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JP4667930B2 - 光学素子の製造方法 - Google Patents
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Description

本発明は、加熱軟化したガラス素材を成形型内でプレス成形するガラス製品、特に光学素子の製造方法に関するものである。
精密光学ガラス素子を簡便に生産性よく成形する方法として、モールドプレス法がある。モールドプレス法は、予めガラスを溶融固化もしくは冷間加工して所定の形状にした成形用ガラス素材を成形用型内に供給し、加熱軟化により成形可能になった状態でこのガラス素材を成形型で押圧し、成形されたガラス素子が型内に保持された状態でこれを冷却してガラス素子を得る方法である。精密加工された成形型を用いるため、この方法によれば、成形後のガラス素子の被成形面に対する研磨加工を不要とすることができる。
ここで、成形型とガラス素材との間の融着や、それに起因するクモリやワレ等の欠陥の問題に対し、成形用ガラス素材の表面に様々な膜を形成することが提案されている。
例えば、成形用ガラス素材表面に炭化水素膜を形成することにより、離型を向上することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、炭化水素の熱分解によって薄い炭素膜をガラス素材の表面に形成することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
さらに、メタンプラズマ処理により、膜厚5nm未満、好ましくは1nm未満の炭素膜を成形用ガラス素材表面に形成することにより、離型を向上することが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
特公平7−45329号公報 特開平8−217468号公報 特開平9−286625号公報
これらの特許文献に開示の技術によれば、一定の効果が見られるものの、同一金型で繰り返し成形、例えば、1000回以上の連続成形を行うと、徐々に、又は突発的に成形後の光学ガラス素子表面のクモリ、ワレや形状不良が発生し、十分に満足のいくものではなかった。すなわち、膜質が不十分な状態のガラス素材をプレス成形に供し、連続成形を行うと、ガラス素材と成形型との融着が生じ、その後の成形品(ガラス素子)の表面にクモリ、ワレや形状不良が連続して発生する。特に、同一の成形型を用いて数百回ないし数千回にわたって連続成形を行う、高効率の生産においては、歩留まり低下の要因となっている。
また、ガラス表面に成形型との融着を抑止する所定の薄膜を形成した成形用ガラス素材を用いてガラス素子を成形した場合であっても、ガラスが金型表面から離れるタイミングが不均一になり成形したガラス素子の形状不良が発生しやすく、形状歩留が悪化する問題があった。すなわち、モールドプレス法によってガラス素子を成形する場合、成形用ガラス素材と金型とをプレス成形において密着して、金型の形状がガラスに正確に転写する。プレス成形はガラスの軟化点以上の高温で行うため、ガラスの熱収縮が金型の熱収縮よりも大きいので、成形後の冷却過程において、ガラスは金型表面から離れる。このガラスが金型表面から離れるタイミングが不均一になり成形したガラス素子の形状が不良になり易い。また、高温でのガラスと金型表面との密着において、ガラスと型の界面で反応が生じてガラスの一部が金型表面に融着してガラス素子の表面にクモリやワレ等の欠陥が発生したりして、良好なガラスレンズを得るには困難があった。
さらに、従来から知られている炭化水素の熱分解法、真空蒸着法、スパッタ法、プラズマCVD法等を利用した場合、同じ成膜原理を利用した装置であっても、装置間の成膜条件の微差や成形装置内の被成膜物の配置位置などによって成膜条件を完全に均一とすることは困難であり、ガラス素材表面の膜質が変動する可能性を予め考慮しなければならない。それ故、こうした変動要因の発生如何を、成膜されたガラス素材の膜質から評価、選別する必要性もある。
