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JP4742650B2 - カーボンナノチューブ組成物、バイオセンサーおよびそれらの製造方法 - Google Patents
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JP4742650B2 - カーボンナノチューブ組成物、バイオセンサーおよびそれらの製造方法 - Google Patents

カーボンナノチューブ組成物、バイオセンサーおよびそれらの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、水溶液中で分散性の高いカーボンナノチューブ組成物、および血液、尿、唾液、汗、涙などの生体試料、食品原料や製品、環境中に由来する基質(特定成分)を、高精度で迅速かつ容易に定量するためのバイオセンサに関する。
生体試料などに存在する特定成分を、試料の希釈および攪拌などを行うことなく簡易に定量しうるバイオセンサが提案されている。その一例として、特許文献1には、絶縁性基板上にスクリーン印刷などの方法によって電極系を形成し、この電極上に酸化還元酵素および電子伝達体(電子受容体)を含有する反応層を形成したバイオセンサが開示されている。
このバイオセンサは、以下のようにして試料中の基質濃度を定量する。まず、試料液をバイオセンサの反応層上に滴下することにより、反応層が溶解し、試料液中の基質と反応層の酸化還元酵素との間で酵素反応が進行する。この酵素反応に伴い、電子伝達体が還元される。一定時間後、センサの電極に電圧を印加して、この還元された電子伝達体を電気化学的に酸化し、このとき得られる酸化電流値を測定する。この電流値は、基質濃度に直接比例するので、試料液中の基質濃度を定量することができる。
このようなバイオセンサはすでに血液中のグルコース濃度を測定するセンサとして実用化されている。実用化されている血糖値センサの測定感度の下限値は20mg/dLであり、血液中に存在するグルコース(80〜160mg/dL)を測定するには十分な感度を有している。しかしながら、血液中に存在する他の成分を測定したり、血液以外の試料中の成分を測定する場合には、測定したい成分の存在濃度が低く、既存のバイオセンサでは測定できないという問題がある。
一方、カーボンナノチューブは1990年に飯島らにより見出された炭素物質であり(非特許文献1)、グラファイトの1枚面を巻いて筒状にした形状を有している。1層に巻いたものを単層カーボンナノチューブ、2層に巻いたものを2層カーボンナノチューブ、多層に巻いたものを多層カーボンナノチューブという。カーボンナノチューブは、高い機械的強度、高い導電性を有することから、各分野での応用が期待されている。しかしながら、溶媒中、特に水溶液中での分散性が低くその利便性の障害となっている。
カーボンナノチューブを用いたバイオセンサとしては、カーボンナノチューブとテフロン(登録商標)のコンポジット、ミネラルオイル中でのカーボンナノチューブペースト、白金ナノ粒子を担持したカーボンナノチューブを電極へと応用したものが報告されている(非特許文献2、3、4)。これらはいずれもカーボンナノチューブを用いない場合よりもバイオセンサの感度を向上できると報告されているが、いずれもカーボンナノチューブの分散性を向上した報告はなく、感度としても実用化されているバイオセンサに比べて著しく低いものであった。
特開平3−202764号公報 ネイチャー(Nature)1991年、第354巻,p.56−58 アナリティカルケミストリー(Anal.Chem)2003年、第75巻、p.2075− エレクトリカルケミストリー(Elec.Chem)2003年、第5巻、p.689− アナリティカルケミストリー(Anal.Chem)2004年、第79巻、p.1083−
以上の従来技術の問題点に鑑み、本発明は、水溶液中で高い分散性を示すカーボンナノチューブ組成物、該組成物をバイオセンサの電極上へと塗布することにより再現性のよい塗布を可能とし、さらに現在実用化されているバイオセンサの感度を向上し、存在濃度が低く従来のバイオセンサ技術では測定が不可能であった成分の測定ができるバイオセンサの提供を目的とする。
