JP4743944B2 - シミュレーションモデル作成方法及びそのシステムと記憶媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はシミュレーションモデル作成方法及びその装置と記憶媒体に関し、特に、電気系や機械系、固体系や流体系など全ての物理系で表現できる、1つの機能の部品から多くの部品を組み合わせた機械、更に複数の機械を組み合わせたシステムに至るまでの動作をシミュレートするためのモデルを統一的に作成するシミュレーションモデル作成方法及びその装置と記憶媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
商品開発の短期化を目的として、従来は試作品を用いた試験によって行っていた性能や機能の評価、確認を、シミュレーションによって開発の上流時点で行う必要性が益々高まっている。
【0003】
機械などの物理系は、一般的には、多くの部品からなる機能の有機体と考えることができる。そして各部品は、個々が担当する部分的な役割に従って互いにエネルギーの変換と授受を行いながら協調することにより機能し合い、それらが動的に調和融合して機械全体としての目的と使命を要求性能通りに果たすことができる。例えば、自動車の走行性能などの諸性能は、エンジンや変速機など個々のユニットの特性が統合されて現れるものである。これらの特性は複数の異なる工学分野に跨るため、従来は、シミュレーションの目的に対応した固有の方法で異なる理論体系を結びつけてモデル化が行われている。しかし、数多くの問題に対してシミュレーションを充足しそれらを維持管理するには、効率的ではない。
【0004】
この問題の解決には、異なる分野に対して共通化され、それらの統合を容易にできるモデル化技術を必要とする。
【0005】
本発明者等は先に、特開平9−91334号などで、エネルギーの流れをポテンシャルとフロートという概念で結びつけることで部品をシステム方程式により表現することを提案し、複数の部品からなるユニットを行列で表現化した。
【0006】
又、特開平11−282897号や特開平11−282898号では、上記概念を自動車部品に適用してシミュレーションする例を示した。
【0007】
更に、以下のような論文が発表されている。
(1)マルチボディダイナミクスと信号処理:日本機械学会第72期通常総会講演会講演論文集、417〜418頁;吉村浩明、川瀬武彦;1995年3月29〜31日
(2)バイチャルプロトタイプのモデリング(第一報):日本機械学会第72期通常総会講演会講演論文集、421〜422頁;角田鎮男、平松繁喜;1995年3月29〜31日
(3)バイチャルプロトタイプのモデリング(第二報):日本機械学会第73期通常総会講演会講演論文集、381〜382頁;角田鎮男、平松繁喜;1996年4月2〜4日
(4)ポンドグラフの基礎:日本投資管理学会誌第9巻第1号、25〜31頁;幸田武久、井上紘一;1997年
(5)仮想原型によるパワートレインのモデル化;自動車技術会学術講演会前刷集974、177〜180頁;平松繁喜、原田靖裕、荒川博之、小森賢、角田鎮男;1997年10月21〜23日
(5)自動車開発のための階層型機能モデル;自動車技術会学術講演会前刷集974、177〜180頁;角田鎮男、長松昌男、丸山晃一、平松繁喜;1997年10月21〜23日
(6)製品開発のための新しいモデル化手法;日本機械学会論文集(C編)64巻622号、131〜138頁;長松昌男、角田鎮男、長松昭男;1998年6月
(7)製品開発のための新しいモデル化手法;日本機械学会論文集(C編)64巻627号、108〜115頁;長松昭男、角田鎮男、長松昌男;1998年11月
(8)製品開発のための新しいモデル化手法;日本機械学会論文集(C編)65巻632号、99〜106頁;角田鎮男、長松昌男、長松昭男;1999年4月
(9)回転運動機器の機能表現のためのモデル化;日本機械学会論文集(C編)65巻638号、44〜51頁;平松繁喜、角田鎮男、長松昌男、長松昭男;1999年10月
(10)自動車開発支援のためのモデル化手法;自動車技術会2000年春季大会前刷集;長松昭男、角田鎮男、平松繁喜;2000年
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、個々の概念や手法、あるいはその適用例は照会されているが、1つの機能の部品から自動車のようなシステムまでについて、全ての物理系を統一的に扱うための手法及びそれを実現する資源やツールについては、存在しなかった。
【0008】
このような機械製品を開発する為に用いるモデル化のあり方とそれに必要な条件の中の1つに、所謂、モデルの展開と統合がある。
【0009】
その主要課題の1つは、実際の製品、部品と同じ感覚で部品モデルから大規模な製品モデルまでのモデル化を行ない、しかも、部品モデルの組替えと分解がモデル上で出来なければならない点であった。その為に、モデルは、部品の独立性と横の連続性を共存させながら結合する展開による構造化ができ、且つ同水準の部品モデルを統合して等価機能に変換することによって、上位モデルを形成する階層化が出来なければならない。
【0010】
このようなモデル化を実現するには、製品開発で使われる機能の展開と統合手法と階層化手法を機能、機構モデルによる展開、統合、階層化、包含関係などで体系化し、相互関係を明確にすることが重要となる。
【0011】
そして、この体系化されて相互関係が明らかとなった機能、機構モデルに対しては、これを再現する支配方程式上でも各モデル結合による等価モデル変換が必要である。また、この等価モデル変換には、モデル内部に包含する微分状態量で表された蓄積特性を等価蓄積特性にモデル変換することも必要である。特に、統合されたモデルを低次元化する際には、実態の不要な剛性や慣性モーメントなどを消去し、直列又は並列接続されて残った蓄積特性群を等価特性に変換することが必要である。また、この統合により、各機能モデル間を連結する入出力状態量は全て拘束され、系内部の拘束条件は全て消去される。
【0012】
これらの展開と統合処理において、非線形要素の取り扱いは演算量や精度の面で特に重要である。従来のモデルでは非線形要素が機能モデルに変数要素の一部として組み込まれていた、すなわち支配方程式の変数の1つとなっていたため、統合により上位階層に行くに従い非線形要素の関与が複雑になり、演算量が増加し、演算量を減らすために非線形要素を簡略化すると精度が落ちるという問題があった。
【0013】
本発明は、これらの課題を解決するためになされたものであり、電気系や機械系、固体系や流体系など全ての物理系で表現できる、1つの機能の部品から多くの部品を組み合わせた機械、更に複数の機械を組み合わせたシステムに至るまでの動作をシミュレートするためのモデルを統一的に作成するシミュレーションモデル作成方法及びその装置と記憶媒体を提供するものである。
【0014】
すなわち、多くのの非線形特性を含んでも、演算処理量を極小化できて且つ精度向上が図れる。各モデル、特に非線形特性を容易に入れ子構造にできるシミュレーションモデル作成方法及びその装置と記憶媒体を提供する。
【0015】
簡単に機能モデルの結合処理が行えるシミュレーションモデル作成方法及びその装置と記憶媒体を提供する。
【0017】
機能再現モデルの作成が容易となるシミュレーションモデル作成方法及びその装置と記憶媒体を提供する。
【0018】
統合された機能再現モデルの論理的な把握や再利用が可能なシミュレーションモデル作成方法及びその装置と記憶媒体を提供する。
【0020】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明のシミュレーションモデル作成方法は、下位部品の機能を示す下位機能再現モデルであって、入出力状態量が位差量及び流動量である複数の下位機能再現モデルを用いて、複数の前記下位部品により構成される上位部品の機能を示す上位機能再現モデルを作成するために、コンピュータが実行するシミュレーションモデル作成方法であって、前記下位機能再現モデルは、非線形要素を含む場合に、該非線形要素を線形要素に置き換えると共に、置き換えた前記線形要素のパラメータを決定する情報をリンクして線形モデルとされたものであり、前記コンピュータは、複数の前記下位機能再現モデルを格納する格納手段と、ユーザが、該格納手段に格納された複数の下位機能再現モデルの中から複数の前記下位機能再現モデルを選択するための入力手段と、演算制御を行う演算制御部とを有するものであり、前記コンピュータの演算制御部が、前記ユーザによる前記入力手段を介した複数の前記下位機能再現モデルの選択を受け付ける入力ステップと、前記コンピュータの演算制御部が、前記入力ステップで受け付けた、ユーザが選択した複数の前記下位機能再現モデルを相互に位差量及び流動量を介して結合し、入出力状態量が位差量及び流動量であると共に線形要素で表現された線形モデルであって、前記入力ステップで受け付けた、ユーザが選択した複数の前記下位機能再現モデルに対応する複数の下位部品により構成される上位部品の機能を示す、前記上位機能再現モデルを作成する統合処理ステップと、前記コンピュータの演算制御部が、前記入力ステップで受け付けた、ユーザが選択した複数の前記下位機能再現モデルに前記パラメータを決定する情報がリンクされている場合、該情報を、前記統合処理ステップで作成された前記上位機能再現モデルにリンクさせるリンクステップとを有することを特徴とする。
【0033】
本発明のシミュレーションモデル作成システムは、下位部品の機能を示す下位機能再現モデルであって、入出力状態量が位差量及び流動量である複数の下位機能再現モデルを用いて、複数の前記下位部品により構成される上位部品の機能を示す上位機能再現モデルを作成するシミュレーションモデル作成システムであって、前記下位機能再現モデルは、非線形要素を含む場合に、該非線形要素を線形要素に置き換えると共に、置き換えた前記線形要素のパラメータを決定する情報をリンクして線形モデルとされたものであり、ユーザによる複数の前記下位機能再現モデルの選択を受け付ける入力手段と、ユーザが選択した複数の前記下位機能再現モデルを相互に位差量及び流動量を介して結合し、入出力状態量が位差量及び流動量であると共に線形要素で表現された線形モデルであって、ユーザが選択した複数の前記下位機能再現モデルに対応する複数の下位部品により構成される上位部品の機能を示す、前記上位機能再現モデルを作成する統合処理手段と、ユーザが選択した複数の前記下位機能再現モデルに前記パラメータを決定する情報がリンクされている場合、該情報を、前記統合処理手段で作成された前記上位機能再現モデルにリンクさせるリンク手段とを有することを特徴とする。
【0035】
本発明の記憶媒体は、上記のシミュレーション作成方法をコンピュータに実行させるプログラムを記憶したことを特徴とする。
【0043】
本発明の構成によれば、
▲1▼統合された上位支配方程式には、他の系と接続するための入出力状態量以外は、未拘束の状態量(独立変数)が存在しない。
▲2▼統合した上位支配方程式から、逆に機能モデルが再現可能である。
▲3▼下位機能モデルの具体的な機能は、上位に統合された等価機能モデルで抽象的な機能に集約される。
▲4▼統合前と統合後の支配方程式は同一になり、更に上位の機能モデルに統合できる。
▲5▼製品の部品構成と機能モデルを1対1に対応させた、展開と統合が可能である。
▲6▼実態で不要と見なせる剛性や質量などを消去することにより、モデルが低次元化できる。
▲7▼統合で機能モデル内部に隠蔽された状態量は、観測方程式を用い観測できる。
▲8▼展開と統合は、標準化された手順に従って全てコンピュータ上で行える。
などの機能が達成される。
【0044】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。まず、本実施の形態の構成を示す。
1.本実施の形態の構成の説明
2.用語及び記号の説明
<2−1.線形モデルの基本機能要素>
(2−1−1.状態量)
(2−1−2.特性)
(1)特性
(2)係数
(3)スイッチ要素
(4)側負荷
<2−2.モデル化の記号>
(2−2−1.線形モデルの記号)
(2−2−2.非線形モデルの記号)
<2−3.非線形の信号>
(1)操作量
(2)代入量
<2−4.論理演算子>
(1)推定観測量
(2)論理演算子
<2−5.非線形演算子>
(1)絶対値
(2)符号
(3)2乗
(4)初期化(積分)
(5)条件判定
(6)関数式
(7)操作
(8)ON-OFFスイッチ
(9)論理積、論理和
3.本実施の形態の基礎概念
<3−1.機能、機構モデルの概念>
<3−2.位差量と流動量による機能モデルの表現>
<3−3.モデルの基本要素>
(3−3−1.蓄積、損失特性と分配要素)
(3−3−2.係数要素)
(3−3−3.機能要素:線形)
(3−3−4.機能モデル)
(3−3−5.機構要素:非線形)
(3−3−6.機構モデル)
(3−3−7.部品モデル)
<3−4.大規模システムにおける同定>
<3−5.本実施の形態の機能モデルの統合処理の概念>
4.機能モデルの展開と統合処理の概念
<4−1.基本概念>
<4−2.展開処理(構造化)>
(4−2−1.1対1の双対結合)
(4−2−2.1対多の双対結合)
(4−2−3.機能モデル内部の符号変換)
<4−3.統合処理>
<4−4.等価変換処理>
(4−4−1.双対変換)
(1)蓄積特性の双対変換
(2)伝達、損失要素の双対変換
(3) 供給、負荷要素の双対変換
(4−4−2.等価変換)
(1)損失特性の等価変換
(2)蓄積特性の等価変換
(3)分配結合の等価変換
(4)加算結合の等価変換
5.実行機能モデル
<5−1.実行支配方程式への変換>
(5−1−1.実行機能モデルの入力拘束)
6.各処理の装置での演算処理の例
<6−1.全体像>
<6−3.構造化モデルの定式化>
<6−4.階層化モデルの定式化>
(6−4−1.定式化)
(6−4−2.支配方程式の拘束条件)
(6−4−3.RLC直列回路の階層化例)
<6−5.等価変換の支配方程式>
(1)蓄積要素の双対変換
(2)伝達、損失要素の双対変換
(3) 供給、負荷要素の双対変換
(4)損失特性の等価変換
(5)分配結合の等価変換
(5-1)全体支配方程式
(5-2)状態量の分配、加算処理
(5-3)全体支配方程式の列並替え
(5-4)微分状態量の分配結合処理
(6)加算結合の等価変換
(6-1)全体支配方程式
(6-2)状態量の分配、加算結合処理
(6-3)微分状態量の加算結合処理
<6−6.実行支配方程式>
(6−6−1.過渡状態の実行支配方程式)
(6−6−2.定常状態の実行支配方程式)
7.モデルの展開と統合の具体例
<7−1.処理手順の例>
<7−2.リヤワイパーシステムの例>
(7−2−2.モータのモデル化)
(7−2−3.翼の剛性の低次元化)
(7−2−4.構成部品の要素モデル)
(1)窓ガラスとワイパー翼のモデル化
(2)減速機とモータのモデル化
(3)電池と操作系のモデル化
(7−2−5.統合による等価モデル変換)
(1)階層3から階層2への展開と統合
(2)階層2から階層1への展開と統合
(7−2−6.シミュレーション結果)
<7−3.自動車車両の例>
(7−3−1.シンボル化モデルによるモデル化)
(7−3−2.機能部品のモデル化)
(7−3−2−1.エンジンのモデル化)
(1)機能モデル
(2)支配方程式
(3)機構モデル
(4)等価機能モデル
(5)モデル登録
(7−3−2−2.その他の車両用機能部品のモデル化)
(1)ロックアップ付きトルクコンバータモデル
(2)変速機モデル
(3)ブレーキモデル
(4)タイヤモデル
(5)車体モデル
(7−3−3.車両用機能モデルの展開と統合)
(7−3−3−1.パワートレインの機能モデル)
(7−3−3−2.車体系と車両の機能モデル)
8.本実施の形態のシステム構成例
<8−1.ハードウエア及びソフトウエアの概略構成例>
<8−2.ハードウエア構成の具体例>
<8−3.処理手順の具体例>
<8−4.ワーパーのモデル化におけるデータ構成例>
(8−4−1.RAMの構成例)
(8−4−2.データベースの構成例)
9.機能・機構モデルの運用システム
<9−1.モデルの再利用法>
<9−2.モデル集のモデル内容>
(9−2−1.詳細機能モデルのパッケージ)
(9−2−2.等価機能モデルのパッケージ)
(9−2−3.簡易機能モデルのパッケージ)
(9−2−4.シンボル化モデルのパッケージ)
10.ビジネスモデル
<10−1.機能、機構モデルの取引>
<10−2.製品開発における発注製品の性能承認>
<10−3.評価モデル付き機能部品販売>
11.シミュレーションの実行
<11−1.シミュレーションモデル作成のための資源>
<11−2.シミュレーションモデルの作成>
<11−3.シミュレーションの実行>
2.用語及び記号の説明
まず、本明細書で使用する用語及び図面で使用する記号などについて、その定義をしておく。
【0045】
<2−1.線形モデルの基本機能要素>
(2−1−1.状態量)
状態量は、次の流動量と位差量に分けることができる。
▲1▼ 位差量とは、電圧、速度、流速などのエネルギーを運ぶ媒質の移動量や多さを表す状態量を指す。
▲2▼ 流動量とは、電流、力、流体圧力などの単位量の媒質が有するエネルギーの強さや量を表す状態量を指す。
【0046】
この流動量と位差量は、その対がエネルギーとなる組み合わせで使用する。例えば、電圧と電流の積が電力になり、速度と力の積が仕事率になることをモデル化に利用する。このことは、機能モデルの根幹がエネルギー原理にあり、系のモデルを位差量と流動量で表し、両者に関係する物理法則がモデル上で全て表せることを意味する。
【0047】
位差、流動量の積分値は、エネルギーの多さや強さの蓄積量を表し、例えば機械系の移動位置と力積などがそれに対応する。
【0048】
位差量とその蓄積量で接続される系を位差系と呼び、同様に流動量の系を流動系と呼ぶ。この両系は、機械や電気理論の根幹であり、機械工学では、流動系の力(圧力)を基本にし、位差系の速度又はその積分量の距離(位置)を結果として扱う。一方電気工学では、位差系の電圧を基本にし、流動系の電流を結果として扱う理論体系と見ることができる。ここで述べるモデル化手法は、この位差、流動系を等価に扱い、両者間の変換の双対性を利用しており、各工学分野の理論や法則を相互乗り入れして垣根を取り払う手法となっている。
【0049】
(2−1−2.特性)
(1)特性
特性は、流動量と位差量を関係付けるものであり、系の性質を表し、エネルギーを蓄積する蓄積特性と、電気抵抗や粘性減衰のようにエネルギー損失を伴う損失特性の2種類に分けられる。また、この特性は、位差量と流動量の積で表すエネルギーを生成し、同時に内部でエネルギーを生成できる。この内部エネルギーは、温度や距離に変換されて出力状態量に持たせることができる。
▲1▼ 蓄積特性は、インダクタンスやばねこわさのように、流動量の変化をエネルギーとして蓄え位差量に変えるものと、電気容量や質量のように位差量の変化をエネルギーとして蓄え流動量に変えるものに分けられる。
▲2▼ 損失特性は、電気容量の漏洩抵抗や流体による粘性抵抗のように位差量に依存する損失を流動量に変えるものと、電気抵抗や材料圧縮による内部減衰のように流動量に依存する損失を位差量に変えるものに分けられる。
【0050】
(2)係数
係数とは、流動量同士又は位差量同士を関係付ける数や量のことあり、次の4種類に分けられる。
▲1▼ 変圧器巻数比や歯車比のように、同一の物理単位系同志を関係付ける無単位量。
▲2▼ モータのトルク定数と速度定数、タイヤ半径、ピストン断面積など、異なる物理単位系同士を関係付ける有単位量。
▲3▼ 多次元座標空間で運動するリンク機構や車の運動などの状態量の座標系を変換する無単位量。
▲4▼ 損失率や制御系のゲインのように、対となる位差量又は流動量の片側のみに掛ける無単位量。この係数を内蔵する系は、エネルギーの増減を伴う。
【0051】
上記▲1▼〜▲3▼の係数は、対となる位差量と流動量の双方に同一係数を掛け、エネルギーの増減を伴わないように変換する。この位差量と流動量に共通の意味を持つ係数を適用する変換係数の概念は、機能モデルの特長の1つであり、この概念が物理単位系を超えたモデル化、および同じモデル内に異なる物理単位系を同居させることを可能にする理由の1つである。また、蓄積特性や損失特性に対し、この係数は2乗で作用する重み係数の働きを持っている。
【0052】
(3)スイッチ要素
スイッチ要素とは、機能モデル内部の状態量を接続、開放する論理要素であり、これが組み込まれた機能モデルは、モデル構造を変化させる非線形モデルとなる。この要素の係数値は、1(true)と0(false)又は1、0、−1の無単位量で状態量を断続する特殊用法の係数と考えることができる。
【0053】
(4)側負荷
側負荷とは、モデル内部で状態量の生成又は吸収する働きをし、位差量と流動量に対応した2種類がある。この側負荷は、対にならない単独の位差量又は流動量を全て側負荷とし、系内部から未拘束の状態量を排除する意味を持っている。
▲1▼ 電池の内部電圧、ダイオードの電圧降下、機器の周囲温度のように、位差量に対応するもの。
▲2▼ 摩擦トルク、クラッチの伝達トルク、一定の電流を供給する電流源のように、流動量に対応するもの。
▲3▼ 側負荷の働きは、電池の内部電圧のように状態量を生成する発生源と、摩擦トルクのように状態量を吸収する吸収源に分かれる。この両者はモデルに組み込まれることで生成又は吸収の働きが決まる。
【0054】
<2−2.モデル化の記号>
(2−2−1.線形モデルの記号)
モデルを表すブロック線図は、一般的なブロック線図(139)の規則を踏襲し、これに表1と表2に示す記号を加えてモデル化する。同図で示す記号は、主に線形のモデルで使用する。
【0055】
【表1】
【0056】
【表2】
【0057】
(2−2−2.非線形モデルの記号)
雑多の種類がある非線形系のモデル化には、それぞれに応じた表現法があるが、要は、非線形性の内容、性質、働きなどをモデル化する規則と方法を明らかにして視覚的に理解し、かつ数学モデルに変換可能な表現であれば、モデル化の目的が満たされる。表3と表4に非線形のモデル化に使用する代表的な記号を示す。