このように、従来から知られている成膜方法では、必ずしも成形に適した(質の良い)膜のみをガラス素材に成膜することができない。また、成膜された膜の膜厚や色、外観を検査することで、ある程度の良否の判別はできるが、膜の性質の良否を簡便、かつ、確実に判別する手法が見出されていない。
上記問題点に鑑みて、本発明の課題は、プレス成形の際の融着、及びそれに起因するガラス成形体表面のクモリもしくはワレを抑止するとともに、ガラスが金型表面から離れるタイミングが不均一になることにより生じるガラス素子の形状不良を防止し、良質なガラス製品を高い歩留で得ることができる光学素子の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明では、ガラス素材を加熱により軟化させ、プレス成形する光学素子の製造方法において、予備成形後、表面に炭素系膜を成膜したガラス素材を用意し、当該炭素系膜を成膜したガラス素材表面の表面自由エネルギーの分散項成分と、前記炭素系膜を成膜したガラス素材をプレス成形したときの形状不良率との相関関係を予め求め、当該相関関係に基づき、前記炭素系膜を成膜した後のガラス素材表面の表面自由エネルギーにおける分散項成分が85%以上のものを選別して連続プレス成形することを特徴とする。
ここで、物体表面における表面自由エネルギーは、分散力成分(分散項成分)と極性力成分との和に相当する。従って、本発明において、分散項成分を基準とするという構成は、極性力成分を基準とする意味を含む意味である。
本発明では、炭素系膜を成膜した後のガラス素材として、表面自由エネルギーにおける分散項成分が85%以上のものを選別して連続プレス成形する。従って、クモリ、ワレ、や成形品の形状不良を生じることなく安定して光学素子を生産することができる。
本発明者らは、純水、CH 2 I 2 、グリセリン、イソペンタン、パーフルオロヘキサン等を用いた、接触角測定よりOwens-Wendt-Kaelble法を用いて解析される、膜の表面自由エネルギーの分散項成分により、膜の良否(プレス成形に対する適否)を定量的に評価できることを見出した。
そこで、成形用ガラス素材の表面に形成した炭素を主成分とする薄膜の分散項比と形状不良率との相関について調べ、成形レンズの歩留まりが良好となる分散力成分の割合の好ましい値を探究した結果、分散項比が85%未満であるガラス素材をプレス成形に供給し続けると、金型成形面での離型タイミングが不均一になるなどして、成形品(光学レンズ等)の不良率が顕著に高くなり、歩留が低下することを見出した。本発明は、この結果をもとになされたものである。
本発明において、前記分散項成分は、成膜後のガラス素材の表面に対する、所定物質の接触角を測定することによって求めることができる。
本発明において、前記ガラス素材への炭素系膜の成膜は複数のガラス素材に対して同時に行い、前記ガラス素材の選別は成膜したロット毎に行い、前記分散項成分が85%以上のロットのみを選別して連続プレス成形を行うことが好ましい。
本発明では、ガラス素材を成形用型でプレス成形し、光学素子を製造するに際して、炭素系膜(炭素を主成分とする膜)を形成したガラス素材として、予め、炭素系膜を成膜したガラス素材表面の表面自由エネルギーの分散項成分と、前記炭素系膜を成膜したガラス素材をプレス成形したときの形状不良率との相関関係を求め、当該相関関係に基づき、表面自由エネルギーの分散項成分が85%以上のものを選別して連続プレス成形するため、クモリ、ワレ、や成形品の形状不良を生じることなく安定して光学素子を生産することができる。
(表面自由エネルギーについて)
