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JP4727059B2 - BabesiagibsoniP50抗原をコードする核酸分子とその発現産物の利用 - Google Patents
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JP4727059B2 - BabesiagibsoniP50抗原をコードする核酸分子とその発現産物の利用 - Google Patents

BabesiagibsoniP50抗原をコードする核酸分子とその発現産物の利用 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、バベシアギブソニ(Babesia gibsoni、以下B. gibsoniと省略する)原虫由来の新規蛋白質及び該蛋白質をコードする遺伝子に関する。
【0002】
【従来の技術】
B.gibsoniはダニにより媒介される赤血球内寄生原虫であり、本原虫によるイヌの感染症(B.gibsoni感染症)は、アジア、アフリカ、ヨーロッパ及び北アメリカなど世界に広く認められている。日本においても九州から北海道まで全国的にほとんどの地域で発生例が報告されており、特に西日本においてその被害が深刻である。
【0003】
B.gibsoni に感染したイヌは、食欲不振、嗜眠傾向、元気消失、発熱、貧血、嘔吐、血尿、血色素尿、脾腫、黄疸、ヘモグロビン血症、血小板減少症、全身性リンパ節腫大などの症状を示す。発熱は溶血時や単球食細胞と原虫寄生赤血球との応答時に放出される発熱物質によって惹起される。血小板の減少は骨髄での産生抑制、肝臓や脾臓での血小板隔離、血小板の消費増大及び免疫介在性の血小板破壊などに起因すると考えられている。また、B.gibsoniに感染したイヌは手術や免疫抑制療法実施中に進行性の貧血を発症して原疾患の回復や円滑な治療を妨げたりもする。
【0004】
B.gibsoni感染症の治療は、主としてジミナゼン製剤により行われているが、本製剤は小脳出血に起因する神経症状や肝障害、腎障害などを惹起するなど副作用があるため、その使用が制限されている。
【0005】
本原虫感染症の診断は、現在主に血液塗沫標本による原虫の確認により行われているが、この方法は慢性期の感染犬において検出感度が低いという問題を有している。また蛍光抗体法による血清学的診断法も用いられているが、他の赤血球寄生原虫、バベシアキャニス( Babesia canis )との交差反応が認められ、その特異性に問題がある。
【0006】
B.gibsoni感染症の有効なワクチンは未だ開発されていない。その大きな要因として、B.gibsoniの大量培養が困難であること及び感染防御に関わる有効抗原の検索が遅れていることが挙げられる。このような背景から、B.gibsoniの主要抗原の検索、組換えタンパク質を抗原とした感度及び特異性の高い診断法の確立ならびに有効な組換えワクチンの開発が望まれている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、B.gibsoni感染症の診断及び感染予防用ワクチンの製造に使用し得るB.gibsoniの主要抗原及び該抗原をコードする遺伝子を提供する。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、B.gibsoniのcDNA ライブラリーを構築し、B.gibsoni感染犬血清を用いたイムノスクリーニングにより、主要抗原をコードする遺伝子(以下P50遺伝子と称する)を同定、クローニングした。さらに、P50遺伝子にコードされるタンパク質(以下P50タンパク質と称する)を発現させた結果、その発現産物が抗原性、免疫原性を有することを確認した。従って、本発明は、B.gibsoni感染症の診断及び感染予防用ワクチンの製造に使用し得るB.gibsoniの主要抗原及び該抗原をコードする遺伝子を提供する。
【0009】
P50 遺伝子
本発明は、B.gibsoniの主要抗原タンパク質をコードする遺伝子を提供する。本遺伝子は上記の様にcDNAライブラリーから単離同定することもできるが、本明細書に開示された配列を基に、一般的なハイブリダイゼーションなどの遺伝子工学的手法を用いたクローニングやホスホアミダイト法などの化学合成的手法により調製されるDNAであってもよい。その形態としてはcDNA、ゲノムDNAのほか、化学合成DNAなどが含まれるが、特に制限はない。
【0010】
本発明のDNAは一本鎖であっても、それに相補的な配列を有するDNAやRNAと結合して二重鎖を形成していてもよい。また、当該DNAは、ホースラディッシュペルオキシダーゼ等の酵素や放射性同位体、蛍光物質、化学発光物質等で標識されていてもよい。
