つぎにこの発明を図を参照してより具体的に説明する。図2は、この発明を適用したハイブリッド車のパワートレーンの構成、およびその制御系統を示す概念図である。まず、車両1の駆動力源としてエンジン2およびモータ・ジェネレータ(MG2)3が設けられており、エンジン2およびモータ・ジェネレータ(MG2)3は、デファレンシャル装置4を経由して車輪5に連結されている。エンジン1は燃料を燃焼させて、その熱エネルギを運動エネルギに変換する動力装置であり、エンジン2としては、内燃機関、例えば、ガソリンエンジンまたはディーゼルエンジンまたはLPGエンジン等を用いることが可能である。モータ・ジェネレータ3は、ロータ6およびステータ7を有している。このモータ・ジェネレータ3は、機械エネルギと電気エネルギとの間で相互に変換をおこなう機能、つまり、電動機としての機能(力行機能)と、発電機としての機能(回生機能)とを兼備している。
また、エンジン1からデファレンシャル装置4に至る経路に動力分配装置8が設けられている。この動力分配装置8は、シングルピニオン型の遊星歯車機構により構成されている。すなわち、同軸上に配置されたサンギヤ9およびリングギヤ10と、サンギヤ9およびリングギヤ10に噛合されたピニオンギヤ11を自転、かつ公転可能に保持するキャリヤ12とを有している。そして、エンジン2のクランクシャフト13と同軸上にインプットシャフト14が設けられており、クランクシャフト13とイプットシャフト14とが、ダンパ機構15を介して動力伝達可能に連結されている。さらにキャリヤ12とインプットシャフト14とが一体回転するように連結されている。また、車両1の前後方向で、エンジン2と動力分配装置8との間には、モータ・ジェネレータ3とは別のモータ・ジェネレータ(MG1)16が設けられている。モータ・ジェネレータ16は、ロータ17およびステータ18を有している。このモータ・ジェネレータ16は、機械エネルギと電気エネルギとの間で相互に変換をおこなう機能、つまり、電動機としての機能(力行機能)と、発電機としての機能(回生機能)とを兼備している。そして、モータ・ジェネレータ16のロータ17が、サンギヤ9に対して動力伝達可能に、具体的には一体回転するように連結されている。また、モータ・ジェネレータ3のロータとリングギヤ10とが動力伝達可能に連結、具体的には一体回転するように連結されている。このように、車両1は、動力の発生原理が異なるエンジン2およびモータ・ジェネレータ3,16を有している。
一方、動力分配装置8のリングギヤ10からデファレンシャル4に至る経路には変速機19が設けられている。この変速機19は、入力回転数と出力回転数との比、すなわち変速比を段階的に(不連続に)制御することの可能な有段変速機である。変速機19は、具体的には、第1の遊星歯車変速機構20および第2の遊星歯車変速機構21を有している。まず、第1の遊星歯車変速機構20は、シングルピニオン型の遊星歯車機構である。この第1の遊星歯車変速機構20は、同軸上に配置されたサンギヤ22およびリングギヤ23と、サンギヤ22およびリングギヤ23に噛合されたピニオンギヤ24を自転、かつ公転可能に保持するキャリヤ25とを有している。一方、第2の遊星歯車変速機構21は、シングルピニオン型の遊星歯車機構である。この第2の遊星歯車変速機構21は、同軸上に配置されたサンギヤ26およびリングギヤ27と、サンギヤ26およびリングギヤ27に噛合されたピニオンギヤ28を自転、かつ公転可能に保持するキャリヤ29とを有している。
そして、サンギヤ22とサンギヤ26とが一体回転するように連結され、キャリヤ25とリングギヤ27とが一体回転するように連結されている。このキャリヤ25およびリングギヤ27は、変速機19のアウトプットシャフト30に連結されている。また、変速機19を構成する回転要素、すなわち、各ギヤおよびキャリヤ同士の連結・遮断・固定を制御する係合装置が設けられている。ここで、係合装置としては油圧制御式または電磁制御式のいずれを用いてもよいが、ここでは、油圧制御式の係合装置を用いる場合について説明する。すなわち、リングギヤ10とリングギヤ23とを連結・解放するクラッチC1が設けられており、リングギヤ10を、サンギヤ22,26に対して連結・解放するクラッチC2が設けられている。また、サンギヤ22,26の回転・停止を制御するブレーキB1が設けられており、キャリヤ29の回転・停止を制御するブレーキB2が設けられている。
