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JP4740741B2 - 炭素膜を被覆した医療用ガイドワイヤー - Google Patents
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JP4740741B2 - 炭素膜を被覆した医療用ガイドワイヤー - Google Patents

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Description

本発明は、医療用挿通線体(医療用ガイドワイヤー)に関する。
さらに、本発明は、潤滑性が高くて、カテーテル内及び例えば血管、消化管等の管状組織等の生体組織内を安定して円滑に進行可能であり、適度の剛性があって、操作が容易な医療用ガイドワイヤーに関する。
医療用ガイドワイヤーは、例えば治療具等を体内の患部へと案内するための治療用具として、あるいは、管状組織等の生体組織内を挿通して先端部を患部にまで到達させ、先端部で患部の治療を行う治療用具として使用される。
例えば、冠状動脈梗塞を治療するための医療用ガイドワイヤーは、芯線の先端に形成された螺旋線体被装着部とその螺旋体被装着部に装着された螺旋線体とを有している。この螺旋線体被装着部は、通常、テーパ状に形成されており、螺旋線体は、線体すなわち、ワイヤーをコイル状に形成してなるものでガイドワイヤーと称している。
図1に従来のガイドワイヤーの基本構造を示す。
例えば、冠状動脈梗塞の治療に使用されるガイドワイヤーは、装着された部分を先頭にして、人体の所定の部位から血管中に挿入されたカテーテル中に挿入される。このカテーテルは、その先端開口部が人体内の患部近傍に位置するように、人体内に挿入されている。カテーテル内に医療用ガイドワイヤーを繰り込んでいき、カテーテルの先端開口部から、さらにこの医療用ガイドワイヤーの先端は患部にまで到達させる。このとき、医療用ガイドワイヤーの先端は患部に至る一方、医療用ガイドワイヤーの末端は、人体の外に出ている。
次いで、この医療用ガイドワイヤーの末端を治療具に挿通し、この医療用層通線体に沿って治療具をカテーテル内に沿って進行させ、患部に至らしめる。患部に至った治療具を操作する事により、しかるべき治療をその治療具で行う。
この医療用ガイドワイヤーは、人体へのカテーテル挿入部位から患部近傍までを、湾曲したカテーテル中を、カテーテル内面と接触しながら進行することになる。したがって、医療用ガイドワイヤーとカテーテルとの滑りが悪いと、医療用ガイドワイヤーがカテーテル中を円滑に進行することができない。
そこで、従来では、通常、医療用ガイドワイヤーは外周面をポリテトラフルオロエチレン(PTFE)コーティング膜とすることにより、医療用ガイドワイヤーの外周面とカテーテル内面との摩擦抵抗を小さくして、医療用ガイドワイヤーがカテーテル中を円滑に進行するように図られている。
また、医療用ガイドワイヤーは、その直径が大きいと、カテーテル内における空間的余裕が小さくなって、カテーテル中を進行し難くなる。したがって、医療用ガイドワイヤーの直径は一定の大きさ以下にしなければならない。このため、PTFEコーティング被膜を施す場合には、PTFEコーティング被膜の厚みの分だけ、PTFEコーティングを施す医療用ガイドワイヤーの芯線を予め細めに設計し、その芯線上にPTFEコーティング被膜を形成させて、医療用ガイドワイヤーの直径が大きくなり過ぎないようにしている。
一方、医療用ガイドワイヤーの芯線を細くすると、医療用ガイドワイヤーの剛性が小さくなり、腰が弱くなるので、カテーテル内に送り込む際に思い通りに進行させることができなかったり、また、医療用ガイドワイヤーに加えた力がその先端部まで十分に伝わらず、患部治療行為を効果的に行う事ができない等の不都合が生じる。したがって、PTFEコーティング被膜の厚みを可能な限り薄くして芯線の直径を可能な限り太くすることが望ましい。
