図1は本発明に係る回転加工用部材の一実施形態を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は図1(a)のX−X線における断面図をそれぞれ示している。
本発明の回転加工用部材1は、中心部には貫通孔3を有する各種金属材料からなる円筒形状の芯体9を有し、該芯体9の外周にはロール2を装着する構造となっており、被加工物は、芯体9に装着されたロール表面2aに接触して、回転により、金属製の被加工物を搬送または延性加工するものである。
前記ロール2と芯体9は、高温化でも強度低下しにくいシリコン系接着剤、無機系接着剤またはエポキシ系接着剤等を用いて組立てることができる。また、ロール2の内径を雌ネジとし、芯体9の外径を雄ネジとするネジ構造によって組立ててもよい。この場合、回転加工用部材1の使用時の回転方向と反対のネジ加工を行うことによって、ネジの緩みを防止することできるので好ましい。また、ネジと前記接着剤を併用することによって、使用時のネジの緩みをいっそう防止することができるため、さらに好ましい。なお、ロール2と芯体9は別体構造ではなく、一体構造としてもよい。
このような回転加工用部材は、例えば、図2(a)に示すような伸線加工用装置のキャプスタンローラー、ガイドローラー、また、図2(b)に示すような放電加工用装置の案内部材に用いられる他、熱間圧延装置の圧延ローラー、ローラーハースキルンの多列式コンベヤーなどに用いることが可能である。
ここで、本発明の回転加工用部材1は、少なくとも前記被加工物と接する部分であるロール2が、窒化珪素質焼結体からなるとともに表面の算術平均粗さ(Ra)が0.1μm以下、且つ前記被加工物と同材質金属との動摩擦係数が0.7〜1.3の範囲であることが重要である。
前記ロール2を窒化珪素質焼結体から形成することで、金属製のロールと比較して、比重が小さく、耐摩耗性に優れているため、軽量で長寿命のロールとすることができる。さらに、窒化珪素質焼結体は、セラミックス中でも、優れた曲げ強度、破壊靭性値、耐熱衝撃性を有しており、他のセラミックスと比較しても、長寿命とすることができる。同時に被加工物と接する表面の算術平均粗さ(Ra)が0.1μm以下、且つ前記被加工物と同材質金属との動摩擦係数を0.7〜1.1の範囲とすることで、被加工物表面の傷、付着の発生を抑え、さらに、ロール2表面と被加工物との間でスリップを発生させることなく加工できる。
即ち、表面の算術平均粗さについては、被加工物と接する表面の算術平均粗さ(Ra)が0.1μmよりも大きくなると、被加工物と接するロール2の表面の凹凸が、被加工物に転写されるため、被加工物の仕上り状態が低下する。また、ロール2表面の凹凸によって、被加工物表面がえぐられ、ボイド内に埋没した金属分が被加工物に再付着する現象が発生しやすい。この現象が発生した場合、再付着物は被加工物の異物となるため、被加工物の品質を低下させる。
なお、前記表面粗さは、触針式表面粗さ測定器によって、測定することができる。詳しくは、回転加工用部材1を任意の固定方法で固定し、触針式表面粗さ測定器を所定の測定条件に設定して後、触針をロール表面2aに接触させる。その後、触針を回転加工用部材1の回転軸方向に運動させることで測定することができる。ここで、回転軸方向に測定するのは、回転加工用部材のロール表面2aを加工する際は、円筒研削盤を用いて周方向に加工するため、ロール表面2aには、周方向に微細な加工痕が発生する。その結果、周方向に触針を運動させて表面粗さを測定した場合は、回転軸方向と比較して表面粗さが低くなる傾向となるためである。
また、前記動摩擦係数が0.7未満の場合は、ロール2表面と被加工物間でスリップ現象が発生する。このような、スリップ現象が発生した場合、以下のような問題が発生する。
