JP4704982B2 - 大断面ブルーム連鋳におけるバネ用鋼の中心偏析改善方法 - Google Patents
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上記の計算条件のうち特にその計算結果に大きく影響を与えるものとして、(1)(物性データ)凝固潜熱と、(2)(外部からの抜熱条件)2次冷却帯における熱伝達係数/ロール冷却による熱伝達係数と、が挙げられる。
しかし、当該2次冷却帯におけるスプレー/ミスト冷却の熱伝達係数は多種のパラメータが連関する複雑な関数として表されることが報告されている(三塚ら:鉄と鋼、69(1983)、262/三塚:鉄と鋼、91(2005)、1を参照)。当該パラメータは例えば、スプレー流量/水滴のサイズ及び運動量/エアーの量及び圧力/鋳片の表面温度などのことである。
そして上記熱伝達係数は、これらのパラメータが適宜に決定されたとしても測定条件によって結局は大きくバラついているのが現状である。
加えて、上記の実験では、(a)鋳片の上下面における冷却能の差異の、鋳片の移動に伴う変化や、(b)浸漬ノズルの詰まりによる影響、(c)ガイドロール間の溜り水による影響、(d)低温ロールからの冷却による影響、(e)鋳片の酸化具合(スケールの付着厚み)による影響、など実機において発生し得る種々の影響を見積もることが当然できない。
参考として、凝固伝熱計算の計算結果の一例を図12に示す。本図は、前述した三塚らの文献に記載された予測式を用い、上記凝固潜熱を55又は65cal/gとして計算してみたものである。本図において、実線は当該凝固潜熱を65cal/gとして計算したものであり、破線は55cal/gとして計算したものである。本図から判る通り、前記凝固潜熱を略主観的に決定している現状では、結果として、当該固相率とメニスカス距離との関係に、例えば数mオーダにまで及ぶ大きなズレが生じてしまうのである。また、前述した三塚らの予測式が全ての鋳造条件に適合するとは考え難く、何れの予測式を採用するかによっても、同様に当該固相率とメニスカス距離との関係に大きなズレが生じることが容易に推測される。
・鋳型の上端における鋳型厚D[mm]を350〜410とする。
・鋳造速度Vc[m/min]を0.50〜0.65とする。
・比水量Wt[L/kgSteel]を0.25〜1.00とする。
・タンディッシュ内の溶鋼過熱度ΔT[℃]を10〜45とする。
・メニスカス距離M[m]が10.0〜22.3である鋳造経路としての第1経路部Int1におけるロール勾配GRD[mm/m]を1.0〜2.0とする。
・前記メニスカス距離M[m]が22.3〜25.9である鋳造経路としての第2経路部Int2におけるロール勾配GRD[mm/m]を1.0〜3.0とする。
・前記メニスカス距離M[m]が25.9〜27.5である鋳造経路としての第3経路部Int3におけるロール勾配GRD[mm/m]を1.5〜2.0とする。
・前記メニスカス距離M[m]が27.5〜32.3である鋳造経路としての第4経路部Int4におけるロール勾配GRD[mm/m]を1.0〜1.5とする。
先ず、本明細書中において用いる「ロール勾配GRD[mm/m]」を以下の如く定義する。図1は、ロール勾配の定義を説明するための模式図である。
即ち、鋳造経路に沿って複数で並設されるロール対のうち、任意のロール対と、該ロール対に対して前記鋳造経路の下流側に隣り合うように配設されるロール対と、の間のロール勾配GRD1-2[mm/m]は、前者ロール対のロールギャップG1[mm]と、後者ロール対のロールギャップG2[mm]と、両ロール対のロールピッチL1-2と、に基づいて下記式により求められるものとする。
GRD1-2=(G1−G2)/L1-2
なお、ロールギャップG[mm]とは、鋳片を挟んで一対で設けられる両ロールの面間最短距離[mm]のことである。
次に、本明細書中において用いる「メニスカス距離M[m]」の定義に関して説明する。本明細書中において「メニスカス距離M[m]」とは、注湯された溶鋼を冷却して所定の形状の凝固シェルを形成するための鋳型内に収容されている溶鋼の湯面を起点とし、鋳造経路に沿って観念する距離[m]を意味するものとする。
2.前述した図略のタンディッシュから鋳型1へ所定の流量で溶鋼を注湯する。
3.鋳型1内に所定量の溶鋼が注湯されたら、前記のダミーバーを鋳造経路の下流側へ向かって所定の速度で引き抜く。
4.所定のメニスカス距離において上記ダミーバーを適宜の手段により回収し、もって、バネ用鋼は連続的に鋳造され始める。
