以下、本発明の実施形態について図1から図10に基づいて詳細に説明する。まず、図1から図6に本発明の一実施形態を示している。
ここで、本発明の特徴説明に先立ち、本発明の適用対象となる車両制御システムの概要について図1を参照して説明する。
図1は、自動車等の車両に装備される車両制御システムが示されている。図1において、1は駆動源としてのエンジン、2は変速機、3はクラッチ機構、4はクラッチ操作装置、5はエンジン制御装置、6はトランスミッション制御装置、7はクラッチ制御装置である。
図1に示すパワートレーンは、フロントエンジン・リアドライブ(FR)形式の車両に搭載されるタイプとされており、要するに、エンジン1で発生する回転動力が変速機2で適宜の変速比に変速されて図示していないプロペラシャフトおよびデファレンシャルを介して左右の後輪に伝達されるようになっている。なお、フロントエンジン・フロントドライブ(FF)形式の車両に搭載されるタイプのパワートレーンにも本発明を適用できる。
そして、この実施形態のパワートレーンには、運転者によるクラッチペダルの操作なしに、クラッチ制御装置7でクラッチ操作装置4の動作を制御することによりクラッチ機構3を接続状態、切断状態あるいは半接続状態に操作するようになっている。
なお、クラッチ機構3とクラッチ操作装置4とクラッチ制御装置7とで、いわゆる自動クラッチが構成されている。この自動クラッチを装備する場合には、車両室内にクラッチペダルを設けていない。
エンジン1は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等とされる。但し、駆動源として、エンジン1と図示していないモータとを併用する構成のハイブリッド車両や、駆動源としてモータのみを用いる電動車両においても、本発明を適用することができる。
変速機2は、例えば従来公知の同期噛み合い式の変速機とされている。ここでの変速機2は、一般的に公知の手動式変速機と同様に運転者のシフトレバー8に対する手動操作によって選択された変速段を成立させる手動変速モードと、車両走行状況に応じて自動的に最適な変速段を成立させる自動変速モードとが選択できるようになっている。
なお、変速処理については、本発明と直接的に関係しないので、詳細な説明は割愛するが、手動変速モードにおいては、シフトレバー8の動きをシフトポジションセンサ74によって検出し、変速機2内のシフトフォークやスリーブ等をシフトセレクトアクチュエータ9で動かして要求された変速段を成立させるようになっている。
クラッチ機構3は、エンジン1のクランクシャフト(出力軸)1aと変速機2のインプットシャフト(入力軸)2aとの間に介装されていて、必要に応じてクランクシャフト1aとインプットシャフト2aとを動力伝達可能な接続状態(図2参照)、動力伝達不可能な切断状態(図4参照)あるいは滑りを伴う半接続状態(いわゆる半クラッチ)にするものである。
このクラッチ機構3は、図2および図4に示すように、一般的に公知の単板乾式構造とされ、主として、クラッチディスク3a、プレッシャープレート3b、ダイアフラムスプリング3cを含んで構成されている。
クラッチディスク3aは、変速機2のインプットシャフト2aの先端に一体回転かつ軸方向変位可能にスプライン嵌合されることによって、エンジン1のクランクシャフト1aの後端に固定されるフライホイール1bに対向して配置されている。
プレッシャープレート3bは、クラッチディスク3aに対向して配置される環状板からなり、ダイアフラムスプリング3cの外周に取り付けられている。
ダイアフラムスプリング3cは、自然状態においてプレッシャープレート3bをフライホイール1b側に近づけるように押圧してプレッシャープレート3bでクラッチディスク3aをフライホイール1bに圧接させるクラッチ接続状態にするもので、その内径側が軸方向に押圧されることによって反転されたときにプレッシャープレート3bをフライホイール1bから遠ざける側に引き離してクラッチディスク3aをフライホイール1bから引き離すクラッチ切断状態とするものである。
クラッチ操作装置4は、必要に応じて、クラッチ機構3のプレッシャープレート3bを軸方向に変位させることによってクラッチ機構3を接続状態と切断状態と半接続状態とを成立させるように操作するもので、図2および図4に示すように、主として、油圧式クラッチレリーズ装置20と、油圧制御装置30とを含んで構成されている。
油圧式クラッチレリーズ装置20は、クラッチ機構3のダイアフラムスプリング3cの内径部分に当接されるレリーズベアリング25をインプットシャフト2aの外径側で軸方向に変位させるものである。