まず、駆動ローラーの延性加工においては、駆動ローラーのロール2表面と被加工物間でのスリップによって、被加工物に傷などの欠陥が発生する。また、延性加工に使用する駆動ローラーは、被加工物を搬送する駆動力を発生させるが、前記のようなスリップが発生した場合、駆動力が被加工物に伝達されないため、被加工物の搬送制御が非常に困難になる。また、同様に駆動ローラーの搬送用ローラーでは、前記のようなスリップが発生した場合、駆動力が被加工物に伝達されないため、被加工物の搬送制御が非常に困難になる。さらに、従動ローラーでは、延性加工および搬送において、従動ローラーのロール表面と被加工物間でスリップが発生し、回転に影響をおよぼす軸受の回転抵抗、従動ローラーの重量に起因する慣性力が相対的に大きくなって、回転加工用部材の回転速度が被加工物の搬送速度に追随できなくなり、被加工物表面に傷が発生する。
一方、動摩擦係数が1.1より大きい場合、延性加工用または搬送用の駆動ローラー及び従動ローラー両者において、ロール2の摩耗が促進される。例えば、伸線加工などに用いられる回転加工用部材は、ロール2と被加工物である線材のスリップを制御することによって加工するが、このような用途では、動摩擦係数が1.1よりも高い場合、摩擦力が高いためロール2の摩耗が促進される。
さらに、表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)0.07μm以下、動摩擦係数が0.8〜1.1であれば、被加工物に傷、付着を発生させることが無く、また、スリップを発生させることなく加工可能であるので好ましい。さらに算術平均粗さ(Ra)0.03〜0.05の範囲であれば、伸線加工において、非常に加工が難しい金線などの加工に使用可能となるため、さらに好ましい。
なお、前記窒化珪素質焼結体からなるロール2の表面の動摩擦係数は、以下のように測定する。先ず、ロール2の表面をなす窒化珪素質焼結体から直径40mm×厚み9mmの試料を削りだし、動摩擦係数をボールオンディスク法(JIS R1613)に準じた方法で測定する。
詳細には、ロール2の少なくとも表面を形成する窒化珪素質焼結体を直径40mm×厚み9mmの試料を作製し、周速0.17m/s、摺動距離100mで測定を行った。また、使用したボールは、直径6mmのタフピッチ銅製であり、荷重5Nでディスクに押しつけた。その後、前記ディスクを周速0.17m/sec.の周期で回転させ、そのディスクの中心から半径3mmの位置に直径6mmのボールを5.0Nの荷重で押しつけ、回転中の荷重計測を行うことによって、動摩擦係数を求めた。
なお、ロール2には、種々の大きさのものが存在するため、前記寸法の試料を削り出すことが困難な場合は、ロール2と同一の焼結体を研削加工した前記測定試料を用いて、表面粗さ測定する。
また、前記ロール2を形成する窒化珪素質焼結体の少なくとも前記被加工物と接する面のボイド占有率を1%以下、且つ最大ボイド径を10μm以下とすることが好ましい。
これにより、回転加工用部材1において、被加工物と接触するロール2の表面2aにおけるボイドによる凹部の影響が少なく、被加工物の表面に傷、付着を発生させることなく加工できるため好ましい。ボイド占有率が1%を超える場合、ロール2の表面のボイドの凹部によって、被加工物における傷、付着などの問題が発生する。
また、最大ボイド径が10μmを超える場合、ボイドよって被加工物表面がえぐられ、ボイド内に埋没した金属分が被加工物に再付着する現象が発生しやすい。さらには、ボイド占有率が0.1%以下、且つ、最大ボイド径が5μm以下とすることにより、破壊源となるボイド径が減少するため、高負荷が作用する加工条件においても使用可能な回転加工用部材1とすることができるためより好ましい。
