゲン化物等の金属塩とを加熱融解又は有機溶媒の存在下で加熱する方法、フッ素置換無水フタル酸を尿素及び金属ハロゲン化物等の金属塩と加熱融解又は有機溶媒の存在下で加熱するワイラー法、フッ素置換シアノベンズアミドと金属塩とを反応させる方法、フッ素置換ジリチウムフタロシアニンと金属塩とを反応させる方法等が挙げられる。
本発明のフッ素置換インジウムフタロシアニンの合成は、有機溶媒の存在下で行なうことが好ましい。無溶媒条件下で合成を行なうと、例えばフッ素置換クロロインジウムフタロシアニン(即ち、上記一般式(1)においてYが塩素原子である化合物)を合成する場合、フタロシアニン環にもクロロ化が起こってしまい、所望の構造のフッ素置換クロロインジウムフタロシアニンが得られなくなる場合がある。また、有機溶媒を使用しないと、反応時に存在する不純物や未反応原料、反応により生じる副生物等がフタロシアニン固体中に取り込まれてしまい、得られるフッ素置換インジウムフタロシアニンの光導電特性に悪影響を及ぼすおそれがある。
合成に用いる有機溶媒としては、反応に対して不活性であり、且つ高沸点である溶媒が好ましい。具体例としては、α−クロロナフタレン、β−クロロナフタレン、o−ジクロロベンゼン、ジクロロトルエン等のハロゲン化芳香族系溶媒;α−メチルナフタレン、β−メチルナフタレン、テトラヒドロナフタレン(テトラリン)等のアルキル化芳香族系溶媒;ジフェニルメタン、ジフェニルエタン等のジアリール化脂肪族系溶媒;メトキシナフタレン等のアルコキシ化芳香族系溶媒;エチレングリコール等の多価アルコール系溶媒;ジフェニルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ブチルセルソルブ等のエーテル系溶媒;キノリン等の複素環芳香族系溶媒;スルホラン、ジメチルスルホキシド、N−メチルホルムアミド、1,3−ジメチル−2−イミダゾリノン等の非プロトン性極性溶媒等が挙げられる。これらの溶媒は単独で用いても良く、二種以上を組み合わせて混合溶媒として用いても良い。
フタロニトリル法を用いる場合、フッ素置換フタロニトリルとハロゲン化インジウム化合物とを、上述の有機溶媒中で25〜300℃で撹拌又は加熱しながら撹拌することにより、本発明のフッ素置換インジウムフタロシアニンを製造することができる。また、必要に応じて4級アンモニウム塩、尿素、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]−7−ウンデセン(DBU)等の触媒を添加し反応を行なっても良い。
なお、上述の製造方法によって得られるフッ素置換インジウムフタロシアニン(以下適宜「フッ素置換インジウムフタロシアニン粗製物」又は単に「粗製物」と呼ぶ。)は、そのままでは粒子径が大きく、上記の好ましい粒子径の範囲内とならない場合がある。よって、得られたフッ素置換インジウムフタロシアニン粗製物を所望の大きさの粒子とするためには、これを微細化する工程が必要となる。微細化の方法としては、磨砕法等の機械的な力を用いた処理方法や、アシッドペースト法、アシッドスラリー法等の化学的な処理方法の中から、任意の方法を選択して実施することができる。また、前述の方法のうち2種類以上を組み合わせて行なうことも可能である。中でも、アシッドスラリー法、アシッドペースト法では大量の酸が必要であり、製造後の廃酸の処理において大量の塩基を用いて中和しなければならず、廃棄物処理に多大なコストがかかり、且つ、大量の廃棄物が生成してしまうという非常に大きい問題があり、また、通常は、使用される酸の陰イオン由来の不純物による電気特性の特に帯電性能が低下するため、磨砕法等の機械的な力を用いた処理方法を用いることが好ましい。
機械的な力を用いて磨砕処理を行なう場合、磨砕に用いる装置は特に制限されないが、例としては、自動乳鉢、遊星ミル、ボールミル、CFミル、ローラーミル、サンドミル、ニーダー、アトライター等が挙げられる。磨砕メディアを使用する場合、その種類は特に制限されないが、具体例としてはガラスビーズ、スチールビーズ、アルミナビーズ等が挙げられる。磨砕時には、磨砕メディア以外にも磨砕後に容易に除去することのできる磨砕助剤を併用して実施することも可能である。磨砕助剤の例としては、食塩、ぼう硝等が挙げられる。
磨砕は乾式で行なっても良く、溶剤の共存下、湿式で行なっても良い。湿式で磨砕を行なう場合、用いる溶剤は特に制限されないが、例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン等の飽和脂肪族系溶媒;トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族系溶媒;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロナフタレン等のハロゲン化芳香族系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒;グリセリン、ポリエチレングリコール等の脂肪族多価アルコール類;アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等の鎖状又は環状ケトン系溶媒;ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等の鎖状又は環状エーテル系溶媒;ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルフォラン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒;n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン等の含窒素化合物;リグロイン等の鉱油、水などが挙げられる。中でも、湿式磨砕時の操作性を考慮すると、飽和脂肪族系溶媒、芳香族系溶媒、アルコール系溶媒、鎖状又は環状ケトン系溶媒、エステル系溶媒、鎖状又は環状エーテル系溶媒、非プロトン性極性溶媒、水が好ましい。これらの溶剤は何れか1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて混合溶剤として用いても良い。溶剤の使用量は、生産性の観点から、磨砕対象となるフッ素置換インジウムフタロシアニン粗製物1重量部に対して通常0.01重量部以上、好ましくは0.1重量部以上、また、通常200重量部以下、好ましくは100重量部以下の範囲とする。処理温度としては、溶剤(又は混合溶剤)の凝固点以上、沸点以下で行なうことが可能であるが、安全性の面から、通常10℃以上、200℃以下の範囲で行なわれる。なお、湿式磨砕を行なうための装置としては、上に例示した磨砕用の装置に加えて、ニーダー等を用いることができる。
乾式又は湿式による磨砕処理の後、磨砕メディアを用いた場合にはこれを分離・除去することによって、所望のフッ素置換インジウムフタロシアニンの微細粒子が得られる。
なお、乾式磨砕・化学的処理によって得られるフッ素置換インジウムフタロシアニンの微細粒子は、結晶性を有さない無定形物となる。これは、上記の好ましい3種類の態様のうち、iii)X線回折スペクトルにおいてブラッグ角度(2θ±0.2゜)が3゜〜40゜の範囲内に明確なピークを有さないものに相当する(以下、これを適宜「フッ素置換インジウムフタロシアニン無定形物」又は単に「無定形物」という)。
一方、i)少なくとも7.0゜、16.6゜、25.4゜、及び27.0゜に強いピークを有するもの、又はii)少なくとも6.9゜、13.0゜、16.2゜、25.7゜、及び28.0゜に強いピークを有するものを得るためには、更に以下の処理を行なって、乾式磨砕又は化学的処理後の無定形物を所望の結晶型に変換する必要がある(以下、この処理を適宜「結晶型変換処理」という。)。
