JP4736288B2 - マッピングデータを用いた定量分析方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、マッピングデータを用いた定量分析方法に関し、詳しくは、分析領域が不定形である場合に、マッピング範囲を抽出して定量分析を行う方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
被分析試料に電子線を照射して、被分析試料から発生する特性X線を検出し、被分析試料中の元素分布を分析するX線マイクロアナライザー(EPMA)による分析方法は、非破壊で、しかも、簡便かつ迅速に定性分析及び定量分析を行うことが可能であることから、金属やセラミックスなどを用いる多くの技術分野において、広く用いられている。
【0003】
また、EPMAを用いたマッピング分析は、例えば、図9に示すように、被分析試料の表面の任意の分析範囲A0を指定し、端から各座標、すなわち、分析範囲を構成する各区画(ピクセル)の1点ずつに電子線を照射し、各座標の目的元素の強度を検出するものであり、色分けされた2次元のマッピングデータとして、元素の分布状態が表示されることから、目的元素の分布の状態を視覚的に捉えることができるという特徴を有している。また、EPMAマッピングデータは、その他にも、そのマッピング範囲内の有効なデータとして、目的元素の定量や分散性評価にも利用することが可能である。
【0004】
ところで、X線強度データを定量値に変換する方法としては、
(1)同じマトリックスで目的元素の含有率を変化させた検量線を作製し、同一条件で測定した分析領域のX線強度から、目的元素の含有率を算出する検量線法、
(2)EPMAでX線強度に影響を与える因子に対して、原子番号補正、蛍光励起補正、吸収補正などの補正係数を理論的に算出して、補正し、定量分析を行うZAF法
などの方法がある。
【0005】
そして、いずれの方法の場合にも、均一系における材料や、均一な分析範囲における元素分布に関しては、定量的に論じることが可能である。
しかし、例えば、被分析試料が、はんだや組成の異なる金属粉の焼結体のような数ミクロンから数十ミクロンの偏析相の集合体であるような場合には、一部分の測定によって、全体の正確な平均組成を得ることは不可能である。
【0006】
そこで、このような場合には、分析ポイントを増やし、各分析ポイントにおいて得られた測定値を平均するなどの方法により対応することが必要となるが、全体としてみた場合に、信頼性の高い平均的な定量値を得ようとすると、分析ポイントを多くすることが必要になるため、測定に時間がかかり、効率が悪いという問題点がある。
【0007】
また、分析領域を広くして平均的な定量値を得る方法もあるが、複合材から構成される部品などに使用されている場合には、分析領域を広くすると、分析領域内に他の成分が共存することになり、従来のマッピング範囲内を平均化する定量方法では、正確な組成値を得ることは困難で、定性的な評価しか行うことができないという問題点がある。
【0008】
また、上記問題点を解決する方法として、マッピング範囲内の一部領域を指定して、表示あるいは定量化する方法が提案され、広く利用されているが、この方法は、定形領域を指定するものであり、不定形な領域には適用できないのが実情である。
【0009】
さらに接合界面から拡散しているような元素を含めて定量化する場合は、濃度勾配が存在するので、どの範囲で分析を行うかで定量結果が異なり、客観的な評価を行うことができないという問題点がある。
【0010】
また、不定形な領域の定量分析として、元素間の相互関係から分析領域を指定する相分析が広く利用されている。この相分析は、分析領域内に指定した複数の元素が、指定した強度で存在するとき、その領域を表示、定量化する方法であり、元素間の相互関係を明確にすることができる。しかし、相分析では指定した元素の強度が、指定した範囲にある領域を抽出し、相(化合物)としての存在量を定量化するものであり、目的とする領域で平均化した定量値を得ることはできないという問題点がある。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するものであり、目的とする分析領域だけを抽出して、その領域内の元素の平均濃度を精度よく求めることが可能なマッピングデータを用いた定量分析方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明(請求項1)のマッピングデータを用いた定量分析方法は、