前記のボイド特性を有する窒化珪素質焼結体は、Si粉末、もしくはSi粉末と窒化珪素粉末の混合粉末と、Fe、Cr、MnおよびCuのうち少なくとも1種の第1の金属元素の化合物からなる平均粒径0.1〜20μmの粉末と、前記第1の金属元素よりも融点の高い第2の金属元素の化合物からなる平均粒径0.1〜30μmの粉末とを混合して混合粉末を作成する粉末混合する。次に、混合粉末と有機結合剤とからなる成形体を得る。ここで、混合粉末と有機結合剤とからなる成形体を作製するのは、成形体を高密度にし、かつ成形体内の密度のばらつきを小さくすることによって、焼成中に窒化体の焼結が焼結体全体に渡って均一に進行するので、窒化珪素質焼結体は、ボイド占有率および最大ボイド径を小さくすることができる。
次に、実質的に窒素ガス、アルゴンガス、またはこれらの混合ガスからなる雰囲気中で前記有機結合材を500〜900℃にて脱脂して脱脂体にした後、実質的に窒素ガスからなる雰囲気中で窒化体に変換する窒化を行い、焼成して窒化硅素質焼結体を得る。
このとき、Si粉末を含む成形体は、窒化工程において成形体の表面のSi粉末から窒化が始まり、時間の経過と共に成形体のより内部に存在するSi粉末の窒化が進行する。従って、成形体をこの状態から完全に窒化させ、焼結密度を上げ、良好なボイド特性を得るための均一な焼成を進行させるためには、低温での窒化(初期の窒化工程)の後、高温での窒化(最終の窒化工程)を行う必要がある。
前記窒化工程では、1000〜1200℃の温度で前記成形体中のSi粉末の10〜70質量%を窒化珪素に変換すると共に、前記脱脂体中の全窒化珪素のα化率を70%以上とする初期の窒化工程と、1100〜1500℃で前記脱脂体中のSi粉末の残部を窒化珪素に変換して窒化体を得ると共に、窒化体中の全窒化珪素のα化率を60%以上とする最終の窒化工程とによって、窒化による発熱反応を制御し、その後の均一な焼結を進行することが好ましい。前記第2の窒化工程の温度は第1の窒化工程の温度よりも高くすれば良い。
また、初期の窒化工程と最終の窒化工程は連続して実施した方が経済的であるため好ましい。初期、最終の窒化工程を経て作製された窒化体は、その表面および内部ともにα化率を60%以上とすることができるので、焼結密度が高く、良好なボイド特性を得ることができる。窒化体のα化率が60%未満であると、窒化珪素質焼結体の焼結密度が上がらず、窒化珪素質焼結体の機械的強度を向上させることが難しくなる。好ましくは、前記窒化工程終了後の窒化体のα化率を80%以上とすれば良い。
次に、ボイド占有率及び最大ボイド径は、以下のように測定する。
まず、得られた窒化珪素質焼結体表面を算術平均粗さ(Ra)0.1μm以下の鏡面状態に加工し、試料を製作する。次に、その試料をビデオカメラと接続した光学顕微鏡に設置する。このカメラは、画像のコントラストに応じたアナログ信号を作ることができ、材料表面を白色、ボイドを黒色として表すことができる。この画像をデジタル化した後、コンピュータによる画像解析によって、最大寸法の黒点の大きさを測定することにより最大ボイド径の測定ができ、さらに、ボイドを示す黒色部の総面積を材料表面の白色部の総面積で除することによってボイド占有率を測定することができる。
また、前記ロール2をなす窒化珪素質焼結体が、窒化珪素の結晶相と、以下の第1金属珪化物および第2金属珪化物を含む粒界相とを有し、該粒界相に前記第1金属珪化物と第2金属珪化物とが互いに接する隣接層を窒化珪素質焼結体中に1〜5質量%で含むことが好ましい。
第1金属珪化物:Fe、Cr、MnおよびCuから成る群から選択された少なくとも1つの第1の金属元素からなる金属珪化物
第2金属珪化物:W、Moのうち少なくとも1つの第2の金属元素からなる金属珪化物
これにより、機械的強度、高温強度が向上し、熱間圧延工程に使用される圧延ロールなど高温下で高負荷が作用する回転加工用部材において、破損などが発生しにくいため、好ましい。