本発明者らは、成形用ガラス素材が成形型の表面から離れるタイミング(離型性)は、成形用ガラス素材の表面に形成した薄膜の表面特性に大きく依存することを探求した。離型性を支配する表面特性を評価することは困難であるが、本発明者らは、純水、CH2I2、グリセリン、イソペンタン、パーフルオロヘキサン等を用いた、接触角測定よりOwens-Wendt-Kaelble法を用いて解析される、膜の表面自由エネルギーの分散項成分(後述の方法により分散項比として算出される)により、膜の良否(プレス成形に対する適否)を定量的に評価できることを見出した。
分散項比が大きい表面は表面における相互作用における分散成分の構成比が高く、融着やガラスの反応性の要因となる極性作用が弱い。離型は、表面における極性作用に依存し、この作用が小さいと離型は安定する。逆に、極性作用が大きくなると、離型性が不安定になり、面不、アスやクセなどの形状不良が発生する。成形用ガラス素材の表面に形成した炭素を主成分とする薄膜の分散項比と形状不良率との相関について調べた。
なお、物体表面における表面自由エネルギーは、分散力成分γsdと極性力成分γshに分解される。表面自由エネルギーの分散力成分γsdは、ファンデルワールス力すなわち分子間に働く弱い引力の中核をなす力で、無極性分子を含むすべての分子間に働く。一方、表面自由エネルギーの極性力成分γshは、水素結合に代表される極性基間の強い相互作用力のことである。
ここで「分散項比」は、表面自由エネルギーにおける分散力成分の割合であり、表面自由エネルギーは公知の接触角測定器を用いて測定することができる。即ち、上記液体の中から2種類の異なるものを用いて、測定対象の表面の濡れ角(接触角)を測定し、算定できる。
例えば、純水およびCH2I2の濡れ角測定よりOwens-Wendt-Kaelble法を用いた表面自由エネルギーの評価を以下のように行うことができる。表面自由エネルギー(γ)は、式(1)に示すように、固体又は液体の分散力(Dispersion Force)γdと固体又は液体の極性相互作用力(Polar Interaction Force)γpとの和で与えられる。(1)式を固体の表面自由エネルギー(γs)で考えると式(2)となる。ここで添字のsはSolidを表わす。
Figure 0004667930
Figure 0004667930
同様に液体では、式(3)で示され、添字LはLiquidを表す。
Figure 0004667930
膜の表面自由エネルギーは、水とCH2I2(ジヨードメタン)の2種類の液体を用い、それぞれを固体上に同量滴下し、求めた接触角から表面自由エネルギーを算出する。すなわち、Owens-Wendt-Kaelble法により、式(4)の計算式を用いた。なお、2種類の液体のγL d及びγL pはそれぞれ表1の文献値を使用し、(3)式より2種類の液体それぞれのγLを求める。
Figure 0004667930
Figure 0004667930
表1に示すように、例えば、水の接触角が104.9°、ジヨードメタンの接触角は72.0°であれば、(4)式のθに代入し、その他のエネルギー値は表1の値を用いる。その結果、式(5)、(6)で示す結果が得られる。
Figure 0004667930
Figure 0004667930
そこで、上式(6)によって得られたγs dを(5)式に代入すると、式(7)に示す結果となる。
Figure 0004667930
従ってこれら(6)及び(7)式の値を(2)式に代入することにより、
γs=21.76+0.59=22.35
固体の表面自由エネルギーγsが22.35mJ/m2と求められ、分散項比(γs d/γs)は、下記
γs=22.35mJ/m2、γs d=21.76mJ/m2
∴γs d/γs=97.36%
のとおり、97.36%と求められる。
(ガラス素材の選別方法)
