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JP4699779B2 - マイクロチップ - Google Patents
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Description

本発明は、少なくとも一方の基板内に流路(マイクロチャネル)、反応容器及び/又はポートなどの微細構造(マイクロストラクチャー)が形成されている、いわゆるマイクロチップに関する。更に詳細には、本発明は、マイクロチャネル内で流体を混合・撹拌するためのマイクロミキサーを有するマイクロチップに関する。
最近、マイクロスケール・トータル・アナリシス・システムズ(μTAS)又はラブ・オン・チップ(Lab-on-Chip)などの名称で知られるように、基板内に所定の形状の流路を構成するマイクロチャネル及びポートなどの微細構造を設け、該微細構造内で物質の化学反応、合成、精製、抽出、生成及び/又は分析など各種の操作を行うことが提案され、一部実用化されている。このような目的のために製作された、基板内にマイクロチャネル及びポートなどの微細構造を有する構造物は「マイクロ流体チップ」とか「マイクロ化学チップ」と呼ばれる。
マイクロチップは遺伝子解析、臨床診断、薬物スクリーニング及び環境モニタリングなどの幅広い用途に使用できる。常用サイズの同種の装置に比べて、マイクロチップは(1)サンプル及び試薬の使用量が著しく少ない、(2)分析時間が短い、(3)感度が高い、(4)現場に携帯し、その場で分析できる、及び(5)使い捨てできるなどの利点を有する。
一般的に、これらのマイクロチップは、一方の平面上にマイクロチャネル及びポートなどの微細構造を有する基板と、これらの微細構造を封止する目的の平面を有する対面基板とを貼り合わせた構造を有する。基板の材質は製造方法やマイクロチップの使用目的等により、各種のものが利用されているが、中でも、基板材料にシリコンゴムの一種であるポリジメチルシロキサン(PDMS)を用い、対面基板にガラス基板を用いた一連のマイクロチップが非特許文献1に詳述されている。
マイクロチップのマイクロチャネルなどの微細構造内で発生させた流体の流れは、マイクロスケールにおけるレイノルズ数が非常に小さいために、乱流や剥離が発生せず層流となることが一般的である。従って、2種類の液体をそれぞれのマイクロチャネルから流して別のマイクロチャネル内で合流させる場合、2種類の液体間の混合は、それぞれの層流の間に形成される界面を通して行われる分子拡散のみに依存する。
例えば、図13に示されるようなY字形状のマイクロチャネルを有するマイクロチップ100において、一方のマイクロチャネル102から液体Aを流し、他方のマイクロチャネル104から液体Bを流し、Y字形状で合流マイクロチャネル106に流し込む。合流マイクロチャネル106では液体A及びBによる層流が発生し、その境目に界面108が形成される。この界面108を通して2液は混合されるが、分子拡散はなかなか進行せず、十分に混合されるには長い距離の合流マイクロチャネル106が必要となり、μTASの概念に馴染まない。従って、マイクロチップにおいては、何らかの効果的なマイクロミキサーが必要となることが多々ある。
マイクロチップにおいては、液体同士を混合する事例だけでなく、液体と粒径が1μm〜100μmの粉体を混合しなければならない事例も存在する。例えば、マイクロ化学チップにおいて必要とされる粉体には次のようなものがある。
(1)DNA等の抽出を目的とした細胞断片等
具体的には口内スワブ等で、溶解バッファーと混合・撹拌し、DNAを抽出する。
(2)DNA等を特異的に吸着するビーズ
主にDNA等を精製することを目的として使用されるビーズである。ビーズといっても必ずしも球形とは限らない。材質はガラスや合成樹脂などである。磁性を帯びさせるために、酸化鉄などの磁性体を含む場合もある。
(3)触媒作用のある粉体
各種の化学反応促進を目的とした金属粉などである。
(4)光を吸収する粉体
カーボン粉等で、マイクロチップの外部よりレーザ光等を照射し、光を吸収することで局部的な熱を発生させ、その熱で化学反応を促進させる。
(5)物理的な作用を発生させるための粉体
一例としては、磁性ビーズを用い、外部からの交番磁界によってそのビーズを振動させ、粉体の混合や化学反応を促進する。
(6)その他
流れを可視化するために、透明な液体中に視認性のある粉体を混入する。
特に、粉体を含む流体を扱う場合は、流体同士を混合するだけでなく、次に示すように流体内で粉体を十分に撹拌させる必要がある。
(1)口内スワブを十分に溶解させる。
(2)DNAをビーズ表面に効率的に吸着させる。