結晶型変換処理は、溶媒と接触させることにより行なう。溶媒との接触方法としては、粒子を溶剤中でスラリー状態とすることにより行なっても良いし、溶剤蒸気に曝す等のいかなる公知の接触方法を用いても良い。用いる溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン等の飽和脂肪族系溶媒;トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族系溶媒;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロナフタレン等のハロゲン化芳香族系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒;グリセリン、ポリエチレングリコール等の脂肪族多価アルコール類;アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等の鎖状又は環状のケトン系溶媒;ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒;塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒;ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等の鎖状又は環状のエーテル系溶媒;ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルフォラン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒;n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン等の含窒素化合物;リグロイン等の鉱油;水などが挙げられる。中でも、操作性を考慮すると、飽和脂肪族系溶媒、芳香族系溶媒、アルコール系溶媒、鎖状又は環状ケトン系溶媒、エステル系溶媒、鎖状又は環状エーテル系溶媒、非プロトン性極性溶媒、水が好ましい。これらの溶媒は何れか1種を単独で用いても良く、2種以上を組み合わせて混合溶媒として用いても良い。処理温度としては、溶媒(又は混合溶媒)の凝固点以上、沸点以下で行なうことが可能であるが、安全性の面から、通常10℃以上、200℃以下の範囲で行なわれる。溶媒の使用量としては、生産性の観点から、フッ素置換インジウムフタロシアニン無定形物1重量部に対して通常0.1重量部以上、好ましくは1重量部以上、また、通常500重量部以下、好ましくは250重量部以下の範囲とする。
なお、フッ素置換インジウムフタロシアニン無定形物を溶媒と接触させる際には、必要に応じて攪拌等の操作を加えて、接触性を高めても良い。また、攪拌時には、湿式ガラスビーズ、アルミナビーズ、スチールビーズ等の公知の攪拌メディアを用いてもよい。
更に、湿式磨砕処理を行なう場合には、湿式磨砕処理用の溶剤と結晶型変換処理用の溶媒として同一のものを選択することにより、湿式磨砕処理と結晶型変換処理とを同時に行なうことが可能となる。
以上の結晶型変換処理により、フッ素置換インジウムフタロシアニンの無定形物を、上述の結晶(I)又は結晶(II)に変換することができる。
なお、湿式磨砕処理及び/又は結晶型変換処理を行なった場合、目的とするフッ素置換インジウムフタロシアニンの無定形物又は結晶は、上述の溶剤及び/又は溶媒中に分散した湿ケーキの状態で得られることになる。この湿ケーキから、常温乾燥、減圧乾燥、熱風乾燥、凍結乾燥等の公知の方法を用いて溶剤及び/又は溶媒を除去し、乾燥させることにより、所望のフッ素置換インジウムフタロシアニンの無定形物又は結晶が得られる。
<その他>
本発明のフッ素置換インジウムフタロシアニンは、各種の画像表示デバイス、光情報記録媒体、光導電性材料として用いることが可能であるが、特に電子写真感光体の感光体材料としての使用が好ましい。本発明のフッ素置換インジウムフタロシアニンを電子写真感光体の感光層に含有させることにより、残留電位が低く、帯電性に優れた電子写真感光体を得ることが可能である。また、本発明のフッ素置換インジウムフタロシアニンを用いた電子写真感光体によれば、カブリ値が少なく良好な画像を得ることができる。さらに、この電子写真感光体は、繰り返し使用に対して高い耐久性を有する。
〔2.電子写真感光体〕
本発明の電子写真感光体は、導電性支持体(基体)上に、上述した本発明のフッ素置換インジウムフタロシアニンを含有する感光層を設けたものであれば、その構造は特に制限されない。
<導電性支持体>
導電性支持体について特に制限は無いが、例えばアルミニウム、アルミニウム合金、ステンレス鋼、銅、ニッケル等の金属材料や、金属、カーボン、酸化錫などの導電性粉体を添加して導電性を付与した樹脂材料や、アルミニウム、ニッケル、ITO(酸化インジウム酸化錫)等の導電性材料をその表面に蒸着又は塗布した樹脂、ガラス、紙等が主として使用される。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。導電性支持体の形態としては、ドラム状、シート状、ベルト状などのものが用いられる。更には、金属材料の導電性支持体の上に、導電性・表面性などの制御や欠陥被覆のために、適当な抵抗値を有する導電性材料を塗布したものを用いても良い。
また、導電性支持体としてアルミニウム合金等の金属材料を用いた場合、陽極酸化被膜を施してから用いても良い。陽極酸化被膜を施した場合には、公知の方法により封孔処理を施すのが望ましい。
支持体表面は、平滑であっても良いし、特別な切削方法を用いたり、研磨処理を施したりすることにより、粗面化されていても良い。また、支持体を構成する材料に適当な粒径の粒子を混合することによって、粗面化されたものでも良い。また、安価化のためには、切削処理を施さず、引き抜き管をそのまま使用することも可能である。
<下引き層>
導電性支持体と後述する感光層との間には、接着性・ブロッキング性等の改善のため、下引き層を設けても良い。下引き層としては、樹脂、樹脂に金属酸化物等の粒子を分散したものなどが用いられる。
下引き層に用いる金属酸化物粒子の例としては、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化鉄等の1種の金属元素を含む金属酸化物粒子、チタン酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸バリウム等の複数の金属元素を含む金属酸化物粒子などが挙げられる。これらは一種類の粒子を単独で用いても良いし、複数の種類の粒子を混合して用いても良い。これらの金属酸化物粒子の中で、酸化チタン及び酸化アルミニウムが好ましく、特に酸化チタンが好ましい。酸化チタン粒子は、その表面に、酸化錫、酸化アルミニウム、酸化アンチモン、酸化ジルコニウム、酸化珪素等の無機物、又はステアリン酸、ポリオール、シリコン等の有機物による処理を施されていても良い。酸化チタン粒子の結晶型としては、ルチル、アナターゼ、ブルッカイト、アモルファスのいずれも用いることができる。また、複数の結晶状態のものが含まれていても良い。
また、金属酸化物粒子の粒径としては種々のものが利用できるが、中でも特性及び液の安定性の面から、平均一次粒径として通常1nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常100nm以下、好ましくは50nm以下のものが望ましい。
