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JP4742603B2 - プラスチックレンズの製造方法 - Google Patents
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JP4742603B2 - プラスチックレンズの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、プラスチックレンズ及び製造方法に関し、特に耐光性に優れ、色調変化が抑制されたプラスチックレンズに関する。
近年、プラスチックレンズは、無機ガラスレンズと比較して、軽量で割れにくい上、染色が容易であるなどの特性を有することから、ファッション性が重視される眼鏡レンズなどに広く普及している。このプラスチック眼鏡レンズは、ガラスレンズに比べ、マイナスレンズではコバ厚が、プラスレンズでは中心厚が厚くなるのを免れないという欠点を有している。そのため、屈折率がより高いプラスチックレンズ材料の開発が進められ、数多くの提案がされている。
こうした提案のうち、特に1分子中に2個以上のエピスルフィド基を有する化合物を重合させたプラスチックレンズは、屈折率が1.70以上で、かつアッベ数が30以上であって、無機光学ガラスに匹敵する光学物性を有する樹脂が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、プラスチックレンズにおいては、耐擦傷性を向上させるために、その表面にハードコート膜を形成したり、あるいは反射防止の目的で多層膜を設けたりすることが一般的に行われている。この場合、プラスチックレンズ基材とハードコート膜の屈折率が異なると干渉縞が発生しやすく、眼鏡のファッション性が損なわれることがある。
そこで、干渉縞の発生を防止するために、例えば、Ti、Al、Sn、Ta、Zr、Ce、Sb、W、Feなどの様々な高屈折率の金属酸化物の微粒子をハードコート膜の主成分として含有させることが行われてきた。このうち一般的には二酸化チタンを主成分とする複合酸化物微粒子を用いており、特に二酸化チタンはアナターゼ型結晶構造を有するものであった。
特開平9−110979号公報
しかしながら、二酸化チタンは光活性を有する金属酸化物であり、特に前記アナターゼ型結晶構造は光活性が発現し易い性質を有しており、プラスチック眼鏡レンズ用コーティングとして使用した場合にはコーティング膜異常を来たすことが多い。一方、屈折率が1.70以上のいわゆるエピスルフィド系樹脂は、光を受けて黄変し易い性質があり、長期間の使用において、特に染色レンズなどでは色調変化が問題となっている。
本発明は、このような事情のもとで、アッベ数、透明性、反射防止性などの光学性能が良好であり、干渉縞の発生が低減され、かつ優れた表面硬度、耐候性、耐湿性、耐水性、耐薬品性などを有し、特に耐光性に優れ、色調変化が抑制されたプラスチックレンズ及び製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、優れた性能を有するプラスチックレンズを開発すべく鋭意研究を重ねた結果、特定のモノマーを注型重合して得られたプラスチックレンズ基材の表面に、特定のハードコート膜を設け、さらにその上に、多層無機酸化物膜からなる反射防止膜を設けることにより、その目的を達成しうることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
本発明のプラスチックレンズの製造方法は、ビス(2,3−エピチオプロピル)ジスルフィドを主成分とするモノマーを注型重合して得られたプラスチックレンズ基材の表面に、
ルチル型の結晶構造を有する二酸化チタンと二酸化スズからなる核微粒子と、該核微粒子の周囲に二酸化ジルコニウムと酸化ケイ素との混合微粒子からなる被覆層と、から構成される複合酸化物微粒子、及び有機ケイ素化合物を主成分として含有するハードコート膜形成用塗布液を塗布し、硬化させてハードコート膜を形成するハードコート膜形成工程と、前記ハードコート膜上に、少なくとも1層以上のSiOからなる層を含む多層無機酸化物膜を形成する反射防止膜形成工程と、を有し、前記反射防止膜形成工程では、真空蒸着法により成膜を行い、成膜時の真空度を5.0×10−5mbar以上4.0×10−6mbar以下とすることを特徴とする。
ルチル型結晶構造は、光を受けて極薄い青色に発色するフォトクロミック作用を有していることにより、エピスルフィド基を有する化合物が光を受けて黄変する性質を、補色の関係から無彩色へと補正することができ、プラスチックレンズが黄変する色調変化を防止することができる。さらに、ハードコート膜上に多層無機酸化物からなる反射防止膜が形成されることにより、反射防止膜の酸素遮断効果によりハードコート膜が発色するフォトクロミック作用を持続させることができる。
本発明によれば、反射防止膜が少なくとも1層のSiO からなる層を含む多層無機酸化物膜であることにより、反射防止膜が酸素遮断効果を有し、反射防止膜の下層に形成された、ハードコート膜が光を受けて極薄い青色に発色するフォトクロミック作用を持続させることができる。一般に反射防止膜を形成する金属酸化物のうちSiO は、成膜時の真空度により膜密度をコントロールすることが可能であるが、TiO やZrO 等では膜密度を向上させることは容易ではなく、反射防止膜全体としての膜密度はSiO 層に依存する。よって少なくとも1層のSiO をからなる反射防止膜が成膜されることにより、