【0011】
また、P50遺伝子の塩基配列が提供されれば、これより導かれるRNAの配列や、相補的なDNAおよびRNAの配列などは一義的に決定されるので、本発明は、本発明のDNAに対応するRNAあるいは本発明のDNAと相補的な配列を有するDNAおよびRNAもまた提供するものと理解すべきである。
【0012】
さらに、本発明のDNAには、配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件でハイブリダイズするDNAをも包含するものである。配列番号1に記載の塩基配列からなるDNAに対しては、これとストリンジェントな条件でハイブリダイズし、かつ該DNAにコードされるタンパク質が抗B.gibsoni抗体と反応性を有する範囲において、塩基配列のバリエーションが許容される。例えば、いわゆるコドン縮重による同一アミノ酸残基をコードする複数のコドンの存在や、種々の人為的処理例えば部位特異的変異導入、変異剤処理によるランダム変異、制限酵素切断によるDNA断片の変異・欠失・連結等により、部分的にDNA配列が変化したものであっても、これらDNA変異体が配列番号1に記載のDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ抗B.gibsoni抗体と反応性を有するタンパク質をコードするDNAであれば、配列番号1に示したDNA配列との相違に関わらず、本発明の範囲内のものである。
【0013】
上記の変異の程度は、配列番号1に記載のDNA配列と70%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上の相同性を有するものであれば許容範囲内である。また、ハイブリダイズする程度としては、通常の条件化、例えばDIG DNA Labeling kit (ベーリンガー・マンハイム社製Cat No.1175033)でプローブをラベルした場合に、32℃のDIG Easy Hyb溶液(ベーリンガー・マンハイム社製Cat No.1603558)中でハイブリダイズさせ、50℃の0.5×SSC溶液(0.1%(w/v)SDSを含む)中でメンブレンを洗浄する条件(1×SSCは0.15 M NaCl、0.015 Mクエン酸ナトリウムである)でのサザンハイブリダイゼーションで、配列番号1に記載の核酸にハブリダイズする程度であればよい。
【0014】
本発明のDNAは、形質転換細胞の調製、さらには該形質転換細胞を用いた組換えタンパク質の産生方法において有用である。
【0015】
本発明における形質転換細胞は当業者に公知の技術を適用して調製することが可能であり、例えば、市販されあるいは当業者が一般に入手容易な様々なベクターを利用して、適当な宿主細胞へ本願発明のDNAを組み入れることが可能である。
【0016】
また、本発明のDNAを組込んだ組換えウイルスを含むワクチン製剤を調製することも可能である。このような組換えウイルスも同業者に公知の技術を適用して調整することが可能である。
【0017】
P50 タンパク質
本発明は、P50遺伝子にコードされるB.gibsoniの主要抗原であるP50タンパク質を提供する。P50タンパク質の推定アミノ酸配列は配列番号2に示すとおりである。このタンパク質は約50 kDaの分子量を有する新規なタンパク質であり、B.gibsoni感染犬血清と特異的に反応する。更に、推定アミノ酸配列は既に報告されている原虫及び他の生物種のいずれの遺伝子とも有意な相同性が認められない。したがって、P50タンパク質を用いることによって、他の赤血球内寄生原虫と交差反応を示さない血清学的診断を行うことが可能である。また、P50タンパク質を抗原として使用することにより抗B.gibsoni抗体を作製し使用することが可能である。更に、P50タンパク質を免疫原とするワクチンの製造に使用することも可能である。
【0018】
蛋白質の構成要素となるアミノ酸残基側鎖は、疎水性、電荷、大きさなどにおいてそれぞれ異なるが、実質的に蛋白質全体の3次元構造(立体構造とも言う)に影響を与えないという意味で保存性の高い幾つかの関係が知られている。例えば、アミノ酸残基の置換については、グリシン(Gly)とプロリン(Pro)、Glyとアラニン(Ala)またはバリン(Val)、ロイシン(Leu)とイソロイシン(Ile)、グルタミン酸(Glu)とグルタミン(Gln)、アスパラギン酸(Asp)とアスパラギン(Asn)、システイン(Cys)とスレオニン(Thr)、Thrとセリン(Ser)またはAla、リジン(Lys)とアルギニン(Arg)、等が挙げられる。また、上述の意味の保存性を損なう場合でも、なおその蛋白質の本質的な機能を失わない変異も当業者に多く知られている。さらに、異なる生物種間に保存される同種の蛋白質が、幾つかのアミノ酸が集中あるいは分散して欠失あるいは挿入されていてもなお本質的な機能を保持している例も多く認められている。