下引き層は、金属酸化物粒子をバインダ樹脂に分散した形で形成するのが望ましい。下引き層に用いられるバインダ樹脂としては、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリイミド樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアクリル酸樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、水溶性ポリエステル樹脂、ニトロセルロース等のセルロースエステル樹脂、セルロースエーテル樹脂、カゼイン、ゼラチン、ポリグルタミン酸、澱粉、スターチアセテート、アミノ澱粉、ジルコニウムキレート化合物、ジルコニウムアルコキシド化合物等の有機ジルコニウム化合物、チタニルキレート化合物、チタニルアルコキシド化合物等の有機チタニル化合物、シランカップリング剤などの公知のバインダ樹脂が挙げられる。これらは単独で用いても良く、或いは2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用しても良い。また、硬化剤とともに硬化した形で使用してもよい。中でも、アルコール可溶性の共重合ポリアミド、変性ポリアミド等は、良好な分散性、塗布性を示すことから好ましい。
下引き層に用いられるバインダ樹脂に対する無機粒子の使用比率は任意に選ぶことが可能であるが、分散液の安定性、塗布性の観点から、通常は10重量%以上、500重量%以下の範囲で使用することが好ましい。
下引き層の膜厚は、任意に選ぶことができるが、感光体特性及び塗布性を向上させる観点から、通常は0.1μm以上、20μm以下の範囲が好ましい。
下引き層には、公知の酸化防止剤等を混合しても良い。画像欠陥防止などを目的として、顔料粒子、樹脂粒子等を含有させ用いても良い。
<感光層>
感光層の形式としては、電荷発生物質と電荷輸送物質とが同一層に存在し、バインダ樹脂中に分散された単層型と、電荷発生物質がバインダ樹脂中に分散された電荷発生層及び電荷輸送物質がバインダ樹脂中に分散された電荷輸送層の二層からなる機能分離型(積層型)とが挙げられるが、何れの形式であってもよい。本発明のフッ素置換インジウムフタロシアニンは、電荷発生物質の少なくとも1種として含有されることになる。
また、積層型感光層としては、導電性支持体側から電荷発生層、電荷輸送層をこの順に積層して設ける順積層型感光層と、逆に電荷輸送層、電荷発生層の順に積層して設ける逆積層型感光層とがあり、いずれを採用することも可能であるが、最もバランスの取れた光導電性を発揮できる順積層型感光層が好ましい。
(電荷発生層)
積層型感光体(機能分離型感光体)の場合、電荷発生層は、電荷発生物質をバインダ樹脂で結着することにより形成される。
電荷発生物質としては、本発明のフッ素置換インジウムフタロシアニンが用いられる。本発明のフッ素置換インジウムフタロシアニンは、何れか1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせで混合状態又は混晶状態として用いても良い。更には、本発明のフッ素置換インジウムフタロシアニン1種又は2種以上を、他の公知の電荷発生物質1種又は2種以上と組み合わせて、混合状態又は混晶状態として用いても良い。
本発明のフッ素置換インジウムフタロシアニンとの組み合わせで用いる電荷発生物質としては、セレニウム及びその合金、硫化カドミウム、その他の無機系光導電材料と、有機顔料等の有機系光導電材料とが挙げられるが、有機系光導電材料の方が好ましく、特に有機顔料が好ましい。有機顔料の具体例としては、フタロシアニン顔料、アゾ顔料、ジチオケトピロロピロール顔料、スクアレン(スクアリリウム顔料)、キナクリドン顔料、インジゴ顔料、ペリレン顔料、多環キノン顔料、アントアントロン顔料、ベンズイミダゾール顔料等が挙げられる。
上記例示の有機顔料の中でも、本発明のフッ素置換インジウムフタロシアニンとの組み合わせで用いる電荷発生物質としては、特にフタロシアニン顔料又はアゾ顔料が好ましい。フタロシアニン顔料は、波長600〜900nmの比較的長波長のレーザー光に対して高感度の感光体が得られる点で、また、アゾ顔料は、白色光及び波長300〜500nmの比較的短波長のレーザー光に対し十分な感度を持つ点で、それぞれ優れている。
本発明のフッ素置換インジウムフタロシアニン2種以上を組み合わせて用いる場合、又は、本発明のフッ素置換インジウムフタロシアニン1種又は2種以上を他の電荷発生物質1種又は2種以上と組み合わせて用いる場合、その混合方式は特に制限されず、それぞれの構成要素を粉体の状態、又は分散液の状態から混合して用いても良いし、顔料化、結晶化等のフタロシアニン化合物の製造・処理工程において混合状態を生じさせたものでも良い。このような処理方法としては、酸ペースト処理・磨砕処理・溶剤処理等が知られている。また、混晶状態を生じさせるためには、特開平10−48859号公報記載のように、2種類の結晶を混合後に機械的に磨砕、不定形化した後に、溶剤処理によって特定の結晶状態に変換する方法が挙げられる。
電荷発生層に用いるバインダ樹脂は特に制限されないが、例としては、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ブチラールの一部がホルマールや、アセタール等で変性された部分アセタール化ポリビニルブチラール樹脂等のポリビニルアセタール系樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、変性エーテル系ポリエステル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリビニルピリジン樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルピロリドン樹脂、カゼインや、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ヒドロキシ変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、カルボキシル変性塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体等の塩化ビニル−酢酸ビニル系共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、塩化ビニリデン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−アルキッド樹脂、シリコン−アルキッド樹脂、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂等の絶縁性樹脂や、ポリ−N−ビニルカルバゾール、ポリビニルアントラセン、ポリビニルペリレン等の有機光導電性ポリマーなどが挙げられる。これらのバインダ樹脂は、何れか1種を単独で用いても良く、2種類以上を任意の組み合わせで混合して用いても良い。
電荷発生層は、具体的に、上述のバインダ樹脂を有機溶剤に溶解した溶液に、本発明のフッ素置換インジウムフタロシアニン及び場合によって用いられるその他の電荷発生物質を分散させて塗布液を調整し、これを導電性支持体上に(下引き層を設ける場合は下引き層上に)塗布することにより形成される。
塗布液の作製に用いられる溶剤としては、バインダ樹脂を溶解させるものであれば特に制限されないが、例えば、ペンタン、ヘキサン、オクタン、ノナン等の飽和脂肪族系溶媒、トルエン、キシレン、アニソール等の芳香族系溶媒、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロナフタレン等のハロゲン化芳香族系溶媒、ジメチルホルムアミド、N−メチル−2−ピロリドン等のアミド系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノール、ベンジルアルコール等のアルコール系溶媒、グリセリン、ポリエチレングリコール等の脂肪族多価アルコール類、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン等の鎖状又は環状ケトン系溶媒、ギ酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル等のエステル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ等の鎖状又は環状エーテル系溶媒、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、スルフォラン、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の非プロトン性極性溶媒、n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン、トリエチルアミン等の含窒素化合物、リグロイン等の鉱油、水などが挙げられる。これらは何れか1種を単独で用いても良く、2種以上を併用して用いてもよい。なお、上述の下引き層を設ける場合には、この下引き層を溶解しないものが好ましい。
