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JP4677982B2 - 鉄道車両用ブレーキディスク及びその締結構造 - Google Patents
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JP4677982B2 - 鉄道車両用ブレーキディスク及びその締結構造 - Google Patents

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本発明は、主として摺動面でボルト締結されるブレーキディスクであり、締結ボルトの強度信頼性に優れると共に、摺動面で接触するブレーキライニングに生じる衝撃荷重を極力低減でき、長期間の使用に耐え得ることが可能な鉄道車両用ブレーキディスク、及びその締結構造に関するものである。
鉄道車両や自動車及び自動二輪車等の陸上輸送機械の制動装置として、ブロックブレーキ、ドラムブレーキ、ディスクブレーキなどが使用されている。そして、近年では、車両の高速化や大型化に伴い、ディスクブレーキが多用されるようになってきている。
ディスクブレーキとは、ブレーキディスクとブレーキライニングとの摩擦により制動力を得る装置である。通常、ボルトにより、車輪、またはディスク体を介して車軸に取り付けたドーナツ型の円盤状ディスクの摺動面に、ブレーキライニングを押し付けることによって制動力を得、車軸または車輪の回転を制動して車両の速度を制御する。この摺動面を有する円盤状のディスクを、ブレーキディスクと称する。
このブレーキディスクの中で、鉄道車両用ブレーキディスクには、側ディスクと軸マウントディスクがある。このうち、側ディスクとは、車輪の側面に締結されるブレーキディスクであり、軸マウントディスクとは、ディスク体を介して車軸に締結されるブレーキディスクである。以下、本明細書において、ブレーキディスクというときは、側ディスクと軸マウントディスクの両者を指すものとする。
図10は従来型の鉄道車両用側ディスクを示し、(a)図はブレーキディスクの1/4を示す半径方向−周方向平面図、(b)図は(a)図のA−A断面図(半径方向−軸方向断面図)である。
図10に示すように、一般に、ブレーキディスク1は、一方(表面)側に摺動面1baを備えた摺動部1bと、車輪に締結するための締結孔1aaを備えた締結部1aとから構成されている。また、ブレーキディスク1の前記摺動面1baの他方(裏面)側にはフィン1cが設けられている。
図11は従来型の鉄道車両用ブレーキディスクが車輪に取り付けられた状態を模式的に示す半径方向−軸方向断面図である。
図11に示すように、ブレーキディスク1は、締結ボルト3とナット4によって、車輪2の板部2a両側面に一体的な回転可能に取り付けられる。また、これらの摺動面1baとの対向位置には、それぞれブレーキライニング5が摺動面方向への移動可能に取り付けられている。
そして、制動時には、ブレーキライニング5がブレーキディスク1側に移動して車輪2の両側面から強く挟圧し、この摩擦力によって車輪2を介して車軸の回転を制動して車両を停止させる。なお、図11中の2bは車輪2の板部2aに設けたブレーキディスク1の締結孔、6は平座金を示す。
ところで、新幹線等の高速鉄道車両では、ブレーキディスクの回転速度や慣性力が非常に大きいので、制動中のブレーキディスクの温度上昇は著しく大きくなる。そのため、ブレーキディスクの熱変形や、これに伴う締結ボルトへの著大な応力発生等が問題となっている。
このうち、ブレーキディスクの熱変形を抑制する技術として、特許文献1では、摺動部で車輪と締結するブレーキディスクを開示している。
特開2001−311441号公報