【0019】
従って、本発明のタンパク質には、配列番号2のアミノ酸配列を有するタンパク質の類似体であって、抗B.gibsoni抗体と反応性を保持しているタンパク質が包含される。即ち、配列番号2のアミノ酸配列においてアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有するタンパク質であっても、抗B.gibsoni抗体と反応性を保持している限りにおいて、本願発明のタンパク質に包含される。ここで、「抗B.gibsoni抗体と反応性を保持している」とは、モノクローナル若しくはポリクローナル抗B.gibsoni抗体と特異的に抗原抗体反応を起こし得ることを意味する。
【0020】
このようなアミノ酸の変化は、異なる生物種間に認められる配列の多様性あるいはいわゆる遺伝子多型などの様に自然界において認められる他、当業者に公知の方法、例えばNTGなどの変異誘発剤を用いた突然変異誘発法や種々の組換遺伝子手法を用いた部位特異的変異法を利用して、人為的に発生させることができる。アミノ酸の変異部位および個数は、抗B.gibsoni抗体と反応性を保持している限り特に制限はないが、変異個数は通常数十アミノ酸以内、好ましくは10アミノ酸以内である。
【0021】
抗体
本発明は、P50タンパク質に結合する抗体を提供する。本発明の抗体は、P50タンパク質全体あるいはその部分ペプチドを特異的に認識する抗体であり、モノクローナル抗体およびポリクローナル抗体が含まれる。また、免疫グロブリンの構造、物理化学的性質や免疫学的性質として分類される5つのクラス(IgG、IgA、IgM、IgD、IgE)、あるいはH鎖のタイプによるサブクラスのいずれに属するものであってもよい。さらに、免疫グロブリンを例えばペプシンで分解したときのF(ab')2、パパインで分解したときのFabなどのフラグメントであっても、またキメラ抗体であってもよい。これらの抗体は、後述するDNAライブラリーのイムノスクリーニングにおいてP50遺伝子クローンを同定するために使用し得る。また、P50タンパク質を精製するために使用する抗体カラムの作製、精製時の各分画中のP50タンパク質を検出するために使用することができる。
【0022】
【本発明の実施の形態】
核酸
本発明のDNAをDNAライブラリーから得る例としては、適当なゲノムライブラリーやcDNAライブラリーを、ハイブリダイゼーションによるスクリーニング法や、抗体を用いたイムノスクリーニング法等でスクリーニングし、目的のDNAを有するクローンを増殖させ、そこから制限酵素等を用いて切り出す方法がある。ハイブリダイゼーション法によるスクリーニングは、配列番号1に記載の塩基配列もしくはその一部を有するDNAを32P等でラベルしてプローブとし、cDNAライブラリーに対して、公知の方法(例えば、Maniatis T.等, Molecular Cloning, a Laboratory Manual, Cold Spring harbor Laboratory, New York, 1982年)で行うことができる。イムノスクリーニング法で用いる抗体は、後述する本発明の抗体を使用することができる。本発明の新規DNAはまた、ゲノムDNAライブラリーもしくはcDNAライブラリーを鋳型とするPCR(Polymerase Chain Reaction)によっても得る事ができる。PCRは、配列番号1に記載の塩基配列をもとに、センスプライマー、アンチセンスプライマーを作製し、DNAライブラリーに対し、公知の方法(例えばMichael A.I. 等,PCR Protocols, a Guide to Methods and Applications, Academic Press, 1990年参照)等を行って本発明のDNAを得ることもできる。上記各種方法で使用するDNAライブラリーは、B.gibsoni感染細胞を用い公知の方法(J.Sambrook等、Molecular Cloning, a Laboratory Manual 2nd ed., Cold Spring harbor Laboratory, New York, 1989年参照)に従って、cDNAライブラリーを作製し、利用することができる。
【0023】
