以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施の形態である変速制御装置によって制御される無段変速機10を示すスケルトン図である。図1に示すように、この無段変速機10はベルト式無段変速機であり、エンジン11に駆動されるプライマリ軸12と、これに平行となるセカンダリ軸13とを有している。プライマリ軸12とセカンダリ軸13との間には変速機構14が設けられており、プライマリ軸12の回転は変速機構14を介してセカンダリ軸13に伝達され、セカンダリ軸13の回転は減速機構15およびディファレンシャル機構16を介して左右の駆動輪17,18に伝達される。
プライマリ軸12には変速プーリとしてのプライマリプーリ20が設けられており、このプライマリプーリ20はプライマリ軸12に一体となった固定シーブ20aと、これに対向してプライマリ軸12に軸方向に摺動自在となって装着される可動シーブ20bとを有している。また、セカンダリ軸13には締付プーリとしてのセカンダリプーリ21が設けられており、このセカンダリプーリ21はセカンダリ軸13に一体となった固定シーブ21aと、これに対向してセカンダリ軸13に軸方向に摺動自在となって装着される可動シーブ21bとを有している。プライマリプーリ20とセカンダリプーリ21には駆動ベルト22が巻き付けられており、プライマリプーリ20とセカンダリプーリ21とのプーリ溝幅を変化させることにより、駆動ベルト22の巻き付け径を無段階に変化させることが可能となっている。駆動ベルト22のプライマリプーリ20に対する巻き付け径をRpとし、セカンダリプーリ21に対する巻き付け径をRsとすると、無段変速機10の変速比はRs/Rpとなる。
プライマリプーリ20のプーリ溝幅を変化させるために、プライマリ軸12にはプランジャ23が固定され、可動シーブ20bにはプランジャ23の外周面に摺動自在に接触するシリンダ24が固定され、プランジャ23とシリンダ24とによって作動油室25が区画されている。同様に、セカンダリプーリ21のプーリ溝幅を変化させるために、セカンダリ軸13にはプランジャ26が固定され、可動シーブ21bにはプランジャ26の外周面に摺動自在に接触するシリンダ27が固定され、プランジャ26とシリンダ27とによって作動油室28が区画されている。それぞれのプーリ溝幅は、プライマリ側の作動油室25に供給されるプライマリ圧Ppと、セカンダリ側の作動油室28に供給されるセカンダリ圧Psとを調圧することによって制御されている。
また、プライマリプーリ20にエンジン動力を伝達するため、クランク軸11aとプライマリ軸12との間にはトルクコンバータ30および前後進切換機構31が設けられている。トルクコンバータ30はクランク軸11aに連結されるポンプシェル30aとこれに対面するタービンランナ30bとを備えており、タービンランナ30bにはタービン軸32が連結されている。さらに、トルクコンバータ30内には、走行状態に応じてクランク軸11aとタービン軸32とを締結するためのロックアップクラッチ33が組み込まれている。
前後進切換機構31は、ダブルピニオン式の遊星歯車列34、前進用クラッチ35および後退用ブレーキ36を備えており、前進用クラッチ35や後退用ブレーキ36を作動させることによってエンジン動力の伝達経路が切り換えられるようになっている。前進用クラッチ35および後退用ブレーキ36を共に開放すると、タービン軸32とプライマリ軸12とは切り離され、前後進切換機構31はプライマリ軸12に動力を伝達しないニュートラル状態に切り換えられる。また、後退用ブレーキ36を開放した状態のもとで前進用クラッチ35を締結すると、タービン軸32の回転がそのままプライマリプーリ20に伝達されることになり、前進用クラッチ35を開放した状態のもとで後退用ブレーキ36を締結すると、逆転されたタービン軸32の回転がプライマリプーリ20に伝達されることになる。