【0058】
【表3】
【0059】
【表4】
【0060】
<2−3.非線形の信号>
(1)操作量
操作量とは、位差量、流動量以外の絶対値、符号、状態量の自乗などの変換された物理量と、スイッチ演算子などを操作する0(False)と1(True)などの論理的な信号を指す。ただし、入子構造にした機構モデルからそれを組み込む相手の機能モデルのスイッチ要素を操作する場合は、次の代入量で表わすことが望ましい。尚、速度を積分した位置や変位なども、これで表わす場合がある。
【0061】
(2)代入量
代入量とは、機構モデルから特性に値を代入する線を指す。代入量の信号線名は、これらの非線形特性の変数名と同一名称にできる。この代入量によって機能モデルから機構モデルを独立させることができる。そして、この代入量の切替えが、非線形特性と機構モデルを入子方式にする。
【0062】
<2−4.論理演算子>
スイッチ要素には論理演算子を使用し、この操作に条件判定、推定観測量などを使用する。
【0063】
(1)推定観測量
条件判定などで、一周期先の標本化時刻の状態量を観測する記号がある。この記号が指定された状態量は、現標本化時刻(k)の支配方程式を実行後、内部状態量の従属変数を独立変数に代入して推定観測方程式を実行し、次の標本化時刻(k+1)の状態量を推定する。この推定観測量が,本論文で提案するモデル化手法で非線形要素をモデル化するために必要な概念の1つである。
【0064】
(2)論理演算子
スイッチ要素に使用する論理演算子については、後で詳しく説明する。本論文では、スイッチ演算子を総称してスイッチ要素と呼ぶ。
【0065】
<2−5.非線形演算子>
非線形演算子は、機能モデルに組み込む機構モデルのモデル化を行うための記号であり、主に観測量又は操作量の変換に使用する。
【0066】
(1)絶対値
状態量、操作量の符号を除いた絶対値を取り出す。数学モデルでは、b=abs(A)などの表現で記述する。
【0067】
(2)符号
状態量、操作量から正負(±)の符号を取り出す。数学モデルでは、b=sign(a)などの表現で記述する。
【0068】
(3)2乗
状態量、操作量を2乗した値の操作量を生成する。この記号は、参考図3で示す2個以上の入力を乗算する記号と同じであり、1入出力のときは2乗記号となる。
【0069】
(4)初期化(積分)
蓄積特性の微分量を零値又は定められた積分値に初期化することができる機能を持つ積分器。
【0070】
(5)条件判定
条件判定は、参考図4で示す推定観測量の記号で観測された次の標本化時期の観測量や、機構モデル内で生成された操作量からスイッチ要素の操作量を生成する記号であり、条件判定式には、大小関係、等値関係、論理演算などの演算子を使用する。演算結果は、成立したとき1(true)を不成立のとき0(false)の操作量を出力する。この場合の操作量又は代入量を示す白抜きの矢印には、操作変数名がつけられる。
【0071】
(6)関数式
状態量、操作量の関数値を操作量として取り出す指定を行う。例えば関数名sin()の枠内にAを入力しBを出力する指定は、B=sin(A)の数学モデルを意味する。
【0072】
(7)操作
モデルを外部から操作する信号を生成する。例えば、スイッチの操作などがある。
【0073】
(8)ON-OFFスイッチ
状態量及び信号などの接続、遮断を行なうノーマルオープン(常時OFF)、ノーマルクローズ(常時ON)、トランスファー(切替え)の機能を持つスイッチ要素。
【0074】
(9)論理積、論理和
状態量及び信号などのファジー論理積、ファジー論理和、ファジー否定により、論理演算を行なう論理要素。
【0075】
3.本実施の形態の基礎概念
<3−1.機能、機構モデルの概念>
機能モデルはコンピュータを利用することが必須の要件であり、対象となる製品および部品の実態と整合が取れた製品開発に融合できるモデル化手法でなければならない。これらの製品及びその製品開発に共通する概念としては、これまでオブジェクト指向およびシステム設計などの概念があり、製品開発の中で利用するモデルの展開と統合の概念は、これに沿った考え方にしておくことが必要である。
【0076】
ここで提案する機能、機構モデルは、多くの部品からなる機械の製品開発に適用可能にするため製品、部品から適用する技術と理論を機能として捉え、これを互いに連結して展開する構造化、および抽象化された上位機能に統合する統合と具体的な細部の機能に展開する分開による階層化の概念を必要とする。
【0077】
この階層化された各機能部品(機能モデル)の要素内部は、状態量に比例する性質を有する線形特性と、状態量に比例しない非線形特性を内臓している。したがって、各機能モデルを展開、統合するには、この両者を分けて扱う。この関係を図1に機能、機構モデルの構成概念として示す。
【0078】
図1は、特性と係数の線形性を機能モデルで表し、非線形を入子構造の機構モデルで表している。この機構モデルは、時間経過と共に変化する状態量によって機能モデル内の各特性、係数の値を更新する。この特性、係数値を更新する機構モデルを切り離した機能モデルは、線形モデルとして扱うことができる。したがって、機能部品(機能モデル)を互いに接続する系の展開と、これを1つの機能部品(機能モデル)としてまとめる統合は、線形性が保証された機能モデルで行なう。また、系が包含する非線形性は、この切り離された機構モデルを統合後に再び関連する特性、係数に関連付けて、下位から上位の機能モデルに継承させる。言いかえると、下位機能モデル群が包含する非線形性は、機構モデルが特性、係数を介して上位機能モデルに自動的に受け継ぐことを意味する。尚、機構モデルには、ここで述べた非線形の特性、係数値を生成する働き(用途)とは別に、線形の特性値をまとめた等価特性を生成する働き(用途)も持つ。
【0079】
<3−2.位差量と流動量による機能モデルの表現>
本実施の形態のシミュレーション装置に特徴的な、ユニット表現の基本について説明する。
【0080】
ある実体のシステムを構成する部分機能はエネルギーの授受を行うシステム要素としてモデル化される。このエネルギーモデルは、第2図に示すように、ある部分機能をブラックボックスとすると、このブラックボックスの内部損失と、当該ブラックボックスに入力される入力エネルギーと、当該ブラックボックスから出力される出力エネルギーとで構成され、入力エネルギー=(出力エネルギー+内部損失)で表される。入力エネルギー及び出力エネルギーは、それぞれ位差量と流動量からなる状態量で表される。位差量は実体に加わる入出力エネルギーのポテンシャル成分を表す状態量で、流動量は実体に加わる入出力エネルギーのフロー成分を表す状態量である。
【0081】
そして、状態量は入力状態量と出力状態量の対とし、入力状態量は入力位差量又は入力流動量として表され、出力状態量は出力位差量又は出力流動量として表される。すなわち、入出力エネルギーは入力位差量と出力流動量の対、又は入力流動量と出力位差量の対とするいずれかで表される。
【0082】
位差量と流動量の具体的な例を、表5に示す。
【0083】
【表5】
【0084】
前記エネルギーモデルをさらに具体的に説明すると、次の通りである。モータの働きをブラックボックスとし、入力エネルギーの流動量に電流(値)を与えると、その電流(値)に対応したモータトルクを発生し、入力エネルギー側の位差量にはモータの内部抵抗とモータ角速度に対応した誘起電圧(値)が返される。この場合、電流が入力流動量で、電圧が出力位差量となり、(電流×電圧)が入力エネルギーとなる。すなわち、回転トルクを一定とした場合、電流を多く流すとモータの回転数が増加してモータの誘起電圧が高くなる。一方、トルクが出力流動量として出力され、モータの角速度が入力位差量として返される。この場合、(トルク×角速度)が出力エネルギーとなる。
【0085】
なお、この例において、位差量である電圧を入れることにより流動量として電流が返されると考えてもよい。この場合には、第2図の矢印が逆になり、電圧が入力位差量となり、電流が出力流動量となる。
【0086】
前記実体のブラックボックスの内部は、例えば、実体の固有特性を表す閉ループ系(固有値系)と、入力エネルギーを閉ループ系に供給する環境特性を表す開ループ系で構成される。閉ループ系では、出力状態量がフィードバックされて入力状態量に加えられ状態量の永久ループを形成し、このループに包含されている内部要素が固有値を確定する。開ループ系では、入力状態量が出力状態量に加えられ、状態量の流れを形成し、実体に加えられる入力エネルギーとなる外部状態量および固有値の入力エネルギーとなる内部状態量の間の流れを確定する。したがって、実体に加えられるエネルギ群は、位差入力エネルギー群と流動入力エネルギー群を環境系に加え、この環境系を経由して固有値系に位差、流動エネルギー群が加わる。
【0087】
このようにして製品を構成する全ての部分機能をシステム要素としてエネルギーモデル化し、各システム要素をある接続関係で組み合わせれば製品がモデル化される。
【0088】
本実施の形態によるモデルでは、モデルが「機能モデル」(functiona model)と「機構モデル」(mechanism model)とから構成される。
【0089】
機能モデルは、上述の「位差量」(potential)と流動(flow)という、2つの一般化された「状態量」によって記述される。機能モデルはモデル化対象となる実体の動特性を表し、サブシステム(subsystem)を統合して全体システム(inetgrated system)を形成する役割を担う。機構モデルは、機能モデルのパラメータ(parameters)に代入される物理特性値(physical characteristic)を与え、実体のメカニズムに依存したモデルとなる。この階層構造化されたモデル構成によって、一般に複雑化する機構モデルの扱いに苦慮することなく、統一された方法でサブシステムのモデルを統合して全体機能をモデル化することができる。
【0090】
機能モデルはシステム方程式によって表され、標本化周期毎に機構モデルによるパラメータの更新を行う。従って、メカニズムによる特性の非線形性は、機能モデルにおいて標本化周期毎に線形化される。
【0091】
線形と非線形を含む機能モデルの例を図3に示す。同図は、上側で示す質量Mの台車をバネこわさKで押す時のモデル化例である。同図には、Dが速度の二乗に比例した走行抵抗Dと、路面との摩擦力Fが発生している。同図のモデル化は、KとMが蓄積特性、Dが粘性抵抗係数、Fが側負荷の標準化された機能要素を組み合わせて接続することで、モデル化され、これに走行抵抗の非線形性をDの特性を変えることで実現している。
【0092】
図3の支配方程式は、数1のようになる。尚、走行抵抗の式は省略する。
【0093】
【数1】
【0094】
<3−3.モデルの基本要素>
(3−3−1.蓄積、損失特性と分配要素)
機能モデル内部に描かれている位差量と流動量の入出力状態量を有する各特性は、これを機能要素として扱うことができる。この機能要素は、複数の機能モデル間を互いに接続する分配記号と加算記号の対に、蓄積特性又は損失特性が組み込まれたものを基本とする。この機能要素は、流動量と位差量に対し一方の総和が零の時は片方が等値となる対で接続することが条件となる。この分配、加算記号の対に蓄積特性と損失特性を組み込んだ、機能要素の基本形を図4に示す。
【0095】
図4の左側は、分配要素の基本形の入出力状態量PCOとFCIに蓄積特性を組み込んだ蓄積特性の基本形である。同様に右側は、損失特性を組み込んだ伝達要素の基本形である。
【0096】
同図の分配要素の基本形は、機械系に当て嵌めると上側の位差量の分配が機械系の速度の連続性、下側の流動量が力の釣り合いを表す物理法則のモデルとなっている。同様に、電気系に当て嵌めると上側がキルヒホフの電圧則、下側がキルヒホフの電流則となる。尚、同図には、流動量の分配、位差量の加算を行なう上下対称の機能要素が存在する。
【0097】
この分配要素基本形に蓄積特性を組み込んだ同図左下の蓄積要素の基本形は、数2の支配方程式となる。
【0098】
【数2】
【0099】
同様に右下の伝達要素の基本形は、数3の支配方程式となる。
【0100】
【数3】
【0101】
数3の中のPxは,損失特性Dの入力位差量である。
【0102】
図4で示した、蓄積要素と伝達要素は、位差量と流動量の対で構成される入出力状態量が流れる方向を反転させることで、製品、部品の内部機能を再現するための機能要素に変換することができる。図5は、この例を示したものである。
【0103】
図5の左下の(c)蓄積要素は、(a)蓄積要素の基本形内部にある蓄積特性の入出力状態量を反転させて生成ものである。同様に、同図中央下の(d)伝達要素は、(b)伝達要素の基本形内部の損失特性の入出力状態量を反転させて生成したものである。また、同図右下の(e)損失要素は、(b)伝達要素の基本形内部の左側入出力状態量を反転させて生成したものである。
【0104】
これらの各機能要素と機械系、電気系の特性の関係は、(c)蓄積要素が質量、電気容量、(d)伝達要素が流体継手、(e)損失要素が粘性抵抗、電気抵抗などを表す機能要素である。尚、同図で変換した(c)蓄積要素、(d)伝達要素、(e)損失要素には、(a)蓄積要素と(b)伝達要素を上下対称にした基本形から変換した機能要素がそれぞれ存在する。
【0105】
以上の状態量の対を反転させて機能要素の生成又は変換を行なうことを、本実施の形態では双対変換と呼ぶ。また、広義の意味で、機能要素を上下対称形に変換した機能要素も双対変換と呼ぶことにする。この双対変換については、以下の展開、統合において更に具体的にその使用法を説明する。
【0106】
この双対変換された機能要素の数学モデルは、以下のようになる。
【0107】
蓄積要素の支配方程式:
【0108】
【数4】
伝達要素の支配方程式:
【0109】
【数5】
損失要素の支配方程式:
【0110】
【数6】
機能要素は、位差、流動量と特性を組み合わせて構築されたものである。この機能要素の入出力状態量となる位差、流動量の対は、他の機能要素と接続されて複雑なモデル化を可能とする。この位差、流動量の対は、その積がエネルギーとなることから、構築された機能モデルの機能要素間でエネルギーの受け渡しが行なわれていることを意味する。また、位差、流動量の対は、互いに逆方向に状態量を流すことと、系の状態により受け渡されるエネルギーの流れ方向が変わることから、状態量の対とエネルギーが流れる方向には深い関係があることが分る。例えば、自動車がエンジンのエネルギーを車体に与えて走ると同時に、坂道では車体からエンジンにエネルギーが与えられエンジンブレーキを掛けることができる。このことは、機能要素が他の系に対してエネルギーの供給と消費の働き(機能)を有することが分る。
【0111】
この機能モデルが有するエネルギーと状態量の関係を整理すると、以下の3種類に分けることができる。
【0112】
(1) 供給エネルギー
・機能要素から他の系に出力するエネルギー。
・入出力状態量は、対間で流が折返し分配結合側の出力状態量がエネルギーと同一方向に流れ、加算結合側の入力状態量が逆方向に流れる。
・加算結合側の入力状態量側は、エネルギーの流に逆らうので負となる。
【0113】
(2) 負荷エネルギー
・他の系から機能要素に入力されるエネルギー。
・入出力状態量は、対間で流が折返し加算結合側の入力状態量がエネルギーと同一方向に流れ、分配結合側の出力状態量が逆方向に流れる。
・加算結合側の入力状態量側は、エネルギーの流に沿うので正となる。
【0114】
(3) 伝達エネルギー
・機能要素を介して他の系間で受け渡すエネルギー。
・入出力状態量は、対間で流が折返さない。
・入出力状態量は、エネルギーの伝達なので正となる(符号を持たない)。
【0115】
これら関係から機能要素のエネルギーの出入りと状態量(対)の関係を示した例を図6に示す。
【0116】
図6は、図5から双対変換で生成した主な機能要素で、図中の箱型矢印はエネルギーが流れる方向を示し、点線の折り返し矢印はエネルギーに対する入出力状態量の流を示す。同図の蓄積要素、伝達要素は、左側が他の系の負荷となる負荷エネルギーを受け、右側が他の系を駆動する供給エネルギーを送る。損失要素は、左側が他の系から負荷エネルギーを受け、右側が左右に接続されている系間に伝達エネルギーを伝えている。また、負荷要素は、損失要素の右側の出力状態量を廃して入力状態量を側負荷とした要素で、左側に接続されている系から受けた負荷エネルギーを消費する。
【0117】
(3−3−2.係数要素)
製品は、ユニット化された機能部品が互いに結合して、機能が複雑に絡み合っている。このような複雑なシステムを再現するモデル化には、展開された各機能部品間で受け渡される物理状態量を整理して、製品内部に展開されている各機能部品を独立に扱えるモデルの構造化が重要である。この各機能部品間の構造化は、電気系の結線、機械系の軸継手、流体系の流体継手など色々な方法で状態量が結合(接続)されている。機能モデルの構造化は、この実態間を結合する状態量をモデル間の結合に置き換えることで実現できる。
【0118】
機能モデル間は、位差量と状態量の対で結合して構造化する。この結合の条件は、結合される機能モデル間のエネルギーを変化させないことである。このエネルギーを変化させないで機能モデル間を結合する機能要素には、図7の(a)で示す係数要素がある。また、同図の(b)は、分配記号と加算記号で複数の機能モデル間を状態量の対で接続する前述の分配要素である。同図の係数要素は、上側と下側の位差量と流動量の対を両側に持ち、これに係数値Nを掛けるようになっている。また、分配要素は、同図の(a)の係数要素の値を1にした特殊な状態を表している。これの関係を式で表すと次のようになる。
【0119】
【数7】
【0120】
【数8】
【0121】
数7は、上側の式が図7の分配結合、下側が加算結合を示している。数8は、図7の左側の式を示し、上の式が位差量側、下の式が流動量側、式の右項の位差量Pboと流動量Fbiの積がエネルギーとなり、同様に左側のPaiとFaoの積がエネルギーとなる。これを式で示すと次の式で示すようなる。
【0122】
【数9】
【0123】
数9からPbo・FbiとPai・Faoの積は等値となり、同一エネルギーになること条件に位差量と流動量の対の配分比を変える働きをすることが分る。
【0124】
この係数要素は、係数値が単位を持つと、並進運動系と回転運動系を繋ぐコロ半径、流体系と並進運動系を結ぶピストン断面積、モータ内部の電気系と回転系を結ぶモータ定数などの、異なる物理単位系の機能モデルを結合する働きを持つ。また、単位を持たないと、歯車比、リンク比、流体の断面積比、電気系の変圧器などの、同じ物理単位系の機能モデルを結ぶ働きをする。
【0125】
また、剛性を無視した締結、電気部品の配線など機能部品が直結されている状態に合わせて、機能モデル間を接続する場合は、係数値が1となる。尚、ここでは、特に断らない限り係数値を1とする。
【0126】
機能モデルの構造化は、図7の係数要素又は分配要素でモデル間を接続して展開する。その方法には、以下の2種類がある。
▲1▼ 2個の要素間を係数要素によって、位差量と流動量の対を1対1で結合する方法。
▲2▼ 1個の要素と複数の要素を分配要素によって、1対多の関係で位差量と流動量の対で結合する方法。
【0127】
▲1▼は機能モデル群を構造化するの基本的な法、▲2▼は複雑に絡む機能モデル群を構造化する方法である。後者の1対多の結合は、1対多から1対1の結合関係に変換することで1対1の構造化法を適用して、後で述べる構造化された機能モデル群を1個の系に統合することができる。この展開を支配方程式上で行なうには、結合された各要素の支配方程式を一個のマトリクス上に配置した構造支配方程式を使って数学モデル上で行うことができる。
【0128】
(3−3−3.機能要素:線形)
図8の機能要素のモデルは、この記号を使って表した機能要素の基本形を前に述べた双対変換の規則にしたがって変換した、線形機能を表す機能要素の組み合わせである。
【0129】
図8は、上側の列が位差系の機能要素群、中の列がある流動系の機能要素群、下側の列の左側2個が分配要素、次ぎの3個が係数に関する機能要素である。これらの要素は線形の機能要素で、これでモデル化された機能モデルは線形モデルとなる。
【0130】
(3−3−4.機能モデル)
線形の機能要素でモデル化された機能モデルは、異なる物理系であっても同じ機能を果たすものであれば共通の機能モデルとなり、この異なる物理系の機構は相互に置き換え可能である。これを入れ子とも言う。
【0131】
ここでは、機能が同じで異なる機構を共通化する機能モデルの例として、柔軟支持剛体はりと遊星歯車列を示す。各実体構造は、その内部機能をモデル化して整理すると、図9となる。図9から、柔軟支持剛体はりの並進運動、回転運動、並進回転運動の内部機能は、遊星歯車列の公転運動、自転運動、自転公転運動の連結にそれぞれ対応し、その機能モデルが同一であることが分る。これは、物理単位系及び機構が異なっていても、機能が同じであれば、内部の特性値、係数値を与える機構モデルを組替えれることで同じ機能モデルが利用できることを示している。
【0132】
弾性支持剛体はりと遊星歯車列の各特性は、Mがはりの質量(キャリヤの公転運動に関する慣性モーメント)、Jがはりの慣性モーメント(遊星歯車の自転運動の慣性モーメント)、G1がはりの重心点からの左側支持点までの距離(外歯車と遊星歯車間の伝達比)、G2がはりの重心点からの右側支持点までの距離(内歯車と遊星歯車間の伝達比)である。同図左側の弾性支持剛体はりの各状態量は、v3、f3がはり、v1、f1が右側支持点、v2、f2が左側支持点の速度と力である。同様に遊星歯車列の各状態量は、ω3とT3がキャリヤ、ω1、T1が外歯車、ω2、T2が内歯車の角速度とトルクである。同図のはりの回転運動と遊星歯車の共通の状態量として、Tg、ωgが角速度とトルクを示し、xmとxJが内部状態量である。
【0133】
この弾性支持剛体はりと遊星歯車列は、その働きを機能別に分けて示すと図9のようになる。
