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JP4703604B2 - 磁気記録媒体およびその製造方法 - Google Patents
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Description

本発明は、ディスクリート型の磁気記録媒体およびその製造方法に関する。
近年、ハードディスクドライブ(HDD)に組み込まれる磁気記録媒体において、隣接トラック間の干渉によりトラック密度の向上が妨げられるという問題が顕在化している。
この問題に対して、磁性層を加工して記録トラック間を物理的に分離するディスクリートトラック型の磁気記録媒体(DTR媒体)が提案されている。DTR媒体では、記録時に隣接トラックの情報を消去するサイドイレース現象、再生時に隣接トラックの情報を読み出すサイドリード現象などを低減できるため、トラック密度を高めることができる。したがって、DTR媒体は高記録密度を提供しうる磁気記録媒体として期待されている。
ディスクリートトラック媒体の構造としては以下のようなものが知られている。
1.非記録部の磁性層を厚さ方向に下地に達するまで除去し、非記録部の凹部に非磁性材料からなる埋込層を埋め込む。この構造を有するものを「全除去タイプ」という。
2.非記録部の磁性層を厚さ方向に部分的に除去し、非記録部の凹部の底部に磁性層を残す。この構造を有するものを「部分除去タイプ」という(たとえば特許文献1参照)。
3.非記録部の磁性層を非晶質化するなどの方法で変性させる。この構造を有するものを「変性タイプ」という(たとえば特許文献2参照)。
上記の3種のDTR媒体にはそれぞれ以下のような問題がある。
1.全除去タイプでは非記録部の磁性層を全て除去するため、記録部と非記録部の段差が大きい。一方、記録再生ヘッドの浮上安定性を得るためには、凹部に非磁性層を埋め込んで表面を平坦化する必要がある。しかし、凹部の段差が大きいため埋め込みに時間がかかるうえに、平坦化は困難である。
2.部分除去タイプでは記録部と非記録部の段差が小さいため、記録再生ヘッドの浮上安定性の問題は少ない。しかし、記録部だけでなく非記録部にも磁性層が残るため、DC消磁されたサーボ領域からのサーボ信号強度が相対的に弱くなり、記録再生ヘッドの位置決めが困難になる。
3.変性タイプでは、非記録部の磁性層を除去することなくイオン注入により変性させるため、表面に段差がなく、記録再生ヘッドの浮上安定性に優れる。しかし、イオン注入によって記録部と非記録部との界面を急峻に変化させることが困難なため、再生時に信号ノイズ比が低下し、ビットエラー率が悪くなる。
米国特許第6999279号明細書 特開2006−309841号公報
本発明の目的は、サーボ信号強度が高く、ビットエラー率が低く、記録再生ヘッドの浮上安定性に優れたディスクリートトラック型の磁気記録媒体を提供することにある。
本発明の一態様によれば、サーボ信号および記録トラックに相当する凸部をなし、結晶質磁性層を含む記録部と、前記記録部間の凹部の底部に残存する結晶質磁性層にダメージを与えて形成された非晶質ダメージ層を含む非記録部とを有することを特徴とする磁気記録媒体が提供される。
本発明の他の態様によれば、基板上に結晶質磁性層を堆積し、非記録部に対応して前記結晶質磁性層の一部を選択的にエッチングして、前記非記録部の底部に前記結晶質磁性層を残存させた状態で凹部を形成するとともに、サーボ信号および記録トラックに相当する凸部をなす記録部を形成し、前記非記録部の底部に残存した前記結晶質磁性層にダメージを与えて非晶質ダメージ層を形成することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法が提供される。
本発明によれば、サーボ信号強度が高く、ビットエラー率が低く、記録再生ヘッドの浮上安定性に優れたディスクリートトラック型の磁気記録媒体を提供することができる。