図12は特許文献1で開示された、摺動部で車輪と締結するブレーキディスクの代表的なものについて、車輪との締結状態を表した半径方向−軸方向断面図である。
図12に示すように、このブレーキディスク1は、摺動部1bに設けた締結孔1bbに締結ボルト3を挿入することで車輪2と締結されるので、この締結ボルト3によってブレーキディスク1の軸方向への変形が抑えられ、従来型のブレーキディスクに比べて熱変形の低減が可能になる。
しかしながら、特許文献1で開示された締結方法では、ブレーキディスクの熱膨張が締結ボルトに直接負荷されるので、1回の制動操作によって発生する締結ボルトの応力変動は、従来型のブレーキディスクに比べてむしろ大きくなる。そのため、締結ボルトの疲労寿命を短く想定しなければならない。
摺動部で車輪と締結する上記のブレーキディスクにおいて、締結ボルトの発生応力を低減させ、疲労破壊に対する安全性を確保する技術として、図12に示す締結孔1bbの大径部1bbaの座面と、締結ボルト3の頭部負荷座面の間に皿ばねを介在させることが考えられる。その効果は、被締め付け物が変形した場合に、その変形分を皿ばねが吸収することにより、締結ボルトに作用する動的な荷重が大きくならないことにある。
しかしながら、皿ばねを介在させる場合は、摺動部に設ける締結孔の大径部の大きさを、締結ボルトの頭部よりも大きい皿ばねの外径以上となるようにしなければならない。このような大きさの締結孔(大径部)を設けた場合、摺動面にて接触するブレーキライニングが締結孔上を通過する際に衝撃的な荷重が発生し、ブレーキライニングに欠けや割れが発生して安定的な摩擦特性が得られないという新たな問題が発生する。
特に特許文献2に見られるように、ブレーキライニングが多数のライニング部材より形成されている場合は、この問題が重要となる。
特表平10−507250号公報
この問題を解決するには、締結ボルトの頭部および皿ばねの大きさを小さくしなければならないが、締結ボルト頭部や皿ばねの大きさを小さくすることは、すなわち締結ボルトのねじ径を小さくすることであるため、締結ボルトに生じる負荷が増大して締結ボルトの疲労安全性を確保できなくなる。
本発明が解決しようとする問題点は、摺動部でボルト締結する従来のブレーキディスクにおいて、制動時における締結ボルトの応力変動を小さくするために皿ばねを使用した場合に、安定的な摩擦特性を得ようとすると、締結ボルトの疲労安全性を確保できないという点である。
発明者らは、鉄道車両用ブレーキディスク、特に摺動部でボルト締結するブレーキディスクに関して、制動負荷を想定した数値解析を行い、研究を重ねた結果、以下の知見を得た。
(A) ブレーキライニングが摺動面に開口する締結孔部を通過する際の衝撃荷重によって、ブレーキライニングに生じる応力は、ブレーキライニングの摩擦材ブロックの一部が締結孔内に落ち込むことによって生じる。この落ち込み量は、摺動面に開口する締結孔の径が小さいほど小さくなり、これによってブレーキライニングに生じる応力も低減する。従って、ブレーキライニングの欠けや割れを抑制し、安定した摩擦特性を得るには、摺動面に開口する締結孔の径をできるだけ小さくする必要がある。
(B) 摺動面に開口する締結孔の径を小さくするために、締結ボルトの頭部寸法や皿ばねの外径を小さくすると、当然ながら締結ボルトのねじ径が小さくなって締結ボルトに発生する応力が増大し、締結ボルトの疲労安全性を確保することができなくなる。
(C) 締結ボルトのねじ径や皿ばねの外径を変えずに、摺動面に開口する締結孔の径を小さくすると、摺動面上から、皿ばね、締結ボルト、ナットを挿入した締結ができなくなる。このため、摺動面上には締結ボルトを締付けるために必要最小限の径の孔を開け、摺動面に対して反対のフィン面側に設けたボルト座に、このフィン面側から、皿ばね、締結ボルト、およびナット等の締結部品を挿入可能な横穴を、ブレーキディスクの円周方向に設ける形状を考えた。このような形状では、締結ボルトのねじ径を小さくすることなく、摺動面に開口する締結孔の径を大幅に小さくすることができる。
