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JP4765877B2 - 車両のモータトラクション制御装置 - Google Patents
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JP4765877B2 - 車両のモータトラクション制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、ハイブリッド車両のモータトラクション制御装置の技術分野に属する。
従来、車輪の駆動スリップを検出した場合、駆動モータのトルクを制限することにより、駆動モータの過回転によるエネルギロスを低減する車両が知られている(例えば、特許文献1参照)。

上記従来技術では、モータトラクション制御時、発電機によりエンジンの駆動力を吸収しつつ駆動モータのトルクをステップ的に制限している。このとき、駆動モータへの電力供給がステップ的に制限されることで、スリップは収束するものの、エンジン回転はエンジンのイナーシャ成分等によりステップ的に減少させることができない。したがって、トルクの収束に対し、エンジン回転の収束に遅れが生じ、発電機の駆動により強電系回路に余剰電力が発生してしまう。
通常、余剰電力はバッテリに充電されるが、スリップ収束時のように急激で大きな余剰発電は、バッテリや昇圧コンバータの許容値を超えるため、電流は流れず、これに伴いバッテリ〜昇圧コンバータ〜インバータ間の電圧が上昇し、過電圧により破損を招くおそれがある。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、車輪のグリップを回復させつつ過電圧を防止して強電系回路の部品保護を図ることができる車両のモータトラクション制御装置を提供することにある。

上述の目的を達成するため、本発明では、
車輪と連結されたモータと、
発電機と、
モータとインバータを介して接続されるバッテリとからなる強電系回路と、
車輪の駆動スリップを検出し、前記モータのトルクダウンにより車輪のグリップ力を回復させるモータトラクション制御を実行するモータトラクション制御手段と、
を備えた車両のモータトラクション制御装置において、
前記モータトラクション制御により前記強電系回路に発生する余剰電力を、前記発電機の発電量と前記バッテリの充電制限量とに基づいて推定する余剰電力推定手段を設け、
前記モータトラクション制御手段は、推定された余剰電力が大きいほどモータトラクション制御のトルク収束レートをより小さな値に設定することを特徴とする。

本発明の車両のモータトラクション制御装置では、モータトラクション制御により生じる余剰電力に基づいて、モータトラクション制御のトルク収束レートが設定される。
すなわち、モータトラクション制御に伴い強電系回路に発生する過電圧は、余剰電力発生後、この余剰電力の大きさに比例した発生するものであるため、推定した余剰電力が大きいほどトルクダウンの収束レートをより小さな値に設定することで、車輪のグリップを回復させつつ過電圧を防止でき、強電系部品の部品保護を図ることが可能となる。

以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例1に基づいて説明する。
まず、ハイブリッド車両の駆動系構成を説明する。
図1は、実施例1のモータトラクション制御装置が適用されたハイブリッド車両の駆動系を示す全体システム図である。実施例1におけるハイブリッド車両の駆動系は、図1に示すように、エンジンEと、第1モータジェネレータ(発電機)MG1と、第2モータジェネレータMG2(モータ)と、出力スプロケットOS、動力分割機構TMと、を有する。
エンジンEは、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンであり、後述するエンジンコントローラ1からの制御指令に基づいて、スロットルバルブのバルブ開度等が制御される。
第1モータジェネレータMG1と第2モータジェネレータMG2は、ロータに永久磁石を埋設しステータにステータコイルが巻き付けられた同期型モータジェネレータであり、後述するモータコントローラ2からの制御指令に基づいて、パワーコントロールユニット3により作り出された三相交流を印加することによりそれぞれ独立に制御される。