炭素を主成分とする炭素系膜の成膜(形成)は、後述する蒸着法、スパッタ法、CVD法、プラズマ法またはイオンプレーティング法等の手法によって形成されるが、これらの手法によって炭素系膜が成膜されたガラス素材をそのままプレス成形工程に投じると、成膜装置、又は成膜環境の相違によって、プレス成形後の成形レンズの歩留まりに差を生じることから、上述のように、成膜後のガラス素材の表面自由エネルギーにおける分散項成分の割合に着目し、成形レンズの歩留まりが良好となる分散成分の割合の好ましい値を以下のようにして探究した。
表2に、ホウ酸塩光学ガラスからなるガラスAの成形用ガラス素材について、成形用ガラス素材表面に形成した炭素を主成分とする薄膜の分散項比とプレス成形して得たレンズを検査した結果を示す。炭素を主成分とする薄膜はアセチレンガスの熱分解CVDで形成した。膜厚は、2±1nmである。また、レンズは凸メニスカスレンズ(径φ12.2mm、コバ厚0.4mm)である。
Figure 0004667930
表2において、「分散項比*1」は、同一ロット1000ケの各トレーから5個ずつ、合計25ケをサンプリングした試料の分散項比を示し、「不良率*2」は、同一ロット毎にプレス成形した500ケを全数検査して規格値から外れた形状不良数の割合を示す。
なお、表2において、アセチレンガスの熱分解CVDで炭素を主成分とする薄膜を同一の装置で同時に形成した単位をロット1〜4とし、各ロットは、200個の素材を載置できるトレーを5個用いて1000個のガラス素材からなる。
成形されたレンズの評価項目は、クモリ、ワレ等の外観評価、およびレンズ形状評価とし、レンズ形状評価は、球面干渉計を用いて凸−球面(R=19.92mm、規格:19.8862〜19.9539)のR値を評価した。
この結果から、成形用ガラス素材の表面に形成した炭素質薄膜の分散項比が85%以上において、形状不良が飛躍的に低減することがわかる。逆に、分散項比が85%未満であるガラス素材をプレス成形に供給し続けると、金型成形面での離型タイミングが不均一になるなどして、成形品(光学レンズ等)の不良率が顕著に高くなり、歩留が低下する。
本発明は、この究明された結果をもとになされたものであり、ガラス素材表面に形成した炭素系膜(炭素を主成分とした膜)の分散項比が85%以上であるガラス素材を選別し、この選別したガラス素材を用いてプレス成形することで、成形品(光学レンズ等)の形状不良やクモリ、ワレの発生を低減することができる。すなわち、予備成形されたガラス素材の表面に炭素を主成分とする炭素系膜を成膜し、当該ガラス素材を成形型により加圧成形してガラス製品を成形するにあたり、ガラス素材の炭素系膜における表面エネルギーの分散項成分が85%以上であることを満足するか否かを判定し、満足したガラス素材のみを選別してガラス成形に供する。より具体的には、予備成形後、表面に炭素系膜を成膜したガラス素材を用意し、当該炭素系膜を成膜したガラス素材の表面自由エネルギーの分散項成分と、前記炭素系膜を成膜したガラス素材をプレス成形したときの形状不良率との相関関係を予め求め、当該相関関係に基づき、前記炭素系膜を成膜したガラス素材の表面自由エネルギー分散項成分が所定の比率以上のものを選別して連続プレス成形を行う。それ故、本発明によれば、クモリ、ワレや形状不良の発生が極めて少なく、所望の光学素子などのガラス製品を得ることができる。
ガラス素材の分散項比は、例えば、水とCH2I2(ジヨードメタン)の2種類の液体を用い、それぞれを固体上に同量滴下し、求めた接触角から表面自由エネルギーを算出し、この表面自由エネルギーから分散項比を求めることができる。
(炭素系膜について)
本発明で、炭素系膜とは、炭素を主成分とする薄膜であり、炭素以外の成分(水素など)を含有しているものを含む。
成形素材は、ガラス素材の表面に85%以上の分散項比を有する炭素を主成分とする薄膜を形成したガラス素材である。なお、炭素を主成分とする薄膜の表面自由エネルギーは60mJ/m2以下、その膜厚は0.1nm以上1μm以下、また、成膜前のガラス素材の表面自由エネルギーが60mJ/m2以上であることが好ましい。