しかし、PTFEコーティング被膜は、摩耗性が大きく、初期においては厚めに形成させておかざるを得ず、また、その厚みを薄くすることは技術的にも困難である。したがって、PTFEコーティング被膜を施した医療用ガイドワイヤーの芯線の直径は必然的に小さくなり、前記に示した不都合を回避するのに十分な医療用ガイドワイヤーの腰の強さを確保することは困難である。
また、医療用ガイドワイヤーの先端部が、カテーテルの先端開口部からカテーテルの外部に出た後は、医療用ガイドワイヤーの先端部が、血管の内壁面に接触しながら血液中を患部に向かって進行する。したがって、医療用ガイドワイヤーの先端部は、カテーテルの外部に出た後においては、血管の内壁との潤滑性、及び血液との親和性が要求される。
一方、DLC被膜を備えてなる医療用ガイドワイヤーは、DLC被膜の摩耗性がPTFE被膜に比べて小さいこと、DLC被膜の潤滑性がPTFE被膜と同等かそれ以上であること、及び、薄いDLC被膜を形成することが技術的に可能であること等の理由から、DLC被膜の厚みをPTFE被膜よりも薄くすることができるので、その分、芯線体の直径を大きくすることができ、医療用ガイドワイヤーの腰の強さを大きくすることが可能である。
ここで、DLCとは、ダイヤモンド様炭素(Diamond Like Carbon)の略であり、炭素原子を主体として微量の水素原子を含んで構成される物質であり、炭素原子から構成されるダイヤモンドはダイヤモンド構造(SP3)により構成され、同じく炭素原子で構成される物質であるグラファイトはグラファイト構造(SP2)により構成されるのに対し、DLCはSP3とSP2との両方を含んで、また一部水素との結合を含んで構成されるアモルファス構造を有する。
しかしながら、被膜形成されたDLC膜は、血液や血管の内壁面などの人体組織に対しての耐溶着性が十分でないことから医療用機器への適用については研究例が多い。前記したように医療用ガイドワイヤーにおけるDLC被膜には、フッ素を含有することができ、DLC被膜にフッ素を含有させると、カテーテル及び生体に対する潤滑性を更に向上させることができるという利点があるが、一般に、抗血栓性に優れるフッ素を含有するDLCは、部材との密着性が劣るために部材とフッ素を含有するDLC被膜との間にシリコン、シリコンカーバイド、酸化チタン、及び窒化チタンなどからなる中間層を設けDLC被膜の付着向上をはかったり、フッ素を含まないDLC被膜を介してフッ素を含むDLC膜を被覆している。
このようにDLC被膜は薄層で高い硬度と耐摩耗性を有するが、その被覆膜内にSP2に対してSP3結合が多く含まれると、被覆内での凝集力が強いため応力を受けた場合に基材との界面で破壊する、いわゆる、界面破壊により被膜が剥離する傾向がある。
従来、カテーテル用ガイドワイヤー表面をDLC被膜に被覆することは公知(特許文献1)であり、特許文献2では、医療用ワイヤー等の基体を陽極として炭化水素ベースの気体を含む雰囲気中で無線周波数源によるプラズマ利用により基体上にDLC膜を設けることも知られている。
さらに、特許文献3では、芯線体とその表面に形成されたDLC被膜とを有することを特徴とする医療用ガイドワイヤーであり、この医療用ガイドワイヤーは、芯線体の先端より所定の部位までが螺旋線体被装着部であり、その螺旋線体被装着部に螺旋線体が装着されており、前記線芯体は、その先端から所定の部位までの表面に、親水性物質が官能基に結合して存在する親水性被膜を有している。また、前記芯線体と表面に形成されたDLC被膜との間にシリコン被膜が形成されており、DLC被膜は、フッ素を含有し、厚さが0.3〜7μmである医療用ガイドワイヤーである。
