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JP4664477B2 - 微生物を利用した浄化反応の予知・評価方法及び浄化装置 - Google Patents
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JP4664477B2 - 微生物を利用した浄化反応の予知・評価方法及び浄化装置 - Google Patents

微生物を利用した浄化反応の予知・評価方法及び浄化装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、好気性微生物を用いて、汚染された水質及び土壌を直接浄化する装置を設計する際、または微生物反応装置を運転する際に、最適な微生物生育条件を探ることを目的として、微生物個数濃度、浄化したい汚染物質濃度(以下、「基質濃度」という)及び溶存酸素濃度の動特性を評価する方法、本質的に非線形非定常な現象を定常近似解における知見を用いて相関関係で示す方法、微生物反応の進行状態を代用特性で監視する方法、及び微生物の基質に対する分解特性(分解強度分析データ)から浄化能力の代用特性を知る方法に係わる。
【0002】
【従来の技術】
従来より、微生物を利用して水相環境の浄化を図る方法が知られており、このような浄化システムやその制御を行う装置等について、様々な提案がなされている。例えば、特開平4−264235号公報では、微生物による汚染物質の分解を利用する水処理プラントの制御装置が開示されており、特開平5−72199号公報では、水圏の監視及び浄化システムが開示されている。しかし、これらの先行技術は、単に汚染物質の分解に微生物を利用する程度の技術を開示するにとどまり、微生物による汚染物質の分解条件等の検討を具体的に提示するものではない。
【0003】
微生物反応において、微生物濃度の動特性は、停滞期、対数期、静止期、衰退期の四つに分類できる。停滞期は、微生物が、増殖を開始する環境条件が整った時点で、生存環境にある糖類から生体を構成するアミノ酸を酵素によって増殖するためにまず合成する増殖期間であり、微生物の種類等により期間の長短はあるが、一般には二時間程度である。対数期は、微生物濃度がそのときの微生物濃度に比例して増加し、片対数方眼紙において縦軸に微生物濃度、横軸に時間をプロットしたとき、微生物濃度が直線的に増加する期間である。
【0004】
しかし、対数期は無限に続くものではない。微生物の動特性は、温度条件や溶存酸素濃度及び基質濃度などの環境条件が十分に満足するものであっても、老廃物の蓄積やpHの変化などにによって、経験的には微生物濃度が108〜109程度で静止期を迎える。そして、微生物同士の接触等により微生物の増殖が停止し、やがて微生物は変形し死滅する。
【0005】
好気性の微生物反応を利用して水や土壌を直接浄化する反応装置、所用の溶存酸素を供給する装置、及び基質を供給する装置等の設計では、少なくとも微生物個数濃度、基質濃度、及び溶存酸素濃度に関する時間的な変化(動特性)を解析することが必要である。これらの濃度は互いに関係し合い、非線形非定常な気体拡散を含む化学現象であることから、初期条件と境界条件でそれぞれの濃度に関する動特性が変わる。このように複雑な現象におけるパラメータ相互間の関係を解析するためには、巨視的な観点から装置内の現象を微分方程式で記述し、微分方程式を連成して微生物個数濃度、基質濃度及び溶存酸素濃度について解くことが必要である。
【0006】
従来より、対数期では微生物濃度がそのときの微生物の濃度に比例して増殖し、このときの増殖し易さを増殖係数で示す方程式は、一般の解説書等にも記載がある。しかし、対数期から静止期までを統合して表現した方程式またはその機構についての記載は知られていない。つまり、対数期から静止期までを表現でき、さらに初期濃度を静止期の濃度より高くして培養した場合、微生物は静止期の濃度にまで死滅して減少するという良く知られた現象を統一的に記述する方程式または微視的な機構を表現する方法は知られていない。さらに、微生物の増殖強度を示す増殖係数に、溶存酸素濃度の消費と基質の消費に関する項をもつ記述法や評価法も知られていない。
【0007】
このため、微生物の増殖や基質の消費を評価するためには、微生物の個数濃度または基質濃度の時間変化を測定する必要がある。基質の中でも、特に、微量で毒性の強いもの、定量分析に長時間を要するもの、濃縮精製困難なもの、及び定量方法が未確立のもの等は、刻々の変化を把握することが困難である。
【0008】
また、微生物の増殖状況等を観測するためには、従来では基質を含む反応液の濁度や発泡状態等を目視観測して経験的に判断してきたが、初期から濁った処理対象液や処理対象土を含むスラリー等では目視観測が難しく、精度の高い観測は困難であった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記事項に鑑みなされたものであり、溶存酸素濃度の消費と基質の消費に関する項を用いて相内の微生物個数濃度を統一的に記述し、浄化反応の対象となる基質を定量することなく浄化反応における微生物個数濃度、基質濃度及び溶存酸素濃度の動特性を予知する方法を提供することを課題とする。
【0010】
また、本発明は、前記動特性と実際の浄化反応の測定値から浄化反応を評価する評価方法を提供することを課題とする。
【0011】
また、本発明は、これらの予知方法による動特性や評価方法を利用する浄化装置を提供することを課題とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記課題を解決するための手段として、汚染物質としての基質によって汚染された被浄化対象を微生物の分解能力により分解して浄化する浄化反応を予知する方法において、基質と微生物を含む水系内における微生物個数濃度、基質濃度、及び溶存酸素濃度に関する非定常非線形現象を微分方程式で記述し、この微分方程式を差分方程式に変換し、この差分方程式で用いられるパラメータを変数とする差分方程式の数値解を求め、一方で基準物質に対する微生物の分解能力を測定し、差分方程式の数値解と基準物質に対する微生物の分解能力の測定値とを比較し、測定値に最も近い数値解を水相内における微生物個数濃度、基質濃度、及び溶存酸素濃度の挙動として特定することを特徴とする、微生物を利用する浄化反応の予知方法を提供する。
【0013】
本発明の予知方法によれば、溶存酸素の消費と基質の消費に関する項を用いて相内の微生物個数濃度を統一的に記述し、浄化反応の対象となる基質を定量することなく浄化反応における微生物個数濃度、基質濃度及び溶存酸素濃度の動特性を予知することが可能となる。
【0014】
