JP4736205B2 - 耐震性および小入熱溶接性に優れたTS590MPa以上の高強度H形鋼の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、建築用として耐震性(低降伏比)、狭YPレンジおよび高靭性に優れる圧延H形鋼の製造方法に関し、特にフランジ厚さが32mm以上の590MPa級の大型で、組立溶接や補修溶接などの小入熱溶接時のHAZ硬化性が小さく、柱材に適したものに関する。
【0002】
【従来の技術】
高層建築物の柱材には、ボックス柱、鋼管を用いた円柱および温間もしくは冷間で加工されるコラム柱があり、ボックス柱は各方向毎の断面係数の変化は少ないものの、角溶接の施工が難しくまた高層建築物に用いられる厚肉コラム柱ではコーナ部で低降伏比を満足させる成形コストが高価になるという欠点があった。
【0003】
また、円柱の場合は、梁材と接続するための仕口部の加工が複雑になる欠点があり、コラム柱は大型化が困難という寸法上の制約があった。
【0004】
これに対し、圧延H形鋼を柱材に用いた場合は、断面係数がH方向とI方向で異なるものの、その違いは設計段階で対応可能で、圧延ままで柱材としての基本形状を有していることから、曲げ、溶接などによる組立加工が不要で、梁材を取り付ける仕口部が炭酸ガス溶接で簡便に施工できる等、利点が多く、材料費、施工費などを含めたコストが削減される。
【0005】
そして、柱材として必要となる付属金物を取り付ける際の小入熱溶接性と耐震性を備えた大型の圧延H形鋼製造技術の確立が望まれていた。
【0006】
特開平8−197105号公報は炭素当量を0.40%以下に低減した溶接性に優れたH形鋼の製造方法が開示されている。しかし、HAZ硬さについては考慮されておらず、強度も490MPa級と低い。
【0007】
特開平11−193440号公報は、HAZ硬化の少ない590MPa級の大型H形鋼が開示されているが、C添加量を極端に低減し、Cu,Ni等の高価な合金元素添加を行うもので経済性に劣っていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上の点に鑑みなされたもので、耐震性(YR≦80%)を備え、高強度(TS≧590MPa)で、且つ小入熱溶接性に優れたフランジ厚さ32mm以上の圧延H形鋼の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
圧延H形鋼で、フランジ厚さ32mm以上の大型とすると、形状の安定性、寸法精度、及び圧延機への負荷を考慮し、加熱温度・圧延仕上温度を高温とせざる得ず、加熱時のオーステナイト粒の細粒化とその後の再結晶オーステナイト域圧延によるオーステナイト粒の細粒化を十分利用することができない。
【0010】
そこで、本発明者等は、炭素当量を0.47%以下とすることを前提に、化学成分、制御圧延および加速冷却条件を検討し、耐震性、溶接性に優れた590MPa級大型圧延H形鋼の製造条件を見出した。
【0011】
本発明は以上の検討をもとになされたもので、すなわち本発明は、
1.質量%で、C:0.05〜0.12%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.6〜1.6%、Mo:0.2〜0.5%、V:0.02〜0.06%、B:0.0003%以下に規制し、且つCeq≦0.47%、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼を、1100〜1350℃に加熱後、1100℃以下で累積圧下率20%以上、圧延終了温度800〜1000℃で熱間圧延し、その後直ちに冷却速度が11℃/s以上で水冷停止温度が600〜300℃の加速冷却を行うことを特徴とする耐震性および小入熱溶接性に優れたTS590MPa以上の高強度H形鋼の製造方法。
【0012】
2.更に、Cu:0.05〜0.5%、Ni:0.05〜0.5%、Cr:0.05〜0.1%、Nb:0.005〜0.05%の一種又は二種以上を含有することを特徴とする1記載の耐震性および小入熱溶接性に優れたTS590MPa以上の高強度H形鋼の製造方法。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の、成分組成、製造条件の限定理由について説明する。
【0014】
1.成分組成
C