この油圧式クラッチレリーズ装置20は、外形が略円筒形状とされており、変速機2のインプットシャフト2aの外径側に同心状に配設されるもので、図3および図5に示すように、インナースリーブ21と、アウタースリーブ22と、ピストン23と、予圧スプリング24と、レリーズベアリング25とを有している。
インナースリーブ21は、変速機2のインプットシャフト2aの外径側に非接触に包囲配置されるもので、その軸方向基端側には、変速機ケース(図示省略)に対する取付片として径方向外向きに延びる円板部21aが設けられている。
アウタースリーブ22は、インナースリーブ21の外径側に環状空間を形成するように包囲配置されるもので、その軸方向基端側には、図示省略の変速機ケースに固定される厚肉大径部22aが、また、軸方向先端側には、径方向内向きの屈曲片22bが設けられている。厚肉大径部22aには、油圧制御装置30のクラッチマスターシリンダ31との間で作動油を送受するための油通路22cが設けられている。
ピストン23は、インナースリーブ21とアウタースリーブ22との対向間の環状空間内に軸方向変位可能に嵌入されている。このピストン23の軸方向先端側の外径側薄肉小径部には、レリーズベアリング25の内輪内径側が外嵌されている。このレリーズベアリング25は、板ばね28によって抜け止めされている。
予圧スプリング24は、アウタースリーブ22の厚肉大径部22aの壁面とレリーズベアリング25の内輪の端面との間に圧縮状態で介装されており、その弾性復元力でもってレリーズベアリング24の外輪端面をダイアフラムスプリング3cの内径側に常時当接させるよう付勢して「がた」を無くすものである。この予圧スプリング24とレリーズベアリング25の内輪の端面との間には、ばね座24aが介装されている。
そして、インナースリーブ21とアウタースリーブ22とピストン23とで囲まれた環状の油圧室26は、第1シールリング27Aと第2シールリング27Bとで外部から密封されている。なお、第1シールリング27Aはアウタースリーブ22の軸方向先端側に取り付けられ、スリーブ27Cによって軸方向に位置決めされている。第2シールリング27Bはピストン23の軸方向内端側に取り付けられている。
油圧制御装置30は、必要に応じて油圧式クラッチレリーズ装置20の油圧室26に作動油圧を印加してクラッチ機構3を図4に示すような切断状態にさせたり、油圧室26に対する作動油圧の印加を解除してクラッチ機構3を図2に示すような接続状態にさせたり、滑りを伴う半接続状態にさせたりするもので、クラッチマスターシリンダ31と、クラッチアクチュエータ32と、動力伝達機構33とを含んで構成されている。
クラッチマスターシリンダ31は、油圧配管34およびアウタースリーブ22の油通路22cを介して油圧式クラッチレリーズ装置20の油圧室26に接続されている。
クラッチアクチュエータ32は、例えば電動モータとされる。動力伝達機構33は、クラッチアクチュエータ32で発生する回転動力を減速するとともに、クラッチマスターシリンダ31のピストン31aを直線的に往復変位させる駆動力に変換するものである。
この動力伝達機構33の詳細な構成は図示していないが、複数の歯車等を組み合わせた構成であって、前記直線駆動力の出力部分に、クラッチマスターシリンダ31のピストン31aに連結されるプッシュロッド33aが設けられている。
そして、エンジン1の動作はエンジン制御装置5で、変速機2の変速処理はトランスミッション制御装置6で、クラッチ操作装置4の動作はクラッチ制御装置7で、それぞれ制御するようになっている。
これら、エンジン制御装置5とトランスミッション制御装置6とクラッチ制御装置7とは、必要に応じて互いに必要な情報を双方向で送受する通信を行うように双方向バスで接続されている。
また、これらの制御装置5〜7は、それぞれ一般的に公知のECU(Electronic Control Unit)で構成されるので、その基本構成の詳細説明については割愛する。
エンジン制御装置5は、主として、下記する各種の検出手段から入力される情報に基づきエンジン1の運転状態を検出し、燃料噴射量や吸入空気量等を設定することによりエンジン1の動作を統括的に制御するものである。
トランスミッション制御装置6は、主として、下記する各種の検出手段から入力される情報に基づき、変速機2を適宜の変速段にさせるようシフトセレクトアクチュエータ9を制御するものである。
クラッチ制御装置7は、主として、下記する各種の検出手段から入力される情報に基づき、クラッチ機構3を切断状態、接続状態あるいは半接続状態とするようクラッチ操作装置4のクラッチアクチュエータ32を制御するものである。