本発明では、第1、第2金属珪化物が粒界層中で隣接相を形成することで、ロール2を成す窒化珪素質焼結体の機械的特性、耐熱衝撃性を向上させることができる。その理由は、次のように推定される。第1、第2金属珪化物が粒界層中で隣接相を形成していると、金属珪化物が単独でばらばらに存在する場合に比べて、金属珪化物に機械的応力や熱応力が集中するのが抑制される。これにより、窒化珪素質焼結体の機械的特性、耐熱衝撃性を向上させることができる。即ち、隣接相を形成している第1、第2金属珪化物は、粒界層に対して占める割合が高くなるため、機械的、熱的応力が加わった場合に応力を集中して受け易い。したがって、単独に存在している第1、第2金属珪化物に対しては、機械的応力や熱応力がかかりにくくなる。そして、第1、第2の金属珪化物は、窒化珪素に対してそれぞれヤング率が大きく、温度に対する熱膨張係数の変化率が小さいため、隣接相に応力が集中しても、隣接相は窒化珪素の結晶が機械的、熱的応力に抗して弾性変形することを促進するものと考えられる。従って、焼結体中に微細な亀裂が発生しても隣接相が窒化珪素の結晶の亀裂の進展を抑制したりでき、窒化珪素質焼結体の割れやクラックの発生を抑制できる。なお、従来のように、第1、第2金属珪化物が隣接相を形成せずに、個々に存在すると、機械的、熱的応力が単独の第1〜第2金属珪化物に集中する。その結果、第1、第2金属珪化物が破壊源となったり、亀裂の進展を促進させたりするので、窒化珪素質焼結体に割れやクラックが発生する。
なお、前記粒界層とは、窒化珪素の結晶粒子間に囲まれる領域を指しており、粒界層中には第1、第2金属珪化物が単独で存在するものもあれば、隣接相として存在しているものもある。すなわち、第1、第2金属珪化物が隣接相として粒界層に存在していることが必要であるが、必ずしも全ての粒界層において隣接相として存在していなくてもよい。
また、前記第1金属珪化物を第1の金属元素の合計換算で0.2〜10質量%、前記第2の金属珪化物を第2の金属元素の合計換算で0.1〜3質量%含有することが好ましい。
これは、第1の金属珪化物と第2の金属珪化物の金属元素の合計換算値が、それぞれの上限値を超えた場合、金属元素が不純物として窒化珪素質に存在する量が増加し、ロール2の機械的特性を低下させるため、ロール部の破損などの問題が発生しやすくなる。また、それぞれの合計換算値が下限値未満の場合、金属珪化物が形成されにくくなり、窒化珪素質焼結体中の金属珪化物の隣接層が存在しにくくなるため、ロール2をなす窒化珪素質焼結体の機械的特性、耐熱衝撃性が低下する。その結果、例えば、回転加工用部材を熱間圧延工程の圧延ロールに使用した場合やローラーハースキルンの多列式コンベヤーのローラーに使用した場合などの、高温下で使用した場合、破損しやすくなる。
また、ここで、第1、第2金属珪化物の含有量に差をつけることによって、第1金属珪化物が、第2金属珪化物を取り囲むように形成することができ、機械的特性を向上させることができる。例えば、第1の金属元素を計0.2〜10質量%、第2の金属元素を計0.1〜3質量%の範囲とし、第1の金属元素を第2の金属元素より多く含有させれば良い。この第1、第2の金属元素は、窒化珪素質焼結体の出発原料以外に、製造過程で不純物としても混入する場合がある。しかし、焼結体中に含まれる第1〜第2金属元素は、不純物であったとしても、そのほとんどが金属珪化物となって窒化珪素質焼結体中に存在する。従って、最終的にロール2をなす窒化珪素質焼結体中に含有される金属元素の量が上述の範囲であれば良い。
さらに、前記第1金属珪化物および前記第2金属珪化物の平均粒径が30μm以下であることが好ましい。
窒化珪素の結晶としては、主に針状に形成されたものであり、β型窒化珪素結晶、又はβ型窒化珪素と同じ結晶構造を有するβ’−サイアロン結晶がある。平均粒径は、針状に形成された結晶の長径の平均粒径で示しており、これにより、ロール2をなす窒化珪素質焼結体の機械的強度等の機械的特性や、耐熱衝撃性等の熱的特性を向上させることができる。なお、平均粒径の測定には次のような種々の方法がある。即ち、窒化珪素質焼結体の断面を鏡面研磨し、この鏡面をSEM(走査型電子顕微鏡)写真に撮り、SEM写真に写っている窒化珪素の結晶の長径を測定する方法、X線マイクロアナライザーを併用して窒化珪素の結晶を特定し、その結晶の長径を測定する方法、又は鏡面加工した窒化珪素質焼結体の面にある粒界層を熱処理によるエッチングや化学的エッチング処理により表面から除去後に長径を測定する方法がある。いずれの場合も、測定された複数の長径データを平均化して算出される。