(3)DNAが吸着されたビーズを洗浄バッファーを用いて余分な不純物を精度良く洗浄する。
(4)溶出バッファーを用いて、DNAが吸着されたビーズ表面よりDNAを有効的に溶出させる。
(5)触媒の作用、光の吸収(発熱)作用、物理的な作用などの粉体の効率を上げる。
(6)液体中の粉体の分布を均一化させる。
マイクロチップの分野では、複数の流体をマイクロチャネル内で効率よく混合することを目的とした様々なマイクロミキサーが非特許文献2に記載されている。従来のマイクロミキサーはその原理から、次の2種類に大別される。
(1)流体の流れそのものを利用した受動的な「パッシブミキサー」
(2)流体以外の外力を利用した能動的な「アクティブミキサー」
パッシブミキサーを構成するマイクロチャネル構造として、次のものなどが挙げられる。
(1)マイクロチャネルを部分的に狭くしたり広くしたりする。
(2)マイクロチャネルにピラー等の障害物を設ける。
(3)マイクロチャネルを屈曲させる。
(4)マイクロチャネルを分岐し、再合流させる(コアンダ効果)。
図14はコアンダ効果によるパッシブミキサーの一例の模式的構成図である。合流マイクロチャネル106に分岐チャネル110を設け、合流マイクロチャネル106の分岐点よりも下流側に折返部112を設けることによりコアンダ効果を実現させ、流れの一部を逆流させて2液の流れを乱すことにより混合して合流マイクロチャネル106内に再流入させる。
しかし、パッシブミキサーは流れを阻害する複雑なマイクロチャネル構造を持っているために、次のような問題点が存在する。
(1)圧力損失が発生し、高い送液圧力を必要とする。
(2)流量を正確に制御し難い。
(3)空気溜まりが発生し易い。
(4)ゴミが詰まり易い。
(5)特に流体が粉体を含んでいる場合、複雑な流路構造が粉体の流れを阻害する。極端な場合には粉体が詰まり、流路を閉塞させてしまう。
図15はアクティブミキサーの一例の模式的構成図である。液体Aを流すマイクロチャネル102の途中にアクティブバルブ114を配設し、液体Bを流すマイクロチャネル104の途中にアクティブバルブ116を配設する。バルブ114及び116を交互に開閉することにより、合流マイクロチャネル106に液体AとBを交互に流し、2液間の界面118を増大させ、混合を促進するものである。
一般的にパッシブミキサーでは混合能力が低く、十分な混合を行うには長い距離のマイクロチャネルを必要とする。一方、アクティブミキサーはパッシブミキサーに比べて混合能力が高く効果的である。また、パッシブミキサーは低い流量では混合の機能が発揮しないなど、流量や流速によって混合能力が大きく影響するが、アクティブミキサーは幅広い流量に対し混合が行える。
しかし、アクティブミキサーには次のような問題点が存在する。
(1)マイクロチャネル内に設けられたバルブ等が、上流からの一定の流れを阻害するばかりか、流れが断続的になる。
(2)バルブ等の構造によっては、空気溜まりの発生、ゴミの詰まり、粉体の流れの阻害を引き起こす。場合によっては、ゴミや粉体によりバルブ等の機能が損なわれ、ミキサーとして動作しなくなる。
David C. Duffy et al., Rapid Prototyping of Microfluidic Systems in Poly(dimethylsiloxane), Analytical Chemistry, Vol.70, No.23, December 1, 1988, pp.4974-4984 化学とマイクロ・ナノシステム研究会監修,北森武彦ほか編,「マイクロ化学チップの技術と応用」,丸善株式会社(2004年9月発行),293頁〜297頁
従って、本発明の目的は、(1)送液圧力の上昇が無く、(2)上流からの一定の流れを阻害せず、(3)流量を正確に制御し易く、(4)空気溜まりの発生が無く、(5)ゴミが詰まらず、(6)ゴミにより混合の機能を損なわず、(7)特に粉体を含んだ流体に効果的に利用でき、しかも、(8)液体同士の混合だけでなく、粉体を含んだ場合に攪拌の効果を合わせ持つマイクロミキサーを有するマイクロチップを提供することである。
前記課題を解決するための手段として請求項1に係る発明は、第1の基板と、該第1の基板の一方の面側に接着される第2の基板とからなり、前記第1の基板の第2の基板との接着面側に少なくとも1本のマイクロチャネルが形成されているマイクロチップにおいて、
前記マイクロチャネルが形成されている第1の基板がシリコーン樹脂から構成されており、
前記マイクロチャネルの途中にマイクロミキサーが配設されており、
前記マイクロミキサーは、
(1)該マイクロチャネルの前後の幅よりも大きな幅を有する容積拡大部と、
