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JP4674066B2 - 電磁波遮蔽性熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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JP4674066B2 - 電磁波遮蔽性熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents

電磁波遮蔽性熱可塑性樹脂組成物 Download PDF

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Description

本発明は、電磁波遮蔽性熱可塑性樹脂組成物、かかる樹脂組成物の製造方法、およびかかる樹脂組成物の電磁波遮蔽性向上方法に関する。より詳しくは、ニッケル金属被覆炭素繊維のニッケル金属被覆処理前の炭素繊維表面におけるESCA法で測定されるO1S/C1Sを特定範囲に調整して得られたニッケル金属被覆炭素繊維を含有する熱可塑性樹脂組成物、該樹脂組成物の製造方法、並びに該ニッケル金属被覆炭素繊維を用いることによる樹脂組成物の電磁波遮蔽性を向上する方法に関する。
近年、コンピューターの如きOA機器および情報端末機器等の電子機器において、その小型軽量化に伴う回路の高集積化および高密度化に伴い、電子機器が電磁波によって誤作動を引き起こすことが問題となる場合がある。その為、電子機器の筐体には、外部からの電磁波を遮蔽するための、および外部への電磁波の漏洩を防止するための電磁波遮蔽効果を付与する必要が有る。
電磁波遮蔽効果を得る為には、電子機器筐体に導電性を付与する必要が有り、一般的に導電性が高いほど良好な電磁波遮蔽性を有する。特に近年、中央演算処理装置の急速な高速化に伴い、より高い水準の電磁波遮蔽性が要求されてきている。
熱可塑性樹脂からなる成形品を導電化する方法としては、成形品表面に導電塗料の塗工、電磁波遮蔽メッキ処理、および亜鉛溶射等を施す表面処理による方法、並びに熱可塑性樹脂中に金属粉、カーボンブラック、金属フレーク、金属コートガラスフレーク、金属繊維、炭素繊維、および金属コート炭素繊維等の導電性充填材を添加して成形する方法が代表的な方法として例示される。
導電性充填材を添加した樹脂組成物から成形する方法は、従来より各種の提案がなされているが、それでもなお種々の問題がある。例えば、カーボンブラック、金属粉、および金属フレーク等の粒子状導電性充填材を添加した樹脂組成物は導電性が不十分である。しかもこれらは概してその添加量が多量になる為、樹脂組成物の機械的特性が著しく低下する欠点を有している。また、銅繊維、ステンレス繊維、炭素繊維、および金属コート炭素繊維等の繊維状導電性充填材を添加した樹脂組成物は、機械的および熱的特性が向上し、導電性が良好で電磁波遮蔽用樹脂組成物として有用である。しかしながら金属繊維類は折れ難いが故に成形加工性が悪化しやすく、一方炭素繊維類は溶融混練時の繊維の折れと共に導電性が低下する点で改良の余地がある。炭素繊維類の折れが抑制されると、少量で良好な導電性が得られるようになる。更に繰返しの溶融加工処理にも耐え得ることでリサイクル性に優れた樹脂材料が提供されるようになる。
かかる折れ抑制の効果は、樹脂の溶融粘度が高いほど効果的である。既にポリカーボネート樹脂、導電性繊維、密着性阻害成分、および特定の熱重量減少温度の有機リン化合物からなるリサイクル性に優れた電磁波遮蔽性樹脂組成物は公知である(特許文献1参照)。しかしながら該文献は、導電性繊維自体の特性が樹脂組成物の電磁波遮蔽性に与える影響については十分に開示していない。
フッ素樹脂を除くマトリックス樹脂と、特定の比表面積あるいは炭素繊維表面の酸素含有量(O1s/C1s)が0.05〜0.20である酸化処理された炭素繊維とを含む樹脂組成物は公知である(特許文献2参照)。該文献は得られた樹脂組成物が良好な導電性を有することを示唆するが、具体的データは何ら開示していない。更に該文献は金属被覆炭素繊維について記載していない。
表面にしわを有する炭素繊維に金属被覆した金属被覆炭素繊維、並びに該炭素繊維は金属被覆のはがれやすさが改良されていることは公知である(特許文献3参照)。しかしながら該文献の知見にもかかわらず、電磁波遮蔽性の更に改良された金属被覆炭素繊維含有樹脂組成物が求められている。
ESCA法により測定されるO1S/C1Sのピーク比が0.1〜0.5であり、表面に生成する官能基であるカルボキシル基または水酸基の当量が0.6μeq/g以上でかつカルボキシル基/水酸基の比が1以上である金属酸化物コーティング用炭素繊維、並びに該炭素繊維は金属酸化物が均一かつ一定の付着量での強固な被覆を可能にすることは公知である(特許文献4参照)。しかしながら該文献は、電磁波遮蔽性の更に改良された樹脂組成物に関して十分な知見を開示していない。
炭素繊維束に電気メッキすることにより、金属被覆炭素繊維を製造する各種の方法は公知である(特許文献5〜8参照)。しかしながらいずれの文献においても電気メッキ前の炭素繊維の酸化処理の程度の重要性について教示したものはない。
特開2002−129003号公報 特開平04−209656号公報 特開平11−117179号公報 特開2002−180370号公報 特開昭59−226195号公報 特開昭60−238498号公報 特開昭63−264969号公報 特開平03−104984号公報
本発明の目的は、ニッケル金属被覆炭素繊維を含有する電磁波遮蔽性熱可塑性樹脂組成物の電磁波遮蔽性を向上させる方法を提供すること、かかる電磁波遮蔽性の向上した熱可塑性樹脂組成物のペレットの製造方法および該ペレットを提供すること、並びに電磁波遮蔽性の向上したポリカーボネート樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成すべく、鋭意検討を重ねた結果、ポリカーボネート樹脂に代表される熱可塑性樹脂に、炭素繊維表面におけるX線光電子分光法(ESCA法)により測定される酸素と炭素とのピーク比(O1S/C1S)を0.15〜0.17の範囲に調整された炭素繊維にニッケル金属被覆を施したニッケル金属被覆炭素繊維を添加すると、上記目的に適う電磁波遮蔽性の向上が得られることを見出し、本発明に到達した。