Cは、鋼の強度を安定して確保するために有効な元素であり、その効果を得るため、0.05%以上添加する。一方、0.12%を超えると溶接性が劣化するとともに、小入熱溶接時のHAZ硬さを著しく上昇させるため、0.05〜0.12%(0.05%以上、0.12%以下)とする。
【0015】
Si
Siは脱酸剤、強度上昇に有効な元素であり、その効果を得るため、0.05%以上添加する。一方、0.5%を超えると強度上昇が飽和し、溶接性を損なうため、0.05〜0.5%とする。
【0016】
Mn
Mnは、強度を確保するため0.6%以上添加する。一方、1.6%を超えて添加すると溶接性を損ない、偏析部が著しく硬化するため、0.6〜1.6%とする。
【0017】
Mo
Moは、焼入れ性を向上させ、析出強化等により鋼の高強度化に有効であり、0.2%以上添加する。一方、0.5%を超えるとコストが上昇し溶接部の靭性を劣化させるため、0.2〜0.5%とする。
【0018】
V
Vは、微量添加で強度上昇に有効で、大型圧延H形鋼のYPを上昇させるため、0.02%以上添加する。一方、0.06%を超えると、粗大なVの炭窒化物を生成し、靭性を劣化させるため、0.02〜0.06%とする。
【0019】
B
Bは、HAZ部の硬度を著しく高めるため、本発明では不純物として3ppm以下に規制する。
【0020】
尚、靭性確保の観点からNを0.0050%以下とすることが望ましい。
【0021】
図1に、炭素当量(Ceq)が0.47%以下の鋼(表1に化学成分を示す)における溶接熱影響部(HAZ)の最高硬さ(JIS Z3101)を示す。炭素当量の増加に伴い,最高硬さは上昇するが、本発明範囲外のC,Bを含有する場合、著しく硬化する。
【0022】
Ceq
Ceqは、小入熱溶接時のHAZ硬さを低くするため、0.47%以下とする。
【0023】
本発明では以上の基本成分に加えて必要に応じて、Cu,Ni,Cr,Nbの一種または二種以上を添加することができる。
【0024】
Cu
Cuは強度上昇に有効な元素であり、その効果を得る場合0.05%以上添加する。一方、0.5%を超えると、生産原価が上昇し、板厚方向の強度の不均質性、表面キズが発生するため、0.05〜0.5%とする。
【0025】
Ni
Niは、強度及び靭性向上に有効で、その効果を得る場合0.05%以上添加する。一方、0.5%を超えると、溶接性を損ない、生産原価が上昇するため、0.05〜0.5%とする。
【0026】
Cr
Crは、強度上昇に有効で、その効果を得る場合0.05%以上添加する。一方、0.1%を超えると溶接性を劣化させるため、0.05〜0.1%とする。
【0027】
Nb
Nbは、強度上昇に有効で、その効果を得る場合、0.005%以上添加する。一方、0.05%を超えると靭性が劣化するため、0.005〜0.05%とする。
【0028】
2.製造条件
スラブ加熱温度:1100〜1350℃
圧延H形鋼の寸法が大きくなるに従い、圧延時の変形抵抗、寸法精度を考慮して、圧延を高温域で終了させることが望ましい。加熱温度1100℃未満では、圧延時の温度低下が著しく、靭性は優れるものの寸法精度が低下する。
【0029】
一方、1350℃を超えると、加熱時のオーステナイト粒径が著しく粗大化し、建築用鋼として靭性が不足し、加熱炉の炉体を損傷させるため、1100〜1350℃とする。
【0030】
1100℃以下の累積圧下率20%以上
1100℃以下で且つオーステナイト再結晶域での累積圧下率が20%未満の場合、粗大なオーステナイト粒により、フェライト粒の微細化が困難となり、靭性が劣化するため、20%以上とする。
【0031】
加速冷却の冷却速度:2℃/s以上
TS≧590MPa級とするため、加速冷却の冷却速度を板厚中央部で2℃/s以上とする。尚、加速冷却は、圧延後、直ちに行う。
【0032】
図2に、炭素当量0.47%以下の鋼(表1に化学成分を示す)を1230℃に加熱し、1100℃以下で累積圧下率20%以上、仕上温度900℃の圧延を終了後、種々の冷却速度で約500℃まで冷却し、その後放冷した場合の機械的性質を示す。冷却速度を2℃/s以上とした場合、TS≧590MPa級となっている。
【0033】
更に本発明では、耐震性(YR≦80%)および高靭性のため冷却停止温度を600〜300℃とすることが望ましい。
【0034】
図3は、炭素当量0.47%以下の鋼(表1に化学成分を示す)を1230℃に加熱後、1100℃以下で累積圧下率20%以上、仕上温度900℃の圧延で板厚50mmとし、その後、直ちに2℃/s以上で加速冷却し、種々の温度で水冷を停止した場合の機械的性質を示す。