また、前記の鋳型1の上端における鋳型厚D[mm]は、350〜410としている(ただし、該鋳型1の上端における鋳型厚D[mm]と鋳型幅[mm]とで決まるアスペクト比は2以下とする。)。
また、上記の2次冷却帯に設けられている複数の冷却スプレー4・4・・・によって噴霧される冷却水の量としての所謂比水量Wt[L/kgSteel]は、0.25〜1.00としている。
また、所謂溶鋼過熱度ΔT[℃]は10〜45としている(定義・測定方法については後述(資料1)する。)。
なお、所謂鋳型内溶鋼攪拌強度M-EMS[gauss]は600〜800としている(定義・測定方法については後述(資料2)する。)。
即ち、このバネ用鋼のC含有量C[wt%]は、0.55〜0.65とする。以下、簡単に表記する。
・Si[wt%]:1.30〜2.10
・Mn[wt%]:0.40〜1.10
・Cr[wt%]:0.10〜0.70
・Cu[wt%]:0〜0.50
→耐食性を向上させ、靭性を低下させる。
・Al[wt%]:0〜0.08
・Ni[wt%]:0〜1.0
→焼入れ性を向上させ、低温脆化を抑制できる。耐食性を向上させる。残留オーステナイト組織を生成させて、強度を低下させる。
・Mo[wt%]:0〜0.60
→低温焼鈍後の耐力を向上させ、加工性を低下させる。
・V[wt%]:0〜0.10
→靭延性を向上させ、加工性を低下させる。
・Nb[wt%]:0〜0.05
→靭延性を向上させ、加工性を低下させる。
・Ti[wt%]:0〜0.10
→耐環境性を向上させる。窒化物を析出させて寿命を低下させる。
・B[wt%]:0〜0.002
・Ca[wt%]:0〜0.002
・P[wt%]:0〜0.03
・S[wt%]:0〜0.015
また、前記メニスカス距離M[m]が22.3〜25.9である鋳造経路としての第2経路部Int2におけるロール勾配GRD[mm/m]は0.5〜3.0としている。
また、前記メニスカス距離M[m]が25.9〜27.5である鋳造経路としての第3経路部Int3におけるロール勾配GRD[mm/m]は1.0〜2.0としている。
また、前記メニスカス距離M[m]が27.5〜32.3である鋳造経路としての第4経路部Int4におけるロール勾配GRD[mm/m]は0.5〜1.5としている。
これに対比させるかたちで、上記ロール勾配GRD[mm/m]に関する条件のすべては満たしていない例(比較例)を図5〜7に例示する。図5〜7は夫々、本実施形態における前記のロール勾配GRD[mm/m]に関する条件のすべては満たしていない例を示す図である。
同様に、説明の都合上、上記夫々のロール対2・2・・・(2iや2i+jなど)のメニスカス距離Mは、各ロール対2・2・・・の符号に付される添え字を伴って表記することとする。例えば、上記のロール対2iのメニスカス距離Mはメニスカス距離Miと表記し、ロール対2i+jのメニスカス距離Mはメニスカス距離Mi+jと表記する、である。
(1) メニスカス距離Mi[m]に配置されているロール対2iのロールギャップGiを測定する。
例:Gi[mm]=376
(2) メニスカス距離Mi+j[m]に配置されているロール対2i+jと、前記のロール対2iと、の間の距離(Mi+j−Mi)[m]を測定する。
例:Mi+j−Mi[m]=1.6
(3) 下記式に示す如く、前記のロール対2i+jのロールギャップGi+jを求める。そして、鋳片を挟むように一対で設けられる前記のロールスタンドのうち少なくとも一方を適宜の手段により移動操作することにより、求められたロールギャップGi+jを前記のロール対2i+jに対して適用する。
Gi+j=Gi−GRD×(Mi+j−Mi)
例:GRD[mm]=1.1、Gi+j[mm]=376−1.1×1.6=374.24
(4) メニスカス距離Mi+j[m]に配置されているロール対2i+jと、下流側のロールスタンドに支持されている複数のロール対2・2・・・のうち最も上流側のロール対2i+1と、の間の距離(Mi+j−Mi+1)[m]を求める。
例:(Mi+j−Mi+1)[m]=0.96
(5) 下記式に示す如く、前記のロール対2i+1に対して適用すべきロールギャップGi+1を求める。そして、鋳片を挟むように一対で設けられる前記のロールスタンドのうち少なくとも一方を同様に適宜の手段により移動操作することにより、求められたロールギャップGi+1を前記のロール対2i+1に対して適用する。
Gi+1=Gi+j+GRD×(Mi+j−Mi+1)
例:Gi+1[m]=374.24+1.1×0.96=375.296