本発明の鉄道車両用ブレーキディスクは、発明者らの数値解析や研究によって得た前記の知見に基づいて成されたもので、特に摺動部でボルト締結する鉄道車両用ブレーキディスクに関して、締結ボルトの強度信頼性を確保しつつ、ブレーキライニングの欠けや割れを抑制し、安定した摩擦特性を得ることを目的としている。
すなわち、本発明の鉄道車両用ブレーキディスクは、
車輪、または車軸に取り付けられるディスク体に、摺動部でボルト締結される鉄道車両用ブレーキディスクであって、
前記摺動部に設ける締結孔は、
1) 締結ボルトの頭部の挿入側では、
前記摺動部の摺動面と反対側から摺動部内に設けられた縦穴と、
この縦穴と前記摺動部内で連通するように設けられた横穴と、
前記摺動面側と前記縦穴を貫通するように設けられた、締結ボルトの締付け孔とで構成され、
前記縦穴は、締結ボルトのねじ軸部の貫通は可能で、頭部の貫通は不可能な大きさの内径を有し、
また、前記横穴は、締結ボルトの頭部が挿入可能な大きさを有すると共に前記摺動面と反対側に開口していることを、
2) ナットの挿入側では、
前記摺動部の摺動面と反対側から摺動部内に設けられた縦穴と、
この縦穴と前記摺動部内で連通するように設けられた横穴とで構成され、
前記縦穴は、締結ボルトのねじ軸部の貫通は可能で、ナットの貫通は不可能な大きさの内径を有し、
また、前記横穴は、ナットが挿入可能な大きさを有すると共に前記摺動面と反対側に開口し、かつナットの回転を阻止する回転阻止部が形成されていることを、
最も主要な特徴としている。
また、本発明の鉄道車両用ブレーキディスクの締結構造は、前記1)の構成のブレーキディスクと、2)の構成のブレーキディスクを、車輪、または車軸に取り付けられるディスク体を挟む態様で、締結ボルトとナットを用いて締結することを最も主要な特徴としている。
本発明では、締結ボルトのねじ径を小さくしないで摺動面に開口する孔を小さくできるので、締結ボルトの強度信頼性を確保しつつ、ブレーキライニングの欠けや割れを抑制でき、安定した摩擦特性が得られるという利点がある。
以下、本発明の着想から課題解決に至るまでの経過と共に、本発明を実施するための最良の形態例について、図1〜図9を用いて説明する。
a) 摺動面に開口する締結孔部を通過する際にブレーキライニングに生じる応力について
発明者らは、摺動面に開口する締結孔部を、ブレーキライニングが通過する際の衝撃荷重によって、ブレーキライニングに生じる応力を評価するため、図1に示すモデルを用いて有限要素法(FEM)による数値解析を行った。
使用したモデルは、摺動部相当の板材に直径が36mmの孔10aの周囲に3mmの面取り10bを設けたディスク10と、ブレーキライニングの摩擦材相当の、直径が40mmの円柱形状のブロック11からなっている。
このブロック11をディスク10に荷重10kNで押し付け、その接触面に対して水平方向にスライドさせた。この場合におけるブロック11の付け根部分11aに作用する応力の変化を図2(a)に示す。
この図2(a)に示す結果より、以下の2点でブロック11の付け根部分11aに高い応力が発生し、その後、滑りが生じると応力が低下することが分かる。
・ブロック11がディスク10の孔10aに落ち込み(図2(b))、孔10aの面取り10b上を滑り始める直前の点(図2(c)と図2(d)の間)。
・摺動面上に乗り上がる直前の点(図2(e)の直前)。
従って、ブロック11に発生する応力を低減させるためには、面取り10bを含む孔10aの内径をブロック11の外径よりも小さくすれば良いことが分かる。