つぎに、車両1の制御系統について説明すると、モータ・ジェネレータ3との間で電力の授受をおこなう蓄電装置31と、モータ・ジェネレータ3を制御するインバータ32とが設けられている。また、モータ・ジェネレータ16との間で電力の授受をおこなう蓄電装置33と、モータ・ジェネレータ16を制御するインバータ34とが設けられている。蓄電装置31,33としては二次電池、より具体的にはバッテリ、またはキャパシタを用いることが可能である。さらに変速機19のクラッチやC1,C2およびブレーキB1,B2を制御するアクチュエータとして油圧制御装置35が設けられている。この油圧制御装置35は、油圧回路およびソレノイドバルブ、選択されるシフトポジションに基づい動作するマニュアルバルブなどを有する公知のものである。
さらに、車両の乗員により操作され、シフトポジション(後述する)を選択的に切り換えるためのシフトポジション選択装置52が設けられている。このシフトポジション選択装置52は、レバー式、ノブ式、ボタン式などのいずれでもよいが、ここでは、レバー式のシフトポジション選択装置52が用いられている場合について説明する。なお、レバーは、コンソールボックス、ステアリングコラムの側方、インストルメントパネルなどに設けることが可能である。また、シフトポジション選択装置52のレバーの操作力を油圧制御装置35に伝達する伝動装置53が設けられている。この伝動装置53は、リンクまたはワイヤーケーブルなどにより構成されている。さらに、シフトロック機構54が設けられている。このシフトロック機構54は、シフトポジションの変更を制限するための機構であり、レバーの操作力を伝動装置53に伝達しないようにする構成、または、レバー自体の動作を禁止する構成のいずれでもよい。例えば、リニアソレノイドなどのアクチュエータにより、レバーの動作を禁止することが可能である。
そして、エンジン2およびインバータ32,34および油圧制御装置35を制御する電子制御装置36が設けられている。この電子制御装置36には、図3に示すように、シフトポジションセンサの信号、エンジン水温センサの信号、モータ・ジェネレータ3,16の回転数センサの信号、エンジン回転数センサの信号、車速センサの信号、外気温センサの信号、油温センサの信号、フットブレーキスイッチの信号、アクセル開度センサの信号などが入力される。これに対して、電子制御装置36からは、エンジン2の電子スロットルバルブを制御する信号、エンジン2の燃料噴射装置を制御する信号、エンジン2の点火装置を制御する信号、インバータ32,34を制御する信号、油圧制御装置35を制御する信号などが出力される。
つぎに、車両1の制御について説明する。エンジン1が駆動され、エンジントルクがインプットシャフト14を経由して動力分配装置8のキャリヤ12に伝達されるとともに、エンジントルクの反力がモータ・ジェネレータ16で受け持たれ、動力分配装置8のリングギヤ10から出力される。ここで、モータ・ジェネレータ16の回転方向(正・逆)および力行・回生を制御することにより、動力分配装置8の変速比を無段階に(連続的に)制御可能である。具体的には、キャリヤ12が入力要素となり、サンギヤ9が反力要素となり、リングギヤ10が出力要素となり、キャリヤ12およびサンギヤ9およびリングギヤ10の差動作用により、動力分配装置8が無段変速機として機能する。動力分配装置8の変速比は、例えば以下のように制御される。車速およびアクセル開度に基づいて要求駆動力が求められ、この要求駆動力に基づいて、目標エンジン出力が求められる。この目標エンジン出力を達成するために、最適燃費線に沿ってエンジンの運転状態を決定し、目標エンジン回転数および目標エンジントルクを求める。そして、実エンジン回転数を目標エンジン回転数に近づけるように、動力分配装置8の変速比、より具体的には入力回転数が制御される。また、実エンジントルクを目標エンジントルクに近づけるように、電子スロットルバルブの開度などが制御される。