(2)前記容積拡大部の壁面の一部を変形及び復元させて該容積拡大部の容積を変化させることにより層流状態の2種類の流体の流れを乱して両流体を撹拌混合する少なくとも1個の手段とからなることを特徴とするマイクロチップである。
前記課題を解決するための手段として請求項2に係る発明は、前記容積拡大部が前記マイクロチャネルの長手方向軸線に対して対称形に形成されており、前記対称形の容積拡大部の前記長手方向軸線に対する各半分の部分について、それらの壁面の一部を変形及び復元させて該半分部分の容積を変化させることにより層流状態の2種類の流体の流れを乱して両流体を撹拌混合する手段がそれぞれ配設されていることを特徴とする請求項1記載のマイクロチップである。
前記課題を解決するための手段として請求項3に係る発明は、前記容積拡大部の壁面の一部を変形及び復元させて該容積拡大部の容積を変化させることにより層流状態の2種類の流体の流れを乱して両流体を撹拌混合する手段は、前記容積拡大部の壁面を隔壁とする圧力室であり、該圧力室には圧力印加手段が接続されており、該圧力印加手段を介して圧力室の圧力を変化させることにより容積拡大部の壁面の一部を変形及び復元させて該容積拡大部の容積を変化させることを特徴とする請求項1又は2記載のマイクロチップである。
前記課題を解決するための手段として請求項4に係る発明は、第1の基板がポリジメチルシロキサンからなり、第2の基板がポリジメチルシロキサン、ガラス、シリコン、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート及びポリカーボネートからなる群から選択される1種類の素材からなり、前記第1の基板の第2の基板との接着面側に少なくとも1本のマイクロチャネルが形成されており、該マイクロチャネルの途中に該マイクロチャネルの長手方向軸線に対して対称形の容積拡大部が形成されており、該マイクロチャネルの長手方向軸線に対して各半分の容積拡大部に対して、該各半分の容積拡大部の壁面を隔壁として圧力室が前記長手方向軸線に対して対称的にそれぞれ配設されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のマイクロチップである。
前記課題を解決するための手段として請求項5に係る発明は、前記第1の基板の上面に第3の基板が更に接着されており、前記第1の基板が比較的薄い膜厚のポリジメチルシロキサンからなり、前記第3の基板が前記第1の基板の厚さよりも厚いポリジメチルシロキサン、ガラス、シリコン、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート及びポリカーボネートからなる群から選択される1種類の素材からなり、前記第3の基板の前記第1の基板との接着面側に、前記容積拡大部及び圧力室の平面面積と同等又はこれよりも大きな平面面積を有し、かつ、所定の高さを有する大気と連通した大気圧室が更に配設されていることを特徴とする請求項1〜4に記載のマイクロチップである。
前記課題を解決するための手段として請求項6に係る発明は、第1の基板がポリジメチルシロキサンからなり、第2の基板がポリジメチルシロキサン又はガラスからなり、前記第1の基板の第2の基板との接着面側に少なくとも1本のマイクロチャネルが形成されており、該マイクロチャネルの途中に該マイクロチャネルの長手方向軸線に対して対称形の容積拡大部が形成されており、
前記第1の基板の上面に第3の基板が更に接着されており、前記第1の基板が比較的薄く、前記第3の基板が前記第1の基板の厚さよりも厚く、前記第3の基板の前記第1の基板との接着面側に、該マイクロチャネルの長手方向軸線に対して各半分の容積拡大部の上部壁面を隔壁として、各半分の容積拡大部の少なくとも一部に重なるように圧力室が少なくとも1個配設されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のマイクロチップである。
前記課題を解決するための手段として請求項7に係る発明は、各半分の容積拡大部に対してそれぞれ圧力室が配設されており、該圧力室には圧力印加手段が接続されており、該圧力印加手段を介して圧力室の圧力を変化させることにより容積拡大部の上部壁面の一部を変形及び復元させて該容積拡大部の容積を変化させることを特徴とする請求項6記載のマイクロチップである。
本発明のマイクロチップでは、マイクロミキサー部分のマイクロチャネルが狭まったり、屈曲したり、障害物があったり、分岐・再合流することがなく、流体の流れを妨げない構造である。また、マイクロチャネル途中に配設される第1の可変容積部及び第2の可変容積部は相補的に容積変化させるので、合計の容積変化は生じない。よって、マイクロミキサー前後のマイクロチャネルに対し、余分な圧力変動の影響を及ぼさない。
その結果、(1)マイクロミキサーを設けたことによる送液圧力の上昇がない、
