JP4670144B2 - エレクトレット加工品の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はエレクトレット加工品の製造方法に関し、さらに詳しくは、高品質のエレクトレット加工品を低コストで生産可能にするエレクトレット加工品の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、低圧損のエアフィルター用材料として、エレクトレット加工された繊維シートが優れた性能を有するため使用されている。このエレクトレット化繊維シートの製造方法としては、合成繊維不織布等の繊維シートに高電圧を印加し、コロナ放電によりエレクトレット化する方法(特開昭61−102476号公報等参照)や、フィルムシートにワイヤ電極により高電圧を印加し、同じくコロナ放電によりエレクトレット化した後、そのフィルムシートを繊維化して不織布にする方法(特公昭57−14467号公報等参照)などが知られている。
【0003】
しかし、図4に示すように、従来のエレクトレット化方法は、いずれもアース電極21の上に高分子材料シートSを裁置するか又は移動させながら、その表面に直流高電圧発生装置23の高電圧を針状或いはワイヤー電極22から印加し、コロナ放電によりエレクトレット化するものである。そのため、高電圧印加電極22とアース電極21の間隙精度等によりムラを生じやすく、エレクトレット化シートに荷電ムラが出来たり、また火花放電によりシートが損傷するという問題があった。
【0004】
さらに、高電圧設備は一般に高価である上に、安全維持管理のために費用がかかるため、コスト高になるという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記従来技術の諸問題を解消し、高品質、高性能のエレクトレット加工品を低コストで生産可能にするエレクトレット加工品の製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決する本発明のエレクトレット加工品の製造方法は、イオン交換水、蒸留水又は逆浸透膜の濾過水である水が充填された浸漬槽の中に設置され、かつ、外周面が網面で構成されているとともに、幅方向に延長するスリット状の噴射口を有するノズルを内設する回転ロールの前記外周網面に、非導電性繊維シートを密着させて走行させながら、該ノズルの噴射口から高圧で前記水を該回転ロールの外周網面を通過するように外側へ噴出させることにより、前記高圧の水を前記非導電性繊維シートの前記回転ロール外周網面から反対面に透過させて該非導電性繊維シートに該水を浸透させ、次いで該非導電性繊維シートを乾燥してエレクトレット化繊維シートにすることを特徴とするものである。
【0007】
このように非導電性繊維シートに高圧水を透過させることにより繊維シート全体に水を満遍なく浸透させるので、これを乾燥するだけで高品質、高性能のエレクトレット化繊維シートにすることができる。しかも、製造設備としては、水の噴射設備と乾燥設備などであるので、従来の高電圧発生設備に比べ低廉であり、かつ安全維持管理を低コストで行うことができる。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明に使用する非導電性繊維シートは、非導電性を有する繊維材料であれば特に限定されない。例えば、合成繊維或いは天然繊維の織物、編み物、不織布等の繊維シートを挙げることができる。これらの中でも特に合成繊維シートが好ましい。また、エアフィルター用の場合には、合成繊維不織布が好ましく、中でも高性能フィルター用には、メルトブロー不織布を使用することが好ましい。
【0009】
非導電性繊維シートの素材は、非導電性を有する材料であれば特に限定されるものではない。好ましくは、体積抵抗率が1012・Ω・cm以上、さらに好ましくは1014・Ω・cm以上の素材を主体とするものを使用するとよい。
【0010】
例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ乳酸等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリフェニレンサルファイト、フッ素系樹脂、およびこれらの混合物などを挙げることができる。これらの中でも、ポリオレフィンまたはポリ乳酸を主体とするものはエレクトレット性能の点から好ましく、さらにポリプロピレンを主体とするものは一層好ましい。