電荷発生層において、バインダ樹脂と電荷発生物質との配合比(重量)は、バインダ樹脂100重量部に対して電荷発生物質が通常10重量部以上、好ましくは30重量部以上、また、通常1000重量部以下、好ましくは500重量部以下の範囲であり、その膜厚は通常0.05μm以上、好ましくは0.1μm以上、また、通常10μm以下、好ましくは5μm以下の範囲である。電荷発生物質の比率が高過ぎると、電荷発生物質の凝集等により塗布液の安定性が低下するおそれがある一方、電荷発生物質の比率が低過ぎると、感光体としての感度の低下を招くおそれがある。
電荷発生物質を分散させる方法としては、ボールミル分散法、アトライター分散法、サンドミル分散法等の公知の分散法を用いることができる。この際、粒子を0.5μm以下、好ましくは0.3μm以下、より好ましくは0.15μm以下の範囲の粒子サイズに微細化することが有効である。
(電荷輸送層)
積層型感光体の電荷輸送層は、電荷輸送物質を含有するとともに、通常はバインダ樹脂と、必要に応じて使用されるその他の成分とを含有する。このような電荷輸送層は、具体的には、例えば電荷輸送物質等とバインダ樹脂とを溶剤に溶解又は分散して塗布液を作製し、これを順積層型感光層の場合には電荷発生層上に、また、逆積層型感光層の場合には導電性支持体上に(下引き層を設ける場合は下引き層上に)塗布、乾燥して得ることができる。
電荷輸送物質としては特に限定されず、任意の物質を用いることが可能である。公知の電荷輸送物質の例としては、2,4,7−トリニトロフルオレノン等の芳香族ニトロ化合物、テトラシアノキノジメタン等のシアノ化合物、ジフェノキノン等のキノン化合物等の電子吸引性物質、カルバゾール誘導体、インドール誘導体、イミダゾール誘導体、オキサゾール誘導体、ピラゾール誘導体、チアジアゾール誘導体、ベンゾフラン誘導体等の複素環化合物、アニリン誘導体、ヒドラゾン誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体及びこれらの化合物の複数種が結合したもの、あるいはこれらの化合物からなる基を主鎖又は側鎖に有する重合体等の電子供与性物質等が挙げられる。これらの中でも、カルバゾール誘導体、芳香族アミン誘導体、スチルベン誘導体、ブタジエン誘導体、エナミン誘導体、及びこれらの化合物の複数種が結合したものが好ましい。これらの電荷輸送物質は、何れか1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせで併用しても良い。
好適な電荷輸送物質の構造の具体例を以下に示す。但し、これら具体例は例示のために記すものであり、本発明の趣旨に反しない限りはいかなる電荷輸送物質を用いても良い。
バインダ樹脂は膜強度確保のために使用される。電荷輸送層のバインダ樹脂としては、例えばブタジエン樹脂、スチレン樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹脂、メタクリル酸エステル樹脂、ビニルアルコール樹脂、エチルビニルエーテル等のビニル化合物の重合体及び共重合体、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、部分変性ポリビニルアセタール、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、セルロースエステル樹脂、フェノキシ樹脂、シリコン樹脂、シリコン−アルキッド樹脂、ポリ−N−ビニルカルバゾール樹脂等が挙げられる。中でも、ポリカーボネート樹脂、ポリアリレート樹脂が好ましい。これらのバインダ樹脂は、適当な硬化剤を用いて熱、光等により架橋させて用いることもできる。これらのバインダ樹脂は、何れか1種を単独で用いても良く、2種以上を任意の組み合わせで用いても良い。
バインダ樹脂と電荷輸送物質との割合は、バインダ樹脂100重量部に対して電荷輸送物質を20重量部以上の比率で使用する。中でも、残留電位低減の観点から30重量部以上が好ましく、更には、繰り返し使用した際の安定性や電荷移動度の観点から40重量部以上がより好ましい。一方、感光層の熱安定性の観点から、電荷輸送物質を通常は150重量部以下の比率で使用する。中でも、電荷輸送材料とバインダ樹脂との相溶性の観点から110重量部以下が好ましく、耐刷性の観点から80重量部以下がより好ましく、耐傷性の観点から70重量部以下が最も好ましい。
電荷輸送層の膜厚は特に制限されないが、長寿命、画像安定性の観点、更には高解像度の観点から、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常50μm以下、好ましくは45μm以下、更には30μm以下の範囲とする。
(単層型感光体の感光層)
単層型感光体の感光層は、電荷発生物質と電荷輸送物質に加えて、積層型感光体の電荷輸送層と同様に、膜強度確保のためにバインダ樹脂を使用して形成する。具体的には、電荷発生物質と電荷輸送物質と各種バインダ樹脂とを溶剤に溶解又は分散して塗布液を作製し、導電性支持体上(下引き層を設ける場合は下引き層上)に塗布、乾燥して得ることができる。
電荷輸送物質及びバインダ樹脂の種類並びにこれらの使用比率は、積層型感光体の電荷輸送層について説明したものと同様である。これらの電荷輸送物質及びバインダ樹脂からなる電荷輸送媒体中に、さらに電荷発生物質が分散される。
電荷発生物質は、積層型感光体の電荷発生層について説明したものと同様のものが使用できる。但し、単層型感光体の感光層の場合、電荷発生物質の粒子径を充分に小さくする必要がある。具体的には、通常1μm以下、好ましくは0.5μm以下の範囲とする。
単層型感光層内に分散される電荷発生物質の量は、少な過ぎると充分な感度が得られない一方で、多過ぎると帯電性の低下、感度の低下などの弊害があることから、単層型感光層全体に対して通常0.5重量%以上、好ましくは1重量%以上、また、通常50重量%以下、好ましくは20重量%以下の範囲で使用される。
また、単層型感光層におけるバインダ樹脂と電荷発生物質との使用比率は、バインダ樹脂100重量部に対して電荷発生物質が通常0.1重量部以上、好ましくは1重量部以上、また、通常30重量部以下、好ましくは10重量部以下の範囲とする。
単層型感光層の膜厚は、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、また、通常100μm以下、好ましくは50μm以下の範囲である。
(その他)
積層型感光体、単層型感光体ともに、感光層又はそれを構成する各層には、成膜性、可撓性、塗布性、耐汚染性、耐ガス性、耐光性などを向上させる目的で、周知の酸化防止剤、可塑剤、紫外線吸収剤、電子吸引性化合物、レベリング剤、可視光遮光剤などの添加物を含有させても良い。
また、積層型感光体、単層型感光体ともに、上記手順により形成された感光層を最上層、即ち表面層としてもよいが、その上に更に別の層を設け、これを表面層としてもよい。