酸素遮断効果が発現され、ハードコート膜が極薄い青色に発色する性質を持続させること
が可能となる。
本発明によれば、アッベ数、透明性、反射防止性などの光学性能が良好であり、干渉縞の発生が低減され、かつ優れた表面硬度、耐候性、耐湿性、耐水性、耐薬品性などを有し、特に耐光性に優れ色調変化が抑制されたプラスチックレンズを得ることができる。
また、本発明の製造方法によれば、反射防止膜を形成する真空蒸着の際の真空度を、5.0×10−5mbar以上の高真空条件で成膜することにより、良好な酸素遮断効果を有する反射防止膜が得られる。真空度が5.0×10−5mbar未満の低真空環境では、蒸着物質の平均自由工程が小さくなり、これによりレンズ表面における膜密度が低下することで良好な酸素遮断効果が得られない。すなわちハードコート膜のフォトクロミック作用が持続できず、色調変化を抑制することができない。また、上記の方法で得られるSiOからなる層の膜厚は、10nm〜300nmが好ましい。10nmを下回ると、十分な酸素遮断効果が得られず、300nmを超えると十分な反射防止特性が得られないと共に、薄膜自体の内部応力が高くなり、その結果、耐熱性が低下する。

本発明のプラスチックレンズのレンズ基材は、1分子中に2個以上のエピスルフィド基を有する化合物を主成分とするモノマーを注型重合して得られる。
ここで、1分子中に2個以上のエピスルフィド基を有する化合物としては、例えば下記の一般式(I)で表される化合物を挙げることができる。
Figure 0004742603
(式中、mは0〜6の整数、nは0〜4の整数である。)
この中でm=0、n=1で表されるビス(2,3−エピチオプロピル)ジスルフィドが好適に用いることができる。この一般式(I)で表される化合物は、公知の方法(特許文献1参照)により、容易に製造することができる。
また、上記一般式(I)で表される化合物の内の1種以上と、共重合可能なモノマーの1種以上を混合して用いることができる。また、これらのモノマーに、所望により、硬化重合触媒、重合促進剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などを添加することができる。
共重合可能なモノマーとしては、例えば他のエピスルフィド化合物、エポキシ化合物、多価カルボン酸、多価カルボン酸無水物、メルカプトカルボン酸、ポリメルカプタン、メルカプトアルコール、ポリフェノール、アミン類、アミド類などのエピチオ基と反応可能な官能基2個以上を有する化合物、あるいは不飽和基を有するエポキシ化合物、不飽和基を有するエピスルフィド化合物、不飽和基を有するカルボン酸やその誘導体などのエピスルフィド基と反応可能な官能基1個以上と他の単独重合可能な官能基1個以上を有する化合物、グリシジルエステル、グリシジルチオエステル、グリシジルエーテル、グリシジルチオエーテルなどのエピスルフィド基と反応可能で、かつ単独重合可能な官能基1個を有する化合物などを挙げることができる。
また、硬化重合触媒としては、例えばアミン類、ホスフィン類、鉱酸類、ルイス酸類、有機酸類、ケイ酸類、四フッ化ホウ酸などが挙げられる。重合促進剤としては、例えば有機過酸化物やアゾ系化合物、公知の光重合触媒などのラジカル重合開始剤などが挙げられる。
そして、こうしたモノマーを、ガラスや金属製の成形型に注入し、重合硬化させることにより、プラスチックレンズ基材を製造する。
重合硬化の重合温度は、通常−10〜160℃、好ましくは−10〜140℃の範囲で行われる。また、重合時間は、重合温度などにより左右され一概に定めることはできないが、一般的には0.1〜100時間程度、好ましくは1〜48時間程度である。さらに、重合硬化終了後、プラスチックレンズ基材の歪みを除くために、50〜150℃の範囲の温度で、10分ないし5時間程度アニール処理するのが好ましい。
このように重合硬化されて得られたプラスチックレンズ基材は、屈折率(nd)が1.65以上で、かつアッベ数33以上のプラスチックレンズ基材が得られる。
こうして得られたプラスチックレンズ基材の表面に、ハードコート膜および反射防止膜が順次形成されて、本発明のプラスチックレンズが完成する。
先ず、プラスチックレンズ基材の表面に形成されるハードコート膜について説明する。
ハードコート膜は、ルチル型の結晶構造を有する二酸化チタンを主成分とする複合酸化物微粒子(以後、イ成分と表記する)、および有機ケイ素化合物を主成分として含有する化合物(以後、ロ成分と表記する)を用いる。
イ成分におけるルチル型の結晶構造は、光活性がアナターゼ型結晶構造に比べて著しく少ない為、耐光性に優れたハードコート膜を形成することができる。また、ルチル型結晶構造は、光を受けて一時的に極薄い青色に発色する性質、すなわちフォトクロミック作用を有している。このフォトクロミック作用は光による発色と酸素授受による退色との可逆反応であるが、特にハードコート膜の上層に反射防止層を配した場合には、反射防止層の酸素遮断効果により発色作用のみが発現して、極薄い青色を呈する特性を持続させることができる。この特性は、前記エピスルフィド基を有する化合物が光を受けて黄変する性質を、補色の関係から無彩色へと補正することにつながり、光学物品に用いた際の実使用時において、黄変による色調変化を防止することができる。