(2)上流からの一定の流れを阻害しない。すなわち、流量が均一で安定している、
(3)余分な圧力発生がない為、流量を正確に制御し易い、
(4)空気溜まりの発生がない、
(5)ゴミが詰まらない、
(6)ゴミにより混合の機能を損なわない、及び
(7)特に粉体を含んだ流体に効果的に利用できるなどの様々な効果が得られる。。
また、流れの無い留まった流体に対しても、本発明のマイクロミキサーによる攪拌の効果が得られる。
以下、図面を参照しながら本発明のマイクロチップについて具体的に説明する。図1は本発明のマイクロチップの一例の部分概要平面図である。図2は図1におけるII-II線に沿った部分概要断面図である。本発明のマイクロチップ1は従来のマイクロチップと同様に、第1の基板3と第2の基板(対面基板)5との組合せからなる。第1の基板3はPDMSなどのシリコーン樹脂からなり、第2の基板5はPDMS、ガラス、シリコン、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート及びポリカーボネートからなる群から選択される1種類の素材などからなる。第1の基板3には液体又は粉体含有液体などを流すためのマイクロチャネル7が配設されている。マイクロチャネル7の途中にマイクロミキサー9が配設されている。マイクロミキサー9は、マイクロチャネル7を間に挟んで第1の圧力室11と第2の圧力室13を対向するように有する。第1の圧力室11の位置に対応して、マイクロチャネル7の幅を拡大させた第1の可変容積部15と、第2の圧力室13の位置に対応して、マイクロチャネル7の幅を拡大させた第2の可変容積部17が形成されている。第1の圧力室11と第1の可変容積部15とは、円弧形の第1の隔壁19により隔離されており、同様に、第2の圧力室13と第2の可変容積部17とは、円弧形の第2の隔壁21により隔離されている。第1の圧力室11には正圧又は負圧を印加するための圧力管路23が接続されており、同様に、第2の圧力室13には正圧又は負圧を印加するための圧力管路25が接続されている。圧力管路23及び25には、空気などの気体の他、オイルなどの液体を送入することができる。圧力室と可変容積部との間の隔壁の形状は図示された円弧状に限定されず、台形状など適宜の形状を採用することができる。マイクロチャネル及び可変容積部は第2の基板側に配設することもできる。本発明のマイクロミキサーでは、第1の可変容積部15と第2の可変容積部17を合わせて容積拡大部と呼ぶが、何れか一方だけでも容積拡大部と呼ぶことができる。従って、本発明のマイクロミキサーでは、第1の可変容積部15又は第2の可変容積部17の何れか一方のみからなる容積拡大部を有することもできる。
第1の可変容積部15及び第2の可変容積部17はそれぞれ円弧形のなだらかな形状を有するようにマイクロチャネル7の一部を拡幅することにより形成されている。これにより、可変容積部とその近傍のマイクロチャネルを流れる流体は、その流れを大きく妨げられず、スムーズに流れることができる。また、マイクロチャネル自体を塞ぐものが存在しないので、ゴミなどが詰まりにくく、気泡が発生したり、留まることがない。特に、粉体を含む流体は障害なく流れることができる。
図3は本発明のマイクロミキサー9の動作を説明する模式的部分断面図である。図3(A)において、マイクロチャネル7の流路内圧力を基準として、この圧力よりも高い圧力を第1の圧力室11及び第2の圧力室13に印加すると、第1の基板3が弾性体のPDMSから形成されているため、第1の圧力室11及び第2の圧力室13は主にマイクロチップの上部方向に拡大変形する。これに伴い、薄く変形し易いように構成された第1の隔壁19及び第2の隔壁21も上部方向に引き伸ばされ、圧力室の拡大変形は隣接する第1の可変容積部15及び第2の可変容積部17にまで影響し、その各容積を増大させる結果となる。これに対して、図3(B)において、マイクロチャネル7の流路内圧力を基準として、この圧力よりも低い圧力を第1の圧力室11及び第2の圧力室17に印加すると、第1の圧力室11及び第2の圧力室13は主にマイクロチップの下部方向に縮小変形する。これに伴い、薄く変形し易いように構成された第1の隔壁19及び第2の隔壁21も下部方向に圧縮され、圧力室の縮小変形は隣接する第1の可変容積部15及び第2の可変容積部17にまで影響し、その各容積を減少させる結果となる。