また、本発明は、汚染物質としての基質によって汚染された被浄化対象を微生物の分解能力により分解して浄化する浄化反応を評価する方法において、基質と微生物を含む水系内における微生物個数濃度、基質濃度、及び溶存酸素濃度に関する非定常非線形現象を微分方程式で記述し、この微分方程式を差分方程式に変換し、この差分方程式で用いられるパラメータを変数とする差分方程式の数値解を求め、一方で基準物質に対する微生物の分解能力を測定し、差分方程式の数値解と基準物質に対する微生物の分解能力の測定値とを比較し、測定値に最も近い数値解から水相内における溶存酸素濃度の挙動を少なくとも特定し、一方で前記水相内における溶存酸素濃度を実測し、挙動が特定された溶存酸素濃度と溶存酸素濃度の実測値とを比較することにより浄化反応の進行状況を評価することを特徴とする、微生物を利用する浄化反応の評価方法を提供する。
【0015】
本発明の評価方法によれば、溶存酸素濃度の消費と基質の消費に関する項を用いて相内の微生物個数濃度を統一的に記述し、浄化反応の対象となる基質を定量することなく浄化反応における微生物個数濃度、基質濃度及び溶存酸素濃度の動特性を予知し、この動特性と実際の浄化反応の測定値から浄化反応の進行状況を評価することが可能となる。
【0016】
また、本発明は、汚染物質である基質によって汚染された被浄化対象を水相に導入する水相導入手段と、被浄化対象を含む水相に微生物を供給する微生物供給手段と、被浄化対象を含む水相を収容する反応槽と、反応槽中の水相の温度を制御する温度制御手段と、反応槽中の水相に酸素を導入する酸素導入手段と、反応槽中の水相に含まれる溶存酸素を測定する溶存酸素濃度測定手段と、溶存酸素濃度測定手段に接続され、水相導入手段、微生物供給手段、温度制御手段、及び酸素導入手段を制御する制御手段とを有し、微生物の分解能力により被浄化対象を浄化する浄化装置において、制御手段は、基質と微生物を含む水系内における微生物個数濃度、基質濃度、及び溶存酸素濃度に関する非定常非線形現象を微分方程式で記述し、この微分方程式を差分方程式に変換し、この差分方程式で用いられるパラメータを変数とする差分方程式の数値解を求め、一方で基準物質に対する微生物の分解能力を測定し、差分方程式の数値解と基準物質に対する微生物の分解能力の測定値とを比較し、測定値に最も近い数値解を前記水相内における微生物個数濃度、基質濃度、及び溶存酸素濃度の挙動として特定し、特定した各濃度の挙動に基づいて各手段を制御することを特徴とする、微生物を利用する浄化装置を提供する。
【0017】
本発明の浄化装置によれば、前述した予知方法による動特性に基づいて被浄化対象の浄化反応を行うことが可能となる。
【0018】
また、本発明は、前記制御手段が差分方程式から求められた水相内における各濃度の計算値と、溶存酸素濃度測定手段による測定値とを比較することにより、浄化反応を評価する制御手段であると、予知方法による動特性に基づいた浄化反応の進行状況等を評価することができ、浄化反応を制御する上でより好ましい。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、本発明についてより詳しく説明する。
本発明は、汚染物質としての基質によって汚染された被浄化対象を微生物の分解能力により分解して浄化する浄化反応、及び浄化反応の予知や評価等に用いられる。本発明では、浄化反応の予知や評価において、非定常非線形現象を記述する微分方程式、この微分方程式を変換して得られる差分方程式、及び基準物質に対する微生物の分解能力の測定値が少なくとも用いられる。
以下、基準物質に対する微生物の分解能力の測定値についてまず説明し、ついで微分方程式による記述から浄化反応の予知・評価までを説明する。
【0020】
<基準物質に対する微生物の分解能力の測定>
まず、浄化反応に用いられる微生物の基準物質に対する分解能力を測定する。
【0021】
微生物が産生する酵素が基質を分解する際には、前述したように多種類の酵素を同時に産生する。一種類の酵素は一種類の基質としか反応しないことから、基準物質を各種微生物に個々に与えることにより微生物の酵素産生能力を評価することができる。微生物の酵素産生能力は、同一の微生物の種類や微生物個数濃度、微生物を取り巻く環境等において同一であるので、基質に対する微生物の分解能力は、比較的容易に分析できる基準物質に対する微生物の分解能力を測定することで評価することができる。
【0022】
前記微生物としては、好気性の微生物であれば特に限定されず、基質を分解して無害化するものが好ましく用いられる。このような微生物としては、例えば、バチルスBN菌、バチルス系SH2B菌、白色腐朽菌、CA10株等を例示することができる。
【0023】
前記基準物質としては、微生物が産生する酵素によって分解されたか否かが比較的容易に測定することができる物質であれば特に限定されず、糖、脂質、タンパク質が好ましくは用いられる。このような基準物質としては、例えば、グリセロース、L−アラビノース、リボース、D−キシロース、D−グルコース、D−フルクトース、D−マンノース、マンニトール、イノシトール、ソルビトール、α−メチル−D−グルコシド、N−アセチルグルコサミン、アルブチン、エスクリン、サリシン、セロビオース、マルトース、メリビオース、サッカラーゼ、トレハロース、イヌリン、メレチトース、D−ラフィノース、アミドン、D−ツラノース、D−タガトース、5−セト−グルコネート等を例示することができる。
【0024】
基準物質に対する微生物の分解能力の測定としては、公知の技術を利用することができるが、比較的容易であり、かつ比較的精度の高い方法が好ましくは用いられる。このような測定方法としては、例えば、十分な微生物個数濃度及び溶存酸素の供給の下、所定濃度の基準物質を加え、比色法を用いて水相中の基準物質濃度を逐次測定する方法を例示することができる。また、基準物質の分解時における微生物個数濃度の測定としては、例えば、水相中に十分な溶存酸素及び基準物質の供給の下、所定個数濃度の微生物を加え、水相中の微生物個数濃度を逐次測定する方法を例示することができる。また、基準物質の分解時における溶存酸素濃度の測定としては、例えば、水相中に十分な基準物質及び微生物を加え、飽和溶存酸素濃度等の所定濃度の酸素を供給し、この水相中の溶存酸素濃度を逐次測定する方法を例示することができる。
【0025】
なお、微生物の酵素産生能力の測定の一例を表1に示す。表中の「+」は分解能力があることを示し、表中の「−」は分解能力のないことを示す。また、例えば、表中の「脂質」「単糖類」等の記載は、酵素が示す特異性を示し、脂質分解専門の酵素、単糖類分解専用の酵素を意味する。
【0026】
【表1】
Figure 0004664477
【0027】
<微分方程式>
次に、本発明で用いられる微分方程式について説明する。
本発明では、まず、基質と微生物を含む水相内における微生物個数濃度、基質濃度、及び溶存酸素濃度に関する非定常非線形現象を微分方程式で記述する。なお、以下の微分方程式等に用いられる記号の意味を下記表2に示す。
【0028】
【表2】
Figure 0004664477
【0029】
まず、溶存酸素濃度の時間変化を表す微分方程式について説明する。液中に空気を供給する装置(スパージャー等)を介して、基質を含む水相に供給した空気中の酸素は、水中でガス吸収されて溶存酸素になる。溶存酸素濃度の時間変化は、水相の温度や混合物濃度に応じて決まる飽和酸素濃度と、現存する溶存酸素濃度の差を推進力として増加する。