しかしながら、面取り10bを含む孔10aの内径がブロック11の外径より小さくても、図3に示すように、ブロック11の弾性変形によって、ブロック11の移動方向前方側の角11bが孔10aの面取り10b内に落ち込み、少なからず応力が発生する可能性がある。
従って、ブロック11に発生する応力を低減させるためには、孔10aの内径をできるだけ小さくし、ブロック11の弾性変形による孔10a内への落ち込み量を小さくすることが効果的である。
b) 締結ボルトのねじ径と発生応力の関係について
上記a)の検討結果に基づき、摺動部に設ける締結孔を小さくするために、締結ボルトのねじ径と皿ばねの外径を小さくすることを検討した。
まず、図4に示す基本形状のモデルについて、制動時における熱負荷を想定したFEM解析を行った。このモデルは、摺動部1bに、摺動部1bを貫通する締結孔1bbを設けたブレーキディスク1を、その対称性を考慮して15°分のみモデル化したものと、同じく軸方向1/2で15°分のみをモデル化した車輪2の板部2aと、締結ボルト3とナット4を一体化して軸方向1/2、円周方向1/2のみをモデル化したものと、皿ばね7からなる。この時、締結ボルト3のねじ部の外径は18mmを想定し、皿ばね7の外径は34mmとしている。
この図4に示したモデルを用いて、360km/hの初速から完全に停止するまでに相当する条件でFEM解析を行った。その結果、締結ボルト3に発生する応力として下記表1の値が得られた。
表1中、幹部と記載している応力は、締結ボルトの幹部における、車輪の板厚方向中央位置に対応する位置の内周側表面と外周側表面の最大主応力(今回のFEM解析の場合、軸方向応力となる)より求めている。引張応力は、内周側と外周側の平均値とし、制動中の変動幅を示している。一方、曲げ応力は、内周側と外周側の応力差の半分とし、引張応力の場合と同様、制動中の変動幅を示している。
また、ねじ部と記載している応力は、外径が18mmの細目ねじについて、JIS B 1082で定められた有効断面積と、これより求められる断面係数の比を用いて、引張応力と曲げ応力を、幹部の応力よりそれぞれ求めたものである。
Figure 0004677982
次に、ねじの外径が小さくなった場合の応力を推定した。この推定は、表1の幹部の引張応力と曲げ応力に基づいて、外径が18mmの細目ねじについて求めた、表1の場合と同様の手法で、外径が16mm、14mm、12mmの細目ねじについて応力を算出した。その結果を下記表2に示す。
Figure 0004677982
表2より、当然ながらねじの外径が小さくなると、ねじ部に発生する応力が著しく大きくなることが分かる。なお、表2に記載した応力値は、皿ばねの形状が変わらないとの前提で求めたものであり、ねじの外径を小さくし、さらに皿ばねの外径まで小さくして締結孔を小さくしようとすれば、皿ばねのばね剛性が大きくなり、締結ボルトに生じる応力は表2に記載の値よりも大きくなることが予想される。
以上より、締結孔を小さくするために、締結ボルトのねじ外径や皿ばねの外径を単純に小さくすると、締結ボルトに発生する応力が増大し、締結ボルトの疲労安全性を確保することができないことが分かる。
c) 摺動面に開口する締結孔の径を小さくする形状について
図5に示すように、締結ボルト3のねじ外径や皿ばね7の外径を変えずに、摺動面1baに開口する孔の内径d1を小さくすると、摺動面1ba側から、皿ばね7、締結ボルト3やナット4を挿入して締結することができなくなる。
このため、図6に示すように、摺動部1bの摺動面1baと反対側のフィン面1caから摺動部1b内には、締結ボルト3のねじ軸部は貫通が可能であるが、頭部は貫通できない径の縦穴1bbbを設ける。また、摺動面1baとこの縦穴1bbbを貫通するように、締結ボルト3を回転させるために必要な最小限の内径d2、例えば締結ボルト3に六角穴付きボルトを用いる場合、六角穴の最大径を内径とする締付け孔1bbcを設ける。