より詳しくは、本発明者らは金属被覆炭素繊維自体の改良による樹脂組成物の電磁波遮蔽性の向上に関し鋭意検討をした。上述のとおり電磁波遮蔽性の低下の原因として溶融混練時の繊維の折れがあることから、当初折れにくい金属被覆炭素繊維に関して検討した。かかる検討において炭素繊維の強度と関連のある炭素繊維表面のO1S/C1Sの制御に着目した。しかしながらO1S/C1Sの値を従来より下げて炭素繊維の強度を向上させたものの樹脂組成物の電磁波遮蔽性は向上するどころか大きく低下することが判明した。かかる原因を鋭意究明したところ、炭素繊維表面から被覆された金属が脱落し、かかる脱落が電磁波遮蔽性の大幅な低下の原因となることを突き止めた。更にかかる知見に基づき精密にO1S/C1Sの制御を行なったところ、金属被覆が炭素繊維表面から脱落せず、かつ炭素繊維の折れにくい領域のあることが見出された。本発明者らはかかる知見に基づき更に研究をすすめ、本発明を完成するに至った。
本発明によれば、上記課題は、(I)熱可塑性樹脂100重量部あたり、ニッケル金属被覆炭素繊維1〜100重量部を含有する組成物であって、該ニッケル金属被覆炭素繊維は炭素繊維表面におけるX線光電子分光法(ESCA法)により測定される酸素と炭素とのピーク比(O1S/C1S)が、0.15〜0.17の範囲に調整された炭素繊維にニッケル金属被覆を施したニッケル金属被覆炭素繊維(B成分)であることを特徴とする電磁波遮蔽性熱可塑性樹脂組成物により達成される。
熱可塑性樹脂は、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂およびポリブチレンテレフタレート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂であることが好ましい。
本発明の好適な態様の1つは、(II)上記熱可塑性樹脂は、ポリカーボネート樹脂を50重量%以上含有する熱可塑性樹脂(A成分)である上記構成(I)の電磁波遮蔽性熱可塑性樹脂組成物であり、更に好適な態様の1つは、(III)更に、A成分100重量部あたり、有機リン化合物(C成分)1〜100重量部を含む上記構成(II)の電磁波遮蔽性熱可塑性樹脂組成物である。
また、本発明の別の態様によれば、(IV)(1)炭素繊維の表面を酸化処理して、X線光電子分光法(ESCA法)により測定される酸素と炭素とのピーク比(O1S/C1S)を0.15〜0.17の範囲に調整する工程(工程−I)、(2)該調整された炭素繊維束に電気メッキすることによりニッケル金属被覆炭素繊維を得る工程(工程−II)、(3)該ニッケル金属被覆炭素繊維を集束剤を用いて集束処理し、集束されたニッケル金属被覆炭素繊維ロービングを得る工程(工程−III)、(4)該ロービングを切断し、そのチョップドストランドを得る工程(工程−IV)、(5)熱可塑性樹脂を準備し、該熱可塑性樹脂100重量部に対して、該チョップドストランド(B’成分)の割合が1〜100重量部となるよう調整し、押出機に供給する工程(工程−V)、並びに(6)該熱可塑性樹脂とB’成分とを押出機中で溶融混練し樹脂組成物を得る工程(工程−VI)からなることを特徴とする電磁波遮蔽性熱可塑性樹脂組成物の製造方法が提供され、上記の課題が解決される。
また本発明の別の態様によれば、(V)熱可塑性樹脂100重量部あたり、ニッケル金属被覆炭素繊維1〜100重量部を含有する組成物の電磁波遮蔽性向上方法であって、該ニッケル金属被覆炭素繊維として炭素繊維表面におけるX線光電子分光法(ESCA法)により測定される酸素と炭素とのピーク比(O1S/C1S)が、0.15〜0.17の範囲に調整された炭素繊維にニッケル金属被覆を施したニッケル金属被覆炭素繊維(B成分)を用いることを特徴とする電磁波遮蔽性熱可塑性樹脂組成物の電磁波遮蔽性向上方法が提供され、上記の課題が解決される。
本発明の電磁波遮蔽性熱可塑性樹脂組成物は、従来の樹脂組成物から何らその組成や製造条件を変更することなく、電磁波遮蔽性が改良されたものである。かかる改良は折れ抑制剤を含有しない場合により顕著である。本発明の電磁波遮蔽性熱可塑性樹脂組成物の製造方法は、同様に組成や製造条件を変更することなく、電磁波遮蔽性が改良された樹脂組成物を製造するものであり、その結果電磁波遮蔽性の改良された樹脂成形品の提供を可能とする。本発明の電磁波遮蔽性の向上方法は上記樹脂組成物と同様の効果を有する。いずれも熱可塑性樹脂がポリカーボネート樹脂であると、上記の改良効果がより有効に発揮され、その機械特性、耐熱性、難燃性、および寸法安定性において従来どおりの特性を有しつつ、更に改良された電磁波遮蔽性を有する樹脂組成物が提供される。したがって、かかるポリカーボネート樹脂の電磁波遮蔽性熱可塑性樹脂組成物は、より高い水準の電磁波遮蔽性が要求される電子機器筐体に特に好適である。以上、本発明の方法並びに樹脂組成物は、電子機器の筐体を始め電磁波遮蔽を必要とする幅広い産業分野で好適であり、その奏する工業的効果は格別のものである。
以下、本発明の詳細について説明する。
<熱可塑性樹脂>
本発明で使用する熱可塑性樹脂は、基本的に限定されるものではなく、特に電子機器の筺体に用いられる熱可塑性樹脂が好ましく使用される。かかる熱可塑性樹脂としては、例えばポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、変性ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエステル系樹脂等が挙げられる。特に好ましいものとしては、例えばABS樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂およびこれらの二種以上の混合物が挙げられる。特にポリカーボネート樹脂を主体とする熱可塑性樹脂が好ましく、より好ましくはその100重量%中ポリカーボネート樹脂を50重量%以上含有する熱可塑性樹脂(A成分)である。ポリカーボネート樹脂は機械的強度や寸法精度の点で良好である一方、溶融粘度が高くニッケル金属被覆炭素繊維の表面金属の脱落および折れが生じやすく、本発明の効果がより発揮されるためである。