図1に本発明に係る磁気記録媒体(DTR媒体)1の概略的な平面図を示す。図1にはデータ領域2とサーボ領域3を示している。データ領域2はユーザデータが記録される領域である。媒体面上でのサーボ領域3の形状は、ヘッドスライダがアクセスする際に描く軌跡に対応する円弧状となっている。サーボ領域3の周方向長さは、半径位置が外周側になるほど長くなるように形成されている。なお、図1では15のサーボ領域3を図示しているが、実際の媒体では100以上のサーボ領域3が形成されている。
図2にサーボ領域およびデータ領域の模式図を示す。図3にサーボ領域およびデータ領域における記録部および非記録部のパターンを示す。これらの図に示すように、データ領域2はサーボ領域3によって周方向にセクタ分割されている。
データ領域2には、複数の凸部をなす記録部として記録トラック(ディスクリートトラック)21が所定のトラックピッチTpで形成されている。記録トラック21にユーザデータが記録される。クロストラック方向に沿って隣接する記録トラック21どうしは非記録部22によって分離されている。
サーボ領域3は、プリアンブル部31、アドレス部32、バースト部33などを含む。サーボ領域3のプリアンブル部31、アドレス部32およびバースト部33には、サーボ信号を与える記録部および非記録部のパターンが形成されている。これらの部分は以下のような機能を有する。
プリアンブル部31は、メディアの回転偏心などにより生ずる時間ズレに対し、サーボ信号再生用クロックを同期させるPLL処理や、信号再生振幅を適正に保つAGC処理を行うために設けられている。プリアンブル部31では、半径方向に分断されることなく連続して放射状に略円弧をなして凸部の記録部が、周方向に繰返して形成されている。
アドレス部32は、サーボマークと呼ばれるサーボ信号認識コードや、セクタ情報、シリンダ情報などが、プリアンブル部31の周方向ピッチと同一ピッチで、マンチェスタコードにより形成されている。特に、シリンダ情報は、サーボトラック毎にその情報が変化するパターンとなるため、シーク動作時のアドレス判読ミスの影響が小さくなるように、隣接トラックとの変化が最小となるグレイコードに変換してから、マンチェスタコード化して記録されている。
バースト部33は、シリンダアドレスのオントラック状態からのオフトラック量を検出するためのオフトラック検出用領域で、径方向にパターン位相をずらした4種のマーク(A、B、C、Dバーストと呼ばれる)が形成されている。各バーストには、周方向に複数個のマークがプリアンブル部と同一のピッチで配置されている。各バーストの径方向周期は、アドレスパターンが変化する周期、換言すればサーボトラック周期に比例する。各バーストは、周方向に約10周期分形成され、径方向にサーボトラック周期の2倍長の周期で繰返すように形成されている。
バースト部33のマーク形状は長方形、または厳密にはヘッドアクセス時のスキュー角を考慮した平行四辺形になるように設計されるが、スタンパ加工精度や転写形成などの加工性能によっては多少丸みを帯びた形状になる。なお、マークは非記録部として形成してもよいし、記録部として形成してもよい。バースト部33から位置を検出する原理については詳細を省略するが、各ABCDバーストの再生信号の平均振幅値を演算処理してオフトラック量を算出する。
上述したようにディスクリートトラック媒体(DTR媒体)はサーボ領域とデータ領域を持つ。サーボ領域は全体が媒体面に垂直な一方向にDC消磁され、サーボ領域中の記録部は全て一方向に磁化される。磁気記録再生装置において、記録再生ヘッドを位置決めする際には、このサーボ領域の一方向に磁化された記録部からの出力と、記録部間の非記録部からの出力とのパターンを読み取る。このため、サーボ領域において正しく位置決めを行うためにはサーボ領域の記録部と非記録部との間の信号強度比が大きくなければならない。
従来のDTR媒体で、サーボ領域の記録部と非記録部との間の信号強度比を大きくするためには、非記録部の磁性層を全て除去する全除去タイプ、または変性タイプが好ましい。部分除去タイプは記録部と非記録部との信号強度比が小さいため、位置決め特性の低下が問題になる。しかし、全除去タイプでは、磁性体加工後に残る凹部が深いため、埋込平坦化が困難となり、記録再生ヘッドの浮上安定性に影響する。このため、位置決め特性およびヘッド浮上安定性の観点では変性タイプが有利である。