【0030】
一方で、推進力に対する抵抗は、液側基準の総括酸素移動係数と気液接触面積との積で示した容量係数である。水中における気泡の表面積、水流の乱れの強さが容量係数を決定する。溶存酸素濃度の時間変化は、そのときの微生物濃度に比例して減少する。また、比例係数は単位微生物濃度当たりの溶存酸素消費速度である。
【0031】
従って、水相の溶存酸素濃度は、下式(1)で表される微分方程式によって記述できる。
【数1】
Figure 0004664477
【0032】
次に、微生物個数濃度の時間変化を表す微分方程式について説明する。微生物個数濃度の時間変化は、現存する微生物濃度に比例して変化する。このときの比例係数は、微生物の増殖係数(逆数は瞬間世代時間として定義されている)である。微生物の増殖係数は、単位微生物個数濃度当たりの溶存酸素消費速度及び基質消費速度によって減少する。
【0033】
従って、水相の微生物個数濃度は、下式(2)で表される微分方程式によって記述できる。
【数2】
Figure 0004664477
【0034】
次に、基質濃度の時間変化を表す微分方程式について説明する。微生物が産生する酵素が基質を分解する際には、微生物は多種類の酵素を産生するが、一種類の酵素は選択的に決まった一種類の基質としか反応しない。つまり酵素は、基質に対し触媒として作用し、立体的な特異性をもつ「酵素・基質複合体」として形成された後、反応生成物が産生される。すなわち、微生物から産生される酵素及び基質は、このようなミハエリス・メンテン型酵素反応機構に従うことが知られている。
【0035】
つまり、基質濃度の時間変化は、現存する基質濃度と酵素濃度の積に比例して減少する。しかし、実際には酵素濃度を計測することは非常に困難であり、また一種類の基質と反応するただ一種類の酵素濃度は現存する微生物個数濃度に比例することになるので、基質濃度の時間変化は、微生物個数濃度と基質濃度の積に比例して減少する。このときの比例係数は、微生物個数濃度当たりの基質消費係数である。
【0036】
従って、水相の基質濃度は、下式(3)で表される微分方程式によって記述できる。
【数3】
Figure 0004664477
【0037】
<差分方程式>
水相における溶存酸素濃度、微生物個数濃度、及び基質濃度の時間変化をそれぞれ式(1)〜(3)で表したが、特に式(2)は非定常非線形方程式であるため、連立した方程式の解析解を得ることは困難である。そこで、前記式(1)〜式(3)を差分方程式に変換する。
【0038】
溶存酸素濃度については、式(1)より、
【数4】
Figure 0004664477
よって、溶存酸素濃度に関する差分方程式は下式(4)で表される。
【数5】
Figure 0004664477
【0039】
微生物個数濃度については、式(2)より、
【数6】
Figure 0004664477
よって、微生物個数濃度に関する差分方程式は下式(5)で表される。
【数7】
Figure 0004664477
【0040】
基質濃度については、式(3)より、
【数8】
Figure 0004664477
よって、基質濃度に関する差分方程式は下式(6)で表される。
【数9】
Figure 0004664477
【0041】
前述した基準物質に対する微生物の分解能力の測定、微分方程式、及び差分方程式を用いて、本発明の予知・評価方法を行う。以下、本発明の予知・評価方法の一実施の形態として、予知・評価方法をコンピュータによって行う形態を説明するが、本発明の実施の形態は以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0042】
本実施の形態で用いられるコンピュータは、前記微分方程式を差分方程式に変換する変換手段と、設定された条件に基づき差方程式を近似及び演算する近似手段及び演算手段と、差分方程式の数値解や入力データをグラフ化するグラフ化手段とを有しており、このコンピュータにはグラフ化されたデータを表示するためのモニターが接続されている。
【0043】
コンピュータに入力される初期データとしては、単位時間(Δt)、時間tにおける溶存酸素濃度(C(t))、時間tにおける微生物個数濃度(n(t))、時間tにおける基質濃度(E(t))、任意のα(例えば整数)である。
以下、予知方法について説明する。
【0044】
<予知方法>
本発明の予知方法は、前述した微分方程式を差分方程式に変換し、差分方程式で用いられるパラメータを変数とする差分方程式の数値解を求め、前述した基準物質に対する微生物の分解能力の測定値と前記数値解とを比較し、測定値に最も近い数値解を水相内における微生物個数濃度、基質濃度、及び溶存酸素濃度の挙動として特定することを特徴とする。
【0045】
まず前記コンピュータに微分方程式(式(1)〜式(3))及び前記初期データを入力する。するとコンピュータはこれらの微分方程式を差分方程式(式(4)〜式(6))に変換する。そしてコンピュータは、Δt、C(t)、n(t)、及びE(t)を式(4)〜式(6)に代入する。すなわち時間tを初期値としてΔt(時間)後の各濃度を算出する。コンピュータに入力されるデータの一例としては、例えばΔtには0.0001、溶存酸素濃度C(t)には10-2(kg/m3)、微生物個数濃度n(t)には103(個/mL)、基質濃度E(t)には25(kg/m3)が挙げられる。なお、コンピュータには予め微分方程式及び差分方程式を入力することにより、微分方程式から差分方程式への変換を省略することも可能である。
【0046】
前記データについて、浄化反応では微生物及び基質は、供給量を自在に調整できることから、微生物個数濃度n(t)及び基質濃度E(t)は任意の数値を代入することができる。また、溶存酸素濃度C(t)も任意の数値を代入することができるが、溶存酸素濃度は水相の温度から求められる飽和溶存酸素濃度、またはこれに準ずる数値を代入することが好ましい。所定の温度における蒸留水中の飽和溶存酸素濃度を下記表3に示す。
【0047】
【表3】
Figure 0004664477
【0048】
式(5)には各濃度の比例係数(パラメータ)が未知数のまま残されている。このパラメータに対しても、所定の数値を入力すれば差分方程式の数値解は求まるが、前記測定値にヒットする数値解を効率よく求めるには、前記差分方程式を浄化反応における所定の状態を表す近似式にすることが有用である。
【0049】
前述したように、微生物の水相内における増殖の挙動(動特性)は、停滞期、対数期、静止期、衰退期の四つに分類されることが知られている。また、本発明は、被浄化対象の浄化に関する。これらのことから、微生物の動特性を表す上である程度の条件設定が許容される。
【0050】
すなわち、浄化反応の初期状態として対数期の初期を想定した場合、微生物の増殖にとって溶存酸素は水相内に十分に存在することから溶存酸素濃度は飽和溶存酸素濃度にほぼ等しく、また、微生物の増殖にとって基質は水相内に十分に存在することから基質濃度は初期基質濃度にほぼ等しい。すると式(5)中のγ/C(t)≒0、εE0/E(t)≒1とみなすことができる。コンピュータは、浄化反応の初期状態の条件としてγ/C(t)≒0、εE0/E(t)≒1を式(5)に代入する。これにより式(5)は増殖係数αを未知数とする式とみなすことができる。