イ成分としては、「酸化チタンに酸化スズをドープした核微粒子」と、その周囲に被覆された「酸化ジルコニウムと酸化ケイ素との混合微粒子」とからなるものを好ましく挙げることができる。なお、この「酸化ジルコニウムと酸化ケイ素との混合微粒子」は、酸化ジルコニウム微粒子と酸化ケイ素微粒子との混合物以外に、酸化ジルコニウムを核にし、これに酸化ケイ素が被覆されているものも包含する。
また、イ成分を構成する核微粒子は、酸化チタンに酸化スズをドープしたものである。なお、ドープとは、酸化チタンに酸化スズを添加することを言う。この添加された酸化スズは、酸化チタンと物理的に混合されている状態でもよく、また、原子置換などの化学的反応によって、酸化スズが酸化チタン分子鎖内に入り込んだ状態でもよい。こうした酸化チタンに酸化スズをドープした核微粒子を用いることにより、ルチル型の結晶構造が得られ、ハードコート膜の耐候性(非着色性)や、耐水性などの化学的性質が向上する。
また、イ成分を構成する他の成分は、上記核微粒子の周囲に被覆された、酸化ジルコニウムと酸化ケイ素との混合微粒子である。この核微粒子の周囲に被覆された混合微粒子を構成する成分として、酸化ジルコニウムを用いることにより、得られるハードコート膜の耐候性(非着色性)や、耐水性などの化学的性質が、さらに向上する。酸化ジルコニウムと共に酸化ケイ素を用いた理由は、酸化ジルコニウムのみであると、この酸化物複合体微粒子を、後述するロ成分の有機ケイ素化合物と混合した際に、結合して凝集しやすく、得られるハードコート膜にくもりが発生しやすいのに対し、酸化ケイ素を用いることにより、このような凝集の問題が防止され、ハードコート膜形成用塗布液の分散均一性が確保されるからである。また酸化ケイ素はロ成分である有機ケイ素化合物を主成分として含有する化合物との結合力を高める働きがあり、ハードコートの耐候性、耐擦傷性を向上させることができる。
また、イ成分は、前述のように、核微粒子とその周囲に被覆された混合微粒子とからなるものであるが、核微粒子中のチタンおよびスズをそれぞれTiO2およびSnO2に換算した時、TiO2/SnO2(重量比)が1/9.9〜14/1の範囲にあることが好ましい。このようなTiO2/SnO2の範囲にあれば、核微粒子は屈折率が高く、かつ結晶性の高いルチル型構造をとる固溶体酸化物となる。これに対してTiO2/SnO2(重量比)が1/9.9未満の場合には十分な屈折率が得られず、TiO2/SnO2(重量比)が14/1を超える場合には結晶性の高いルチル型構造をとる固溶体酸化物が容易に得られず、ルチル型とアナターゼ型との混合結晶体となることがある。また核微粒子は酸化チタンおよび酸化スズと共に、酸化ケイ素および酸化ジルコニウムを含んでいても良い。
一方、被覆層中のケイ素およびジルコニウムをそれぞれSiO2およびZrO2に換算した時、SiO2/ZrO2(重量比)が50/50〜99/1の範囲にあることが好ましい。これに対してSiO2/ZrO2(重量比)が50/50未満の場合には安定性および耐候性が得られず、SiO2/ZrO2(重量比)が99/1を超える場合には安定性および耐水性が得られないことがある。このような核微粒子および被覆層を、核微粒子/被覆層の重量比で100/0.5〜100/100の範囲で複合化させ使用することが好ましい。
また、イ成分の平均粒子径は1〜200nmの範囲が好ましい。平均粒子径が1nm未満では微粒子が凝集しやすく、また得られる被膜は耐擦傷性に劣り、しかも屈折率を高くできない。逆に200nmを超えると透明なハードコート膜が得られにくい。よってこの平均粒子径は1〜100nmの範囲がより好ましく、特に1〜20nmの範囲が好適である。
また、イ成分は、その分散状態を安定に維持するために、あるいは耐水性を向上するために、その表面を各種有機酸、アルカリ、有機ケイ素化合物、酸化ケイ素などで処理してもよい。
有機酸としては、クエン酸や酒石酸などが挙げられる。アルカリとしては、ナトリウムやカリウムなどのアルカリ金属の水酸化物またはその塩の水溶液、あるいはアンモニア、有機アミンなどが挙げられる。
また、有機ケイ素化合物としては、例えばγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランやγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤、メチルトリクロロシランやテトラメトキシシランなどの有機シランなどが挙げられる。
こうしたルチル型の結晶構造を有する複合酸化物微粒子は、粉砕法、気相法、イオン交換法、加水分解法などの公知の方法により、製造することができる。
一方、ロ成分としては、例えば下記の一般式(II)で表される化合物を挙げることができる。
(R1)a(R2)bSi(OR3)4-(a+b)…(II)
(ここで、R1、R2は、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アリール、アルケニル、またはエポキシ基、(メタ)アクリルオキシ基、メルカプト基、もしくはシアノ基を有する有機基でSi−C結合によりケイ素と結合されるものであり、R3は、炭素数1〜6のアルキル基、アルコキシアルキル基またはアシル基であり、aおよびbは0,1または2であり、a+bが1または2である。)