従来の変性タイプのDTR媒体では、イオン注入により磁性層を変性する方法がよく知られている。しかし、注入イオンの直進性を確保することが困難なため、記録部と非記録部すなわち磁性層と変性磁性層の界面の急峻性を確保することが難しい。また、イオン注入後の熱処理や化学処理によって注入されたイオンが拡散するため、記録部と非記録部の界面の急峻性が悪くなる。信号再生時に記録部の表面は再生ヘッドとの距離が近いため、表面の磁性層からの信号が大きく影響する。特に、記録部に記録された磁気信号の周波数は、サーボ領域の位置決め信号の周波数よりも高いため、磁性層表面の影響が大きい。このため、記録部と非記録部の界面の急峻性が悪い場合、再生時に記録トラックの界面の揺らぎに相当するノイズが発生する。
本発明のDTR媒体はこれらの問題点を解決するものである。図4に本発明の第1の実施形態に係るDTR媒体の断面図を示す。図4において、基板51上に、軟磁性下地層52が形成されている。軟磁性下地層52上には、記録部として、サーボ信号および記録トラックに対応して凸部をなす結晶質磁性層53が形成されている。記録部間の非記録部には、非晶質ダメージ層55が形成されている。これらの表面に保護層57が形成されている。
第1の実施形態では、非記録部の結晶質磁性層の一部をエッチングして記録部と非記録部との間に段差を設け、凹部に残存している結晶質磁性層にダメージを与えて非晶質化することによって非記録部に残存していた結晶質磁性層を全て非晶質ダメージ層に変性する。エッチング処理を用いた場合、従来の変性処理を行った場合よりも、記録部の結晶質磁性層に急峻な界面を形成することができる。このため、その後、凹部に残存している結晶質磁性層を全て変性しても、記録部の急峻な界面を維持することができ、再生時のノイズの発生を抑えることができる。また、非記録部には非晶質ダメージ層が形成されているので、媒体全体をDC消磁した後に、再生ヘッドが非記録部から感知する磁気信号が小さく、サーボ領域において記録部と非記録部との間で十分な信号強度比が得られる。この結果、記録再生ヘッドの位置決めを正しく行うことができる。また、非記録部に非晶質ダメージ層が形成されているため、表面の段差はそれほど大きくなく、記録再生ヘッドの浮上安定性の問題は少ない。
図5に本発明の第2の実施形態に係るDTR媒体の断面図を示す。図5において、基板51上に、軟磁性下地層52が形成されている。軟磁性下地層52上には、記録部として、サーボ信号および記録トラックに対応して凸部をなす結晶質磁性層53が形成されている。記録部間の非記録部には、非晶質ダメージ層55と非磁性埋込層56とが積層されている。これらの表面に保護層57が形成されている。
第2の実施形態では、非晶質ダメージ層55上の凹部に非磁性埋込層56を埋め込むことにより、表面の平坦性を良好にすることができる。このため、第1の実施形態よりもさらに良好な記録再生ヘッドの浮上安定性を確保することができる。
本発明においては、記録部を結晶質磁性層とトップコート層との2層構造とし、非記録部の結晶質磁性層をエッチングする際にトップコート層の厚さ以上に除去することにより、非晶質ダメージ層の表面がトップコート層の底部(または結晶質磁性層の表面)よりも深い位置になるようにしてもよい。
図6に本発明の第3の実施形態に係るDTR媒体の断面図を示す。図6において、基板51上に、軟磁性下地層52が形成されている。軟磁性下地層52上には、記録部として、サーボ信号および記録トラックに対応して凸部をなす結晶質磁性層53およびトップコート層54が積層されて形成されている。記録部間の非記録部には、非晶質ダメージ層55が存在する。これらの表面に保護層57が形成されている。非記録部の非晶質ダメージ層55の表面はトップコート層54の厚さよりも深い位置にあり、トップコート層54は非記録部の凹部によって分断されている。
図7に本発明の第4の実施形態に係るDTR媒体の断面図を示す。図7に示すように、凹部の非晶質ダメージ層55の上に非磁性埋込層56を積層し、媒体表面を平坦化してもよい。埋込材料、埋込方法については図5に示す第2の実施形態と同様である。