被分析試料を構成する物質のX線強度からなるマッピングデータを用いた定量分析方法において、
前記被分析試料が他の部材と接して存在し、かつ、前記被分析試料と前記他の部材の界面に、前記被分析試料に含有される物質と、前記他の部材に含有される物質とが存在する共存領域が生じている場合に、
前記被分析試料に含まれる物質であって、前記共存領域に存在する物質のうちのいずれかを閾値設定物質として選定し、該閾値設定物質の標準試料のX線強度を予め測定しておき、
前記被分析試料及び前記他の部材を含む領域を複数の区画に分割し、該複数の区画のそれぞれにおける、前記閾値設定物質のX線強度からなるマッピングデータを得て、
予め測定しておいた前記閾値設定物質の標準試料のX線強度から閾値を決定し、前記複数の区画の中から、前記閾値に対して所定の大小関係の基準を満たすX線強度を有する区画を抽出し、
前記抽出した区画からなる領域を前記被分析試料の存在する分析領域とみなし、該分析領域について、前記被分析試料を構成する物質の平均X線強度を算出すること
を特徴としている。
【0013】
被分析試料が、他の部材と接して存在し、その界面に、被分析試料に含有される物質と、他の部材に含有される物質とが存在する共存領域が生じている場合に、被分析試料に含まれる物質であって、共存領域に存在する物質のうちのいずれかを閾値設定物質として選定し、この閾値設定物質の標準試料のX線強度を予め測定しておき、被分析試料及び他の部材を含む領域を複数の区画に分割し、複数の区画のそれぞれについて、閾値設定物質のX線強度を測定し、予め測定しておいた閾値設定物質の標準試料のX線強度から閾値を決定し、複数の区画の中から、閾値に対して所定の大小関係の基準を満たすX線強度を有する区画を抽出し、この抽出した区画からなる領域を被分析試料の存在する分析領域とみなすことにより、目的とする分析領域だけを取り出すことが可能になるとともに、この分析領域について、被分析試料を構成する物質の平均濃度を精度よく測定することが可能になる。
【0014】
また、請求項2のマッピングデータを用いた定量分析方法は、前記被分析試料が、前記他の部材に融着することにより、前記他の部材に接して存在しており、かつ、前記被分析試料と前記他の部材の界面に、前記被分析試料に含有される物質と、前記他の部材に含有される他の物質とを含有する化合物が生成することにより、前記被分析試料に含有される物質と、前記他の部材に含有される他の物質とが共存する領域が生じていることを特徴としている。
【0015】
被分析試料が他の部材と接して存在している態様としては、被分析試料が他の部材に融着している場合があり、また、被分析試料と他の部材の界面に被分析試料に含有される物質と他の部材に含有される物質との共存領域が生じている態様としては、被分析試料と他の部材の界面に、被分析試料に含有される物質と、他の部材に含有される他の物質とを含有する化合物が生成している場合があり、そのような場合に本発明のマッピングデータを用いた定量分析方法を適用することにより、目的とする分析領域内の構成元素の平均濃度を精度よく求めることが可能になる。
【0016】
また、請求項3のマッピングデータを用いた定量分析方法は、前記被分析試料がはんだであり、閾値設定物質がSn化合物であることを特徴としている。
【0017】
被分析試料がはんだである場合において、閾値設定物質をSn化合物とすることにより、目的とする分析領域が不定形な領域である場合にも、目的とする分析領域を精度よく抽出することが可能になり、分析領域における目的元素の平均濃度を正確にまた迅速に求めることが可能になる。
【0018】
また、請求項4のマッピングデータを用いた定量分析方法は、前記マッピングデータを得る方法が、EPMAマッピング分析による方法であることを特徴としている。
【0019】
EPMAマッピング分析による方法で得たマッピングデータを用いることにより、分析領域における目的元素の平均濃度を正確にまた迅速に求めることが可能になり有意義である。
【0020】
【発明の構成についての具体的な説明】