一方、変速機19を制御するシフトポジションとして、例えば、P(パーキング)ポジション、R(リバース)ポジション、N(ニュートラル)ポジション、D(ドライブ)ポジションなどを選択的に変更可能に構成されている。そして、図に示された変速機19においては、Dポジションが選択された場合は、例えば、第1速(1st)および第2速(2nd)および第3速(3rd)および第4速(4th)の変速段を、選択的に切り換え可能である。これらの変速段を選択的に切り換えるため、電子制御装置36には、車速およびアクセル開度に基づいて、変速段を決定する変速マップが記憶されている。Dポジションで各変速段を設定する場合、NポジションまたはRポジションが選択された場合における係合装置の制御状態を、図4により説明すると、「○」印は係合装置が係合されることを示し、空欄は係合装置が解放されることを示している。すなわち、第1速を設定する場合は、クラッチC1およびブレーキB2が係合され、かつ、クラッチC2およびブレーキB1が解放される。また、第2速を設定する場合は、クラッチC1およびブレーキB1が係合され、かつ、クラッチC2およびブレーキB2が解放される。さらに、第3速または第4速を設定する場合は、クラッチC1,C2が共に係合され、かつ、ブレーキB1,B2が共に解放される。第3速または第4速を設定する場合は、変速機19の制御は同じとなり、動力分配装置8の制御が異なる。この点については後述する。また、Rポジションが選択された場合は、クラッチC2およびブレーキB2が係合され、かつ、クラッチC1およびブレーキB1が解放される。なお、NポジションまたはPポジションが選択された場合は、全ての係合装置が解放される。
つぎに、Dポジションが選択された場合における変速機19の回転要素の状態を、図5の共線図に基づいて説明する。この図5に示すように、動力分配装置8は、モータ・ジェネレータ3とモータ・ジェネレータ16との間に、エンジン2が配置されている。この図5において、「正」は正回転を示し、「逆」は逆回転を示す。ここで、正回転とは、エンジン2の回転方向を意味する。まず第1速が選択された場合は、クラッチC1が係合されるとともに、エンジン2またはモータ・ジェネレータ3の少なくとも一方のトルクが、変速機19のリングギヤ28に入力される。また、ブレーキB2の係合により停止しているキャリヤ29が反力要素となり、キャリヤ25およびリングギヤ27から出力されたトルクがアウトプットシャフト30に伝達される。アウトプットシャフト30のトルクが、デファレンシャル4を経由して車輪5に伝達されて、駆動力が発生する。この第1速が選択された場合は、リングギヤ23の回転速度に対して、リングギヤ27およびキャリヤ25の回転速度の方が減速される。すなわち、変速機19の変速比は「1」よりも大きくなる。
また、第2速が選択された場合は、クラッチC1が係合され、かつ、ブレーキB1が係合されるため、エンジン2またはモータ・ジェネレータ3の少なくとも一方のトルクが、変速機19のリングギヤ28に入力され、停止しているサンギヤ22が反力要素となり、キャリヤ25から出力されたトルクがアウトプットシャフト30に伝達される。この第2速が選択された場合は、リングギヤ23の回転速度に対して、キャリヤ25の回転速度の方が減速される。すなわち、変速機19の変速比は「1」よりも大きくなる。なお、入力回転数が同じである場合を想定すると、第1速におけるキャリヤ25の回転速度の方が、第2速におけるキャリヤ25の回転速度よりも低くなる。すなわち、第1速が設定された場合の変速比の方が、第2速が設定された場合の変速比よりも大きくなる。
つぎに、第3速または第4速が選択された場合は、クラッチC1,C2が共に係合されるため、第1の遊星歯車変速機構20を構成する回転要素、第2の遊星歯車変速機構21を構成する回転要素が、全て一体回転する。すなわち、第3速または第4速が設定された場合、変速機19の変速比は「1」となる。言い換えれば、変速機19の入力回転要素と出力回転要素とが直結状態となる。なお、第3速が設定される場合は、動力分配装置8でモータ・ジェネレータ16が停止されず、第4速が設定される場合は、動力分配装置8でモータ・ジェネレータ16が停止される(回転数ゼロ)である点が相違する。さらに、Rポジションが選択された場合は、クラッチC2が係合されるため、サンギヤ26が入力要素となり、キャリヤ29が反力要素となり、リングギヤ27が逆回転する。なお、この共線図においては、エンジン回転数が一定である場合を示してある。
上記のように構成された車両1においては、エンジン1を始動させる場合に、モータ・ジェネレータ3,16の少なくとも一方のトルクにより、エンジン1をクランキングさせることが可能である。そこで、エンジン2を始動させる場合の制御例を、図1のフローチャートに基づいて説明する。まず、エンジン2を始動させる条件が成立したか否かが判断される(ステップS1)。このステップS1の判断は、例えば、イグニッションスイッチの信号によりおこなわれ、エンジン始動条件が成立した場合は、低温始動条件が成立しているか否かが判断される(ステップS2)。