予備成形後(成膜前)のガラス素材の表面自由エネルギーは有機系汚れの尺度となる。表面自由エネルギーが高いと有機系汚れが少なく、逆に、表面自由エネルギーが低いと有機系汚れが多い。有機系汚染が多いと、この有機系汚れを基点にして界面で反応が起こり、ガラス素材の型表面または離型膜表面への融着、特にサブμmサイズの微小な融着が多数発生し、このため、光学的な鏡面仕上を施した型表面又は離型膜表面が粗れ、凹凸が生じる。これを転写することにより、成形された光学素子にクモリなどの外観不良が生じる。また、融着した部位を基点として、光学素子のワレが生じる。したがって、炭素を形成する成形用ガラス素材の有機系汚れは少ないこと、具体的には、表面自由エネルギーが60mJ/m2以上にした成形用ガラス素材に成膜することが好ましい。
表面自由エネルギーが60mJ/m2以上である成形用ガラス素材は、上述のように精密洗浄し、有機物の汚染の少ないクリーン環境で保管し、さらには、成形用ガラス素材に表面層を形成する前に、成形用ガラス素材のロット毎に表面自由エネルギーの抜き取り検査をする。そして、表面自由エネルギーの最低値が60mJ/m2以上のロットの成形用ガラス素材のみを表面層形成工程に供する。表面自由エネルギーの最低値が60mJ/m2未満のロットの成形用ガラス素材は、再度、精密洗浄に供する。上記と同様に、あらかじめ、ロット内の表面自由エネルギーのバラツキが中央値±5mJ/m2以下、好ましくは±2mJ/m2以下であるときに、表面層を形成することが好ましい。
ガラス素材に設ける炭素を主成分とする薄膜は、ダイヤモンド、ダイヤモンド状炭素膜(以下、DLC)、水素化ダイヤモンド状炭素膜(以下、DLC:H)、テトラヘドラルアモルファス炭素膜(以下、ta-C)水素化テトラヘドラルアモルファス炭素膜(以下、ta-C:H)、アモルファス炭素膜(以下、a-C)、水素化アモルファス炭素膜(以下、a-C:H)等から選ばれる。
また、炭素を主成分とする薄膜の成膜(形成)は、蒸着法、スパッタ法、CVD法、プラズマ法またはイオンプレーティング法等の手法によって形成される。炭素を主成分とする薄膜の膜厚は、0.1nm〜1μm程度であれば良く、特に0.5nm〜100nmが好適である。膜厚が薄すぎると離型性が低下する傾向があり、膜厚が厚過ぎると融着、クモリやワレの防止効果が飽和する傾向があったり、成形用ガラス素材の表面層状態が不均一になり、バラツキが大きくなり易い。
蒸着法による炭素膜の形成は、具体的には、公知の蒸着装置を用いて、10-4Torr程度の真空雰囲気中で、炭素材料を電子ビーム、直接通電もしくはアークにより加熱し、材料から蒸発および昇華により発生する炭素蒸気を基材の上に輸送し凝縮・析出させることにより行うことができる。例えば、直接通電の場合、断面積0.1cm2程度の炭素材料に100V-50A程度の電気を通電し、炭素材料を通電加熱することができる。基材加熱温度は室温〜400℃程度が好ましい。ただし、基材のガラス転移温度(Tg)が450℃以下の場合、基材加熱の上限温度はTg-50℃とすることが好適である。
この場合、所定の膜厚に制御するためには、以下のようにすることができる。炭素膜の膜厚は、通常の光学薄膜と同様に、モニターガラス上の蒸着膜の反射率変化、透過率変化もしくはQCMによる実測から測定し、シャッターの開閉により炭素膜厚を制御することができる。
CVD法による場合には、市販の熱分解CVD装置を用いて、10-1Torr程度まで排気した反応容器内を500℃程度まで加熱し、この容器内にアセチレンガス等の炭化水素ガスを20分間〜2時間程度かけて数10Torr程度まで導入することにより、ガラス素材表面に炭素を凝縮・析出させることにより炭素系薄膜を形成することができる。
前記炭化水素ガスとしては、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロピレン、ベンゼン蒸気、ヘキサン蒸気などを用いることができる。