図2は無段変速機10の油圧制御系および電子制御系を示す概略図である。図2に示すように、プライマリプーリ20やセカンダリプーリ21に作動油を供給するため、無段変速機10にはエンジン11に駆動される油圧供給源としてのオイルポンプ40が設けられている。このオイルポンプ40の吐出口に接続されるライン圧路41にはライン圧制御弁42が接続されており、ライン圧制御弁42によって油圧制御回路の基本油圧となるライン圧PLが調圧されている。また、ライン圧路41は分岐するようになっており、セカンダリプーリ21に向けて延びる一方のライン圧路41aはセカンダリ圧制御弁43に接続され、プライマリプーリ20に向けて延びる他方のライン圧路41bはアップシフト弁44に接続されている。さらに、アップシフト弁44から作動油室25に向けて延びるプライマリ圧路45には分岐油路46が形成されており、この分岐油路46にはダウンシフト弁47が接続されている。
セカンダリ側の作動油室28に供給されるセカンダリ圧Psはセカンダリ圧制御弁43を介して調圧されており、このセカンダリ圧制御弁43は後述する目標変速比や入力トルクに基づいて制御されている。このようなセカンダリ圧Psをセカンダリプーリ21に供給することにより、セカンダリプーリ21は駆動ベルト22の滑りを抑制するように締め付け動作を行うようになっている。つまり、クランプ圧制御弁として機能するセカンダリ圧制御弁43により、セカンダリ圧Psは駆動ベルト22の張力を制御するクランプ圧として調圧されることになる。また、プライマリ側の作動油室25に供給されるプライマリ圧Ppは、アップシフト弁44によって引き上げられる一方、ダウンシフト弁47によって引き下げられており、アップシフト弁44やダウンシフト弁47は目標変速比に基づいて制御される。このようなプライマリ圧Ppをプライマリプーリ20に供給することによって、プライマリプーリ20は駆動ベルト22の巻き付け径を変化させるようにプーリ溝幅を制御することになる。
また、ライン圧制御弁42とセカンダリ圧制御弁43とは、ライン圧PLやセカンダリ圧Psの上限圧力を設定する減圧弁となっており、ライン圧PLやセカンダリ圧Psの上限圧力は、ライン圧制御弁42やセカンダリ圧制御弁43に供給されるパイロット圧P1,P2の大きさに応じて制御される。つまり、パイロット弁(第1パイロット弁)51からライン圧制御弁42とセカンダリ圧制御弁43との双方に入力されるパイロット圧P1や、パイロット弁 (第2パイロット弁) 52からライン圧制御弁42に入力されるパイロット圧P2を調圧することにより、ライン圧PLやセカンダリ圧Psの上限圧力を制御することが可能となっている。
さらに、アップシフト弁44とダウンシフト弁47とは、ポート間の連通状態を制御する流量制御弁となっており、ポート間の連通状態はパイロット圧の大きさに応じて制御されている。つまり、パイロット弁53からアップシフト弁44に入力されるパイロット圧P3を調圧することにより、ライン圧路41bとプライマリ圧路45との連通状態を制御することができ、プライマリプーリ20に供給されるプライマリ圧Ppを引き上げることが可能となる。一方、パイロット弁54からダウンシフト弁47に入力されるパイロット圧P4を調圧することにより、プライマリ圧路45と排出油路55との連通状態を制御することができ、プライマリプーリ20に供給されるプライマリ圧Ppを引き下げることが可能となっている。
なお、ライン圧制御弁42、アップシフト弁44、ダウンシフト弁47を制御するパイロット弁52〜54は、ソレノイドに対するデューティ比を制御することによってパイロット圧P2〜P4を調圧するデューティソレノイドバルブとなっている。また、ライン圧制御弁42およびセカンダリ圧制御弁43を制御するパイロット弁51は、ソレノイドに対する電流値を制御することによってパイロット圧P1を調圧するリニアソレノイドバルブとなっている。さらに、パイロット弁52〜54は非通電時に遮断される常閉式のパイロット弁であり、パイロット弁51は非通電時に連通する常開式のパイロット弁である。
これらのパイロット弁51〜54に向けて制御信号を出力し、無段変速機10の変速制御を実行するCVT制御ユニット60は、図示しないマイクロプロセッサ(CPU)を備えており、このCPUにはバスラインを介してROM、RAMおよびI/Oポートが接続される。ROMには制御プログラムや各種マップデータなどが格納されており、RAMにはCPUで演算処理したデータが一時的に格納されるようになっている。また、I/Oポートを介してCPUには各種センサから車両の走行状態を示す検出信号が入力される。