上記の一般式(II)で表される有機ケイ素化合物の例としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリプロポキシシラン、3,3,3−トリフロロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(β−グリシドキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−シアノエチルトリエトキシシラン等のトリアルコキシまたはトリアシルオキシシラン類、およびジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフェニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフェニルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン等のジアルコキシシランまたはジアシルオキシシラン類が挙げられる。
これらの有機ケイ素化合物は、単独または2種以上組み合わせることも可能である。さらに、単独では用いられないが、有機ケイ素化合物と併用できるものとして、各種のテトラアルコキシシラン類がある。テトラアルコキシシラン類の例としては、メチルシリケート、エチルシリケート、n−プロピルシリケート、イソプロピルシリケート、n−ブチルシリケート、sec−ブチルシリケートおよびt−ブチルシリケート等が挙げられる。
また、加水分解物は、一般式(II)の有機ケイ素化合物やテトラアルコキシシランを、塩酸や硫酸などの無機酸、酢酸などの有機酸の存在下において、部分または完全加水分解することにより得られる。この際、加水分解を均一に行うために、有機溶媒を用いてもよい。
こうした、ロ成分としての有機ケイ素化合物は、前記一般式(II)で表される化合物を1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、これらの化合物の内の1種以上の加水分解物を用いてもよく、あるいは一般式(II)で表される化合物1種以上とその加水分解物1種以上とを組み合わせて用いてもよい。
以上に説明したイ成分とロ成分の含有割合は、使用するプラスチックレンズ基材の種類や、形成されるハードコート膜の所定の屈折率などに応じて適宜選定されるが、一般的には、ロ成分100重量部に対して、イ成分が10〜500重量部の範囲にあるのが好ましい。イ成分の量が10重量部未満では、形成されるハードコート膜の屈折率が低くなるおそれがあるし、500重量部を超えると、ハードコート膜の透明性が低下する傾向がみられる。ハードコート膜の屈折率および透明性のバランスなどの面から、イ成分のより好ましい含有量は20〜100重量部の範囲である。
また、ハードコート膜の形成に用いるイ成分、およびロ成分には、本発明の目的が損なわれない範囲で、種々の添加成分を含有することができる。添加成分としては、例えばハードコート膜形成時の硬化反応を促進するための硬化剤、プラスチックレンズ基材との屈折率を合わせるための微粒子状無機物、ハードコート膜形成用塗布液を基材上に塗布する際の濡れ性やハードコート膜の平滑性を向上させるための界面活性剤(表面平滑剤)、染色性や可とう性などを向上させるためのエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂などの樹脂類、さらには紫外線吸収剤、酸化防止剤などを、所望により含有させることができる。
硬化剤の例としては、アリルアミン、エチルアミンなどのアミン類、ルイス酸やルイス塩基などの各種酸や塩基、具体的には有機カルボン酸、クロム酸、次亜塩素酸、ホウ酸、過塩素酸、臭素酸、亜セレン酸、アルミン酸、炭酸などの酸およびその塩、さらにはアルミニウム、ジルコニウム、チタニウム、マグネシウムなどの金属アルコキシド、アルミニウムアセチルアセトナートなどの金属キレート化合物などが挙げられる。
また、粒子状無機物の例としては、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化タングステン、酸化スズと酸化タングステンの複合体微粒子、酸化スズと酸化ジルコニウムと酸化タングステンの複合体微粒子などが挙げられる。
こうしたハードコート膜は、厚さが1〜5μmの範囲にあり、かつ屈折率が基材の屈折率に近似したものが好適である。
次に、ハードコート膜の表面に形成される反射防止膜について説明する。
反射防止膜は、多層無機酸化物からなる膜であって、特に制限はないが、例えばSi、Ti、Zr、Al、Ta、Nb、Yのそれぞれから成る酸化物から選ばれる少なくとも1種以上からなる多層構造の反射防止層が好ましい。このうち反射率、透明性、耐久性、生産性、入手のし易さなどの点からSi、Zr、Ti、Ta、Nbのそれぞれから成る酸化物を真空蒸着により成膜した多層膜が好適である。あるいは後述する表面強化層とその上に設けられる多層構造の反射防止層との組合わせからなるものが挙げられる。この内、後者の構成の反射防止膜は、特に表面強化や反射防止エリアの拡大などが達成されることから、好適である。
多層構造の反射防止層としては、例えば以下に示す低屈折率層と高屈折率層とを交互に積層した多層構造のものが好適である。