本発明のマッピングデータを用いた定量分析方法は、複数の物質から構成される被分析試料を定量分析する場合において、EPMA(電子プローブマイクロアナライザー)によって得られたマッピング強度データから、不定形な領域における目的元素の平均濃度を精度よく求めることを可能ならしめることを目的とするものである。
【0021】
本発明においては、マッピング範囲が広い場合においても、目的とする分析領域に相当する範囲に存在している元素のX線強度で、目的とする分析領域の座標(区画)を指定することにより、図1(a),(b)に示すように、不定形な分析領域(図1(b)において、太線で囲んだ領域)Aを抽出することが可能になり、抽出した領域(目的とする分析領域)のみにおける目的元素の平均濃度を正確にまた迅速に求めることができる。
【0022】
なお、本発明のマッピングデータを用いた定量分析方法を実施するのに用いるEPMAマッピング強度データとしては、波長分散型(Wavelength Dispersive X-ray Analyzer)、及びエネルギー分散型(Energy Dispersive X-ray Analyzer)のいずれをも用いることが可能である。
【0023】
また、EPMAによる特性X線強度の測定のための加速電圧、試料吸収電流、計測時間、プローブ径などの電子線照射条件は、測定対象となる材料の種類や測定領域によって任意に最適条件を選択することが可能である。
【0024】
任意の条件に設定されたEPMAにより測定される元素は、分析領域を決定するための分析領域決定元素(A)(すなわち、本発明の「閾値設定物質」)と、目的とする分析領域に分布している目的元素(B)であり、これらの元素について、通常のEPMAマッピング手法により特性X線強度を測定する。
【0025】
閾値設定物質である分析領域決定元素(A)は、目的元素であってもよく、また、目的元素でなくてもよい。さらに、分析領域決定元素(A)は、分析領域にのみ存在する主成分元素であることが好ましい。
また、目的元素(B)は、単一であってもよく、また複数であってもよい。なお、分析領域決定元素(A)が目的元素(B)でもある場合、分析領域決定元素(A)を除いた目的元素(B)は分析領域以外に分布していてもよい。
【0026】
また、本発明のマッピングデータを用いた定量分析方法においては、分析領域決定元素(A)のX線強度から閾値が決定され、その閾値に対して所定の大小関係の基準を満たす領域として分析領域が決定される。
閾値は、目的とする分析領域を他と区別することができる範囲で設定されるとともに、分析領域決定元素(A)の濃度や化合物の元素濃度によって最適値が選ばれる。
【0027】
なお、この閾値の最適値は、被分析試料を分析する場合と同じ条件で測定した、分析領域決定元素(A)の標準試料のX線強度(平均強度)と、標準試料中の分析領域決定元素(A)の含有率などから決定される。
【0028】
そして、分析領域決定元素(A)によって決められた区画(ピクセル)において、目的元素(B)のX線強度を測定し、このX線強度データを濃度換算することにより、目的とする分析領域内における目的元素(B)の平均濃度を求めることができる。なお、X線強度データを濃度換算するにあたっては、X線強度データを定量値に変換するための一般的な手法である検量線法やZAF法を適用することが可能である。
【0029】
したがって、本発明にかかるマッピングデータを用いた定量分析方法によれば、試料中の偏析部分に含まれる目的元素が微量である場合、あるいはマッピング範囲内に目的とする分析領域以外の領域が含まれている場合、さらには、目的元素の定量値を得たい領域(分析領域)が不定形である場合などのいずれの場合においても、目的とする不定形な領域内の構成元素の平均濃度を精度よく求めることが可能になる。
【0030】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を示して、その特徴とするところをさらに詳しく説明する。
【0031】
[実施形態1]
この実施形態1では、図2に示すように、抵抗素子1の両端側に、外部電極2a,2bが配設された構造を有する抵抗チップ3を、図3に示すように、所定の電極11a,11bが配設された基板12上に搭載し、はんだ13により、抵抗チップ3の外部電極2a,2bを、基板12上の電極11a,11bに接続することにより実装した場合における、はんだ13の組成を、波長分散型X線マイクロアナライザーを用いてマッピング分析を行う場合を例にとって説明する。