;WO99/53988 ;特開2000−64047号公報 ;特開2001−238962公報
従来の単一組成被覆型のガイドワイヤーに関しては、硬さ・弾性及び摺動性の兼ね合いに問題があった。ガイドワイヤーの先端部及び中間部が、SP3成分を多く含んでいると、先端部は硬く、弾性があり、曲率半径の小さい血管部を破壊する危険性が多かった。さらに先端部が硬く、弾性がある点から剥離する可能性も高かった。一方、先端部及び中間部がSP2成分を多く含んでいると、使用時にガイドワイヤー全体の摺動性が悪くなり、ひずみが一部に集中し、ワイヤー全体が目的とするような経路を選択することができず、制御という点で問題が多かった。
また、フッ素を含有するDLC被膜は、フッ素を含有しない該炭素膜の場合と比べて血液や筋肉、血管などの人体組織等に対する耐溶着性の向上することは明らかになっている。そのためDLC被膜の接する基材との間に両者に親和性のある中間層を設けるなど種々の方策が講じられているのが現状である。しかし、用途面から極めて薄い被膜が求められている中で、種々の原材料を用いた多層構造を設けることは、実用的に難しく、かつ、それを達成するには高コストになりやすい。一方、フッ素原子を多く含むDLC被膜は、血液や筋肉、血管などの人体組織等に対する耐溶着性は改善されるものの、フッ素を含有する炭素被膜の凝集力のために基材との接着性において界面破壊を起こして被膜が剥離しやすいばかりかダイヤモンド様炭素膜の硬度が低下するため耐摩耗性に劣るという難点がある。
本発明は、上述するような医療用ガイドワイヤーが有する欠点を解消すること、すなわち、芯線体の先端より所定の部位までの芯線体の表面にシリコン被膜を形成し、その上面にフッ素を含むDLC被膜を形成した医療用挿痛線体よりも潤滑性が高く、カテーテル内及び血管等の管状組織内を円滑に進行可能であり、また、適度の剛性があり、操作が容易な、即ち、摺動特性の優れる医療用ガイドワイヤーを提供することを目的とする。
本発明は、以下の構成を有することで上記課題を解決したものであり、以下の通りのものである。本発明の請求項1に係る医療用ガイドワイヤーは、ダイヤモンド様炭素膜を被覆した医療用ガイドワイヤーであって、前記ダイヤモンド様炭素膜の被覆が、前記医療用ガイドワイヤーの先端から5〜30ミリの範囲であるワイヤー先端部において、上記被膜のSP3/SP2比が、0.01以上0.2以下であり、上記先端から100〜3000ミリの範囲であるワイヤー中間部において、上記被膜のSP3/SP2比が、0.2以上であることを特徴とする。
請求項2に係る医療用ガイドワイヤーは、前記ダイヤモンド様炭素膜の膜厚が、0.02ミクロン以上2ミクロン以下であることを特徴とする。
本発明の医療用ガイドワイヤー ガイドワイヤー摺動特性評価試験機の人工血管の形状 A実験における本発明の医療用ガイドワイヤー摺動特性の比較(有意差検定) 本発明のDLC被覆したガイドワイヤー摺動特性比較 B実験における本発明の医療用ガイドワイヤー摺動特性の比較(有意差検定)
本発明の医療用ガイドワイヤーは、ワイヤー先端部と中間部にダイヤモンド様炭素膜の組成、微細構造、特にSP3/SP2比の異なったDLC被膜を被覆し、ガイドワイヤーの本体部にPTFEを被覆したものであり、芯材と被覆した炭素膜との間にはSP
3/SP2比の小さい領域を有しており、潤滑性が高く、カテーテル内、及び例えば血管消化管等の管状組織等の生体組織内を安定して円滑に進行可能であり、適度の剛性があって、操作が容易な医療用ガイドワイヤーとなっている。
さらに、本発明の医療用ガイドワイヤーは、DLC被膜を被覆し、被膜表面から深さ0.1ミクロン以内のSP3/SP2比が0.01以上10以下であることを特徴とする。