すなわち、プラスチックレンズ基材に形成されたハードコート膜、あるいは表面強化層側から順に、酸化タンタル、酸化ジルコニウム、酸化イットリアムの中から選ばれる少なくとも1種からなる光学膜厚0.09λ〜0.14λの層と、酸化ケイ素からなる光学膜厚0.04λ〜0.07λの層とからなる低屈折率のコンポジット層、酸化タンタル、酸化ジルコニウムおよび酸化イットリアムの中から選ばれる少なくとも1種からなる光学膜厚0.24λ〜0.28λの高屈折率層、および酸化ケイ素からなる光学膜厚0.24λ〜0.28λの低屈折率層から構成された多層構造が好ましい。
また、反射防止層は前述のようにルチル型酸化チタンゾルへの酸素供給を遮断し、発色状態を継続させる必要があるため、成膜時の真空度をコントロールし、成膜密度を制御する必要がある。したがって、成膜時の真空度は5.0×10-5mbar以上、好ましくは2.0×10-5mbar以上、より好ましくは9.0×10-6mbar以上の高真空条件とする必要がある。なお、実際の真空蒸着装置において真空度は4.0×10-6mbar程度が限界であると考えられるため、可能な範囲内で、できるだけ高い真空度で成膜することが好ましい。
また、表面強化層として、ハードコート膜と多層構造の反射防止層との間に反射防止膜の一部として形成することができる。表面強化層が形成されることにより、耐擦傷性、耐湿性、耐水性などがより向上し、かつ反射防止エリアが拡大される。この表面硬化層の構成は、ハードコート膜側から、少なくとも酸化ケイ素(SiO2、SiO、またはこれらの混合物)からなる光学膜厚0.25λ以下の第1層、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化セリウムおよび酸化イットリウム(ZrO2、Ta25、Al23、TiO2、TiO、Ti25、CeO2、およびY23)の中から選ばれる少なくとも1種からなる光学膜厚0.25λ以下の第2層、酸化ケイ素(SiO2、SiO、またはこれらの混合物)からなる光学膜厚0.25λ以上の第3層から構成されたものを好ましく挙げることができる。
次に、本発明のプラスチックレンズの製造方法について説明する。
プラスチックレンズの製造方法は、先ず、1分子中に2個以上のエピチオ基を有する化合物を主成分とするモノマーを注型重合して、プラスチックレンズ基材を作製する。そして、重合されたプラスチックレンズ基材の表面に、ハードコート膜形成用の塗布液を塗布し、硬化させてハードコート膜を形成するハードコート膜形成工程と、形成されたハードコート膜上に反射防止膜を形成する反射防止膜形成工程とが順次施されて完成する。
ハードコート膜形成工程の前に、ハードコート膜との密着性の向上や清浄化を目的として、重合されたプラスチックレンズ基材を、所望により前処理することができる。前処理としては、例えば酸やアルカリ、有機溶剤などによる化学的処理、プラズマや紫外線などによる物理的処理、各種洗浄剤を用いる洗浄処理、さらには各種樹脂を用いるプライマー処理などが挙げられる。
ハードコート膜形成工程においては、先ず、ハードコート膜形成用塗布液を調製する。このハードコート膜形成用塗布液は、所定の有機溶剤中に、ルチル型の結晶構造を有する二酸化チタンを主成分とする複合酸化物微粒子(イ成分)と、前記一般式(II)で表される有機ケイ素化合物(ロ成分)、およびその加水分解物とを所定の割合で添加し、さらに必要に応じて各種添加成分を加えることにより、調製する。
そして、このハードコート膜形成用塗布液を、表面処理されたプラスチックレンズ基材の表面に、硬化後の厚さが所定の値になるように塗布する。塗布法としては、例えばディッピング法、スピンコート法、スプレー法などを用いることができるが、面精度などから、ディッピング法およびスピンコート法が好適である。
そして、ハードコート膜形成用塗布液が塗布されたプラスチックレンズ基材を、熱風乾燥または活性エネルギー線照射などにより、硬化させる。熱風乾燥による硬化の場合は、50〜200℃の熱風中で行うのが好ましい。特に70〜130℃の熱風中で行うのがより好ましい。また、活性エネルギー線照射の場合には、活性エネルギー線として遠赤外線などを用いることができる。活性エネルギー線照射を用いると熱による損傷を低く抑えることができる。
このようにして、プラスチックレンズ基材の表面にハードコート膜が形成される。
次に、ハードコート膜形成工程においてハードコート膜が形成されたプラスチックレンズ基材は、反射防止膜形成工程に移行する。
反射防止膜形成工程においては、ハードコート膜形成工程で形成されたハードコート膜上に、無機酸化物膜からなる多層構造の反射防止層、好ましくは表面強化層と多層構造の反射防止層とを蒸着法により順次形成させることにより、反射防止膜が形成される。
形成されたハードコート膜上に表面強化層と多層構造の反射防止層を設ける場合には、例えば、ハードコート膜上に順に、少なくとも酸化ケイ素からなる光学膜厚0.25λ以下の第1層、酸化ジルコニウム、酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化セリウムおよび酸化イットリウムの中から選ばれる少なくとも1種からなる光学膜厚0.25λ以下の第2層、酸化ケイ素からなる光学膜厚0.25λ以上の第3層からなる表面強化層を、蒸着法などにより形成する。そして、形成された表面強化層上に、前述した多層構造の反射防止層を、蒸着法などにより順次形成する。なお、蒸着法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法などの物理蒸着法(PVD法)、あるいは化学蒸着法(CVD法)などを採用することができる。