上記課題を解決するため、鋭意検討の結果、カーボンナノチューブが親水性ポリマーの水溶液によく分散すること、その溶液をバイオセンサの電極上に塗布、乾燥させることにより、再現性よく品質の揃ったバイオセンサが作製可能であり、さらにバイオセンサの感度を向上させることが可能であることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明は親水性ポリマーとカーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブ組成物、およびその製造方法、該カーボンナノチューブ組成物を電極に塗布することを特徴とするバイオセンサ、およびその製造方法を提供する。
本発明は以下の通りである。
>絶縁性の基板、前記基板上に形成された少なくとも作用極と対極を有する電極系、前記電極系上に形成された反応層を有するバイオセンサであって、反応層にスルホン酸基またはカルボキシル基を有する親水性ポリマーと2層カーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブ水溶液を乾燥させることにより得られる固体状カーボンナノチューブ組成物を含有することを特徴とするバイオセンサ。
本発明によれば、親水性ポリマーを含んだ水溶液を用いることによりカーボンナノチューブを分散性よく懸濁することができる。またその組成物をバイオセンサの電極上に塗布することにより、再現性よく品質の揃ったバイオセンサが作製可能となり、酵素電極法で測定した場合の対象物質の測定感度を向上させることができる。それにより、これまで低濃度であるため酵素電極法を用いたバイオセンサでは測定が不可能であった試料についても測定が可能となる。
本発明のカーボンナノチューブ組成物は親水性ポリマーとカーボンナノチューブを含有する組成物であり、液体であっても固体でもよい。好ましくは水溶液として調製し、超音波処理などによりカーボンナノチューブを均一に分散させる。水中ではカーボンナノチューブは超音波処理を行っても分散性が悪く凝集しやすいが、水溶性ポリマーと混合した場合、超音波処理により分散性が向上し、1時間放置しても凝集はみられない。
カーボンナノチューブと親水性ポリマーの組成比は特に制限はないが、好ましくはカーボンナノチューブ/親水性ポリマー値として0.005〜100(重量比)が好ましく、液体の組成物の場合は、カーボンナノチューブの重量は0.01〜1w/v%が好ましく、親水性ポリマーは0.01〜2w/v%が好ましい。
また、必要に応じて該液体を適当な乾燥操作により固体として用いることができる。水溶性ポリマーの水溶液中で分散させることにより、乾燥した後も凝集を避けることが可能となり、再現性のよい塗布されたカーボンナノチューブ組成物を得ることができる。乾燥する際には液体を基板などに塗布してから乾燥するのが好ましく、塗布の方法は液滴の滴下、スクリーン印刷、ディスペンサー印刷などの印刷法が採用できる。乾燥条件としては、どのような温度でも乾燥させることができるが、一般には室温から50℃の範囲で風乾させることにより固体とすることができる。固体のカーボンナノチューブと親水性ポリマーの組成比も液体の場合と同様、0.005〜100(重量比)が好ましい。さらに好ましくは0.1〜5(重量比)である。またバイオセンサの電極に塗布する場合には酵素を含んで乾燥させる場合、酵素の失活を防ぐために0℃〜室温の低温で乾燥させるか、凍結乾燥させることもできる。
本発明でカーボンナノチューブ組成物に含まれる親水性ポリマーとしては、カルボキシル基、スルホン酸基のどちらか、または両方を持ったポリマーが用いられる。例としてあげるならば、カラギーナンまたはカルボキシメチルセルロース、ポリスチレンスルホン酸、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、アラビアガムから選ばれる1種または2種以上の組合せである。
カーボンナノチューブの製造方法としては、アーク放電法やレーザー蒸発法、化学気相成長法などすでに知られている製造方法を用いることができる。中でも、グラファイト層に欠陥の少ない高品質なカーボンナノチューブを安価に製造する方法として、化学気相成長法が知られており、さらに触媒化学気相成長法では、カーボンナノチューブの層数を、単層、2〜5層に制御して製造できることが知られている。本発明で用いるカーボンナノチューブとしては、いかなる製造方法により製造したカーボンナノチューブでも用いることができる。
また本発明に用いるカーボンナノチューブは、2層カーボンナノチューブである。
2層カーボンナノチューブの特性としては高い導電性があげられる。カーボンナノチューブの導電性は本来単層カーボンナノチューブが最も高いとされるが、単層カーボンナノチューブはバンドル構造を形成し束となってしまうため、実際には束の内部にあるカーボンナノチューブが利用されない欠点がある。一方、2層カーボンナノチューブはバンドル構造を組まないため、効率的にカーボンナノチューブが用いられ、結果としてカーボンナノチューブの中で最も高い導電性を示すことができる。