トップコート層54は記録時に容易に磁化され、この磁化されたトップコート層54が結晶質磁性層53の磁化をアシストする機能を有する。このため、少なくともトップコート層54の界面は急峻であることが好ましい。第3の実施形態ではトップコート層54を分断しているので、記録時の磁化の界面形状を急峻にすることができる。なお、下層の結晶質磁性層53は非晶質ダメージ層55と隣接しているため、界面形状が必ずしも急峻でないことがある。しかし、トップコート層54が分断されていればトップコート層54の下の結晶質磁性層53の磁化パターンも急峻な界面形状を持つようになる。第3の実施形態では、非記録部の非晶質ダメージ層55の表面がトップコート層54の厚さよりも深い位置にある。こうして記録部の結晶質磁性層53の表面が非記録部の非晶質ダメージ層55の表面よりも高くなっていると、再生時に再生ヘッドとの距離が近い部分での信号品質を改善できる。
一方、記録部に記録される信号周波数よりも、サーボ領域のパターンは低周波数で形成されているため、磁性層全体の磁化が重要になる。本発明のDTR媒体は、非記録部には変性された非晶質ダメージ層があるため、記録部の磁性層の膜厚に応じた信号コントラストを得ることができる。非記録部の非晶質ダメージ層と記録部の結晶質磁性層との界面は変性処理によって揺らいでいることがあるが、サーボ位置決め信号は記録部の信号より周波数が低く波長が長いため、変性処理による界面揺らぎの影響は、記録部と比較して小さい。
すなわち、記録部においては結晶質磁性層が記録部と非記録部の間に生じた段差分だけ急峻な界面を持ち再生時のノイズ低減に寄与し、さらにサーボ領域においては非記録部の非晶質ダメージ層により低周波の位置決め信号強度を十分に確保することができる。
DTR媒体の製造プロセスでは、インプリント法によりサーボ領域とデータ領域に一括してパターンを形成する。このため、本発明に係るDTR媒体のように、記録部に急峻な界面を持つ磁性層結晶層を有し、非記録部に非晶質ダメージ層を有する構造は有効である。上記の効果は、非記録部に結晶質磁性層が変性せずに残っている部分除去タイプや、非記録部全体を非晶質化する変性タイプでは実現できない。なお、全除去タイプでは、埋込平坦化を良好に行うことができれば、再生信号ノイズやサーボ領域の位置決め信号ノイズを抑えることができるが、実際には埋込平坦化は困難である。
トップコート層54は、下層の結晶質磁性層53と比較して、結晶粒間の交換結合が強い、磁気異方性定数が低い、または飽和磁化が小さいといういずれかの特性を満たすことが好ましい。トップコート層54がこれらの特性を持っている場合、トップコート層54は結晶質磁性層53と比較して記録ヘッドによる磁化が容易となり、記録時に磁化されたトップコート層54による結晶質磁性層53の磁化のアシストも容易になる。
たとえば磁性結晶粒を分断するために酸化物を含有する結晶質磁性層53を用いた場合、トップコート層54では結晶質磁性層と比較して酸化物含有量を少なくとも10%以上低くすることにより、粒間の交換結合を強めることができる。結晶質磁性層よりもトップコート層の磁気異方性定数を低くするには、たとえばCoCrPt合金を主成分とする結晶質磁性層に対して、Cr含有量が少なくとも10%以上多くPt含有量が少なくとも10%以上少ないトップコート層を用いる。結晶質磁性層よりもトップコート層の飽和磁化を低くするには、たとえばCoCrPt合金を主成分とする結晶質磁性層に対して、Cr含有量が少なくとも10%以上多いトップコート層を用いる。
次に、図8(a)〜(g)を参照して、本発明に係る磁気記録媒体(DTR媒体)の製造方法を説明する。この図では基板の一面のみで加工を行うように図示しているが、実際には基板の両面で加工を行う。
図8(a)に示すように、基板51上に、軟磁性下地層52、結晶質磁性層53を成膜し、その上にレジスト60を塗布する。なお、結晶質磁性層53上にトップコート層を設けてもよい。
基板51としては、たとえばガラス基板、Al系合金基板、セラミック基板、カーボン基板、酸化物表面を有するSi単結晶基板、およびこれらの基板にNiPなどのメッキを施したものなどが挙げられる。