【0134】
図9は上記の状態量に対し、vC、fCがはり並進運動の速度と力の成分、ωCとTCがキャリヤの公転成分の角速度とトルクを示している。尚、柔軟支持剛体はりの1と2の添え字は、1がはりの左支持部側、2が右支持部側を示し、同様に遊星歯車列は、1が外歯車側、2が内歯車側を示す。同図の各要素は、次ぎの左右の式となる。
【0135】
遊星歯車列のキャリヤおよび柔軟支持剛体はりの並進運動は、次式となる。
【0136】
【数10】
【0137】
遊星歯車およびはりの回転運動は、次式となる。
【0138】
【数11】
【0139】
外歯車と遊星歯車の公転と自転運動およびはりの並進と回転運動の左側の結合は、次式となる。
【0140】
【数12】
【0141】
同様に内歯車と遊星歯車およびはりの右側の結合は、次式となる。
【0142】
【数13】
【0143】
(3−3−5.機構要素:非線形)
図10の非線形の要素モデル例は、これらの記号によるモデルと非線形の処理関数をステンシルで登録したものである。特に、非線形要素は、部品の構造、機構及びそれらの内部特性に依存するため、モデル化の過程で生成されるものを登録して再利用する機会が多い。
【0144】
図10の非線形の機能要素は、左端の1列目にあるグラフ表現の3例が非線形特性をマップデータで持つ例である。このマップデータは、X軸が特性を検索する入力状態量、Y軸が検索された特性値の出力状態量を表し、この入出力状態量から機能モデルの特性値を決定するモデルである。2列目にあるブロック線図の3例は、非線形物理現象を表したものである。次ぎの3列目は、状態の応答特性と遅延を図式的に表した図で、これが組み込まれることで、機構モデル内の応答特性を時間的な非線形として扱うことができる。右端の上2例は、時刻歴の推移によって操作や動作状態が変化する状態を表したものである。最後の右下は、ゾーンマップの事例である。
【0145】
(3−3−6.機構モデル)
機能モデルは、内部に包含する特性と、これを結ぶ状態量の対で形成される。この内部特性は、構造、機構から決定される特性値を有し、数値データを持つものと、物理、工学理論及び実験式などの機構モデルが生成するものがある。前者は、同じ物理特性の水準値を更新して構造に適応させる一般的な方法と、異なる物理特性を与えて同一機能モデルで異なる構造、機構を再現するものがある。また、後者の機構モデルは、前者と同じ内容のものに加えて、機能モデルの使用目的又は再現精度などから複数のモデルを使い分けるものがある。このように機能モデルの内部特性は、その特性値を更新することで、働きを変えることができる。そのためには,内部特性値を更新するための構造、又は機構モデルを入子構造にして置くことが必要である。
【0146】
この関係を簡単に示した入子式内部特性の概念を、図11に示す。同図は、内部特性のデータD1、D2と機構モデルM1、M2には、物理単位系を超えて共通化されたデータと機構モデルを用意して、それぞれ特性組替え手段、機構組替手段を介して入替えることにより、要素Aを異なる構造、機構及び物理単位系に対応させることができることを示している。
【0147】
図12は、同一内部特性を生成する機構モデルを、複数の機構モデル群を入子構造にして組替える例を示す図である。
【0148】
図12は、非線形特性を有する車の走行抵抗を再現する機構モデル群を入子構造で組み込む例である。各機構モデル群は、走行抵抗の精度又は表現法などの違いによってモデル化され、シミュレーションの目的や機能モデルの使用目的などによって選択される。
【0149】
ここでは、他の入子構造の例として、図9で示す各機能モデルを展開して組み立てた全体の機能モデルを、図13に示す。当然のこととして、図9に示したように、柔軟支持剛体はりと遊星歯車列は、状態量の変数名が異なる以外は同一モデルで表現できる。この柔軟支持剛体はりと遊星歯車列が同一モデルとなることは、同じ機能モデルに、柔軟支持剛体はり又は遊星歯車列の内部特性値を用意して組み込めば、この機構や物理単位系が異なるモデルが使えることを例証している。
【0150】
この共通化された図13の機能モデルに共通する支配方程式は、以下のようになる。尚、同式は、遊星歯車列の状態変数名で表されている。柔軟支持剛体はりについては、同式の従属変数のωをvに、Tをfに置きかえる。
【0151】
【数14】
【0152】
次に、外歯車の歯数をz1、内歯車の歯数をz2、遊星歯車の歯数をzpとすると、図13の内歯車と外歯車から入力されたトルクをキャリヤに出力する場合の各歯車間の伝達比G1とG2は、次の式となる。
【0153】
【数15】
【0154】
遊星歯車に加わるトルクは、次の式となる。
【0155】
【数16】
【0156】
次に、図13で示した機能モデル内部にある伝達比G1、G2の係数を決定する機構モデルを組み替えて、異なる構造、機構の遊星歯車列をモデル化することを示す。
【0157】
図14で示す2S-C型遊星歯車列は、図13の機能モデルから明らかなように、キャリヤを中心に内歯車と外歯車が対象となり、入出力軸の組合せを変えても同一モデルで良いことを示している。
【0158】
従って、入出力軸間の伝達比は、次の式となる。
【0159】
【数17】
【0160】
数17と数15は、キャリヤ、内歯車、外歯車に対しトルクの入出力軸を変えたことによる伝達比の違いを表し、数14の支配方程式の入出力状態量とキャリヤ、内歯車、外歯車の関係を入れ替えれば、同一になること表している。従って、図13は、入力軸と出力軸を決めれば、内部の遊星歯車列に関係なく適用できることを意味し、また、キャリヤ、内歯車、外歯車と入出力軸の関係が伝達比で表せることを意味する。すなわち、遊星歯車列のモデルは、トルクを出力する軸に対する伝達比の関係を機構モデルにして機能モデルの伝達比に代入すればよいことになる。例えば、キャリヤをトルク出力にする時の機構モデルは数15となり、外歯車からトルクを出力する時は数17となる。
【0161】
次に、図15で示す基本軸がすべて太陽歯車から構成されている3S型の遊星歯車列の伝達比について検討する。S1を拘束軸、S2を入力軸、S3を出力軸として考えると、3軸共同軸となり、系の釣合い条件から入力トルクと拘束トルクの和が出力トルクとなる。公転系については、2S-C形と同様に遊星歯車の自転を零にすると、各軸は一体となって公転する。自転系についても、出力軸S3の回転を零にすることで、2S-C形と同じように考えることができる。
【0162】
従って、図15のS1軸、S2軸と自転系を結ぶ伝達比GS1、GS2は、次式で表される。
【0163】
【数18】
【0164】
次に、図16で示す太陽歯車、キャリア、遊星歯車が基本軸となるS-C-P形遊星歯車列の伝達比を検討する。遊星歯車へは、図で示すように自在継ぎ手などを用いて他の2軸と同軸上で入出力を行う。従って、入力および拘束トルクと出力トルクの関係は、2S-C形や3S形と同じである。また、遊星歯車の自転を零にすると、遊星歯車の中心軸は他の要素と一緒に公転するから、遊星歯車とつながる軸も他の基本軸と同じ速度で回転する。すなわち、遊星歯車を自転系で固定したときに公転系全体が一体となって回転する点も、他の形式と変わらない。
【0165】
従って、図16で示すS-C-P形の機能モデルは、他の形式と同一となり自転系をつなぐ伝達比GC、GUは次式となる。
【0166】
【数19】
【0167】
尚、数19の伝達比GU=1は、自在継ぎ手で直結されていることを示している。
【0168】
前述の図13は、出力トルク軸の選定を行なって機能モデルの伝達比を決定する機構モデルを持つ遊星歯車列の機能モデルである。また、2S-C型、3S型、S-C-P型の遊星歯車列の構造違いは、それぞれの機構モデルを入子構造で組替えるようになっている。これらの遊星歯車列は、1個の機能モデルを使って、構造、機構の異なる遊星歯車列の伝達比を機構モデルでモデル化して組替えることにより、各々の挙動、性能、特性が再現できる。
【0169】
また、これを数学モデル上で見ると、遊星歯車列に共通の機能モデルが数14の支配方程式で表され、構造、機構に沿ってモデル化された機構モデルは、数15,数17,数18,数19で表されている。そして、機能モデルの数14のG1、G2に機構モデルの各式を代入することで、異なった構造、機構の遊星歯車列を再現する数学モデルとなる。
【0170】
(3−3−7.部品モデル)
前述の記号や機能要素を使ってモデル化して登録された機能部品のステンシルとモデルの例を図17に示す。
【0171】
図17は、上側がクラッチ、ブレーキ、ガタの機能部品を機能要素と非線形要素を組み合わせてモデル化したモデルとこれを登録してアイコン化した例である。同様に下側は、モータ用の操作スイッチとモータを簡易モデルと詳細モデルとしてモデル化したモデルと登録したアイコンの例である。これらの汎用的な機能部品は、各種の装置に幅広く利用されるので、汎用モデルとして登録して各種装置のモデル化に際して組み込むことができる。
【0172】
非線形性を内部に包含する機能部品は、これを線形モデルと非線形モデルに分けて扱うことの必要性を前に述べた。ここでは、線形モデルの機能モデルを非線形化するための機構モデルを入子構造で組み込む方法について検討する。機能モデルは、部品などの構造的な違い、物理単位系の違いなどがあっても、機能が同じであれば、同一機能モデルとしてモデル化できる特徴がある。この機能モデルは、線形モデルとなるので、コンピュータ上で下位機能モデルを展開して上位機能モデルに自動的に統合することが可能である。また、これらの機能モデルは、同一機能であれば入子構造にして、自由に組み替えることも可能である。同様に、機能モデルの内部特性で更新して非線形性を実現する機構モデルについても同じことが言える。このことは、展開されている各機能、機構モデルは、事前に用意された類似機能の機能、機構モデル群を入子構造にして、コンピュータ上で自由に組替え可能なことを示している。
【0173】
物理単位系を超えた機能モデルでは、モデル間の共通性から同一機能のモデルがあれば、異なる物理単位系のモデルとしてシミュレーションを行なうことが可能である。これは、機能が異なる少数のモデルを用意すれば、構造、機構と物理単位系などの分野を超えて、機能モデルが共通化できることを示している。この類似の機能を有する機能モデル群は、図18に示すような入子構造にすることができる。
【0174】
すなわち、図18の要素Bは、要素B1、B2、B3を選択して組替えが可能なことを示すものである。この組替えは、要素Bが他の要素A、Cと接続している対がエネルギーとなる状態量数を保証することが条件である。従って、この条件が成り立てば、要素Bのモデル内部が変更されても良いことになる。
【0175】
例えば、図18の要素Bを変速機とすると以下のようになる。変速機には、手動、自動、無段の変速方式などがあり、これらの異なる方式の機能モデルを用意すれば、各変速機を入子方式にしてコンピュータ上で組替えながら、車両性能を比較評価できる。この変速機の組替えは、エンジン側の入力軸が角速度(位差量)、トルク(流動量)で対応し、車体側の出力軸が角速度(位差量)、駆動トルク(流動量)で対応することを条件として守れば、内部の機能を自由に企画、設計したモデルにして良いことを意味する。
【0176】
この一事例として示す図19は、車両モデルの中の変速機モデルとして、汎用変速機モデルと手動変速機モデルを入子構造で組替える例である。図19左側の汎用変速機モデルでは、無断変速機、手動変速機、自動変速機などの機構が異なる変速機の変速歯車比選択と制御法を入子方式の機構モデルで組替えられるようになっている。また、右側の手動変速機モデルは、歯車を切替えるシンクロ機構の機能モデルを持ち、これにシンクロ機構のメカニズムをモデル化したMT変速機構の機構モデルを持っている。そして、これらの機能モデルは、歯車比の係数及びシンクロ機構の特性などが非線形となり、これを各機構モデルを組み込むことで実現している。
【0177】
次に示す図20は、モータの操作を機械スイッチ方式、電子制御方式、スイッチング方式で行なう、全て非線形な働きをする各操作方式を、機能モデルの入子構造で組替える例である。
【0178】
<3−4.大規模システムにおける同定>
多くの機能部品が組み込まれた製品や機能部品は、内部特性が抽象化された等価特性となるため、各機能部品の内部特性を同定することが困難となる。このような機能部品の同定は、展開されている下位の各機能モデルを同定した結果を上位の機能モデルに統合することで実現可能である。また、機能モデルのモデル化が困難な機能部品については、入出力状態量を測定し、前に述べたブラックボックスの考え方を適用することができる。この場合には、測定した入出力状態量から回帰モデルなどの統計手法でモデル化した実験式を導いて組み込むことができる。
【0179】
また、この階層化された上位機能モデルを同定した等価特性と下位の機能モデルを同定した内部特性は、両者の因果関係を明らかにする場合に必要となる。特に、下位機能モデルに実験式などを含む場合は、上位の等価特性が他の機能モデルの特性又は状態量の干渉を受けて非線形化するので、検証しておく必要がある。
【0180】
階層化された機能モデル群の中に入子型機能モデルがある場合は、同定済みの各機能モデル群の中に、新たに組み込まれた機能モデルを同定するこが可能である。この場合には,各機能モデル群の特性を既値とし、組み込まれた機能モデルの特性を未値にして同定すれば良い。
【0181】
このような階層化された系の機能モデル群を同定する方法を図21に示す。同図は、後述する機能部品を階層化したリヤワイパーシステムについて、同定する方法を模式的に描いたものである。
【0182】
図21は、以下で更に詳説するが、ワイパーモータを構成するモータと減速機の機能モデルを同定して、上位のワイパーモータモデルに統合する例と、窓ガラスの実験式とワイパー翼の同定モデルを統合して、上位の負荷モデルに統合する例である。前者は、主に減速機構の粘性抵抗係数と摩擦力が非線形となりモデル化困難なので、これを減速機単体の同定とワイパーモータに組み込まれた状態の同定を行ない、これらを実験式にして入子型機構モデルとするためのものである。また、後者は、窓ガラスの粘性抵抗係数と摩擦力が非線形となりモデル化が困難なので、これを実験式で求めて入子型機構モデルとするものである。また、異なる車の窓ガラスについて同定する場合は、窓ガラス以外は既知なので、実車のワイパートルクと角速度を測定すれば、リヤーワイパーシステムの系全体の機能モデルから部分的な窓ガラスの機能モデル(実験式)が同定できる。
【0183】
<3−5.本実施の形態の機能モデルの統合処理の概念>
複雑な製品は、機能単位にユニット化された機能部品を組み合わせて作られることが多い。この製品を構成する各機能部品を分解した状態を、機能モデルでは製品を構成する機能の集まりと見なす。すなわち、製品の機能モデルは、各部品単位にモデル化することで部品とモデルが1対1で対応し、部品組み立てとモデル組み立ての関係を一元化して扱うことができる。
【0184】
展開された各々の機能モデルは、機能的に等価となる上位機能モデルに統合することができる。すなわち、展開されて構造化された支配方程式を構成している入出力方程式から出力状態量(従属変数)と同じ入力状態量(独立変数)を消去することにより、構造化された支配方程式と等価な上位の支配方程式に統合できる。当然、上位に統合された支配方程式は、下位と同じ概念で状態量、特性、係数による等価機能モデルが再現でき、その支配方程式も下位と同様に状態方程式、入出力方程式、観測方程式で表すことができる。また、この統合された上位機能モデルを構成する特性、係数は、これらを非線形化する機構モデルを下位から上位に継承して統合後の系の非線形性の再現が保証される。この統合された機能モデルを更に上位階層に対して、繰り返し展開することで、非線形を包含した大規模な製品を対象としたモデル化が可能である。
【0185】
この統合によって階層化された機能モデルの概念を図22に示す。この図から、展開された機能モデルA、B、Cは、上位の機能モデルDに統合されると同時に、機構モデルX、Yを継承して機能モデルDに組み込まれることを表している。また、この統合過程で隠蔽された位差量Paoと流動量fcoは、機能モデルDの観測量として出力される。機能モデルDは、更に機能モデルE、Fと展開して機能モデルHに統合され、機構モデルX、Yを継承する。また、最上位の機能モデルHは、他の機能モデルと接続する入出力状態量(位差量と流動量の対)を持たない。機能モデルHから出力される位差量Paoと流動量ffoは、観測量である。したがって、その支配方程式は、状態方程式と観測方程式の構成となる。
【0186】
4.機能モデルの展開と統合処理の概念
<4−1.基本概念>
階層構造化の構成概念で線形モデルに分けた機能モデルを体系化するには、図23及び図24で示す展開と統合の概念が必要である。
【0187】
図23は、下位階層の機能モデルを機能構造化手段で展開して構造化し、これを等価機能変換手段によって順次上位階層の等価機能モデルに変換しながら階層化する方法の全体像を表した図である。同図の内容は以下のようになっている。、 実線の枠で示す各機能モデルと等価機能モデルは、内部特性(等価)として蓄積特性(等価)、損失特性(等価)、係数特性(等価)を包含している。
、 点線の枠は、機能構造化手段と等価機能変換手段を示す。等価機能変換手段には、機能要素の双対変換手段、特性のモデル化手段、等価特性変換手段を包含している。
、 また、実線の太い矢印は、機能モデル間を結ぶ状態量群を表し、白抜きの矢印は、機能モデルと機能構造化手段、等価機能変換手段の関係を表している。
【0188】
図24は、等価機能変換手段の中の特性をモデル化する手段によって、下位機能モデルの内部特性を上位の等価機能モデルが包含する等価内部特性に集約して組み込む過程を表した図である。同図において、細い白抜き矢印は各蓄積特性、損失特性、係数特性の変換の流を表し、それ以外は図23と同じである。同図の添字0で示す特性は上位の等価機能モデルに集約された各等価内部特性を示し、1〜3の添字は下位の機能モデルの各内部特性を示す。
【0189】
<4−2.展開処理(構造化)>
(4−2−1.1対1の双対結合)
構造化の基本となる1対1の結合は、次ぎのように行なわれる。図25は、要素Aの出力位差量Paoが要素Bの入力位差量Pbiに結合され、逆に要素Bの出力流動量fboが要素Aの入力流動量faiに結合されている。同様に要素B、C間も位差量Pao、Pbiと流動量fbo、faiで結合され、これらの各要素間結合は、値が1の係数要素を介して位差量と流動量の積をエネルギ−として受け渡している。機能モデルの展開では、この位差量と流動量の対を直接結合することを双対結合と呼ぶ。この双対結合は、結合先モデルの入力状態量(名)を結合元モデルの出力状態量(名)に置き換えることで結合される。当然のこととして、結合されている入出力状態量名を展開、統合される全系の中に存在しない新たな名称に設定し直すことも可能である。
【0190】
また、係数要素の値が1以外の結合では、出力状態量名と係数要素名の積の式を入力状態量名と置換する。別法としては、結合される入力状態量(独立変数)に対応する支配方程式の列に係数を掛けておいても良い。
【0191】
図26は、各機能モデルを1対1の双対結合で展開して構造化する処理の流れの概念を示した図である。同図は、白抜きの矢印がエネルギーの流れる方向を示し、太い黒の塗り潰し矢印が各機能モデル間を結合している状態量である。また、細い白抜きの矢印によりエネルギーの流れ方向を判定して、各機能モデルの状態量の符号変換する。そして、展開された各機能モデルのエネルギが流れる方向を統一して入力状態量(変数)を出力状態量(変数)に置き替える。
【0192】
(4−2−2.1対多の双対結合)
2個以上の要素間の結合では、一個の要素が複数の要素にエネルギを分配し、逆に、分配された複数の要素は一個の要素にエネルギーを統合して返す分配要素で結合して、エネルギーの双方向性を満たす。これを満たす結合法には、位差、流動量の対を分配と加算で結合するエネルギーの合流と分配の概念が必要である。この合流と分配を3個の要素間で行なう例を、図27に示す。
【0193】
図27の各要素は、Pao・faiと、fbo・Pbiと、fco・Pciの対の積が各要素間で受渡しされるエネルギーとなっている。同図の結合法では、要素Aの出力位差量Paoが要素B、Cの入力Pbi、Pciに分配記号を介して結合され、逆に要素B、Cの出力流動量fbo、fcoを加算記号により加えて要素Aの入力faiに与えている。これは、要素Aのエネルギ−Pai・foiが位差量によって要素B、Cに分配され、要素B、Cのエネルギ−が流動量によってPai(fao+fco)の加算を通して要素Aに返されることを意味する。ここでは、前者を分配結合、後者を加算結合と呼び、以下の処理を行なって展開し、次ぎに述べる一対多の結合から双対結合状態に変換する。
▲1▼ 分配結合は、分配する各結合先モデルの入力状態量(名)を結合元モデルの出力状態量(名)に置き換える。
▲2▼ 加算結合は、加算する各結合元モデルの出力状態量(名)を結合先モデルの入力状態量(名)に置き換える。
▲3▼ 以上の他に、分配、加算結合されている各入出力状態量名を展開、統合される全系の中に存在しない新たな状態量名に設定し直しても良い。
【0194】
この変換にによって、各要素の支配方支配群をマトリクス状にまとめた1個に方程式の中には、同一変数名の従属変数名と独立変数名が生成され、この同一変数名が展開によって接続された状態量に対応している。
【0195】
次に、機能モデル間の分配、加算結合の入出力状態量(名)を同一とした1対多結合は、その支配方程式を入出力状態量を1対1の双対結合の関係にモデル変換する必要がある。この1対多から1対1にする変換法は、入出力方程式の従属変数と独立変数が機能モデル上の入出力状態量に対応していることから、次ぎの行と列の加算によって、双対結合の状態に変換することができる。詳細は以降の演算処理の説明に譲る。
▲1▼ 1対多の分配は、分配点の出力状態量(機能モデルの入力状態量)に対応する支配方程式の各列ベクトルを加算して1列のベクトルとする。