本発明のDNAを有する組換えベクターは、環状、直鎖状等いかなる形態のものであってもよい。かかる組換えベクターは、本発明のDNAに加え、必要ならば他の塩基配列を有していてもよい。他の塩基配列とは、エンハンサーの配列、プロモーターの配列、リボソーム結合配列、コピー数の増幅を目的として使用される塩基配列、シグナルペプチドをコードする塩基配列、他のポリペプチドをコードする塩基配列、ポリA付加配列、スプライシング配列、複製開始点、選択マーカーとなる遺伝子の塩基配列等のことである。
【0024】
遺伝子組換えに際しては、適当な合成DNAアダプターを用いて翻訳開始コドンや終止コドンを本発明のDNAに付加したり、あるいは塩基配列内に適当な制限酵素切断配列を新たに発生させるあるいは消失させることも可能である。これらは当業者が通常行う作業の範囲内であり、本発明のDNAを基に任意かつ容易に加工することができる。
【0025】
また、本発明のDNAを保持するベクターは、使用する宿主に応じた適当なベクターを選択して使用すればよく、プラスミドの他にバクテリオファージ、バキュロウイルス、レトロウイルス、ワクシニアウイルス等の種々のウイルスを用いることも可能であり、特に制限はない。
【0026】
本発明の遺伝子の発現は、該遺伝子固有のプロモーター配列の制御下に発現させることができる。あるいは、本発明の遺伝子の上流に別の適当な発現プロモーターを該遺伝子固有のプロモーター配列に直接あるいは置き換えて使用することもできる。この場合に使用するプロモーターは、宿主及び発現の目的に応じて適宜選択すればよく、例えば宿主が大腸菌である場合にはT7プロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、λPLプロモーター等が、宿主が酵母である場合にはPHO5プロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター等が、宿主が動物細胞である場合にはSV40由来プロモーター、レトロウイルスプロモーター等を例示できるが、これらには限定されない。
【0027】
DNAをベクターに導入する方法は公知である(J.Sambrook等、Molecular Cloning, a Laboratory Manual 2nd ed., Cold Spring harbor Laboratory, New York, 1989年参照)。即ち、DNAとベクターをそれぞれ適当な制限酵素で消化し、得られたそれぞれの断片をDNAリガーゼを用いてライゲーションさせればよい。
【0028】
本発明の核酸分子を組込んだ組換えウイルスは、ワクチン形態で動物に投与することが可能であり、かかる組換えウイルスは動物体内において発現され、B.gibsoniに対する免疫応答を惹起し得る。
【0029】
好適なウイルスベクターには、アルファウイルス、ポックスウイルス、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、およびレトロウイルスに基づくものがあるが、これらに限定されない。
【0030】
タンパク質
本発明のタンパク質は、原核生物あるいは真核生物から選択される適当な宿主細胞を用いた組換え方法によって調製することができる。
【0031】
前項の組換えベクターを用いて形質転換させる宿主細胞には特に制限はなく、E.Coli、B.subtilsあるいはS.cerevisiaeに代表される遺伝子工学手法において利用可能な下等細胞、昆虫細胞、COS7細胞、CHO細胞、Hela細胞に代表される動物細胞など多くの細胞が、本発明に対しても利用可能である。
【0032】
組換えベクターを宿主細胞に導入する方法としては、エレクトロポレーション法、プロトプラスト法、アルカリ金属法、リン酸カルシウム沈殿法、DEAEデキストラン法、マイクロインジェクション法、ウイルス粒子を用いる方法等の公知方法(実験医学臨時増刊、遺伝子工学ハンドブック1991年3月20日発行、羊土社参照)があるが、いずれの方法を用いてもよい。
【0033】
当該タンパク質を遺伝子工学的に生産するには、上述の形質転換体を培養して培養混合物を回収し、当該タンパク質を精製する。形質転換体の培養は、一般的な方法で行うことができる。形質転換体の培養については各種の成書(たとえば、「微生物実験法」社団法人日本生化学会編、株式会社東京化学同人、1992年を参照)があるので、それらを参考にして行うことができる。
【0034】
培養混合物から本発明のタンパク質を精製する方法としては、タンパク質の精製に通常使用されている方法の中から適切な方法を適宜選択して行うことができる。即ち、塩析法、限外濾過法、等電点沈殿法、ゲル濾過法、電気泳動法、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィーや抗体クロマトグラフィー等の各種アフィニティークロマトグラフィー、クロマトフォーカシング法、吸着クロマトグラフィーおよび逆相クロマトグラフィー等、通常使用され得る方法の中から適切な方法を適宜選択し、必要に応じてHPLCシステム等を使用して適当な順序で精製を行えばよい。