以下、本実施形態に基づく実施例、および比較例を説明する。
(実施例1)
(1)プラスチックレンズ基材の作製
1分子中に2個以上のエピスルフィド基を有する化合物としてビス(2,3−エピチオプロピル)ジスルフィド約500gを準備し、それを−15℃に冷却したのち、ポリテトラフルオロエチレン(以後、PTFEと表記する)からなる0.5μmメンブランカプセルカートリッジフィルター(アドバンテック社製、型番:CCF−050−C1B)を取り付けた加圧タンクに投入し、窒素圧約2.5kgf/cm2程度の圧力で加圧、ろ過を行った。
この加圧、ろ過を行ったビス(2,3−エピチオプロピル)ジスルフィド90.0gに、4,8or4,7or5,7−ジメルカプトメチル−1,11−ジメルカプト−3,6,9−トリチアウンデカン10.0g、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン0.02g、N,N−ジシクロヘキシルメチルアミン0.10g、2(2′−ヒドロキシ−5′−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール0.25gを加えて、室温環境下で原料混合物を調製した。
そして、調製した原料混合物を、中心厚1.2mmに設定したプラスチックレンズ用ガラスモールド中に注入し、大気重合炉中で30℃から120℃まで24時間かけて昇温を行い、重合硬化させた。その後ガラスモールドよりプラスチックレンズを離型し、130℃で2時間加熱してアニール処理を行い、プラスチックレンズ基材を得た。得られたプラスチックレンズ基材は、屈折率(nd)=1.74、アッベ数33であった。
(2)ハードコート膜の形成
先ず、ハードコート膜形成用塗布液を調製する。ステンレス製容器内にロ成分としてのγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1045重量部と、ロ成分としてのγ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン200重量部を加え、それを撹拌しながら0.01モル/リットル塩酸299重量部を添加して、一昼夜撹拌を続けることでシラン加水分解物を得た。
そして、別の容器内にイ成分としての酸化チタン、酸化スズ、酸化ケイ素を主体とする複合微粒子ゾル(メタノール分散、全固形分20重量%、触媒化成工業(株)製、オプトレイク1120Z 8RU―25・A17)4000重量部と、イソプロパノール830重量部を加え撹拌混合し、さらに表面平滑剤としてのシリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、L−7001)4重量部と、硬化剤としてのアルミニウムアセチルアセトネート100重量部とを加えて一昼夜撹拌を続けた。そして、一昼夜撹拌の後、さきに調製したシラン加水分解物と合わせ、さらに一昼夜撹拌した。その後3μmのフィルターでろ過を行い、ハードコート膜形成用塗布液Aを得た。
次に、上記(1)で得られたプラスチックレンズ基材にハードコート膜を形成した。
ハードコート膜の形成は、先ず、プラスチックレンズ基材にアルカリ処理を行った。アルカリ処理は、50℃に保たれた2.0規定水酸化カリウム水溶液に5分間浸漬し、次いで25℃に保たれた0.5規定硫酸に1分間浸漬して中和を行った。そして、アルカリ処理の後、純水洗浄、および乾燥、放冷を行った。その後、調製したハードコート膜形成用塗布液Aに20秒間浸漬した後、20cm/分の引き上げ速度で液中から引き上げ、さらに120℃に設定したオーブン内で2時間加熱してハードコート膜を形成し、プラスチックレンズを得た。
形成されたハードコート膜は、酸化チタン、酸化スズ、および酸化ケイ素からなるルチル型結晶構造を有する複合酸化物微粒子(イ成分)と、有機ケイ素化合物(ロ成分)とを含有している。
(3)反射防止膜の形成
上記(2)で得られたハードコート膜を有するプラスチックレンズに反射防止膜を形成した。反射防止膜の形成は、先ず、ハードコート膜が形成されたプラスチックレンズを蒸着装置に投入し、排気しながら85℃に加熱し、イオン銃処理(キャリアガス:酸素、電圧:400eV、処理時間:30秒)を行った。そして、真空度5.0×10-5mbarまで排気を続けた後、電子ビーム加熱法にて蒸着原料を蒸着させ、ハードコート膜側より、SiO2(30nm)/TiO2(21nm)/SiO2(34nm)/TiO2(53nm)/SiO2(20nm)/TiO2(35nm)/SiO2(94nm)の7層で構成された反射防止膜を形成した。これにより、ハードコート膜と反射防止膜が設けられたプラスチックレンズを作製した。
(実施例2)
(1)プラスチックレンズ基材の作製
実施例1と同様の操作により屈折率(nd)=1.74、アッベ数33のプラスチックレンズ基材を得た。
(2)プライマー膜およびハードコート膜の形成