各圧力室には両方同時に正圧又は負圧を印加する必要はない。従って、第1の圧力室11に正圧を印加している時、第2の圧力室13は、等圧状態、正圧状態又は負圧状態の何れかであることができる。同様に、第2の圧力室13に正圧を印加している時、第1の圧力室11は、等圧状態、正圧状態又は負圧状態の何れかであることができる。このように、圧力室に正圧及び/又は負圧を印加することにより、可変容積部の容積を変化させることができ、この可変容積部の容積変化により層流状態の2種類の流体の流れを乱して両流体を混合することができる。可変容積部の容積の変化量は、その可変容積部の位置のマイクロチャネルの容積の略半分になるように、可変容積部の形状や操作圧力を適宜選択することが好ましい。
図4は本発明のマイクロチップの別の例の部分概要平面図である。図5は図4におけるV-V線に沿った部分概要断面図である。図1及び図2に示されたマイクロチップ1と異なり、図4及び図5にに示されたマイクロチップ1Aでは、第1の基板3の上面に第3の基板27が接着されており、この第3の基板の接着面側に、第1の基板3内の可変容積部15,17及び圧力室11,13の全体を覆う面積を有する大気圧室29が配設されている。大気圧室29は必要に応じて、大気と連通する管路31を有する。圧力室11,13と大気圧室29との間は、第1の基板3のPDMS弾性体による薄膜33により隔離されている。薄膜33の厚さは例えば、約100μm程度である。
第1の基板3と第2の基板(対面基板)5のみで構成されている場合、第1の基板3の厚さは1mm〜数mm程度であり、マイクロチップの基板としては比較的厚いので、PDMSなどのゴム弾性を有する素材であっても圧力室11,13、隔壁19,21及び可変容積部15,17は必ずしも十分に変形可能であるとは限らない。そのため、圧力室11,13、隔壁19,21及び可変容積部15,17の変形を容易化するために、第1の基板3の上面に第3の基板27を接着し、この第3の基板27の接着面側、すなわち圧力室11,13の上部に大気圧室29を配設する。
図6(A)は図4及び図5に示されるマイクロミキサー9Aにおいて大気圧室29を配設した場合の効果を説明する模式的部分断面図である。図6(イ)に示されるように、圧力室11又は13が大気圧と等圧状態では、薄膜33は変形しない。(ロ)に示されるように、圧力室11又は13を負圧状態にしたとき、薄膜33が圧力室側に撓み、圧力室は容積が減少する方向に容易に変形する。この圧力室の容積減少に伴い、可変容積部15又は17は図3(B)に示されるように変形する。一方、(ハ)に示されるように、圧力室11又は13を正圧状態にしたとき、薄膜33が大気圧室側に撓み、圧力室は容積が増大する方向に容易に変形する。この圧力室の容積増大に伴い、可変容積部15又は17は図3(A)に示されるように変形する。
圧力室の変形を容易にするだけなら、大気圧室の上方を全てオープンにすれば良いが、有限な高さを持つ大気圧室を設けるのは次の効果がある為である。図6(ハ)に示されるように、圧力室11,13を正圧にした時、薄膜33は大気圧室29の高さ分だけ変形すると、そこで変形は抑えられ、ストッパとして作用する。よって、圧力室11,13に高い正圧を印加した場合に、薄膜33が破損するのを防止する効果がある。
図6(B)は図4及び図5に示されるマイクロミキサー9Aにおいて大気圧室29を配設した場合の効果を実証する拡大平面写真図である。図6(i)は、Y字形のマイクロチャネルから流れてきた2種類の液体が合流マイクロチャネルから本発明のマイクロミキサーの容積拡大部に入ったところで、第1の圧力室11を正圧にし、第2の圧力室13を負圧にした状態の写真であり、図6(ii)は、第1の圧力室11を負圧にし、第2の圧力室13を正圧にした状態の写真である。圧力室が拡大しているときは圧力室内部がクリアーに見え、圧力室が縮小しているときは圧力室内部がグレーにくすんで見える。液体は圧力室が縮小された可変容積部方向から圧力室が拡大された可変容積部方向に向かって(すなわち、写真における実矢線方向に)押しやられる。このようにマイクロミキサーの容積拡大部において両液が混合され、層流界面の無い均一な単一液体となってマイクロチャネル下流側に流れていくことが実証された。
図7は本発明のマイクロチップの他の例の部分概要平面図であり、図8は図7におけるVIII-VIII線に沿った部分概要断面図である。図7及び図8に示されたマイクロチップ1Bは、第2の基板(対面基板)5の上面に接着された第1の基板3と、第1の基板3の上面に接着された第3の基板27からなる3層構造を有する。第1の基板3の下面側にはマイクロチャネル7が配設されており、また、マイクロチャネル7の適当な箇所に、マイクロチャネル7を拡幅した形状の、第1の可変容積部15Bと第2の可変容積部17Bが配設されている。第3の基板27の下面側であって、前記第1の可変容積部15Bと第2の可変容積部17Bに対応する位置に、第1の圧力室11Bと第2の圧力室13Bが配設されている。第1の圧力室11Bには正圧又は負圧を印加するための圧力管路23Bが接続されており、同様に、第2の圧力室13Bには正圧又は負圧を印加するための圧力管路25Bが接続されている。圧力管路23B及び25Bには、空気などの気体の他、オイルなどの液体を送入することができる。第1の基板3の第1の可変容積部15B及び第2の可変容積部17Bに対応する位置は薄膜33Bにより第1の圧力室11B及び第2の圧力室13Bと隔離されている。