特に、第1の金属元素がFe、第2の金属元素がWであることが好ましい。
この理由は、第1の金属元素からなる第1金属珪化物のうちのFe珪化物と、第2の金属元素からなる第2金属珪化物のうちのW珪化物は結晶構造が近似しているので、互いに隣接相を著しく形成し易いためである。従って、粒界層に対する隣接相の含有割合が増加し、その結果、機械的特性と熱的特性、特に機械的強度と耐熱衝撃性がさらに向上する。また、第1金属珪化物のFe珪化物としては、FeSi、FeSi2のうちの少なくとも1種が好ましく、より好ましくは、FeSi2とするのがよい。また、第2金属珪化物のW珪化物は、WSi2を含有することが好ましい。
最も好ましい組み合わせは、第1金属珪化物としてFeSi2と第2金属珪化物としてWSi2がよい。この理由としては、WSi2とFeSi2は共に環境温度が変化したとしても特に安定する相であり、また、両者の結晶構造が特に近似しているためである。そのため、W珪化物の中でも特に隣接相を形成し易く、かつ、FeSi2を含む隣接相を窒化珪素質焼結体中に均一に分散させることができる。従って、第1金属珪化物としてFeSi2を有し、第2金属珪化物としてWSi2を有すると、窒化珪素質焼結体の機械的特性と熱的特性をさらに向上できる。
さらに、隣接相の平均粒径は30μm以下が好ましく、特に好ましくは1〜5μmである。平均粒径が30μmより大きいと、機械的、熱的応力を隣接相が十分緩和することができないため、機械的特性や耐熱衝撃性を著しく向上させることができないからである。この場合、隣接相の平均粒径は、焼結体を走査型電子顕微鏡(SEM)等で拡大して観察し、複数の隣接相の粒径を測定し平均した値である。
次に、本発明の回転加工用部材1の製造方法について説明する。
第一工程として、窒化珪素質焼結体で構成されるロール2を製作した後、第二工程として、前記ロール2を芯体9に装着した後、加工する方法をとる。
第一工程のロール2の製造方法は、Si粉末、もしくはSi粉末と窒化珪素粉末の混合粉末と、Fe、Cr、MnおよびCuのうち少なくとも1種の第1の金属元素の化合物からなる平均粒径0.1〜20μmの粉末と、前記第1の金属元素よりも融点の高い第2の金属元素の化合物からなる平均粒径0.1〜30μmの粉末とを混合して混合粉末を作製する粉末混合する。
ここで、ロール2をなす窒化珪素質焼結体のボイド占有率および最大ボイド径を小さくするため、混合粉末と有機結合剤とからなる造粒粉体を用いて、成形した成形体を製作する。これによって、ロール2をなす窒化珪素質焼結体のボイド占有率および最大ボイド径を小さくするため、混合粉末と有機結合剤とからなる成形体を作製する。ここで、用いられる造粒体は、前記混合粉末から得られたスラリーに、有機結合材として、ポリビニルアルコール(PVA)を添加混合し、スプレードライヤーで造粒した。さらに、成形においては、造粒体を静水圧加圧成形法により成形圧80MPaによって成形することによって成形体を得た。このようにして得られた成形体は、高密度にしかつ成形体内の密度のばらつきを小さいため、焼成中に窒化体の焼結が焼結体全体に渡って均一に進行させることができるため、ロール2をなす窒化珪素質焼結体は、ボイド占有率および最大ボイド径を小さくすることができる。
このようにして得られた成形体を、所望の寸法にグリーン加工した後、焼成工程を行う。
次に、実質的に窒素ガス、アルゴンガス、またはこれらの混合ガスからなる雰囲気中で前記有機結合材を500〜900℃にて脱脂して脱脂体した後、実質的に窒素ガスからなる雰囲気中で窒化体に変換する窒化し、焼成してロール2をなす窒化硅素質焼結体を得る。