そして、皿ばね7、締結ボルト3の挿入が可能な横穴1bbdを、摺動部1b内においてブレーキディスク1の円周方向に設けて前記縦穴1bbbと連通させ、前記フィン面1caに開口させる形状を考えた。
なお、横穴1bbdのフィン面1caへの開口部1bbeから縦穴1bbbへは、締結ボルト3のねじ軸部を縦穴1bbbに貫通配置させるべく移動するための繋がり部1bbfが設けられている。
この図6に示した形状では、前記のように、締結ボルト3として六角穴付きボルトを用いる場合、摺動面1baに開口する、締結ボルト3の締付け孔1bbcの内径d2は、六角穴の最大径まで小さくすることができる。
従って、上記b)で検討した図4の基本形状に基づき、締結ボルト3のねじ外径を18mm、皿ばね7の外径を36mmとすると、従来は内径が38mmの締結孔1bbを設けていたのに対し、本発明形状では締付け孔1bbcの内径を、JIS B 1176で規定される六角穴の外径(16.3mm)より若干大きい17mm程度まで小さくすることができる。
また、ナット4側では、図7(d)に示すように、横穴1bbdの寸法Lをナット4の対辺部分の幅とほぼ同じ寸法として、ナット4を挿入した状態で、ナット4の回転を阻止するようにしている。このようにすれば、締結ボルト3を回転させて締付ける時に、ナット4の回転を阻止するための治具を挿入するための孔を、摺動面1baに開口させる必要がなくなる。さらに、本発明形状では、万一、想定外の過大荷重が発生し、締結ボルト3が折損した場合でも、折損部が軸方向に抜けることがないので、落失を抑止する効果もある。
本発明の効果を確認するために、本発明品のボルト発生応力を、先に実施した従来品のボルト発生応力である表2の解析結果と比較するべく、本発明品である図6の形状に基づいて図8に示すモデルを作成した。
この図8に示したモデルは,摺動部1bに上記構成の締結孔を設けたブレーキディスク1を、その対称性を考慮して30°分のみモデル化したものと、同じく軸方向1/2で30°分のみをモデル化した車輪2の板部2aと、締結ボルト3とナット4を一体化して軸方向1/2、円周方向1/2のみをモデル化したものと、皿ばね7とからなっている。
これは、基本的に、従来品である図4のモデルを円周方向に2倍した形状であるが、ブレーキディスク1の摺動面1baに開口する締付け孔1bbcの径が18.5mmと小さく、摺動部1bの反対側に設けたボルト座1dに、皿ばね7、締結ボルト3、およびナット4を挿入する横穴1bbdをブレーキディスク1の円周方向に設けている点が異なる。
本発明品である図8に示したモデルを用いて、従来品と同様、360km/hの初速から完全に停止するまでに相当する条件で、FEM解析を行った。その結果、締結ボルトに発生する応力として下記表3の値が得られた。表3中の応力は、従来品と同様の手法で求めたものであるが、本発明品では円周方向に非対称であるため、従来品で求めた内周側と外周側の応力より求めた半径方向の曲げ応力に加え、円周方向の曲げ応力も生じている。これは、締結ボルトの円周方向両側の応力差の半分として求めたものである。
Figure 0004677982
次に、表3に示す本発明品の結果と、表2に示す従来品の結果を合わせて、引張応力と曲げ応力を足し合わせた応力値、ねじ外径、締結孔の内径を比較して下記表4に示す。ここで、本発明品の応力値の算出に用いた曲げ応力には、より大きい値であった円周方向曲げ応力を用いた。
従来品の締結孔内径は、基本形状である図4の形状のねじ外径18mmと締結孔内径36mmの比が一定であるとして算出した。図9に、下記表4に記載の締結ボルトのねじ部に発生する応力と締結孔内径との関係を示す。これより、本発明品では、従来品と比較して、締結ボルトのねじ部に発生する応力を増大させることなく、締結孔を小さくすることができることが分かる。