例えば、感光層の損耗を防止したり、帯電器等から発生する放電生成物等による感光層の劣化を防止・軽減する目的で、保護層を設けても良い。
保護層は、導電性材料を適当なバインダ樹脂中に含有させて形成するか、特開平9−190004号、特開平10−252377号各公報に記載のトリフェニルアミン骨格等の電荷輸送能を有する化合物を用いた共重合体を用いることができる。
保護層に用いる導電性材料としては、TPD(N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−(m−トリル)ベンジジン)等の芳香族アミノ化合物、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化錫、酸化チタン、酸化錫−酸化アンチモン、酸化アルミ、酸化亜鉛等の金属酸化物などを用いることが可能であるが、これに限定されるものではない。
保護層に用いるバインダ樹脂としては、ポリアミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリケトン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルケトン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリルアミド樹脂、シロキサン樹脂等の公知の樹脂を用いることができ、また、特開平9−190004号公報、特開平10−252377号公報の記載のようなトリフェニルアミン骨格等の電荷輸送能を有する骨格と上記樹脂の共重合体を用いることもできる。
保護層の電気抵抗は、通常109Ω・cm以上、1014Ω・cm以下の範囲とする。電気抵抗が前記範囲より高くなると、残留電位が上昇しカブリの多い画像となってしまう一方、前記範囲より低くなると、画像のボケ、解像度の低下が生じてしまう。また、保護層は像露光の際に照射される光の透過を実質上妨げないように構成されなければならない。
また、感光体表面の摩擦抵抗や、摩耗を低減、トナーの感光体から転写ベルト、紙への転写効率を高める等の目的で、表面層にフッ素系樹脂、シリコン樹脂、ポリエチレン樹脂等、又はこれらの樹脂からなる粒子や無機化合物の粒子を、表面層に含有させても良い。或いは、これらの樹脂や粒子を含む層を新たに表面層として形成しても良い。
<各層の形成方法>
これらの感光体を構成する各層は、含有させる物質を溶剤に溶解又は分散させて得られた塗布液を、支持体上に浸漬塗布、スプレー塗布、ノズル塗布、バーコート、ロールコート、ブレード塗布等の公知の方法により、各層ごとに順次塗布・乾燥工程を繰り返すことにより形成される。
塗布液の作製に用いられる溶媒又は分散媒に特に制限は無いが、具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、2−メトキシエタノール等のアルコール類、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類、ギ酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、テトラクロロエタン、1,2−ジクロロプロパン、トリクロロエチレン等の塩素化炭化水素類、n−ブチルアミン、イソプロパノールアミン、ジエチルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、トリエチレンジアミン等の含窒素化合物類、アセトニトリル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤類等が挙げられる。また、これらは1種を単独でも地位手も良く、2種以上を任意の組み合わせ及び種類で併用してもよい。
溶媒又は分散媒の使用量は特に制限されないが、各層の目的や選択した溶媒・分散媒の性質を考慮して、塗布液の固形分濃度や粘度等の物性が所望の範囲となるように適宜調整するのが好ましい。
例えば、単層型感光体、及び機能分離型感光体の電荷輸送層層の場合には、塗布液の固形分濃度を通常5重量%以上、通常5重量%以上、好ましくは10重量%以上、また、通常40重量%以下、好ましくは35重量%以下の範囲とする。また、塗布液の粘度を通常10cps以上、好ましくは50cps以上、また、通常500cps以下、好ましくは400cps以下の範囲とする。
また、積層型感光体の電荷発生層の場合には、塗布液の固形分濃度は、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上、また、通常15重量%以下、好ましくは10重量%以下の範囲とする。また、塗布液の粘度は、通常0.01cps以上、好ましくは0.1cps以上、また、通常20cps以下、好ましくは10cps以下の範囲とする。
塗布液の塗布方法としては、浸漬コーティング法、スプレーコーティング法、スピナーコーティング法、ビードコーティング法、ワイヤーバーコーティング法、ブレードコーティング法、ローラーコーティング法、エアーナイフコーティング法、カーテンコーティング法等が挙げられるが、他の公知のコーティング法を用いることも可能である。
塗布液の乾燥は、室温における指触乾燥後、通常30℃以上、200℃以下の温度範囲で、1分から2時間の間、静止又は送風下で加熱乾燥させることが好ましい。また、加熱温度は一定であってもよく、乾燥時に温度を変更させながら加熱を行なっても良い。
[3.画像形成装置]
次に、本発明の電子写真感光体を用いた画像形成装置(本発明の画像形成装置)の実施の形態について、装置の要部構成を示す図1を用いて説明する。但し、実施の形態は以下の説明に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない限り任意に変形して実施することができる。
図1に示すように、画像形成装置は、電子写真感光体1,帯電装置2,露光装置3及び現像装置4を備えて構成され、更に、必要に応じて転写装置5,クリーニング装置6及び定着装置7が設けられる。
電子写真感光体1は、上述した本発明の電子写真感光体であれば特に制限はないが、図1ではその一例として、円筒状の導電性支持体の表面に上述した感光層を形成したドラム状の感光体を示している。この電子写真感光体1の外周面に沿って、帯電装置2,露光装置3,現像装置4,転写装置5及びクリーニング装置6がそれぞれ配置されている。
帯電装置2は、電子写真感光体1を帯電させるもので、電子写真感光体1の表面を所定電位に均一帯電させる。帯電装置としては、コロトロンやスコロトロン等のコロナ帯電装置、電圧印加された直接帯電部材を感光体表面に接触させて帯電させる直接帯電装置(接触型帯電装置)帯電ブラシ等の接触型帯電装置などがよく用いられる。直接帯電手段の例としては、帯電ローラ、帯電ブラシ等の接触帯電器などが挙げられる。なお、図1では、帯電装置2の一例としてローラ型の帯電装置(帯電ローラ)を示している。直接帯電手段として、気中放電を伴う帯電、あるいは気中放電を伴わない注入帯電いずれも可能である。また、帯電時に印加する電圧としては、直流電圧だけの場合、及び直流に交流を重畳させて用いることもできる。
露光装置3は、電子写真感光体1に露光を行なって電子写真感光体1の感光面に静電潜像を形成することができるものであれば、その種類に特に制限はない。具体例としては、ハロゲンランプ、蛍光灯、半導体レーザーやHe−Neレーザー等のレーザー、LEDなどが挙げられる。また、感光体内部露光方式によって露光を行なうようにしてもよい。露光を行なう際の光は任意であるが、例えば波長が780nmの単色光、波長600nm〜700nmのやや短波長寄りの単色光、波長380nm〜500nmの短波長の単色光などで露光を行なえばよい。