なお、エンジン制御装置5に対する情報入力用の検出手段としては、少なくとも、エンジン1の回転数を検出するエンジン回転数センサ71、車両の速度を検出する車速センサ72、アクセルペダル11の開度を検出するアクセルセンサ73、スロットルバルブの開度を検出するスロットルセンサ、吸気管内の圧力を検出する吸気管圧力センサ、冷却水温を検出する水温センサ、等が挙げられる。ここでは、本発明に直接的に関係するもののみ図示して符号を付している。
また、トランスミッション制御装置6に対する情報入力用の検出手段としては、少なくとも、前記エンジン回転数センサ71および車速センサ72、シフトレバー8により選択されるシフトポジションを検出するシフトポジションセンサ74、変速機2で成立している変速段を検出する変速段センサ75、変速機2のインプットシャフト2aの回転数を検出するクラッチ回転数センサ76、変速機2のニュートラルポジションの成立の有無を検出するニュートラルスイッチ77、等が挙げられる。
なお、クラッチ制御装置7に対する情報入力用の検出手段としては、少なくとも、前記車速センサ72、前記シフトポジションセンサ74、前記変速段センサ75、前記クラッチ回転数センサ76、前記ニュートラルスイッチ77、フットブレーキ12の操作の有無を検出するフットブレーキスイッチ78、パーキングブレーキ13の操作の有無を検出するパーキングブレーキスイッチ79、等が挙げられる。
次に、上述した自動クラッチによる基本的な動作については、一般的に公知であるが、ここでは簡単に説明する。
なお、自動クラッチは、シフトレバー8でニュートラルポジションが選択されているとき、クラッチ機構3を切断状態(図4参照)にするように予め規定されている。また、走行している車両を停止させて走行用変速段が保持されたままの状態でも、クラッチ機構3を切断状態(図4参照)にするように予め規定されている。
仮に、手動操作モードでシフトレバー8が、ニュートラルポジションから走行用シフトポジション(例えば第1変速段)に変更されると、当該選択された走行用シフトポジションに対応する走行用変速段を成立させるように変速機2の変速処理が行われる。
この変速機2の変速処理は、トランスミッション制御装置6によりシフトセレクトアクチュエータ9を制御することにより行うが、このシフトセレクトアクチュエータ9の制御形態については、一般的に公知の方法と同様とするので、ここで説明は割愛する。
そして、前記変速処理の後、車両発進して走行している際に、シフトレバー8によりシフトポジションが他の走行用シフトポジション(例えば第2変速段)に変更されると、変速機2の変速処理を行う前に、クラッチ機構3を、一旦、切断状態とする。
この切断状態を成立させるときの処理としては、クラッチ制御装置7が油圧制御装置30のクラッチアクチュエータ32を所定方向に回転駆動させることにより、クラッチマスターシリンダ31のピストン31aを押圧させる。
なお、クラッチ制御装置7は、動力伝達機構33のプッシュロッド33aの移動ストロークをストロークセンサ81で検出し、この検出出力に基づき、クラッチアクチュエータ32をフィードバック制御することにより、クラッチマスターシリンダ31のピストン31aの押動ストロークを調整するようになっている。
このピストン31aの押圧によってクラッチマスターシリンダ31内の作動油圧が油圧配管34および油通路22cを通じて油圧式クラッチレリーズ装置20の油圧室26へ印加され、油圧式クラッチレリーズ装置20のピストン23が外側に押動されるようになる。
これにより、レリーズベアリング25がダイアフラムスプリング3cを反転させるので、プレッシャープレート3bがフライホイール1bから引き離されることになり、エンジン1のクランクシャフト1aと変速機2のインプットシャフト2aとが切り離されて、クラッチ機構3が切断状態となる。
このようなクラッチ切断状態にしてから、前記シフトレバー8によって変更されたシフトポジションを成立させるようにシフトセレクトアクチュエータ9によって変速機2の変速処理を行う。
この変速処理によって要求のシフトポジションが成立されると、クラッチ機構3を接続状態(図2参照)に戻す。
この接続状態への切り替え処理は、クラッチ制御装置7が油圧制御装置30のクラッチアクチュエータ32を前記と逆方向に回転駆動させることにより、クラッチマスターシリンダ31のピストン31aに対する押圧を解除させる。
これにより、ダイアフラムスプリング3cの弾性復元力によってレリーズベアリング25が押し戻されるとともに、油圧式クラッチレリーズ装置20のピストン23が内側に引き戻されることになるので、油圧室26内の作動油が油通路22cおよび油圧配管34を経てクラッチマスターシリンダ31内に戻される。