【0032】
なお、はんだ13が接合する、抵抗チップ3の外部電極2a,2bは、抵抗素子1の両端部に銀ペーストを塗布して焼き付けることにより形成された銀層4と、銀層4の表面にニッケルめっきを施すことにより形成された上層であるニッケル層5を備えた2層構造を有しており、はんだ13は、このニッケル層5と接合することになる。
また、この実施形態1では、はんだ13として、Sn、Ag及びCuを
Sn:96.5重量%
Ag: 3.0重量%
Cu: 0.5重量%
の割合で含有するはんだを用いた。
【0033】
まず、被分析試料を構成する物質のX線強度を測定した。このときのマッピングデータを用いた定量分析方法の条件は、以下の通りである。
【0034】
<分析条件>
(1)分析装置:日本電子製 波長分散型X線マイクロアナライザーJXA−8800R
(2)加速電圧 :15kv
(3)試料吸収電流 :100nA
(4)ピクセル数 :250×250
(5)プローブ径 :4.0μm
(6)分析領域 :1000μm×1000μm
(7)Dwell Time(1つのピクセルにおける取り込み時間):50ms
【0035】
上記の分析条件によるマッピングデータを用いた定量分析方法により得られたマッピングデータのうち、AgのX線強度データのマッピング結果を図4に示す。
図4のAgのマッピング結果をみると、Agは、はんだ接合部において均一に存在しておらず、偏析相として存在していることがわかる。この場合、多点分析を行っても接合部全体の組成を得ることは不可能である。
【0036】
そこで、この実施形態1では、はんだ接合部を正確に抽出するためには、表1に示す構成部品の元素と抽出部位の元素の組み合わせによる化合物(接合部界面に存在する金属間化合物(Ni3Sn4))を構成する元素のX線強度を閾値として、目的とする分析領域を構成するピクセル(区画)を抽出した。
【0037】
【表1】
【0038】
なお、マッピングデータを用いた定量分析方法の条件は、上述の(1)〜(7)と同じである。ただし、分析領域決定元素をSn化合物とし、分析領域抽出閾値を、1050cpsとした。
すなわち、この実施形態1では、抵抗チップ3の外部電極2a,2bをはんだ13により基板12上の電極11a,11bに接合したはんだ接合部において、Ni3Sn4の化合物が形成される界面までをはんだ接合部として、Ni3Sn4を構成するSn化合物のX線強度1050cpsを閾値としてピクセル(目的とする分析領域を構成する区画)を抽出した。
【0039】
図5(a)は、抵抗チップ3の外部電極2a,2bをはんだ13により基板12上の電極11a,11bに接合したはんだ接合部を模式的に示す断面図であり、図5(b)は、Ni3Sn4を構成するSnのX線強度1050cpsを閾値として抽出した分析領域を示す図である。
【0040】
それから、この抽出したピクセル(目的とする分析領域を構成する区画)におけるX線強度から、下記の式(1)により、平均X線強度を計算するとともに、検量線(濃度換算定数)より、下記の式(2)から平均濃度を求めた。
<平均X線強度>
平均X線強度=Σ(抽出部位のピクセルの強度)/ピクセル数 …(1)
<検量線>
平均濃度=(平均X線強度−切片)/傾き …(2)
なお、目標とする分析領域を抽出した後の、X線強度から検量線(濃度換算定数)により各元素の平均濃度を求める工程は、従来のマッピングデータを用いた定量分析方法の場合と同様である。
その結果を表2に示す。なお、表2において、接合部組成の合計値が100%になっていないが、これは測定装置の精度によるものである。
【0041】
【表2】
【0042】
Ni3Sn4を構成するSnのX線強度1050cpsを閾値としてピクセル(目的とする分析領域を構成する区画)を抽出し、この分析領域において平均X線強度を算出するとともに、目的元素の平均濃度を求めるにあたっての具体的な手順を以下に説明する。
【0043】
(1)はんだ13と接する外部電極2a,2bの上層を構成する金属元素(Ni)と、はんだを構成する金属元素(Sn)とで形成される金属間化合物(Ni3Sn4)の構成元素であるSnのX線強度を、X線マイクロアナライザーにより予め測定しておく。