両モータジェネレータMG1,MG2は、バッテリ4からの電力の供給を受けて回転駆動する電動機として動作することもできるし(以下、この状態を「力行」と呼ぶ)、ロータが外力により回転している場合には、ステータコイルの両端に起電力を生じさせる発電機として機能してバッテリ4を充電することもできる(以下、この状態を回生と呼ぶ)。
動力分割機構TMは、サンギヤSと、ピニオンPと、リングギヤRと、ピニオンキャリアPCと、を有する単純遊星歯車により構成されている。そして、単純遊星歯車の3つの回転要素(サンギヤS、リングギヤR、ピニオンキャリアPC)に対する入出力部材の連結関係について説明する。サンギヤSには、第1モータジェネレータMG1が連結されている。リングギヤRには、第2モータジェネレータMG2と出力スプロケットOSとが連結されている。ピニオンキャリアPCには、エンジンダンパEDを介してエンジンEが連結されている。なお、出力スプロケットOSは、チェーンベルトCBや図外のディファレンシャルやドライブシャフトを介して左右前輪に連結されている。
上記連結関係により、図4に示す共線図上において、第1モータジェネレータMG1(サンギヤS)、エンジンE(プラネットキャリアPC)、第2モータジェネレータMG2及び出力スプロケットOS(リングギヤR)の順に配列され、単純遊星歯車の動的な動作を簡易的に表せる剛体レバーモデル(3つの回転数が必ず直線で結ばれる関係)を導入することができる。
ここで、「共線図」とは、差動歯車のギヤ比を考える場合、式により求める方法に代え、より簡単で分かりやすい作図により求める方法で用いられる速度線図であり、縦軸に各回転要素の回転数(回転速度)をとり、横軸に各回転要素をとり、各回転要素の間隔をサンギヤSとリングギヤRの歯数比λに基づく共線図レバー比(1:λ)になるように配置したものである。
次に、ハイブリッド車両の制御系を説明する。
実施例1におけるハイブリッド車両の制御系は、図1に示すように、エンジンコントローラ1と、モータコントローラ2と、パワーコントロールユニット3と、バッテリ4(二次電池)と、ブレーキコントローラ5と、統合コントローラ(モータトラクション制御手段)6と、を有して構成されている。
統合コントローラ6には、アクセル開度センサ7と、車速センサ8と、エンジン回転数センサ9と、第1モータジェネレータ回転数センサ10と、第2モータジェネレータ回転数センサ11と、から入力情報がもたらされる。なお、車速センサ8と第2モータジェネレータ回転数センサ11は、同じ動力分割機構TMの出力回転数を検出するものあるため、車速センサ8を省略し、第2モータジェネレータ回転数センサ11からのセンサ信号を車速信号として用いても良い。
ブレーキコントローラ5には、前左車輪速センサ12と、前右車輪速センサ13と、後左車輪速センサ14と、後右車輪速センサ15と、操舵角センサ16と、マスタシリンダ圧センサ17と、ブレーキストロークセンサ18と、から入力情報がもたらされる。
エンジンコントローラ1は、アクセル開度センサ7からのアクセル開度APとエンジン回転数センサ9からのエンジン回転数Neを入力する統合コントローラ6からの目標エンジントルク指令等に応じ、エンジン動作点(Ne,Te)を制御する指令を、例えば、図外のスロットルバルブアクチュエータへ出力する。
モータコントローラ2は、レゾルバによる両モータジェネレータ回転数センサ10,11からのモータジェネレータ回転数N1,N2を入力する統合コントローラ6からの目標モータジェネレータトルク指令等に応じ、第1モータジェネレータMG1のモータ動作点(N1,T1)と、第2モータジェネレータMG2のモータ動作点(N2,T2)と、をそれぞれ独立に制御する指令をパワーコントロールユニット3へ出力する。なお、このモータコントローラ2は、バッテリ4の充電状態をあらわすバッテリS.O.Cの情報を用いる。