本評価の対象は、鋳片の中心偏析の程度である。特に、C偏析とSi偏析に着目するものである。以下、下記(1)〜(4)においてはC偏析の評価方法を詳細に説明し、下記(5)においてはSi偏析の評価方法を簡単に説明する。
即ち、第1に、鋳造された鋳片から鋳造方向において250mm分だけ鋳片の部分を抜き出す。第2に、前記鋳片の部分を、その鋳片幅方向において半分とするように狭面と平行に切断して小鋳片を得る(図9上、参照)。
第3に、上記切断により得られた小鋳片を穿孔して切粉試料を採取する。具体的に言えば、下記の如くである(図9下、参照)。
即ち、上記切断により得られた小鋳片を、図9中“L断面”及び星印で示す断面側より、φ5mmのドリル刃を用いて、鋳片厚み方向中央の線上で、鋳造方向に沿って所定間隔p(p=10mm)で、該断面に対して垂直に所定深さdp(dp=20mm)で、穿孔し、合計25箇所の切粉試料を採取する。
第4に、上記穿孔で得られた25箇所分の切粉試料の夫々を、所定の成分分析方法(例えば、燃焼赤外線吸収法など)により成分分析する。
第5に、成分分析の対象たる鋳片を鋳造している時に前述したタンディッシュから予め採取しておいた溶鋼試料を、第4と同様、所定の成分分析方法により成分分析する。
上記の第4及び第5の成分分析においては共に、試料のC含有量C[wt%]を測定する。
第6に、一の小鋳片から採取された前記複数箇所分の切粉試料のうち最もC含有量C[wt%]の高い切粉試料の該C含有量C[wt%]をCmax[wt%]として記録する。
第7に、第6で記録されたCmax[wt%]を、第5で得られたC含有量C[wt%]としてのCo[wt%]で除して得られる比Cmax/Coを算出して記録する。
第8に、該比Cmax/Coが1.2以下だった試験を「○(中心偏析少)」と、同じく1.2を超えた試験を「×(中心偏析顕著)」と、評価した。
上記(1)〜(4)に記載したC偏析の評価方法は、上述のSi偏析の評価にも同様に適用できる。ただし、C偏析の評価方法と、Si偏析の評価方法と、は評価の閾値において相違する。
即ち、C偏析を評価するためのパラメータとしての比Cmax/Coは、“1.2以下を良好とする”とした。これに対し、Si偏析を評価するためのパラメータとしての比Simax/Sioは、“1.4以下を良好とする”ものとする。
(a) 上記の連続鋳造機100によって連続的に鋳造されたブルーム鋳片は、適宜の加熱炉で約1250℃に至るまで加熱された後、適宜の分塊圧延設備にて断面155mm×155mmの所謂ビレットに分塊圧延される。
(b) 上記(a)で得られた所定断面のビレットは、所定の加熱・圧延・熱処理工程を経て、所定の寸法に切断されて、最終製品としてのバネ材に成形される。
上記(b)における「圧延(減面・伸線)」は、数回に分けて段階的に行われる。その複数の段階のうち一の段階(φ6.4mm)における鋼材に対する伸線工程に着目した。
(a) 即ち、φ6.4mmに圧延した鋼材を熱処理後、冷間で減面率70〜80%で伸線した。このとき断線が発生したら、そのときの被伸線鋼材の成分を上記同様の成分分析方法により分析した。
(b) そして、図10及び図11の如くに分析結果を集計した。図10及び図11は夫々、中心偏析の度合いを意味する前記の比Cmax/Co又は比Simax/Sioを横軸とし、上記断線の発生率(溶鋼10000トンあたり何回、断線が発生したか。)を縦軸としたものである。
(c) これら図10及び図11によれば、前記比Cmax/Coは1.2以下とし、前記比Simax/Sioは1.4以下とすれば、上記伸線時における断線(破断)を極めて効果的に防止できることが判る。
(d) 以上の考察に基づいて、C偏析及びSi偏析の評価の閾値を上記の如く夫々、1.2及び1.4と設定したのである。
<ロールピッチ>:鋳造経路に沿って複数で並設される前記のロール対2・2・・・の該並設間隔としてのロールピッチは、320mmとした。
<ロール径>:前記のロール対2・2・・・を構成する各ロール2a・2aの外径は、300mmとした。
<特記ない鋳造経路におけるロール勾配>:上記の第1経路部Int1〜第4経路部Int4以外の経路部におけるロール勾配GRD[mm/m]は、特記ない限り、0〜0.25とした。
・鋳型の上端における鋳型厚D[mm]を350〜410とする。
・鋳造速度Vc[m/min]を0.50〜0.65とする。
・比水量Wt[L/kgSteel]を0.25〜1.00とする。
・タンディッシュ内の溶鋼過熱度ΔT[℃]を10〜45とする。