【0035】
停止温度の低下に伴い、降伏比が低下し、冷却停止温度600℃以下でYR≦80%の耐震性に優れた圧延H形鋼が得られている。冷却停止温度を600〜300℃とした場合、耐震性と共に高靭性が得られている。
【0036】
【表1】
【0037】
【実施例】
表1に示す成分組成の鋼を用い、種々の条件で圧延H形鋼を製造した。表2に製造条件および得られた機械的特性を示す。
【0038】
尚、表1、2の鋼No.1〜10は共通とし、表2中、末尾の英記号は製造条件が変化していることを示す。また、表1中、最高硬さはHAZ最高硬さを示し、JIS Z3101により求めた。
【0039】
鋼番1の鋼を用いた実施例において、鋼1Aは、冷却速度が2℃/s未満で、590MPa級の強度が得られず、0℃でのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーも低く比較例となっている。
【0040】
一方、鋼1B、1C、1Dは、冷却速度が2℃/s以上で、590MPa級の建築用大型圧延H形鋼として十分な機械的性質が得られている。
【0041】
尚、鋼番1の鋼の最高硬さは270と低く優れた硬度が得られている。
【0042】
鋼番2の鋼を用いた実施例において、鋼2Aは、冷却速度が2℃/s未満で、590MPa級の強度が得られず、0℃でのシャルピー衝撃試験の吸収エネルギーも低く比較例となっている。
【0044】
尚、鋼番2の鋼の最高硬さは310と低く優れた硬度が得られている。
【0045】
鋼番3の鋼を用いた実施例において、鋼3Aは、590MPa級の建築用大型圧延H形鋼として十分な機械的性質が得られている。
【0046】
鋼3Bは、3Aの圧延仕上温度を更に低下させたもので、590MPa級の建築用大型圧延H形鋼として更に優れた機械的性質が得られている。
【0047】
鋼番4〜7の鋼の最高硬さは低C系のため263〜280と低くHAZ硬化性が低い。
【0048】
鋼4A〜鋼7Aは、590MPa級の建築用大型圧延H形鋼として十分な機械的性質が得られている。
【0049】
鋼番8は、Mo添加量が本発明範囲外で、最高硬さは258と低いが、強度が590MPa級としては劣る。
【0050】
鋼番9は、Bが添加され、鋼番10はC添加量が0.13%と高く、本発明範囲外であり、590MPa級の建築用大型圧延H形鋼として十分な機械的性質が得られているものの、最高硬さが350を超え、小入熱溶接性に劣っている。
【0051】
【表2】
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、柱材として使用が可能で、且つ付属物を取り付ける際の小入熱溶接性に優れたフランジ厚さ32mm以上の590MPa級高強度圧延H形鋼が生産性良く得られ、産業上極めて優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】最高硬さ(JISZ3101)に及ぼす炭素当量の影響を示す図
【図2】圧延H形鋼の機械的性質に及ぼす加速冷却条件(冷却速度)の影響を示す図
【図3】圧延H形鋼の機械的性質に及ぼす加速冷却条件(冷却停止温度)の影響を示す図
Claims (2)
- 質量%で、C:0.05〜0.12%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.6〜1.6%、Mo:0.2〜0.5%、V:0.02〜0.06%、B:0.0003%以下に規制し、且つCeq≦0.47%、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼を、1100〜1350℃に加熱後、1100℃以下で累積圧下率20%以上、圧延終了温度800〜1000℃で熱間圧延し、その後直ちに冷却速度が11℃/s以上で水冷停止温度が600〜300℃の加速冷却を行うことを特徴とする耐震性および小入熱溶接性に優れたTS590MPa以上の高強度H形鋼の製造方法。
- 更に、Cu:0.05〜0.5%、Ni:0.05〜0.5%、Cr:0.05〜0.1%、Nb:0.005〜0.05%の一種又は二種以上を含有することを特徴とする請求項1記載の耐震性および小入熱溶接性に優れたTS590MPa以上の高強度H形鋼の製造方法。
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