(2)それから、基板12上に実装された抵抗チップ3の外部電極2a,2bに固着しているはんだ13の一断面について、X線マイクロアナライザーを用いてマッピングデータ(各ピクセルにおけるSn,Ag,Cu,NiのX線強度)をとる。
(3)上記(1)で測定した金属間化合物(Ni3Sn4)の構成元素であるSnのX線強度の値を閾値として、SnのX線強度がこの閾値以上の値であるピクセルを抽出する。すなわち、ここで抽出されたピクセルが、目的とする不定形の分析領域に存在するピクセルであり、ここで抽出されたピクセルから目的とする不定形の分析領域が構成される。
(4)上記(2)で測定した各元素のX線強度をそれぞれピクセルの数で割って平均X線強度を算出する。
(5)上記(4)で算出した平均X線強度を濃度換算定数(検量線)により濃度に換算する。これにより、はんだを構成する各元素の平均濃度(wt%)が得られる。
【0044】
なお、この実施形態1のマッピングデータを用いた定量分析方法においては、上記の(1)〜(3)の工程で、不定形領域(目的とする不定形の分析領域)を特定し、上記の(4),(5)の工程で、抽出したピクセルについて、平均X線強度の算出、濃度換算などを行うことにより、はんだを構成する各元素の平均濃度を精度よく測定することができる。
【0045】
[実施形態2]
この実施形態2では、図6に示すように、誘電体21を両主面側に電極22a,22bが形成され、かつ電極22a,22bに、銅からなるリード線23a,23bがはんだ24により接続された構造を有するPTC素子25において、電極22a,22bとリード線23a,23bの接続(接合)に用いられたはんだ24の組成を、波長分散型X線マイクロアナライザーを用いてマッピング分析を行う場合を例にとって説明する。
【0046】
なお、はんだ24が接合する、PTC素子25の電極22a,22bは、図8(a)に示すように、下地電極であるニッケル層26と、ニッケル層26の表面に銀メッキを施すことにより形成された上層である銀層27を備えた2層構造を有しており、はんだ24は、銅からなるリード線23a,23b及び銀層27と接合することになる。
【0047】
また、この実施形態2では、はんだ24として、
Sn:97.0重量%
Ag: 3.0重量%
を含有するはんだを用いた。
【0048】
まず、被分析試料を構成する物質のX線強度を測定した。
なお、このときのマッピングデータを用いた定量分析方法の条件は、以下の通りである。
(1)分析装置:日本電子製 波長分散型X線マイクロアナライザーJXA−8800R
(2)加速電圧 :15kv
(3)試料吸収電流 :100nA
(4)ピクセル数 :250×250
(5)プローブ径 :16.0μm
(6)分析領域 :4000μm×4000μm
(7)Dwell Time(1つのピクセルにおける取り込み時間):50ms
【0049】
上記条件で得られたマッピングデータのうち、CuのX線強度データのマッピング結果を図7に示す。Cuのマッピング結果が示すように、はんだ接合部においてリード線成分がはんだ接合部に濃度勾配をもって拡散していることがわかる。
【0050】
そして、この実施形態2の場合にも、実施形態1の場合と同様に、多点分析を行っても接合部全体の組成を得ることは不可能である。
また、電極とリード線との接合においては、電極成分とリード線成分の拡散による濃度勾配が著しく、多点分析で接合部全体の組成を得ることはさらに困難となる。
【0051】
そこで、この実施形態2では、接合部位(はんだ接合部)を正確に抽出するため、表3に示す構成部品の元素と抽出部位の元素の組み合わせによる化合物(接合部界面に存在する金属間化合物(Ag3Sn))を構成する元素(Sn)のX線強度を閾値としてはんだ接合部(目的とする分析領域)を構成するピクセルを抽出した。
また、さらに、リード線との界面で形成されるCu6Sn5(表3参照)を構成するCuのX線強度よりもX線強度の高い箇所を、先に得られたおおよその抽出形状から差し引くことにより、さらに正確なはんだ接合部(目標とする分析領域)を得た。
【0052】
【表3】
【0053】