先ず、プライマー膜形成用塗布液を調製する。ステンレス製容器内にメチルアルコール3700重量部、および水250重量部、プロピレングリコールモノメチルエーテル1000重量部を加え、十分に攪拌したのち、酸化チタン、酸化スズ、酸化ケイ素を主体とする複合微粒子ゾル(メタノール分散、全固形分20重量%、触媒化成工業(株)製、オプトレイク1120Z 8RU―25・A17)2800重量部を加え撹拌混合し、さらにポリエステル樹脂2200重量部を加えて攪拌混合した後、シリコーン系界面活性剤(日本ユニカー(株)製、L−7604)2重量部を加えて一昼夜撹拌を続けた後、3μmのフィルターでろ過を行い、プライマー膜形成用塗布液Bを得た。
次に、ステンレス製容器内にブチルセロソルブ1300重量部、およびγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン800重量部を投入し攪拌・混合した後、撹拌しながら0.01モル/リットル塩酸220重量部を添加して、その後一昼夜撹拌を続け、シラン加水分解物を得た。
そして、このシラン加水分解物中にイ成分としての酸化チタン、酸化スズ、酸化ケイ素を主体とする複合微粒子ゾル(メタノール分散、全固形分20重量%、触媒化成工業(株)製、オプトレイク1120Z 8RU―25・A17)7000重量部を加えて攪拌、混合し、エポキシ化合物(ナガセ化成工業(株)製、EX−313)500重量部、さらに表面平滑剤としてのシリコーン系界面活性剤(本ユニカー(株)製、L−7001)30重量部、硬化剤としての鉄(III族)アセチルアセトネート20重量部とを加えて一昼夜撹拌した。その後3μmのフィルターでろ過を行いハードコート膜形成用塗布液Cを得た。
次に、上記(1)で得られたプラスチックレンズ基材にプライマー膜およびハードコート膜を形成した。
プライマー膜およびハードコート膜の形成は、先ずプラスチックレンズ基材にアルカリ処理を行った。アルカリ処理は、50℃に保たれた2.0規定水酸化カリウム水溶液に5分間浸漬し、ついで25℃に保たれた0.5規定硫酸に1分間浸漬して中和を行った。そして、純水洗浄及び乾燥、放冷を行った。そして、前記プライマー膜形成用塗布液Bに20秒間浸漬した後、30cm/分の引き上げ速度で液中から引き上げて、80℃で30分間焼成した。次いで前記ハードコート膜形成用塗布液Cに20秒間浸漬した後、30cm/分の引き上げ速度で液中から引き上げて80℃で30分焼成した。そして、120℃に設定したオーブン内で2時間加熱してプライマー膜およびハードコート膜を形成し、プラスチックレンズを得た。
形成されたハードコート膜は、酸化チタン、酸化スズ、および酸化ケイ素からなるルチル型結晶構造を有する複合酸化物微粒子(イ成分)と、有機ケイ素化合物(ロ成分)とを含有している。
(3)反射防止膜の形成
上記(2)で得られたハードコート膜を有するプラスチックレンズに反射防止膜を形成した。反射防止膜の形成は、実施例1と全て同じ条件、及び手順で行った。
これにより、ハードコート膜と反射防止膜が設けられたプラスチックレンズを作製した。
(実施例3)
(1)プラスチックレンズ基材の作製
実施例1と同様の操作により、屈折率(nd)=1.74、アッベ数33のプラスチックレンズ基材を得た。
(2)プライマー膜およびハードコート膜の形成
実施例2と同様の操作により、プラスチックレンズ基材にプライマー膜およびハードコート膜を形成した。
(3)反射防止膜の形成
上記(2)で得られたハードコート膜を有するプラスチックレンズに、実施例1と同じ層構成の反射防止膜を形成した。反射防止膜の形成は、真空度2.0×10-5mbarまで排気を続けたこと以外、実施例1と同じ条件、及び手順で行った。
(実施例4)
真空度9.0×10-6mbarまで排気を続けたこと以外、実施例3と同じ条件、及び手順で行った。
(実施例5)
真空度4.0×10-6mbarまで排気を続けたこと以外、実施例3と同じ条件、及び手順で行った。
(実施例6)
SiO2(30nm)の単層で構成された反射防止膜を形成したこと以外、実施例1と同じ条件、及び手順で行った。
(比較例1)
実施例1において用いたハードコート膜形成用塗布液Aにおけるイ成分としての酸化チタン、酸化スズ、および酸化ケイ素を主体とする複合微粒子ゾルに替えて、酸化チタン、酸化ジルコニウム、および酸化ケイ素を主体とするアナターゼ型結晶構造の複合微粒子ゾル(メタノール分散、全固形分20重量%、触媒化成工業(株)製、オプトレイク1120Z U―25・A8)を用いてハードコート膜形成用塗布液Dを調製した。複合微粒子ゾル以外の化合物、及び調製条件、調製手順は、実施例1と全て同じに行った。
そして、ハードコート膜形成用塗布液Aの代わりに、ハードコート膜形成用塗布液Dを用いた以外、実施例1と全て同じ条件、および手順で、ハードコート膜および反射防止膜が設けられたプラスチックレンズを作製した。
(比較例2)
実施例1において、反射防止膜形成時の蒸着装置内の真空度を1.0×10-4mbarとした以外は、実施例1と全て同じ条件、及び手順で、ハードコート膜および反射防止膜が設けられたプラスチックレンズを作製した。
(比較例3)
実施例2において、ハードコート膜形成用塗布液Cに替えて、比較例1において調整したハードコート膜形成用塗布液Dを用いてハードコート膜を形成した以外は、実施例2と全て同じ条件、及び手順で、プライマー膜、ハードコート膜、および反射防止膜が設けられたプラスチックレンズを作製した。
以上の各実施例及び比較例で得られたプラスチックレンズを、以下に示す評価方法で評価した。その結果を表1に示す。評価項目は、外観、屈折率、耐擦傷性、密着性、耐湿性、耐温水性、耐光性、耐アルカリ性の8項目で評価した。以下、各評価項目についての評価方法を説明する。