【0051】
次に、コンピュータは、増殖係数αを初期条件を代入した式(5)に代入する。そして、C(t+dt)をC(t)に、n(t+dt)をn(t)に、E(t+dt)をE(t)にそれぞれ置き換えて、演算を繰り返す。すると、式(5)より、αの値に応じて微生物個数濃度の挙動が求まる。例えばαとして1から10の整数を入力すると、差分方程式の数値解が求まり、10個の微生物個数濃度の挙動が求まる。コンピュータはこれらの挙動をグラフ化し、モニターに表示する(図3参照)。
【0052】
ここでコンピュータに、基準物質に対する微生物の分解能力の測定値を入力する。すると、グラフにこれらの測定値がプロットされる。測定値がほぼグラフの線図上にプロットされた場合は、測定値に最も近い近似解として、その線図が浄化反応における微生物個数濃度の挙動として特定され、線図に対応するαがその微生物の増殖係数として特定される。もし測定値と線図とが離れている場合は、αの条件に小数を含める等、αの条件を変え、上記の操作を繰り返す。
【0053】
微生物個数濃度の挙動及びαの特定については、予めコンピュータに数値解と測定値との間に許容される誤差の範囲を設定する等、コンピュータが特定する構成としても良いし、または、例えばシステム管理者がモニターの表示から適当な微生物個数濃度の挙動及びαを特定しても良い。
【0054】
一方、微生物個数濃度当たりの基質消費係数(ε)と、微生物個数濃度当たりの溶存酸素消費係数(γ)については、浄化反応の初期状態では前述したように、微生物個数濃度の挙動が必ずしも反映されるわけではない。そこで、コンピュータは、差分方程式(5)を、浄化反応の定常状態を表す近似式に変換する。ここで定常状態とは、前述した微生物個数濃度の動特性における静止期である。
【0055】
定常状態を表す近似式に前記差分方程式を変換するにあたっては、コンピュータにあらかじめその近似式を記憶させておくことができる。従って、ここでは差分方程式の近似式への変換について説明する。
【0056】
定常状態を表す近似式への差分方程式の変換には、各変数の規格化のために無次元化された各変数を用いる。静止期の終期における微生物個数濃度に対する微生物個数濃度をΨn(Ψn=n/n)、静止期の終期における基質濃度に対する基質濃度をΨE(ΨE=E/E)、静止期の終期における溶存酸素濃度に対する溶存酸素濃度をΨC(ΨC=C/C)とすると、静止期以降衰退期までの間、n、E及びCはそれぞれn、E及びCになることから、静止期の終期における各無次元数の値は、Ψn=ΨE=ΨC=1になる。
【0057】
このため、静止期の終期における微生物個数濃度(n)は、式(5)より、
【数10】
Figure 0004664477
従って、
【数11】
Figure 0004664477
と表される。
【0058】
式(7)のパラメータのうち、αはすでに求められており、二つのパラメータ(γ及びε)が変数として含まれている。増殖係数αは、微生物の世代交代速度を決定する変数であり、また、単位微生物個数濃度当たりの溶存酸素消費速度と基質消費速度の和に対する増殖係数は、式(7)に示すように、微生物の最大個数濃度を規定する変数である。そこで、異なる二つ以上の定常状態条件を近似式に代入し、この条件を代入した近似式から二つのパラメータが求められる。
【0059】
そこでコンピュータに異なる二つ以上の定常状態条件を入力する。コンピュータは、先に求めたαを式(7)に代入し、異なる二つ以上の定常状態条件を式(7)に代入する。すると式(7)から二つの未知数を含む二つ以上の式が導き出されることから、γ及びεが求まる。
【0060】
異なる二つ以上の定常状態条件とは、前述したように、適当な条件であれば特に限定されず、一つの式が、異なる条件を反映する二以上の式を表す条件であれば良い。このような条件としては、例えば、基質が十二分に与えられていた場合と、静止期終期には基質濃度が初期値の半分になる場合等を例示することができる。より具体的には、基質が十二分に与えられていた場合では、式(7)におけるE0/Eがほぼ1とみなすことができる。また、静止期終期には基質濃度が初期値の半分になる場合では、式(7)におけるE0/Eが2となる。
【0061】
また、静止期終期における微生物個数濃度(n)は例えば対数期終期の微生物個数濃度とみなすことができ、静止期終期における溶存酸素濃度(C)は例えば飽和溶存酸素濃度とみなすことができる。これらの数値は、コンピュータによる演算によって算出可能であるか、またはすでにコンピュータにデータとして入力されていることから、コンピュータは、前述のような作業により、パラメータであるγ及びεを定常近似解と関連付けて演算により求める。
【0062】
また、γとεを求めるにあたっては、前述した近似によって例えばγを求め、このγと先に求めたαを式(5)に代入し、単位微生物個数濃度当たりの基質消費速度(ε)を変数(例えば小数)として基質濃度の挙動を求め、これと基準物質に対する微生物の分解能力の測定値との一致度合いを比較することにより、すなわちαと同様にしてεを求めることもできる(図6参照)。
【0063】
それぞれのパラメータが求まったら、コンピュータは、これらのパラメータを差分方程式(式(4)〜式(6))に代入する。そして、時間tにおける溶存酸素濃度、微生物個数濃度、及び基質濃度からΔt後における各濃度を順次算出する。そして、C(t+dt)をC(t)に、n(t+dt)をn(t)に、E(t+dt)をE(t)にそれぞれ置き換えて、演算を繰り返す。すると、前記水相における特定された各濃度の挙動が、図1に示されるようにグラフとして表現される。
【0064】
このような一連の作業により、パラメータを変数とした差分方程式の数値解の中から、基準物質に対する微生物の分解能力の測定値とを比較し、測定値に最も近い数値解を水相内における各濃度の挙動として特定することによって、実際に基質を用いる予備試験等を行うことなく浄化反応を予知することができる。また、各濃度の挙動を決定するパラメータが求まっていることから、初期値や種々の条件等が異なる場合でも各濃度の動特性を求めることができる。
【0065】
本実施の形態における予知方法では、被浄化対象に含まれる実際の基質を用いなくても前記動特性が求まることから、毒性の高い基質や、定量が困難な基質、及び定量方法が確立されていない基質等であっても、このような基質を含む被浄化対象の浄化反応を予知することができる。
【0066】
なお、本実施の形態では、菌種が一種類の場合を例示したもので、常温では一般に多類の菌体が共存している。ここで、i種類の菌体が共存すると仮定すると、各濃度についての微分方程式は、
【数12】
Figure 0004664477
【数13】
Figure 0004664477
【数14】
Figure 0004664477
の、3×i本の方程式の連立から解くことが求められる。
【0067】