この低温始動条件は、蓄電装置31,33の温度、または外気温が所定温度以下であり、かつ、エンジン始動条件が成立している場合に成立する条件である。このステップS2で肯定的に判断された場合は、蓄電装置31,33から出力される電力が制限を受ける(小電力)場合がある。このように、モータ・ジェネレータ3,16に供給される電力が制限を受けると、モータ・ジェネレータ3,16のいずれかのトルクによりエンジン2をクランキングすると、エンジン2のクランキングを開始してから、エンジン回転数が自律回転可能な回転数となるまでの時間が長くなり、始動性が低下する。すると、モータ・ジェネレータ3またはモータ・ジェネレータ16からエンジン2に至る動力伝達経路で、共振および騒音が発生する可能性がある。この共振は、ねじり振動であり、低次、特に、1次の振動モードが悪影響を及ぼすと考えられる。
そこで、ステップS2で肯定的に判断された場合は、モータ・ジェネレータ3,16と、車輪5との間の動力伝達経路のトルク容量を低下させる制御を実行する(ステップS3)。このステップS3では、例えば、シフトポジション選択装置52のレバーを強制的にPポジションまたはNポジションに固定する制御をおこなうことができる。このような制御を実行すると、クラッチC1,C2が共に解放されて、モータ・ジェネレータ3,16から車輪5に伝達されるトルクが低下する。また、ステップS3では、ニュートラル制御を実行可能である。ニュートラル制御とは、シフトポジション選択装置52の操作により、Dポジション、またはRポジションが選択されている場合でも、クラッチC1,C2を強制的に完全に解放もしくは半係合させて、伝達トルクを低下させる制御である。
このステップS3についで、モータ・ジェネレータ3,16を共に力行制御して正回転させ、モータ・ジェネレータ3,16の両方のトルクを、インプットシャフト14を経由させてエンジン2に伝達し、エンジン2をクランキングさせて、エンジン回転数を上昇させる制御を実行する(ステップ4)。このステップS4の処理をおこなうと、モータ・ジェネレータ3,16およびインプットシャフト14および動力分配装置8が、全て回転慣性質量体として作用することになり、共振が発生する回転数がなるべく高回転数域に移行する。このため、エンジン2のクランキング時にインプットシャフト14の回転数が共振発生回転数に滞留することを回避でき、エンジン2の始動性が向上する。ここで、共振発生回転数は、エンジン2の構造上の特性や各種の条件、例えば、気筒数、シリンダの配置構造がV字配列形か水平対向型か、4サイクルエンジンか2サイクルエンジンか、燃料の種類(ガソリンか軽油か)などに基づいて、決定される。また、前述したステップS3の制御により、動力分配装置8と変速機19との間の伝達トルクが低下されているため、モータ・ジェネレータ3,16の動力の一部が車輪5に伝達されることを回避できる。言い換えれば、モータ・ジェネレータ3,16の回転数の上昇を抑制する外部負荷が増加することを抑制できる。したがって、エンジン2に伝達されるトルクを可及的に高めることができ、エンジン2の始動性が向上する。特に、2つのモータ・ジェネレータ3,6のトルクをエンジン2に伝達するため、クランキングトルクが高くなり、エンジン2の始動性が一層向上する。
このステップS4についで、エンジン回転数が自律回転可能な回転数以上になると、燃料噴射制御および点火制御が実行されてエンジン2が自律回転し(ステップS5)、リターンされる。また、前記ステップS2で否定的に判断された場合は、実エンジン回転数Neが、自律回転可能な回転数Ne1以下であるか否かが判断される(ステップS6)。自律回転可能な回転数とは、燃料が供給されて燃焼すると、エンジン2が自律回転できる回転数である。このステップS6の判断時点で、NポジションまたはPポジションが選択されているような場合は、ステップS6で否定的に判断されて、モータ・ジェネレータ16を正回転で力行制御し、モータ・ジェネレータ16のトルクをエンジン2に伝達してクランキングさせ(ステップS7)、ステップS5に進む。
前述のステップS2で否定的に判断された場合は、蓄電装置31,33の出力電力が制限されず、動力分配装置8からエンジン2に至る動力伝達経路で共振および騒音が発生する可能性が低いため、片方のモータ・ジェネレータ16でエンジンをクランキングすれば、エンジン2の始動性を確保することができる。なお、ステップS6の判断時点で、DポジションまたはRポジションが選択されているような場合は、ステップS6で肯定的に判断されて、ステップS5に進む。さらに、ステップS1で否定的に判断された場合は、リターンされる。