【0035】
また、本発明のタンパク質を他のタンパク質やタグ(例えば、グルタチオンSトランスフェラーゼ、プロテインA、ヘキサヒスチジンタグ、FLAGタグその他)との融合タンパク質として発現させることも可能である。発現させた融合型は、適当なプロテアーゼ(例えばトロンビン等)を用いて切り出すことが可能であり、ときとしてタンパク質の調製をより有利に行うことが可能となる。本発明のタンパク質の精製は当業者に一般的な手法を適宜組み合わせて行えばよく、特に融合タンパク質の形態で発現させたときは、その形態に特徴的な精製法を採用することが好ましい。
【0036】
また、組換えDNA分子を利用して無細胞系の合成方法(J.Sambrook等、Molecular Cloning, a Laboratory Manual 2nd ed., Cold Spring harbor Laboratory, New York, 1989年参照)で得る方法も、遺伝子工学的に生産する方法の1つである。
【0037】
この様に本発明のタンパク質は、その単独の形態でも別種のタンパク質との融合タンパク質の形態でも調製することができるが、これらのみに制限されるものではなく、本願発明のタンパク質を更に種々の形態へと変換させることも可能である。例えば、タンパク質に対する種々の化学修飾、ポリエチレングリコール等の高分子との結合、不溶性担体への結合など、当業者に知られている多種の手法による加工が考えられる。また、用いる宿主によっては糖鎖の付加の有無あるいはその程度にも違いが認められる。かかる場合にあっても、P50タンパク質と同等の免疫原性を有するタンパク質である限りにおいて、なお、本発明の思想下にあるというべきである。
【0038】
抗体
本発明の抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体いずれも公知方法を参考にして得ることができる(例えば、免疫実験操作法、日本免疫学会編、日本免疫学会発行参照)。以下に簡単に説明する。
【0039】
当該新規抗体を得るには、まず動物に、免疫原として本発明のタンパク質を必要に応じてフロイントの完全アジュバント(FCA)や不完全アジュバント(FIA)等の適当なアジュバントとともに投与し、必要があれば2〜4週間の間隔で追加免疫する。追加免疫後、採血を行い抗血清を得る。抗原として用いる本発明のタンパク質は、抗体の作製に使用し得る精製度のものであればいかなる方法で得られたものであってもよい。本発明のタンパク質の部分ポリペプチドも免疫抗原として好適に使用し得る。免疫抗原として使用するポリペプチドが、低分子のポリペプチド、すなわち約10〜20アミノ酸からなるポリペプチドである場合には、それをキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)等のキャリアと結合させて抗原として使用すればよい。免疫する動物は目的の抗体を産生し得るいずれの動物種を選択して使用することも可能である。
【0040】
ポリクローナル抗体は、得られた抗血清を精製することによって得ることができる。精製は、塩析、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等の公知方法を適宜組み合わせて行えばよい。
【0041】
モノクローナル抗体を得るには以下のように行う。すなわち、免疫した動物から脾細胞もしくはリンパ球等の抗体産生細胞を採取し、ポリエチレングリコール、センダイウイルス、電気パルス等を用いる公知方法によって、ミエローマ細胞株等と融合し、ハイブリドーマを作製する。その後、本発明のタンパク質に結合する抗体を産生しているクローンを選択して培養し、その選択されたクローンの培養上清を精製することによって得ることができる。精製は塩析、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等の公知方法を適宜組み合わせて行う。
【0042】
また、遺伝子工学的な方法を用いても当該新規抗体から得られる。例えば、本発明タンパク質またはその部分ポリペプチドで免疫した動物の脾細胞、リンパ球あるいは、本発明タンパク質またはその部分ポリペプチドに対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマからmRNAを採取し、これをもとにcDNAライブラリーを作製する。抗原と反応する抗体を産生しているクローンをスクリーニングし、得られたクローンを培養し、培養混合物から目的とする抗体を公知方法を組み合わせて精製することができる。