軟磁性下地層52としては、Fe、NiまたはCoを含む材料が用いられる。より具体的には、FeCo系合金たとえばFeCo、FeCoVなど、FeNi系合金たとえばFeNi、FeNiMo、FeNiCr、FeNiSiなど、FeAl系合金およびFeSi系合金たとえばFeAl、FeAlSi、FeAlSiCr、FeAlSiTiRu、FeAlOなど、FeTa系合金たとえばFeTa、FeTaC、FeTaNなど、FeZr系合金たとえばFeZrNなどが挙げられる。
結晶質磁性層53としては、たとえばCoCrPt合金にさらに酸化物を含み、垂直磁気異方性を有する磁性材料が用いられる。酸化物としては、特に酸化シリコン,酸化チタンが好適である。
非晶質ダメージ層55は、結晶質磁性層53が媒体作製工程中の処理により、非晶質化したものである。非晶質ダメージ層は結晶質磁性層と比較して残留磁化のない非磁性の特性を示す。構造は、結晶質磁性層が結晶構造であるのに対し、非晶質ダメージ層は結晶質磁性層と組成がほぼ等しいが結晶格子の乱れた構造である。非晶質ダメージ層の組成は結晶質磁性層をダメージ化する際に混入した酸素、アルゴン、炭素、フッ素などが存在してもよい。非晶質ダメージ層と結晶質磁性層との判別には断面TEMによる観察が適している。すなわち、結晶質磁性層部分の断面TEM像には結晶格子が観測されるのに対し、非晶質ダメージ層に観測される結晶格子は著しく少ないか、結晶格子が観測されない。また、コバルトに比べ原子量の小さい上記混入物および非晶質化する際の密度の変化により、断面TEM像における非晶質ダメージ層部分は結晶質磁性層部分よりも明るく見える。非晶質ダメージ層の有無の判定には、断面TEM観察による格子像観察、もしくは該当部分の濃淡比較が適している。
トップコート層を形成する場合、結晶質磁性層53と類似した材料が用いられる。具体的には、酸化物を含まないか酸化物含有量が10%以上少ないもの、結晶質磁性層53と比較してCr含有量が10%以上多くPt含有量が10%以上少ないもの、結晶質磁性層53と比較してCr含有量が10%以上多いものなどが挙げられる。
結晶質磁性層およびトップコート層の膜厚は特に限定されない。一例として、結晶質磁性層の膜厚を15nm、トップコート層の膜厚を5nmとした場合、非記録部において結晶質磁性層を10nmエッチングすると、トップコート層を分断し、かつ結晶質磁性層を5nmの厚さだけ除去した構造になる。
レジスト60は、次のインプリントにより凹凸パターンを転写した後、磁気記録層53の凹凸加工を行うためのマスク材料として用いられる。レジストの材料としては、塗布後にインプリントによる凹凸転写が可能なものが用いられ、例えばポリマー材料、低分子有機材料、液状Siレジストなどが挙げられる。本実施形態では液状Siレジストであるスピンオングラス(SOG)を用いている。
図8(b)に示すように、インプリントによる凹凸パターン転写を行う。転写工程は、両面同時転写型のインプリント装置を用いて行う。基板の両面に塗布されたレジスト(SOG)の全面に、所望の凹凸パターンが形成されたインプリントスタンパ(図示せず)を均等に押圧し、レジスト60の表面に凹凸パターンを転写する。この転写工程により形成されるレジスト60の凹部が、非記録部の凹部に対応する。
図8(c)に示すように、結晶質磁性層53を加工する。(b)で得られた凹凸パターンを有するレジスト60の凹部に残存するレジスト残渣を除去し、結晶質磁性層53を露出させる。次に、残存しているパターン化されたレジスト60をマスクとしてイオンミリングすることにより、結晶質磁性層53に凹部を形成する。
図8(d)に示すように、非記録部の凹部の底部に残存している結晶質磁性層53を非晶質化して非晶質ダメージ層55を形成する。この工程は、たとえばArイオンを10keV〜1MeVの加速電圧にて打ち込むイオン注入が好ましい。加速イオン暴露を用いてもよく、イオン注入にはエネルギーが不十分であっても、非記録部の結晶質磁性層を加熱する効果があればよい。また、酸素やフッ素を含有するガスを用いた化学処理を用いてもよい。
図8(e)に示すように、記録部に残存しているレジスト60をエッチングにより除去する。