【0011】
本発明に使用する非導電性繊維シートには、ヒンダードアミン系添加剤又はトリアジン系添加剤を少なくとも1種配合することが好ましい。この添加剤を非導電性繊維シートに含有させることにより、特に高いエレクトレット性能を保持させることが可能になるからである。
【0012】
上記2種類の添加剤のうちヒンダードアミン系添加剤としては、ポリ〔((6−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)((2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ))(チバガイギー製、キマソープ944LD)、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物(チバガイギー製、チヌピン622LD)、2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)(チバガイギー製、チヌピン144)などが挙げられる。
【0013】
また、トリアジン系添加剤としては、前述のポリ〔((6−(1,1,3,3,−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル)((2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ)ヘキサメチレン((2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ))(チバガイギー製、キマソープ944LD)、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−((ヘキシル)オキシ)−フェノール(チバガイギー製、チヌピン1577FF)などを挙げることができる。これらのなかでも特にヒンダードアミン系添加剤を使用することが好ましい。
【0014】
非導電性繊維シートには、上記添加剤の他に、熱安定剤、耐候剤、重合禁止剤等の一般にエレクトレット加工品の非導電性繊維シートに使用されている公知の添加剤を添加するようにしてもよい。
【0015】
上記ヒンダードアミン系添加剤又はトリアジン系添加剤の添加量としては、特に限定されないが、好ましくは0.5〜5重量%の範囲にするとよく、更に好ましくは0.7〜3重量%の範囲にするとよい。添加量が0.5重量%未満では、目的とする高レベルのエレクトレット性能を得ることが難しくなる。また、5重量%を超えるほど多く配合すると製糸性や製膜性を悪くし、かつコスト的にも不利になるので好ましくない。
【0016】
本発明のエレクトレット加工品の製造方法は、上述した非導電性繊維シートに水を十分な浸透状態にした後、この浸透状態の繊維シートを乾燥する必要がある。このように水を非導電性繊維シート全体に満遍なく浸透させた状態にするため、高圧水によって非導電性繊維シートに透過させる。水を強制的に非導電性繊維シートを透過させることで、繊維シート全体に満遍なく浸透した状態になるので、この浸透状態になった非導電性繊維シートを乾燥すると、均一かつ高密度に電荷が帯電した高品質のエレクトレット化繊維シートを得ることができる。これら一連の高圧水の透過、乾燥の各工程は、連続的に行ってもよく、バッチ式で行ってもよい。
【0017】
非導電性繊維シートに対する水の圧力は、水を非導電性繊維シートの片面から反対側へ透過させる大きさを有するものであれば特に限定されない。繊維シートの目付や厚さ等によるが、例えば100〜3000kPaの範囲が好ましい。
【0018】
水が浸透後の非導電性繊維シートの乾燥方法は、従来公知の方法がいずれも使用可能である。例えば、熱風乾燥法、真空乾燥法、自然乾燥法等の方法を適用することができる。なかでも熱風乾燥法は、連続処理が可能であるため好ましい。熱風乾燥法の場合、乾燥温度としてはエレクトレットを失活させない程度の温度にする必要がある。好ましくは120℃以下、より好ましくは100℃以下、さらに好ましくは80℃以下にするのがよい。また、熱風乾燥前に、予備乾燥として、ニップロール、吸水ロール、サクション吸引等によって余剰の水分を取り除くようにすると尚良い。
【0019】