CVT制御ユニット60に検出信号を入力する各種センサとしては、プライマリプーリ20の回転数を検出するプライマリ回転数センサ61、セカンダリプーリ21の回転数を検出するセカンダリ回転数センサ62、プライマリ圧路45に設けられてプライマリ圧Ppを検出するプライマリ圧センサ63、セカンダリ圧路48に設けられてセカンダリ圧Psを検出するクランプ圧センサとしてのセカンダリ圧センサ64、アクセルペダルのアクセル開度を検出するアクセルペダルセンサ65、車速を検出する車速センサ66、スロットルバルブのスロットル開度を検出するスロットル開度センサ67、エンジン回転数を検出するエンジン回転数センサ68などがある。また、CVT制御ユニット60にはエンジン制御ユニット69が接続されており、無段変速機10とエンジン11とは相互に協調して制御される。
以下、CVT制御ユニット60による無段変速機10の変速制御について説明する。図3はCVT制御ユニット60の変速制御系を示すブロック図である。図3に示すように、CVT制御ユニット60は、目標プライマリ圧Ppを算出するため、目標プライマリ回転数算出部70、目標変速比算出部71、油圧比算出部72、目標プライマリ圧算出部73を備えている。目標プライマリ回転数算出部70は、車速Vとスロットル開度Toに基づいて変速特性マップを参照することにより目標プライマリ回転数Npを算出し、目標変速比算出部71は、目標プライマリ回転数Npと実セカンダリ回転数Ns’とに基づいて目標変速比iを算出する。次いで、油圧比算出部72は、目標変速比iに対応する目標プライマリ圧Ppと目標セカンダリ圧Psとの油圧比(Pp/Ps)を算出し、目標プライマリ圧算出部73は、この油圧比に目標セカンダリ圧Psを乗算することにより目標プライマリ圧Ppを算出する。
また、CVT制御ユニット60は、目標プライマリ圧Ppをフィードバック制御するため、実変速比算出部74、フィードバック値算出部75、加算部76を備えている。実変速比算出部74は、実プライマリ回転数Np’と実セカンダリ回転数Ns’とに基づいて実変速比i’を算出し、フィードバック値算出部75は、実変速比i’と目標変速比iとに基づいてフィードバック値を算出する。次いで、加算部76において目標プライマリ圧Ppにフィードバック値が加算され、目標プライマリ圧Ppはフィードバック制御される。そして、フィードバック制御された目標プライマリ圧Ppに基づきパイロット弁52〜54に対して制御信号が出力され、プライマリプーリ20は目標変速比に向けてプーリ溝幅を調整することになる。
さらに、CVT制御ユニット60は、目標セカンダリ圧Psを算出するため、入力トルク算出部77、必要セカンダリ圧算出部78、目標セカンダリ圧算出部79を備えている。入力トルク算出部77は、エンジン回転数Neとスロットル開度Toとに基づいて、エンジン11からプライマリ軸12に入力される入力トルクTiを算出し、必要セカンダリ圧算出部78は、目標変速比iに基づいて必要セカンダリ圧Psnを算出する。これらの入力トルクTiと必要セカンダリ圧Psnとは目標セカンダリ圧算出部79に入力され、目標セカンダリ圧算出部79により目標セカンダリ圧Psが算出される。そして、目標セカンダリ圧Psに基づきパイロット弁51,52に対して制御信号が出力され、セカンダリプーリ21は伝達トルクに見合った締付力によって締め付け動作を行うことになる。
図4は目標プライマリ回転数Npを算出する際に参照される変速特性マップの一例を示す線図である。図4に示すように、変速特性マップには、最大変速比(ロー状態)を示す特性線Lowと最大変速比(オーバードライブ状態)を示す特性線ODとが設定されており、これら特性線Low,ODの間にはスロットル開度Toに対応した複数の特性線T1〜T8が設定されている。スロットル開度Toが低い場合には特性線T1に従って目標プライマリ回転数Npが算出され、スロットル開度Toが高くなるにつれて目標プライマリ回転数Npは特性線T2〜T7に従って算出される。そして、スロットル開度Toが全開となった場合には、特性線T8に従って目標プライマリ回転数Npが算出されるようになっている。また、低車速域でスロットル開度Toが増大した場合には、特性線Lowに沿って目標プライマリ回転数Npが設定される一方、高車速域でスロットル開度Toが減少した場合には、特性線ODに沿って目標プライマリ回転数Npが設定されることになる。