このとき、Si粉末を含む成形体は、窒化工程において成形体の表面のSi粉末から窒化が始まり、時間の経過と共に成形体のより内部に存在するSi粉末の窒化が進行する。従って、成形体をこの状態から完全に窒化させ、焼結密度を上げ、良好なボイド特性を得るための均一な焼成を進行させるためには、低温での窒化(初期の窒化工程)の後、高温での窒化(最終の窒化工程)を行う必要がある。
前記窒化工程では、1000〜1200℃の温度で前記成形体中のSi粉末の10〜70質量%を窒化珪素に変換すると共に、前記脱脂体中の全窒化珪素のα化率を70%以上とする初期の窒化工程と、1100〜1500℃で前記脱脂体中のSi粉末の残部を窒化珪素に変換して窒化体を得ると共に、窒化体中の全窒化珪素のα化率を60%以上とする最終の窒化工程とによって、窒化による発熱反応を制御し、その後の均一な焼結を進行することが好ましい。前記第2の窒化工程の温度は第1の窒化工程の温度よりも高くする。
また、初期の窒化工程と最終の窒化工程は連続して実施した方が経済的であるため好ましい。初期、最終の窒化工程を経て作製された窒化体は、その表面および内部ともにα化率を60%以上とすることができるので、焼結密度が高く、良好なボイド特性を得ることができる。窒化体のα化率が60%未満であると、窒化珪素質焼結体の焼結密度が上がらず、窒化珪素質焼結体の機械的強度を向上させることが難しくなる。好ましくは、前記窒化工程終了後の窒化体のα化率を80%以上とする。
さらに、焼成工程は窒素分圧が50〜200kPaという低圧で行われるため、高圧ガス中での焼成やHIP焼結のような高い製造コストで製造された窒化珪素質焼結体よりも、極めて安価な窒化珪素質焼結体を作製することができる。また、上述の窒化体の焼成は、窒化の後に同じ炉内で連続して行うことが好ましい。
加えて、窒化珪素質焼結体を致密化させることによって機械的特性を向上させるためには、焼成工程における最高温度が1600℃以上であることが好ましい。1600℃以上で焼成することにより、相対密度が97%以上の緻密な窒化珪素質焼結体を作製することができ、機械的特性も向上させることができる。また、窒化珪素の結晶の異常粒成長を抑制することにより機械的強度の低下を抑制するためには、焼成の最高温度の上限を1850℃とすることが好ましい。
さらに、この製造方法により、ロール2をなす窒化硅素質焼結体の粒界層中に隣接相を含有させるプロセスは次のようになる。
まず、上述のような湿式混合によって、第1、第2の金属元素の化合物が偏在することなく予備混合粉末中に均一分散させ、乾燥によって第1、第2の金属元素の化合物からなる粒子を互いに固着させた予備粉末を作成する。その結果、予備混合粉末は、第1、第2の金属元素の化合物がそれぞれ均一分散すると共に、互いの粒子が固着したものとなる。なお、この均一分散と固着を達成するために、湿式混合に用いる溶媒としては水、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノールのうち少なくとも1つが好適である。溶媒中に水を含有させると、第1、第2の金属元素の化合物の粒子を、乾燥過程で互いに強固に固着させることができるのでさらに好ましい。
次に、Si粉末、もしくはSi粉末と窒化珪素粉末の混合粉末に、上述の予備混合粉末を混合することにより、第1、第2の金属元素の化合物の粒子を互いに固着させ、均一分散した予備混合粉末が混合粉末中に分散した原料粉末を作製させることができる。
そして、窒化工程中に、第1の金属元素の化合物、第2の金属元素の化合物、第1および第2の金属元素の化合物がそれぞれSi成分と反応し、それぞれ第1金属珪化物前駆体、第2金属珪化物前駆体となり、さらに、それぞれの前駆体のうち少なくとも2つが互いに接した隣接相前駆体を形成する。ここで、第1、第2金属珪化物前駆体、隣接相前駆体とは、非晶質あるいは一部結晶化していない物質を示している。窒化工程で、隣接相前駆体が形成されるのは、原料粉末中に、第1の金属元素の化合物からなる粒子と、第2の金属元素の化合物からなる粒子が互いに固着しているため、互いに固着した粒子が隣接しながら窒化されるからである。原料粉末中にSi粉末を含有させるのは、窒化工程において、第1、第2の金属元素とSiとの反応を促進して隣接相前駆体を形成させるためである。原料粉末にSi粉末を含まないと、第1、第2の金属元素とSiとの反応を促進されないので隣接相前駆体を含む窒化体を得ることができない。