▲2▼ 1対多の加算は、加算点の入力状態量(機能モデルの出力状態量)に対応する支配方程式の各行ベクトルを加算して1行のベクトルとする。
【0196】
この一対多から1対1にする変換は、1個にまとめた支配方程式上の従属変数の中にある同一変数名に対応した入出力方程式(行)を加算することを意味し、同様に独立変数の中の同一変数名に対応した列を加算することを意味する。この変換により、1対多の結合関係で表されていた支配方程式群は、前に述べた1対1の双対結合の支配方程式として扱うことができる。
【0197】
以上の変換を機能モデル上から見ると、以下のようになる。図27で示す分配、加算結合された機能モデルは、モデル上から分岐、加算点が消去されて、要素Bと要素Cが統合された要素BCと要素Aが双対接続の図28の機能モデルとなる。
【0198】
(4−2−3.機能モデル内部の符号変換)
これまで述べた、各要素間を双対結合又は1対多結合して展開するには、展開後の系全体のエネルギーの流れ方向と各機能モデル毎に定められているエネルギーの流方向を統一してから接続する必要がある。この流方向を統一するためには、各機能モデルの状態量の符号を、系全体のエネルギー流れと同方向の状態量を正とし、逆方向の状態量を負とする必要がある。そのためには、展開される要素内部の状態量を接続前のエネルギー流れの方向によって符号変換する。尚、エネルギーと状態量の流方向の関係は、後の機能要素の双対変換で述べる。
【0199】
機能モデルの展開では、接続される機能モデル内の状態量を、以下の規則によって符号変換する。機能モデルのエネルギーの流れが双方向性となるので、ここで言う系全体のエネルギーの流れとは、展開された系全体の一方から他方に向かって流れるエネルギーの流を仮定し、これを正方向とする。結合する機能モデルの符号変換は、以下の手順で行なう。
(1)全体エネルギーの流れと同方向の要素。
仮定したエネルギーの流れと同一方向の要素は、符号変換を行なわない。
(2)全体エネルギーの流れと逆方向の要素。
要素内部の加算記号に対して、全体エネルギーの流れに逆らう状態量を正符号にする。
【0200】
以上の符号変換を双対結合に適用した例を図29に示す。同図の上側は、全体エネルギー流れに対し逆方向の流れの機能モデルAと同方向の流れの機能モデルBが結合される前の状態を表している。同図の下側は、エネルギーの流が逆方向の機能モデルA内部にある状態量符号が加算記号に対して逆らう状態量を負符号に変更し、同じ流れ方向の機能モデルBは符号変換しないで、互いに接続して展開した例である。また、両機能モデルは、機能モデルAの入力状態量Va2を機能モデルBの出力状態量Vb1に置き換え、同様に機能モデルBの入力状態量fb1を機能モデルAの入力状態量fa2に置き換えることで、展開されている。
【0201】
<4−3.統合処理>
上記の図29のように、展開処理された機能要素間は互いに接続が可能である。この接続には、上述の符合変換や信号名の置き換えの外に、異なる物理系では、前述の係数要素を介して接続することになる。この場合に、各機能モデルは図2に示す形に標準化されているので、そのまま接続して1つの新しい機能モデルが生成される。そして、接続前の機能モデルに特性値を提供する機構モデル(非線形)は、そのままの形で新しい機能モデルに引き渡される。
【0202】
接続されて1つとなった機能モデルにおいては、主に以下の2つの手順により、モデルの単純化が実行される。
(1)新しい機能モデルで無視できる機能要素、すなわち全体の動作にほとんど影響を与えない要素は、削除する。
(2)新しい機能モデルを、状態方程式と入出力方程式とで表わされるように整理し、統合された簡潔な要素に置き換える。
【0203】
これらの手順については、以下の等価変換や行列式の変換例、あるいは具体的な統合例(ワーパーシステムの例、自動車車両の例)により、更に詳細に示される。
【0204】
<4−4.等価変換処理>
下位機能モデル群内部の各特性と係数は、上述のように、展開と統合によって抽象化された上位機能モデルの内部特性に等価変換される。この等価変換は、損失特性、蓄積特性、係数の性質の違いと、実態構造において各特性が直列又は並列接続されている接続状態によって変換方法が異なる。ここでは、この統合による特性、係数の等価変換について説明する。
【0205】
また、ここで述べる等価変換の主な用法は、機能モデルを展開して統合する前に各特性を等価変換して物理的、工学的な意味をもつ特性群に整理されたモデルにする場合と、統合された上位機能モデルの内部特性を整理して物理的、工学的な意味を持たした抽象化した等価特性にまとめる場合に行なう。
【0206】
(4−4−1.双対変換)
機能モデル内部は、機能を再現する質量、剛性、粘性抵抗などの特性を有している。機能モデルには、これらの機能と特性を関係付けた最小単位を機能要素として組み込まれている。機能モデル間を互いに接続する展開では、前に述べた機能モデルと系全体のエネルギーの流を統一する場合、不要な剛性や質量を省略して系(機能モデル)の次数を下げる低次元化など、機能モデルの内部機能を変更して置くことが必要となる。ここでは、この機能モデル内部の機能要素の変換について検討する。
【0207】
前に述べた状態量の対の向きを反転させる双対変換は、状態量の入出力方向(向き)が変わるために、符号変換を伴う。この機能要素の符号変換は、エネルギーと状態量(対)の関係を無視することができない。ここでは、主な機能要素を双対変換して、これらの関係を明らかにする。状態量の対を双対変換する時は、以下の規則に沿って行なう。
1.分配記号側の入出力状態量には、負記号が付かない。分配結合は、全ての状態量が等値となるので符号反転が行えない。
2.加算記号側の入出力状態量には、負記号を付けてよい。加算結合は、全てに状態量を加算して釣り合いを取るため符号反転を行なって入出力状態量を整合させる。
【0208】
この規則は、双対変換が状態量の対で行なうことから、片方の状態量の符号反転を行なえば良いことを意味する(対の両方の符号反転は元に返る)。
【0209】
(1)蓄積特性の双対変換
蓄積要素を互いに双対変換(対称変換)した場合の関係を図30に示す。
【0210】
図30は、左側が蓄積要素の積分形、右側が微分形の機能要素を示し、上側が剛性や電気容量などの流動蓄積要素、下側が剛性やインダクタンスなどの位差蓄積要素を示す。
【0211】
(2)伝達、損失要素の双対変換
伝達、損失要素を互いに双対変換(対称変換)した場合の関係を図31に示す。
図31は、中央が伝達要素、右側が損失要素、右側が供給エネルギーを負の損失として供給する損失要素を示し、上側が流動伝達要素と流動損失要素、下側が位差伝達要素と位差損失要素を示す。
【0212】
(3) 供給、負荷要素の双対変換
機能要素には、入出力状態量の対を2個持ったものに対し、エネルギーの供給又は消費を行なう単機能の機能要素がある。これらの要素は、図30の蓄積要素又は図31の損失要素から片方の状態量対を消去した機能要素として表現できる。状態量の対の消去は、出力状態量を消去し、入力状態量を要素内部で状態量を生成する側負荷とする。これらの機能要素は、供給要素が電池、トルク発生源、圧力源などに対応し、負荷要素がこれらの消費源に対応する。
【0213】
この供給要素と負荷要素の双対変換を図32に示す。
【0214】
図32の右側の枠内は、左側が供給要素、左側が負荷要素、上側が位差側負荷を内蔵する要素、下側が流動側負荷を内臓する要素である。また、同図の右側は、左側と上下対象の供給、要素である。
【0215】
(4−4−2.等価変換)
(1)損失特性の等価変換
機能モデル内部の損失特性が位差量側で加算される接続状態(流動量側の分配)は、実態構造状の直列接続と対応する。同様に、流動量側の加算(位差量側の分配)は、並列接続と対応する。これを機能モデルで示すと図33の上側のモデルとなる。尚、同モデルには、損失特性間D1、D2が係数Nを介して接続する状態を表し、係数Nの値が1の時は直結状態となる。例えば同図の係数Nを1にし場合に、右側で示す位差量側の加算結合は電気抵抗D1、D2の直列接続に対応し、D1、D2には同じ電流が流れて電圧降下を加算する。また、同図右側の流動量の加算結合は電気抵抗D1、D2の並列接続に対応し、D1、D2には同一電圧が加わり電流を加算する(ここ言う電気抵抗D1、D2は、一般抵抗の逆数で表すアドミタンスを指している)。
【0216】
次ぎに、同図下側は、損失特性D1にD2を統合して等価損失特性D0に等価変換した例を示す。この等価変換したモデルの方程式と等価損失特性D0は、それぞれ次ぎの式であらわすことができる。
【0217】
【数20】
【0218】
【数21】
【0219】
これらの式は、数20が図33の左側の等価変換、数21が右側の等価変換を示す。同式から判るように係数Nは、統合される損失特性D2側に2乗で影響を与える。また、損失特性D2にD1を統合する場合は、係数Nが損失特性D1側に2乗で影響する。
【0220】
(2)蓄積特性の等価変換
機能モデルは、不要な剛性などの消去を行ないながら展開を進めて行くと、モデル上に微分状態量の分配結合と加算結合が発生する。これらは、蓄積特性を統合して1個の等価蓄積特性にモデル変換できる。これは、複数の微分量を1個の微分量に統合する低次元化を意味する。尚、ここでは、蓄積要素間を結合する係数要素は直結の1とし、1以外の値を有する場合の蓄積特性と係数の関係は前に述べた損失特性の等価変換と同じである。
【0221】
この蓄積特性の等価モデル変換は、次の実態構造上の直列、並列接続と機能モデル上の蓄積特性の関係を考慮する必要がある。
▲1▼位差蓄積特性の機能を並列結合:
構造的に直列接続された慣性モーメント、又は並列接続された電気容量などは、位差蓄積特性が機能的に並列結合(接続)されたものと見なせる。
▲2▼流動蓄積特性の機能を直列結合:
構造的に並列接続されたばねのこわさ、又は直列接続されたインダクタンスなどは、流動蓄積特性が機能的に直列結合(接続)されたものと見なせる。
▲3▼位差蓄積特性の機能を直列結合:
構造的に並列接続された慣性モーメント、又は構造的に直列接続された電気容量などは、位差蓄積特性が機能的に直列結合(接続)されたものと見なせる。
▲4▼流動蓄積特性の機能を並列結合:
構造的に直列接続されたばねのこわさ、又は構造的に並列接続されたコイルのインダクタンスなどは、流動蓄積特性が並列結合(接続)されたものとみなせる。
【0222】
これらと機能モデルの関係は、図34で示すように▲1▼、▲2▼が蓄積特性が生成する微分状態量の分配結合とになり、▲3▼と▲4▼がこれと双対の加算結合となる。
(3)分配結合の等価変換
図35に示す3個の蓄積特性は、▲1▼で述べた位差蓄積特性を並列接続した実態構造を分配結合でモデル化した例である。ここでは、同図で分配結合されている微分量を1個の微分量に統合して等価蓄積特性に変換する方法を検討する。また、▲2▼で述べた流動蓄積特性を直列接続した実態構造を分配結合でモデル化した例に付いては、モデルの双対性から流動系の分配結合として同一手順で変換できる。
【0223】
図35は、位差微分量の積分量x1をx2とx3に分配して再び微分し、位差微分量とに変換されている。これは、同図bで示すように、微分記号を省略して微分量を直接との微分量に分配することと等価である。分配された各微分量は、蓄積特性M2とM3に加えられ、f2とf3の流動量に変換される。更にf2とf3は加算結合されて、f1を通じて蓄積特性M1に加えられ位差微分量を生成する。この系には、入力流動量faとfbが外部から加えられている。
【0224】
分配結合で統合された等価蓄積特性Maは、次のようになる。
【0225】
【数22】
【0226】
数22の等価機能モデルは、次の図36となる。
【0227】
(4)加算結合の等価変換
図37で示す3個の蓄積特性は、前に述べた▲3▼の位差蓄積特性を直列接続した実態構造を加算結合でモデル化した例である。ここでは、同図で加算結合されている微分量を1個の微分量に統合して等価蓄積特性に変換する方法を検討する。また、▲4▼で述べた流動蓄積特性を並列接続した実態構造を加算結合でモデル化した例に付いては、モデルの双対性から同一手順で変換できる。
【0228】
図37は、外部から受けた流動量faが分配記号を介して、f1、f2、f3に分配し、要素1、2、3の蓄積要素M1、M2、M3に加えて位差微分量(微分x1、x2、x3)に変換される。これらを積分した位差積分量x1、x2、x3(又はp1、p2、p3)は、位差量paに加算記号で加えられ、外部に出力される。この加算結合は、同図bで示すように、各微分量(微分x1、x2、x3)を直接加えたを積分したxaをpaに出力することと等価である。尚、微分量(微分xa)と積分量xaは出力端子要素とする。
【0229】
微分量の加算結合は、等値関係にある流動量f1、f2、f3に蓄積要素M1、M2、M3を乗じて生成された微分量(微分x1、x2、x3)を加算することとなる。これは、蓄積要素M1、M2、M3の逆数を加算して入力流動量faを掛けることと等価となる。これを例示すると、以下のようになる。
【0230】
【数23】
【0231】
数23から、流動量の等値関係をf1=f2=f3=faとおき、微分量の加算を(微分x1+x2+x3)=微分xaとおくと、同式は以下の等価蓄積特性で表すことができる。
【0232】
【数24】
【0233】
以上の結果から、微分量の加算結合では、等価モデル変換の最後に蓄積特性行列(正方行列)の対角要素を逆数にした和を、更に逆数にして等価蓄積特性に変換する。
【0234】
加算結合で統合された等価蓄積特性Maは、次のようになる。
【0235】
【数25】
【0236】
数25の等価機能モデルは、図38となる。
【0237】
5.実行機能モデル
<5−1.実行支配方程式への変換>
これまで述べた下位機能モデル及び上位機能モデルの支配方程式は、各機能モデル間を接続可能ための支配方程式である。したがって、これらの支配方程式からシミュレーションや解析を行なうためには、これらの式を目的に沿った実行可能な式に変換することが必要である。ここで、その変換法について、簡単に触れておく。
【0238】
(5−1−1.実行機能モデルの入力拘束)
統合された機能モデルの支配方程式には、入出力方程式を持たない最上位階層と、途中階層(機能部品など)の入出力方程式を有するものがある。前者の支配方程式は、これをあとで述べる実行形式の支配方程式に変換して、評価、シミュレーションすることができる。しかし、後者の支配方程式は、入力状態量が拘束されていないので、これを何らかの条件で拘束しておく必要がある。ここで、この拘束法について述べる。
【0239】
入出力方程式を有する支配方程式の拘束には、大別して以下の2通りの方法がある。
(1)入力状態量を内部で生成する側負荷に置きかえる方法。
(2)入出力状態量に拘束用の負荷要素を組み付ける方法。
【0240】
前者は、入出力状態量を側負荷とするため、支配方程式の側負荷の列に拘束する入力状態量の列を加算し、入出力方程式を観測方程式にして出力状態量を観測量とする。また、後者の拘束法には、剛性、質量等の蓄積特性による拘束と粘性抵抗などの損失特性を組み付けて、展開、統合の処置をする。この例として、前に述べた図3上側の構造モデルにおいて、左側のばねこわさKを質量MLで拘束し、車体側の入力状態量fbを側負荷の力で拘束する例を図39に示す。
【0241】
図3の支配方程式(数1)に、図39の拘束条件を展開して統合した結果を次式に示す。
【0242】
【数26】
【0243】
数26は、3行目の式がMLで拘束した状態方程式である。また、1行目の最後の列に、入力状態量fbが側負荷として加算されている。同式の1〜3行目は状態方程式、4〜5行目が観測方程式で拘束された入力状態量と対の出力状態量である。
【0244】
6.各処理の装置での演算処理の例
上述の展開及び統合の一部は、それぞれの機能モデルを表わす行列式(状態方程式、入出力方程式、観測方程式を含む)のコンピュータによる変換処理によって行われる。以下、その一般化された処理の理論的基礎を説明する。本実施の形態では、この変換処理がユーザインターフェースを介してユーザに見え、ユーザにより操作可能にしている。
【0245】
<6−1.全体像>
図40に、展開されて構造化された構造支配方程式の各閉鎖再現手段群、入出力再現手段群、内部観測手段群から等価機能モデルに変換後の閉鎖再現手段、入出力再現手段、内部観測手段の各方程式に変換する各手段の因果関係と処理の流れを示す。
【0246】
図40は、左の実線枠で囲まれている各再現手段が等価変換前の閉鎖再現手段群、入出力再現手段群、内部観測手段群を示す。左の枠内部にある等価支配方程式が変換後の閉鎖再現手段、入出力再現手段、内部観測手段を示し、内部観測手段については等価変換前と後のものが一個の内部観測手段の方程式群となる。
【0247】
<6−2.機能モデルの支配方程式>
図41は、展開と統合を行なう機能モデル内部の基本構成である。同図は、他の機能モデルと接続する入出力系、系内部の固有特性を再現する閉鎖系、系の内部状態を観測する観測系で構成されている。
【0248】
図41を一般化した支配方程式は、数27となる。
【0249】
【数27】
【0250】
【数28】
【0251】
数27は、上から順に、閉鎖系を表す状態方程式、入出力系を表す入出力方程式、観測系を表す観測方程式となっている。各状態量は、xが閉鎖系の内部状態量、Soが入出力系の出力状態量、同様にSiが入状態量、Obsが観測系の観測量を表している。また、数28は、系が授受するエネルギーEが入出力方程式の従属変数Soと独立変数Siの積であることを示している。数27の各行列は、X、Y、Zの行列が蓄積特性の集合体、A、B、C、D、E、Fの行列が損失特性と係数の集合体である。尚、微分状態量が干渉しないときには、X、Y、Zの行列が対角正方行列となり、また、位差、流動量の対で機能要素が直接接続されるときは、A、B、C、D、E、Fの行列の要素が1又は−1の係数値となる。
【0252】
数27は、系の定常、過渡、固有値などの式を導くことができる基本式で、下位モデル群から上位モデルまで幅広く適用することができる。また、数27を更に位差量と流動量に分けた詳細な式は、次のようになり機能モデルを互いに接続して展開して統合するための基本式である。
【0253】
【数29】
【0254】
数29の独立変数と従属変数は、流動量と位差量の積がエネルギーとなるように配置されている。この式は、機能モデルで表す全ての種類の機能要素を表した数学モデルである。係数行列の要素に付けられている添え字はLが特性をNが係数を示し、fとPの添え字がそれぞれ流動量と位差量を示す。また、従属変数と独立変数のfとPの順序が逆になるのは、両者の積をエネルギーとするためである。ここでX、Y、Zの添え字Lは蓄積特性を表し、エネルギーの蓄積を伴う添え字Nは電気系の相互インダクタンスなどの係数が対応する。数29は、上から順に位差状態方程式、流動状態方程式、位差入出力方程式、流動入出力方程式、位差観測方程式、流動観測方程式で構成されている。
【0255】
<6−3.構造化モデルの定式化>
本実施の形態の展開による機能モデルの構造化には、位差量と流動量を対にして要素間のエネルギーを受け渡す以外に制約条件が無いこと示し、この制約条件を満たせば、機能モデルの組替えが可能なことを意味している。その支配方程式は、展開が可能であることから連立一次方程式の線形代数式で表せることが、もう1つの条件である。この連立一次方程式で表す支配方程式には、これと同じ数学モデルで表される物理、工学理論から多変量解析などの統計モデル、実験式に至るまで幅広く適用可能であることを示している。このことは、機能モデルの本質が位差、流動量の対でモデル間を接続できるブラックボックス化されたモデルと考えることができる。
【0256】
このブラックボックス化された機能モデル群を展開して構造化する際の一般的な機能モデルを図42に示す。
【0257】
図42の機能モデルは、統合前の状態で下側にある内部入出力系が統合によって観測系に組み込まれる。また、内部入出力系の中にある結合係数は、下位機能モデル群の入出力状態量を互いに結合する係数である。同図の一般化した支配方程式を構造支配方程式と呼び、式は次ぎのようになる。
【0258】
【数30】
【0259】
同式は、数27の入出力方程式が、次ぎのように変換されている。従属変数(行)は、統合後の出力状態量と内部結合された出力状態量に分かれ、同様に、独立変数(列)が統合後の入力状態量と内部結合されて観測量に置換された入力状態量に分かれる。数30は、1行目が状態方程式、2行目が統合後の入出力方程式、3行目が統合前の観測方程式、4行目が展開で内部接続された内部入出力方程式で統合後に観測方程式となる。
【0260】
また、同式の従属変数は、VOUTが統合後の出力状態量、VOBSが統合前の観測状態量、VNETが統合後の観測状態量である。独立変数は、VSTAが内部状態量、VINPが統合後の入力状態量、VNETが展開で出力状態量に置換された入力状態量である。また、係数は、大文字記号は、一般機能モデルの支配方程式の記号を表し、添字_Aが統合後の入出力方程式,添字_Bが統合後に観測方程式及び消去される係数に分けた場合を示している。また、出力状態量はVOUTとVINPの積がエネルギーとなり、同様に内部入出力方程式は従属変数のVNETと独立変数のVNETの積がエネルギーとなるように配されている。
【0261】
<6−4.階層化モデルの定式化>
(6−4−1.定式化)
これまで述べた下位機能モデル群を展開した構造支配方程式から、上位階層に統合して支配方程式を導く一般的な方法について定式化しておく。構造支配方程式(数30)の中にあるSNET_Bは、従属変数VNETと従属変数VNETが同一なので、これを消去した、次式で表すことができる。
【0262】
【数31】
【0263】
ここで、数31の中で添字_Cが付いた係数ZNET_C、ENET_C、FNET_C、KNET_Cは、数30の係数ZNET_B、ENET_B、FNET_B、KNET_Bに(I-SNET_B)の逆数を掛けて消去した次式である。
【0264】