それと同時にダイアフラムスプリング3cの弾性復元力でもってプレッシャープレート3bがフライホイール1b側へ押動されるので、エンジン1のクランクシャフト1aと変速機2のインプットシャフト2aとが接続された接続状態となる。
ここで、本発明の特徴を適用した部分について詳細に説明する。
要するに、この実施形態では、例えばクラッチ機構3が接続されたままの状態になって切断できなくなるといった切断不良が発生したときに、それを検出することを可能にするとともに、このような切断不良を検出したときに比較的早期段階で適切な対処を行えるように工夫している。
なお、この実施形態では、前記対処として、変速機2を強制的にニュートラルポジションにさせる形態とするように工夫している。
具体的に、図6に示すフローチャートに基づき、クラッチ機構3の異常診断および異常対処に関する処理について、詳細に説明する。
図6に示すフローチャートは、フットブレーキ12の作動により車速が略ゼロになった場合にエントリーされる。この実施形態では、前記の状態になると、正常であればクラッチ機構3が切断状態にされるように予め規定されている。
まず、ステップS1において、変速機2における走行用変速段が成立しているか否かを判定する。この判定は、変速段センサ75からの出力に基づいて認識することができる。
ここで、走行用変速段が成立している場合には、前記ステップS1で肯定判定してステップS2に移行するが、走行用変速段が成立していない場合つまりニュートラルポジションが成立している場合には、前記ステップS1で否定判定して、このフローチャートを抜ける。
前記ステップS2では、アクセルオフ、つまりアクセルペダル11が踏み込まれていないかどうかを判定する。この判定は、アクセルセンサ73からの出力に基づいて行う。
ここで、アクセルオンされている場合には、前記ステップS2で否定判定して、ステップS3に移行して発進制御に関するルーチンにジャンプする。
しかし、アクセルオフである場合には、前記ステップS2で肯定判定してステップS4に移行する。
このステップS4では、アクセルオフにもかかわらず車速が発生しているか否かを判定する。この判定は、車速センサ72からの出力に基づいて行う。
ここで、車速がゼロでない場合つまり車速が発生している場合には、前記ステップS4で肯定判定して、続くステップS5に移行するが、車速が発生していなければ、前記ステップS4で否定判定して、このフローチャートを抜ける。
要するに、前記ステップS4に進んだ段階において、各部が正常であるならば車両が停止していることになるが、その状況を基準として、前記ステップS4で車両が動いているのかどうかを調べているのは、クラッチ操作装置4に何らかの故障が発生しているか否かを確認するためである。
つまり、このような状況において、車両が動いているとすれば、ブレーキ力よりも車両推進力が勝っていることになる。そのような現象の発生原因としては、車両が急勾配の降坂路に位置している場合、あるいはクラッチ機構3が完全な切断状態にならずにエンジン1の回転動力が変速機2に伝達されている切断不良状態のいずれかであると推測することができる。
そこで、車速が発生している場合、つまり前記ステップS4で肯定判定した場合には、続くステップS5において、強制的に変速機2をニュートラルポジションに変更させる処理の実行指令をトランスミッション制御装置6に出力するとともに、クラッチ制御装置7による内部タイマTを起動させる。このステップS5では、要するに、ニュートラルポジションとすることで、車両の駆動力を無くす状態にしているのである。
この後、続くステップS6以降において、前記車速発生の原因が前述したいずれの場合に該当するのかを調べている。
つまり、前記ステップS6では、前記ステップS5でニュートラルポジションを成立させたにもかかわらず、エンジン1の回転動力が変速機2に伝達されているか否かを判定することにより、クラッチ機構3が接続状態または半接続状態になっているのか、あるいは切断状態になっているのかを調べているのである。
具体的に、このステップS6の判定では、エンジン回転数センサ71で検出されるエンジン回転数Neとクラッチ回転数センサ76で検出されるクラッチ回転数Niとの差の絶対値が、所定の閾値α未満か否かを調べることで行う。この閾値αは、実験により経験的に設定される。
ここで、閾値α以上である場合には、前記ステップS6で否定判定して、ステップS7に移行する。この場合、クラッチ機構3が切断状態になっていて、エンジン1の回転動力が変速機2に伝達されていないことを示しているので、車速発生の原因については、車両が急勾配の降坂路に位置しているからであって、クラッチ機構3は正常であると認識できる。