現像装置4は、その種類に特に制限はなく、カスケード現像、一成分絶縁トナー現像、一成分導電トナー現像、二成分磁気ブラシ現像などの乾式現像方式や、湿式現像方式などの任意の装置を用いることができる。図1では、現像装置4は、現像槽41、アジテータ42、供給ローラ43、現像ローラ44、及び、規制部材45からなり、現像槽41の内部にトナーTを貯留している構成となっている。また、必要に応じ、トナーTを補給する補給装置(図示せず)を現像装置4に付帯させてもよい。この補給装置は、ボトル、カートリッジなどの容器からトナーTを補給することが可能に構成される。
供給ローラ43は、導電性スポンジ等から形成される。現像ローラ44は、鉄,ステンレス鋼,アルミニウム,ニッケルなどの金属ロール、又はこうした金属ロールにシリコン樹脂,ウレタン樹脂,フッ素樹脂などを被覆した樹脂ロールなどからなる。この現像ローラ44の表面には、必要に応じて、平滑加工や粗面加工を加えてもよい。
現像ローラ44は、電子写真感光体1と供給ローラ43との間に配置され、電子写真感光体1及び供給ローラ43に各々当接している。供給ローラ43及び現像ローラ44は、回転駆動機構(図示せず)によって回転される。供給ローラ43は、貯留されているトナーTを担持して、現像ローラ44に供給する。現像ローラ44は、供給ローラ43によって供給されるトナーTを担持して、電子写真感光体1の表面に接触させる。
規制部材45は、シリコン樹脂やウレタン樹脂などの樹脂ブレード、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、真鍮、リン青銅などの金属ブレード、又はこうした金属ブレードに樹脂を被覆したブレード等により形成されている。この規制部材45は、現像ローラ44に当接し、ばね等によって現像ローラ44側に所定の力で押圧(一般的なブレード線圧は5〜500g/cm)される。必要に応じて、この規制部材45に、トナーTとの摩擦帯電によりトナーTに帯電を付与する機能を具備させてもよい。
アジテータ42は、回転駆動機構によってそれぞれ回転されており、トナーTを攪拌するとともに、トナーTを供給ローラ43側に搬送する。アジテータ42は、羽根形状、大きさ等を違えて複数設けてもよい。
トナーとしては、粉砕トナーの他に、懸濁造粒、懸濁重合、乳化重合凝集法等のケミカルトナーを用いることができる。特に、ケミカルトナーの場合には、4〜8μ程度の小粒径のものが用いられ、形状も球形に近いものから、ポテト状、ラグビーボール状等の球形から外れたものも使用することができる。重合トナーは、帯電均一性、転写性に優れ、高画質化には好適に用いられる。
トナーTの種類は任意であり、粉状トナーのほか、懸濁造粒、懸濁重合、乳化重合凝集法等のケミカルトナーを用いることができる。ケミカルトナーの場合には、4〜8μ程度の小粒径のものが好ましく、また、トナー粒子の形状も、球形に近いものから、球形から外れたポテト状のものまで、様々な形状のものを使用することができる。特に重合トナーは、帯電均一性、転写性に優れ、高画質化に好適に用いられる。
転写装置5は、その種類に特に制限はなく、コロナ転写、ローラ転写、ベルト転写などの静電転写法、圧力転写法、粘着転写法など、任意の方式を用いた装置を使用することができる。ここでは、転写装置5が電子写真感光体1に対向して配置された転写チャージャー,転写ローラ,転写ベルト等から構成されるものとする。この転写装置5は、トナーTの帯電電位とは逆極性で所定電圧値(転写電圧)を印加し、電子写真感光体1に形成されたトナー像を記録紙(用紙,媒体)Pに転写するものである。
クリーニング装置6について特に制限はなく、ブラシクリーナー、磁気ブラシクリーナー、静電ブラシクリーナー、磁気ローラクリーナー、ブレードクリーナーなど、任意のクリーニング装置を用いることができる。クリーニング装置6は、感光体1に付着している残留トナーをクリーニング部材で掻き落とし、残留トナーを回収するものである。
定着装置7は、上部定着部材(定着ローラ)71及び下部定着部材(定着ローラ)72から構成され、定着部材71又は72の内部には加熱装置73が備えられている。なお、図1では、上部定着部材71の内部に加熱装置73が備えられた例を示す。上部及び下部の各定着部材71,72は、ステンレス,アルミニウムなどの金属素管にシリコンゴムを被覆した定着ロール、更にテフロン(登録商標)樹脂で被覆した定着ロール、定着シートなどが公知の熱定着部材を使用することができる。更に、各定着部材71,72は、離型性を向上させる為にシリコーンオイル等の離型剤を供給する構成としてもよく、バネ等により互いに強制的に圧力を加える構成としてもよい。
記録紙P上に転写されたトナーは、所定温度に加熱された上部定着部材71と下部定着部材72との間を通過する際、トナーが溶融状態まで熱加熱され、通過後冷却されて記録紙P上にトナーが定着される。
なお、定着装置についてもその種類に特に限定はなく、ここで用いたものをはじめ、熱ローラ定着、フラッシュ定着、オーブン定着、圧力定着など、任意の方式による定着装置を設けることができる。
以上のように構成された電子写真装置では、次のようにして画像の記録が行なわれる。即ち、まず感光体1の表面(感光面)が、帯電装置2によって所定の電位(例えば−600V)に帯電される。この際、直流電圧により帯電させても良く、直流電圧に交流電圧を重畳させて帯電させてもよい。
続いて、帯電された感光体1の感光面を、記録すべき画像に応じて露光装置3により露光し、感光面に静電潜像を形成する。そして、その感光体1の感光面に形成された静電潜像の現像を、現像装置4で行なう。
現像装置4は、供給ローラ43により供給されるトナーTを、規制部材(現像ブレード)45により薄層化するとともに、所定の極性(ここでは感光体1の帯電電位と同極性であり、負極性)に摩擦帯電させ、現像ローラ44に担持しながら搬送して、感光体1の表面に接触させる。
現像ローラ44に担持された帯電トナーTが感光体1の表面に接触すると、静電潜像に対応するトナー像が感光体1の感光面に形成される。そしてこのトナー像は、転写装置5によって記録紙Pに転写される。この後、転写されずに感光体1の感光面に残留しているトナーが、クリーニング装置6で除去される。
トナー像の記録紙P上への転写後、定着装置7を通過させてトナー像を記録紙P上へ熱定着することで、最終的な画像が得られる。
なお、画像形成装置は、上述した構成に加え、例えば除電工程を行なうことができる構成としても良い。除電工程は、電子写真感光体に露光を行なうことで電子写真感光体の除電を行なう工程であり、除電装置としては、蛍光灯、LED等が使用される。また除電工程で用いる光は、強度としては露光光の3倍以上の露光エネルギーを有する光である場合が多い。
また、画像形成装置は更に変形して構成してもよく、例えば、前露光工程、補助帯電工程などの工程を行なうことができる構成としたり、オフセット印刷を行なう構成としたり、更には複数種のトナーを用いたフルカラータンデム方式の構成としてもよい。
なお、電子写真感光体1を、帯電装置2、露光装置3、現像装置4、転写装置5、クリーニング装置6、及び定着装置7のうち1つ又は2つ以上と組み合わせて、一体型のカートリッジ(以下適宜「電子写真感光体カートリッジ」という)として構成し、この電子写真感光体カートリッジを複写機やレーザービームプリンタ等の電子写真装置本体に対して着脱可能な構成にしてもよい。この場合、例えば電子写真感光体1やその他の部材が劣化した場合に、この電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体から取り外し、別の新しい電子写真感光体カートリッジを画像形成装置本体に装着することにより、画像形成装置の保守・管理が容易となる。
以下、製造例、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。なお、以下の実施例は本発明を詳細に説明するために示すものであり、本発明はその趣旨に反しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