プラズマ法による場合には、市販のプラズマ分解CVD装置を用いて、10-1Torr程度まで排気した反応容器に、Arガス等の不活性ガスで希釈したアセチレンガス等の炭化水素ガスを導入し、500W程度の高周波パワー(13.56MHz)を反応容器に印加することにより、炭化水素分子を炭素と水素のプラズマに分解し、ガラス素材表面に炭素を凝縮・析出させることにより炭素系薄膜を形成することができる。
前記炭化水素ガスとしては、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロピレン、ベンゼン蒸気、ヘキサン蒸気などを用いることができる。
スパッタ法による場合には、公知のスパッタ装置を用いて、10-2〜10-3Torr程度のアルゴン雰囲気中で、炭素ターゲット材料をアルゴンイオンでスパッタリングし、スパッタされた炭素粒子を輸送し、基材表面上に炭素粒子を析出して炭素薄膜を形成することができる。基材加熱温度は室温〜400℃程度が好ましい。ただし、基材のガラス転移温度(Tg)が450℃以下の場合、基材加熱の上限温度はTg-50℃とすることが好適である。炭素の膜厚は、通常の光学薄膜と同様に、モニターガラス上のスパッタ膜の反射率もしくは透過率の変化から測定し、シャッターの開閉により炭素膜厚を制御することができる。
イオンプレーティング法による場合には、例えば、公知のイオンプレーティング装置を用いて、10-2〜10-4Torr程度のアルゴン雰囲気中で、炭素材料を電子ビームにより加熱し、材料から蒸発および昇華により発生する炭素蒸気を、負にバイアスされた基材上に蒸着させることにより炭素薄膜を形成することができる。フィラメントと基板電極との間のグロー放電により、蒸着の付着強度や均一性が向上する。基材加熱温度は室温〜400℃程度が好ましい。ただし、基材のガラス転移温度(Tg)が450℃以下の場合、基材加熱の上限温度はTg-50℃とすることが好適である。この場合、所定の膜厚の制御は、上記蒸着法と同様に行うことができる。
(光学素子の製造方法)
本発明のガラス製品の製造方法は、上記で説明した予備成形されたガラス素材を加熱軟化し、次いで成形型により加圧成形する。ガラス素材の加圧成形は、公知の手段で行うことができる。例えば、ガラス素材を精密に形状加工した成形型に導入し、その粘度が108〜1012ポイズ相当となる温度に加熱、軟化し、これを、押圧することによって、型の成形面をガラス素材に転写する。もしくは、あらかじめ、その粘度が108〜1012ポイズ相当の温度に昇温したガラス素材を、精密に形状加工した成形型に導入し、これを、押圧することによって、型の成形面をガラス素材に転写する。成形時の雰囲気は、非酸化性とすることが好ましい。この後、型とガラス素材を、冷却し、好ましくはTg以下の温度となったところで、離型し、成形された光学素子を取出す。
成形型の型母材としては、SiCのほか、WC、TiC、TaC、BN、TiN、AlN、Si34、SiO2 、Al23 、ZrO2 、W、Ta、Mo、サーメット、サイアロン、ムライト、カーボン・コンポジット(C/C)、カーボンファイバー(CF)、WC−Co合金等から選ばれた材料等を用いることができる。
さらに用いる成形型の成形面には、離型膜が形成されていることが好ましい。例えば、ダイヤモンド状炭素膜(以下、DLC)、水素化ダイヤモンド状炭素膜(以下、DLC:H)、テトラヘドラルアモルファス炭素膜(以下、ta-C)水素化テトラヘドラルアモルファス炭素膜(以下、ta-C:H)、アモルファス炭素膜(以下、a-C)、水素化アモルファス炭素膜(以下、a-C:H)等から選ばれる炭素系被膜、Si3N4,TiAlN,TiCrN,CrN,CrXNY,AlN,TiN等の窒化物被膜もしくは複合多層膜または積層膜(AlN/CrN,TiN/CrN等)、Pt-Au,Pt-Ir-Au,Pt-Rh-Auなど白金を主成分とする貴金属合金被膜などの膜を用いることもできる。