【数32】
【0265】
数31の最下行は、統合後に観測量となる次の観測方程式で表すことができる。
【0266】
【数33】
【0267】
数31のVNETに数33のVOBS_Cを代入した支配方程式は、展開前の各機能モデルの支配方程式である。数30と同一構成の次式で表すことができる。
【0268】
【数34】
【0269】
ここで、統合後の支配方程式を表す数34の各行列は、以下のようになる。
【0270】
状態方程式の各行列:
【0271】
【数35】
入出力方程式の各行列:
【0272】
【数36】
観測方程式の各行列:
統合前の観測方程式と統合後に観測方程式となる両式をまとめると、次の観測方程式となる。
【0273】
【数37】
【0274】
(6−4−2.支配方程式の拘束条件)
ここで述べた展開されて構造化された構造支配方程式を統合して上位の等価モデルに変換する手法では,内部に拘束を必要とする状態量(独立変数)が存在しないことが特徴である。拘束を必要とするのは、数34の支配方程式の中にある入出力方程式の従属変数(出力状態量)VOUTと対になる独立変数に限定できる。更に、順次上位機能モデルに統合された最上位階層の支配方程式からは、入出力方程式がなくなり、状態方程式と観測方程式となるので、これらの未拘束の独立変数が全て消去される。
【0275】
また、数34の入出力方程式を持つ場合の入力状態量(独立変数)の消去は、系を操作する入力状態量となる側負荷、又は系の挙動に影響を与えない値を持つ質量、剛性、抵抗などを終端要素として接続して拘束することができる。
【0276】
(6−4−3.RLC直列回路の階層化例)
最も簡単な展開による機能構造化例として、図43に示すコイル、静電容量、抵抗の電気回路について検討する。
【0277】
図43の電気回路に組み込まれている回路素子の構造モデルと機能要素の関係は、図44となる。
【0278】
図44は、Lがコイルのインダクタンス、Cが静電容量、Rが電気抵抗を表し、VlとIl、VCとIC、VrとIrの対が結合前の電圧と電流を表している。同図のインダクタンスL、式(15)静電容量C、電気抵抗Rの各支配方程式は、それぞれ次の数38,数39,数40となる。
【0279】
【数38】
【0280】
【数39】
【0281】
【数40】
【0282】
図44から、インダクタンスLと静電容量C接続は、VC1の出力状態量とVl2の入力状態量、Il2の出力状態量とIC1の入力状態量の接続となり、静電容量Cと電気抵抗Rも同様の接続となる。従って、展開によって構造化する手順は、以下となる。
(1)数38の独立変数Vl2を数39の従属変数VC1に置き換える(LとCの接続)。
(2)数39の独立変数IC1を数38の従属変数Il2に置き換える(LとCの接続)。
(3)数39のIc2を数40のIr1に置き換える(CとRの接続)。
(4)数40のVr1を数39のVc2に置き換える(CとRの接続)。
【0283】
以上の入出力電圧と電流を置き換えて機能を構造化した支配方程式は、次式となる。
【0284】
【数41】
【0285】
数41は、上2行が状態方程式、次の2行が統合後の入出力方程式、4行目以降が等統合後に隠蔽されて観測量となる観測方程式である。また、同式の列は、最初の4列が内部状態量、次の2列が統合後の入力状態量、4列以降が等価変換後で消去される入力状態量である。
【0286】
次ぎに、展開された機能モデルの構造支配方程式(数41)は、4行目以降の従属変数Il2、Vc1、Vc2、Ir1と7列目以降の独立変数Vc1、Il2、Ir1、Vc2が同一変数名なので、これらの従属変数を独立変数に代入すると次式になる。
【0287】
【数42】
【0288】
数42は、図44で示す機能モデルの支配方程式(数38〜数40)を展開して統合した上位機能モデルの支配方程式である。同式の1〜2行目は状態方程式、3、4行が入出力方程式、5行目以降が観測方程式である。また、この統合された数42の機能モデルは、図45となる。
【0289】
図45は、他の機能モデルと結合する入出力方程式の位差量Vl1、Vr2と流動量Il1、Ir2の対がモデル両端の入出力状態量で表され、また、観測方程式で表される統合後に隠蔽された観測量Il2、Vc1、Vc2、Ir1が半円形の観測記号で引き出されている。
【0290】
<6−5.等価変換の支配方程式>
(1)蓄積要素の双対変換
前述の図30は、左側が蓄積要素の積分形、右側が微分形の機能要素を示し、上側が剛性や電気容量などの流動蓄積要素、下側が剛性やインダクタンスなどの位差蓄積要素を示すが、これらの支配方程式は、以下のようになる。
【0291】
流動蓄積要素(積分)の支配方程式:
【0292】
【数43】
流動蓄積要素(微分)の支配方程式:
【0293】
【数44】
位差蓄積要素(積分)の支配方程式:
【0294】
【数45】
位差蓄積要素(微分)の支配方程式:
【0295】
【数46】
(2)伝達、損失要素の双対変換
前述の図31は、中央が伝達要素、右側が損失要素、右側が供給エネルギーを負の損失として供給する損失要素を示し、上側が流動伝達要素と流動損失要素、下側が位差伝達要素と位差損失要素を示すが、これらの支配方程式は、以下のようになる。
【0296】
流動損失要素の支配方程式:
【0297】
【数47】
流動伝達要素の支配方程式:
【0298】
【数48】
流動損失要素の支配方程式(負の供給エネルギー):
【0299】
【数49】
位差損失要素の支配方程式:
【0300】
【数50】
位差伝達要素の支配方程式:
【0301】
【数51】
位差損失要素の支配方程式(負の供給エネルギー):
【0302】
【数52】
(3) 供給、負荷要素の双対変換
前述の図32の右側の枠内は、左側が供給要素、左側が負荷要素、上側が位差側負荷を内蔵する要素、下側が流動側負荷を内臓する要素である。また、同図の右側は、左側と上下対象の供給、要素である。
【0303】
図32の左側の支配方程式は、以下のようになる。
【0304】
位差側負荷付き位差供給要素の支配方程式:
【0305】
【数53】
位差側負荷付き位差負荷要素の支配方程式:
【0306】
【数54】
流動側負荷付き位差供給要素の支配方程式:
【0307】
【数55】
流動側負荷付き位差負荷要素の支配方程式:
【0308】
【数56】
図32の右側の支配方程式は、以下のようになる。
【0309】
流動側負荷付き流動供給要素の支配方程式:
【0310】
【数57】
流動側負荷付き流動負荷要素の支配方程式:
【0311】
【数58】
位差側負荷付き流動供給要素の支配方程式:
【0312】
【数59】
位差側負荷付き流動負荷要素の支配方程式:
【0313】
【数60】
(4)損失特性の等価変換
前述の図33の下側(変換後)は、損失特性D1にD2を統合して等価損失特性D0に等価変換した例を示す。この等価変換したモデルの方程式と等価損失特性D0は、それぞれ次ぎの式であらわすことができる。
【0314】
【数61】
【0315】
【数62】
【0316】
これらの式は、数61が図33の左側の等価変換、数62が右側の等価変換を示す。同式から判るように係数Nは、統合される損失特性D2側に2乗で影響を与える。また、損失特性D2にD1を統合する場合は、係数Nが損失特性D1側に2乗で影響する。
【0317】
(5)分配結合の等価変換
(5-1)全体支配方程式
前述の図35の機能モデルの支配方程式は、次のようになる。
【0318】
【数63】
【0319】
(5-2)状態量の分配、加算処理
分配、加算結合で等値関係となる状態量を以下の手順で整理する。
▲1▼ 図35から、内部状態量のx1、x2、x3と(微分x1、x2、x3)は等値となるので、数63の支配方程式のx2とx3とその微分量(微分x2、x3)をそれぞれx1とに置換する。
▲2▼ 同様にf2'、f3'もそれぞれf2、f3と等値となるので、f2'、f3'をf2、f3に置換する。置換した結果は、次式となる。
【0320】
【数64】
【0321】
図35と全体支配方程式(数64)の関係は、以下のようになっている。
1〜3行目 要素1〜3の状態方程式
4行目 要素2の入出力方程式
5行目 要素1の入出力方程式
6行目〜7行目 全体の入出力方程式
(5-3)全体支配方程式の列並替え
次に、以下の手順で数64の係数行列の列を整理する。
▲1▼ 数64の2行と3行の状態方程式の内部状態量は、x2、x3がx1、また、それらすべての微分量が等値になるので、2行と3行を消去する(図35のモデルに変換)。
▲2▼ 数64の1列、2列、3列にある微分量を1列に加えて3列5列を消去する。
【0322】
数64の列を整理した結果は、次のようになる。
【0323】
【数65】
【0324】
(5-4)微分状態量の分配結合処理
数65の2行と3行のf2とf3の従属変数をそれぞれ3列と4列のf2とf3に代入して整理した結果は、次のようになる。
【0325】
【数66】
【0326】
数66は統合後の等価機能モデルの支配方程式であり、構成は次のようになる。
1行目 状態方程式
2行目〜3行目 入出力方程式
分配結合で統合された等価蓄積特性Maは、次のようになる。
【0327】
【数67】
【0328】
(6)加算結合の等価変換
(6-1)全体支配方程式
図37の機能モデルの支配方程式は、次のようになる。
【0329】
【数68】
【0330】
(6-2)状態量の分配、加算結合処理
図37の分配、加算結合から、数68の従属変数と独立変数を次の手順で整理する。
▲1▼ 独立変数のうちfi1、fi2、fi3を、それらと等値であるf01、f02、f03に置き換えることにより、fi1、fi2、fi3を消去する。
▲2▼ 上記▲1▼で置換えた独立変数中のf01、f02、f03に、同じ従属変数を有する6〜8行目を代入することにより、f01、f02、f03を式中から消去する。
▲3▼ 独立変数のうちpi1、pi1、pi3を、それらと等値であるp01、p01、p03に置き換えることにより、pi1、pi1、pi3を式中から消去する。
▲4▼ 上記▲3▼で置き換えた独立変数中のp01、p01、p03に、同じ従属変数を有する9〜11行目を代入することにより、p01、p01、p03を式中から消去する。
【0331】
以上の処理結果を数67の1〜3行目を書き換えれば、次式となる。
【0332】
【数69】
【0333】
数69は、次のような構成になっている。
1行目〜3行目 要素1〜要素3の状態方程式
4行目〜5行目 入出力方程式
(6-3)微分状態量の加算結合処理
次に、加算結合されている内部状態量の加算結合を以下のように整理する。
【0334】
数69の1〜3行目を書き換えれば、次式となる。
【0335】
【数70】
【0336】
図37の加算結合から(微分x1、x2、x3)の加算結果がなので、数70は、次式で表すことができる。
【0337】
【数71】
【0338】
数71を書き換えた式は、次ぎのようになる。
【0339】
【数72】
【0340】
同様に、x1、x2、x2の加算結果がxaなので、数68の4行目と5行目は、次式で表すことができる。
【0341】
【数73】
【0342】
数72と数73をまとめて書けば、次式となる
【0343】
【数74】
数74は微分量の加算後の上位支配方程式であり、その内部構成は次のようになる。
1行目 状態方程式
2行目〜3行目 入出力方程式
加算結合で統合された等価蓄積特性Maは、次のようになる。
【0344】
【数75】
【0345】
<6−6.実行支配方程式>
(6−6−1.過渡状態の実行支配方程式)
前に述べた数27から系の挙動をシミュレーションで予測するには、これを実行する以下の手順で実行支配方程式を導く必要がある。
【0346】
まず、数27から取り出した状態方程式は、次式となる。
【0347】
【数76】
【0348】
数76からXを消去してを従属変数とした式は、次のようになる。
【0349】
【数77】
【0350】
数34から入出力方程式と観測方程式を取り出して数77を代入すると、次式となる。
【0351】
【数78】
【0352】
数78は上から順に、1行目が状態方程式、2行目が入出力方程式、3行目が観測方程式である。数78は、入力状態量Vinpに外部から入力はできるが、入出力状態量VinpとVoutを対にして他の機能モデルと接続することはできない。また、内部状態量Vstaを更に積分して累積位差と累積流動系を出力する次式に置き換える。
【0353】
【数79】
【0354】
数79は、全ての内部状態量を累積観測量とする式で、2行目が累積観測量の状態方程式、5行目が累積観測方程式である。式中の微分Vaccは内部の微分累積観測量、/Vaccは内部累積観測量、Vaccは累積観測量である。
【0355】
(6−6−2.定常状態の実行支配方程式)
機能モデルの内部微分状態量:微分Vstaが変化しない定常状態の支配方程式は、同式の微分Vstaを0とおいて求めることができる。数27から状態方程式のの項を消去した式は、次のようになる。
【0356】
【数80】
【0357】
数80から系内部の状態量Vstaは、次式となる。
【0358】
【数81】
【0359】
数34から入出力方程式と観測方程式を取り出し、これに数81のVstaを代入した定常状態の式は、次のようになる。
【0360】
【数82】
【0361】
数82は、1行目が定常状態の支配方程式、2行目が定常観測方程式である。
【0362】
この定常特性の支配方程式は、回転数、トルク特性、伝達効率など製品と部品の性能計算ならびに解析に幅広く使用されている。従って、実際の製品と部品の開発では、過渡的な挙動を再現する実行支配方程式と、定常状態を再現する定常支配方程式が必要である。
【0363】
7.モデルの展開と統合の具体例
<7−1.処理手順の例>
これまでに述べた機能モデルの展開と統合手法は、この手法を組み込んだコンピュータによって、自動的に上位の等価機能モデルに変換できる。以下、その手順の概要を示すと、図46となる。
【0364】
図46の基本手順は、製品を構成する各機能部品のモデル化を行ない、これらのモデル群を上位階層単位に選択してこれを展開する。そして、構造化された機能モデル群は、上位階層の等価機能モデルに統合し、必要な機構モデルを組み込む。最後に等価機能モデルは、その妥当性をシミュレーションで検証する。更に、この統合された等価機能モデルは、他の機能モデル群と展開して上位階層に統合する手順となっている。
【0365】
展開と統合の主な手順は、以下のようになる。
【0366】
(手順1:モデルの階層構造化)
製品を構成する各機能部品の洗い出し、アッセンブリ単位に仕分けた部品構成を参考に、これを再現するモデルの階層構造化を行なう。階層構造化の事例としては、例えば図19,図20の上側の図などである。
【0367】
(手順2:機能部品のモデル化)
各機能部品単位の機能モデル(下位)をモデル化し、その支配方程式(下位)を導出する。
【0368】
(手順3:下位機能部品の選択)
アッセンブリ単位の上位機能モデルを構成する下位機能モデルを選択。入子機能モデルについては、機能モデルの枠が定義される。
【0369】
(手順4:入子型機能モデルの選択)
下位に入子構造で組み込まれている機能モデル群の中から、目的に沿ったモデルを選択して組み込む。
【0370】
(手順5:機能モデル間の結合)
アッセンブリされる下位機能モデルを抽出し、下位機能部品間を結合する入力状態量名を出力状態量名に置き換える。同じに、下位支配方程式の入出力方程式の従属変数名は、結合される独立変数名に置き換わる。
【0371】
(手順6:構造支配方程式(統合前)の生成)
上位機能モデルの支配方程式(上位)を生成して、下位支配方程式を組み込む。組み込まれた下位支配方程式の要素は、数30の行と列に整理された配置に並べる。
【0372】
(手順7:機能モデルの低次元化)
不要な合成や質量などの蓄積特性を整理して低次元化を行なう。低次元化の方法は、機能モデルの再現結果に影響しない蓄積特性を消去する。また、影響する蓄積特性は、同種の他の蓄積特性に織り込んで等価蓄積特性とする。
【0373】
(手順8:1対多から1対1結合に変換)
1対多の分配結合の入力状態量に対応する独立変数行を加算し、加算結合の出力状態量に対応する従属変数行を加算する。この処理で、水平展開された機能モデル群は、全て双対結合となる。
【0374】
(手順9:微分状態量の分配結合)
微分状態量が系内部で分配結合されている閉鎖系の蓄積特性を等価蓄積特性に変換する。詳細手順は、前に述べた“微分状態量の分配結合“による。
【0375】
(手順10:微分状態量の加算結合)
微分状態量が系内部で加算結合されている閉鎖系の蓄積特性を等価蓄積特性に変換する。詳細手順は、前に述べた“微分状態量の加算結合”による。
【0376】
(手順11:等価支配方程式に変換)
支配方程式の独立変数に、同一状態量名を持つ内部支配方程式の従属変数を代入して消去する。詳細手順は、前に述べた“等価支配方程式へ統合”による。
【0377】
(手順12:内部特性を等価特性に変換)
下位機能モデルの内部特性を等価特性に変換して、上位機能モデルの内部特性に代入する上位機構モデルを生成する。この上位機構モデルには、下位機構モデルが包含される。詳細手順は、前に述べた“微分状態量の分配結合”と“微分状態量の加算結合”の等価蓄積特性などがこれに相当する。
【0378】
(手順13:観測方程式の合成)
統合前の観測方程式と統合後の観測方程式を上位観測方程式に集約する。詳細手順は、前に述べた“等価支配方程式へ統合”による。
【0379】
(手順14:上位支配方程式のモデル化)
統合された上位支配方程式は、図41で示す機能モデルの一般形式で表すことができるので、これを元に上位機能モデルをモデル化を生成する。
【0380】
(手順15:機構モデルの組込み)
等価変換された機能モデルの内部特性を生成する機構モデルを組み込む。入子型機構モデルについては、機構モデルの枠が定義される。
【0381】
(手順16:入子型機構モデルの選択)
下位に入子構造で組み込まれている機構モデル群の中から、目的に沿ったモデルを選択して組み込む。
【0382】
(手順17:上位機能モデルの検証)
アッセンブリされた上位機能部品の内部特性値又は経験値などを指定して上位機能モデルの支配方程式を実行支配方程式に変換してシミュレーションなどで妥当性を検証する。特に、モデルを統合する過程で低次元化などを行なった場合は、その検証が必要となる。
【0383】
(手順18:上位モデルの保存(登録))
アッセンブリされた上位機能部品を再現する機能モデルとその支配方程式は、必要の応じで登録(保存)しておく。この保存されたモデルは、アッセンブリ機能部品単体のシミュレーション評価、及び更にこの機能部品を流用して他の製品に組み込まれるときに再利用する。
【0384】
この手順で統合された上位機能モデルの支配方程式は、統合される下位機能モデルの支配方程式と同一構造となる。従って、統合された上位機能モデルの支配方程式は、他の機能モデルと結合して展開することにより、更に上位の機能モデルに統合できる。
【0385】
ここで述べたコンピュータ上で行なう統合には、各特性の数値データから直接シミュレーションして性能評価や数値解析などを行なう方法と、上位支配方程式の数式を生成し、同定手法、最適化手法などの各手法を利用して、製品から部品まで一貫性を持って検討するための方法があり、それぞれの目的に従って利用される。また、展開と統合は、製品から部品までの因果関係を表すので、これを利用した品質機能展開(QFD)などの、製品開発全体の活動に組み込むことが可能である。
【0386】
<7−2.リヤワイパーシステムの例>
展開と統合の手法を、実際の製品である自動車の後部窓に組み込まれているリヤワイパーシステムに適用し、部品組立てに沿ったモデルの統合を試みる。
【0387】
(7−2−1.部品構成と階層型機能モデル)
このシステムの部品構成による表示例を図47に示す。各階層は、階層1が車に取り付けた状態、階層2が車に組み込む前の電池、操作スイッチ、ワイパーモータ、負荷の個別機能部品の状態、階層3がモータと減速機及び窓ガラスとワイパー翼などを個別に分解した状態である。
【0388】
このワイパー系の機能モデルは図48のようになり、各機能モデルの状態量は、Vが電圧、Iが電流、ωが角速度、Tがトルクである。機能モデルの各特性は、以下のようになっている。
【0389】
階層3の右側は窓ガラスと翼であり、Tfが摩擦トルク、Dwが等価粘性係数、Jwが翼の慣性モーメント、Kwが翼の剛性である。階層3の左側は減速機とモータの単品部品を表わし、右から順にΦLが揺動機構の伝達係数、Φgが減速比、Dが等価粘性係数、Jが慣性モーメント、Mmが電気系と回転系を変換するモータ定数、Rが巻線抵抗である。伝達係数ΦLは、非線形伝達特性を持つ揺動機構の機構モデルで、統合後は、ワイパーモータの中の等価係数Φg、ΦLに継承される。なお、摩擦トルクTfは、翼の角速度が0の時にはTf=0になるものとし、機構モデルを省略してある。
【0390】
階層2は右側から、階層3の翼剛性Kwを消去して低次元化して統合した負荷、階層3を統合したワイパーモータ、起電力Eと内部抵抗Reの電池、モータに供給する電源操作と停止時に電気ブレーキを掛ける操作系で構成され、この操作系にはモデルを分割、接続してモデル構造を変化させる非線形機構モデルの操作機構を持っている。停止時の電気ブレーキ操作は、丸みのある枠で表す操作機構の機構モデルが行う。また、回転角度θは、減速機の角速度ωsを積分した累積位差量である。
【0391】
階層1は、階層2を統合した最上位階層の等価機能モデルである。機能モデルはトルク源T0、損失特性D0の流動供給要素とJ0の位差蓄積要素の等価特性に集約されている。この機能モデルの左側に有る機構モデルは、等価特性T0、D0、J0を生成し、この階層2から伝達係数ΦLと操作機構の非線形の機構モデルを継承している。また、機能モデルの上側には、隠蔽された状態量を観測する観測器をもっている。
【0392】