実際には、菌を培養し、コロニーを形成して菌を純化した上で、所定条件に対する耐性を利用して多類の菌体が共存する中から、所望の一種類の菌体を取り出すことができる。このような手法としては、例えば、遺伝子組み替え技術等を利用することができる。
【0068】
より具体的には、対象とする菌体がバチルス系菌体であれば、例えばコロニーを形成させて純化した後に、遺伝子組み替え技術を駆使し、プラスミドにペニシリン耐性を有する遺伝子を付加し、この組替えたプラスミドを菌体に戻すことにより、ペニシリン耐性菌になる。ペニシリンを加えた培地で評価したいペニシリン耐性化した菌(この場合ではペニシリン耐性バチルス系菌)を培養することにより、他の菌は死滅し、評価したい菌だけが増殖する。このような手法で、菌毎の、基準物質を基質としたときの増殖係数α、基質消費係数ε、及び溶存酸素消費係数γを求める。
【0069】
このような手法によれば、本実施の形態で示すような菌種一種類の予知等が、複数種類の菌体を有する系からでも行うことができる。また、菌の耐性を利用することから、評価したい菌に種々の条件における耐性を付与することにより、汚泥を分解する菌体の特定、ホルモンやホルマリン消毒剤などの分解・浄化能力を有する菌体の特定等、所望の条件下において分解能力を有する菌体を特定することができ、さらにその菌体の分解能力を数値化することができる。
【0070】
<評価方法>
本発明の評価方法は、実際に浄化反応を実施した場合に、前述した予知方法による浄化反応の予知通りに浄化反応が進行しているかを評価する方法であり、前述した予知方法を用いて水相内の溶存酸素濃度の挙動を少なくとも特定し、一方で水相内における溶存酸素濃度を実測し、挙動が特定された溶存酸素濃度と溶存酸素濃度の実測値とを比較することにより浄化反応の進行状況を評価することを特徴とする。
【0071】
本発明の評価方法では、水相の溶存酸素濃度を測定することにより実際の浄化反応における動特性を測定する。従って、本発明の評価方法では、少なくとも溶存酸素濃度の挙動が特定されていなければならない。溶存酸素濃度の挙動は、前述した予知方法で特定することができる。
【0072】
浄化反応の評価は、任意の反応時間における溶存酸素濃度の予知値と実測値を比較すると予知の精度を評価することができ、溶存酸素濃度の予知値と実測値を比較すると浄化反応における反応の進行状況を確認、評価することができる。なお、溶存酸素濃度のほかに微生物個数濃度や基質濃度の挙動も特定し、溶存酸素濃度による浄化反応の進行状況評価から、浄化反応における微生物個数濃度や基質濃度を推定することもできる。
【0073】
<オーダ評価>
なお、上記作業において、前記微分方程式が連続である条件は、Δtが限りなく小さいことである。なお、本発明では、演算時間刻みΔtは、0.0001時間以下で厳密解と差分方程式から求まった解とが一致する。近似が不適当であると、得られる各濃度の数値や挙動について正確なものが得られないおそれがある。そこで、近似が適当であるか否かを評価する手法として、以下に示すオーダ評価が挙げられる。
【0074】
図1に示されるように、溶存酸素濃度は、微生物の対数期の後半から急激に減少し、静止期を迎えて回復し、定常濃度Cに到達する。水相内への溶存酸素供給能力が微生物の溶存酸素消費能力を下回ると、水相内には有機酸が生成され微生物の増殖を阻害する。一方で基質濃度は、微生物の対数期の中期から徐々に低減し、静止期の初期で減少率が最大になり、静止期の終期で定常濃度Eに到達する。
【0075】
まず静止期における微生物個数濃度のオーダ(O(n))を決定する。ここでO(n)は、他の実験等における測定値や、測定値に近い数値とすることが好ましい。ここではO(n)を10-7[個/mL]とする。
【0076】
対数期の初期から静止期の初期に至るまでは、図1に示されるように、溶存酸素濃度が律速条件として微生物の増殖を支配している。つまり、
(γ/C)≫(εE0/E
が成立するので、近似として
≒α/(γ/C
が成立する。溶存酸素濃度のオーダO(C)は、表2からわかるように、10-2[kg/m3]であるから、微生物個数濃度当たりの溶存酸素消費速度のオーダO(γ)は10-9[(kg/m3/h)/(個/mL)]と求められる。
【0077】
同様に、静止期以降は、図1に示されるように、基質濃度が律速条件として微生物の増殖を支配している。つまり、
(εE0/E)≫(γ/C
が成立するので、近似として
≒α/(εE0/E
が成立する。基質濃度のオーダO(E0/E)は、実質的な観点から1[kg/m3]であるから、微生物個数濃度当たりの基質消費速度のオーダO(ε)は10-7[(1/h)/(個/mL)]と求められる。
このようにして、求められたα、γ、及びεのオーダを評価し、上記各オーダとの間に大きな差異がないかによって、前述した作業の近似が適当であったか否かを確かめることができる。
【0078】
前述したオーダ評価は、いわゆる検算手段であり、本発明の予知方法及び評価方法において必ずしも必要なものではないが、演算結果の適否を確認する上で有用である。従って、各パラメータが求まった時点で前記オーダ評価をコンピュータに実行させ、オーダ評価結果をモニターに表示させる構成にすることも、本発明の好ましい実施形態である。
【0079】
また、本実施の形態において、コンピュータに入力されるデータは、予知・評価方法の前に全て入力しても良いし、途中結果を受けて逐次入力しても良い。
【0080】
<浄化装置>
次に、本発明の浄化装置の一実施の形態を説明する。
本実施の形態における浄化装置は、前述した予知方法及び評価方法を利用し、微生物の分解能力により被浄化対象を浄化する浄化装置である。なお本実施形態では、二つの浄化システムを有する形態の浄化装置を例に説明する。
【0081】
本実施の形態における浄化装置は、図2に示すように、汚染物質である基質によって汚染された土壌(被浄化対象)を水相に導入する固液混合塔(水相導入手段)1と、土壌を含む水相に微生物を導入する微生物投入手段(不図示)と、土壌を含む水相を収容する反応槽2a、2bと、反応槽2a、2b中の水相の温度を制御する温度制御手段と、反応槽2a、2b中の水相に酸素を導入する酸素導入手段と、反応槽2a、2b中の水相に含まれる溶存酸素を測定する溶存酸素濃度計(溶存酸素濃度測定手段)7a、7bと、溶存酸素濃度計7a、7bに接続され、各手段を制御する制御手段(不図示)とを有する。
【0082】
本実施の形態における浄化装置は、このほかにも、反応槽内の水相の収容量を検出するためのレベル計8a、8bと、固液混合塔1−反応槽2a、2b間に設けられた水相供給用バルブ9a、9bと、反応槽中の水相を撹拌するための撹拌装置10a、10bとを有している。なお、水相供給用バルブ9a、9bは自動弁であり、レベル計8a、8bと接続され、レベル計の検出結果に基づき自動的に開閉する。
【0083】