以下、プライマリプーリ20およびセカンダリプーリ21に対して作動油を供給制御する油圧制御回路について説明する。図5は油圧制御回路の一部を示す回路図であり、図2に示す部材と同一の部材については同一の符号を付してその説明を省略する。図5に示すように、オイルポンプ40から延びるライン圧路41にはパイロット減圧弁80の入力ポート80aが接続されており、オイルポンプ40からの吐出圧はパイロット減圧弁80を介して所定圧力まで引き下げられる。このパイロット減圧弁80の出力ポート80bには分配油路81が接続されており、パイロット減圧弁80を経て減圧された作動油は分配油路81を介してパイロット弁51〜54に供給される。また、ライン圧路41にはクラッチ圧路82が接続されており、このクラッチ圧路82を介してクラッチ回路83に供給される作動油は、クラッチ回路83から前進用クラッチ35や後退用ブレーキ36に供給される。
また、ライン圧路41にはライン圧制御弁42が接続されており、ライン圧路41を流れる作動油はライン圧制御弁42を介してライン圧PLに調圧される。このライン圧制御弁42は、弁収容孔が形成されたハウジング85と、弁収容孔に移動自在に収容されるスプール弁軸84とを備えており、ハウジング85には、ライン圧路41に連通する調圧ポート42a、ライン圧PLを減圧する際にライン圧路41から作動油が案内される減圧ポート42b、後述するバイパス弁90に向けて作動油を案内するバイパスポート42cが形成されている。さらに、スプール弁軸84を軸方向に移動させるため、ハウジング85には、ライン圧路41に連通するパイロット圧室42d、パイロット圧路86aに連通するメイン制御圧室としてのパイロット圧室42e、パイロット圧路87に連通するサブ制御圧室としてのパイロット圧室42fが形成されている。そして、パイロット圧室42dに供給されるライン圧PLによって、スプール弁軸84は調圧ポート42aと減圧ポート42bとを連通する連通位置に向けて付勢される一方、パイロット圧室42e,42fに供給されるパイロット圧P1,P2によって、スプール弁軸84は調圧ポート42aと減圧ポート42bとを遮断する遮断位置に向けて付勢されることになる。
ここで、図6(A)および(B)はライン圧制御弁42の作動状態を示す説明図であり、(A)はスプール弁軸84を連通位置に移動させた状態を示し、(B)はスプール弁軸84を遮断位置に移動させた状態を示している。前述したように、ライン圧制御弁42のパイロット圧室42dには、ライン圧路41を流れるライン圧PLがそのまま供給されるのに対し、ライン圧制御弁42のパイロット圧室42e,42fには、パイロット弁51,52によって調圧されたパイロット圧P1,P2が供給される。したがって、図6(A)に示すように、パイロット圧P1,P2を引き下げることにより、パイロット圧P1,P2によってスプール弁軸84を昇圧方向に付勢する推力が、ライン圧PLによってスプール弁軸84を降圧方向に付勢する推力を下回った場合には、スプール弁軸84が連通位置に向けて移動することになる。このような状態のもとでは、ライン圧路41を流れる作動油が減圧ポート42bから後述する潤滑回路89に流出するため、ライン圧路41内のライン圧PLが引き下げられることになる。そして、ライン圧PLが引き下げられることにより、ライン圧PLによってスプール弁軸84を降圧方向に付勢する推力が低下した場合には、パイロット圧P1,P2によって付勢されるスプール弁軸84が遮断位置に向けて移動するため、ライン圧PLはパイロット圧P1,P2に応じて引き下げられた上限圧力に維持されることになる。
一方、図6(B)に示すように、パイロット圧P1,P2を引き上げることにより、パイロット圧P1,P2によってスプール弁軸84を昇圧方向に付勢する推力が、ライン圧PLによってスプール弁軸84を降圧方向に付勢する推力を上回った場合には、スプール弁軸84が遮断位置に向けて移動することになる。このような状態のもとでは、ライン圧路41を流れる作動油が減圧ポート42bから流出することがないため、ライン圧路41内のライン圧PLが引き上げられることになる。そして、ライン圧PLを引き上げることにより、ライン圧PLによってスプール弁軸84を降圧方向に付勢する推力が増加した場合には、ライン圧PLによって付勢されるスプール弁軸84が連通位置に向けて移動するため、ライン圧PLはパイロット圧P1,P2に応じて引き上げられた上限圧力に維持されることになる。