導電性のよいカーボンナノチューブをバイオセンサの電極近傍に塗布することにより、酵素反応により生じた電子を効率的に電極へと伝達することが可能になり、測定時の電流値の増大、すなわち感度の向上が期待できる。その他にも、より低電圧での電流の発生による消費電力の低減、メディエーターが不要になるなどの効果が期待される。
2層カーボンナノチューブはカーボンナノチューブを透過型電子顕微鏡で観察し、任意に選択した100本のカーボンナノチューブ中、50本以上が2層カーボンナノチューブであるものが好ましく、その測定方法は、透過型電子顕微鏡で100万倍で観察し、150nm四方の視野の中で視野面積の10%以上がカーボンナノチューブで、かつ複数の視野中から任意に抽出した100本のカーボンナノチューブ中の50本以上が2層カーボンナノチューブであり、上記測定を10箇所について行った平均値で評価する。
さらに好ましくは、カーボンナノチューブを透過型電子顕微鏡で観察し、任意に選択した100本の2層カーボンナノチューブ中、80本以上がその外径が1.5から4.0nmの範囲内にあるものである。その測定方法は、透過型電子顕微鏡で100万倍で観察し、複数の視野中から任意に抽出した100本の2層カーボンナノチューブの外径を測定し、80本以上がその外径が1.5から4.0nmの範囲内にあり、上記測定を10箇所について行った平均値で評価する。
さらに好ましくは、下記(1)〜(4)の要件全てを満たしている2層カーボンナノチューブである。
(1) カーボンナノチューブを透過型電子顕微鏡で観察し、任意に選択した100本のカーボンナノチューブ中、50本以上が2層カーボンナノチューブであること。
(2)カーボンナノチューブを透過型電子顕微鏡で観察し、任意に選択した2層カーボンナノチューブ中の屈曲部間距離の平均が100nm以上であること。
(3) 共鳴ラマン散乱測定により、1560〜1600cm−1の範囲内で最大のピーク強度をG、1310〜1350cm−1の範囲内で最大のピーク強度をDとしたとき、G/Dの比が10以上であること。
(4) 元素分析による金属含有率が1重量%以下であること。
ここで、2層カーボンナノチューブ中の屈曲部とは、カーボンナノチューブのグラファイト構造中に炭素5員環と7員環が存在することによる屈曲を言い、高分解能透過型電子顕微鏡写真でカーボンナノチューブが折れ曲がって観察される部分のことを言う。本発明で使用する2層カーボンナノチューブは、高分解能透過型電子顕微鏡で観察し、選んだ任意の2層カーボンナノチューブについて屈曲部から屈曲部までの距離の平均を求め、それを10本以上の2層カーボンナノチューブについて平均した結果が、100nm以上であるものが好ましい。屈曲部から屈曲部までの距離が長ければ長いほど、2層カーボンナノチューブの直線性は向上し、導電性が高い2層カーボンナノチューブとなる。屈曲部間距離は長いほど好ましいため、300nm以上がより好ましく、500nm以上がさらに好ましく、1μm以上が最も好ましい。
また、2層カーボンナノチューブ含有組成物は、ラマン分光法により評価が可能である。ラマンスペクトルにおいて1590cm−1付近に見られるラマンシフトはグラファイト由来のGバンドと呼ばれ、1350cm−1付近に見られるラマンシフトはアモルファスカーボンやグラファイトの欠陥に由来のDバンドと呼ばれる。このG/D比が高いほどグラファイト化度が高く、高品質なカーボンナノチューブを意味する。
また本発明では、カーボンナノチューブの長さや直径、末端が閉じているか開いているかなどについては特に制限はなく、いかなる状態のものであっても使用可能である。
カーボンナノチューブを懸濁する方法としては、さまざまな方法が考えられるが、再現性のよいバイオセンサを作製するには分散性がよいことが望ましい。好適には、超音波処理を行うことが望ましく、その強度や時間については、適宜検討により決定することができる。
また、本発明のカーボンナノチューブ組成物は、水溶液中で超音波処理により分散し、1時間静置したとき、分散状態が保持されているものが好ましい。分散状態の保持は目視で行い、均一に分散していれば、分散状態が保持されているものとする。
本発明のバイオセンサは、絶縁性の基板、基板状に形成された少なくとも作用極と対極を有する電極系、電極系上またはその近傍に形成された反応層またはその近傍に、親水性ポリマーとカーボンナノチューブを含有する組成物を含むことを特徴とする。