ニッケル金属被覆炭素繊維>
また、本発明で使用されるニッケル金属被覆炭素繊維(B成分)とは、炭素繊維にメッキ法および蒸着法などの公知の方法でニッケル、その合金どを被覆したものである。導電性、耐食性、生産性、および経済性の観点から、ニッケルが好ましい。更に本発明のニッケル金属被覆炭素繊維は、炭素繊維表面に電気メッキによりニッケル金属被覆を設けることが好ましい。電気メッキによってより強固なニッケル金属被覆が形成され、良好な電磁波遮蔽性を有する樹脂組成物が提供される。
ニッケル金属被覆される炭素繊維としては、例えば、フェノール樹脂、レーヨン、およびポリアクリロニトリルなどの高分子繊維を出発原料とする炭素繊維、並びに石炭系ピッチ、石油系ピッチまたは液晶ピッチなどのピッチ系繊維を出発原料とする炭素繊維が代表的に例示される。また、芳香族スルホン酸類またはそれらの塩のメチレン型結合による重合体との溶媒よりなる原料組成物を紡糸または成形し、次いで炭化する方法に代表される不融化工程を経ることなく紡糸を行う方法により得られた炭素繊維も使用可能である。更に汎用タイプ、中弾性率タイプ、および高弾性率タイプのいずれも使用可能である。以上の中でも特にポリアクリロニトリルを出発原料とする高弾性率タイプの炭素繊維が好ましい。
尚、炭素繊維の炭化または黒鉛化処理は、炭化処理においては炭素繊維化可能な繊維を、例えば450〜1,500℃程度の温度で焼成処理することが好ましく、黒鉛化処理においては例えば1,500〜3,300℃程度の温度で焼成処理することが好ましい。尚、かかる熱処理によって必ずしも黒鉛の結晶構造を生ずることは必要とされない。
さらに、本発明のニッケル金属被覆前の炭素繊維は、炭素繊維表面におけるX線光電子分光法(ESCA法)により測定される酸素と炭素とのピーク比(O1S/C1S)が、0.15〜0.17の範囲に調整された炭素繊維である。炭素繊維表面におけるX線光電子分光法(ESCA法)により測定される酸素と炭素とのピーク比(O1S/C1S)を調整された炭素繊維は、炭素繊維を慣用の酸化処理に付すことにより得られる。酸化処理方法は特に限定されないが、例えば、(1)炭素繊維を酸もしくはアルカリまたはそれらの塩、あるいは酸化性気体により処理する方法、(2)炭素繊維化可能な繊維または炭素繊維を、含酸素化合物を含む不活性ガスの存在下、700℃以上の温度で焼成する方法、および(3)炭素繊維を酸化処理した後、不活性ガスの存在下で熱処理する方法などが好適に例示される。
より具体的には、上記(1)の方法では、例えば硫酸および硝酸などの強酸並びにかかる強酸の塩、あるいは酢酸および次亜塩素酸などの弱酸並びにかかる弱酸の塩、あるいは水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムなどのアルカリ並びにかかるアルカリの塩などの溶液に原料炭素繊維を浸漬処理する方法が例示される。かかる方法において、例えば、50〜130℃程度の温度で処理してもよい。もしくはかかる処理の際に炭素繊維に電流を流し、電解酸化を行わせる方法も有効である。特に炭素繊維に電流を流しながら炭素繊維を硫酸塩の水溶液中を通過させる方法は表面処理方法として好ましい。かかる場合に炭素繊維に通過させる電気量は、1〜100c/g、特に5〜50c/gの範囲が好ましい。かかる方法によれば、炭素繊維表面におけるO1S/C1Sをより精密に制御することが可能となる。かかる方法における硫酸塩としては、硫酸ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸アンモニウム、および硫酸水素アンモニウムなどが例示される。硫酸塩水溶液の濃度は1〜15重量%が好適である。
上記(1)の方法における酸化性気体としては、オゾンおよびハロゲンなどが好適に例示される。その他酸素、水蒸気、一酸化炭素、二酸化炭素、および二酸化窒素などの含酸素気体が例示される。かかる処理は、例えば500〜1,000℃程度の範囲で行うことができる。
上記(2)の方法において、炭素繊維化可能な繊維としては、上記高分子繊維およびピッチ系繊維などが挙げられる。これらの繊維は少なくとも一種使用できる。含酸素化合物としては、上記(1)と同様の含酸素気体を使用できる。不活性ガスとしては、窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、およびクリプトン等が挙げられる。不活性ガスは、二種以上の混合ガスとしても使用できる。不活性ガス中の含酸素化合物の含有量は、広い範囲で使用できるが、20から5,000ppm程度である。
上記(3)の方法では、上記(1)および(2)と同様にして炭素繊維を酸化処理した後、不活性ガスの存在下で熱処理する。不活性ガス存在下での熱処理温度は、通常300℃以上、好ましくは300〜1,500℃程度である。これらの酸化処理により、炭素繊維表面におけるESCA法により測定されるO1S/C1Sを調整された炭素繊維を得ることができる。
ニッケル金属被覆される炭素繊維の平均繊維径は、特に限定されるものではないが、通常3〜15μmのものが使用され、好ましくは5〜13μmである。またニッケル金属被覆層の厚みは好ましくは0.1〜1μm、より好ましくは0.15〜0.5μmである。更に好ましくは0.2〜0.35μmである。
酸化処理後、ニッケル金属被覆される炭素繊維は、必要に応じてニッケル金属被覆処理の際、炭素繊維束とされる。炭素繊維束とする方が取り扱いの容易な場合が多い。炭素繊維束は集束剤を用いて集束処理される。かかる集束剤はニッケル金属被覆する直前に除去されることが好ましい。かかる除去方法としては、酸化ガス雰囲気あるいは不活性ガス雰囲気中で焼成処理する方法が代表的に例示されかつ好適である。不活性ガス雰囲気中での焼成処理がより好ましい。かかる処理は炭素繊維表面の酸化が進行しないからである。