・合成例(フッ素置換クロロインジウムフタロシアニンの合成):
4−フルオロフタロニトリル22.6重量部及び三塩化インジウム8重量部をα−クロロナフタレン70重量部に加え、200℃において11時間反応させた後、生成物を熱時濾過し、N−メチルピロリドン、メタノール、水、トルエンで洗浄した。次いで、湿ケーキを乾燥させることにより、フッ素置換クロロインジウムフタロシアニンの粗製物14.2重量部を得た。なお、用いた原料から、得られたフッ素置換クロロインジウムフタロシアニンは上述の表1に示した6種の構造異性体(I)〜(VI)全ての混合物であると考えられる。得られたフッ素置換クロロインジウムフタロシアニン粗製物の粉末X線回折図を図2に示す。
なお、粉末X線回折は、以下の条件で行なった。
・粉末X線回折装置:PANalytical PW1700
・X線管球:Cu
・管電圧:40kV
・管電流30mA
・走査軸:θ/2θ
・測定範囲(2θ):3.0°〜40.0°
・測定モード:Continuous
・読み込み幅:0.05°
・走査速度:3.0°/min
・DS:1°
・SS:1°
・RS:0.20mm
また、得られたフッ素置換クロロインジウムフタロシアニン結晶の質量スペクトルの測定を行なった。その結果を図3に示す。
なお、質量スペクトル測定は、以下の条件で行なった。
測定方法:MALDI−TOF−MS測定
装置:Applied Biosystems製 Voyger Elite−DE
測定条件
検出イオン:ネガティブ
測定モード:リフレクターモード
加圧電圧:20kV
マトリックス:無し
・製造例1:
合成例で得られたフッ素置換クロロインジウムフタロシアニン粗製物3重量部と、ガラスビーズ(ポッターズ・バロティーニ(株)製GB200M、粒径φ0.6〜φ0.85mm)170重量部とを、ポリエチレン製の瓶の中に、空間の占める容積が半分以上になるように充填し、染料分散試験器(ペイントシェーカー)で20時間振盪処理し、無定形化した。処理後、該フタロシアニン及びガラスビーズの混合物と、水300重量部とを室温下で1.5時間攪拌し、ガラスビーズと固体を分離した後、固体を濾別し、乾燥することにより、フッ素置換クロロインジウムフタロシアニンの無定形物(アモルファス型)を得た。得られたフッ素置換クロロインジウムフタロシアニン無定形物の粉末X線回折図を図4に示す。
・製造例2:
合成例で得られたフッ素置換クロロインジウムフタロシアニン粗製物1.5重量部と、ガラスビーズ(ポッターズ・バロティーニ(株)製GB200M、粒径φ0.6〜φ0.85mm)85重量部とを、ポリエチレン製の瓶の中に、空間の占める容積が半分以上になるように充填し、染料分散試験機(ペイントシェーカー)で20時間振盪処理し、無定形化した。処理後、該フタロシアニン及びガラスビーズの混合物と、トルエン100重量部とを混合し、室温下で1.5時間攪拌した。その後、該フタロシアニンとガラスビーズとを分離し、更に該フタロシアニンをトルエン中で1時間攪拌後、濾別し、乾燥することにより、フッ素置換クロロインジウムフタロシアニン結晶を得た。得られたフッ素置換クロロインジウムフタロシアニン結晶の粉末X線回折図を図5に示す。これは上述の結晶(II)に該当する。
・製造例3:
製造例2で用いたトルエンに代えて、N−メチルピロリドンを用いた以外は、製造例2と同様の操作を行なうことにより、フッ素置換クロロインジウムフタロシアニン結晶を得た。得られたフッ素置換クロロインジウムフタロシアニン結晶の粉末X線回折図を図6に示す。これは上述の結晶(II)に該当する。
・製造例4:
合成例で得られたフッ素置換クロロインジウムフタロシアニン結晶5重量部と、ガラスビーズ(ポッターズ・バロティーニ(株)製GB200M、粒径φ0.6〜φ0.85mm)170重量部とを、ポリエチレン製の瓶の中に、空間の占める容積が半分以上になるように充填し、染料分散試験器(ペイントシェーカー)で20時間振盪処理し、無定形化した。処理後、該フタロシアニン及びガラスビーズの混合物と、メタノール1000mlとを室温条件で30分撹拌後、ガラスビーズと固体を分離し、さらに固体を濾別した。得られた固体をNMP/水=9:1の混合溶媒、水、メタノールで順次洗浄処理し、乾燥させることにより、フッ素置換クロロインジウムフタロシアニン結晶を得た。得られたフッ素置換クロロインジウムフタロシアニン結晶の粉末X線回折図を図7に示す。これは上述の結晶(I)に該当する。
・比較合成例:
フタロニトリル50重量部及び三塩化インジウム23.7重量部をα−クロロナフタレン250部に加え、205℃において14時間反応させた後、生成物を熱時濾過し、N−メチルピロリドン、メタノール、水、トルエンで順次洗浄した。次いで、湿ケーキを乾燥させることにより、クロロインジウムフタロシアニン結晶27重量部を得た。得られたクロロインジウムフタロシアニン結晶の粉末X線回折図を図8に示す。
・比較製造例1:
比較合成例で得られたクロロインジウムフタロシアニン結晶3重量部と、ガラスビーズ(ポッターズ・バロティーニ(株)製GB200M、粒径φ0.6〜φ0.85mm)34重量部とを、ポリエチレン製の瓶の中に、空間の占める容積が半分以上になるように充填し、染料分散試験機(ペイントシェーカー)で20時間振盪処理し、無定形化した。処理後、該フタロシアニン及びガラスビーズの混合物と、水100重量部とを混合し、室温下で1.5時間攪拌した後、濾別し、乾燥することにより、クロロインジウムフタロシアニン結晶を得た。得られたクロロインジウムフタロシアニン結晶の粉末X線回折図を図9に示す。
・比較製造例2:
比較合成例で得られたクロロインジウムフタロシアニン結晶1.5重量部と、粒径φ0.4〜φ0.6mmのガラスビーズ11重量部とを、ポリエチレン製の瓶の中に、空間の占める容積が半分になるように充填し、染料分散試験機(ペイントシェーカー)で20時間振盪処理し、無定形化した。処理後、該フタロシアニン及びガラスビーズの混合物と、トルエン50重量部とを混合し、室温下で2時間攪拌した。その後、ガラスビーズと固体を分離し、さらに固体をトルエン中で1時間攪拌後、濾別し、乾燥することにより、クロロインジウムフタロシアニン結晶を得た。得られたクロロインジウムフタロシアニン結晶の粉末X線回折図を図10に示す。
・比較製造例3:
比較製造例2で用いたトルエンをメチルエチルケトンに変更した以外は、比較製造例2と同様の操作を行なうことにより、クロロインジウムフタロシアニン結晶を得た。得られたクロロインジウムフタロシアニン結晶の粉末X線回折図を図11に示す。
・実施例1:
下引き層用分散液は、次のようにして製造した。即ち、平均一次粒子径40nmのルチル型酸化チタン(石原産業社製「TTO55N」)と、該酸化チタンに対して3重量%のメチルジメトキシシラン(東芝シリコーン社製「TSL8117」)とを、高速流動式混合混練機((株)カワタ社製「SMG300」)に投入し、回転周速34.5m/秒で高速混合して得られた表面処理酸化チタンを、メタノール/1−プロパノールの混合溶媒中でボールミルにより分散させることにより、疎水化処理酸化チタンの分散スラリーとした。該分散スラリーと、メタノール/1−プロパノール/トルエンの混合溶媒、及び、ε−カプロラクタム[下記式(A)で表わされる化合物]/ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタン[下記式(B)で表わされる化合物]/ヘキサメチレンジアミン[下記式(C)で表わされる化合物]/デカメチレンジカルボン酸[下記式(D)で表わされる化合物]/オクタデカメチレンジカルボン酸[下記式(E)で表わされる化合物]の組成モル比率が、75%/9.5%/3%/9.5%/3%からなる共重合ポリアミドのペレットとを加熱しながら撹拌、混合してポリアミドペレットを溶解させた後、超音波分散処理を行なうことにより、メタノール/1−プロパノール/トルエンの重量比が7/1/2で、疎水性処理酸化チタン/共重合ポリアミドを重量比3/1で含有する、固形分濃度18.0%の下引き層用分散液とした。