つぎに、ステップS2,S3,S4,S5のルーチンにより、エンジン2を始動させる場合のタイムチャート例を、図6に基づいて説明する。時刻t1以前においては、エンジン2を始動させる条件が成立していないとともに、変速機19の変速段(有段変速制御の変速出力)として第1速が設定されている。そして、時刻t1でエンジン始動条件が成立し、かつ、低温始動条件が成立すると、ステップS3の処理が実行され、かつ、モータ・ジェネレータ3,16の回転数が上昇されて、空転しているエンジン2の回転数が上昇させられる。そして、時刻t2でエンジン回転数が自律回転可能な回転数となり、点火制御が実行されるとともに、ステップS3の処理が終了する。そして、時刻t3以降は、エンジン回転数、モータ・ジェネレータ3,16の回転数が、略一定になっている。
つぎに、ステップS2およびステップS6を経由してステップS7に進むとともに、Dポジションが選択され、かつ、第1速が設定されている場合に、エンジン2を始動する場合の例をより具体的に説明する。例えば、車両1が走行するとともに、モータ・ジェネレータ3のトルク、または車両1の惰力走行による運動エネルギが、変速機19および動力分配装置8を経由してエンジン2に伝達されて、エンジン2が空転している場合にエンジン2を始動させる条件が成立すると、モータ・ジェネレータ16を正回転で力行制御し、かつ、モータ・ジェネレータ16の回転数を上昇させることにより、エンジン2の回転数が上昇される。この場合、モータ・ジェネレータ16の反力トルクは、モータ・ジェネレータ3で受け持たれる。
さらに、ステップS2およびステップS6を経由してステップS7に進むとともに、Rポジションが選択されている場合に、エンジン2を始動する場合について具体的に説明する。この場合は、ブレーキB2が係合してキャリヤ29が停止され、モータ・ジェネレータ3が正回転で力行制御され、アウトプットシャフト30が逆回転して車両1が走行するとともに、エンジン2が空転する。そして、エンジン2を始動させる条件が成立すると、モータ・ジェネレータ16を正回転で力行制御し、かつ、モータ・ジェネレータ16の回転数を上昇させることにより、エンジン2の回転数が上昇される。この場合、モータ・ジェネレータ16の反力トルクは、モータ・ジェネレータ3で受け持たれる。上記の実施例において、エンジン2としてディーゼルエンジンが用いられている場合は、ステップS5では点火制御はおこなわれず、自己着火となる。
つぎに、変速機19の他の構成例を、図7に基づいて説明する。この変速機19は、入力回転数と出力回転数との比、すなわち変速比を段階的に(不連続に)制御することの可能な有段変速機である。変速機19は、具体的には、第1の遊星歯車変速機構37および第2の遊星歯車変速機構38および第3の遊星歯車変速機構39を有している。まず、第1の遊星歯車変速機構37は、シングルピニオン型の遊星歯車機構である。この第1の遊星歯車変速機構37は、同軸上に配置されたサンギヤ40およびリングギヤ41と、サンギヤ40およびリングギヤ41に噛合されたピニオンギヤ42を自転、かつ公転可能に保持するキャリヤ43とを有している。一方、第2の遊星歯車変速機構38は、シングルピニオン型の遊星歯車機構である。この第2の遊星歯車変速機構38は、同軸上に配置されたサンギヤ44およびリングギヤ45と、サンギヤ44およびリングギヤ45に噛合されたピニオンギヤ46を自転、かつ公転可能に保持するキャリヤ47とを有している。また、第3の遊星歯車変速機構39は、シングルピニオン型の遊星歯車機構である。この第3の遊星歯車変速機構39は、同軸上に配置されたサンギヤ48およびリングギヤ49と、サンギヤ48およびリングギヤ49に噛合されたピニオンギヤ50を自転、かつ公転可能に保持するキャリヤ51とを有している。