このように、パイロット弁51から出力されるパイロット圧P1や、パイロット弁52から出力されるパイロット圧P2を引き上げた場合には、ライン圧制御弁42によってライン圧PLが高く調圧される一方、パイロット圧P1やパイロット圧P2を引き下げた場合には、ライン圧制御弁42によってライン圧PLが低く調圧されることになる。なお、パイロット弁52のソレノイドに対するデューティ比や、パイロット弁51のソレノイドに対する電流値を制御することにより、ライン圧PLを所定の範囲で自在に設定することが可能となっている。
なお、スプール弁軸84を連通位置に移動させた場合に、ライン圧路41から減圧ポート42bを経て排出される作動油は、図5に示すように、潤滑減圧弁98を介して所定圧力に減圧された後に、潤滑油路88から潤滑回路89を経て駆動ベルト22などの各摺動部に供給される。また、スプール弁軸84を遮断位置に移動させた場合には、調圧ポート42aと減圧ポート42bとが遮断されることになるが、調圧ポート42aが連通するバイパスポート42cにはバイパス弁90が接続されており、このバイパス弁90を介して潤滑油路88に潤滑用の作動油が供給されるようになっている。バイパス弁90はライン圧PLによって連通状態と遮断状態とに作動する切換弁となっている。
また、図5に示すように、ライン圧制御弁42を介して調圧されたライン圧PLは、ライン圧路41aを介してセカンダリ圧制御弁43に供給され、セカンダリ圧制御弁43によってセカンダリ圧Psに調圧される。セカンダリ圧Psを調圧するセカンダリ圧制御弁43は、弁収容孔が形成されたハウジング91と、弁収容孔に移動自在に収容されるスプール弁軸92とを備えており、ハウジング91には、ライン圧路41aが接続される入力ポート43aと、セカンダリ圧路48が接続される出力ポート43bとが形成されている。また、スプール弁軸92を軸方向に移動させるため、ハウジング91には、セカンダリ圧路48に連通するパイロット圧室43cと、パイロット圧路86bに連通するメイン制御圧室としてのパイロット圧室43dとが形成されており、パイロット圧室43dにはバネ部材93が組み込まれている。
つまり、パイロット圧室43cに供給されるセカンダリ圧Psにより、スプール弁軸92は入力ポート43aと出力ポート43bとを連通する連通位置に向けて付勢される一方、パイロット圧室43dに供給されるパイロット圧P1とバネ部材93からのバネ力とにより、スプール弁軸92は入力ポート43aと出力ポート43bとを遮断する遮断位置に向けて付勢されることになる。したがって、パイロット圧P1を引き上げることにより、パイロット圧P1およびバネ力によってスプール弁軸92を連通位置に向けて付勢する推力が、セカンダリ圧Psによってスプール弁軸92を遮断位置に向けて付勢する推力を上回った場合には、上限圧力を上昇させるようにスプール弁軸92が連通位置に向けて移動し、セカンダリ圧Psがライン圧PLに近づくように引き上げられる。一方、パイロット圧P1を引き下げることにより、パイロット圧P1によってスプール弁軸92を連通位置に向けて付勢する推力が、セカンダリ圧Psによってスプール弁軸92を遮断位置に向けて付勢する推力を下回った場合には、上限圧力を低下させるようにスプール弁軸92が遮断位置に向けて移動し、セカンダリ圧Psが引き下げられることになる。
ここで、セカンダリ圧制御弁43に接続されるパイロット圧路86bと、ライン圧制御弁42に接続されるパイロット圧路86aとは相互に接続されており、ライン圧制御弁42とセカンダリ圧制御弁43とのパイロット圧室42e,43dには同じパイロット圧P1が供給される。つまり、圧力制御手段として機能するCVT制御ユニット60からパイロット弁51に対して制御信号を出力し、パイロット圧P1を引き上げた場合にはライン圧PLとセカンダリ圧Psとが共に引き上げられ、パイロット圧P1を引き下げた場合にはライン圧PLとセカンダリ圧Psとが共に引き下げられる。なお、パイロット圧P1のみをライン圧制御弁42とセカンダリ圧制御弁43とに供給した場合には、ライン圧PLとセカンダリ圧Psとがほぼ一致するようになっている。