図9は、図7及び図8に示されるマイクロチップ1Bにおけるマイクロミキサー9Bの動作を説明する模式的部分概要断面図である。図9(A)に示されるように、例えば、第1の圧力室11Bを、マイクロチャネル7の圧力に対して正圧にすると、第1の圧力室11B下部の薄膜33Bが下方に向かって押し下げられ、第1の可変容積部15Bの容積は減少する。一方、図9(B)に示されるように、例えば、第1の圧力室11Bを、マイクロチャネル7の圧力に対して負圧にすると、第1の圧力室11B下部の薄膜33Bが上方に向かって引き上げられ、第1の可変容積部15Bの容積は増大する。第2の圧力室13Bも同様に動作することができる。前記と同様に、第1の圧力室11Bに正圧を印加している時、第2の圧力室13Bは、等圧状態、正圧状態又は負圧状態の何れかであることができ、第2の圧力室13Bに正圧を印加している時、第1の圧力室11Bは、等圧状態、正圧状態又は負圧状態の何れかであることができる。このように、圧力室に正圧及び/又は負圧を印加することにより、可変容積部の容積を変化させることができ、この可変容積部の容積変化により層流状態の2種類の流体の流れを乱して両流体を混合することができる。可変容積部の容量の変化量は、その可変容積部の位置のマイクロチャネルの容積の略半分になるように、可変容積部や圧力室の形状や操作圧力を適宜選択することが好ましい。
図10は図7及び図8に示されるマイクロチップ1Bにおけるマイクロミキサー9Bの動作により形成される2種類の流体の流れの状態を説明する部分模式図である。第1の圧力室11B及び第2の圧力室13Bを相補的に交互動作させ、第1の可変容積部15B及び第2の可変容積部17Bの容積を相補的に交互変化させる。すなわち、第1の可変容積部15Bの容積を増加させた時は第2の可変容積部17Bの容積を減少させ、第1の可変容積部15Bの容積を減少させた時は第2の可変容積部17Bの容積をBを増加させる。これにより、マイクロミキサー9Bより下流側において液体A、Bの界面は蛇行する。更に、交互動作の周期を、液体がマイクロミキサー9Bの前を通過する時間の約2倍にする。このことと、容積変化量がマイクロミキサー9Bの前のマイクロチャネル7の容積の略半分であることにより、マイクロミキサー9B下流側の液体A、Bは図10に示されるようにほぼ交互の流れになる。
図10は流れが発生している場合の混合動作であったが、流れが無い場合でも、第1の可変容積部15B及び第2の可変容積部17Bの容積を変化させることで、攪拌の効果が得られる。その場合、第1の圧力室11B及び第2の圧力室13Bは必ずしも交互動作である必要はない。
以上、本発明のマイクロミキサーの好ましい実施態様について説明してきたが、本発明のマイクロミキサーは図示された実施態様に限定されない。例えば、図示されたマイクロミキサーはマイクロチャネルの途中に対称的に配置された可変容積部に対して対向するように2個の圧力室を設けているが、圧力室は1個でもよい。また、可変容積部は1個だけでもよく、必ずしも対称形である必要はない。
図7及び図8に示されるマイクロミキサー9Bを有するマイクロチップ1Bを製造した。第1の基板3として厚さ200μmのPDMS基板を使用した。第2の基板5として厚さ1mmのガラス基板を使用した。第3の基板27として厚さ2mmのPDMS基板を使用した。Y字形マイクロチャネルの合流点から1mm下流側に容積拡大部及びマイクロミキサーを配設した。各可変容積部の非加圧時の容積は約6nLであった。(従って、容積拡大部の全体容積は約12nLである。)各圧力室は直径0.5mmの円柱状であり、非加圧時の高さは55μmで容積は約11nLであった。使用圧力は正圧100KPa(キロパスカル)、負圧−70KPaであった。圧力操作方法は、各圧力室に正圧と負圧を交互に印加した。従って、第1の圧力室と第2の圧力室は常に反対の圧力を印加した。
このマイクロチップ1Bのマイクロチャネル7に2種類の液体(赤インクと水)を流してマイクロミキサー9Bの実証試験を行った。実験条件は、合流前のY字形マイクロチャネルの幅は100μmで高さは55μmであり、合流後のマイクロチャネル7の幅は200μmで高さは55μmであった。流量は0.5μL/分(各液0.25μL/分づつ)で、流速は0.76mm/秒(計算値)であった。マイクロミキサー9Bの動作周期は0.4秒(正負それぞれ0.2秒毎)であり、0.4秒での流体の移動距離は0.3mmとした。