図8(f)に示すように、表面に保護層57を形成する。保護層は垂直記録層の腐食を防ぐとともに、磁気ヘッドが接触したときに媒体表面の損傷を防ぐ目的をもつ。保護層としては、たとえばDLCなどのカーボン(C)、SiO2、ZrO2を含む材料が挙げられる。さらに、表面に潤滑剤を塗布する。
本発明において、非晶質ダメージ層55上に埋込層56を埋め込む場合には、図9(a)〜(c)に示すような方法を用いる。この場合、図9(a)の前に、図8(a)〜(e)までの工程を行う。
図9(a)に示すように、スパッタリングにより十分な厚さの埋込層56を成膜する。埋込層56としては、強磁性層ではない材料であれば特に限定されないが、カーボン、SiO2やAl23などの酸化物、Ti、Cr、Ni、Mo、Ta、Al、Ruなどの金属もしくはその合金またはその化合物などが用いられる。図9(b)に示すように、結晶質磁性層53の表面が露出するまで埋込層56をエッチバックして、非記録部の凹部に埋込層56を埋め込み、表面を平坦化する。さらに、図9(c)に示すように、表面に保護層57を形成する。
次に、本発明の磁気記録媒体を搭載した磁気記録装置について説明する。図10に本発明の実施形態に係る磁気記録装置のブロック図を示す。この図では磁気記録媒体の上面にのみヘッドスライダを示しているが、磁気記録媒体の両面にディスクリートトラックを有する垂直磁気記録層が形成されており、この磁気記録媒体の上下面にダウンヘッド/アップヘッドがそれぞれ設けられる。なお、磁気記録装置の構成は、本発明に係る磁気記録媒体を用いている点を除けば、基本的に従来の装置と同様である。
ディスクドライブは、ヘッド・ディスクアセンブリ(HDA)100と呼ばれる本体部と、プリント回路基板(PCB)200とからなる。
ヘッド・ディスクアセンブリ(HDA)100は、磁気記録媒体(DTR媒体)1と、磁気記録媒体1を回転させるスピンドルモータ101と、ピボット102を中心に回動するアクチュエータアーム103と、アクチュエータアーム103の先端に取り付けられたサスペンション104と、サスペンション104に支持されリードヘッドおよびライトヘッドを含むヘッドスライダ105と、アクチュエータアーム103を駆動するボイスコイルモータ(VCM)106と、ヘッドの入出力信号を増幅するヘッドアンプ(図示せず)などを有する。ヘッドアンプ(HIC)はアクチュエータアーム103上に設けられ、フレキシブルケーブル(FPC)120を通してプリント回路基板(PCB)200に接続されている。なお、上記のようにヘッドアンプ(HIC)をアクチュエータアーム103上に設ければヘッド信号のノイズを有効に低減できるが、ヘッドアンプ(HIC)はHDA本体に固定してもよい。
上述したように磁気記録媒体1には両面に垂直磁気記録層が形成され、両面のそれぞれにおいて、ヘッドが移動する軌跡に一致するようにサーボ領域が円弧をなして形成されている。磁気記録媒体の仕様は、ドライブに適応した外径および内径、記録再生特性などを満足する。サーボ領域がなす円弧の半径は、ピボットから磁気ヘッド素子までの距離として与えられる。
プリント回路基板(PCB)200は、4つの主要なシステムLSIを搭載している。これらは、ディスクコントローラ(HDC)210、リード/ライトチャネルIC220、MPU230およびモータドライバIC240である。
MPU230はドライブ駆動システムの制御部であり、本実施形態に係るヘッド位置決め制御システムを実現するROM、RAM、CPUおよびロジック処理部を含む。ロジック処理部はハードウェア回路で構成された演算処理部であり、高速演算処理が行われる。また、その動作ソフト(FW)はROMに保存されており、このFWに従ってMPUがドライブを制御する。
ディスクコントローラ(HDC)210はハードディスク内のインターフェース部であり、ディスクドライブとホストシステム(例えばパーソナルコンピュータ)とのインターフェースや、MPU、リード/ライトチャネルIC、モータドライバICとの情報交換を行い、ドライブ全体を管理する。
リード/ライトチャネルIC220はリード/ライトに関連するヘッド信号処理部であり、ヘッドアンプ(HIC)のチャネル切替えやリード/ライトなどの記録再生信号を処理する回路で構成される。