続いて、プライマリ圧Ppを調圧して駆動ベルト22の巻き付け径を制御するアップシフト弁44とダウンシフト弁47とについて説明する。まず、アップシフト弁44は、弁収容孔が形成されたハウジング94と、弁収容孔に移動自在に収容されるスプール弁軸95とを備えており、ハウジング94には、ライン圧路41bが接続される入力ポート44aと、プライマリ圧路45が接続される出力ポート44bとが形成されている。また、入力ポート44aと出力ポート44bとを連通する連通位置と遮断する遮断位置とにスプール弁軸95を移動させるため、ハウジング94には、パイロット圧路96に連通するパイロット圧室44cと、バネ部材97が組み込まれるバネ室44dとが形成されている。そして、所定圧力を上回るようにパイロット圧P3が引き上げられたときには、スプール弁軸95がバネ力に抗して連通位置に移動する一方、所定圧力を下回るようにパイロット圧P3が引き下げられたときには、スプール弁軸95がバネ力によって遮断位置に移動するようになっている。
同様に、ダウンシフト弁47は、弁収容孔が形成されたハウジング100と、弁収容孔に移動自在に収容されるスプール弁軸101とを備えており、ハウジング100には、分岐油路46が接続される入力ポート47aと、下流側のフェイルセーフ弁102に接続される排出ポート47bとが形成されている。また、入力ポート47aと排出ポート47bとを連通する連通位置と遮断する遮断位置とにスプール弁軸101を移動させるため、ハウジング100には、パイロット圧路103に連通するパイロット圧室47cと、バネ部材104が組み込まれるバネ室47dとが形成されている。そして、所定圧力を上回るようにパイロット圧P4が引き上げられたときには、スプール弁軸101がバネ力に抗して連通位置に移動する一方、所定圧力を下回るようにパイロット圧P4が引き下げられたときには、スプール弁軸101がバネ力によって遮断位置に移動するようになっている。
つまり、アップシフトを行うためにプライマリ圧Ppを引き上げる際には、アップシフト弁44に対するパイロット圧P3が引き上げられる一方、ダウンシフト弁47に対するパイロット圧P4が引き下げられる。また、ダウンシフトを行うためにプライマリ圧Ppを引き下げる際には、アップシフト弁44に対するパイロット圧P3が引き下げられる一方、ダウンシフト弁47に対するパイロット圧P4が引き上げられることになる。なお、パイロット弁53,54のソレノイドに対するデューティ比を制御することによって、アップシフト弁44やダウンシフト弁47におけるポート間の連通状態を自在に設定することができるため、プライマリ圧Ppを所定の範囲で自在に設定することが可能となっている。
また、ダウンシフト弁47の下流側にはフェイルセーフ弁102が設けられており、このフェイルセーフ弁102によってパイロット弁54の故障に伴う急激なダウンシフトを回避することが可能となっている。フェイルセーフ弁102は、弁収容孔が形成されたハウジング105と、弁収容孔に移動自在に収容されるスプール弁軸106とを備えており、ハウジング105には、ダウンシフト弁47の排出ポート47bに接続される入力ポート102aと、オイルパンに作動油を案内する排出ポート102bとが形成されている。
そして、入力ポート102aと排出ポート102bとを連通する連通位置と遮断する遮断位置とにスプール弁軸106を移動させるため、ハウジング105には、パイロット圧路96に連通するパイロット圧室102cと、バネ部材107が組み込まれるバネ室102dとが形成されている。このパイロット圧室102cには、アップシフト弁44に供給されるパイロット圧P3が入力されるため、アップシフト弁44のスプール弁軸95が連通位置に移動するときには、フェイルセーフ弁102のスプール弁軸106は遮断位置に移動するようになっている。つまり、変速比がオーバードライブ側に制御された状態のもとで、パイロット弁54がフェイル状態に陥ることにより、ダウンシフト弁47に対するパイロット圧P4が上昇した場合であっても、遮断されたフェイルセーフ弁102を介して作動油の排出を回避することができ、プライマリ圧Ppの低下による急激なダウンシフトを回避することが可能となる。
また、プライマリプーリ20に向けてプライマリ圧Ppを案内するプライマリ圧路45にはプライマリ減圧弁108が組み込まれており、このプライマリ減圧弁108によってプライマリ圧Ppの上限圧力が設定されている。このプライマリ減圧弁108を設けることにより、プライマリプーリ20に対して過度なプライマリ圧Ppが供給されることはなく、プライマリプーリ20を保護することが可能となっている。