マイクロミキサー9Bを停止させた時と動作させた時の、マイクロミキサー9Bの下流側1mm程度に於ける流体の状況を顕微鏡で確認した。図11(A)に示すように、マイクロミキサー9Bを停止させた場合は、2液の層流の界面が明確に観察されたが、図11(B)に示すように、マイクロミキサー9Bを動作させた場合、界面は不明確になり、十分に2液が混合されていることが確認された。
また、マイクロミキサー9Bの上流側では、マイクロミキサー9Bを動作させた場合でも、2液による層流の界面は乱れることなく、マイクロミキサー9Bにより流れを乱すことが無いことが確認された。
前記実施例1と同じマイクロミキサー9Bを有するマイクロチップ1Bを製造した。使用圧力は正圧70KPa(キロパスカル)、負圧−70KPaであった。これ以外の実験条件及び圧力操作方法は前記実施例1と同じ条件を使用した。流体Aとしては、DNAを特異的に吸着する機能を有する粒径数μmの樹脂粉体(シリカビーズ)をエタノールに混合した懸濁液を使用し、流体Bとしては、DNAやその他の不純物を含んだ溶液(媒体の主体は蒸留水とエタノールである)を使用した。これはDNA精製工程の一部として、流体B中のDNAを流体A中のシリカビーズに吸着させる操作である。
図12は、流体A及びBをY字形マイクロチャネルで合流させた1mm後にマイクロミキサーを設け、2液を混合している状態を示す静止画像の写真図である。マイクロミキサーの上流側では液体A及びBが層流になって分かれているが、マイクロミキサーの下流側では2液が混合され、樹脂粉体もほぼ均一にマイクロチャネル中に分布していることが確認された。
以上、本発明のマイクロミキサーの好ましい実施態様について具体的に説明してきたが、本発明は開示された実施態様にのみ限定されず、様々な改変を行うことができる。本発明のマイクロミキサーはμTASやLab-on-Chipの観点からマイクロチップ内に実装することができる。本発明のマイクロチップは本願明細書に開示され、かつ添付図面に示されたマイクロミキサーを1個以上適宜組み合わせて内蔵することができる。このような本発明の画期的なマイクロミキサーを内部に有するマイクロチップは、その実用性及び経済性が飛躍的に向上される。その結果、本発明のマイクロチップは、医学、獣医学、歯科学、薬学、生命科学、食品、農業、水産など様々な分野で好適に有効利用することができる。特に、本発明のマイクロチップは、蛍光抗体法、in situ Hibridization等に最適なマイクロチップとして、免疫疾患検査、細胞培養、ウィルス固定、病理検査、細胞診、生検組織診、血液検査、細菌検査、タンパク質分析、DNA分析、RNA分析などの広範な領域で安価に使用できる。
本発明のマイクロチップの一例の部分概要平面図である。 図1におけるII-II線に沿った部分概要断面図である。 本発明のマイクロミキサー9の動作を説明する模式的部分断面図である。 本発明のマイクロチップの別の例の部分概要平面図である。 図4におけるV-V線に沿った部分概要断面図である。 図4及び図5に示されるマイクロミキサー9Aにおいて大気圧室29を配設した場合の効果を説明する模式的部分断面図である。 図4及び図5に示されるマイクロミキサー9Aにおいて大気圧室29を配設した場合の効果を実証する拡大平面写真図である。 本発明のマイクロチップの他の例の部分概要平面図である。 図7におけるVIII-VIII線に沿った部分概要断面図である。 図7及び図8に示されるマイクロチップ1Bにおけるマイクロミキサー9Bの動作を説明する模式的部分概要断面図である。 図7及び図8に示されるマイクロチップ1Bにおけるマイクロミキサー9Bの動作により形成される2種類の流体の流れの状態を説明する部分模式図である。 実施例1におけるマイクロミキサーの動作を実証する拡大平面写真図である。 実施例2におけるマイクロミキサーの動作を実証する拡大平面写真図である。 Y字形状のマイクロチャネルを有する従来のマイクロチップの一例の部分概要模式図である。 コアンダ効果によるパッシブミキサーの一例の模式的部分構成図である。 アクティブミキサーの一例の模式的部分構成図である。
符号の説明
1,1A,1B 本発明のマイクロチップ
3 第1の基板
5 第2の基板(対面基板)
7 マイクロチャネル
9,9A,9B マイクロミキサー
11,11B 第1の圧力室
13,13B 第2の圧力室
15,15B 第1の可変容積部
17,17B 第2の可変容積部
19 第1の隔壁
21 第2の隔壁
23,23B 圧力管路
25,25B 圧力管路
27 第3の基板
29 大気圧室
31 大気連通管路
33,33B 第1の基板の薄膜部分

Claims (7)