モータドライバIC240は、ボイスコイルモータ(VCM)77およびスピンドルモータ72の駆動ドライバ部であり、スピンドルモータ72を一定回転に駆動制御したり、MPU230からのVCM操作量を電流値としてVCM77に与えてヘッド移動機構を駆動したりする。
実施例1
インプリントスタンパとして0.4mm厚のNiスタンパを用いた。このスタンパは、図1に示すように最内周半径4.7mm、最外周半径9.7mmの範囲に所定のパターンを有する。トラックピッチは100nmとした。スタンパの凹凸深さは50nmとした。
基板として直径20.6mm、内径6mmのドーナツ型ガラスディスクを用いた。軟磁性下地層としてFeCoVを100nm成膜した。結晶質磁性層としてCoCrPt−SiO2を15nm成膜した。トップコート層としてSiO2を含まないCoCrPtを5nm成膜した。レジストとしてSi化合物であるSOGレジストをスピンコートにより70nmの膜厚で塗布した。
レジスト層を塗布した基板に対し、インプリントスタンパを常温、大気圧下において200MPaの圧力で1分間押し付け、レジスト層表面にインプリントスタンパの凹凸を転写した。この転写工程により、非記録部に対応するレジストの凹部が形成された。レジスト凹凸深さはインプリントスタンパの凹凸と等しく50nmであった。
得られたレジスト凹凸パターンに対しCF4ガスを用いたエッチングを行い、凹部のレジスト残渣を除去し、非記録部の結晶質磁性層表面を露出させた。この状態では、結晶質磁性層を残す記録部にSOGレジストが残存している。次いで、このSOGレジストをマスクとしてArイオンによりミリングを行い、非記録部を10nmエッチングし、所望の凹凸パターンを得た。このミリングにより記録部のトップコート層が分断され、非記録部の結晶質磁性層は膜厚15nmのうち5nmが除去され、凹部の底部に10nmの結晶質磁性層が残った。
続いて、100keVの加速エネルギーでArイオンを注入し、凹部に残った結晶質磁性層を非晶質化して非晶質ダメージ層を形成した。
この時点で試料を一部抜き取り、記録部の断面TEMを観測した。その結果、記録部の結晶質磁性層には結晶格子が観測され、結晶状態が保たれていた。一方、非記録部の磁性層には結晶格子が確認されず、非晶質化していることがわかった。また、断面TEM像の明度を調べたところ、結晶質磁性層は暗く、非記録部の磁性層は結晶質磁性層と比較して明るかった。
次いで、残存したSOGレジストをCF4ガスによりエッチングして除去した。最後にこの磁気記録媒体表面にDLC保護層を形成し、潤滑剤を塗布してDTR媒体を製造した。
実施例2
実施例1からの変更点として、レジスト剥離後、埋込層としてNiTa合金を50nmスパッタして非記録部の凹部に埋め込み、これを結晶質磁性層が露出するまでエッチバックして表面を平坦化した。平坦化後の表面の凹凸差は5nmであった。それ以外に工程は実施例1と同様にしてDTR媒体を製造した。
比較例1
実施例2において、イオンミリングによって非記録部の結晶質磁性層を除去することなく、非記録部にイオン注入して結晶質磁性層を変性させた変性タイプのDTR媒体を製造した。
比較例2
実施例1において、イオンミリングによって非記録部の結晶質磁性層を部分的に除去した部分除去タイプのDTR媒体を製造した。
比較例3
実施例2において、イオンミリングによって非記録部の結晶質磁性層を全て除去し、埋込平坦化を行った全除去タイプのDTR媒体を製造した。
上記実施例1、2および比較例1〜3の媒体をドライブに搭載し、サーボ信号のSN測定、ランダム信号記録によるビットエラー率(BER)測定、減圧雰囲気下でタッチダウン試験を行った。これらの結果を表1に示す。
比較例1の変性タイプでは、ビットエラー率の低下が見られた。比較例2の部分除去タイプでは、サーボ信号強度のSNが確保できず、位置決めが困難であった。比較例3の全除去タイプではタッチダウン気圧が上昇した。媒体表面を観察したところ、表面に15nmの凹凸差があり、平坦化が困難であることがわかった。
実施例1では、媒体表面に10nmの凹凸差があるがタッチダウン気圧は0.5気圧であり、深刻な問題とはならなかった。実施例2では特に問題が見られなかった。