本発明において、使用する水は、液体フィルター等で汚れを除去したものであって、出来るだけ清浄なものを使用することが好ましい。特にイオン交換水、蒸留水、逆浸透膜を透過させた濾過水等の純水の使用が好ましい。また、純水としてのレベルは、導電率で103 μS/m以下が好ましく、さらに好ましくは102 μS/m以下であるものがよい。
【0020】
図1は、本発明のエレクトレット加工品の製造方法を実施する装置に対する参考態様例としての装置を示したものである。この装置は浸漬槽が使用されていない点で本発明方法を実施する装置とは相違するが、他はほぼ同様である。
【0021】
図1の装置において、1は高圧水Wを噴射するノズルで、幅方向に延長するスリット状の噴射口を有している。このノズル1は、外周面が網面で構成された回転ロール10の内側に設けられ、高圧水を網面を透過するように外側へ噴出するようになっている。回転ロール10は、送りローラ2,2の間に、非導電性繊維シートSを屈曲させ巻き付かせるように設置されている。このようにノズル1を内設した回転ロール10は、図示のように1箇所のみに限定されず、非導電性繊維シートSの移送方向に複数箇所に連続配置するようにしてもよい。
【0022】
被加工材の非導電性繊維シートSは、送りローラ2,2間を回転ロール10に密着状態になって移送されながら、ノズル1からの高圧水Wを片面に受けるが、網状のロール面に密着状態になっているため、高圧水Wは繊維シートSの反対側へ効率よく透過し、繊維シート全体が浸透状態になる。水が浸透状態になった非導電性繊維シートSは、ニップローラ3で余剰の水が絞り出された後、乾燥装置4に移送されるようになっている。
【0023】
乾燥装置4には複数のガイドローラ5がジグザグ状に内設され、供給口4aから加熱空気を供給し、排気口4bから排出することにより内部を加熱するようになっている。この乾燥装置4に進入した非導電性繊維シートSは、ガイドローラ5をジグザグ状に走行する間に乾燥され、エレクトレット化された繊維シートになって搬出される。このようにして得られたエレクトレット化繊維シートは、高圧水Wの透過作用により水が繊維シート全体に満遍なく浸透状態になっているで、繊維シート全体に高い電荷を均一分布した高品質、高性能のエレクトレット加工品になる。
【0024】
図2は、本発明のエレクトレット加工品の製造方法を実施する装置を例示する。
【0025】
図2の本発明のエレクトレット加工品の製造方法を実施する装置は、図1の装置におけるノズル1を内設した回転ロール10を浸漬槽6の中に設けたものであり、その浸漬槽6には水Wが充填されている。
【0026】
被加工材の非導電性繊維シートSは、前後の送りローラ2,2で移送されながら、浸漬槽6内に浸漬され、回転ロール10の外周網面に密着しながら移動する間にノズル1から高圧水Wを受ける。その高圧水WはシートSの反対側へ透過するため、繊維シート全体が水Wにより浸透状態になる。
【0027】
この装置の場合には、非導電性繊維シートSは浸漬槽6に浸漬された状態で高圧水Wの作用を受けるため、図1の場合よりも一層高い浸透状態にすることができる。以後は、図1の装置と同様に、ニップロール機能をもつ送りロール3により余剰の水を除去されたのち乾燥装置4に送られて乾燥され、エレクトレット化した繊維シートになる。
【0028】
このようにして得られたエレクトレット化繊維シートは、図1の装置の場合よりも水が一層高い浸透状態になるように処理されているため、さらに優れた高品質、高性能のエレクトレット加工品にすることができる。
【0029】
【実施例】
以下に説明する実施例において使用する特性値は、次の測定法により測定したものである。
【0030】
〔捕集性能〕
図3に示す捕集性能測定装置で測定した。この捕集性能測定装置は、測定サンプルMをセットするサンプルホルダー11の上流側にダスト収納箱12を連結し、下流側に流量計13、流量調整バルブ14、ブロワ15を連結している。また、サンプルホルダー11にパーテクルカウンター16が設けられ、このパーテクルカウンター16を使用し、切替コック17を介して、測定サンプルMの上流側のダスト個数と下流側のダスト個数をそれぞれ測定することができる。
【0031】