このような窒化体に含まれる隣接相前駆体は、焼成工程で結晶化し、隣接相となる。なお、焼結体中の第1、第2の金属元素の含有量が同じ場合でも、特に窒化工程の温度、保持時間を制御することにより隣接相の含有量を制御することができる。
ここで、上述のようにして得られたロール2をなす窒化硅素質焼結体において、ロール2の表面の算術平均粗さ(Ra)が0.1μm以下、且つ前記被加工物と同一金属との動摩擦係数が0.7〜1.3の範囲とする第二工程は、以下のように行う。
まず、円筒研削盤などによりロール2の内径を所望の寸法に加工した後、ロール2に芯体9を接着する。その後、円筒研削盤を用いてチャッキングし、ロール2の表面2aの外径加工を行う。この際、貫通孔3を基準としたロール2の表面2aの同軸度を高精度に加工するため、芯体9の貫通孔3に両端面にセンタ穴を設けたテーパー状の治具を挿通し固定した後、両センタ加工によって表面2aの外径加工を行うことが好ましい。
ロール2の表面2aには非常に大きな凹凸が存在しており、そのままの状態では被加工物に傷などの欠陥を発生させる。従って、表面2aを#400〜#600(砥粒粒度29〜43μm)のダイヤモンド砥石で粗仕上げを行った後、さらに#800〜#1200(砥粒粒度9.5〜14μm)のダイヤモンド砥石で研削加工することによって、中仕上げを行う。さらに、#1500〜#3000(砥粒粒度6.7〜8μm)のダイヤモンド砥石を用いて最終仕上げの研削加工を行う。このように、粗仕上げ、中仕上げ、最終仕上げという3段階の研削加工を行うことによって、表面2aの凹凸を徐々に平滑にすることができ、算術平均粗さ(Ra)が0.1μm以下の良好な表面を得ることができる。その際、加工能率と加工後の算術平均粗さ(Ra)の関係から、粗仕上げでは#450、中仕上げでは#1000、最終仕上げでは#1500のダイヤモンド砥石を用いることが好ましい。ダイヤモンド砥粒を固定している結合材は、レジンボンド製のダイヤモンド砥石を用いると、さらに好ましい。これは、レジンボンド製ダイヤモンド砥石は、他の結合材と比較して、砥粒保持力は小さいが、ダイヤモンド砥粒がロール表面に接触した際、適宜脱落していくことによって、ロール表面に深い加工傷を発生させることなく、加工可能であるためである。
また、芯体9は、ステンレス鋼、S45C、SMC等の合金鋼、SK、SKH、SKD等の工具鋼を用いることができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態だけに限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば、任意の形状、構造を有した回転加工用部材にも適用できる。
本発明の実施例について説明する。
図1に示す回転加工用部材を製作し、伸線加工用装置に使用した。
第一に、回転加工用部材のロールに用いた窒化珪素質焼結体について説明する。
Fe2O3粉末とWO3粉末を、水を用いて湿式混合し、得られたスラリーを100℃で乾燥予備混合粉末と窒化珪素粉末とSi粉末からなる原料粉末と焼結助剤粉末を混合した。次いで、混合した粉末と、エタノールと、窒化珪素質粉砕用メディアとを、バレルミルに投入して混合した。その後、得られたスラリーに、有機結合材としてポリビニルアルコール(PVA)を添加混合し、さらにスプレードライヤーで造粒後した。
次に、得られた造粒体を用いて、成形圧力80MPaにて成形体を作製後、切削作業にて、所定の形状に仕上げた後、成形体中に含まれる有機結合材(PVA)を600℃で3時間保持することにより脱脂後、焼成を行い、β型窒化珪素質焼結体を得た。