パワーコントロールユニット3は、より少ない電流で両モータジェネレータMG1,MG2への電力供給が可能な電源系高電圧システムを構成するもので、図5の強電系回路図に示すように、ジョイントボックス3aと、昇圧コンバータ3bと、駆動モータ用インバータ3cと、発電ジェネレータ用インバータ3dと、コンデンサ3eと、を有する。第2モータジェネレータMG2のステータコイルには、駆動モータ用インバータ3cが接続される。第1モータジェネレータMG1のステータコイルには、発電ジェネレータ用インバータ3dが接続される。また、ジョイントボックス3aには、力行時に放電し回生時に充電するバッテリ4が接続される。
ブレーキコントローラ5は、低μ路制動時や急制動時等において、4輪のブレーキ液圧を独立に制御するブレーキ液圧ユニット19への制御指令によりABS制御を行い、また、エンジンブレーキやフットブレーキによる制動時、統合コントローラ6への制御指令とブレーキ液圧ユニット19への制御指令を出すことで回生ブレーキ協調制御を行う。このブレーキコントローラ5には、各車輪速センサ12,13,14,15からの車輪速情報や、操舵角センサ16からの操舵角情報や、マスタシリンダ圧センサ17やブレーキストロークセンサ18からの制動操作量情報が入力される。そして、これらの入力情報に基づいて、所定の演算処理を実行し、その処理結果による制御指令を統合コントローラ6とブレーキ液圧ユニット19へ出力する。なお、ブレーキ液圧ユニット19には、前左車輪ホイールシリンダ20と、前右車輪ホイールシリンダ21と、後左車輪ホイールシリンダ22と、後右車輪ホイールシリンダ23と、が接続されている。
統合コントローラ6は、車両全体の消費エネルギを管理し、最高効率で車両を走らせるための機能を担うもので、加速走行時等において、エンジンコントローラ1への制御指令によりエンジン動作点制御を行い、また、停止時や走行時や制動時等において、モータコントローラ2への制御指令によりモータジェネレータ動作点制御を行う。この統合コントローラ6には、各センサ7,8,9,10,11からのアクセル開度APと車速VSPとエンジン回転数Neと第1モータジェネレータ回転数N1と第2モータジェネレータ回転数N2とが入力される。そして、これらの入力情報に基づいて、所定の演算処理を実行し、その処理結果による制御指令をエンジンコントローラ1とモータコントローラ2へ出力する。なお、統合コントローラ6とエンジンコントローラ1、統合コントローラ6とモータコントローラ2、統合コントローラ6とブレーキコントローラ5は、情報交換のためにそれぞれ双方向通信線24,25,26により接続されている。
次に、駆動力性能について説明する。
実施例1のハイブリッド車両の駆動力は、図2(b)に示すように、エンジン直接駆動力(エンジン総駆動力から発電機駆動分を差し引いた駆動力)とモータ駆動力(両モータジェネレータMG1,MG2の総和による駆動力)との合計で示される。その最大駆動力の構成は、図2(a)に示すように、低い車速ほどモータ駆動力が多くを占める。このように、変速機を持たず、エンジンEの直接駆動力と電気変換したモータ駆動力を加えて走行させることから、低速から高速まで、定常運転のパワーの少ない状態からアクセルペダル全開のフルパワーまで、ドライバの要求に対しシームレスに応答良く駆動力をコントロールすることができる(トルク・オン・デマンド)。
そして、実施例1のハイブリッド車両では、動力分割機構TMを介し、エンジンEと両モータジェネレータMG1,MG2と左右前輪の車輪とがクラッチ無しで繋がっている。また、上記のように、エンジンパワーの大部分を発電機で電気エネルギに変換し、高出力かつ高応答のモータで車両を走らせている。このため、例えば、アイスバーン等の滑りやすい路面での走行時において、車輪のスリップやブレーキ時の車輪のロック等で車両の駆動力が急変する場合、過剰電流からのパワーコントロールユニット3の保護、あるいは、動力分割機構TMのピニオン過回転からの部品保護を行う必要がある。これに対し、高出力・高応答のモータ特性を活かし、部品保護の機能から発展させて、車輪のスリップを瞬時に検出し、そのグリップを回復させ、車両を安全に走らせるためのモータトラクション制御を採用している。
次に、制動力性能について説明する。