以上のように、実施例1、2は記録再生時のサーボ信号強度が高く、ビットエラー率が低く、記録再生ヘッドの浮上安定性に優れている。
Figure 0004703604
本発明に係る磁気記録媒体の概略的な平面図。 サーボ領域およびデータ領域の模式図。 サーボ領域およびデータ領域のパターンを示す平面図。 本発明の第1の実施形態に係る磁気記録媒体の断面図。 本発明の第2の実施形態に係る磁気記録媒体の断面図。 本発明の第3の実施形態に係る磁気記録媒体の断面図。 本発明の第4の実施形態に係る磁気記録媒体の断面図。 本発明に係る磁気記録媒体の製造方法を示す断面図。 本発明に係る磁気記録媒体の他の製造方法を示す断面図。 本発明の実施形態に係る磁気記録装置のブロック図。
符号の説明
1…磁気記録媒体、2…データ領域、3…サーボ領域、21…記録トラック、22…非記録部、31…プリアンブル部、32…アドレス部、33…バースト部、51…基板、52…軟磁性下地層、53…結晶質磁性層、54…トップコート層、55…非晶質ダメージ層、56…埋込層、57…保護層、60…レジスト、100…ヘッド・ディスクアセンブリ(HDA)、101…スピンドルモータ、102…ピボット、103…アクチュエータアーム、104…サスペンション、105…ヘッドスライダ、106…ボイスコイルモータ(VCM)、120…フレキシブルケーブル(FPC)、200…プリント回路基板(PCB)、210…ディスクコントローラ(HDC)、220…リード/ライトチャネルIC、230…MPU、240…モータドライバIC。

Claims (9)

  1. サーボ信号および記録トラックに相当する凸部をなし、結晶質磁性層を含む記録部と、
    前記記録部間の凹部の底部に残存する結晶質磁性層にダメージを与えて形成された非晶質ダメージ層を含む非記録部と
    を有することを特徴とする磁気記録媒体。
  2. 前記記録部は前記結晶質磁性層とその上に積層されたトップコート層とを含み、前記非記録部の前記非晶質ダメージ層の表面は前記トップコート層の厚さよりも深い位置にあることを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
  3. 前記結晶質磁性層は酸化物を含み、前記トップコート層は前記結晶質磁性層よりも酸化物含有率が低いことを特徴とする請求項2に記載の磁気記録媒体。
  4. 前記結晶質磁性層はCo、CrおよびPtを含み、前記トップコート層は前記結晶質磁性層よりもPt含有量が少ないことを特徴とする請求項2に記載の磁気記録媒体。
  5. 結晶質磁性層はCo、CrおよびPtを含み、前記トップコート層は前記結晶質磁性層よりもCr含有量が多いことを特徴とする請求項2に記載の磁気記録媒体。
  6. さらに、前記非晶質ダメージ層上の凹部に埋め込まれた非磁性埋込層を含むことを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体。
  7. 基板上に結晶質磁性層を堆積し、
    非記録部に対応して前記結晶質磁性層の一部を選択的にエッチングして、前記非記録部の底部に前記結晶質磁性層を残存させた状態で凹部を形成するとともに、サーボ信号および記録トラックに相当する凸部をなす記録部を形成し、
    前記非記録部の底部に残存した前記結晶質磁性層にダメージを与えて非晶質ダメージ層を形成する
    ことを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
  8. 基板上に前記結晶質磁性層とトップコート層とを堆積し、非記録部に対応して選択的エッチングを行う際に前記トップコート層を全膜厚にわたって除去し前記結晶質磁性層を一部の膜厚にわたって除去することを特徴とする請求項7に記載の磁気記録媒体の製造方法。
  9. さらに前記非晶質ダメージ層上の凹部に非磁性埋込層を埋め込むことを特徴とする請求項7に記載の磁気記録媒体の製造方法。
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