捕集性能の測定に当たっては、径0.3μmのポリスチレン標準ラテックスパウダーをダスト収納箱12に充填し、サンプルMをホルダー11にセットし、風量をフィルター通過速度が1.5m/分になるように流量調整バルブ14で調整し、ダスト濃度を1万〜4万個/2.83×10−4m3 (0.01ft3 )の範囲で安定させ、サンプルMの上流のダスト個数Dおよび下流のダスト個数dをパーティクルカウンター16(リオン社製、KC−01B)で5回測定し、JIS K−0901に基づいて下記計算式にて捕集性能(%)を求めた。
【0032】
捕集性能(%)=〔1−(d/D)〕×100
ただし、
d:下流のダスト個数
D:上流のダスト個数
〔平均繊維径〕
SEM写真により拡大した繊維100本について繊維径を測定し、その平均値を求めた。
【0033】
実施例1
耐候剤としてトリアジン系添加剤(チバガイギー製、キマソープ944)を1%含有し、かつメルトインデックスMIが700のポリプロピレンを原料とし、通常のメルトブロー法により、目付40g/m2 、平均繊維径2.0μmのメルトブロー不織布を作製した。次いで、このメルトブロー不織布を、図2のように浸漬槽中の回転ロールで移送しながら、片面から純水を高圧で透過させることにより水を浸透させたのち、乾燥装置で乾燥してエレクトレットメルトブロー不織布にした。
【0034】
得られたエレクトレット化メルトブロー不織布の捕集性能を測定したところ、99.52%であった。
【0035】
比較例1
実施例1と同じメルトブロー不織布を用い、純水中に1分間浸漬した後、水切りして乾燥した。
【0036】
得られたメルトブロー不織布の捕集性能を測定したところ、56.3%であり、低いレベルのものであった。
【0037】
比較例2
実施例1と同じメルトブロー不織布の捕集性能を直接測定したところ、57.5%と低いものであった。
【0038】
【発明の効果】
本発明の製造方法によれば、非導電性繊維シートに高圧水を透過させることにより繊維シート全体に水を満遍なく浸透させるので、これを乾燥するだけで高品質、高性能のエレクトレット化繊維シートにすることができる。しかも、製造設備としては、水の噴射設備と乾燥設備などであるので、従来の高電圧発生設備に比べて低廉であり、かつ安全維持管理を低コストで行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のエレクトレット加工品の製造方法を実施する装置に対する参考態様例としての装置を示したものである。この装置は浸漬槽が使用されていない点で本発明方法を実施する装置とは相違する。
【図2】 本発明のエレクトレット加工品の製造方法を実施する装置の例を示す概略図である。
【図3】 本発明の実施例で用いた捕集性能測定装置を示す概略図である。
【図4】 従来の高電圧印加によるエレクトレット化方法を示す概略図である。
【符号の説明】
1 ノズル
2 送りロール
3 ニップロール
4 乾燥装置
6 浸漬槽
10 回転ロール
S 非導電性繊維シート
W 水
Claims (6)
- イオン交換水、蒸留水又は逆浸透膜の濾過水である水が充填された浸漬槽の中に設置され、かつ、外周面が網面で構成されているとともに、幅方向に延長するスリット状の噴射口を有するノズルを内設する回転ロールの前記外周網面に、非導電性繊維シートを密着させて走行させながら、該ノズルの噴射口から高圧で前記水を該回転ロールの外周網面を通過するように外側へ噴出させることにより、前記高圧の水を前記非導電性繊維シートの前記回転ロール外周網面から反対面に透過させて該非導電性繊維シートに該水を浸透させ、次いで該非導電性繊維シートを乾燥してエレクトレット化繊維シートにすることを特徴とするエレクトレット加工品の製造方法。
- 前記非導電性繊維シートがヒンダードアミン系添加剤或いはトリアジン系添加剤を0.5〜5重量%含有している請求項1に記載のエレクトレット加工品の製造方法。
- 前記非導電性繊維シートが合成繊維からなる繊維シートである請求項1又は2に記載のエレクトレット加工品の製造方法。
- 前記合成繊維からなる繊維シートがメルトブロー不織布である請求項3に記載のエレクトレット加工品の製造方法。
- 前記非導電性繊維シートがポリオレフィンを主体に構成されている請求項1、2、3又は4に記載のエレクトレット加工品の製造方法。
- 前記ポリオレフィンがポリプロピレンを主体に構成されている請求項5に記載のエレクトレット加工品の製造方法。
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