前記ステップS7においては、前記ステップS1で認識した走行用変速段に戻す復帰処理の実行指令をトランスミッション制御装置6に出力した後、ステップS10に移行する。このステップS10においては、前記ステップS5で起動したタイマTの計時動作を停止するとともにリセットし、その後、このフローチャートを抜ける。
しかし、閾値α未満である場合には、前記ステップS6で肯定判定して、ステップS8に移行する。この場合、クラッチ機構3が完全な切断状態ではなく、接続状態または半接続状態になっていて、エンジン1の回転動力が変速機2に伝達されていることを示しているので、車速発生の原因については、クラッチ機構3の切断不良という異常が発生しているからであると認識できる。但し、前記現象の継続時間を調べて、一時的に発生したものか、あるいは前記異常かを見極めるために、ステップS8で調べるようにしている。
つまり、前記ステップS8では、前記ステップS5で起動したタイマTがタイムアップしたか否かを判定することにより、前記現象が継続的に発生しているのか否かを確認する。
ここで、タイムアップしていない場合には前記ステップS8で否定判定して、前記ステップS6に戻るが、タイムアップした場合には前記ステップS8で肯定判定して、続くステップS9に移行する。
このステップS9では、トランスミッション制御装置6に対して前記ステップS5で成立させたニュートラルポジションを保持させる処理の実行指令を出力することにより、走行用変速段への切り替えを禁止させるとともに、クラッチ機構3が切断不良になっていることを運転者に報知する。この後、続くステップS10において、前記ステップS5で起動したタイマTをリセットし、その後、このフローチャートを抜ける。
なお、前記ステップS9における報知については、例えば車両室内のメーターパネルなどに、異常報知ランプまたはメッセージ表示部を設け、それらを駆動してクラッチ機構3の異常を報知することが考えられる。
以上説明したように、本実施形態によれば、車両停止条件が成立している状況においてクラッチ機構3の切断不良といった異常を検出できるようにするとともに、当該異常を検出したときに変速機2を強制的にニュートラルポジションに変更するよう対処するようにしている。
これにより、従来例で説明したように車両が停止しているはずの状況において、クラッチ機構3が接続されたまま切断できなくなるという異常事態が発生しても、その事態を正確かつ確実に検出して、比較的早期段階で対処することができるから、車両が運転者の意に反して動くという不具合の発生を回避できるようになる。
特に、上記実施形態では、ステップS4〜S8に示すような処理を行うことにより、クラッチ機構3の切断不良という異常発生の検出精度を高めるようにしているので、その検出結果の信頼性が向上する。
ところで、上述したような動作説明から明らかなように、ステップS5,S7,S9の処理は、クラッチ制御装置7からトランスミッション制御装置6に実行指令を出力して、トランスミッション制御装置6によって実行させるようになっている。したがって、本発明に係るクラッチ操作装置4の制御装置は、クラッチ制御装置7とトランスミッション制御装置4との両方で構成されていると言える。
但し、上記実施形態で説明したように、エンジン制御装置5とトランスミッション制御装置6とクラッチ制御装置7とを別々とせずに、単一の総括制御装置としている場合には、この統括制御装置が、本発明に係るクラッチ操作装置4の制御装置に相当することになる。
また、上記ステップS5,S7,S9の処理について、例えばクラッチ制御装置7から直接、シフトセレクトアクチュエータ9を制御することにより実行させるようにすることも可能であり、そのような場合には、本発明に係るクラッチ操作装置4の制御装置は、クラッチ制御装置7のみに相当することになる。
さらに、上記実施形態においては、エンジン1の回転動力を変速機2に伝達させていない状況において、その動力伝達が行われている場合に、クラッチ機構3を切断できないという切断不良が発生しているものとしているが、このクラッチ機構3の切断不良の原因について、クラッチ機構3を操作するクラッチ操作装置4の構成要素のどこが異常になっているのかを具体的に究明することが好ましい。この原因究明の形態として、次のようにすることができる。
要するに、クラッチ機構3の切断不良の原因として、大きく分けると、クラッチ操作装置4の油圧式クラッチレリーズ装置20の作動不良と、油圧制御装置30の作動不良とが考えられる。