本発明の医療用被覆部材においては、被膜表面からの深さが0.1ミクロンより深い領域においては、SP3/SP2比の低い方が機械的な耐摩耗性や基材との密着性が優れるが、10以下の低濃度であれば、耐摩耗性や基材との密着性に影響せず、基材に対して連続的にSP3/SP2比が漸減してもよい。
また、ガイドワイヤーのDLC被膜表面から膜の深さ0.1ミクロン以内のSP3/SP2比を0.01以上10以下に制御することによって、血液や筋肉、血管などの人体組織はいうに及ばず使用される医薬品に対する耐溶着性を維持しつつ、機械的な特性を抑制できるため好ましい。SP3/SP2比が10以上では、被膜内の圧縮残留応力が増大するために剥離しにくくなり耐溶着性を容易に維持できるが、0.01以下になると、硬度、結晶性などの機械的な特性が低下する。そのため、被膜表面から深さ0.1ミクロン以内のSP3/SP2比が0.01〜10の範囲が適切である。
上記のようにDLC被膜を施した医療用ガイドワイヤーにおける炭素膜と基材との密着性は、膜と芯材の界面から0.1ミクロン以内にSP3/SP2比が、被膜表面より低い領域を有することによって向上することが明らかになった。炭素被膜のとり得る結晶構造としては種々あるが、本発明は、SP3結合(ダイヤモンド結合)とSP2結合(グラファイト結合)を含み、基材との界面付近のSP2結合の割合を高くすることによって、被膜の密着性を向上させるものである。SP3結合(ダイヤモンド結合)は、最も強固な結合であるため、機械的な特性は優れるものの、SP2結合がSP3結合より多い場合は耐摩耗性が低下するものの、グラファイト結合においては六角形の環を形成している炭素原子が連なって層状構造をとり、原子の層間には弱いファンデルワールス力が作用している構造をしているので、応力を分散する効果が発揮されるため、部材との相間密着性が向上するものである。
とりわけ、ガイドワイヤーの先端部xでは、潤滑性が高く、カテーテル及び血管等の管状組織内を円滑に進行するためにSP3/SP2を低くし、0.01以上0.2以下とし、先端部xよりも腰の強い芯線が求められるワイヤー中間部yにはSP3/SP2比を0.2以上の大きいDLC被膜で、芯線の剛性を大きくしている。
しかし、該ダイヤモンド様炭素膜の膜厚が厚くなって、層状構造の破壊、すなわち、凝集破壊が顕著になると界面破壊は起こらなくても被膜の剥離が進む。このためSP3/SP2比を10以下に制御するとともにDLC被膜の膜厚を0.02ミクロン以上2ミクロン以下にすることによって所望の性能がより発揮されるため好ましい。
これら医療用部材へのダイヤモンド様炭素膜の被覆は、物理蒸着法や化学蒸着法によって実現できるが、複雑形状に均一に被覆できることや、被膜厚み方向のSP3/SP2比の調整が容易であるという観点からは平行平板型高周波プラズマ化学蒸着(CVD)法が好ましい。
一般にダイヤモンド様炭素膜は、被覆する部材と共に真空装置内に挿入し、水素などのキャリアガスと炭素源となるメタン、エタン、プロパン、ブタンなどのパラフィン系の他、エチレン、アセチレン、ベンゼンなどを導入したガスをイオン化させることによって、部材表面に形成するものである。
本発明においては、ガイドワイヤー上へのDLC膜の形成法として、CVD法を用いた。装置は、電極に円盤型でチャンバー内に平行に設置されて高周波放電によりプラズマを発生させる平行平板型高周波プラズマCVD装置である。また、チャンバー内部のインピーダンスによって高周波電力が消費される効率が大きく変化するため、装置外部にマッチングボックス(インピーダンス整合器)が設置されており、それを調節する事により効率を上げるよう計っている。原料ガスであるアセチレンガスは、フロート式流量計によって流量の制御が可能となっている。排気系は、ロータリーポンプ及びメカニカルブースターポンプから構成されており、チャンバー内をロータリーポンプ及びメカニカルブースターポンプを用いて1.7 x 10-3 Torr の真空にした。DLC膜の成膜には、原料ガスとしてアセチレンをチャンバー内に流し込み、圧力を 0.1 Torr に調整した。高周波放電によりプラズマを発生させ、電極上に設置されたガイドワイヤーへのDLC膜の堆積を10秒間行った。