また、本発明に係るバイオセンサはカーボンナノチューブ組成物以外に、電極上に、酵素、さらには必要に応じて電子伝達体などの試薬層を具備し、測定試料中の特定成分を基質として酵素反応を行い、その結果生じた酸化還元電位を電極上で電流として感知するセンサであれば、どのようなセンサでもよい。例をあげるならば、電気絶縁性の基板、その基板上に形成された作用極と対極を有する電極系、およびその電極系を含む試料液供給空間を具備し、さらにその試薬供給空間内に形成された酵素などを含む反応層を具備したバイオセンサが好適に用いられる。
電気絶縁性の基板としては、いかなる材質のものでもよいが、ガラスやポリエチレンテレフタレートなどが好適に用いられる。
バイオセンサでは、カーボンナノチューブ組成物は反応層またはその近傍に含有されることが好ましい。近傍とは混合されてはいないが、接触することが可能な状態を言い、特に測定物由来の水分などにより溶解したときには、容易に混合されるか、混合されなくとも物質の移動が起こりうる位置関係を言う。
カーボンナノチューブ組成物の塗布方法としては、カーボンナノチューブの分散性を保った塗布方法であればいかなる塗布方法でもよく、単独で電極に塗布してもよいし、酵素やメディエーターと混合したものを塗布してもよい。塗布後は適宜乾燥工程を加えることができる。
本発明で用いられる酵素は、血液、尿、唾液、汗、涙などの生体試料、食品原料や製品、環中に由来する基質(特定成分)に対し特異的に作用し、それらを酸化もしくは還元し、その反応によって電子の授受が引き起こされるものであればいかなる酵素でもよい。好ましくはグルコースオキシダ−ゼ、ウリカーゼ、ザルコシンオキシダ−ゼ、乳酸オキシダ−ゼ、グルコースデヒドロゲナーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、アルコールオキシダ−ゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、コレステロールオキシダ−ゼ、コレステロールデヒドロゲナ−ゼ、NADHオキシダーゼ、ジアホラーゼ、ウレアーゼ、フルクトースオキシダーゼ、フルクトースデヒドロゲナーゼ、アスコルビン酸デヒドロゲナーゼを用いることができる。
本発明では、グルコースオキシダーゼを使用したグルコース濃度の測定、ウリカーゼを使用した尿酸濃度の測定、およびコレステロールオキシダーゼを使用したコレステロール濃度の測定を例に説明しているが、本発明の効果はこれらの物質濃度の測定に限られるものではなく、使用する上述の酵素から適当に選択することによって種々の物質の濃度を測定することができる。
例えば、酵素として乳酸オキシダーゼを使用することにより乳酸の濃度を測定することができ、フルクトースデヒドロゲナーゼを使用すればフルクトースの濃度を、アルコールデヒドロゲナーゼとジアホラーゼを併用すればアルコールの濃度を測定することができる。
電極上に塗布する試薬層には電子メディエーターを含ませてもよい。電子メディエーターとしてはフェリシアン化物塩、フェロセンおよびその誘導体、メチレンブルー、ベンゾキノンおよびその誘導体、ナフトキノン、フェナジンメトサルフェート、チオニンなどをあげることができる。特に好ましくは、フェリシアン化カリウムが採用できる。
カーボンナノチューブを懸濁させる親水性ポリマーの水溶液を作製する際の溶媒は、水、リン酸緩衝液、トリス塩酸緩衝液、酢酸緩衝液、塩化ナトリウム水溶液などいかなる水溶液を用いてもよい。また親水性ポリマーの溶解が可能であれば、メタノール、エタノール、トルエン、アセトンなどの有機溶媒を水溶液に混合することもできる。
本発明で用いられる電極の材料としては、一般的に電極として使用されうる導電材料であればいかなるものでもよく、具体的には、炭素、金属、合金、金属および合金の種々の化合物(例えば酸化物、水酸化物、ハロゲン化物、硫化物、窒化物、炭化物)などをあげることができる。好適には白金、パラジウム、金、銀、アルミニウムなどが用いられる。また炭素材料としては、グラファイト、熱分解炭素、グラッシーカーボン、アセチレンブラック、カーボンブラックなどがあげられる。
酸化電流の測定方法としては、作用極と対極のみの2電極方式と、参照電極を加えた3電極方式がある。どちらの方式を用いても本発明における酵素電極を用いた測定は可能である。
以下に、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
(参考例)
2層カーボンナノチューブの合成は、特願2004−297310号実施例3に記載の方法で行った。