更に取り扱い性の点から、得られるニッケル金属被覆炭素繊維は好ましくは集束処理される。ニッケル金属被覆前の炭素繊維およびニッケル金属被覆炭素繊維の集束剤としては、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、およびウレタン系樹脂等が例示される。ニッケル金属被覆前の炭素繊維では、特にスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、あるいはスチレン−アクリル共重合体樹脂が好適に例示され、ニッケル金属被覆炭素繊維では、特にエポキシ系樹脂やウレタン系樹脂が好適に例示される。これらの樹脂は、完全水溶性、部分水溶性、および水以外の有機・無機溶媒可溶性のいずれであってもよい。特に作業環境上部分水溶性または完全水溶性樹脂であるのが好ましい。これらの水溶性樹脂は、分子鎖中または末端基にポリアルキレンオキシド骨格、ピペラジンに代表される三級アミン骨格、スルホン酸基またはその塩、並びにアミノ基またはその塩などを分子鎖中に導入することにより得ることができる。その中でもポリアルキレンオキシドセグメント、スルホン酸基またはその塩の導入がより好ましい。またかかる塩はアルカリ金属塩が好ましい。更に集束された炭素繊維における1束当りのフィラメント数は、好ましくは3,000〜350,000本、より好ましくは6,000〜70,000の範囲である。
<工程−I〜工程−VIについて>
本発明の別の態様は、上述のとおり工程−I〜工程−VIからなることを特徴とする電磁波遮蔽性熱可塑性樹脂組成物、特に該組成物のペレットの製造方法にかかるものである。
工程−Iは、炭素繊維の表面を酸化処理して、X線光電子分光法(ESCA法)により測定される酸素と炭素とのピーク比(O1S/C1S)を0.15〜0.17の範囲に調整する工程である。かかる工程−Iは上述のとおり、各種の酸化処理方法により炭素繊維表面を酸化処理する。O1S/C1Sが0.15未満ではニッケル金属被覆の密着性が十分でないため、特に溶融粘度の高い樹脂との溶融混練においてかかる金属被覆が剥離し、樹脂組成物の電磁波遮蔽性が低下しやすい。一方、O1S/C1Sが0.17を超えるとニッケル金属被覆の密着性は良好になるものの、特に溶融粘度の高い樹脂との溶融混練において炭素繊維が折れやすくなるために、電磁波遮蔽性が低下する傾向を示す。本発明のかかる効果は、従来本出願人が提案している折れ抑制剤を含有しない場合により顕著である。かかる折れ抑制剤は、良好な電磁波遮蔽性や良好な耐衝撃性を樹脂組成物に付与する。一方でかかる折れ抑制剤は、樹脂との密着性を低下させることから、強度が低下する。したがって、本発明の方法および該方法により得られる樹脂組成物やそのペレットは強度がより重視される用途においてより有効である。
工程−IIは、該調整された炭素繊維束に電気メッキすることによりニッケル金属被覆炭素繊維を得る工程である。かかる電気メッキの方法は、従来公知の各種の方法を採用することができる。例えば(i)特開昭59−226195号公報に開示された、多段で電気メッキを行うにあたり、後段ほど電流量を少なくして金属被覆による炭素繊維束の架橋を防止してメッキを施す方法、(ii)特開昭60−238498号公報に開示された、多段で電気メッキを行うにあたり、2段目以降では炭素繊維束の開繊部だけで電気メッキし、非開繊部では電流を遮蔽して電気メッキしない方法、(iii)特開昭63−264969号公報に開示された、上記(i)とは逆に後段ほど電流量を多くしてメッキを施す方法、並びに(iv)特開平3−104984号公報に開示された、電気メッキを特定の張力範囲下で、エアーバブリングを行いながら行い、加えて多段で電気メッキを行うにあたり、1段目は特定の電流密度範囲で、それ以降は後段ほど電流密度を高くする方法などが例示される。炭素繊維束への電気メッキは、エアーバブリング、メッキ液の噴出、および炭素繊維の振動などの外力により、繊維束を開繊させて行うことが好ましい。特に炭素繊維束の本数が10,000本を超える場合には開繊のための外力を作用させることが好ましい。炭素繊維束は上記のとおり、集束剤で集束処理されていてもよい。かかる集束剤の好適な具体例としては、スチレン−アクリル共重合体樹脂と界面活性剤(ポリエチレン・オキサイド縮合物に代表される非イオン界面活性剤が好適)とからなる水性エマルジョン剤が例示される。
工程−IIIは、該ニッケル金属被覆炭素繊維を集束剤を用いて集束処理し、集束されたニッケル金属被覆炭素繊維ロービングを得る工程である。かかる集束処理における集束剤は、上記のとおりである。工程−IIIのロービングにおける集束剤は、乾燥された状態でも未乾燥の状態であってもよい。即ち集束剤が未乾燥のロービングを切断してチョップドストランドとし、かかる状態で乾燥することもできる。集束剤の炭素繊維への付着方法としては、該集束剤の水溶液または水性エマルジョン液を炭素繊維に付着させ、その後水分を除去する方法が好ましい。集束剤の炭素繊維への付着量は、液中の集束剤の濃度や液の粘度などにより調整することができる。かかる集束剤の液は、更に界面活性剤、有機溶媒、潤滑剤、および消泡剤などを含有することができる。また集束剤を付着させた後に更にこれら剤を付着させることができる。ニッケル金属被覆炭素繊維の集束剤は上記のとおり、エポキシ樹脂またはウレタン樹脂が好適である。特に集束がこれら樹脂の水性エマルジョン剤の処理により行われることが好ましい。

工程−IVは、該ロービングを切断し、そのチョップドストランドを得る工程である。上述のとおり、かかるロービングの集束剤は切断の際に必ずしも乾燥されている必要はなく、切断後に集束剤の乾燥をすることもできる。ロービングの切断は各種のカッターを用いて行うことができ、その切断長さは、1〜15mm、より好ましくは4〜10mmの範囲で選択される。
工程−Vは、熱可塑性樹脂を準備し、該熱可塑性樹脂100重量部に対して、該チョップドストランド(B’成分)の割合が1〜100重量部となるよう調整し、押出機に供給する工程である。かかる押出機は特に限定されず、熱可塑性樹脂組成物の製造に利用される押出機のいずれも利用できる。中でも二軸押出機に代表される多軸押出機が好ましい。かかる二軸押出機のスクリュー形状は2条ネジスクリューがより好ましく使用され、スクリューの長さ(L)と直径(D)との比(L/D)は、好ましくは20〜45、より好ましくは28〜42である。スクリューにはニーディングディスクセグメント(またはそれに相当する混練セグメント)から構成された混練ゾーンを1個所以上有することが必要であり、1〜3箇所有することが好ましい。押出機は、好ましくは原料中の水分や溶融混練樹脂から発生する揮発ガスを脱気できるベントを有する。