離型膜の成膜は、DC−プラズマCVD法、RF−プラズマCVD法、マイクロ波プラズマCVD法、ECR−プラズマCVD法、光CVD法、レーザーCVD法等のプラズマCVD法、イオンプレーティング法などのイオン化蒸着法、スパッタ法、蒸着法やFCA(Filtered Cathodic Arc)法等の手法によっても良い。
本発明を適用して製造されるガラス製品は、例えば、レンズ、ミラー、グレーティング、プリズム、マイクロレンズ、積層型回折光学素子等の光学素子であることができ、光学素子以外のガラス成形品であることもできる。
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。表3には、以下の評価に用いた実施例および比較例の条件、およびその評価結果を示してある。なお、表3中、「分散項比の値」とは、作成した試料の集合全体における分散項比の最低値を意味し、「分散項比の最高値が85%未満のロット割合」は、作成した試料において、分散項比の最高値が85%未満のロットが発生した割合を示してある。以下の評価では、実施例として、このような試料(ロット)から、分散項比が85%以上のもののみを選び出して用いた場合であり、比較例は、作成した試料(ロット)を選別せず、そのまま用いた場合である。
Figure 0004667930
[実施例1]
光学素子成形素材のガラス素材として、ホウ酸塩ガラスA(ガラス転移温度が520℃、屈折率が1.69350、線膨張係数が69×10-7/℃である光学ガラス)を用いて、市販の光学用精密洗浄機により、湿式洗浄法にてガラス素材を高精度に洗浄した。
このガラス素材を1トレーに100個ずつ載置し、15トレー(合計1500個のガラス素材)を同一の成膜装置内に設置し、この成形素材の表面に、アセチレンガスの熱分解CVD法にてa-C:Hを膜厚2±1nm成膜した。
アセチレンガスの熱分解によるCVD法は、以下のように行った。石英製のトレーにガラス素材を載せ、ベルジャー(反応容器)内に配置した。ベルジャー内を真空ポンプにより0.5torr以下に排気した後、加熱し480℃に維持した。ベルジャー内に窒素ガスを導入しながら真空ポンプにより排気を行うことにより、160torrに保ち、30分間パージを行った後、窒素ガスの導入を止めた。更に、ベルジャー内を真空ポンプで0.5torr以下に排気した後、アセチレンガスを20分間で40torr導入し、導入を止めた。そして冷却した後、窒素ガスで希釈しながら大気圧に戻し、ガラス素材を取り出した。
純水およびCH2I2の濡れ角測定よりOwens-Wendt-Kaelbleを用いて行った表面自由エネルギーの評価を行った。すなわち、15枚のトレーからそれぞれ任意に5個ずつガラス素材をサンプリングし、各ガラス素材の表面自由エネルギーに基づいて分散項比を求めた結果、13枚のトレーについては分散項比の最低値は91%以下であり、2枚のトレーについては分散項比が85%未満のガラス素材(最低値:81%)を含んでいたため、これら2枚のトレーのガラス素材は次のプレス成形工程への投入を中止し、上記13枚のトレーのガラス素材のみを次工程へ投入した。
続いて、前記のように選別したガラス素材を、窒素ガス雰囲気中で610℃まで加熱して成形型により150kg/cm2の圧力で1分間加圧する。圧力を解除した後、冷却速度を−50℃/minで480℃になるまで冷却し、その後は−200℃/min以上の速度で冷却を行い、プレス成形物の温度が200℃以下に下がった後、成形物を取り出した。なお、成形型として、CVD法により作製した多結晶SiCの成形面をRmax=18nmに鏡面研磨したものを用いた後、成形面に離型膜として、イオンプレーティング法成膜装置を用いて、DLC:H膜を成膜したものを用いた。
同一型で径16mmφ、コバ厚0.5mmの凸メニスカスレンズを連続プレスし、プレス回数1000回までのレンズのクモリ、ワレ等の外観は拡大鏡により、形状は第1面(球面)を干渉計、第2面(非球面)を触針式の形状測定器により検査した。外観検査では限度サンプルと比較し、形状検査では干渉縞の形状や、測定器による測定値により良否を評価したが、外観および形状についていずれも許容範囲内にあり、不良は検出されなかった。