実施例1のハイブリッド車両では、エンジンブレーキやフットブレーキによる制動時には、モータとして作動している第2モータジェネレータMG2を、ジェネレータ(発電機)として作動させることにより、車両の運動エネルギを電気エネルギに変換してバッテリ4に回収し、再利用する回生ブレーキシステムを採用している。
この回生ブレーキシステムでの一般的な回生ブレーキ協調制御は、図3(a)に示すように、ブレーキペダル踏み込み量に対し要求制動力を算出し、要求制動力に大きさにかかわらず、算出された要求制動力を回生分と油圧分とで分担することで行われる。
これに対し、実施例1のハイブリッド車両で採用している回生ブレーキ協調制御は、図3(b)に示すように、ブレーキペダル踏み込み量に対し要求制動力を算出し、算出された要求制動力に対し回生ブレーキを優先し、回生分で賄える限りは油圧分を用いることなく、最大限まで回生分の領域を拡大している。これにより、特に加減速を繰り返す走行パターンにおいて、エネルギ回収効率が高く、より低い車速まで回生制動によるエネルギの回収を実現している。
次に、車両モードについて説明する。
実施例1のハイブリッド車両での車両モードとしては、図4の共線図に示すように、「停車モード」、「発進モード」、「エンジン始動モード」、「定常走行モード」、「加速モード」を有する。
「停車モード」では、図4(1)に示すように、エンジンEと発電機MG1とモータMG2は止まっている。「発進モード」では、図4(2)に示すように、モータMG2鑿の駆動で発進する。「エンジン始動モード」では、図4(3)に示すように、エンジンスタータとしての機能を持つ発電機MG1によって、サンギヤSが回ってエンジンEを始動する。「定常走行モード」では、図4(4)に示すように、主にエンジンEにて走行し、効率を高めるために発電を最小にする。「加速モード」では、図4(5)に示すように、エンジンEの回転数を上げると共に、発電機MG1による発電を開始し、その電力とバッテリ4の電力を使ってモータMG2の駆動力を加え、加速する。
なお、後退走行は、図4(4)に示す「定常走行モード」において、エンジンEの回転数上昇を抑えたままで、発電機MG1の回転数を上げると、モータMG2の回転数が負側に移行し、後退走行を達成することができる。
始動時は、イグニッションキーを回すとエンジンEが始動し、エンジンEを暖機した後、直ぐにエンジンEは停止する。発進時や軽負荷時は、発進時やごく低速で走行する緩やかな坂を下るときなどは、エンジン効率の悪い領域は燃料をカットし、エンジンは停止してモータMG2により走行する。通常走行時は、エンジンEの駆動力は、動力分割機構TMにより一方は車輪を直接駆動し、他方は発電機MG1を駆動し、モータMG2をアシストする。全開加速時は、バッテリ4からパワーが供給され、さらに、駆動力を追加する。減速時や制動時には、車輪がモータMG2を駆動し、発電機として作用することで回生発電を行う。回収した電気エネルギはバッテリ4に蓄えられる。バッテリ4の充電量が少なくなると、発電機MG1をエンジンEにより駆動し、充電を開始する。車両停止時には、エアコン使用時やバッテリ充電時等を除き、エンジンEを自動的に停止する。
次に、モータトラクション制御について説明する。
実施例1のハイブリッド車両では、発進時や低μ路走行時において、車輪にスリップが発生した場合、車輪の空転を防止するモータトラクション制御を実行する。このモータトラクション制御では、車輪に制動力を付与しつつ車輪の駆動力を低減させる。ハイブリッド車両では、発電機MG1によりエンジンEの駆動力を吸収しつつ、モータMG2のトルクダウン(指令トルクの制限)を行うことで、スリップ状態の早期解消を図る。
実施例1では、トータル発電量S_PGとバッテリ充電制限値S_INとから強電系回路に発生する余剰電力を推定し、推定された余剰電力により発生する過電圧が強電系回路の許容値以下となるように、推定した余剰電力が大きいほどモータMG2のトルク収束レートを遅らせる。
ここで、「トルク収束レート」とは、モータMG2の指令トルクをモータトラクション制御時の制限された指令トルクまで収束させる際の変化率をいう。
[モータトラクション制御処理]
図6は、実施例1の統合コントローラ6にて実行されるモータトラクション制御処理の流れを示すフローチャートで、以下、各ステップについて説明する。なお、この制御処理は、所定の演算周期で繰り返し実行される。