硝酸鉄・9水和物(関東化学社製)0.03gと硝酸コバルト・6水和物(関東化学社製)0.17gとをエタノール(関東化学社製)15mlに溶解した。この溶液に、ボロシリケート(エヌイーケムキャット製)を1.4g加え、超音波洗浄機で30分間処理し、60℃及び120℃の恒温下でエタノールを除去して乾燥した。その後空気中、400℃で1時間加熱し、ボロシリケートに金属塩が担持された固体触媒を得た。
内径32mmの石英管の中央部の石英ウール上に、上記で調製した固体触媒1.0gをとり、アルゴンガスを600cc/分で供給した。石英管を電気炉中に設置して、中心温度を800℃に加熱した(昇温時間60分)。800℃に到達した後、反応管内を真空引きし、10Pa以下になったことを確認後に、エタノール蒸気を100Paの圧力になるように20分間導入した。エタノール蒸気の導入を止めた後に、高純度アセチレンガス(高圧ガス工業製)を5cc/分で30分供給し、温度を室温まで冷却し、2層カーボンナノチューブを含有する組成物を取り出した。なお、担体のX線回折の結果、ピーク強度の変化率は5%未満であった。
このようにして得たカーボンナノチューブを含有する組成物を高分解能透過型電子顕微鏡で観察したところ、カーボンナノチューブはきれいなグラファイト層で構成されており、層数が2層のカーボンナノチューブが80%以上であった。カーボンナノチューブ以外の炭素不純物(フラーレン、ナノパーティクル、アモルファスカーボン等)はほとんど観察されなかった。またスケールをもとに、その外径を測定したところ、平均2.5nmであり、すべてが1.5から4.0nmの範囲にあった。また、カーボンンナノチューブ中の屈曲部間の距離を測定したところ、ほとんどが500nm以上であった。
このカーボンナノチューブを含有する組成物を共鳴ラマン分光計(ホリバ ジョバンイボン製 INF−300)で測定し、1560〜1600cm−1の範囲内で最大のピーク強度をG、1310〜1350cm−1の範囲内で最大のピーク強度をDとしてG/D比を求めた結果、14と高品質2層カーボンナノチューブであることがわかった。
また蛍光X線を用いた元素分析の結果、金属含有率は鉄が0.1%、コバルトが0.3%であった。
(実施例1)
蒸留水または0.25w/w%のカルボキシメチルセルロース(CMC、東京化成、C0045)、カラギーナン(シグマ、C1013)、ポリスチレンスルホン酸(アルドリッチ社、243051−5G)、コンドロイチン硫酸(カルビオケム社、230687)、ヒアルロン酸(シグマ、53747)、アラビアゴム(三栄薬品貿易、食添用)水溶液中に、0.2w/w%の含有量で懸濁した2層カーボンナノチューブまたは多層カーボンナノチューブ(アルドリッチ社)を加え、30分間超音波処理することにより、カーボンナノチューブを分散させた。分散溶液を1時間放置した後、観察したところ、CMC、カラギーナン、ポリスチレンスルホン酸、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、アラビアゴムの親水性ポリマー水溶液中に分散させたカーボンナノチューブ溶液は目視で均一に分散していたが、蒸留水中で分散させたカーボンナノチューブ溶液では、カーボンナノチューブが沈降していた。この結果から、親水性ポリマーとカーボンナノチューブからなる組成物は水溶液中で分散性が高いことが明らかとなった。
(比較例1)
ガラス上に白金の作用電極およびその周囲に白金の対極が形成されている市販の白金ディスク電極(BAS社)に、以下のように酵素層を塗布することによりグルコース測定用のバイオセンサを構築した。すなわち、電極上に0.25w/w%のCMC水溶液を8μL塗布し37%、1時間乾燥した後、0.5w/w%CMC、0.5w/w%グルコースオキシダーゼ(GOD)、3w/w%フェリシアン化カリウムを含む水溶液を8μL塗布しさらに37%、1時間乾燥することによりグルコース測定用バイオセンサを作製することができる。
こうして作製したバイオセンサに、試料液としてさまざまな濃度のグルコース水溶液5μLを加え、30秒反応させた後に対極を基準として作用極に0.6Vの電圧を印加し、5秒後の電流値を測定した。
(実施例2)
市販の白金ディスク電極(BAS社)の作用極およびその周囲の対極上に、0.2w/w%の含有量で懸濁した2層カーボンナノチューブまたは多層カーボンナノチューブ(アルドリッチ社)を含む0.25w/w%のCMC水溶液を8μL塗布し37%、1時間乾燥した後、比較例1と同様にグルコース測定用バイオセンサを構築した。このバイオセンサに種々の濃度のグルコース水溶液5μLを滴下し、30秒反応させた後に対極を基準として作用極0.6Vの電圧を印加し、5秒後の電流値を測定した。