熱可塑性樹脂、チョップドストランドおよびその他の原材料は、各種の方法により押出機に供給することができる。熱可塑性樹脂を主供給口より主として供給し、チョップドストランドをサイドフィーダーを用いて押出機の途中段階に設けられた供給口から、溶融された樹脂に対して供給する方法が好適に採用される。熱可塑性樹脂とその他の原材料を予備混合する手段としては、例えばナウターミキサー、V型ブレンダー、メカノケミカル装置、および押出混合機などが例示される。
工程−VIは、該熱可塑性樹脂とB’成分とを押出機中で溶融混練し樹脂組成物、殊にペレット形態の該樹脂組成物を得る工程である。上述のとおり、かかる溶融混練は熱可塑性樹脂とB’成分との混合物を1個所以上の混練ゾーンを通すことにより行われる。かかる混練ゾーンにおけるせん断作用があまりに強い場合には、金属被覆炭素繊維が折れやすくなり好ましくない。したがって溶融混練は、樹脂の溶融粘度をよく低くするために、対象樹脂において比較的高温のシリンダー温度を選択することが好ましい。更に混練ゾーンの構成として、例えばニーディングディスクセグメントの場合には、45°位相の5枚1組のセグメント(L/D=1)を使用し、トーピードリング、および正方向の組合せによる混練セグメントが好適に例示される(クリアランスはメーカー推奨値の場合)。
ダイスより吐出される溶融樹脂は、ストランド状またはシート状に冷却した後、ペレタイザーで切断しペレットを得ることができる。またダイスより吐出される溶融樹脂を直接切断してペレット化(いわゆるホットカット)することもできる。得られたペレットの形状は、円柱、角柱、および球状など一般的な形状を取り得るが、より好適には円柱である。かかる円柱の直径は好ましくは1〜5mm、より好ましくは1.5〜4mm、さらに好ましくは2〜3.5mmである。一方、円柱の長さは好ましくは1〜30mm、より好ましくは2〜15mm、さらに好ましくは2.5〜10mmである。
<ポリカーボネート樹脂について>
本発明のより好適な熱可塑性樹脂は、ポリカーボネート樹脂を50重量%以上含有する熱可塑性樹脂(A成分)である。かかるポリカーボネート樹脂は、通常使用されるビスフェノールA型ポリカーボネート以外にも、他の二価フェノールを用いて重合された、高耐熱性または低吸水率の各種のポリカーボネート樹脂であってもよい。ポリカーボネート樹脂はいかなる製造方法によって製造されたものでもよく、界面重縮合の場合は通常一価フェノール類の末端停止剤が使用される。ポリカーボネート樹脂はまた3官能フェノール類を重合させた分岐ポリカーボネート樹脂であってもよく、更に脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸、または二価の脂肪族または脂環族アルコールを共重合させた共重合ポリカーボネートであってもよい。ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、好ましくは13,000〜40,000、より好ましくは15,000〜38,000である。芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(M)は塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液から20℃で求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。かかるポリカーボネート樹脂の詳細については、特開2002−129003号公報に記載されている。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−40.83
c=0.7
他の二価フェノールを用いて重合された、高耐熱性または低吸水率の各種のポリカーボネート樹脂の具体例としては、下記のものが好適に例示される。
(1)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(以下“BPM”と略称)成分が20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、かつ9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下“BCF”と略称)成分が20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。
(2)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、ビスフェノールA成分が10〜95モル%(より好適には50〜90モル%、さらに好適には60〜85モル%)であり、かつBCF成分が5〜90モル%(より好適には10〜50モル%、さらに好適には15〜40モル%)である共重合ポリカーボネート。
(3)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、BPM成分が20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、かつ1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン成分が20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。
これらの特殊なポリカーボネートは、単独で用いてもよく、2種以上を適宜混合して使用してもよい。また、これらを汎用されているビスフェノールA型のポリカーボネートと混合して使用することもできる。
これらの特殊なポリカーボネートの製法及び特性については、例えば、特開平6−172508号公報、特開平8−27370号公報、特開2001−55435号公報及び特開2002−117580号公報等に詳しく記載されている。