そして、サンギヤ40とサンギヤ44とが一体回転するように連結され、キャリヤ47,51およびリングギヤ41が一体回転するように連結され、リングギヤ48とサンギヤ48とが一体回転するように連結されている。そして、キャリヤ47,51およびリングギヤ41は、変速機19のアウトプットシャフト30に連結されている。また、変速機19を構成する回転要素、すなわち、各ギヤおよびキャリヤ同士の連結・遮断・固定を制御する係合装置が設けられている。ここで、係合装置としては油圧制御式または電磁制御式のいずれを用いてもよいが、ここでは、油圧制御式の係合装置を用いる場合について説明する。すなわち、リングギヤ10を、リングギヤ45およびサンギヤ48に対して連結・解放するクラッチC1が設けられており、リングギヤ10を、サンギヤ40,44に対して連結・解放するクラッチC2が設けられている。また、サンギヤ40,44の回転・停止を制御するブレーキB1が設けられ、キャリヤ43の回転・停止を制御するブレーキB2が設けられ、リングギヤ49の回転・停止を制御するブレーキB3が設けられている。なお、図7のその他の構成は図2に示された構成と同じである。
図7に示された変速機19を制御するシフトポジションとして、例えば、P(パーキング)ポジション、R(リバース)ポジション、N(ニュートラル)ポジション、D(ドライブ)ポジションなどを選択的に変更可能である。そして、図9に示された変速機19においては、Dポジションが選択された場合は、例えば、第1速(1st)および第2速(2nd)および第3速(3rd)および第4速(4th)および第5速(5th)の変速段を、選択的に切り換え可能である。Dポジションで各変速段を設定する場合、NポジションまたはRポジションが選択された場合における係合装置の制御状態を、図8により説明すると、「○」印は係合装置が係合されることを示し、空欄は係合装置が解放されることを示している。すなわち、第1速を設定する場合は、クラッチC1およびブレーキB3が係合され、かつ、クラッチC2およびブレーキB1およびブレーキB2が解放される。また、第2速を設定する場合は、クラッチC1およびブレーキB2が係合され、かつ、クラッチC2およびブレーキB1およびブレーキB3が解放される。さらに、第3速を設定する場合は、クラッチC1およびブレーキB1が係合され、かつ、クラッチC2およびブレーキB2,B3が解放される。さらに、第4速または第5速を設定する場合は、クラッチC1,C2が係合され、かつ、クラッチC2およびブレーキB1,B2,B3が解放される。第4速または第5速を設定する場合は、変速機19の制御は同じとなり、動力分配装置8の制御が異なる。この点については後述する。また、Rポジションが選択された場合は、クラッチC2が係合され、かつ、クラッチC1およびブレーキB1,B2,B3が解放される。なお、NポジションまたはPポジションが選択された場合は、全ての係合装置が解放される。
つぎに、Dポジションが選択された場合における変速機19の回転要素の状態を、図9の共線図に基づいて説明する。図9において、「正」とは正回転であり、「逆」とは逆回転である。まず第1速が選択された場合は、クラッチC1が係合されるとともに、エンジン2またはモータ・ジェネレータ3の少なくとも一方のトルクが、変速機19のサンギヤ48に入力される。また、ブレーキB3の係合により停止しているリングギヤ49が反力要素となり、キャリヤ51から出力されたトルクがアウトプットシャフト30に伝達される。この第1速が選択された場合は、サンギヤ48の回転速度に対して、キャリヤ51の回転速度の方が減速される。すなわち、変速機19の変速比は「1」よりも大きくなる。
また、第2速が選択された場合は、クラッチC1が係合され、かつ、ブレーキB2が係合されるとともに、エンジン2またはモータ・ジェネレータ3の少なくとも一方のトルクが、変速機19のリングギヤ45に入力され、停止しているキャリヤ43が反力要素となり、キャリヤ5から出力されたトルクがアウトプットシャフト30に伝達される。この第2速が選択された場合は、リングギヤ45の回転速度に対して、キャリヤ51の回転速度の方が減速される。すなわち、変速機19の変速比は「1」よりも大きくなる。なお、入力回転数が同じである場合を想定すると、第1速におけるキャリヤ51の回転速度の方が、第2速におけるキャリヤ51の回転速度よりも低くなる。すなわち、第1速が設定された場合の変速比の方が、第2速が設定された場合の変速比よりも大きくなる。
つぎに、第3速が選択された場合は、クラッチC1が係合され、かつ、ブレーキB1が係合されるとともに、エンジン2またはモータ・ジェネレータ3の少なくとも一方のトルクが、変速機19のリングギヤ45に入力され、停止しているサンギヤ44が反力要素となり、キャリヤ51から出力されたトルクがアウトプットシャフト30に伝達される。この第3速が選択された場合は、リングギヤ45の回転速度に対して、キャリヤ51の回転速度の方が減速される。すなわち、変速機19の変速比は「1」よりも大きくなる。なお、入力回転数が同じである場合を想定すると、第2速におけるキャリヤ51の回転速度の方が、第3速におけるキャリヤ51の回転速度よりも低くなる。すなわち、第2速が設定された場合の変速比の方が、第3速が設定された場合の変速比よりも大きくなる。