【0043】
ワクチン
免疫学的に有効な量のP50タンパク質または該タンパク質を生体内で発現するように該タンパク質の遺伝子を組込んだ組換えウイルスをアジュバントその他の薬学的に許容可能なキャリアを組み合わせて、B.gibsoni感染の治療または予防用ワクチン製剤を調製することが可能である。「免疫学的に有効な量」は、単回投与または連続投与の一部として投与される量がB.gibsoni感染の治療又は予防に有効である量を意味するが、この量は、個体の健康状態、ワクチン処方等に応じて調整し得る。
【0044】
アジュバントとしては、例えば水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウムなどのアルミニウム化合物、フロイントアジュバント、ムラミルペプチドなどが用いられる。
【0045】
ワクチン製剤には、更に、リン酸ナトリウム塩、リン酸カリウム塩、水酸化ナトリウム、塩酸等のpH調節剤、硫酸カナマイシン、エリスロマイシン等の抗生物質、乳糖、グルタミン酸カリウム、D-ソルビトール、アミノ酢酸等の安定剤、塩化ナトリウム等の等張化剤などを加えることが可能である。
B.gibsoni 抗体検出法
B.gibsoniに感染した個体は、P50タンパク質に特異的な抗体を産生することから、該抗体の検査を行うことによりB.gibsoni感染犬を高い信頼性をもって同定することが可能である。
【0046】
抗B.gibsoni抗体検出方法は、被検個体から得られた血液その他の生体サンプルと上記精製P50タンパク質を接触させ、抗原抗体反応を指標として陽性個体を同定する。かかる検査は、間接蛍光抗体法(IFA)、受身凝集法(PA)等の公知の免疫学的試験法によって実施することが可能である。
【0047】
PCR 法による B.gibsoni 感染症の DNA 診断法
B.gibsoni感染症の診断は、主に血液塗沫標本を顕微鏡で調べる方法(塗沫鏡検法)によって行われているが、慢性期の感染犬において検出感度が低いという欠点がある。
【0048】
PCRによるDNA診断は極微量の原虫DNAをも検出できる。従って、B.gibsoni遺伝子の一部であるプライマーを使用してPCRを実施することにより、塗沫検鏡法によっては偽陰性となるB.gibsoni感染犬の診断が可能となる。即ち、被検個体から得られた血液その他のサンプル由来のDNAを、配列番号1に示す塩基配列の一部であるプライマーを使用するPCRによって増幅した後、電気泳動を行い、P50遺伝子由来のバンドが確認された個体は、B.gibsoniに感染していると診断することが可能である。
【0049】
【実施例】
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0050】
実施例1 B.gibsoni p50遺伝子の同定、クローニング及び塩基配列の決定
B.gibsoni NRCPD 株[Fukumoto et al., J Parasitol 84:954-959(2000)]感染犬赤血球よりAcid Guanidinium-Phenol-Chloroform 法[Chromczynski et al., Anal Biochem 162:156-159(1987)]にてTotal RNAを抽出した。Total RNAよりmRNA Isolation Kit (Oligotex-dT30, Takara社)を用い、メーカーの推奨する方法に従いpoly A + RNAを精製した。以下に述べるcDNAライブラリーの構築とイムノスクリーニング及びcDNAクローンのプラスミド化(in vivo Excision)は全てStratagene社の試薬キットを用い、メーカーの推奨する方法に従って実施した。約5μgのB.gibsoni mRNAを鋳型として、ZAP−cDNA synthesis kitを用いてcDNAを合成した。得られたcDNAをSephadex CL-2Bゲルカラムにてサイズ分画した後に、Uni-ZAP XR Vector armsに挿入し、GigapackIII Gold packaging extractにてパッケージングを行った。パッケージング産物をE.Coli XL1-Blue MRF株に感染させ、約50万個のcDNAクローンを含むライブラリーを得た。
【0051】