<有機リン化合物>
上述のとおり本発明における樹脂組成物は、更に有機リン化合物(C成分)を特定割合で含有することが好ましい。かかる有機リン化合物としては、リン酸エステル、ホスホン酸エステル、およびホスファゼンオリゴマーなどが好適に例示される。これらの中でも、TGAによる、窒素ガス雰囲気中における23℃から20℃/分の昇温速度で600℃まで昇温した時の5%重量減少温度が300℃以上である有機リン化合物が好適である(上限は400℃が好適である)。かかる好適な有機リン化合物は樹脂組成物のリサイクル性を向上させる。
更にリン酸エステルとしては、下記式(I)で示される化合物が好適である。
Figure 0004674066
上記式中のXは、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビス(4−ヒドロキシジフェニル)メタン、ビスフェノールA、ジヒドロキシジフェニル、ジヒドロキシナフタレン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)サルファイドから誘導される二価の基であり、nは0〜5の整数であり、またはn数の異なるリン酸エステルの混合物の場合は0〜5の平均値であり、R11、R12、R13、およびR14はそれぞれ独立して1個以上のハロゲン原子を置換したもしくは置換していないフェノール、クレゾール、キシレノール、イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、p−クミルフェノールから誘導される一価の基である。
更に好ましいものとしては、上記式中のXが、ハイドロキノン、レゾルシノール、ビスフェノールA、およびジヒドロキシジフェニルから誘導される二価の基であり、nは1〜3の整数である成分を主成分として含み、またはn数の異なるリン酸エステルのブレンドの場合はその平均値であり、R11、R12、R13、およびR14はそれぞれ独立して1個以上のハロゲン原子を置換したもしくはより好適には置換していないフェノール、クレゾール、キシレノールから誘導される一価の基である。
金属被覆炭素繊維の金属の中にはポリカーボネート樹脂の加水分解を助長するものがあるため(例えばニッケルなど)、かかるリン酸エステルの中でも耐加水分解性に優れるものが好適である。リン酸エステルの耐加水分解性に影響を与える因子として、残留触媒(金属)の如き不純物、酸価、および化学構造などが既に公知である。本発明においてもリ酸エステルの不純物や酸価は低いほど好ましい。化学構造上耐加水分解性の良好なリン酸エステルとしては、トリフェニルホスフェート、レゾルシノールビス(ジキシレニルホスフェート)およびビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)などが好適に例示され、特に上記TGAの条件を満足する後二者が好ましい。これら二者の市販品は、通常少量のモノリン酸エステル化合物を含む。更にビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)の市販品は、二量体以上のオリゴマーも少量含有する混合物である。かかる混合物中、トリフェニルホスフェートは0.1〜5重量%の範囲が好ましく、ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート)は84〜98.5重量%の範囲が好ましく、二量体以上のオリゴマーは1〜11重量%の範囲が好ましい。
ホスファゼンオリゴマーとしては、フェノキシホスファゼンオリゴマーや環状フェノキシホスファゼンオリゴマーが好適に例示される。
<折れ抑制剤について>
特開2002−129003号公報には、熱可塑性樹脂と金属被覆炭素繊維との密着性を阻害する成分について記載されている。該成分は樹脂組成物製造時および樹脂組成物の溶融成形時に、金属被覆炭素繊維に加わる応力を低減しその折れを抑制する。その結果該成分の配合は樹脂組成物の電磁波遮蔽性を更に改良する。かかる折れ抑制剤の詳細については特開2002−129003号公報にポリカーボネート樹脂を主とする熱可塑性樹脂と導電性繊維との密着性を阻害する成分として記載されており、本発明においてもかかる記載の成分を利用できる。特に好適には、α−オレフィンと無水マレイン酸との共重合体、および炭素数4〜20のアルキルアルコキシシラン化合物が例示される。
しかしながら上述のとおり、本発明では折れ抑制剤をその有効量含有しない場合に、その効果がより顕著に発揮される。したがって電磁波遮蔽性と共に強度がより重視される場合には折れ抑制剤をその有効量含有しないことが好ましい。
<必要により配合し得る付加的成分について>
本発明における樹脂組成物には、更には必要に応じ、離型剤(例えば、脂肪酸エステル、ポリオレフィンワックス、シリコーン化合物、およびフッ素オイルなど)、有機リン化合物以外の難燃剤(例えば、臭素化エポキシ樹脂、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリカーボネート、臭素化ポリアクリレート、有機スルホン酸アルカリ(土類)金属塩、およびシリコーン系難燃剤など)、難燃助剤(例えば、アンチモン酸ナトリウム、および三酸化アンチモンなど)、滴下防止剤(フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレンに代表される)、酸化防止剤(例えば、ヒンダードフェノール系化合物、およびイオウ系酸化防止剤など)、紫外線吸収剤、光安定剤、離型剤、摺動剤(例えばPTFE粒子および高分子量ポリエチレン粒子など)、着色剤(例えばカーボンブラックおよび酸化チタンなどの顔料、並びに染料)、光拡散剤(例えばアクリル架橋粒子、シリコン架橋粒子、極薄ガラスフレーク、および炭酸カルシウム粒子など)、無機系蛍光体(例えばアルミン酸塩を母結晶とする蛍光体)、帯電防止剤、導電剤(例えばカーボンブラック、気相成長炭素繊維、およびカーボンナノチューブなど)、流動改質剤(ポリカプロラクトン、およびスチレン系オリゴマーなど)、無機もしくは有機の抗菌剤、光触媒系防汚剤(微粒子酸化チタン、および微粒子酸化亜鉛など)、赤外線吸収剤(ATO微粒子、ITO微粒子、ホウ化ランタン微粒子、ホウ化タングステン微粒子、およびフタロシアニン系金属錯体など)、フォトクロミック剤、並びに蛍光増白剤などが配合できる。