一方、第4速または第5速が設定された場合は、第1の遊星歯車変速機構37を構成する回転要素、第2の遊星歯車変速機構38を構成する回転要素、第3の遊星歯車変速機構39を構成する回転要素が、全て一体回転する。すなわち、第4速または第5速が設定された場合、変速機19の変速比は「1」となる。言い換えれば、変速機19の入力回転要素と出力回転要素とが直結状態となる。なお、第4速が設定される場合は、動力分配装置8でモータ・ジェネレータ16が停止されず、第5速が設定される場合は、動力分配装置8でモータ・ジェネレータ16が停止される(回転数ゼロ)である点が相違する。さらに、Rポジションが選択された場合は、クラッチC2およびブレーキB3が係合されるため、サンギヤ44が入力要素となり、リングギヤ49が反力要素となり、キャリヤ51が逆回転する。なお、図9の共線図においては、エンジン回転数が一定である場合を示してある。この図7に示された構成の変速機19を有する車両1においても、図1の制御例を実行可能であり、前述と同様の効果を得られる。
図10は、Dポジションが選択され、かつ、モータ・ジェネレータ16のトルクによりエンジン2をクランキングさせる場合に相当する共線図である。ここでは、第1速が設定されている場合を示す。すなわち、ブレーキB3が係合されてリングギヤ49が停止しており、クラッチC1が係合されて、モータ・ジェネレータ3とサンギヤ48とが一体回転するように連結されている。アウトプットシャフト30が正方向に回転しており、エンジン2が空転している場合に、エンジン2を始動させる条件が成立して、モータ・ジェネレータ16が正回転で力行制御されて、エンジン2がクランキングされている。図11は、Rポジションが選択され、かつ、エンジン2をクランキングさせる場合に相当する共線図である。ブレーキB3が係合されてリングギヤ49が停止しており、アウトプットシャフト30が逆方向に回転している。また、クラッチC2が係合されて、モータ・ジェネレータ3が正方向に回転し、エンジン2が空転している。ここで、エンジン2を始動させる条件が成立して、モータ・ジェネレータ16が正回転で力行制御されて、エンジン2がクランキングされている。
以上のように、図1の制御例を実行すると、低温始動条件が成立してエンジン2を始動する場合のように、エンジン2の始動性が低下する場合は、動力分配装置8と変速機19との間における伝達トルクを低下させる制御を実行し、かつ、モータ・ジェネレータ3,16を共に正回転で力行制御させ、そのトルクでエンジン2をクランキングする。このため、モータ・ジェネレータ3,16からエンジン2に至る動力伝達経路のイナーシャが大きくなり、エンジン回転数が共振回転数領域に滞留することを抑制でき、エンジン2の始動性が向上する。また、モータ・ジェネレータ3,16の動力の一部が車輪5に伝達されることを抑制でき、モータ・ジェネレータ3,16の回転数の上昇が妨げられることが無く、エンジン2の始動性が向上する。さらに、動力分配装置8の遊星歯車機構を構成する3個以上の回転要素を共線図上に配置した場合に、モータ・ジェネレータ3,16の間にエンジン2が配置されているため、モータ・ジェネレータ3,13を共に駆動させ、エンジン2を始動させることができる。したがって、エンジン2の始動性を一層向上させることができる。
ここで、図2および図7に示された構成と、この発明の構成との対応関係を説明すると、モータ・ジェネレータ3,16が、この発明における電動機に相当し、エンジン2が、この発明のエンジンに相当し、モータ・ジェネレータ3,16が、この発明の電動機に相当し、車輪5が、この発明における車輪に相当し、動力分配装置8が、この発明における第1の変速機構に相当し、変速機19が、この発明における第2の変速機構に相当し、クラッチC1,C2およびブレーキB1,B2,B3が、この発明のクラッチ(係合装置)に相当し、動力分配装置8が、この発明の無段変速機に相当し、シフトポジション選択装置52および伝動装置53が、この発明のシフト機構に相当する。また、図1に示された機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明すると、ステップS1の機能的手段が、この発明の始動条件判断手段に相当し、ステップS2の機能的手段が、この発明の低温始動条件判断手段に相当し、ステップS3の機能的手段が、低温始動条件判断手段が成立した場合にクラッチのトルク容量を低下させ、あるいはクラッチを解放するようにシフト機構を強制的に制御する手段に相当し、ステップS4およびステップS6ならびにステップS7の機能的手段が、この発明のエンジン回転数上昇手段に相当し、ステップS5の機能的手段が、この発明のエンジン制御手段に相当する。