また、比較のため、従来の窒化珪素質焼結体、炭化珪素質焼結体、アルミナ質焼結体、ジルコニア質焼結体を準備した。
本実施例における従来の窒化珪素質焼結体は、以下のようにして得た。
まず、原料粉として、窒化珪素粉末、周期律表3a元素の酸化物或いは窒化物の粉末、2a族及び4a族元素の酸化物或いは窒化物の粉末、炭化物粉末を所定量添加混合し、原料混合体を調製する。
次いで、得られた原料混合体を所定の成形圧で成形体を製作後、この成形体を窒素ガス或いはアルゴンガス等の非酸化雰囲気中で、1400〜1700℃の間の加熱時間が1時間以上且つ、1700〜1900℃までの加熱時間が3時間以上の2段階焼結の焼結を行うことにより、従来の窒化珪素質焼結体を得た。
前記のような方法により得た、各セラミックス材料について、第一に、摩擦係数の測定を行った。得られた各セラミックス材料を所定の厚みに加工した後、摩擦係数をボールオンディスク法(JIS R1613)に準じた方法で測定した。実際には、ボールと摺動する面を鏡面状態とした直径40mm×厚み9mmのディスクを製作し、周速0.17m/s、摺動距離100mで測定を行った。また、使用したボールは、直径6mmのタフピッチ銅製ボールであり、荷重5Nでディスクに押し付け、摩擦係数を得た。
第二に、前記の各セラミックス材料を円筒状のリング状に切り出し、円筒研削盤などにより窒化珪素質焼結体からなるロール2の内径を所望の寸法に加工した後、前記ロール2に芯体9を接着する。その後、芯体9の貫通孔3に、両端面にセンタ穴を設けたテーパー状の治具を挿通し固定した後、円筒研削盤による両センタ加工にて、ロール表面2aの加工を行った。なお、前記外径加工においては、#450のダイヤモンド砥石で粗仕上げを行った後、#800番のダイヤモンド砥石で中仕上げを行い、#1500のダイヤモンド砥石で最終仕上げを行った。なお、この時のダイヤモンド砥粒を固定している結合材は、いずれもレジンボンドの砥石を使用した。同時に、貫通孔3に対する被加工物とロール表面2aの同軸度を所定の数値にして、外径60mm、厚み18mmの窒化珪素質焼結体の回転加工用部材1を得た。
さらに、比較のため、前記回転加工用部材のロールを、従来の窒化珪素質焼結体、炭化珪素質焼結体、アルミナ質焼結体、ジルコニア質焼結体で製作した。
この回転加工用部材にて、φ0.03mmの銅製極細線の伸線加工を実施した。
表1にボールオンディスク試験による動摩擦係数、回転加工用部材のロール表面の表面粗さ、伸線加工装置での加工結果を表1に示す。
表1に示すように、窒化珪素質焼結体からなり、表面粗さRaが0.1μmを超える、または動摩擦係数が0.7未満、1.3を超える試料(No.1〜3)は、線材の表面に付着の発生は確認されなかったが、動摩擦係数低いため過大なスリップが発生したり、回転ダイスの引抜き力が低下し伸線加工不能となった。
また、窒化硅素質焼結体以外のセラミックスからなる試料(No.10〜13)は、試料No.10のように、過大なスリップは確認されなかったものの、最大ボイド径が大きいため、線材にボイドに起因する付着が確認されたものや、試料No.11、12では、摩擦係数が高いため、過大なスリップは確認されなかったが、表面粗さが悪く、最大ボイド径、ボイド率が高いため、線材への傷、付着が確認された。さらに、試料No.13では、表面粗さが良好で、線材への傷、付着は確認されなかったが、動摩擦係数が低いため、過大なスリップが発生し、回転ダイスの引抜き力が低下し、伸線加工不能の状態となった。
これに対し、窒化珪素質焼結体からなり、表面粗さRaが0.1μm以下、また動摩擦係数が0.7〜1.3の試料(No.4〜9)は、ロール表面と線材間で、過大なスリップがなく、スリップ制御が可能であった。さらに、ロール表面の表面粗さが良好であるため、線材の傷、付着などの欠陥も確認されなかった。