また、反応槽2a、2bからの排出ラインにはスラリーポンプ11a、11bが設けられており、前記排出ラインはそれぞれスラリーポンプ11a、11bの下流側で分岐しており、一方には循環用バルブ12a、12bが設けられており、他方には排出用バルブ13a、13bが設けられている。一方の循環用バルブの下流には他方の反応槽が接続されており、反応槽2aに収容された水相がスラリーポンプ11a、循環用バルブ12aを通って反応槽2bに移すことが可能な構成になっている。同様に、反応槽2bに収容された水相も反応槽2aに移すことができる。一方、排出用バルブ13a、13bよりも下流には、固液分離装置14が設けられている。
【0084】
本実施の形態では被浄化対象を土壌としたが、本発明における被浄化対象は土壌に限定されず、水相に導入できる固体、液体、気体状の全ての物質を含み、例えば土壌、汚水、水溶性の有毒物質等であっても良い。また、本発明における水相とは、主に水からなる水系媒体中に被浄化対象を溶解または分散させた流動性の相をいう。水相は、水の他に、被浄化対象の分散や基質の溶解等のために、水溶性物質等の他の物質を含むものであっても良い。
【0085】
本発明で用いられる基質としては、好気性微生物によって分解される基質であれば特に限定されず、水相中に好適に導入され、人体に対する毒性の高いもの、非水溶性等の物性から定量が困難なもの、及び定量法が未確立なもの等が好ましくは用いられる。このような基質としては、例えば、ダイオキシン類、PCB等を例示することができる。
【0086】
固液混合塔1は、汚染水と汚染土壌とを固液混合してスラリーを形成するための手段である。固液混合塔1は、本発明では必ずしも必要とされる構成ではなく、土壌等のように水相に導入する必要のある被浄化対象を浄化する際に好適に用いられる。また本発明では、被浄化対象は汚染水または汚染土壌のいずれか一方であっても良く、汚染水のみが被浄化対象である場合では、汚染水をそのまま使用することもできるが、固液混合塔1に代えて希釈装置または濃縮装置を設け、汚染水を適当な濃度に調整しても良い。
【0087】
前記微生物投入手段は、被浄化対象を含む水相に微生物を手段であれば特に限定されない。この微生物投入手段による微生物の水相への導入は、被浄化対象が水相に導入されてから浄化反応が開始するまでの任意の段階に行われれば良い。
【0088】
反応槽2a、2bは、温度調整用のジャケットを備えた公知の反応槽を用いることができる。反応槽2a、2bには、収容された水相を撹拌するための撹拌装置10a、10bが設けられている。なお、水相へ酸素を導入する際のバブリングによって、撹拌装置を伴わずに水相を撹拌する構成としても良い。
【0089】
前記温度調整手段は、反応槽2a、2b中の水相の温度を検出する温度計3a、3bと、反応槽2a、2bのジャケットに温水または蒸気を導入するラインに設けられる温度調整用バルブ4a、4bとによって構成されている。
【0090】
前記酸素導入手段は、反応槽2a、2bの内部下方に開口するバブリング装置5a、5bと、バブリング装置5a、5bに圧縮空気を供給するコンプレッサ6とによって構成されている。
【0091】
溶存酸素濃度計7a、7bは、水相中の溶存酸素濃度を測定可能なものであれば特に限定されない。
【0092】
前記制御手段は、前述した予知方法及び評価方法に基づき各手段を制御する手段であれば特に限定されない。すなわち、制御手段は、水相内における微生物個数濃度、基質濃度、及び溶存酸素濃度に関する非定常非線形現象を記述する微分方程式を作成し、この微分方程式を差分方程式に変換し、この差分方程式で用いられるパラメータを近似解と関連付けて求め、パラメータが求められた差分方程式により求まる水相内における微生物個数濃度、基質濃度、及び溶存酸素濃度の挙動に基づいて各手段を制御する。
【0093】
制御手段は、一例を挙げるなら、前記予知方法によって求まった種々の条件を記憶する記憶部、または前記予知方法によって浄化反応の種々の条件を算出する算出部(例えば前述したコンピュータ)と、記憶部または算出部から所定の条件を選択しこの条件に従って各手段に指令を発する出力部とを少なくとも有する。また、制御手段は、さらに、各測定手段の検出結果を記憶部または算出部に入力する入力部と、入力された検出結果の値と前記条件とを比較する評価部とを有する。
【0094】
固液分離装置14は、互いに隣接する排液タンク14a及び土壌タンク14bと、両タンクの上方に設けられ排液タンク14a側に傾斜する搬送面を有するコンベア式の分離ベルト14cとを有している。分離ベルト14cは、通水性の無端形状のベルトを回転プーリで軸支したものである。このほかにも固液分離装置14は、固液を分離可能であれば特に限定されず、例えば遠心分離器等であっても良い。
【0095】
次に、本実施の形態における浄化装置による前記土壌の浄化反応について説明する。
まず、汚染土壌及び汚染水は、それぞれ固液混合塔1の塔頂から投入され、重力落下で混合されるか、または機械的に混合される。このとき汚染土壌と汚染水によるスラリーのスラリー濃度が50重量%以上となるように汚染土壌と汚染水が混合される。
【0096】
前記スラリーは、固液混合塔1から反応槽2a、2bに送られる。送られたスラリーが反応槽2a、2b内でレベル計8a、8bによって検出されると、水相供給用バルブ9a、9bが閉止し、スラリーの供給が終了する。固液混合塔1から反応槽2a、2bの間で微生物が前記微生物投入手段によってスラリー内に導入される。
【0097】
反応槽2a、2bにスラリーが供給されると、温度調整用バルブ4a、4bが開いて反応槽2a、2bのジャケットに温水または蒸気が通され、温度計3a、3bの検出結果に基づき制御手段が温度調整用バルブ4a、4bの開度を調整し、反応槽2a、2b内の温度を微生物の活性温度に保持する。
【0098】
また、反応槽2a、2bにスラリーが供給されると、コンプレッサ6で圧縮した空気がバブリング装置5a、5bを通ってスラリー内に供給され、微生物の生存環境を維持する。なお、ここまでの一連の操作は、前記予知方法の結果に基づいて制御手段が各手段へ指令を発することにより行われる。
【0099】
こうしてスラリーとなった汚染土壌及び汚染水の微生物による浄化が行われる。この浄化の間、制御手段は、溶存酸素濃度計7a、7bの検出結果と、前記予知方法による算出結果とを照合することにより、浄化反応の進行状況や、浄化反応の進行が予定通りに行われているか等を評価する。もし、評価の結果、浄化反応の進行状況に異常が認められた場合には、警報の発信等によりシステム管理者に通報したり、反応槽2a、2b内のスラリーの入れ替えによる流加培養法を実施することで対応する。
【0100】
流加培養法とは、バッチプロセスにおいて微生物の継代を重ねると微生物が突然変異をおこし、目的とする微生物の分解能力をえることができない場合があり、時々バッチ外からの微生物(新規の微生物や他バッチの微生物等)を加えることにより突然変異が起こる確率を低減する方法である。
【0101】
スラリーの入れ替えは、例えば、反応槽2aのスラリーの半分をスラリーポンプ11a、循環用バルブ12aを通して反応槽2bに供給し、反応槽2aには新規にスラリーや微生物を供給することにより行われる。なお、スラリー入れ替えは、反応槽2a、2b間で相互に行われても良い。このような入れ替えを行うことにより、微生物の突然変異による分解能力の低下または喪失に対応する。