以下、無段変速機10の変速比をロー側にダウンシフトする際の油圧供給状態と、オーバードライブ側にアップシフトする際の油圧供給状態とについて説明する。図7はダウンシフトを実行する際における油圧供給状態の一例を示す回路図であり、図8はアップシフトを実行する際における油圧供給状態の一例を示す回路図である。
図7に示すように、変速比をロー側にダウンシフトさせる際には、パイロット弁51からのパイロット圧P1を引き上げることにより、ライン圧制御弁42とセカンダリ圧制御弁43との上限圧力が高く設定され、ライン圧PLとセカンダリ圧Psとが共に引き上げられる。また、パイロット弁53からのパイロット圧P3を引き下げる一方、パイロット弁54からのパイロット圧P4を引き上げることにより、連通状態となるダウンシフト弁47を介してプライマリプーリ20から作動油が排出され、プライマリプーリ20内のプライマリ圧Ppが引き下げられる。このように、プライマリ圧Ppを引き下げてプライマリプーリ20のプーリ溝幅を広げる一方、セカンダリ圧Psを引き上げてセカンダリプーリ21のプーリ溝幅を狭めることにより、変速比はロー側にダウンシフトされるようになっている。
一方、図8に示すように、変速比をオーバードライブ側にアップシフトさせる際には、差圧設定手段として機能するCVT制御ユニット60によって、パイロット弁51からのパイロット圧P1を引き下げるとともに、パイロット弁52からのパイロット圧P2を引き上げることにより、ライン圧PLがセカンダリ圧Psよりも高く調圧される。つまり、目標セカンダリ圧Psに合わせてセカンダリ圧Psを低下させるため、パイロット圧P1を引き下げるようにした場合には、セカンダリ圧Psだけでなくライン圧PLも低下することになるが、ここでパイロット圧P2を引き上げることにより、目標プライマリ圧Ppに合わせてライン圧PLのみを上昇させることが可能となる。また、パイロット弁53からのパイロット圧P3を引き上げる一方、パイロット弁54からのパイロット圧P4を引き下げることにより、連通状態となるアップシフト弁44を介して作動油が供給され、プライマリプーリ20内のプライマリ圧Ppが引き上げられる。このように、プライマリ圧Ppを引き上げてプライマリプーリ20のプーリ溝幅を狭める一方、セカンダリ圧Psを引き下げてセカンダリプーリ21のプーリ溝幅を広げることにより、変速比はオーバードライブ側にアップシフトされるようになっている。
ここで、図9(A)および(B)はロー状態からオーバードライブ状態に変速する際のライン圧PL、プライマリ圧Pp、セカンダリ圧Psの変化状況を示す線図であり、(A)は従来の変速制御装置(片調圧方式)による圧力変化状況を示し、(B)は本発明の変速制御装置による圧力変化状況を示している。
まず、図9(A)に示すように、ライン圧PLをそのままセカンダリ圧Psとして利用するようにした片調圧方式の変速制御装置にあっては、ロー状態からオーバードライブ状態に向けて変速する際に、セカンダリ圧Psを超えてプライマリ圧Ppを引き上げることが不可能となっていた。つまり、プライマリ圧Ppはライン圧PLを減圧することによって調圧される圧力であるため、ライン圧PLとセカンダリ圧Psとが常に一致する片調圧方式の変速制御装置にあっては、プライマリ圧Ppの上限圧力はセカンダリ圧Psと等しい圧力になる。
したがって、プライマリ側とセカンダリ側との作動油室の受圧面積が等しい場合には、セカンダリプーリ21の締め付け力を上回ってプライマリプーリ20の締め付け力を設定することができないため、プライマリ側の受圧面積をセカンダリ側の受圧面積に比して大きく設定することが必要となる。このような受圧面積の設定は、プライマリプーリ20の大型化を招くことになり、無段変速機10の小型化を阻害する要因となっていた。また、プライマリプーリ20の締め付け力を高めることが困難であることから、オーバードライブ側に変速する際の変速速度を向上させることも困難となっていた。