<本発明の樹脂組成物からなる成形品について>
本発明における樹脂組成物は、通常上述の方法で得られたペレットを射出成形して各種製品を製造することができる。かかる射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、適宜目的に応じて、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体の注入によるものを含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などの射出成形法を用いて成形品を得ることができる。これら各種成形法の利点は既に広く知られるところである。また成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。
また本発明における樹脂組成物は、押出成形により各種異形押出成形品、シート、フィルムなどの形で使用することもできる。またシート、フィルムの成形にはインフレーション法や、カレンダー法、キャスティング法なども使用可能である。さらに特定の延伸操作をかけることにより熱収縮チューブとして成形することも可能である。また本発明の樹脂組成物を回転成形やブロー成形などにより成形品とすることも可能である。
更に上記各種の方法で製造された成形品には、各種の表面処理を行うことが可能である。ここでいう表面処理とは、蒸着(物理蒸着、化学蒸着など)、メッキ(電気メッキ、無電解メッキ、溶融メッキなど)、塗装、コーティング、印刷などの樹脂成形品の表層上に新たな層を形成させるものであり、樹脂成形品に用いられる各種方法が適用できる。表面処理としては、具体的には、ハードコート、撥水・撥油コート、紫外線吸収コート、赤外線吸収コート、並びにメタライジング(蒸着など)などの各種の表面処理が例示される。更にシート成形品(リボン状成形品を含む)を更に各種真空成形、熱プレス成形、および曲げ加工などすることにより、各種の搬送容器や電磁波遮蔽カバーなどを製造することもできる。
本発明者らが現在最良と考える本発明の形態は、上記の各要件の好ましい範囲を集約したものとなるが、例えば、その代表例を下記の実施例中に記載する。もちろん本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
以下に実施例をあげて本発明を更に説明する。なお、評価は下記の方法により行った。
(I)電磁波遮蔽効果:一辺150mm、厚み3mmの試験片を使用し、(株)アドバンテスト製のTR−17301AとR3361Aを併用して電界波(周波数900MHz)について測定した。
(II)引張破断強度:ISO527−1および527−2に準拠して引張破断強度を測定した。試験形状は、長さ175mm×幅10mm×4mmであった。
[実施例1〜10、比較例1〜4]
表1〜表2に記載の樹脂組成物を以下の要領で作成した。尚、説明は以下の表中の記号にしたがって説明する。
表1〜表2に記載の成分を以下の要領でベント式二軸押出機[日本製鋼所(株)製TEX−30XSST]を用い、溶融混練して樹脂組成物のペレットを得た。原料は最後部の第1供給口および押出機途中の第2投入口(サイドフィーダー)より供給した。その他C成分の“リン酸−3”のみ、80℃に加温し定量液注装置にて第1供給口直後の供給口より押出機に所定割合を供給した。第2供給口にはB成分の各種金属被覆炭素繊維を供給し、第1供給口からは樹脂、または樹脂とC成分とのドライブレンド物を供給した。第1供給口および第2供給口の供給量は、計量器[(株)クボタ製CWF]により精密に計測された。第1供給口から第2供給口の間にニーディングディスクによる混練ゾーンがあり、その直後に開放されたベント口が設けられていた。サイドフィーダー以後に更にニーディングディスクによる混練ゾーンおよびそれに続くベント口が設けられていた。ベントの真空度は3kPaであった。溶融樹脂組成物のストランドを押出し、水浴において冷却した後、ペレタイザーでストランドカットを行い、ペレット化した。
押出条件は、シリンダー温度280℃およびダイス温度280℃とした。但し、実施例9は230℃、実施例10は250℃とした。
得られたペレットを100℃で6時間乾燥した後、射出成形機[住友重機械工業(株)SG−150U]により、C成分を含有しないサンプルではシリンダー温度300℃および金型温度100℃、並びにC成分を含有するサンプルではシリンダー温度280℃および金型温度80℃とした。実施例9のサンプルはシリンダ温度230℃および金型温度60℃とし、実施例10のサンプルはシリンダ温度250℃および金型温度40℃とした。
原料は下記のものを使用した。
(樹脂成分)
PC:ポリカーボネート樹脂パウダー(帝人化成(株)製、パンライトL−1250WP(商品名)、粘度平均分子量は、24,000)
ABS:ABS樹脂ペレット(日本エイアンドエル(株)製、サンタックUT−61(商品名))
PBT:ポリブチレンテレフタレート樹脂(ウィンテックポリマー(株)製、ジュラネックス500FP(商品名))
(B成分)
NiCF−1:ESCA法により測定される酸素と炭素とのピーク比(O1S/C1S)が0.16に調整された表面を有する炭素繊維にニッケル被覆を施したニッケル被覆炭素繊維(直径7.5μm、長さ6mm)
NiCF−2:O1S/C1Sが0.14に調整された表面を有する炭素繊維にニッケル被覆を施したニッケル被覆炭素繊維(寸法NiCF−1に同じ)
NiCF−3:O1S/C1Sが0.18に調整された表面を有する炭素繊維にニッケル被覆を施したニッケル被覆炭素繊維(市販製品に同じ、寸法NiCF−1に同じ)
(B成分の調整方法)