比較例1および実施例2の結果を図1に示す。
図1からわかるように比較例1では、1mMから10mMのグルコース濃度において、良好な定量性を示したが、1mM以下のグルコース濃度を測定することは困難であった。一方実施例2では、0.1mMのグルコースをも測定可能であった。
(実施例3)
比較例1および実施例2で使用したCMCにかえて、カラギーナン、ポリスチレンスルホン酸、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、アラビアゴムをCMCと同様の濃度で使用したバイオセンサを作製し、同様にグルコースを測定した。その結果、カラギーナン、ポリスチレンスルホン酸、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、アラビアゴムのいずれを用いても比較例1同様にグルコース濃度の測定が可能であり、カーボンナノチューブを試薬層に含むことにより、グルコースを含まない試料との検出電流値の差が増大し、実施例2同様、より低濃度のグルコース濃度を測定することが可能であった。その結果を表1にまとめた。
Figure 0004742650
(比較例2)
市販の白金ディスク電極(BAS社)の作用極およびその周囲の対極上に0.25w/w%のCMC水溶液を8μL塗布し37%、1時間乾燥した後、0.5w/w%CMC、0.5w/w%ウリカーゼ、3w/w%フェリシアン化カリウムを含む水溶液を8μL塗布しさらに37%、1時間乾燥することにより尿酸測定用バイオセンサを作製した。
こうして作製したバイオセンサに、試料液としてさまざまな濃度の尿酸水溶液5μLを加え、30秒反応させた後に対極を基準として作用極0.6Vの電圧を印加し、5秒後の電流値を測定した。
(実施例4)
市販の白金ディスク電極(BAS社)の作用極およびその周囲の対極上に、0.2w/w%の含有量で懸濁した2層カーボンナノチューブを含む0.25w/w%のカルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液を8μL塗布し37%、1時間乾燥した後、比較例2と同様に尿酸測定用バイオセンサを構築した。このバイオセンサに種々の濃度の尿酸水溶液5μLを加え、30秒反応させた後に対極を基準として作用極0.6Vの電圧を印加し、5秒後の電流値を測定した。
比較例2および実施例4の結果を図2に示す。
図2から判るように比較例2では、1mMから10mMの尿酸濃度において、良好な定量性を示したが、1mM以下の尿酸濃度を測定することは困難であった。一方実施例4では、0.2mMの尿酸をも測定可能であった。
(比較例3)
ポリエチレンテレフタレート板上にパラジウムを薄膜状に被覆した基板にレーザートリミングで作用極および対極を形成した。その作用極およびその周囲の対極上に作用極を中心として0.25w/w%のカルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液を1.5μL塗布し37%、1時間乾燥した後、0.5w/w%CMC、0.5w/w%グルコースオキシダーゼ(GOD)、3w/w%フェリシアン化カリウムを含む水溶液を1.5μL塗布しさらに37%、1時間乾燥することによりグルコース測定用バイオセンサを作製する。
(実施例5)
比較例3と同様のパラジウム薄膜で形成した電極上に0.2w/w%の含有量で懸濁した2層カーボンナノチューブを含む0.25w/w%のカルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液を1.5μL塗布し37%、1時間乾燥した後、比較例3と同様にグルコース測定用バイオセンサを構築した。
比較例3および実施例4で作製したバイオセンサに1mMの濃度のグルコース水溶液を滴下し、30秒間反応させた後、対極を基準として作用極0.6Vの電圧を印加し、5秒後の電流値を測定した。
その結果、比較例3ではグルコースが含まれない試料との電流値の差が0.29μAであったのに対して、実施例5では0.89μAの差が得られた。
このことから、実施例5で作製したバイオセンサを用いることにより、より低濃度のグルコースを測定することが可能になる。
(比較例4)