モデル構造を非線形にする操作機構の働きは、操作系OPEがON/OFF操作をする操作信号SWの生成と、操作スイッチOFF後もワイパー翼の回転角θが停止角θSに復帰するまで操作信号SWを保持する自動停止機構が組み込まれている。また、操作系は、操作信号SWで切り換るスイッチ要素SW_0、SW_ 1で構成され、SW=1の場合は、SW_0=0、SW_1=1になってモータに電流を供給し、SW=0の場合は、SW_0=1、SW_1=0になって、モータ起電力を吸収する制動抵抗RBに電流が逆流して電気ブレーキを掛け、モータを急停止させる。尚、揺動機構、モータ、操作系のモデル化の詳細については割愛する。
【0393】
(7−2−2.モータのモデル化)
図47の各機能部品は、これらの機能(働き)をモデル化し、これを展開してワイパーシステムまで統合する必要がある。ここでは、図48の階層3にあるモータについて、機能要素からモデル化する方法を検討する。これを階層4、階層5とも考えられる。この場合、最下階層は機能要素そのものであり、最上階層がモデル化される対象製品となる。どの階層からの展開・統合を進めるかは、使用部品がどの階層かにより決まる。従って、最下階層の機能要素は部品に分割されない機能表現である場合もあり、この機能要素から統合作成された機能モデルから目標部品の設計が行えることにもなる。
【0394】
モータは、電気の供給を受け、これを回転運動に変えて負荷を駆動することが基本機能である。したがって、その内部には、電気系と回転系の異なる物理単位系と、この両者を互いに関係付ける物理単位系変換の機能を有している。そして、電気系には電気子の巻線抵抗やインダクタンスなどの電気特性があり、回転系には慣性モーメントや粘性抵抗係数などの機械運動の特性がある。また、この両者は、モータ巻線の有効導体数や磁気回路などで決まるモータ定数によって関係付けることができる。この関係を図49に示す。
【0395】
図49は下から順に、最下段がモータ内部の機能を表す機能要素で、中段が機能要素でモデル化したモータの内部機能、最上段が内部機能を展開して統合したモータの機能モデルである。ここでは、電気系の内部機能を巻線抵抗とし、インダクタンスを省略して低次元化されている。
【0396】
尚、その他の機能部品については、機能要素からモデル化する手順を割愛する。
【0397】
(7−2−3.翼の剛性の低次元化)
図48の階層3のワイパー翼と窓ガラスのモデルを統合するにあたり、ワイパーの翼剛性Kwを消去する低次元化を試みる。翼剛性Kwは、強度上は必要とするが運動特性には直接影響を与えない。そこで、機能モデルのブロック線図上の変換でKwを消去する。機能モデルは、微分形式の蓄積特性を双対変換して積分形式に変えることができる。この変換を行なった例を図50に示す。同図は、剛性Kw(点線)を消去して翼の慣性モーメントJwを微分形式に双対変換する途中(a)と変換後(b)を示している。ここでは、ブロック線図に沿って低次元化の変換手順を説明する。
【0398】
まず、図48の階層3に示すワイパー翼剛性Kwの流動蓄積要素を双対変換する(同図aの点線)。変換は、積分記号を微分記号に置き換えKWを逆数1/KWにし、角速度?Kの流れが逆になるので符号変換記号を追加する。この変換で翼剛性Kwの上下にある分配記号と加算記号の状態量は、前者が全て出力、後者が全て入力に変わる。また、この状態では、分配記号と加算記号の入出力条件を満たさないので、分配記号の出力流動量と加算記号の入力位差量に符号反転記号を追加して流れの方向を変える。この時、どの状態量を変えるかは接続先の条件で決まる。この事例では、図50の外部入出力状態量ωl、TlとωW、Twbを固定して結合条件を保証する。従って慣性モーメントJw側の向きを変える。これまでの変換結果が図50の(a)である。同図は、点線で示す剛性Kwを系に挙動に影響を与えない大きな値と見なしKw=∞とする。その結果、角速度ωk≒0となり、剛性Kwが消去できる。当然のこととして、内部微分状態量xkと微分記号も消去する。また、この消去で分配記号と加算記号は、1入出力となるので消去する。
【0399】
この変換により図50から点線で示す剛性Kwが消去できた。しかし、慣性モーメントJwの上下にある分配、加算結合の入出力条件が満たされないので、慣性モーメントJwを剛性Kwと同じ手順で積分形式から微分型式に双対変換する。この変換により下側にある加算記号の入出力状態量が全て符号反転記号となるので消去する。以上の変換で剛性Kwを消去した結果が図50の(b)である。
【0400】
(7−2−4.構成部品の要素モデル)
図48で示す階層2、3の各機能モデルについて数学モデルを求め、階層3を階層2の負荷にモデル統合する。尚、図48の機構モデルで示す伝達特性Φg、ΦLと操作機構については、数学モデルを省略する。
【0401】
(1)窓ガラスとワイパー翼のモデル化
まず、窓ガラスとワイパー翼の摺動部についてモデル化を行なう。図48の階層3で示す窓ガラスと翼の摺動部の数学モデルは、次式となる。なお、式中のTf0は、翼とガラス間の摩擦トルクである。
【0402】
【数83】
【0403】
次に、図50で低次元化を行なったワイパー翼の数学モデルは、次式となる。
【0404】
【数84】
【0405】
(2)減速機とモータのモデル化
まず、減速機の数学モデルは、階層3の右側にある減速機のモデルから次式となる。
【0406】
【数85】
【0407】
次に、同階層の左側にあるモータの数学モデルは、図50の内部機能を統合した次式となる。
【0408】
【数86】
【0409】
数86は、1行目から3行目がモータの運動方程式を表す。
【0410】
最後に、減速機には、伝達係数ΦLで示す揺動機構が組み込まれている。この構造を図51に示す。
【0411】
図51は、減速機の回転軸に結合されている回転リンクとワイパー翼を左右に振る揺動リンクが距離L0に配置された構成となっている。同図の回転リンクの各特性は、R1が半径、ωglが角速度、Tglがトルク、θが回転角度である。また、揺動リンク側は、R2が回転リンクとの結合点半径、ωSが角速度、TSがトルクである。この揺動機構の伝達係数ΦLは、次式となる。
【0412】
【数87】
【0413】
数87から伝達係数ΦLは、図52で示す回転リンク角度θに対して非線形特性を示すことがわかる。尚、同図の伝達係数ΦLを決める数87のL0、R1の値は、後で述べる表6に示してある。
【0414】
(3)電池と操作系のモデル化
まず、階層2の左端にある電池の数学モデルは、次式となる。
【0415】
【数88】
【0416】
次に、階層2の左から2番目にあるワイパー操作系に組み込まれている、スイッチ要素の操作系は、次の数学モデルとなる。
【0417】
【数89】
【0418】
数89は、操作信号SW=1(ON)の時VSO=VS I、ISO=IS Iとなり、電池とモータを直結する。また、SW=0(OFF)の時VSO=0、ISO=VSI/RBになり、電池からモータを切り離して制動抵抗RBとモータを接続する。この時に非線形の働きをするスイッチ要素SWの働きは、次式となる。
【0419】
【数90】
【0420】
数90は、1行目がワイパーモータに組み付ける減速機の出力軸回転角度、2行目がモータを駆動する電源を操作するスイッチの論理で、操作スイッチがON又はワイパー出力回転軸の角度θが自動停止角度θS以上の時にスイッチ変数SW_1をONにしSW_0をOFFにする。尚、出力軸回転角度は、モータ角速度ωmを積分してこれに減速比Φgを掛けて求めるようにしてある。これは、階層2に統合した時にΦgとΦLの積を等価係数として扱うためである。
【0421】
(7−2−5.統合による等価モデル変換)
ワイパーシステムを構成する機能部品群(機能モデル)の支配方程式を、階層3から階層1まで展開と統合を行なう。
【0422】
(1)階層3から階層2への展開と統合
窓ガラスとワイパー翼の統合は、数83のTwbに数84のTwに置換え、同様にωwgをωwに置換えた構造支配方程式は、次式のようになる。
【0423】
【数91】
【0424】
数91の各行は、1行目が状態方程式、2行目が入出力方程式、3行目以降が内部接続されている入出力方程式である。また、各列は、1〜2列が内部状態両、3列が入力状態量、4列が側負荷、5〜6列が3行目以降の出力状態量と接続されている内部の入力状態量である。数91を統合した2階層の負荷の支配方程式は、同式の3行目以降を5列目以降に代入して求める。求めた結果は、次式となる。
【0425】
【数92】
【0426】
数92は、図48の階層2で示す負荷の支配方程式で、1行目が状態方程式、2行目が入出力方程式、3行目以降が統合で隠蔽された状態量を観測する観測方程式である。
【0427】
同様に、数85のωgを数86のωmに置換え、同様にTmをTgに置換えたワイパーモータの構造支配方程式は、次式となる。
【0428】
【数93】
【0429】
数93は、1行目が状態方程式、2〜3行目が入出力方程式、4行目以降が内部接続されている入出力方程式で5列目以降の入力状態量に代入して統合する。数93を統合した2階層のモータの支配方程式は次式となる。
【0430】
【数94】
【0431】
数94は、1行目が状態方程式、2〜3行目が入出力方程式、4〜5行目が統合で隠蔽された観測量の方程式である。尚、減速比Φgと伝達特性ΦLの積を等価係数Φ0として扱うことができる。
【0432】
(2)階層2から階層1への展開と統合
階層2の展開は、電源、操作スイッチ、ワイパーモータ、負荷を互いに接続している状態量の入力状態量名TS、ωl、VSI、Im、Vb、ISIを各出力状態量名Tl、ωS、Vm、ISO、VSO、Ibに置換える。そして、階層2の各機能モデルの支配方程式を展開した構造支配方程式は、次ぎのようになる。尚、観測方程式は、式が複雑になるので除いてある。
【0433】
【数95】
【0434】
数95は、1〜2行目が状態方程式、3行目以降が統合後に観測方程式となる内部の入出力方程式である。
【0435】
次ぎに、数95の1行目と3行目に含まれているJWとJの微分量とを等価特性に変換した結果は次式となる。尚、同式は、等価変換の途中段階を示し、次ぎの統合処理でJWとJが等価蓄積特性となる。
【0436】
【数96】
【0437】
最後に、数96の2行目以降の従属変数を4列目以降の同一変数名に代入して、第一階層の支配方程式に統合する。結果は、次のワイパーシステムの支配方程式となる。
【0438】
【数97】
【0439】
数97は、1行目が最上位階層のワイパーシステムの等価機能モデルを表す状態方程式である。2行目以降は、省略した観測方程式を参考のために追加して統合したものである。この等価機能モデルは、下位機能モデルの内部特性を等価慣性モーメントJ0、等価損失特性D0、等価トルク源T0で約した抽象的な等価特性にしてある。
【0440】
この抽象化された等価特性は、次式となる。
【0441】
【数98】
【0442】
数98は、1〜3行が機能モデルの抽象化した特性D0、T0、J0の数学モデル、4〜5行が電源と操作系を電気系の等価特性として表した電流源I0と総合抵抗R0である。これらの等価特性は、図48で示す機能モデルの内部特性を生成する機構モデルとなる。また、この機構モデルには、ワイパーシステムの非線形特性を再現する、操作機構と伝達特性の機構モデルが組み込まれる。
【0443】
(7−2−6.シミュレーション結果)
図48の最上位階層の機能モデルに、表6の特性値を与えたシミュレーション結果を、図53に示す。
【0444】
【表6】
図53の結果は、上から順に操作スイッチ信号位OPE、モータの誘起電圧Vm[V]、モータの角速度ωm[rad/s]、モータ電流Im[A]、減速機出力軸(リンク)の角速度ωS[rad/s]の観測量である。シミュレーションは、1[s]で操作スイッチをON(OPE=1)にし、7[s]でOFF(OPE=0)にした。スイッチOFF後は、自動停止機構が働き、停止角θpに復帰するまでモータに電流を流して回転を維持している。各観測量は、ワイパーリンクの揺動機構が非線形系特性となる伝達係数ΦLを持つため、1回転中の変化が非対象となる。また、起動時の過渡的な電流は起動電流である。また、停止時の負の過渡的な電流は、モータ誘起電圧を利用して逆流させた電気ブレーキの電流である。
【0445】
以上のワイパーモータの事例は、下位機能モデルを統合した上位等価機能モデルが抽象的な基本機能で表現されることを示している。すなわち、このワイパーシステムは、トルク供給源、抵抗損失、慣性モーメントによる1次応答が基本機能となる。この基本機能は数98で示すように、下位機能部品の特性を統合したD0、T0、J0が上位特性となっている。逆に上位から下位を見ると、基本機能を形成するD0、T0、J0が数98を通して、図47で示す下位機能部品の特性に割り付けたと考えることができる。これは、ここで提案する展開と統合のモデル化手法によって、全系の働きを抽象的に表す基本機能は、上位から下位機能に引き継がれて具体的な機能に展開される継承関係の立証である。
【0446】
<7−3.自動車車両の例>
ここでは、これまでの内容を適用した車両のモデル化について簡単に述べる。モデル化は、図54で示す機能部品の構成を元に行なう。尚、タイヤについては、同図の4輪の車両に対し駆動輪1個で前後方向に走行するものとする
(7−3−1.シンボル化モデルによるモデル化)
図55は、機能部品の機能、機構モデルをシンボル化した記号表現で表したアイコンを製品の機能部品構成にしたがって、階層構造化したモデルである。モデル化は、製品の部品構成にしたがって、各機能部品間で受け渡すエネルギーの流に沿ってアイコン化した機能モデルを展開し(図中の幅広矢印)、これを上位階層(アッセンブリ機能部品)に統合することを示している。このコンピュータ上に描かたアイコンによる機能部品(機能モデル)の展開と統合は、コンピュータが読み込むことができる。同図の各アイコンには、各機能部品を再現する機能モデルの支配方程式、機構モデルと等価特性の関数が隠蔽されている。したがって、コンピュータ内部では、アイコン間(機能部品間)で受け渡されるエネルギーの流に沿って、機能部品(機能モデル)の状態量を接続して支配方程式群を構造支配方程式に変換しこれを統合する。同図から統合される上位の支配方程式は、最初にパワートレインと車両系を統合し、更に、この両者を展開して構造支配方程式を生成し、これを統合して最上位の車両の支配方程式が統合される。
【0447】
図55から判るように、アイコン化された機能モデルのモデル図は、製品を構成する機能部品又は機能を階層構造化してあらわした機能系統図となっている。尚、これらの詳細な機能、機構モデルと支配方程式及び関数に付いては、後で述べる。
【0448】
(7−3−2.機能部品のモデル化)
ここでは、図55で示した車両を構成する各機能部品の簡単なモデルについて、そのモデル化について検討する。
【0449】
(7−3−2−1.エンジンのモデル化)
(1)機能モデル
エンジンのモデル化は、図8で示す線形の機能要素と図10で示す非線形の機能要素を組み合わせてモデル化することができる。モデル化の過程を示すと図56となる。同図は、右側が線形と非線形の機能要素をアイコン化して登録したステンシル、左の上側がステンシルからエンジンのモデル化に必要な機能要素を選択してドラッグした機能要素、左下側がこの機能要素を互いに接続して展開した結果を整理したエンジンの機能、機構モデルである。
【0450】
(2)支配方程式
図55の左上側の線形機能要素は、互いに接続して展開することで、コンピュータに組み込まれたシステムの中の展開、統合ツールが、次ぎの構造支配方程式を生成する。
【0451】
【数99】
【0452】
数99は、1行目が状態方程式、2行目が入出力方程式、3〜4行目が内部で接続されている入出力方程式で、以下の手順で作成されたものである。機能要素の展開は、位差蓄積要素のPaoを流動供給要素のPaiに接続し、同様に流動供給要素のFaoを位差蓄積要素のFaiに接続する。この接続は、双対結合となるのでPaiをPaoに置換し、FaiをFaoに置換する。更に、これらの状態量と特性の変数名は、汎用的な機能要素に付けられた名称なので、これをエンジンの機能モデル固有の変数名に変更する。変更は、状態量のPboをエンジン角速度ωe、Fbiをエンジン負荷トルクTeに置換し、PaoとFaoは統合後に観測量にしないこととして、そのままにしておく。特性は、Mを慣性モーメントJe、Dを粘性抵抗係数De、Foをトルク源T0eに変更する。これらの変更は、図57の入出力、特性表で行なう。また、この特性表の作成と並行して、機能、機構モデルの特性値の入力及び状態量の初期化を行なう入力表が作成される。
【0453】
次ぎに数99の下2行にある従属変数名の式を同名の独立変数に代入して、後2列を消去する。消去したエンジンの機能モデルは、次式となる。
【0454】
【数100】
【0455】
数100は、図55の左下側で示す機能、機構モデルの位差量と流動量間を特性で表した機能モデルの支配方程式である。尚、このように簡単なモデルは、同図の機能モデルから直接支配方程式を導くことも可能である。
【0456】
(3)機構モデル
次ぎの図56の左上に組み込まれているエンジンの回転数―トルク特性の機構モデルについてモデル化する。トルク特性は、同図から判るように非線形となるので、エンジン回転数ωeとスロットル開度αeによって、エンジンの定常状態の出力トルクが決まる。また、エンジンは始動スイッチSstをONにして始動しOFFで停止する。すなわち、エンジンの回転数―トルク特性は、エンジン始動スイッチONの状態で、特性図に示す上5本のスロットル開度特性にしたがってトルクを発生し、OFF状態で特性図の下が1本で示すエンジン負荷特性が作用する。図56のエンジンの回転数―トルク特性には、これらの操作を行なうエンジン角速度状態量と信号が接続されている。
【0457】
まず、トルクの発生状態は、現在のエンジン角速度ωeとスロットル開度αeから発生するトルク曲線を求め、この曲線の傾きとトルク軸の交点(角速度=0)から機能モデルの粘性抵抗係数Deとトルク源T0eを部分線形法によって求めることができる。これを示すと図58となる。
【0458】
また、エンジン停止時の特性も同様に図58で示す負のトルク側の曲線から求めることができる。また、このトルク発生と負荷トルクの切り替えは、始動スイッチSstの操作値を判定してトルク特性(曲線)を選択する、次式となる。
【0459】
【数101】
【0460】
これらの機構モデルの処理は、図56の右のアイコンからドラッグされたトルク特性の非線形要素の中に処理関数として組み込まれているので、左下の機能モデルに同図の機構モデルを接続することで自動的に組み込まれる。この組み込まれた関数類は、図59で示す特性値定義表(入出力表)の中に関数名が自動的に書き込まれる。
【0461】
図59の特性入力表は、特性値入力欄の空白が特性の数値入力が必要なことを示し、"Fnc_De"、"Fnc_Tq"と記入されているのがシステムが自動的に記入した関数名である。
【0462】
(4)等価機能モデル
図56でモデル化された機能、機構モデルの内容を隠蔽した、簡略形の機能モデルは、図60のようになる。このモデルは、同図から非線形の回転数―トルク特性を特性De、Toeに関連付けて隠蔽した例である。この隠蔽によって、同図の機能、機構モデルは、外部の系と関連する支配方程式の等価特性、状態量、信号などを処理する関数が組み込まれ、このモデルと図59の入出力定義表などを一括して登録する。
【0463】
図60の支配方程式と等価特性は、次式となる。
【0464】
【数102】
【0465】
数102は、上側が支配方程式で数99と同じものである。下側がエンジンの回転数―トルクの非線形特性を部分線化して特性値D、Tに代入する関数である。
【0466】
(5)モデル登録
作成した機能、機構モデルは、登録して再利用することができる。この登録は、機能、機構モデルに関する情報を管理するステンシル一覧表の中にアイコン表示で登録する。同時に、機能、機構モデル図、支配方程式、機構モデル用の関数類、特性の定義と入出力表、状態量、観測量などの定義表も一括して登録する。このステンシル一覧表に登録された機能、機構モデルは、一覧表からアイコンをドラッグして読み出せば、機能、機構モデル図をコンピュータ上に再現することができる。当然、描かれたモデル図には、登録した時の支配方程式、機構モデル関数、定義表を包含している。この関係を図61に示す。
【0467】
(7−3−2−2.その他の車両用機能部品のモデル化)
これまで、エンジンを例に本システムで機能、機構モデルをモデル化する手順を示した。ここでは、エンジンと同様な手順でモデル化して、ステンシル一覧に登録されているモデルについて、その概要を紹介する。尚、機能、機構モデルの関数類に付いては省略する。また、ここで述べる各機能部品は、図55で示す各アイコン化された機能モデルの内容である。
【0468】
(1)ロックアップ付きトルクコンバータモデル
図62にロックアップ付きのトルクコンバータを示す。同図は、上側が機能モデルである。その中には、ロックアップクラッチの摩擦特性とコンバータの流体特性の非線形要素、トルクコンバータの容量係数とトルク比をコンバーターの入出力角速度の速度比で表した特性マップとその処理関数が機構モデルとして包含されている。また、外部には、が接続去れている。尚、この中のコンバータモデルは、速度の連続性を速度比で決まる容量係数で補償している。
【0469】
図62の支配方程式、次式となる。
【0470】
【数103】
【0471】
次ぎに、図62の機能・機構モデルを簡略化した等価機能モデルは、図63で表すことができる。
【0472】
図63の支配方程式とその等価特性は、次式となる。
【0473】
【数104】
【0474】
数104は、上側が支配方程式、下側が等価特性である。等価特性の上4行が内部に組み込まれている機構モデルの非線形要素の処理関数、下5行が等価特性である。
【0475】
(2)変速機モデル
変速機の汎用的な機能、機構モデル(左側)と簡略された(右側)等価モデルを図64に示す。同図のモデルは、変速機内部の損失特性や詳細機能が省略されている。手動変速機(MT)、自動変速機(AT)、無段変速機(CVT)などの詳細モデルについては、変速機構造の違いによってモデルが異なる。同図のモデルは、両端に丸みがある枠が変速比(歯車比)の配列変数に変速位置をShift=1〜n段で指定して歯車比Nmisを決定する関数である。