B.gibsoni感染犬血清を用いて、cDNAライブラリーをイムノスクリーニングし、2つのオーバーラップする陽性クローンを得た。これらの陽性クローンを in vivo Excision法にてプラスミド化(pBluescript SK(+)へ変換)した。cDNA断片を含むプラスミドをプラスミド精製キット(Qiagen社)にて精製した後に、Dye Primer Cycle Sequencing Kit (Perkin Elmer社)を用い、メーカーの推奨する方法に従いPCRを行った。ABI PRISM 377 DNA sequencer (Perkin Elmer社)を用いてPCR産物を解析し、cDNA断片の塩基配列を決定した。その結果、2つのクローンが同一遺伝子であることが判明した。その中で長い断片を持つクローンを以後の解析に供した。cDNAの全長は1924 bpであり、1401 bpのOpen Reading Frame (ORF)を有していることが確認された(配列番号1)。推定されるタンパク質は466 基のアミノ酸からなり、推定分子量は50 kDaであった(配列番号2)。以下、この遺伝子をP50遺伝子と称する。P50遺伝子より予想されるアミノ酸配列をNational Center for Biotechnology Information のBLAST法にて相同性検索を行った結果、これまでに報告されている原虫その他いずれの生物種のいかなる遺伝子とも有意な相同性を示さなかった。
【0052】
実施例2 B.gibsoni P50タンパク質を大腸菌で発現させるための組換えベクタープラスミドの構築
B.gibsoni P50 cDNA 断片が挿入されているpBluescriptプラスミドを制限酵素EcoRI とXhoIで消化することによりP50 cDNA断片を切り出し、大腸菌発現用ベクターpGEMEX-2(Promega社)のEcoRIとXhoIサイトに挿入した。プラスミド精製キット(Qiagen社)にて組換えプラスミドpGEMEX-2/P50を精製した。プラスミドpGEMEX-2/P50は、独立行政法人産業技術総合研究所の特許生物寄託センターに受託番号FERM BP-7533として寄託されている。
【0053】
実施例3 大腸菌におけるB.gibsoni P50タンパク質の発現
実施例2で得られた組換えプラスミドにて大腸菌JM109(DE3)株(Promega社)を形質転換させた後、37℃でアンピシリンを含んだLB培地で培養し、培養液のOD値(600 nm)が0.3〜0.5に達した時点でIPTGを最終濃度0.5 mMになるように添加し、さらに37℃で4時間培養を続けた。組換えタンパク質の発現は10%SDS-ポリアクリルアミドゲルで電気泳動[Laemmli et al., Nature 227:680-685(1970)]を実施した後、クマーシー染色で確認した。その結果、約85 kDaの組換えタンパク質の発現が認められ、gene10リーダータンパク質(35 kDa)とB.gibsoni P50タンパク質(50 kDa)の融合タンパク質であることが確認された(図1)。
【0054】
実施例4 大腸菌において発現された組換えP50タンパク質の精製及び該精製タンパク質に対する抗体の作製
実施例3で記述した方法により大腸菌で発現させた組換えP50タンパク質をPromega社の推奨する方法に従い精製した。精製後の組換えP50タンパク質の電気泳動像を図1に示す。次に精製組換えP50タンパク質に対する抗体を作製するために、100 μgの組換えP50タンパク質を含む溶液200 μLとフロイントの完全アジュバント(FCA;Difco社)200 μLを混合し乳化したものをBALB/cマウス(8週齢、雌)に腹腔内接種した。接種後2週目及び4週目にそれぞれ100 μgの組換えP50タンパク質をFCAと混合し乳化したものを追加接種した。最終接種後2週目に採血を行い、血清を-20℃に保存した。
【0055】
実施例5 イムノブロット法によるネイティブ(天然型)P50タンパク質の同定
実施例4で得た抗組換えP50タンパク質マウス血清を用い、イムノブロット法[Towbin et al., Proc Natl Acad Sci USA 76:4350-4354(1979)]にて天然物P50タンパク質の同定を行った。図2に示すようにB.gibsoni感染赤血球ライセートにおいて50 kDaの特異的バンドが検出された。天然型P50タンパク質の分子量は推定理論値(50 kDa)と同様であった。
【0056】
実施例6 組換えP50タンパク質に対する免疫血清の反応性
イムノブロット法を用いて組換えP50タンパク質に対するB.gibsoni感染犬血清の反応性を検討した。図3に示すように、組換えP50タンパク質はB.gibsoni感染犬血清と強く反応することが確認された。これに対し、正常犬血清と組換えP50タンパク質との反応は認められなかった。