図8(a)は、PTC素子25の電極22a,22bに、リード線23a,23bを、はんだ24により接合したはんだ接合部を模式的に示す断面図であり、図8(b)は、Ag3Snを構成するSnのX線強度340cpsを閾値とし、かつ、Cu6Sn5を構成するCuのX線強度1000cpsを閾値として、抽出した分析領域を示す図である。
【0054】
そして、上記実施形態1の場合と同様にして、この抽出した分析領域におけるSn、Cu、Ag、Niの各元素のX線強度から平均X線強度を計算するとともに、検量線(濃度換算定数)から平均濃度を求めた。
その結果を表4に示す。なお、表4において、接合部組成の合計値が100%になっていないが、これは測定装置の精度によるものである。
【0055】
【表4】
【0056】
表4から明らかなように、上記のマッピングデータを用いた定量分析方法によれば、使用されたはんだ組成と接合後のはんだ組成を正確に評価することが可能になる。また、拡散している、はんだを構成する各元素の濃度をも得ることができる。
すなわち、上記実施形態2より、本発明のマッピングデータを用いた定量分析方法によれば、試料中の偏析部分に含まれる目的元素が微量である場合、マッピング範囲内に目的以外の領域が含まれている場合、さらには、定量値を得たい領域が不定形である場合などにおいても、目的とする不定形な領域内の構成元素の平均濃度を精度よく求めることができることがわかる。
【0057】
なお、本発明は、上記実施形態1及び2に限定されるものではなく、被分析試料を構成する物質の種類、被分析試料が接する他の部材の種類、被分析試料に含有される物質と、他の部材に含有される物質とが存在する共存領域の態様、閾値設定物質の種類、及び閾値の具体的な設定方法、被分析試料及び他の部材を含む領域を複数の区画(ピクセル)に分割する際の区画(ピクセル)の大きさや数などに関し、発明の範囲内において、種々の応用、変形を加えることが可能である。
【0058】
【発明の効果】
上述のように、本発明(請求項1)のマッピングデータを用いた定量分析方法は、被分析試料が、他の部材と接して存在し、その界面に、被分析試料に含有される物質と、他の部材に含有される物質とが存在する共存領域が生じている場合に、被分析試料に含まれる物質であって、共存領域に存在するいずれかの物質を閾値設定物質として選定し、この閾値設定物質の標準試料のX線強度を予め測定しておき、被分析試料及び他の部材を含む領域を複数の区画に分割し、複数の区画のそれぞれについて、閾値設定物質のX線強度を測定し、予め測定しておいた閾値設定物質の標準試料のX線強度から閾値を決定し、複数の区画の中から、閾値に対して所定の大小関係の基準を満たすX線強度を有する区画を抽出し、この抽出した区画からなる領域を被分析試料の存在する分析領域とみなすことにより、目的とする分析領域だけを取り出し、この分析領域について、被分析試料を構成する物質の平均X線強度を算出するようにしているので、試料中の偏析部分に含まれる目的元素が微量である場合、マッピング範囲内に目的以外の領域が含まれている場合、さらには、定量値を得たい領域が不定形である場合などにおいても、目的とする不定形な領域内の構成元素の平均濃度を精度よく求めることができる。
【0059】
被分析試料が他の部材と接して存在している態様としては、被分析試料が他の部材に融着している場合があり、また、被分析試料と他の部材の界面に被分析試料に含有される物質と他の部材に含有される物質との共存領域が生じている態様としては、被分析試料と他の部材の界面に、被分析試料に含有される物質と、他の部材に含有される他の物質とを含有する化合物が生成している場合があり、そのような場合に、請求項2のように、本発明のマッピングデータを用いた定量分析方法を適用することにより、目的とする分析領域内の構成元素の平均濃度を精度よく求めることが可能になる。
【0060】
また、請求項3のマッピングデータを用いた定量分析方法のように、被分析試料がはんだである場合において、閾値設定物質をSn化合物とすることにより、目的とする分析領域が不定形な領域である場合にも、目的とする分析領域を精度よく抽出することが可能になり、目的とする分析領域における目的元素の平均濃度を正確にまた迅速に求めることが可能になる。
【0061】