この実施例において、動力分配装置から車輪に至る経路に配置される変速機は、Dポジションで第5速以上の変速段を設定可能な有段変速機であってもよい。さらにさらに、有段変速機としては、シンクロナイザ機構により、変速段を制御するように構成された変速機を用いることも可能である。この場合、図1のステップS3ではシンクロナイザ機構を制御して、伝達トルクを低下させる制御が実行されて、モータ・ジェネレータ3,16の動力の一部が車輪5に伝達されることを抑制できる。変速機は前述したような有段変速機の他、無段変速機であってもよい。無段変速機は、入力回転数と出力回転数との比を無段階に(連続的に)変更可能な変速機であり、例えば、トロイダル式無段変速機、ベルト式無段変速機などを用いることが可能である。ベルト式無段変速機は、プライマリプーリおよびセカンダリプーリにベルトが巻き掛けられており、図1のステップS3では、ベルトの張力を低下させることにより、ベルト式無段変速機の伝達トルク(トルク容量)を低下させることが可能である。また、トロイダル式無段変速機は、入力ディスクおよび出力ディスクの間にパワーローラを介在させたものであり、図1のステップS3では、入力ディスクおよび出力ディスクに与えられる軸線方向の押圧力を低下させることにより、トロイダル式無段変速機の伝達トルク(トルク容量)を低下させることが可能である。
また、図2および図7の例では、シフトポジション選択装置52の操作力が、伝動装置53により機械的に油圧制御装置35に伝達される構成となっているが、シフトポジション選択装置52の操作により選択されたシフトポジションをセンサにより検知し、その検知信号に基づいて、油圧制御装置35のマニュアルバルブを動作させるようなアクチュエータ(例えばソレノイド)を設けた車両においても、図1の制御例を実行可能である。この場合は、シフトポジション選択装置52が操作されても、ステップS3ではアクチュエータがマニュアルバルブを、NポジションまたはPポジションに相当する位置に固定する。
また、動力分配装置8としてシングルピニオン型の遊星歯車機構が用いられているが、動力分配装置として、ダブルピニオン型の遊星歯車機構を用いることが可能である。この場合、共線図上で2個のモータ・ジェネレータの間にエンジンが配置されるように、各回転要素同士を連結することになる。また、動力分配装置として、4個の回転要素を有し、いずれかの回転要素を入力要素、反力要素、出力要素として選択的に切り換えられるように構成されたものを用いることも可能である。さらに、図1に示された制御例は、エンジンおよび2個のモータ・ジェネレータが、前輪(車輪)に対して動力伝達可能に連結された構成の前輪駆動車(二輪駆動車)、エンジンおよび2個のモータ・ジェネレータが、後輪(車輪)に対して動力伝達可能に連結された構成の前輪駆動車(二輪駆動車)のいずれでも実行可能である。さらに、図1に示された制御例は、エンジンおよび2個のモータ・ジェネレータが、前輪および後輪の両方に対して動力伝達可能に連結された構成の四輪駆動車でも実行可能である。この発明において、第1の変速機構は、電動機の出力を制御することにより、変速比を制御可能な電気的変速機(より具体的には無段変速機)である。また、防止する振動モードは、2次以上の振動モードでも可能である。いずれの振動モードを抑制するかを解析して、抑制視よとする振動モードに対応する制御を実行すればよい。その場合、狙いとする振動モード以外の振動モードでは振動が生じても差し支えない。この発明において、クラッチとしては、油圧式クラッチ、または電磁式クラッチのいずれを用いてもよい。
1…車両、 2…エンジン、 3,16…モータ・ジェネレータ、 5…車輪、 8…動力分配装置、 19…変速機、 52…シフトポジション選択装置、 53…伝動装置、 54…シフトロック機構、 C1,C2…クラッチ、 B1,B2,B3…ブレーキ。