そこで、油圧制御装置30については、ストロークセンサ81からの出力に基づき動力伝達機構33のプッシュロッド33aが正常に変位しているかどうかを調べることができる。
このストロークセンサ81の出力に基づき油圧制御装置30が正常であると判定することができれば、例えば油圧配管34からの作動油漏れ等によって油圧式クラッチレリーズ装置20の作動不良が発生しているものと推定することができる。
特に、油圧式クラッチレリーズ装置20を装備している場合には、従来例でも説明したように、その外径側に余裕となるスペースを確保することが困難である関係より、当該油圧式クラッチレリーズ装置20の外径側にその作動不良を検出するためのセンサを設置することができない。
この点を考慮し、この油圧式クラッチレリーズ装置20の作動不良を検出せずに、前述したように、油圧制御装置30の作動不良を調べるようにして、間接的に油圧式クラッチレリーズ装置20の作動不良を推定するのが好ましいのである。
このようにすれば、クラッチ機構3の切断不良という異常が発生したときに、その原因を究明することが可能になり、前記異常に対する修復作業が比較的簡単に行えるようになる。
なお、本発明は、上記実施形態のみに限定されるものではなく、特許請求の範囲内および当該範囲と均等の範囲で包含されるすべての変形や応用が可能である。
(1)上記実施形態に示したクラッチ操作装置4の油圧制御装置30において、クラッチアクチュエータ32および動力伝達機構33の替わりに、例えば図7に示すように、プランジャ型のソレノイド35を用いることができる。
この場合、ソレノイド35の励磁コイル35aへの通電によってプランジャ35bを直線的に突出させてクラッチマスターシリンダ31のピストン31aを押動させることができる。励磁コイル35aへの通電を停止すると、プランジャ35bが戻されるので、クラッチマスターシリンダ31のピストン31aも戻されることになる。
このような小型かつ簡易構成のソレノイド35を用いれば、その占有スペースの削減と設置作業の容易化が可能になり、設備コストの低減に貢献できる。
(2)図8および図9に本発明の他の実施形態を示している。この実施形態において上記実施形態との相違は、図6に示すフローチャートをベースとして、ステップS5の後にステップS21,S22を追加していることである。
つまり、上記実施形態では、図6中のステップS5において変速機2をニュートラルポジションに切り替えるようにしているものの、何らかの原因でニュートラルポジションを成立できないといった万一の不具合の発生を調べるようにしている。
この点を考慮し、この実施形態では、前記万一の不具合が発生しても、そのことを検出可能とするとともに、その不具合に対処できるようにしている。
具体的に、この実施形態での動作を説明する。なお、図8のフローチャートに示すステップS1〜S10は、図6に示すフローチャートのステップS1〜S10と同じであるので、その説明を割愛し、上述した相違部分、つまりステップS21,S22について詳しく説明する。
まず、ステップS21において、ニュートラルポジションが成立できた否かを判定する。ここでの判定は、ニュートラルスイッチ77の出力に基づいて行うことができる。このニュートラルスイッチ77は、ニュートラルポジションが成立している場合にオンとなり、不成立の場合にオフとなる。
なお、前記ニュートラルスイッチ77の出力の替わりに、シフトセレクトアクチュエータ9で駆動するシフトフォーク(図示省略)の動きを検出するシフトストロークセンサ(図示、符号省略)からの出力を利用することも可能である。
ここで、ニュートラルポジションが成立できたときには、前記ステップS21で肯定判定して、ステップS6に移行するが、ニュートラルポジションが成立できない場合には、前記ステップS21で否定判定して、ステップS22に移行する。
このステップS22では、エンジン1を強制停止させるための指令をエンジン制御装置5に送信することにより、エンジン制御装置5によってエンジン1を停止させる処理を実行させる。
この後、ステップS10に移行し、前記ステップS5で起動したタイマTをリセットして、このフローチャートを抜ける。
以上説明したように、この実施形態では、上記実施形態と同様の作用、効果に加えて、車両停止条件が成立している状況においてクラッチ機構3の切断不良を検出したときの対処、つまり変速機2を強制的にニュートラルポジションに変更する処理を行っても、ニュートラルポジションを成立できない不具合が発生した場合に、さらなる対処としてエンジン1を強制停止させるようにしている。これにより、車両が意図せずに動くことを阻止して停車させることが可能になる。