【0057】
このことから、組換えP50タンパク質はB.gibsoni感染症の診断用抗原として有用であることが示された。また、P50を免疫原とするワクチンとして有用であることが示された。
【0058】
実施例7 組換えP50蛋白質のイヌに対する抗原性
実施例4に示した組換えP50タンパク質のイヌに対する抗体産生誘導について検討した。精製組換えP50タンパク単独または本タンパク質にアジュバントとしてアルミニウムゲルを加えた混合物を3ヶ月齢のビーグル犬に皮下または筋肉内接種し、初回接種4週目に追加接種した。追加接種後4週目に採血を行った。P50遺伝子を発現させる組換えバキュロウイルスAcP50を作製し、AcP50感染Sf9細胞をTriton X-100で処理した。その可溶性画分を抗原として用いて上記血清と反応させ、本抗原に結合した抗体を酵素抗体法(ELISA法)により検出した。その結果、表1に示すように組換えP50タンパク質に対する抗体が免疫群全頭の血清中において認められたが、抗原非接種対照群のイヌの血清中には抗体は認められなかった。
【0059】
この結果から、組換えP50タンパク質をイヌに接種することによって本タンパク質に対する抗体産生の誘導が確認され、組換えP50タンパク質の抗B.gibsoniワクチンとしての有用性が示された。
【0060】
【表1】
Figure 0004727059
【0061】
【発明の効果】
当該遺伝子はB.gibsoniの新規主要抗原タンパク質P50タンパク質をコードする遺伝子であり、当該タンパク質はイヌに対して抗原性を有することから、抗B.gibsoniワクチンとして使用し得る。また、本タンパク質もしくはそのフラグメントあるいは本タンパク質をコードする塩基配列をプローブとして用いることによって、従来近縁種との区別が困難であったB.gibsoni 原虫感染の診断がより特異的に実施し得る。
【0062】
【配列表】
Figure 0004727059
Figure 0004727059
Figure 0004727059
Figure 0004727059

【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の発現産物である組換えP50タンパク質を示す電気泳動図を示す。
レーン1:分子量マーカー、レーン2:精製組換えP50タンパク質、レーン3:精製gene 10タンパク質
【図2】組換えP50タンパク質免疫血清による天然型P50タンパク質の検出を示すイムノブロット像を示す。
レーン1:B.gibsoni感染赤血球、レーン2:正常犬赤血球
【図3】組換えP50タンパク質とB.gibsoni感染犬血清との反応性を示すイムノブロット像を示す。レーン1:精製組換えP50タンパク質、レーン2:精製gene 10タンパク質

Claims (11)

  1. 下記(a)または(b)のタンパク質又はそのペプチドフラグメント;
    (a)配列番号2に示すアミノ酸配列を有するタンパク質
    (b)配列番号2に示すアミノ酸配列において1個又は数個のアミノ酸配列が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列を有し抗バベシアギブソニ(B.gibsoni )抗体と反応性を有するタンパク質、又はその抗バベシアギブソニ( B.gibsoni )抗体と反応性を有するペプチドフラグメント。
  2. B.gibsoniに対する感染防御免疫誘導活性を有する請求項1に記載のタンパク質。
  3. 請求項1または2に記載のタンパク質又はポリペプチドをコードする核酸分子またはその相補塩基配列を有する核酸分子。
  4. 配列番号1に示す塩基配列またはその相補塩基配列を有する請求項3に記載の核酸分子。
  5. 請求項3または4に記載の核酸分子を含む組換えベクター。
  6. 請求項3または4に記載の核酸分子を組込んだ組換えウイルス。
  7. 請求項5に記載の組換えベクターにより形質転換された形質転換細胞。
  8. 請求項1に記載のタンパク質若しくはポリペプチドに対する抗体。
  9. 請求項2に記載のタンパク質を含むB.gibsoni感染症の治療用又は予防用のワクチン。
  10. 請求項6に記載の組換えウイルスを含むB.gibsoni感染症の治療または予防用のワクチン。
  11. 配列番号2に示すアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする核酸をマーカーとするイヌのB.gibsoni感染の診断方法。
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