特許第2669497号公報に従って、直径3mmのグラッシーカーボン電極(BAS社)の端面を基板電極として、この電極上に平均分子量70,000のポリスチレンスルホン酸ナトリウム0.6w/v%水溶液(pH7)10μLを滴下し、次いでGOD0.5w/v%水溶液5μLを滴下し、最後に平均分子量100,000のポリリジン0.6w/v%水溶液(pH7)5μLを滴下して、室温で2時間以上放置、乾燥させることにより、グルコース測定用の酵素電極を得た。
(実施例6)
比較例4と同様のグラッシーカーボンの基板電極上に、2層カーボンナノチューブ0.2w/v%を分散させた平均分子量70,000のポリスチレンスルホン酸ナトリウム0.6w/v%水溶液(pH7)10μLを滴下し、次いで比較例4と同様にGOD0.5w/v%水溶液5μLを滴下し、最後に平均分子量100,000のポリリジン0.6w/v%水溶液(pH7)5μLを滴下して、室温で2時間以上放置、乾燥させることにより、グルコース測定用のカーボンナノチューブを含む酵素電極を得た。
比較例4、実施例6で作製した電極を作用極、銀−塩化銀電極を参照極、白金ワイヤを対極とする3電極系を構成し、容積20mLの試験液(リン酸緩衝液、pH7)中に挿入した。試験液は空気飽和の状態に保ち、磁気攪拌子で攪拌し、上記定電位電源により、作用極に1ボルト(対銀−塩化銀電極)を印加し、電流を測定した。一定時間ごとに、グルコース0.5mMを加え、そのときの作用極電極の電流値を測定した。試験液中のグルコース濃度と電流値の関係を図3に示す。
その結果、カーボンナノチューブ修飾のない酵素電極に比べて、カーボンナノチューブ修飾酵素電極では、電流値が50倍に増加しており、従来技術による酵素電極に比べ著しく感度を向上させることが可能となった。
(比較例5)
ポリエチレンテレフタレート板上にパラジウムを薄膜状に被覆した基板にレーザートリミングで作用極および対極を形成した。その作用極およびその周囲の対極上に作用極を中心として0.5w/w%のカルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液を1.5μL塗布し37℃、1時間乾燥した後、0.1w/w%CMC、20mMコハク酸、70mMフェリシアン化カリウム水溶液1.5μLを塗布し37℃、1時間乾燥した後、7units/mLコレステロールオキシダーゼを含む水溶液を0.4μL塗布し室温乾燥することによりコレステロール測定用バイオセンサを作製する。
(実施例7)
比較例5と同様のパラジウム薄膜で形成した電極上に0.2w/w%の含有量で懸濁した2層カーボンナノチューブを含む0.25w/w%のカルボキシメチルセルロース(CMC)水溶液を1.5μL塗布し37%、1時間乾燥した後、比較例5と同様にコレステロール測定用バイオセンサを構築した。
比較例5および実施例7で作製したバイオセンサに25mg/dLの濃度のコレステロール水溶液(5%Triton−Xを含む)を滴下し、3分間反応させた後、対極を基準として作用極0.6Vの電圧を印加し、5秒後の電流値を測定した。
その結果、比較例5ではコレステロールが含まれない試料との電流値の差が0.9μAであったのに対して、実施例7では3.4μAの差が得られた。
このことから、実施例7で作製したバイオセンサを用いることにより、より低濃度のコレステロールを測定することが可能になる。
本発明によれば、分散性の高いカーボンナノチューブ組成物を得ることができる。本組成物は水溶液中でも分散性に優れるため、バイオセンサを初めとして、電子情報用途などの産業用途に広く応用が可能である。また、該組成物を具備したバイオセンサにより高感度に試料中の物質濃度を測定することが可能となり、もってこれまで測定が不可能であった生体中成分や環境中成分の測定が可能となり、医療、環境、アメニティー用途での実用化が期待される。ただし、応用範囲はこれらに限られるものではない。
実施例2および比較例1における添加グルコース濃度と電流値変化の関係を示すグラフである。 実施例4および比較例2における添加尿素濃度と電流値の関係を示すグラフである。 実施例6および比較例4における添加グルコース濃度と電流値の関係を示すグラフである。

Claims (1)

  1. 絶縁性の基板、前記基板上に形成された少なくとも作用極と対極を有する電極系、前記電極系上に形成された反応層を有するバイオセンサであって、反応層にスルホン酸基またはカルボキシル基を有する親水性ポリマーと2層カーボンナノチューブを含有するカーボンナノチューブ水溶液を乾燥させることにより得られる固体状カーボンナノチューブ組成物を含有することを特徴とするバイオセンサ。
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