ステップS1では、車輪のスリップが発生しているか否かを判定する。YESの場合にはステップS2へ移行し、NOの場合にはリターンへ移行する。ここで、スリップの推定は、例えば、駆動輪と従動輪との車輪速差から行う。
ステップS2では、アクセル開度APと各車輪速から求まるドライバの要求駆動トルクから、エンジン分担トルクTeを差し引いたモータの要求トルク(以下、ドライバ要求トルクという。)を算出し、ステップS3へ移行する。
ステップS3では、バッテリ4の温度に基づいて、バッテリ充電制限値S_INを算出し、ステップS4へ移行する。ここで、バッテリ充電制限値S_INとは、バッテリ4の温度に応じて変化するバッテリ4の充電制限量であり、バッテリ充電制限値S_INが低いほど、充電制限量は大きくなる。
ステップS4では、発電機MG1のトータル発電量S_PGを下記の式(1)から算出し、ステップS5へ移行する。
S_PG = k×r×T …(1)
ここで、kは係数、rは発電機MG1の回転数、Tは発電機MG1の出力トルクである。
ステップS5では、ステップS3で算出したバッテリ充電制限値S_INと、ステップS4で算出したトータル発電量S_PGとから、図7に示すトルク収束レートリミッタ設定マップ(余剰電力推定手段に相当)を参照してトルク収束レートを制限するリミッタαを設定し、ステップS6へ移行する。
図7に示すように、実施例1のトルク収束レートリミッタ設定マップは、バッテリ充電制限値S_INとトータル発電量S_PGとに応じて、リミッタαの値が変化する三次元マップである。リミッタαは、バッテリ充電制限値S_INの絶対値が小さい、すなわち充電制限量が大きいほど、より小さな値となるように設定されている。また、発電機MG1のトータル発電量S_PGが大きいほど、より小さな値となるように設定されている。
なお、図7のマップ上に一点鎖線で示す特性は、バッテリ充電制限値S_INやトータル発電量S_PGにかかわらず余剰発電を防止することができる最遅仕様のリミッタ特性である。
ステップS6では、発電機MG1とモータMG2の位相を一致させるために、ステップS5で設定したリミッタαに下記の式(2)であらわされる1次系の伝達関数によるフィルタ処理を実行し、ステップS7へ移行する。
G(s) = 1 /τs+1
ここで、τは時定数、sはラプラス演算子である。
ステップS7では、スリップを無くすための指令トルクを算出し、ステップS8へ移行する。この指令トルクは、車輪のスリップ量や路面摩擦係数に基づいて設定する。
ステップS8では、ステップS6でフィルタ処理を行ったリミッタαがあらかじめ設定された規定値よりも大きいか否かを判定する。YESの場合にはステップS9へ移行し、NOの場合にはステップS10へ移行する。
ステップS9では、リミッタαで制限した指令トルクに基づいてモータMG2を駆動し、リターンへ移行する。
ステップS10では、規定値で制限した指令トルクに基づいてモータMG2を駆動し、リターンへ移行する。
[スリップ収束に伴う発電機の余剰発電の発生について]
実施例1のハイブリッド車両のモータトラクション制御装置では、以下の点に着目したものである。
図8に示すように、車輪にスリップが発生した場合、モータトラクション制御によりモータにはステップ的にトルクを下げる指令トルクが出力されるため、モータ回転数の低減によりスリップは収束する。ここで、指令トルク通りに実行トルク(実際の発生トルク)が下がれば問題が無いが、指令トルクに応じてステップ的に駆動モータのトルクを下げた場合、ステップ的にモータ使用電力が低下するのに対し、エンジン回転はイナーシャ成分によりステップ的に減少させることができない。したがって、モータトルクの収束に対し、エンジン回転の収束に遅れが生じ、発電機の駆動により強電系回路に余剰電力が発生してしまう。
通常、余剰発電はバッテリに充電されるが、スリップ収束時のように急激で大きな余剰発電(充電)は、バッテリやコンバータ等の許容値を超えるため、結果的に電流は流れず、バッテリ〜昇圧コンバータ〜インバータ間の電圧が上昇し、過電圧により破損を招くおそれがある。