以下に実施例に基づき、本発明の実施の態様を説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
<ガイドワイヤー摺動特性評価試験法>
ガイドワイヤーの摺動特性を評価するために摺動実験機を製作し、図2にガイドワイヤー摺動特性評価試験機の人工血管の形状を示す。
この試験機は本研究のために製作されたものであり、主な部位として試験機本体とアクリル環境槽とで構成されている。試験機本体には電動モーターが取り付けられており、シャフトを介することによりアーム部が上下に一定の速さで運動することができる。アーム部には荷重測定検出器としてロードセルが取り付けられており、そこがガイドワイヤーを固定する部位である。次に、アクリル環境槽には人工血管が任意の形状で固定することが可能であり、その固定された人工血管の中にガイドワイヤーを挿入・挿出することで、荷重測定検出器が人工血管壁に対するガイドワイヤーの抵抗荷重を検出する仕組みとなっている。
<評価試験実験手順>
(1) ガイドワイヤーを3本用意し、1本目にはDLC膜を2本目にはF−DLC膜を被覆し、そして3本目には何も処理を加えなかった。
(2) アクリル環境槽に固定する人工血管の形状を図2に示すように2タイプ設定した。
(3) 各々の場合でガイドワイヤーを挿入しきった時点を初期値点とし、0点調整を行うとともにレンジを調整した。
(4) アーム部昇降の速度を10mm/秒に設定し、ガイドワイヤーを抜き取っていった。(アーム部を上昇させた)。
(5) ガイドワイヤーを抜き取っていった際、荷重検出器が読み取ったロード値のピーク値を修道特性データとした。
(6) データのバラツキを考慮して、以上の動作を30回繰り返した。
以上の動作を3種類のガイドワイヤーそれぞれで行った。なお、アクリル環境槽に固定した人工血管の形状が図2の左に示すタイプのものにして行ったガイドワイヤー摺動特性評価実験をA実験、そして、図2の右に示すタイプのものにして行った実験をB実験と呼ぶことにする。
図3に示すのは、A実験におけるガイドワイヤー摺動特性のデータ比較である。グラフは横軸にガイドワイヤーの種類を、縦軸には比率をとっている。比率はA実験において、未処理のガイドワイヤーのロード値を基準値1とし、DLC膜を被覆したガイドワイヤー及びフッ素を含むDLC膜(F−DLC膜)を被覆したガイドワイヤーのロード値を割合として換算して30回の測定値をまとめたものである。この結果からは、それぞれのデータのプロットはほぼ基準値と重なっており、摺動特性の差は認められないことである。
図4に示すのは、本発明のDLC被覆したガイドワイヤー摺動特性比較データである。グラフは横軸に試験回数を、縦軸にB実験において、未処理のガイドワイヤーのロード値を基準値1とした時のDLC膜を被覆したガイドワイヤー及びF−DLC膜を被覆したガイドワイヤーのロード値をそれぞれ割合として換算した比率をとっている。この結果からは、DLC膜を被覆したガイドワイヤー及びF−DLC膜を被覆したガイドワイヤーのプロット群は基準値よりもそれぞれ約30%値が減少したラインにほぼバラツキのない状態でのっていることが判断できる。