【0102】
制御手段は、前記予知方法によって求めた動特性と、スラリー中の溶存酸素濃度の実測値とを評価し、衰退期を迎えたことを確認し、浄化反応の終点を見極める。
【0103】
スラリー中の溶存酸素濃度は、溶存酸素濃度計を用いることで連続したデータとして測定することができる。微生物は溶存酸素濃度が低下すると増殖を停止し、微生物個数濃度の挙動は静止期を経て衰退期に入る。このことは、溶存酸素濃度が微生物の増殖に関する抑制要素であることを示している。また、溶存酸素濃度は微生物の対数期の後期から急激に減少し、静止期を迎えて回復した後、定常濃度Cに到達する。前記予知方法によるスラリー中の各濃度の挙動を解析した上でこの動特性を活用すると、微生物の増殖がどの域に達しているかを溶存酸素濃度の測定により評価でき、微生物の増殖データとして代用監視することができる。例えば、溶存酸素濃度の減少開始から対数期にあることを判断でき、溶存酸素濃度の回復から増殖の静止期、衰退期にあることを判断することができる。
【0104】
浄化反応が終点まで達したら、制御手段は、排出用バルブ13a、13bを開き、反応槽2a、2bからスラリーを排出し、固液分離装置14を作動させてスラリーを水相と固相に分離、排液タンク14aと土壌タンク14bに蓄える。それぞれのタンクが所定のレベルに達したら、それぞれ、浄化水、浄化土壌として排出する。
【0105】
なお、本実施の形態では、2セットの浄化システムを同時運転する場合の浄化作業について説明したが、1セットのみの運転であっても良いし、同時運転ではなく交互運転によるものであっても良いし、一方の浄化システムと他方の浄化システムの微生物の種類や浄化条件を変え、複数種類の基質に対応可能な運転を行っても良い。
【0106】
本実施の形態の浄化装置は、前述した予知方法によるスラリー中の微生物個数濃度、基質濃度、及び溶存酸素濃度の動特性に基づき各手段を制御する制御手段とを有することから、毒性の高い基質や定量方法が未確立な基質を含む汚染土壌等の被浄化対象に対しても、基質を用いる予備実験等を行うことなく浄化反応に用いる微生物を選択でき、かつ被浄化対象の浄化を行うことができる。
【0107】
また、本実施の形態の浄化装置は、さらに溶存酸素濃度計7a、7bとを有し、制御手段が浄化反応の進行状況を評価することから、基質を用いる予備実験等を行っていない場合においても浄化反応の進行状況を評価することができる。
【0108】
また、本実施の形態の浄化装置は、二つの反応槽等からなる浄化部位を有することから、突然変異による微生物の分解能力の低下や喪失が生じる確率をより低減することができる。
【0109】
【実施例】
以下、本発明の実施例について説明する。
【0110】
<実施例1>
本実施例では、基質濃度が十分である条件下において増殖係数αを変数とし、それぞれの条件において式(5)から算出される微生物個数濃度の挙動を時間と微生物個数濃度の相関図に表した(図3)。一方で、基準物質として食用油を用い、至適温度が常温であるバチルス系BN菌の増殖に関する実験値を求め、これを図3にプロットした。その結果、バチルス系BN菌の増殖係数αはほぼ1であることが判明した。
【0111】
<応用例>
実施例1で求まったαを用い、初期微生物個数濃度(n0)を変数として微生物個数濃度の挙動を式(5)から算出し、微生物個数濃度の挙動を時間と微生物個数濃度の相関図に表した(図4)。そして、算出に用いた初期微生物個数濃度でバチルス系BN菌の増殖に関する実験値を実施例1と同様に求め、これを図4にプロットした。その結果、実験値は、式(5)から算出された微生物個数濃度の挙動を示す線図上にほぼプロットされ、式(5)を用いる予知方法の有効性が確認された。
【0112】
<実施例2>
実施例1と同様にして、至適温度が比較的高い好熱・好気性のバチルス系SH2B菌の増殖係数αを算出した。また、基準物質としてダイズ蛋白、D−グルコースを用いて実験値を求め、その結果を相関図にプロットした(図5)。その結果、バチルス系SH2B菌の増殖係数αは5.6であることが判明した。
【0113】
<実施例3>
バチルス系SH2B菌の増殖係数αを用い、単位微生物個数濃度当たりの溶存酸素消費速度(γ)を変数として、微生物個数濃度と基質濃度の挙動を時間と微生物個数濃度及び基質濃度の相関図に表した(図6)。一方で糖を基準物質としてバチルス系SH2B菌の増殖に関する基準物質濃度の実験値を求め、これを図6にプロットした。その結果、実験値はある条件下における基質濃度を表す線図上にほぼプロットされ、εが求められた。
【0114】
【発明の効果】
本発明の予知方法によれば、汚染物質としての基質によって汚染された被浄化対象を微生物の分解能力により分解して浄化する浄化反応を予知する方法において、基質と微生物を含む水系内における微生物個数濃度、基質濃度、及び溶存酸素濃度に関する非定常非線形現象を微分方程式で記述し、この微分方程式を差分方程式に変換し、この差分方程式で用いられるパラメータを変数とする差分方程式の数値解を求め、一方で基準物質に対する微生物の分解能力を測定し、差分方程式の数値解と基準物質に対する微生物の分解能力の測定値とを比較し、測定値に最も近い数値解を水相内における微生物個数濃度、基質濃度、及び溶存酸素濃度の挙動として特定することから、溶存酸素濃度の消費と基質の消費に関する項を用いて相内の微生物個数濃度を統一的に記述し、浄化反応の対象となる基質を定量することなく浄化反応における微生物個数濃度、基質濃度及び溶存酸素濃度の動特性を予知することができる。
【0115】
また、本発明の評価方法によれば、汚染物質としての基質によって汚染された被浄化対象を微生物の分解能力により分解して浄化する浄化反応を評価する方法において、基質と微生物を含む水系内における微生物個数濃度、基質濃度、及び溶存酸素濃度に関する非定常非線形現象を微分方程式で記述し、この微分方程式を差分方程式に変換し、この差分方程式で用いられるパラメータを変数とする差分方程式の数値解を求め、一方で基準物質に対する微生物の分解能力を測定し、差分方程式の数値解と前記基準物質に対する微生物の分解能力の測定値とを比較し、測定値に最も近い数値解から水相内における溶存酸素濃度の挙動を少なくとも特定し、一方で水相内における溶存酸素濃度を実測し、挙動が特定された溶存酸素濃度と溶存酸素濃度の実測値とを比較することにより浄化反応の進行状況を評価することから、溶存酸素濃度の消費と基質の消費に関する項を用いて相内の微生物個数濃度を統一的に記述し、浄化反応の対象となる基質を定量することなく浄化反応における微生物個数濃度、基質濃度及び溶存酸素濃度の動特性を予知し、この動特性と実際の浄化反応の測定値から浄化反応を評価することができる。
【0116】