[比較例1]
上記実施例1において、ガラス素材の表面自由エネルギーに基づいて分散項比を求め、この分散項比が85%未満のガラス素材を含んだ2枚のトレーに置かれた全てのガラス素材について、プレス成形工程への投入を中止したが、比較例1では、選別によってプレス成形に不適とした2枚のトレーから選んだ150個のガラス素材を、上記実施例1と同条件で連続プレス成形して、150個の凸メニスカスレンズを得た。なお、これらのガラス素材について、プレス成形前に、各トレーから20個ずつ表面自由エネルギーに基づいて分散項比を求めたところ、6個(30%)のガラス素材が85%未満の分散項比(最低値は78%)であった。
次いで、成形後のレンズについて、上記実施例1と同様の検査を全てのレンズに対して行ったところ、42個(外観不良が17個、形状不良が25個)の不良(不良率28%)が検出された。
[実施例2]
アセチレンガスの熱分解によるCVD法を、ベルジャー内を真空ポンプにより20torrに排気した後、加熱し440℃に維持しておこなった。実施例1と同様に、CVD法成膜後のガラス素材について、純水およびCH2I2の濡れ角測定よりOwens-Wendt-Kaelble法を用いて表面自由エネルギーを評価したところ、表面自由エネルギーの最高値は60mJ/m2以下であり、分散項比の最低値は80%であり、本請求範囲である85%以上からはずれる85%未満のロットは22%あった。そこで、これらの分散項比が85%未満のガラス素材を含むトレーの全てのガラス素材を除き、実施例1と同様に、連続プレスした。1000回の連続プレスを行った結果、形状不良の発生率は2%であった。
[実施例3〜4]
実施例2と同様に、炭素を主成分とする薄膜を形成したガラス素材の分散項比の最低値が85%以上であるトレー(ロット)のみを選別して、同一条件で連続プレスした。プレス回数1000回までの光学素子の形状を評価した結果、表3のとおり、形状不良の発生率は5%未満と良好もしくは極めて良好であった。
上記実施例では、同一装置内に複数のトレーをセットし、各トレーごとのガラス素材をサンプリングして、それらの表面自由エネルギーから分散項比を求め、その分散項比が85%以上であるか否かの判別を実施し、85%以上のトレー上のガラス素材をプレス成形に適するとみなして、プレス成形工程に供する例を示したが、トレーごと分散項比の大差が生じないことが検証できた場合は、各処理単位(ロット)ごとのガラス素材をサンプリングして、測定値が上記条件を満たすロットはすべてプレス成形に適するとみなすこともできる。

Claims (3)

  1. ガラス素材を加熱により軟化させ、プレス成形する光学素子の製造方法において、
    予備成形後、表面に炭素系膜を成膜したガラス素材を用意し、
    当該炭素系膜を成膜したガラス素材表面の表面自由エネルギーの分散項成分と、前記炭素系膜を成膜したガラス素材をプレス成形したときの形状不良率との相関関係を予め求め、
    当該相関関係に基づき、前記炭素系膜を成膜したガラス素材の表面自由エネルギーにおける分散項成分が85%以上のものを選別して連続プレス成形を行うことを特徴とする光学素子の製造方法。
  2. 請求項1において、
    前記分散項成分は、成膜後のガラス素材の表面に対する、所定物質の接触角を測定することによって求めることを特徴とする光学素子の製造方法。
  3. 請求項1または2において、
    前記ガラス素材への炭素系膜の成膜は複数のガラス素材に対して同時に行い、前記ガラス素材の選別は成膜したロット毎に行い、前記分散項成分が85%以上のロットのみを選別して連続プレス成形を行うことを特徴とする光学素子の製造方法。
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