【0476】
図64の左側の機能モデルの支配方程式は、次式となる。
【0477】
【数105】
【0478】
図64の右側の機能モデルの支配方程式と等価特性は、次式となる。
【0479】
【数106】
【0480】
数106の中のfnc_Nmis()の関数は、変速位置Shiftから変速歯車比を選択する関数である。
【0481】
(3)ブレーキモデル
図65は、ブレーキの一般的な機能、機構モデル(左側)と簡略化した等価機能モデル(右側)である。同図にの機能、機構モデルは、ブレーキの摩擦力で車両の駆動力を吸収して停止させるロック判定の機構モデルを包含している。この機構モデルは、変数名が異なる以外は、ロックアップクラッチと同一機構モデルである。
【0482】
図65左側の機能モデルの支配方程式は、次式となる。
【0483】
【数107】
【0484】
図65右側の等価機能モデルの支配方程式と等価特性は、次式となる。
【0485】
【数108】
【0486】
(4)タイヤモデル
図66は、タイヤの機構、機構モデルである。同図の機能、機構モデルには、タイヤの滑りを再現する機構モデル(図中の左側)とコロガリ抵抗を表す機構モデル(図中の右側)を包含している。尚、コロガリ抵抗の機構モデルは、本来コロガリ抵抗力が制動力として働くが、このモデルでは速度0の時に抵抗力が発生しない簡易モデルとなっている。
【0487】
図66の機能モデルの支配方程式は、次式となる。
【0488】
【数109】
【0489】
図67は、図66の機能機構モデルを簡略化した等価機能モデルである。
【0490】
図67の等価機能モデルの支配方程式と等価特性は、次式となる。
【0491】
【数110】
【0492】
(5)車体モデル
図68は、車体の機能、機構もデル(左側)とその等価モデルである。同図の左側の機能、機構モデルモデルには、速度2乗に比例する走行抵抗力と坂道の登降坂力を生成する機構モデルを包含している。尚、走行抵抗力の機構モデルは、トルクコンバータの機構モデルに対し走行速度の方向(前進、後退)を走行抵抗力に正負で与える以外は同一機構モデルである(変数名は異なる)。
【0493】
図68の左側の機能モデルの支配方程式は、次式となる。
【0494】
【数111】
【0495】
図68の右側に示す等価機能モデルの支配方程式と等価特性は、次式となる。
【0496】
【数112】
【0497】
(7−3−3.車両用機能モデルの展開と統合)
ここでは、これまで車両用の機能部品をモデル化してステンシル一覧表に登録した機能、機構モデルを展開して上位階層のパワートレーインと車両系、更に両者を統合した車両のモデル統合を行なう。
【0498】
(7−3−3−1.パワートレインの機能モデル)
図69は、ステンシルからパワートレインを構成する等価機能モデルをドラッグして描いた展開例である。また、図67は、この展開された機能モデルを上位階層のパワートレインに統合した機能モデルの例である。
【0499】
図69のパワートレイン機能モデルは、機能モデル図、支配方程式、等価特性の関数が一括してがの登録される。また、特性入力表や状態量などの定義表は、先に登録されている各機能部品のものを利用する。利用野方法は、図55の階層構造化された機能部品のアイコンを指定して読み出し、特性の再定義や内容の参照ができる。
【0500】
図70の機構モデルの支配方程式と等価特性は次式となる。尚、統合によって隠蔽された観測量は、同式から割愛されている。
【0501】
【数113】
【0502】
(7−3−3−2.車体系と車両の機能モデル)
パワートレインと同様に車体系を構成する機能部品を展開した例を図71に示し、統合した機能モデルを図72に示す。そして、図70のパワートレインと図72の車体系の機能モデルを展開して統合した最上位階層の車両の機能モデルを図73に示す。車両機能モデルには、自動変速機の歯車比を選択する変速マップとロックアップクラッチのON/OFFを決定するマップとこれを制御する制御アルゴリズムの関数が内臓されている。また、この車両の統合でこれらの機構モデルが組み込まれる理由は、変速制御が車体の車速とエンジンのスロットル開度を観測量とし、制御がトルクコンバータと変速機の複数の機能部品に跨った、観測量と制御を行なうためである。尚、統合された機能モデルの支配方程式と等価特性の式に付いては、省略する。
【0503】
8.本実施の形態のシステム構成例
<8−1.ハードウエア及びソフトウエアの概略構成例>
機能、機構モデルのモデル化を行なうために必要なシステムのハードウエア構成例の概略は図74となり、モデル化を実行するソフトウエア構成例の概略は図75となる。
【0504】
図75において機能、機構モデルは、製品、部品の機能、働きを忠実に再現することから、これを仮想原形(バーチャルプロトタイプ)又は実行モデルと呼び、これを実行する実行環境が必要である。この実行環境と実行モデルの関係は、入子方式で組み込まれた各種実行モデルを実行環境側から操作し、機能モデルが生成する状態量及び機構モデルが生成する物理特性などを観測する。したがって、実行環境を構成する各モデルは、運転操作モデルが実行モデルの操作、運転環境モデルが周囲温度、外気圧などの環境特性などの条件設定、観測モデルが実行モデルの状態量や特性値の測定、評価モデルが実行モデルの運転状態や運転結果の良否判定などを行なうモデルで構成されている。また、実行制御システムは、実行モデルの運転開始、停止、運転途中での特性値の変更など、実行モデルを実行するための各種制御を行う。
【0505】
これに必要な各種のツールには、実行環境の中で実行モデルを運転するために必要な実行支援ツール、運転状態及び実行モデルの状態を観測するためのツールが必要である。なた、実行モデルは、これをモデル化するためのモデル化ツールとモデル化に際して製品、部品特性の試験データや物理現象などを解析する実態解析ツールが必要である。
【0506】
<8−2.ハードウエア構成の具体例>
図88に、本実施の形態のモデル化を実現するハードウエアの具体例を示す。
図88において、10は図74の演算装置に相当する演算・制御用のCPU、20はCPU10が使用する固定プログラムや固定パラメータなどを格納するROM、30は図74の一次記憶装置に相当する、CPU10が実行するプログラムを外部記憶部40からロードするプログラム領域31と、CPU10のプログラム実行時にデータの一次記憶として使用されるデータ領域32とを含むRAMである。
【0507】
40は、図74のハードディスクやCD−ROM/MOなどに相当する外部記憶部であり、図75に示した各種ツールのプログラム及びデータを記憶するツール記憶領域41と、上記の各種機能要素、機能モデル、機構モデルなどを行列(方程式)表示形式、部品表示形式、機能・機構表示形式、要素表示形式、あるいはアイコンで読み出し可能に表示できるように、索引可能に構成されているデータベースを記憶するデータベース記憶領域42とを含む。尚、データベース記憶領域42は、ユーザが展開・統合処理により作成した新たな部品や製品のモデルを登録できるように、書換可能な領域を設けることが好ましい。
【0508】
50は、入力機器をインタフェースする入力インタフェースであり、例えばキーボード51やマウス52などが接続される。60は、出力機器をインタフェースする出力インタフェースであり、表示部61やプリンタ62などが接続される。
【0509】
尚、図88には通信部を省略したが、通信部を介して下階層の部品を作成する企業や、上階層の製品を作成する企業との間で、本実施の形態で作成した機能モデルをやりとりすることで、設計段階の早期にシミュレーションが可能になる。
これらについては、以下のビジネスモデルの項で詳説する。
【0510】
<8−3.処理手順の具体例>
図89に、本実施の形態のモデル化を図75のツールを使用して実現する手順例をフローチャートで示す。ここで、ステップS60の展開・統合ツールが、前述の図46に示した手順に相当するものである。
【0511】
まず、ステップS10でシステムを初期化し、ステップS20でメインメニューを表示する。メインメニューは、図75に記載のツールを階層的に開くものであればよい。本例では、モデル化が主眼であるので、モデル化ツールを開き、その中の各種ツールがサブメニューとして表示され、そのサブメニューの選択により以降の処理が実行される。ステップS30の選択は、このモデル化ツールのサブメニューの選択である。
【0512】
サブメニューの選択により、ステップS40、S50、S60、S70…のツールが使用可能になる。図89では、本実施の形態に特に関連のあるモデル構築ツール(S40)、特性入力表作成ツール(S50)、展開・統合ツール(S60)、新規作成したモデルを登録するデータベース・ツール(S70)のみを示した。
【0513】
実際の動作では、最初にモデル構築ツール(S40)で所望のモデルをデータベースが提供するデータを使用しながら作成し、当時に、特性入力表作成ツール(S50)でそれぞれの機能に対応する特性を入力し、モデルが構築されると展開・統合ツール(S60)でそのモデルを上階層へ統合し、最後に必要でれば新規作成したモデルをデータベース・ツール(S70)で登録する。
【0514】
尚、ハードウエア構成例でも言及したが、モデル構築ツール(S40)により使用する機能モデルのデータは、記憶媒体から入力される以外に通信、例えばインターネットを介して読込んだものを使用してもよく、又、データベース・ツール(S70)での登録は、通信、例えばインターネットを介して外部に送信するようにしてもよい。
【0515】
<8−4.ワーパーのモデル化におけるデータ構成例>
以下、上記ハードウエア及びソフトウエアで実現する本実施の形態のモデルの展開・統合がどのようなデータ構成により実現するか、その一例を示す。
【0516】
(8−4−1.RAMの構成例)
本実施の形態のモデルの展開・統合処理におけるRAM30の内容例を図90に示す。
【0517】
図90で、RAM30のプログラム領域31は、例えば、OS(オペレーション・システム)と、必要なモデル化ツールのプログラムをロードしている。
【0518】
一方、データ領域32は、図示しないモデル化ツールのデータや機能・機構モデルの表示用のデータと共に、図90に記載のように、各階層での行列式(方程式)を記憶する。図90には、先の展開・統合の具体例で説明したワイパーモデルの展開・統合の場合の例を示している。
【0519】
階層3としては、ワーパーモデルの部品として、線形の機能モデルであるモータ、減速機&リンク、ワーパー翼、窓ガラスの行列式と、非線形の揺動機構のデータ(あるいは式)が読み出される。あるいは作成される。これらの行列式は、展開処理における双対変換や符合変化などに対応して変形される。
【0520】
統合処理においては、モータ行列式と減速機&リンク行列式とが組合わされて階層2のワイパーモータ行列式が生成され、ワーパー翼行列式と窓ガラスの行列式とが組合わされて階層2の負荷行列式が生成される。更に、これらの生成された行列式は、無視できる要素が削除され等価変換されて、次の統合化のために簡素化された行列式に変換される。
【0521】
階層2には、更に、線形の機能モデルである電池と操作系の行列式と、非線形の操作機構データ(式)が追加される。階層3の非線形の揺動機構データ(式)は階層2にそのまま移動される。階層2の行列式も、展開処理における双対変換や符合変化などに対応して変形される。
【0522】
統合処理においては、電池行列式、操作系行列式、負荷行列式、ワイパーモータ行列式が組合わされて、階層1の結合行列式が生成される。更に、非線形の操作機構データ(式)と揺動機構データ(式)は、階層1にそのまま移動される。階層1の結合行列式は、無視できる要素が削除され等価変換されて、簡素化された統合行列式に変換される。この時に、統合行列式はワーパーシステム行列式と、機構モデル行列式と、観測モデル行列式を含む。この中でワーパーシステム行列式はワーパーの機能モデルであり、データベースに登録すれば以降はモデルとして使用できる。
【0523】
(8−4−2.データベースの構成例)
図91及び図92は、図48及び図49に示す上記ワーパーシステムに関するデータベースの構成例を示す。この図は、ワーパーの機能モデルを登録した後の状態を示しており、ワーパーの機能モデルが作成される前は、上階層のデータはRAM30のデータ領域32内にある。どこまでをデータベースが有するかにより、図91及び図92の構造は記憶媒体とメモリとに分けて記憶される。尚、図91及び図92では、データベースの機能性を高めるために個々のデータはポインタに先に記憶して、それぞれの部品の情報はコンパクトにしたが、各部品について全ての情報を持ってもよい。例えば、部品データ100の中にモデル表示情報131〜136や上階層データ、下階層データ、非線形データなどを含んでもよい。
【0524】
以下、上階層から下階層に向かって説明する。100は、階層1のリアワイパーAの部品データである。部品データ100は、順に、本部品データの検索のための部品番号110、部品名120、モデル表示ポインタ130を有する。モデル表示ポインタ130の先には、この部品を種々の選択可能な形式で記憶する領域がある。図72のように、部品のアイコン表示をしてこのアイコンをクリックすることで機能モデルを読み出すためのアイコン表示情報131、図47のように、部品を表わす図で組立を表示する組立部品表示情報132、図81のように、機能要素をブラックボックスで表示する機能・機構表示情報133、図48や図49のように、機能要素を全て詳細に表示する要素表示情報134、数30〜数37のように、機能モデルを行列式で表示する行列式表示情報135が記憶されており、ユーザの指示によりその表示形式が選択できる。ただ、以下に説明するように、契約によりその一部はユーザに提供されないように設定される。更に、一般的な機能モデル、例えば同じ機能モデルのはりと遊星歯車の各関数を設定する設定関数情報136も記憶されており、この情報は要素表示情報134や行列式表示情報135、あるいは行列式170から参照される。
【0525】
140は、上階層の機能モデルを参照する上階層リンクポインタである。リアワイパーAには、上階層が無いので0が記憶されている。150は、下階層の機能モデルを参照する下階層リンクポインタである。本例のリアワイパーAには、階層2の電池151、操作系(スイッチ)152、ワイパモータ153、負荷154がリンクしている。150は、非線形の機構モデルを参照する非線形リンクポインタでり、本例のリアワイパーAには揺動機構161と操作機構162がリンクしている。170は、この部品の機能モデルを表わす行列式が記憶されている。
【0526】
以下、例えば、電池の部品データ200には、リアワイパーAと同様に、部品番号210、部品名220、モデル表示ポインタ230、上階層リンクポインタ240、下階層リンクポインタ250、非線形リンクポインタ260、行列式270が記憶されている。電池の場合も同様にアイコン表示情報231以下が記憶されており、上階層リンクポインタ240にはリアワイパーA241がリンクしている。他の操作系152、ワイパモータ153、負荷154にもそれぞれの部品データがある。例えば、ワイパモータ153には部品データ300がリンクしている。
【0527】
揺動機構161、操作機構162にも、それぞれ部品データがリンクし、例えば操作機構の部品データ400には、非線形のデータ450が更にリンクしている。
【0528】
尚、図91及びず92の▲1▼▲2▼▲3▼は、リンク関係を表わしている。
【0529】
図92は、階層2のワイパモータの部品データ300からのリンクを示す図である。上階層としてはリアワイパーAがリンクしている(341)。下階層リンクポインタには、階層3のモータX351(部品データ400)と減速機&リンク352がリンクしている。非線形リンクポインタには揺動機構361がリンクしている。
【0530】
モータXの部品データ400には、モータの電気係、モータ定数、モータ回転数がリンクしており、モータ定数は係数要素810で、変数がNであること(820)、行列式830からなるデータ800がリンクしている。モータ回転系は、要素データ500として、要素番号510、要素名520、上階層リンク530、下階層リンク540、行列式550を持っている。下階層には、感性モーメント600と粘性抵抗係数700がリンクしており、慣性モーメント600は蓄積要素610で、流動系620、符合の方向630、関数J640、行列式650を持っており、粘性抵抗係数700は損失要素710で、流動系720、符合の方向730、関数D740、行列式750を持っている。
【0531】
9.機能・機構モデルの運用システム
<9−1.モデルの再利用法>
機能モデルは、製品が標準化又は開発済みの各種機能部品を流用して組み立てることが可能なように、展開と統合によってモデル化された開発済みの各階層のモデルを再利用することが可能である。この登録と流用の関係を図76に示す。
図76は、モデル集及びツール集を元にしてモデル化し機能部品や機能、機構、物理要素などを登録し、次ぎのモデル化で再度呼び出して利用することを示している。これらのモデル化の元となるモデル集には、図77で示すモデル化記号のステンシルや、先に図8で示した機能要素のモデル、図10で示した非線形要素のモデルなどがあり、これらは物理単位系を超えて共通化された記号と要素である。当然のこととして、これらの各記号やモデルは、モデル化の過程で新たに生成されものを登録して再利用することができる。
【0532】
図77は、線形、非線形用の機能、機構モデルに使用する汎用的な記号で、この記号は、モデル化に必要な状態変数、特性変数、演算などの基本的な機能を有している。したがって、これら記号を機能モデルのモデル化手法の規則にしたがってコンピュータ上に組み合わせして描かれたモデルは、自動的に数学モデルを導くことが可能である。
【0533】
<9−2.モデル集のモデル内容>
モデル集の内容は、その用途により簡単なシンボル表現のものから詳細モデルまで使用目的に合わせてパッケージ化したものが利用できる。ここでは、機能モデルをパッケージ化する際のモデル表現法について検討する。図78,図80,図81,図83は、外部記憶媒体に収録する場合のパッケージとモデル形態の関係を表した例である。各図のモデルは、左端がモデルを収録したCR-ROM、中央の一番上にある図が摩擦結合機構の機能、機構モデル、右端上側が添付される情報内容、下側がモジュール化されたソフトウエアーを示している。
【0534】
(9−2−1.詳細機能モデルのパッケージ)
図78は、製品や部品などの物理現象や工学理論などを基に詳細なモデル化を行なう専門家を対象にした機能部品モデルを提供するモデル集のパッケージである。このモデルは、モデル細部まで表現され、技術的なノウハウなどは機構モデルや等価特性の中に保有技術として蓄えることができる。
【0535】
例えば、中央の上側にある摩擦結合機構の機能モデルは、図75のシステムのモデル化ツールを介してシステムに組み込み、他の機能モデル群と展開と統合を行なって、製品又は部品のモデル化ができる。この時のモデル化に必要な、モデル図と支配方程式、非線形などを再現する機構モデルの実行関数、実行時に特性値などを入力する入力表を持っている(図79)。また、付属する資料類は、図75のシステムでモデル化及び統合後の実行途上でヘルプリストとして参照できる。
【0536】
同図の摩擦結合機構機能モデルの支配方程式は、位差量の差分入力(Δωcl)に対する流動量出力(Tcl)の関係で表現され、入力状態量ωcl_i1、ωcl_i2と出力状態量Tcl_o1、Tcl_o2の支配方程式はモデルの汎用性を高めるために省略されている。したがって、他の機能モデルと接続して展開する時には、システム側で入出力状態量で表した式を自動生成する。当然のこととして、この入出力状態量で表した支配方程式を提供することも可能である。図78の中央上側に示す摩擦結合の支配方程式は、次ぎのようになる。
【0537】
【数114】
【0538】
また、締結判定の機構モデルは、次式となる。
【0539】
【数115】
【0540】
数115は、摩擦結合の締結、滑り状態を判定するスイッチ要素Sclの式である。また、同式の中にあるSign()は、状態量の正負を判定して1又は−1で出力する関数である。
【0541】
(9−2−2.等価機能モデルのパッケージ)
図80は、製品や部品などの内部機能を抽象化した等価機能の組み合わせてモデル化を行なう製品開発の技術者を対象にした、機能部品モデルを提供するモデル集のパッケージである。このモデル集は、製品、部品とその再現モデルをパックにして顧客に提供し、顧客は提供されたモデルの支配方程式を自社製品のモデルに組み込みシミュレーションできる。その時、提供されたモデルは、抽象化された統合モデルなので提供側の機構モデルや等価特性の中に作り込まれている製品、部品の技術内容は関数化して隠蔽できる。
【0542】
同図中央の上にある機能モデルは、図78で示す機能モデル内部の特性を展開、統合して等価特性にまとめたモデルとなっている。尚、同図の特性の入出力表は、図79とおなじである。また、図80の支配方程式は、数113を統合した次式となる。
【0543】
【数116】
【0544】
数116の中の各特性は次式となり、数114と同様に関数化した等価特性として提供される。
【0545】
【数117】
【0546】
数117は、1行目が等価ばねこわさ、2行目が等価減衰係数、3行目が等価トルクである。
【0547】
(9−2−3.簡易機能モデルのパッケージ)
図81は、製品や部品などの内部機能が隠蔽されたモデルを使って他の機構部品(系)との物理量(状態量)の受け渡し関係を基にモデルの組み合わせをを行なう製品開発の技術者を対象とした、機能部品モデルを提供するモデル集のパッケージである。このモデル集は、製品、部品とその再現モデルをパックにして顧客に提供し、顧客は提供されたモデルを使って、自社製品の使用条件などを入出力状態量及び特性値で与えてシミュレーションで確認できる。但し、顧客のモデルに支配方程式を組み込むことはできない。また、提供されたモデルは、抽象化されたモデルなので製品、部品に作り込まれた、機能モデル、機構モデル、等価特性の技術内容は関数化して隠蔽できる。