また、本発明の浄化装置によれば、汚染物質である基質によって汚染された被浄化対象を水相に導入する水相導入手段と、被浄化対象を含む水相に微生物を供給する微生物供給手段と、被浄化対象を含む水相を収容する反応槽と、反応槽中の水相の温度を制御する温度制御手段と、反応槽中の水相に酸素を導入する酸素導入手段と、反応槽中の水相に含まれる溶存酸素を測定する溶存酸素濃度測定手段と、溶存酸素濃度測定手段に接続され、水相導入手段、微生物供給手段、温度制御手段、及び酸素導入手段を制御する制御手段とを有し、微生物の分解能力により被浄化対象を浄化する浄化装置において、制御手段は、基質と微生物を含む水系内における微生物個数濃度、基質濃度、及び溶存酸素濃度に関する非定常非線形現象を微分方程式で記述し、この微分方程式を差分方程式に変換し、この差分方程式で用いられるパラメータを変数とする差分方程式の数値解を求め、一方で基準物質に対する微生物の分解能力を測定し、差分方程式の数値解と基準物質に対する微生物の分解能力の測定値とを比較し、測定値に最も近い前記数値解を水相内における微生物個数濃度、基質濃度、及び溶存酸素濃度の挙動として特定し、特定した各濃度の挙動に基づいて各手段を制御することから、前述した予知方法による動特性に基づいて制御される被浄化対象の浄化反応を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】微生物個数濃度、溶存酸素濃度、及び基質濃度の動特性と相関性を示す図である。
【図2】本発明の浄化装置における一実施の形態を示す概略構成図である。
【図3】種々の条件で式(5)から求められた微生物個数濃度の挙動と測定値との一例を表した、時間と微生物個数濃度の相関図である。
【図4】種々の条件で式(5)から求められた微生物個数濃度の挙動と測定値との他の例を表した、時間と微生物個数濃度の相関図である。
【図5】種々の条件で式(5)から求められた微生物個数濃度の挙動と測定値との他の例を表した、時間と微生物個数濃度の相関図である。
【図6】種々の条件で求められた微生物個数濃度及び基質濃度の挙動と、基準物質濃度の測定値との一例を表した、時間と微生物個数濃度及び基質濃度の相関図である。
【符号の説明】
1 固液混同塔
2a、2b 反応槽
3a、3b 温度計
4a、4b 温度調整用バルブ
5a、5b バブリング装置
6 コンプレッサ
7a、7b 溶存酸素濃度計
8a、8b レベル計
9a、9b 水相供給用バルブ
10a、10b 撹拌装置
11a、11b スラリーポンプ
12a、12b 循環用バルブ
13a、13b 排出用バルブ
14 固液分離装置
14a 排液タンク
14b 土壌タンク
14c 分離ベルト

Claims (8)

  1. 汚染物質としての基質によって汚染された被浄化対象を、好気性の微生物の分解能力により前記基質を分解して浄化する浄化反応を予知する方法において、
    前記基質と前記微生物を含む水系内における微生物個数濃度、基質濃度、及び溶存酸素濃度に関する非定常非線形現象を微分方程式で記述し、この微分方程式を差分方程式に変換し、この差分方程式で用いられるパラメータを変数とする前記差分方程式の数値解を求め、一方で前記微生物が産生する酵素によって分解される基準物質に対する微生物の分解能力を測定し、前記差分方程式の数値解と前記基準物質に対する微生物の分解能力の測定値とを比較し、前記測定値に最も近い前記数値解を前記水相内における微生物個数濃度、基質濃度、及び溶存酸素濃度の挙動として特定することを特徴とする、微生物を利用する浄化反応の予知方法。
  2. 前記浄化反応の初期状態の条件を前記差分方程式に代入し、この差分方程式から前記パラメータを変数として微生物個数濃度の数値解を求め、この数値解と前記測定値とを比較し、前記水相内における微生物個数濃度の挙動を特定することを特徴とする請求項1に記載の、微生物を利用する浄化反応の予知方法。
  3. 前記浄化反応の定常状態を表す近似式に前記差分方程式を変換し、前記パラメータを定常近似解と関連付けて求めることを特徴とする請求項1に記載の、微生物を利用する浄化反応の予知方法。
  4. 汚染物質としての基質によって汚染された被浄化対象を、好気性の微生物の分解能力により前記基質を分解して浄化する浄化反応を評価する方法において、
    前記基質と前記微生物を含む水系内における微生物個数濃度、基質濃度、及び溶存酸素濃度に関する非定常非線形現象を微分方程式で記述し、この微分方程式を差分方程式に変換し、この差分方程式で用いられるパラメータを変数とする前記差分方程式の数値解を求め、一方で前記微生物が産生する酵素によって分解される基準物質に対する微生物の分解能力を測定し、前記差分方程式の数値解と前記基準物質に対する微生物の分解能力の測定値とを比較し、前記測定値に最も近い前記数値解から前記水相内における溶存酸素濃度の挙動を少なくとも特定し、一方で前記水相内における溶存酸素濃度を実測し、挙動が特定された溶存酸素濃度と溶存酸素濃度の実測値とを比較することにより前記浄化反応の進行状況を評価することを特徴とする、微生物を利用する浄化反応の評価方法。
  5. 前記浄化反応の初期状態の条件を前記差分方程式に代入し、この差分方程式から前記パラメータを変数として微生物個数濃度の数値解を求め、この数値解と前記測定値とを比較し、前記水相内における微生物個数濃度の挙動を特定することを特徴とする請求項4に記載の、微生物を利用する浄化反応の評価方法。
  6. 前記浄化反応の定常状態を表す近似式に前記差分方程式を変換し、前記パラメータを定常近似解と関連付けて求めることを特徴とする請求項4に記載の、微生物を利用する浄化反応の評価方法。
  7. 汚染物質である基質によって汚染された被浄化対象を水相に導入する水相導入手段と、前記被浄化対象を含む水相に好気性の微生物を供給する微生物供給手段と、前記被浄化対象を含む水相を収容する反応槽と、前記反応槽中の水相の温度を制御する温度制御手段と、前記反応槽中の水相に酸素を導入する酸素導入手段と、前記反応槽中の水相に含まれる溶存酸素を測定する溶存酸素濃度測定手段と、前記溶存酸素濃度測定手段に接続され、前記水相導入手段、前記微生物供給手段、前記温度制御手段、及び前記酸素導入手段を制御する制御手段とを有し、前記微生物の分解能力により前記基質を分解して被浄化対象を浄化する浄化装置において、
    前記制御手段は、前記基質と前記微生物を含む水系内における微生物個数濃度、基質濃度、及び溶存酸素濃度に関する非定常非線形現象を微分方程式で記述し、この微分方程式を差分方程式に変換し、この差分方程式で用いられるパラメータを変数とする前記差分方程式の数値解を求め、一方で前記微生物が産生する酵素によって分解される基準物質に対する微生物の分解能力を測定し、前記差分方程式の数値解と前記基準物質に対する微生物の分解能力の測定値とを比較し、前記測定値に最も近い前記数値解を前記水相内における微生物個数濃度、基質濃度、及び溶存酸素濃度の挙動として特定し、特定した各濃度の挙動に基づいて前記各手段を制御することを特徴とする、微生物を利用する浄化装置。
  8. 前記制御手段は、挙動が特定された溶存酸素濃度と溶存酸素濃度の実測値とを比較することにより前記浄化反応の進行状況を評価することを特徴とする、請求項7に記載の、微生物を利用する浄化装置。
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