(1)外観
(1−1)干渉縞;3波長系の蛍光灯にプラスチックレンズをかざし、目視でレンズ表面の干渉縞の発生状態を次の○、×で評価した。
○;干渉縞がほとんどないもの。
×;干渉縞が明確に判るもの。
(1−2)クラック;ハードコート膜や反射防止膜を施した後に、クラックの発生状態を次の○、×で評価した。
○;クラックの発生のなかったもの。
×;クラックが発生したもの。
(1−3)透明性;暗室の蛍光灯下で、目視により透明具合を次の○、×で評価した。
○;透明性の良好なもの。
×;透明性が良好でないもの。
(2)屈折率;ハードコート膜の分光反射率を分光光度計で測定し、得られた値から屈折率を計算した。計算により得られた屈折率(nd)の値により、次の○、×で評価した。
○;屈折率が1.67以上のもの。
×;屈折率が1.67未満もの。
(3)耐擦傷性試験;スチールウール#0000を用いて荷重1kgでプラスチックレンズ表面の3〜4cmの距離を10往復擦ったのち、目視検査により、プラスチックレンズ表面に付いた傷の状態を次の5段階に分けて評価した。
A;全く傷がない。
B;1〜5本の傷が確認される。
C;6〜20本の傷が確認される。
D;21本以上の傷があるが曇りには見えない状態。
E;多数の傷があり曇りに近い状態。
(4)密着性試験;プラスチックレンズ表面を約1mm間隔で基盤目に100目クロスカットし、このクロスカットした部分に粘着テープ(ニチバン(株)製、セロテープ(登録商標))を強く貼り付けた後、プラスチックレンズ表面から急速に粘着テープを剥がし、膜の剥がれ状態を次の○、×で評価した。
○;粘着テープを剥がした後の基盤目に、全く膜剥がれの無かったもの。
×;粘着テープを剥がした後の基盤目に、膜剥がれがあったもの。
(5)耐湿性試験;恒温恒湿炉中(設定値:60℃、98RH%)に、10日間プラスチックレンズを入れたのち、レンズを取り出して室内で保管し、1日後に密着性試験を行い、○、×で評価した((4)密着性試験、参照)。
(6)耐温水性試験;90℃の湯浴中に1時間浸漬した後、密着性試験を行い、○、×で評価した((4)密着性試験、参照)。
(7)耐光性試験;キセノンロングライフウェザーメーター(スガ試験機(株)製)を用いて200時間照射を行った後、目視検査による色調変化、および密着性試験を行い、次の○、×で評価した(密着性試験評価は、(4)密着性試験、参照)。
○;色調の変化がほとんどなかったもの。
△;若干の黄変が認められるもの。
×;著しく黄変が認められるもの。
(8)耐アルカリ性;20℃の10重量%水酸化ナトリウム水溶液中に、プラスチックレンズを30分間浸漬し、膜の剥がれ状態を、次の○、×で評価した。
○;膜剥がれのないもの。
×;膜剥がれがあったもの。
Figure 0004742603
表1の結果より、耐光性試験において、実施例1〜5は黄変が見られず、かつ密着性も良好であるのに対して、比較例1〜3は黄変が見られると共に、比較例1,3においては、膜剥がれが発生した。
このことから、ハードコート膜がルチル型の結晶構造を有する二酸化チタンを主成分とする複合酸化物微粒子および有機ケイ素化合物を主成分として含有することにより、黄変する色調変化を防止すると共に、良好な密着性を得ることができる。
一方、ハードコート膜が、酸化チタン、酸化ジルコニウム、および酸化ケイ素を主体とするアナターゼ型結晶構造を有する複合微粒子を含有することにより、黄変が見られる(比較例1〜3)と共に、膜剥がれが発生した(比較例1,3)。
特に比較例3においては、ルチル型の結晶構造を有するプライマー膜を形成したにもかかわらず、黄変、および膜剥がれが発生する。また、比較例2においては、ハードコート膜の上層に形成される反射防止膜の成膜時の真空度が、5.0×10-5mbarよりも低い低真空環境であることにより、耐擦傷性能が著しく低く、耐アルカリ性試験においても膜剥がれが発生した。
また、プラスチックレンズ基材として、実施例1,2、および比較例1〜3共に、1分子中に2個以上のエピスルフィド基を有する化合物を主成分とするモノマー、特にビス(2,3−エピチオプロピル)ジスルフィド化合物からなることにより、外観および屈折率、各種耐久性(耐湿性、耐水性)に優れており、特に屈折率1.74、アッベ数33のプラスチックレンズが得られた。

Claims (1)

  1. ビス(2,3−エピチオプロピル)ジスルフィドを主成分とするモノマーを注型重合して得られたプラスチックレンズ基材の表面に、
    ルチル型の結晶構造を有する二酸化チタンと二酸化スズからなる核微粒子と、該核微粒子の周囲に二酸化ジルコニウムと酸化ケイ素との混合微粒子からなる被覆層と、から構成される複合酸化物微粒子、及び有機ケイ素化合物を主成分として含有するハードコート膜形成用塗布液を塗布し、硬化させてハードコート膜を形成するハードコート膜形成工程と、
    前記ハードコート膜上に、少なくとも1層以上のSiO からなる層を含む多層無機酸化物膜を形成する反射防止膜形成工程と、
    を有し、
    前記反射防止膜形成工程では、真空蒸着法により成膜を行い、成膜時の真空度を5.0×10 −5 mbar以上4.0×10 −6 mbar以下とすることを特徴とするプラスチックレンズの製造方法。
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