【0548】
このパッケージを使ったモデル化では、機能部品内部の詳細な理論や知識を必要としないのが特長である。図81の簡易機能モデルは、図78の機能、機構モデルの位差量の差分入力(Δωcl)に対する流動量出力(Tcl)の関係をClutchの機能としてまとめたものである。この関係を図82に示す。
【0549】
この簡易機能パッケージは、支配方程式、機構モデルと等価特性を全て関数化して提供し、モデル化に際して式の変更を行なうことができない。
【0550】
(9−2−4.シンボル化モデルのパッケージ)
図83は、製品や部品などの内部機能を隠蔽したモデルを抽象的なシンボル記号で表し、エネルギー受け渡し関係を基に記号を使って他の機構部品(系)と相互接続してモデル化する技術者を対象とした、機能部品モデルを提供するモデル集のパッケージである。このモデル集は、製品、部品とその再現モデルをパックにして顧客に提供し、顧客は提供されたモデルを使って提供された製品、部品の挙動や特性をシミュレーションで確認し、提供側の指定範囲内で特性値を更新して顧客の要求仕様を検証することができる。但し、顧客のモデルに支配方程式を組み込み、モデル内容の変更摺ることはできない。また、提供されたモデルは、シンボル化されており機能モデル、機構モデル、等価特性の技術内容を関数化して隠蔽されるので更新できない。
【0551】
この記号化されたモデルの支配方程式、機構モデル、等価特性は、全て巻数化され、モデル内容を変更することはできない。また、関数化して提供される支配方程式の入出力状態量は、他の系と直接接続するために数115を次ぎの式で表したものになる。
【0552】
【数118】
【0553】
10.ビジネスモデル
これまで述べた機能、機構モデルの展開と統合手法は、製品開発に関係する企業間に展開することが可能である。
【0554】
<10−1.機能、機構モデルの取引>
機能、機構モデルは、機能部品単位にモデル化して、製品の部品構成にそってモデル化することができる。また、同モデルは、機能単位に標準化した汎用モデルを製品、部品のモデルに組み込むことが可能である。したがって、この汎用性の高さから、モデル化された、機能部品、物理現象、工学理論などのモデルは、多くのモデル化する技術者の共有モデルとなる。この共有化可能なモデルを、モデル製作者から買取って販売する方法、又はモデル製作者から委託を受けて販売するビジネスを可能とする。図84は、この関係を模式的に表した図である。
【0555】
<10−2.製品開発における発注製品の性能承認>
従来から受発注者間の取引で技術内容を契約する方法として、承認図面による取引がある。この取引では、発注部品の性能、特性面について、その細部表現することに限界がる。これを解決する方法として、機能、機構モデルの個別部品から製品全体まで階層構造化して展開と統合ができる点、機能、機構モデルを入れ子方式で組み替え可能点などを利用して,受発注者間で取り交わす承認申請図に合わせて受注部品の機能、機構モデルもパックにして承認することができる。この受注部品機能、機構モデルは、受注側で納入部品の試験結果で同定し公差変動幅を持たせた特性データ付けて申請する。これを発注側は、まず申請された機能、機構モデルの単体でシミュレーション評価して部品単体の妥当性を評価し、次ぎに製品モデルに組み込んで開発製品に対する性能、特性の発注部品の適合性を総合評価して、承認の可否を決定する評価を行なうことができる。この仕組みを簡単に表した例を図85に示す。
【0556】
<10−3.評価モデル付き機能部品販売>
この部品には、多くの多種の製品に汎用的に組み込まれるものが多くある。また、これらの汎用的な機能部品の購入側では、製品の全体又は部分についてモデル化して技術評価が行なわれている。このことは、発注側がモデル化したシステムに融通性の高いモデル化手法で作られたモデルを提供されれば、発注側のモデル化の開発費、工数、期間の短縮を図ることができる。図86と図87は、このような目的で作られた仕組みの例である。
【0557】
図86は、納品部品一緒にその部品の機能、機構モデルと内部の特性データを納入するに方法である。また、図87は、見積もり段階に見積もり申請書に機能、機構モデルと内部特性値を付けて申請し、発注側で依頼部品の性能、特性を確認して発注する仕組みの例である。
【0558】
11.シミュレーションの実行
最後に、本実施の形態でシミュレーションモデルを作成して、該シミュレーションモデルによりコンピュータ上で実際にシミュレーションを実行するまでの手順例を、説明する。本例では、シミュレーション対象を自動車の駆動系とする場合を例に説明する。
【0559】
図93は、本実施の形態に係るシミュレーション・システムのシミュレーション手順を示すフローチャートである。また、図94は、シミュレーション・システムで自動車の駆動系をシミュレーションする場合の概念を説明する図である。
<11−1.シミュレーションモデル作成のための資源>
ステップS1:シミュレーションモデル作成のための資源として、以下のデータが準備される。これらデータは、1つのユニットを表現する機能モデルであったり、部品やその一部を表現する機能要素であったりする。
【0560】
図93において、機能モデルファイル1000には、当該シミュレーションの対象となる装置(あるいは系)の機能モデル、あるいは機能モデルを作成するための構成要素データと、それら機能モデルが参照すべき制御パラメータなどが、操作者が選択可能に予め格納されている。
【0561】
物理的特性データファイル1300には、シミュレーション対象のある機構部分を上述した如くモデル化した場合に抽出されたところの、その機構部分特有の物理的な特性を表わすデータ(物理的特性データ)が予め格納されている。このデータの実態は、当該機構部分特有の非線形要素を表わす関数やルックアップテーブルである。
【0562】
従って、当該シミュレーションの対象が、図94の例のように自動車の駆動系だけに限定される場合、機能モデルファイル1000には、当該駆動系を構成する要素として、エンジン、自動変速機(AT)、並びに負荷の機能モデル及びその制御パラメータが格納されており、物理的特性データファイル1300には、上記エンジンやAT等のトルク、回転速度等の物理的な特性や過渡応答特性等の物理的特性データが格納されている。
【0563】
また、データモデルファイル(機構モデルファイル)1100には、シミュレーション対象を構成するある機構部分をモデル化した場合に、非線形な物理的特性データと別個にされた機構モデルが予め格納されている。データモデルファイル1100は、シミュレーションに際して、上記の物理的特性データファイル1300に格納されている物理的特性データを読み出すと共に、読み出した当該データを演算時の制御パラメータ値として機構モデルに代入する。図94の例では、CE(レシプロエンジン)、RE(ロータリーエンジン)、DE(ディーゼルエンジン)等のように、エンジンの種類毎のトルク特性に基づくトルクの計算値を求めるための機構モデル2100に相当する。
【0564】
そして、これら3種類のファイルを用いて、本実施の形態の係るシミュレーションモデル作成とシミュレーションとが実行される。
【0565】
<11−2.シミュレーションモデルの作成>
ステップS2:機能モデルファイル1000から読み出された機能モデルと、データモデルファイル1100から読み出された機構モデルとに基づいて、シミュレーション対象を構成する複数のユニット毎にユニットモデル1200を作成し、それらのユニットモデル間を、位差量及び流動量の対を利用して接続していくことにより、当該シミュレーション対象を、モデル化された系として表現する。
【0566】
このオペレーションは、現在では一般的な描画ソフトウエアのオペレーションと略同様であり、操作者がシミュレーション対象の系を定義すべく、機能モデルファイル1000やデータモデルファイル1100の中から所望のブロック(適当なブロック)をコンピュータの表示画面上で選択していくことによって行われる。図94の例では、シミュレーション対象の駆動系を構成するエンジン、自動変速機(AT)、並びに負荷のモデルが接続された機能モデル2000と、選択された種類のエンジンのトルク特性に基づくトルクの計算値を求めるための機構モデル2100に相当する。
【0567】
ステップ3:位差量及び流動量の対により相互に接続された複数のユニットモデルからなる系を、上述した手順に従って自動的に統合する。ここで、コンピュータの内部において、ステップS3にて統合されたモデルの実態は、当該シミュレーション対象を表わす状態方程式(但し、操作性を向上すべく観測系を含む場合はシステム方程式)であり、算出された状態方程式は、統合状態方程式1400として格納される。
【0568】
尚、ステップS2及びS3で新たに作成されたユニットモデルや統合されたシミュレーション対象は、以後資源として再利用するため、機能モデルファイル1000、データモデルファイル1100に検索・読み出し可能に登録される。
【0569】
<11−3.シミュレーションの実行>
ステップ4:当該シミュレーション対象を表わすところの、ステップS3にて統合されたモデルに対して、予め用意してあるテストコード(図94の例では、エンジンのスロットル開度、ATのシフトレンジ等の遷移状態が予め登録されたテストコード2300に相当)と、物理的特性データ(図94の例では、エンジンやAT等のトルク、回転速度等の物理的な特性や過渡応答特性からなる物理的特性データ2200に相当)を所定のサンプリング周期毎に供給することにより、コンピュータ上で当該モデルの動作をシミュレーションする。
【0570】
即ち、統合状態方程式1400に格納された状態方程式には、データモデルファイル1100から読み出された機構モデルが含まれているので、所定のサンプリング周期毎に物理的特性データファイル1300(物理的特性データ2200)から読み出した物理的特性データ(今回の制御周期もしくは微小時間前のシミュレーション結果に基づいて代入すべきパラメータ値を演算しても良い)を、制御パラメータとして当該機構モデルの対応する部分に代入する。そして、代入された制御パラメータに応じた演算結果は、制御周期毎に記憶装置に格納される。
【0571】
ステップS5:所定のシミュレーション期間にわたってステップS4にて算出した演算結果を、図94では車両挙動(シミュレーション結果)2400と例示する如く、予め設定した所定のフォーマットに従ってディスプレイやプロッタ等に出力する。
【0572】
【発明の効果】
本発明により、電気系や機械系、固体系や流体系など全ての物理系で表現できる、1つの機能の部品から多くの部品を組み合わせた機械、更に複数の機械を組み合わせたシステムに至るまでの動作をシミュレートするためのモデルを統一的に作成するシミュレーションモデル作成方法及びそのシステムと記憶媒体を提供できる。
【0573】
すなわち、
(1)多くのの非線形特性を含んでも、演算処理量を極小化できて且つ精度向上が図れる。各モデル、特に非線形特性を容易に入れ子構造にできる。
(2)簡単に機能モデルの結合処理が行える。
(3)機能再現モデルの作成が容易となる。
(4)統合された機能再現モデルの論理的な把握や再利用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態の機能・機構モデルの構成概念図である。
【図2】本実施の形態の機能・機構モデルの基本構成図である。
【図3】本実施の形態の機能・機構モデルのモデル化例を示す図である。
【図4】本実施の形態の機能要素生成の概念図である。
【図5】本実施の形態の機能要素の双対変換の例を示す図である。
【図6】本実施の形態のエネルギーの流れと状態量との関係を示す図である。
【図7】本実施の形態の機能モデル間を結合する係数要素を示す図である。
【図8】本実施の形態の線形の機能要素群の例を示す図である。
【図9】柔軟支持剛体はりと遊星歯車列の内部機能のモデル化を示す図である。
【図10】本実施の形態の非線形の機能要素群の例を示す図である。
【図11】本実施の形態の入子式内部特性の概念図である。
【図12】入子型機構モデルの例を示す図である。
【図13】入子型機構モデルの他の例を示す図である。
【図14】 2S-C型遊星歯車列の例を示す図である。
【図15】 3S型遊星歯車列の例を示す図である。
【図16】 S-C-P型遊星歯車列の例を示す図である。
【図17】本実施の形態の機能部品のステンシルとモデル群の例を示す図である。
【図18】本実施の形態の類似機能モデルの入子構造の概念図である。
【図19】自動車用変速機モデルの入子構造の例を示す図である。
【図20】モータ操作係モデルの入子構造の例を示す図である。
【図21】本実施の形態の階層構造化された機能モデルの同定概念図である。
【図22】本実施の形態の機能モデルの階層化の概念図である。
【図23】本実施の形態の機能モデルの展開・統合の基本概念図である。
【図24】本実施の形態の間イブ特性の展開・統合の概念図である。
【図25】本実施の形態の1対1の双対結合の概念図である。
【図26】本実施の形態の結合状態量の符号変換の概念図である。
【図27】本実施の形態の1対多の分配・加算結合の概念図である。
【図28】本実施の形態の1対多から1対1への変換の概念図である。
【図29】本実施の形態の機能モデルの符号変換法の概念図である。
【図30】累積要素の双対変換例を示す図である。
【図31】伝達・損失要素の双対変換例を示す図である。
【図32】供給・負荷要素の双対変換例を示す図である。
【図33】損失特性の等価特性変換例を示す図である。
【図34】本実施の形態の蓄積特性の実態構造と等価特性の関係を示す図である。
【図35】分配結合された微分量の機能モデル例を示す図である。
【図36】分配結合された微分量の等価機能モデル例を示す図である。
【図37】加算結合された微分量の機能モデル例を示す図である。
【図38】加算結合された微分量の等価機能モデル例を示す図である。
【図39】本実施の形態の実行モデルの入出力状態量の拘束例を示す図である。
【図40】本実施の形態の支配方程式による等価モデル変換の概念図である。
【図41】本実施の形態の機能モデルの内部構成の典型例を示す図である。
【図42】本実施の形態の構造化機能モデルの内部構成の典型例を示す図である。
【図43】RLC素子の電気回路例を示す図である。
【図44】RLC素子の機能要素モデルを示す図である。
【図45】RLC電気回路の機能モデルを示す図である。
【図46】本実施の形態の展開と統合の手順例を示すフローチャートである。
【図47】リアワイパーシステムの部品構成の表示例を示す図である。
【図48】リアワイパーシステムの階層型機能モデルの表示例を示す図である。
【図49】機能要素によるモータのモデル化例を示す図である。
【図50】翼剛性のKw消去による低次元化の例を示す図である。
【図51】揺動機構の構造モデルを示す図である。
【図52】揺動機構の伝達係数ΦLの非線形特性を示す図である。
【図53】リアワイパーシステムのシミュレーション結果を示す図である。
【図54】車両の機能部品構成例を示す図である。
【図55】車両のシンボル化モデルによる展開と統合を示す図である。
【図56】エンジンのシンボル化モデルによる展開と統合を示す図である。
【図57】機能モデルの変数名の更新表の表示例を示す図である。
【図58】非線形特性であるエンジンのトルク特性とDe・T0eとの関係を示す図である。
【図59】特性値定義表の表示例を示す図である。
【図60】エンジンの等価機能モデルの例を示す図である。
【図61】エンジンの等価機能モデルの登録例を示す図である。
【図62】LU付きトルクコンバータの機能モデルの例を示す図である。
【図63】LU付きトルクコンバータの等価機能モデルの例を示す図である。
【図64】変速機の機能モデル及び等価機能モデルの例を示す図である。
【図65】ブレーキの機能モデル及び等価機能モデルの例を示す図である。
【図66】タイヤの機能モデルの例を示す図である。
【図67】タイヤの等価機能モデルの例を示す図である。
【図68】車体の機能モデル及び等価機能モデルの例を示す図である。
【図69】パワートレインの展開例を示す図である。
【図70】統合されたパワートレインの機能モデル例を示す図である。
【図71】車両系の展開例を示す図である。
【図72】統合された車両系の機能モデル例を示す図である。
【図73】統合された車両の機能モデル例を示す図である。
【図74】本実施の形態のシステムのハードウエア構成例を示す図である。
【図75】本実施の形態のシステムのソフトウエア構成例を示す図である。
【図76】本実施の形態のモデル登録と再利用の概念図である。
【図77】本実施の形態のモデル化記号のステンシル群の例を示す図である。
【図78】本実施の形態で提供される詳細機能モデルパックの概念図である。
【図79】入出力表の表示例を示す図である。
【図80】本実施の形態で提供される等価機能モデルパックの概念図である。
【図81】本実施の形態で提供される簡易機能モデルパックの概念図である。
【図82】簡易機能モデルにおける統合領域の例を示す図である。
【図83】本実施の形態で提供される記号モデルパックの概念図である。
【図84】本実施の形態のシステムによるビジネス形態の一例を示す図である。
【図85】部品供給企業と製品開発企業間のモデルによる性能契約の例を示す図である。
【図86】製品再現モデル付きの製品販売の例を示す図である。
【図87】モデル評価による見積りの例を示す図である。
【図88】本実施の形態のシステムのハードウエアの具体的構成例を示す図である。
【図89】本実施の形態のシステムの処理手順例を示すフローチャートである。
【図90】図88のRAMの構成例を示す図である。
【図91】図88のデータベースの構成例を示す図である。
【図92】図88のデータベースの構成例を示す図である。
【図93】本実施の形態のシミュレーション実行までの処理手順を示すフローチャートである。
【図94】本実施の形態のシミュレーション実行の概念を示す図である。
Claims (4)
- 下位部品の機能を示す下位機能再現モデルであって、入出力状態量が位差量及び流動量である複数の下位機能再現モデルを用いて、複数の前記下位部品により構成される上位部品の機能を示す上位機能再現モデルを作成するために、コンピュータが実行するシミュレーションモデル作成方法であって、
前記下位機能再現モデルは、非線形要素を含む場合に、該非線形要素を線形要素に置き換えると共に、置き換えた前記線形要素のパラメータを決定する情報をリンクして線形モデルとされたものであり、
前記コンピュータは、複数の前記下位機能再現モデルを格納する格納手段と、ユーザが、該格納手段に格納された複数の下位機能再現モデルの中から複数の前記下位機能再現モデルを選択するための入力手段と、演算制御を行う演算制御部とを有するものであり、
前記コンピュータの演算制御部が、前記ユーザによる前記入力手段を介した複数の前記下位機能再現モデルの選択を受け付ける入力ステップと、
前記コンピュータの演算制御部が、前記入力ステップで受け付けた、ユーザが選択した複数の前記下位機能再現モデルを相互に位差量及び流動量を介して結合し、入出力状態量が位差量及び流動量であると共に線形要素で表現された線形モデルであって、前記入力ステップで受け付けた、ユーザが選択した複数の前記下位機能再現モデルに対応する複数の下位部品により構成される上位部品の機能を示す、前記上位機能再現モデルを作成する統合処理ステップと、
前記コンピュータの演算制御部が、前記入力ステップで受け付けた、ユーザが選択した複数の前記下位機能再現モデルに前記パラメータを決定する情報がリンクされている場合、該情報を、前記統合処理ステップで作成された前記上位機能再現モデルにリンクさせるリンクステップとを有することを特徴とするシミュレーションモデル作成方法。 - 前記統合処理ステップは、
複数の前記下位機能再現モデルを一対多で結合する場合に、
多に相当する下位機能再現モデルの前記入出力状態量を一に相当する下位機能再現モデルの前記入出力状態量に置換するステップと、
前記多に相当する下位機能再現モデルの置換された前記入出力状態量と前記一に相当する下位機能再現モデルの前記入出力状態量とに基づいて前記複数の下位機能再現モデルを整理して結合するステップとを有することを特徴する請求項1記載のシミュレーションモデル作成方法。 - 下位部品の機能を示す下位機能再現モデルであって、入出力状態量が位差量及び流動量である複数の下位機能再現モデルを用いて、複数の前記下位部品により構成される上位部品の機能を示す上位機能再現モデルを作成するシミュレーションモデル作成システムであって、
前記下位機能再現モデルは、非線形要素を含む場合に、該非線形要素を線形要素に置き換えると共に、置き換えた前記線形要素のパラメータを決定する情報をリンクして線形モデルとされたものであり、
ユーザによる複数の前記下位機能再現モデルの選択を受け付ける入力手段と、
ユーザが選択した複数の前記下位機能再現モデルを相互に位差量及び流動量を介して結合し、入出力状態量が位差量及び流動量であると共に線形要素で表現された線形モデルであって、ユーザが選択した複数の前記下位機能再現モデルに対応する複数の下位部品により構成される上位部品の機能を示す、前記上位機能再現モデルを作成する統合処理手段と、
ユーザが選択した複数の前記下位機能再現モデルに前記パラメータを決定する情報がリンクされている場合、該情報を、前記統合処理手段で作成された前記上位機能再現モデルにリンクさせるリンク手段とを有することを特徴とするシミュレーションモデル作成システム。 - 請求項1又は2に記載のシミュレーションモデル作成方法をコンピュータに実行させるプログラムを記憶したコンピュータ読み出し可能な記憶媒体。
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