・メニスカス距離M[m]が10.0〜22.3である鋳造経路としての第1経路部Int1におけるロール勾配GRD[mm/m]を1.0〜2.0とする。
・前記メニスカス距離M[m]が22.3〜25.9である鋳造経路としての第2経路部Int2におけるロール勾配GRD[mm/m]を1.0〜3.0とする。
・前記メニスカス距離M[m]が25.9〜27.5である鋳造経路としての第3経路部Int3におけるロール勾配GRD[mm/m]を1.5〜2.0とする。
・前記メニスカス距離M[m]が27.5〜32.3である鋳造経路としての第4経路部Int4におけるロール勾配GRD[mm/m]を1.0〜1.5とする。
即ち、上記の中心偏析の改善は、計算誤差や操業バラツキに起因して精確には求め得ない中心固相率は全く基準とせず、凝固速度に対して支配的な具体的操業条件(具体的には、鋳型厚D・鋳造速度Vc・比水量Wt・メニスカス距離Mとロール圧下勾配GRDとの具体的関係)に基づいて実施される。
従って、中心固相率を計算するための高価な機材の導入や高度な計算技術、計算に長けた人員の確保を不要とできるし、現存の如何なる連続鋳造機においても極めて容易にその実施をできる。しかも、技術的効果の再現性(効果の現出安定性)も極めて高い。
なお、これら図13〜16の横軸はC偏析の度合い(Cmax/Co)(又はSi偏析の度合い(Simax/Sio))を表し、縦軸は度数を表す。ここで、「度数」とは具体的には、一の取鍋(溶鋼収容量=250ton)分に対して一のサンプルを採取し、これを所定回繰り返し、採取されたの複数のサンプルの成分分析結果を各偏析度合いごとに積算したものである。
上述した溶鋼過熱度ΔT[℃]の測定方法を下記第1〜2に詳説する。
即ち、第1に、前述のタンディッシュ内に保持されている(入れ替わっている、流出入している)溶鋼の温度を適宜の温度測定器を用いて測定する。
(例)この温度測定器とは例えばその先端部に温度感知部を備える熱電対型のものが挙げられ、この場合、この温度感知部をタンディッシュ内に保持されている溶鋼の中へ深さ50mm以上浸漬させて該溶鋼の温度を測定することとする。なお、熱電対は測定対象の温度に応じてその出力電圧を昇降させる特性を有するのは周知の通りであるから、溶鋼の温度を測定することは、熱電対が出力する電圧を適宜の手段により読み取ることと換言できる。
第2に、第1で測定された溶鋼の温度と、該溶鋼の溶鋼成分により唯一に決まる所謂凝固開始温度と、を比較する。そして上述した溶鋼過熱度ΔT[℃]は、前者から後者を除いた(引いた)残りとして求めることができる。
上述した鋳型内溶鋼攪拌強度M-EMS[gauss]の測定方法を説明する。
即ち、この鋳型内電磁攪拌強度M-EMS[gauss]は、鋳型1の幅方向中央であって、鋳型1の上端を基準とし下端へ向かって250mmだけ離れ、且つ、鋳型の広面側内壁面から15mmだけ離れた地点において適宜のガウスメータにより測定される値(単位は[gauss]とする。)とするものとする。
GRD ロール勾配
Claims (1)
- C含有量C[wt%]を0.55〜0.65とし、Si含有量Si[wt%]を1.30〜2.10とし、Mn含有量Mn[wt%]を0.40〜1.10とし、Cr含有量Cr[wt%]を0.10〜0.70とするバネ用鋼の中心偏析改善方法において、
鋳型の上端における鋳型厚D[mm]を350〜410とし、
鋳造速度Vc[m/min]を0.50〜0.65とし、
比水量Wt[L/kgSteel]を0.25〜1.00とし、
タンディッシュ内の溶鋼過熱度ΔT[℃]を10〜45とし、
前記鋳型内に注湯される溶鋼の湯面を起点とし、鋳造経路に沿って観念するメニスカス距離M[m]が10.0〜22.3である鋳造経路としての第1経路部Int1におけるロール勾配GRD[mm/m]を1.0〜2.0とし、
前記メニスカス距離M[m]が22.3〜25.9である鋳造経路としての第2経路部Int2におけるロール勾配GRD[mm/m]を1.0〜3.0とし、
前記メニスカス距離M[m]が25.9〜27.5である鋳造経路としての第3経路部Int3におけるロール勾配GRD[mm/m]を1.5〜2.0とし、
前記メニスカス距離M[m]が27.5〜32.3である鋳造経路としての第4経路部Int4におけるロール勾配GRD[mm/m]を1.0〜1.5とする、
ことを特徴とするバネ用鋼の中心偏析改善方法
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