  1. 第1の基板と、該第1の基板の一方の面側に接着される第2の基板とからなり、前記第1の基板の第2の基板との接着面側に少なくとも1本のマイクロチャネルが形成されているマイクロチップにおいて、
    前記マイクロチャネルが形成されている第1の基板がシリコーン樹脂から構成されており、
    前記マイクロチャネルの途中にマイクロミキサーが配設されており、
    前記マイクロミキサーは、
    (1)該マイクロチャネルの前後の幅よりも大きな幅を有する容積拡大部と、
    (2)前記容積拡大部の壁面の一部を変形及び復元させて該容積拡大部の容積を変化させることにより層流状態の2種類の流体の流れを乱して両流体を撹拌混合する少なくとも1個の手段とからなることを特徴とするマイクロチップ。
  2. 前記容積拡大部が前記マイクロチャネルの長手方向軸線に対して対称形に形成されており、前記対称形の容積拡大部の前記長手方向軸線に対する各半分の部分について、それらの壁面の一部を変形及び復元させて該半分部分の容積を変化させることにより層流状態の2種類の流体の流れを乱して両流体を撹拌混合する手段がそれぞれ配設されていることを特徴とする請求項1記載のマイクロチップ。
  3. 前記容積拡大部の壁面の一部を変形及び復元させて該容積拡大部の容積を変化させることにより層流状態の2種類の流体の流れを乱して両流体を撹拌混合する手段は、前記容積拡大部の壁面を隔壁とする圧力室であり、該圧力室には圧力印加手段が接続されており、該圧力印加手段を介して圧力室の圧力を変化させることにより容積拡大部の壁面の一部を変形及び復元させて該容積拡大部の容積を変化させることを特徴とする請求項1又は2記載のマイクロチップ。
  4. 第1の基板がポリジメチルシロキサンからなり、第2の基板がポリジメチルシロキサン、ガラス、シリコン、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート及びポリカーボネートからなる群から選択される1種類の素材からなり、前記第1の基板の第2の基板との接着面側に少なくとも1本のマイクロチャネルが形成されており、該マイクロチャネルの途中に該マイクロチャネルの長手方向軸線に対して対称形の容積拡大部が形成されており、該マイクロチャネルの長手方向軸線に対して各半分の容積拡大部に対して、該各半分の容積拡大部の壁面を隔壁として圧力室が前記長手方向軸線に対して対称的にそれぞれ配設されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のマイクロチップ。
  5. 前記第1の基板の上面に第3の基板が更に接着されており、前記第1の基板が比較的薄い膜厚のポリジメチルシロキサンからなり、前記第3の基板が前記第1の基板の厚さよりも厚いポリジメチルシロキサン、ガラス、シリコン、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート及びポリカーボネートからなる群から選択される1種類の素材からなり、前記第3の基板の前記第1の基板との接着面側に、前記容積拡大部及び圧力室の平面面積と同等又はこれよりも大きな平面面積を有し、かつ、所定の高さを有する大気と連通した大気圧室が更に配設されていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載のマイクロチップ。
  6. 第1の基板がポリジメチルシロキサンからなり、第2の基板がポリジメチルシロキサン又はガラスからなり、前記第1の基板の第2の基板との接着面側に少なくとも1本のマイクロチャネルが形成されており、該マイクロチャネルの途中に該マイクロチャネルの長手方向軸線に対して対称形の容積拡大部が形成されており、
    前記第1の基板の上面に第3の基板が更に接着されており、前記第1の基板が比較的薄く、前記第3の基板が前記第1の基板の厚さよりも厚く、前記第3の基板の前記第1の基板との接着面側に、該マイクロチャネルの長手方向軸線に対して各半分の容積拡大部の上部壁面を隔壁として、各半分の容積拡大部の少なくとも一部に重なるように圧力室が少なくとも1個配設されていることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のマイクロチップ。
  7. 各半分の容積拡大部に対してそれぞれ圧力室が配設されており、該圧力室には圧力印加手段が接続されており、該圧力印加手段を介して圧力室の圧力を変化させることにより容積拡大部の上部壁面の一部を変形及び復元させて該容積拡大部の容積を変化させることを特徴とする請求項6記載のマイクロチップ。
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