これに対し、本発明の変速制御装置にあっては、パイロット弁52からのパイロット圧P2を引き上げることによって、セカンダリ圧Psに対してライン圧PLを高く調圧することが可能となっている。図9(B)に示すように、プライマリ圧Ppに対してセカンダリ圧Psを高くすることが望ましいロー状態にあっては、パイロット弁52からのパイロット圧P2を引き下げることにより、ライン圧PLとセカンダリ圧Psとをほぼ一致させることができ、プライマリ圧Ppよりもセカンダリ圧Psを高く設定することが可能となる。一方、プライマリ圧Ppに対してセカンダリ圧Psを低くすることが望ましいオーバードライブ状態にあっては、パイロット弁52からのパイロット圧P2を引き上げることにより、セカンダリ圧Psに対してライン圧PLを引き上げることができるため、プライマリ圧Ppよりもセカンダリ圧Psを低く設定することが可能となる。つまり、目標セカンダリ圧Psに応じてパイロット圧P1を引き下げることにより、ライン圧PLとセカンダリ圧Psとが低下する場合であっても(符号x)、目標プライマリ圧Ppに合わせてパイロット圧P2を引き上げることにより、ライン圧PLのみを乖離させて上昇させることが可能となる(符号y)。
このように、セカンダリ圧Psに対してライン圧PLを引き上げることにより、セカンダリ圧Psよりもプライマリ圧Ppを高く調圧することができるため、プライマリ側の受圧面積を縮小して無段変速機10の小型化を達成したり、変速速度を向上させて変速時間を短縮したりすることが可能となる。また、ロー状態においてはセカンダリ圧Psにライン圧PLを合わせ、オーバードライブ状態においてはプライマリ圧Ppにライン圧PLを合わせるように、ライン圧PLを調圧することが可能となるため、オイルポンプ40にかかる負荷を無駄に増大させることがなく、エンジン11の燃料消費量を抑制することも可能となる。
しかも、機械的に作動するライン圧制御弁42およびセカンダリ圧制御弁43を設けるとともに、これらを駆動制御する2つのパイロット弁51,52を設けるようにした回路構造であるため、油圧制御回路の高コスト化を回避することができる。つまり、ライン圧PL、プライマリ圧Pp、セカンダリ圧Psを別個に調圧する3つの電磁圧力制御弁を組み込むことにより、セカンダリ圧Psとプライマリ圧Ppとを自在に調圧するようにした従来の変速制御装置(両調圧方式)に比べて、開発コストや製造コストを大幅に引き下げることが可能となる。
また、パイロット弁52のソレノイドを制御するデューティ比に基づいて、パイロット圧P2が調圧されるとともに、セカンダリ圧Psに対するライン圧PLの引き上げ量が定められるため、圧力推定手段として機能するCVT制御ユニット60によって、セカンダリ圧センサ64からのセカンダリ圧Psとパイロット弁52のデューティ比とに基づきライン圧PLを推定することが可能となる。このため、ライン圧PLを検出する圧力センサを削減することができ、更なる低コスト化を達成することが可能となる。
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。たとえば、図示する場合には、ライン圧PLとセカンダリ圧Psとを乖離させるため、パイロット弁52からのパイロット圧P2によってライン圧制御弁42の上限圧力を引き上げるようにしているが、これに限られることはなく、セカンダリ圧制御弁43の上限圧力を引き下げるようにしても良い。つまり、ライン圧制御弁42のパイロット圧室を削減するとともに、セカンダリ圧制御弁43にサブ制御圧室としてのパイロット圧室を形成し、このパイロット圧室にパイロット圧を供給することによってスプール弁軸を降圧方向に付勢するようにしても良い。
また、プライマリ圧Ppを調圧することによって変速比を制御し、セカンダリ圧Psを調圧することによって駆動ベルト22の張力を制御しているが、これに限られることはなく、プライマリ圧Ppを調圧することによって駆動ベルト22の張力を制御し、セカンダリ圧Psを調圧することによって変速比を制御しても良い。
さらに、パイロット弁としてデューティソレノイドバルブを採用し、パイロット弁としてリニアソレノイドバルブを採用しているが、これに限られることはなく、パイロット弁としてリニアレノイドバルブを採用し、パイロット弁としてデューティソレノイドバルブを採用しても良い。パイロット弁にリニアソレノイドバルブを採用した場合には、セカンダリ圧Psとソレノイドに供給される電流値とに基づいてライン圧PLが推定されることになる。
さらに、アップシフト弁44やダウンシフト弁47は、一義的に作動油の流量を制御することによってプライマリ圧Ppを制御するようにした流量制御弁であるが、これに限られることはなく、一義的に作動油の圧力を制御するようにした流量制御弁を採用しても良い。