糸の太さが1.0デニールの単繊維フィラメントを12,000本集めて構成したアクリロニトリル繊維ストランドを空気中で280℃で耐炎化させた後、1,400℃で炭素化処理を行った。引き続きこのストランドを5重量%の硫酸アンモニウム水溶液中に連続的に浸漬させながら、15c/gの電気量で通電して表面処理を施した。浸漬および通電の時間を60秒前後で調整することにより、炭素繊維表面のESCA法で測定される酸素と炭素とのピーク比(O1S/C1S)の値を調整した。得られた炭素繊維は酸化処理後にイオン交換水で洗浄および乾燥した後、スチレン−メチルメタクリレート共重合体樹脂とポリエチレンオキサイドグリコール(重量比9/1)を含有するサイジング剤の水性エマルジョンに浸漬し乾燥することにより集束処理した。得られた炭素繊維束を次の一連の工程を連続して行いニッケル被覆された炭素繊維のチョップドストランドを得た。まず炭素繊維を窒素ガスを流通させた石英管中を通して焼成し(O1S/C1Sの値は変化していない)、次いで多段で電気メッキを行いニッケル被覆を施し、次いでイオン交換水で洗浄し、その後ウレタン樹脂の水性エマルジョン液中を通し乾燥することにより集束処理し、最後に集束された繊維をカッターにて6mmに切断してチョップドストランドを得た。電気メッキは、特開昭59−226195号公報に開示された条件に準じて行い、約0.25μmの膜厚のニッケル被覆を炭素繊維に施した。またウレタン集束剤の付着量は約3重量%であった。
(C成分)
リン酸−1:リン酸エステル(旭電化工業(株)製アデカスタブFP500(商品名))
リン酸−2:リン酸エステル(大八化学工業(株)製TPP(商品名))
リン酸−3:リン酸エステル(大八化学工業(株)製CR−741(商品名))
(その他)
DC30:無水マレイン酸とα−オレフィンとの共重合体からなる酸変性オレフィンワックス(三菱化学(株)製ダイヤカルナPA30M(商品名))
TMP:トリメチルホスフェート(大八化学工業(株)製TMP(商品名))
ST−1:ホスホナイト系抗酸化剤(サンド社製サンドスタブP−EPQ(商品名))
Figure 0004674066
Figure 0004674066
上記表から明らかなように、本発明の特定範囲のO1S/C1Sにおいては、改良された電磁波遮蔽性を有する樹脂組成物が得られることが分かる。更にかかる効果は折れ抑制剤(DC30)を含有しないサンプルにおいてより顕著であることが分かる。更に電磁波遮蔽性は、リン酸エステルを含有するポリカーボネート樹脂組成物においてより良好である。
上述のとおり、本発明の方法並びに樹脂組成物は、電子機器の筐体を始め電磁波遮蔽を必要とする幅広い産業分野で好適であり、その奏する工業的効果は格別のものである。かかる樹脂組成物は、特に電子機器の筐体に好適であるが、その他その良好な導電性を活かして、スイッチ部品、電気メッキ用部材、発熱素子、および放熱用部材などにも利用可能である。

Claims (8)

  1. 熱可塑性樹脂100重量部あたり、ニッケル金属被覆炭素繊維1〜100重量部を含有する組成物であって、該ニッケル金属被覆炭素繊維は炭素繊維表面におけるX線光電子分光法(ESCA法)により測定される酸素と炭素とのピーク比(O1S/C1S)が、0.15〜0.17の範囲に調整された炭素繊維にニッケル金属被覆を施したニッケル金属被覆炭素繊維(B成分)であることを特徴とする電磁波遮蔽性熱可塑性樹脂組成物。
  2. 熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂およびポリブチレンテレフタレート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂である請求項1記載の組成物。
  3. 熱可塑性樹脂は、ポリカーボネート樹脂を50重量%以上含有する熱可塑性樹脂(A成分)である請求項1または2記載の組成物。
  4. 更に、A成分100重量部あたり、有機リン化合物(C成分)1〜100重量部を含む請求項1〜3のいずれかに記載の組成物。
  5. (1)炭素繊維の表面を酸化処理して、X線光電子分光法(ESCA法)により測定される酸素と炭素とのピーク比(O1S/C1S)を0.15〜0.17の範囲に調整する工程(工程−I)、
    (2)該調整された炭素繊維束に電気メッキすることによりニッケル金属被覆炭素繊維を得る工程(工程−II)、
    (3)該ニッケル金属被覆炭素繊維を集束剤を用いて集束処理し、集束されたニッケル金属被覆炭素繊維ロービングを得る工程(工程−III)、
    (4)該ロービングを切断し、そのチョップドストランドを得る工程(工程−IV)、
    (5)熱可塑性樹脂を準備し、該熱可塑性樹脂100重量部に対して、該チョップドストランド(B’成分)の割合が1〜100重量部となるよう調整し、押出機に供給する工程(工程−V)、並びに
    (6)該熱可塑性樹脂とB’成分とを押出機中で溶融混練し樹脂組成物を得る工程(工程−VI)、
    からなることを特徴とする電磁波遮蔽性熱可塑性樹脂組成物の製造方法。
  6. 熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂およびポリブチレンテレフタレート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂である請求項5記載の製造方法。
  7. 熱可塑性樹脂100重量部あたり、ニッケル金属被覆炭素繊維1〜100重量部を含有する組成物の電磁波遮蔽性向上方法であって、該ニッケル金属被覆炭素繊維として炭素繊維表面におけるX線光電子分光法(ESCA法)により測定される酸素と炭素とのピーク比(O1S/C1S)が、0.15〜0.17の範囲に調整された炭素繊維にニッケル金属被覆を施したニッケル金属被覆炭素繊維(B成分)を用いることを特徴とする電磁波遮蔽性熱可塑性樹脂組成物の電磁波遮蔽性向上方法。
  8. 熱可塑性樹脂が、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂およびポリブチレンテレフタレート樹脂からなる群より選ばれる少なくとも一種の樹脂である請求項7記載の方法。
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