この対策として、トルク変化にレートリミッタ(図7の最遅仕様)を入れることにより、急激なトルク変動を抑え、余剰発電を防止することが考えられる。図9は、レートリミッタによる過電圧防止作用を示す発電量のタイムチャートであり、実行トルクにレート制限を追加することで、実行トルクとジェネレータ発電の位相を一致させ、余剰電力の発生を無くすことが可能となる。
ところが、レートリミッタを用いた場合、過電圧は防止できるものの、実行トルクの収束が遅くなり、車輪のファーストスリップが大きくなる。図10,11は、スリップが急激に収束した場合の車輪の回転数を示すタイムチャートで、図10はレートリミッタ無しの場合、図11はレートリミッタ有りの場合を示している。
図10,11を見れば明らかなように、レートリミッタを使用しない場合は、車輪のスリップが小さく抑えられているが、レートリミッタを使用した場合、実行トルクの収束が遅れるため、車輪速の過回転を抑制することができない。
[トルク収束レート設定作用]
これに対し、実施例1のハイブリッド車両のモータトラクション制御装置では、推定された余剰電力に基づき、推定された余剰電力により発生する過電圧が強電系回路の許容値以下となるようなモータトラクション制御のトルク収束レートを設定することで、過電圧防止による部品保護と、グリップ力の早期回復との両立を達成するようにした。
なお、余剰電力自身の検出は不可能であるため、実施例1では、余剰電力量がトータル発電量S_PGとバッテリ充電制限値S_INとに依存する点に着目し、発電機MG1のトータル発電量S_PGとバッテリ充電制限値S_INとに基づいてトルク収束レートのリミッタαを設定している。
実施例1では、トータル発電量S_PGが大きいほどトルク収束レートのリミッタαをより小さな値に設定している。つまり、発電機MG1のトータル発電量S_PGが小さい場合には、余剰電力は小さくなると推定できる。よって、この場合はトルクを早く収束させたとしても過電圧は発生しにくいため、トルクをより早く収束させることで、グリップ力の早期回復を図る。一方、発電機MG1のトータル発電量S_PGが大きい場合には、余剰電力は大きくなると推定できる。よって、この場合はトルクの収束を遅らせることで、確実に過電圧を防止する。
すなわち、トータル発電量S_PGが大きいほどリミッタαをより小さくしてトルク収束レートを遅らせることにより、過電圧防止による部品保護と、グリップ力の早期回復との両立を達成することができる。
また、実施例1では、バッテリ充電制限値S_INの絶対値が小さいほど、トルク収束レートのリミッタαをより小さな値に設定している。すなわち、余剰電力がバッテリ4に入り易い(バッテリ充電制限値S_INの絶対値が大きい)場合には、余剰電力は小さくなると推定できる。よって、この場合はトルクを早く収束させたとしても過電圧は発生しにくいため、トルクを早く収束させることで、グリップ力の早期回復を図る。一方、余剰電力がバッテリ4に入り難い(バッテリ充電制限値S_INの絶対値が小さい)場合には、余剰電力は大きくなると推定できる。よって、この場合はトルクの収束を遅らせることで、確実に過電圧を防止する。
すなわち、バッテリ充電制限値S_INが低いほどリミッタαをより小さくしてトルク収束レートを遅らせることにより、過電圧防止による部品保護と、グリップ力の早期回復との両立を達成することができる。
次に、効果を説明する。
実施例1のハイブリッド車両のモータトラクション制御装置にあっては、以下に列挙する効果が得られる。
(1) 車輪と連結された第2モータジェネレータ(発電機)MG2と、エンジンEと連結された第1モータジェネレータ(モータ)MG1と、第2モータジェネレータMG2および第1モータジェネレータMG1と駆動モータ用インバータ3c、発電ジェネレータ用インバータ3dを介してそれぞれ接続されるバッテリ4とからなる強電系回路と、車輪の駆動スリップを検出し、第2モータジェネレータMG2のトルクダウンにより車輪のグリップ力を回復させるモータトラクション制御を実行する統合コントローラ6と、を備えたハイブリッド車両のモータトラクション制御装置において、モータトラクション制御により強電系回路に発生する余剰電力を推定する余剰電力推定手段(トルク収束レートリミッタ設定マップ)を設け、統合コントローラ6は、推定された余剰電力に基づいてモータトラクション制御のトルク収束レートを設定する。これにより、過電圧を防止でき、強電系回路の部品保護を図ることが可能となる。