また、DLC膜を被覆したガイドワイヤーのプロット群とF−DLC膜を被覆したガイドワイヤーのプロット群とを比較すると、若干ではあるがDLC膜を被覆したガイドワイヤーのプロット群の方が縦軸の比率の割合において減少したラインにのっていることが判断できる。平均値(mean)±標準偏差(SD)で表示した形で比較すると、DLC膜を被覆したガイドワイヤーのプロット群は0.60±0.02、それに対してF−DLC膜を被覆したガイドワイヤーのプロット群は0.71±0.01であり、両者は拮抗しているが若干DLC膜の方がF−DLC膜よりもガイドワイヤーの摺動特性向上に繋がっていると考えられる。つまり、DLC膜及びF−DLC膜を被覆することにより、ガイドワイヤーの摺動特性は約30%向上し、DLC膜を被覆したガイドワイヤーのそれは、若干向上率が上回っていると仮定できる。
そこでこの仮説に正当性があるかどうか、有意差検定という統計学的解析を行うことで検証した結果が、図5である。
<実施例2〜4及び比較例1〜4>
本発明による実施例2〜4と比較例1〜4の試料調整条件を表1にまとめて示す。
Figure 0004740741
得られた試料は、3種の試験により評価を行った。
○試験1:血液を3ml滴下して固着させた後、粘着テープで引き剥がし試験を行った。試料に残留している硬化血液付着量を比較した。
○試験2:ダイヤモンド圧子で0〜10Nまで連続的に荷重を増加させながら皮膜上から引っ掻いたときに被膜が剥離するまでの臨界荷重を比較した。
5N以下で剥離:▲、
6〜10Nで剥離:○、
剥離なし(微少欠損):◎
○試験3:リング状(30φ)の炭素鋼(S20C)を0.2m/sで回転させつつ、100gの荷重で試料被膜面を血液中で摺動させ、10分後の摩擦量を摩耗幅で比較した。
5mm以上:X、
3〜5mm:△、
1〜3mm:○、
1mm以下:◎以下
表1に示す各試料について試験1、試験2及び試験3の結果を表2にまとめて示した。
Figure 0004740741
従来、医療用ガイドワイヤーにフッ素を含有したDLC被膜を施すことは、医療用部材の抗血栓性についての特性は向上するものの、部材の使用時の変形で被膜が剥離しやすくなることや、機械的な耐摩耗性が低下するためフッ素を含むDLC被膜を厚くしなければならないという問題があったが、本発明では、ダイヤモンド様炭素被膜の処理を医療用ガイドワイヤーの先端から5〜30ミリの範囲であるワイヤー先端部において、上記被膜のSP3/SP2比が、0.01以上0.2以下であり、上記先端から100〜3000ミリの範囲であるワイヤー中間部において、上記被膜のSP3/SP2比が、0.2以上である領域を有して、摺動特性が約30%向上により潤滑性が高く、カテーテル及び血管や消化管等の管状組織内を円滑に進行し、適度な腰の強さをもつ、操作の容易な医療用ガイドワイヤーが可能となった。その結果、血液や筋肉、血管などの人体組織はおろか使用される医薬品に対する耐溶着性を有し、さらに部材への強固な密着性並びに高い耐摩耗性を併せ持つ薄膜の医療用被覆部材が得られる。

Claims (2)

  1. ダイヤモンド様炭素膜を被覆した医療用ガイドワイヤーであって、
    前記ダイヤモンド様炭素膜の被覆が、前記医療用ガイドワイヤーの先端から5〜30ミリの範囲であるワイヤー先端部において、上記被膜のSP3/SP2比が、0.01以上0.2以下であり、上記先端から100〜3000ミリの範囲であるワイヤー中間部において、上記被膜のSP3/SP2比が、0.2以上であることを特徴とするダイヤモンド様炭素膜を被覆した医療用ガイドワイヤー。
  2. 前記ダイヤモンド様炭素膜の膜厚が、0.02ミクロン以上2ミクロン以下であることを特徴とする請求項1に記載の医療用ガイドワイヤー。
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