ところで、図8のステップS22においてエンジン1を強制停止させるための指令をエンジン制御装置5に送信してから、実際にエンジン1が停止すると、この停止をトリガーとして、図9に示すルーチンにエントリーさせるようにすることが可能である。
まず、ステップS41では、車両が停止したか否かを判定する。ここで、停止していなければ、前記ステップS41で否定判定して停止するのを待つが、停止した場合には、前記ステップS41で肯定判定して、続くステップS42において、変速機2を強制的にニュートラルポジションに変更させる処理を実行する。
この後、ステップS43において、ニュートラルポジションが成立できた否かを判定する。この判定は、ニュートラルスイッチ77の出力に基づいて行うことができる。このニュートラルスイッチ77は、ニュートラルポジションが成立している場合にオンとなり、不成立の場合にオフとなる。
ここで、ニュートラルポジションが成立した場合には、前記ステップS43で肯定判定して、ステップS44に移行するが、ニュートラルポジションが不成立であった場合には、前記ステップS21で否定判定して、ステップS45に移行する。
前記ステップS44では、クラッチ機構3の切断不良が修復されるまで走行用変速段への変更を禁止してニュートラルポジションを保持させる処理の実行指令をトランスミッション制御装置6に出力した後、このフローチャートを抜ける。
一方、前記ステップS45では、クラッチ機構3の切断不良が修復されるまでエンジン1の始動を禁止させる処理の実行指令をエンジン制御装置5に出力した後、このフローチャートを抜ける。
このようにすれば、クラッチ機構3の切断不良が修復されるまでの間は、車両を動かせないようになり、万一の対策が万全となる。
(3)図10に、本発明のさらに他の実施形態を示している。この実施形態において上記(2)で説明した実施形態との相違は、図8に示すフローチャートをベースとして、ステップS31〜S34の処理を追加していることである。
要するに、この実施形態では、車両が停止している状況において、ニュートラルポジションが選択されているときに、クラッチ機構3の切断不良といった異常診断を行うように工夫している。
具体的に、この実施形態での動作を説明する。なお、図10のフローチャートに示すステップS1〜S10,S21,S22は、図8のフローチャートに示すステップS1〜S10,S21,S22と同じであるので、その説明を割愛し、上述した相違部分、つまりステップS31〜S34について詳しく説明する。
まず、ステップS1で走行用変速段が成立していないと判定した場合に、ステップS31に移行し、ニュートラルポジションが成立しているか否かを判定する。
ここで、ニュートラルポジションが成立している場合、前記ステップS31で肯定判定して、ステップS32に移行するが、ニュートラルポジションが成立していない場合には、前記ステップS31で否定判定して、このフローチャートを抜ける。
前記ステップS32では、クラッチ機構3の切断不良という異常の診断に必要な動作テストを行う。この動作テストは、例えば、クラッチ操作装置4によりクラッチ機構3を実際に切断、接続と反復操作させるようにし、切断したときと接続したときとで、逐一、エンジン回転数センサ71で検出されるエンジン回転数Neとクラッチ回転数センサ76で検出されるクラッチ回転数Niとの差分を算出し、算出結果が規定範囲内に収まっているどうかを検証する。この検証処理は、所定回数、繰り返し行うことにより、異常診断の正確性を高めるようにするのが好ましい。
この後、続くステップS33において、クラッチ機構3に異常が発生しているか否かを判定する。この判定は、前記ステップS32での動作テストの結果に基づいて行うことができる。
ここで、クラッチ機構3が異常でないと判定した場合には、このフローチャートを抜ける。しかし、クラッチ機構3が異常であると判定した場合には、ステップS34に移行する。
このステップS34では、トランスミッション制御装置6に対してニュートラルポジションを保持させる処理の実行指令を出力することにより、走行用変速段への切り替えを禁止させるとともに、クラッチ機構3が切断不良になっていることを運転者に報知した後、このフローチャートを抜ける。
なお、前記ステップS34での報知内容としては、ステップS9での報知と同様にすることができる。
以上説明したように、この実施形態では、車両が停止していてかつニュートラルポジションになっている状況において、クラッチ機構3の切断不良といった異常の発生を検出することができるとともに、この異常発生を検出した場合には、異常に対する処置として、車輪に駆動力を伝達させない状態を確保することにより、車両が運転者の意に反して動くことを阻止するようにしている。