また、請求項4のマッピングデータを用いた定量分析方法のように、EPMAマッピング分析による方法で得たマッピングデータを用いることにより、分析領域における目的元素の平均濃度を正確にまた迅速に求めることが可能になり有意義である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明のマッピングデータを用いた定量分析方法において目的とする分析領域を抽出する方法を示す図であり、(a)は抽出前の状態、(b)は抽出後の状態を示す図である。
【図2】 本発明の一実施形態(実施形態1)にかかるマッピングデータを用いた定量分析方法による分析の対称となる、はんだ接合部が形成される抵抗チップを示す断面図である。
【図3】 図2の抵抗チップを基板上に実装した状態を示す図である。
【図4】 マッピングデータを用いた定量分析方法により得られたAgのX線強度データのマッピング結果(比較用の従来の方法によるマッピング結果)を示す図である。
【図5】 (a)は、抵抗チップの外部電極を基板上の電極に接合したはんだ接合部を模式的に示す断面図であり、(b)は、Ni3Sn4を構成するSnのX線強度1050cpsを閾値として抽出した分析領域を示す図である。
【図6】 本発明の他の実施形態(実施形態2)にかかるマッピングデータを用いた定量分析方法による分析の対称となる、はんだ接合部が形成されるPTC素子を示す図である。
【図7】 マッピングデータを用いた定量分析方法により得られたCuのX線強度データのマッピング結果(比較用の従来の方法によるマッピング結果)を示す図である。
【図8】 (a)は、PTC素子の電極にリード線を接合したはんだ接合部を模式的に示す断面図であり、(b)は、Ag3Snを構成するSnのX線強度340cpsを閾値とし、かつ、Cu6Sn5を構成するCuのX線強度1000cpsを閾値として、抽出した分析領域を示す図である。
【図9】 EPMAを用いたマッピング分析方法を説明するための図である。
【符号の説明】
1 抵抗素子
2a,2b 外部電極
3 抵抗チップ
4 銀層
5 ニッケル層
11a,11b 電極
12 基板
13 はんだ
21 誘電体
22a,22b 電極
23a,23b リード線
24 はんだ
25 PTC素子
26 ニッケル層
27 銀層
Claims (4)
- 被分析試料を構成する物質のX線強度からなるマッピングデータを用いた定量分析方法において、
前記被分析試料が他の部材と接して存在し、かつ、前記被分析試料と前記他の部材の界面に、前記被分析試料に含有される物質と、前記他の部材に含有される物質とが存在する共存領域が生じている場合に、
前記被分析試料に含まれる物質であって、前記共存領域に存在する物質のうちのいずれかを閾値設定物質として選定し、該閾値設定物質の標準試料のX線強度を予め測定しておき、
前記被分析試料及び前記他の部材を含む領域を複数の区画に分割し、該複数の区画のそれぞれにおける、前記閾値設定物質のX線強度からなるマッピングデータを得て、
予め測定しておいた前記閾値設定物質の標準試料のX線強度から閾値を決定し、前記複数の区画の中から、前記閾値に対して所定の大小関係の基準を満たすX線強度を有する区画を抽出し、
前記抽出した区画からなる領域を前記被分析試料の存在する分析領域とみなし、該分析領域について、前記被分析試料を構成する物質の平均X線強度を算出すること
を特徴とするマッピングデータを用いた定量分析方法。 - 前記被分析試料が、前記他の部材に融着することにより、前記他の部材に接して存在しており、かつ、前記被分析試料と前記他の部材の界面に、前記被分析試料に含有される物質と、前記他の部材に含有される他の物質とを含有する化合物が生成することにより、前記被分析試料に含有される物質と、前記他の部材に含有される他の物質とが共存する領域が生じていることを特徴とする請求項1記載のマッピングデータを用いた定量分析方法。
- 前記被分析試料がはんだであり、閾値設定物質がSn化合物であることを特徴とする請求項1または2記載のマッピングデータを用いた定量分析方法。
- 前記マッピングデータを得る方法が、EPMAマッピング分析による方法であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のマッピングデータを用いた定量分析方法。
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