Figure 0004677982
以上より、本発明形状を採用することで、締結ボルト3の強度信頼性を確保しつつ、ブレーキライニングの欠けや割れを抑制し、安定した摩擦特性を得る効果があるとの結論を得た。
先に示した図6及び図7のブレーキディスク形状は、以上の検討結果より得られた本発明の技術に基づくものである。図6及び図7に示した形状では、締結ボルト3、皿ばね7、およびナット4を挿入する横穴1bbdをブレーキディスク1の円周方向に設けている。しかしながら、この横穴1bbdの方向は、必ずしも円周方向である必要はなく、円周方向に対し、ブレーキディスク1の内周側ないし外周側に傾斜して設けても良い。
また、図6に示したブレーキディスクと、図7に示したブレーキディスクを、図7に示したように、例えば車輪2を挟む態様で、締結ボルト3とナット4を用いて締結するのが、本発明の鉄道車両用ブレーキディスクの締結構造である。
本発明は上記の例に限らず、各請求項に記載された技術的思想の範疇であれば、適宜実施の形態を変更しても良いことは言うまでもない。
例えば本発明の技術は、ブレーキディスクが鉄鋼材料であるとして、FEM解析によって有効性を確認したが、ブレーキディスクが鉄鋼材料以外のアルミニウム等の他の材料であっても、同様の効果が得られる。
また、締結部品に皿ばねを用いた場合についてFEM解析によって有効性を確認したが、皿ばねがない場合、もしくは皿ばねの代替的な機能を持つ部品を用いた場合でも、本発明の技術を用いることによって、相対的には同様の効果が得られる。
さらに、本発明の技術は、図6に示した車輪の板部の両側に2枚のブレーキディスクを取り付ける車輪側ディスクタイプのみならず、車軸に圧入されたディスク体に2枚のブレーキディスクを取り付ける軸マウントタイプのブレーキディスクにも適用可能である。
またさらに、縦穴の内径が締結ボルトの頭部より小さく、この縦穴と摺動部内で連通する横穴を有するものであれば、六角穴付ボルトに代えて、通常の六角形等の頭部を有するボルトを用いてもよい。この時、摺動面側に開口する締付け孔の径は、締結ボルトの頭部を締め付けることができれば良く、例えば六角穴付きボルトを用いた場合の六角穴径より小さくしても良い。また、複数の穴を設けても良い。
以上の本発明は、鉄道車両用のブレーキディスクに限らず、自動車や自動二輪車等のブレーキディスクであっても適用できる。
ブレーキライニングが摺動面に開口する締結孔上を通過する際の発生応力を評価するための解析モデルを示す図で、(a)は側面から見た断面図、(b)は平面から見た図である。 (a)は摺動面に開口する締結孔上をブレーキライニングが通過する際の発生応力解析結果を示した図、(b)〜(e)はその変形挙動を、順を追って示す模式図である。 摺動面に開口する締結孔上をブレーキライニングが通過する際の落ち込み量を示す模式図である。 摺動部で車輪と締結するブレーキディスクの基本形状の解析モデルを示す模式図で、(a)は摺動面側から見た図、(b)は(a)図のA−A断面図、(c)はブレーキディスクの摺動面側から見た斜視図、(d)はブレーキディスクのフィン側から見た斜視図、(e)は(d)図の反ボルト締結側から見た斜視図である。 締結ボルトのねじ径、皿ばねの外径を変えずに、摺動面に開口する締結孔の径を小さくしたブレーキディスク形状とその締結構造を示す図で、(a)は摺動面側から図、(b)は(a)図のA−A断面図、(c)は(a)図におけるB部の拡大図、(d)は(c)図のC−C断面図、(e)は(c)図のD−D断面図である。 (a)〜(e)は、本発明のブレーキディスクおよびその締結構造を説明する図5と同様の図である。 (a)〜(e)は、摺動面に開口する締結孔を設けないナット側のブレーキディスクおよびその締結構造を説明する図5と同様の図である。 (a)(b)は、本発明のブレーキディスク形状とその締結構造の解析モデルを示す図4と同様の模式図、(c)は(a)図のB−B断面図、(d)〜(f)は図4(c)〜(e)と同様の模式図である。 ボルト発生応力の解析結果と締結孔径との関係を示す図である。 従来型の鉄道車両用側ディスクを示し、(a)はブレーキディスクの1/4を示す半径方向−周方向平面図、(b)は(a)図のA−A断面図(半径方向−軸方向断面図)である。 従来型の鉄道車両用ブレーキディスクが車輪に取り付けられた状態を模式的に示す半径方向−軸方向断面図である。 特許文献1で開示された、摺動部で車輪と締結するブレーキディスクの代表的なものについて、車輪との締結状態を表した半径方向−軸方向断面図である。
符号の説明
1 ブレーキディスク
1b 摺動部
1ba 摺動面
1bb 締結孔
1bbb 縦穴
1bbc 締付け孔
1bbd 横穴
1bbe 開口部
1bbf 繋がり部
2 車輪
3 締結ボルト
4 ナット
5 ブレーキライニング
7 皿ばね

Claims (6)

  1. 車輪、または車軸に取り付けられるディスク体に、摺動部でボルト締結される鉄道車両用ブレーキディスクであって、
    前記摺動部に設ける締結孔は、
    前記摺動部の摺動面と反対側から摺動部内に設けられた縦穴と、
    この縦穴と前記摺動部内で連通するように設けられた横穴と、
    前記摺動面側と前記縦穴を貫通するように設けられた、締結ボルトの締付け孔とで構成され、
    前記縦穴は、締結ボルトのねじ軸部の貫通は可能で、頭部の貫通は不可能な大きさの内径を有し、
    また、前記横穴は、締結ボルトの頭部が挿入可能な大きさを有すると共に前記摺動面と反対側に開口していることを特徴とする鉄道車両用ブレーキディスク。
  2. 前記横穴の、前記摺動部の摺動面と反対側に開口する開口部は、前記縦穴と繋がる繋がり部を有し、
    この繋がり部分は、締結ボルトのねじ軸部の貫通は可能で、頭部の貫通は不可能な幅であることを特徴とする請求項1に記載の鉄道車両用ブレーキディスク。
  3. 車輪、または車軸に取り付けられるディスク体に、摺動部でボルト締結される鉄道車両用ブレーキディスクであって、
    前記摺動部に設ける締結孔は、
    前記摺動部の摺動面と反対側から摺動部内に設けられた縦穴と、
    この縦穴と前記摺動部内で連通するように設けられた横穴とで構成され、
    前記縦穴は、締結ボルトのねじ軸部の貫通は可能で、ナットの貫通は不可能な大きさの内径を有し、
    また、前記横穴は、ナットが挿入可能な大きさを有すると共に前記摺動面と反対側に開口し、かつナットの回転を阻止する回転阻止部が形成されていることを特徴とする鉄道車両用ブレーキディスク。
  4. 前記横穴の、前記摺動部の摺動面と反対側に開口する開口部は、前記縦穴と繋がる繋がり部を有し、
    この繋がり部分は、締結ボルトのねじ軸部の貫通は可能で、ナットの貫通は不可能な幅であることを特徴とする請求項3に記載の鉄道車両用ブレーキディスク。
  5. 請求項1又は2に記載のブレーキディスクと、請求項3又は4に記載のブレーキディスクを、車輪、または車軸に取り付けられるディスク体を挟む態様で、締結ボルトとナットを用いて締結したことを特徴とする鉄道車両用ブレーキディスクの締結構造。
  6. 前記締結ボルトが六角穴付きボルトであることを特徴とする請求項5に記載の鉄道車両用ブレーキディスクの締結構造。
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