二軸延伸ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(厚み75μm)の表面にアルミニウム蒸着膜(厚み70nm)を形成した導電性支持体を用い、その支持体の蒸着層上に、上述の下引き層用の塗布液をバーコーターにより、乾燥後の膜厚が1.25μmとなるように塗布して乾燥させ、下引き層を形成した。
次に、製造例1で得られたフッ素置換クロロインジウムフタロシアニン4重量部に4−メチル−4−メトキシ−ペンタノン−2を30重量部、1,2−ジメトキシエタン270重量部を加え、サンドグラインドミルで2時間粉砕し、微粒子化処理を行った後、バインダ樹脂としてのポリビニルブチラール(電気化学工業社製「デカンブチラール#6000C」)1重量部、及び、フェノキシ樹脂(ユニオンカーバイト社製「PKHH」)1重量部を加えて、さらにサンドグラインドミルで1時間粉砕することにより、電荷発生層用塗布液を調整した。この塗布液を、前記導電性支持体上の下引き層上にバーコーターにより、乾燥後の膜厚が0.4μmとなるように塗布し、乾燥させて電荷発生層を形成した。
更に、電荷輸送物質として、特開2002−80432号明細書の[実施例1]に記載の方法に従って合成した、下記式(2)で示される化合物50重量部、並びに、バインダ樹脂として、下記式(3)に示す2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパンを芳香族ジオール成分とする繰り返し単位51モル%と、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタンを芳香族ジオール成分とする繰り返し単位49モル%とからなり、p−t−ブチルフェノールに由来する末端構造を有するポリカーボネート樹脂100重量部、レベリング剤としてシリコーンオイル0.03重量部を、テトラヒドロフラン/トルエン(重量比8/2)混合溶媒640重量部に溶解させて電荷輸送層用塗布液を調整し、この塗布液を、前記電荷発生層上にフィルムアプリケーターにより、乾燥後の膜厚が25μmとなるように塗布し、乾燥させて電荷輸送層を形成することにより、積層型感光層を有する電子写真感光体を作製した。
得られた電子写真感光体について、感光体評価装置(シンシアー55、ジエンテック社製)を用いて、以下の電子写真特性をスタティック方式で測定した。その結果を表2に示す。
まず、暗所でスコロトロン帯電器により、感光体の表面電位が約−700Vになるよう放電を行ない、一定速度(125mm/sec)で感光体を通過して帯電させ、その帯電圧を測定し、初期帯電圧(V0)を求めた。その後、2.5秒間放置したときの電位低下(DD)を測定した。更に、感光体の表面を約−700Vになるように帯電させ、その際に要した電圧(帯電器に印加した電圧)をグリット電圧(Vg)とした。次に、強度1.0μW/cm2の780nm単色光を照射し、照射10秒後の残留電位(Vr)を求めた。
・実施例2:
実施例1で用いたフッ素置換クロロインジウムフタロシアニンの代わりに、製造例2で製造したフッ素置換クロロインジウムフタロシアニンを用いた以外は、実施例1と同様の操作により電子写真感光体を作製し、電子写真特性を評価した。その結果を表2に示す。
・実施例3:
実施例1で用いたフッ素置換クロロインジウムフタロシアニンの代わりに、製造例3で製造したフッ素置換クロロインジウムフタロシアニンを用いた以外は、実施例1と同様の操作により電子写真感光体を作製し、電子写真特性を評価した。その結果を表2に示す。
・実施例4:
実施例1で用いたフッ素置換クロロインジウムフタロシアニンの代わりに、製造例4で製造したフッ素置換クロロインジウムフタロシアニンを用いた以外は、実施例1と同様の操作により電子写真感光体を作製し、電子写真特性を評価した。その結果を表2に示す。
・比較例1:
実施例1で用いたフッ素置換クロロインジウムフタロシアニンの代わりに、比較製造例2で製造したクロロインジウムフタロシアニンを用いた以外は、実施例1と同様の操作により電子写真感光体を作製し、電子写真特性を評価した。その結果を表2に示す。
・比較例2:
実施例1で用いたフッ素置換クロロインジウムフタロシアニンの代わりに、比較製造例3で製造したクロロインジウムフタロシアニンを用いた以外は、実施例1と同様の操作により電子写真感光体を作製し、電子写真特性を評価した。その結果を表2に示す。
表2の結果から、本発明のフッ素置換インジウムフタロシアニンを用いた実施例1〜4の電子写真感光体は、従来のインジウムフタロシアニンを用いた比較例1,2の電子写真感光体と比べて、グリット電圧(Vg)に対する初期帯電圧(V0)の比(V0/Vg)が大きい。これは、実施例の感光体の方が比較例の感光体に比べて、表面電位を同一電位まで帯電させるために帯電器に印加する必要がある電圧が低くて済むこと、即ち帯電性が良いことを表わしている。また、実施例の感光体は比較例の感光体と比べて、暗減衰(DD)が少なく、残留電位(Vr)が低いことも判る。よって、本発明のフッ素置換インジウムフタロシアニンは、従来のインジウムフタロシアニンと比べて、電子写真感光体の材料として優れていることは明らかである。
・実施例5:
実施例1で得られた電荷発生層用塗布液を、表面を陽極酸化し、封孔処理を施した直径3cm、長さ250mm、肉厚0.75mmのアルミニウム製シリンダーに、浸漬塗布し、その乾燥後の膜厚が0.2g/m2(約0.2μm)となるように電荷発生層を設
けた。そして、実施例1中で得られた電荷輸送層用塗布液を前記電荷発生層上に浸漬塗布し、乾燥後の膜厚が18μmになるように電荷輸送層を設けることにより、ドラム状の電子写真感光体(感光体ドラム)を作製した。
・実施例6:
実施例5中、電荷発生層用塗布液を実施例2で得られたものに変更した以外は、実施例5と同様の操作を行なうことにより、感光体ドラムを作製した。
・実施例7:
実施例5中、電荷発生層用塗布液を実施例3で得られたものに変更した以外は、実施例5と同様の操作を行なうことにより、感光体ドラムを作製した。
・実施例8:
実施例5中、電荷発生層用塗布液を実施例4で得られたものに変更した以外は、実施例5と同様の操作を行なうことにより、感光体ドラムを作製した。
・比較例3:
実施例5中、電荷発生層用塗布液を比較例1で得られたものに変更した以外は、実施例5と同様の操作を行なうことにより、感光体ドラムを作製した。
・比較例4:
実施例5中、電荷発生層用塗布液を比較例2で得られたものに変更した以外は、実施例5と同様の操作を行なうことにより、感光体ドラムを作製した。
実施例5〜8及び比較例3,4で得られた感光体ドラムを市販のモノクロレーザープリンター(セイコーエプソン社製LP2400)のドラムカートリッジに装着し、温度35℃、湿度80%の条件下でプリントを行ない、画像評価を行なった。表3にカブリ値を示す。
カブリ値は、測色色差計(日本電色工業(株)ND−1001DP型)を使用し、標準白板の白度が94.4となるように調整し、この測色色差計を用いて印刷前の紙(A4サイズ)の白度を測定し、その同じ紙に対して、全面白色となるような信号を前記レーザープリンタに入力することにより印刷を行ない、印刷後の紙(A4サイズ)の白度を測定し、下記式(1)に基づき計算することにより求めた。
カブリ値=印刷前の白度−印刷後の白度 (1)
表3の結果から、本発明のフッ素置換インジウムフタロシアニンを用いた実施例5〜8の電子写真感光体は、従来のインジウムフタロシアニンを用いた比較例3,4の電子写真感光体と比べて、カブリ値が低く、良好な画像が得られることが判る。