(2) 統合コントローラ6は、推定された余剰電力により発生する過電圧が強電系回路の許容値以下となるように、トルク収束レートを設定するため、過電圧の発生を確実に防止することができる。
(3) 統合コントローラ6は、推定された余剰電力が大きいほど、トルク収束レートをより遅くするため、過電圧防止による部品保護と、グリップ力の早期回復との両立を達成することができる。
(4) 余剰電力推定手段は、バッテリ充電制限値S_INに基づいて、余剰電力を推定するため、バッテリ充電制限値S_INに応じて変化する余剰電力をより正確に推定することができる。
(5) 統合コントローラ6は、バッテリ充電制限値S_INの絶対値が小さいほど、トルク収束レートをより遅くするため、バッテリ充電制限値S_INの絶対値が小さいほど余剰電力が大きくなるのに対し、バッテリ充電制限値S_INにかかわらず、過電圧防止による部品保護と、グリップ力の早期回復との両立を図ることができる。
(6) 余剰電力推定手段は、第1モータジェネレータMG1のトータル発電量S_PGに基づいて、余剰電力を推定するため、トータル発電量S_PGに応じて変化する余剰電力をより正確に推定することができる。
(7) 統合コントローラ6は、第1モータジェネレータMG1のトータル発電量S_PGが大きいほど、トルク収束レートをより遅くするため、トータル発電量S_PGが大きくなるほど余剰電力が大きくなるのに対し、トータル発電量S_PGにかかわらず、過電圧防止による部品保護と、グリップ力の早期回復との両立を図ることができる。
(他の実施例)
以上、本発明を実施するための最良の形態を、実施例1に基づいて説明したが、本発明の具体的な構成は、実施例1に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、実施例1では、バッテリ充電制限値S_INとトータル発電量S_PGとに基づいてトルク収束レートを設定する例を示したが、どちらか一方に基づいてトルク収束レートを設定する構成としてもよい。
実施例1のモータトラクション制御装置が適用されたハイブリッド車両の駆動系を示す全体システム図である。 実施例1のモータトラクション制御装置が適用されたハイブリッド車両における駆動力性能特性図と駆動力概念図である。 実施例1のモータトラクション制御装置が適用されたハイブリッド車両における回生協調による制動力性能をあらわす対比特性図である。 実施例1のモータトラクション制御装置が適用されたハイブリッド車両における各車両モードを示す共線図である。 実施例1のハイブリッド車両の強電系回路図である。 実施例1の統合コントローラ6にて実行されるモータトラクション制御処理の流れを示すフローチャートである。 実施例1のトルク収束レートリミッタ設定マップである。 スリップ収束時の余剰発電量を示すタイムチャートである。 スリップ収束時におけるレートリミッタを用いた余剰発電防止作用を示すタイムチャートである。 レートリミッタ無しの場合の車輪のスリップ量を示すタイムチャートである。 レートリミッタ有りの場合の車輪のスリップ量を示すタイムチャートである。
符号の説明
E エンジン
MG1 第1モータジェネレータ
MG2 第2モータジェネレータ
OS 出力スプロケット
TM 動力分割機構
1 エンジンコントローラ
2 モータコントローラ
3 パワーコントロールユニット
4 バッテリ
5 ブレーキコントローラ
6 統合コントローラ
7 アクセル開度センサ
8 車速センサ
9 エンジン回転数センサ
10 第1モータジェネレータ回転数センサ
11 第2モータジェネレータ回転数センサ
12 前左車輪速センサ
13 前右車輪速センサ
14 後左車輪速センサ
15 後右車輪速センサ
16 操舵角センサ
17 マスタシリンダ圧センサ
18 ブレーキストロークセンサ
19 ブレーキ液圧ユニット
20 前左車輪ホイールシリンダ
21 前右車輪ホイールシリンダ
22 後左車輪ホイールシリンダ
23 後右車輪ホイールシリンダ

Claims (5)

  1. 車輪と連結されたモータと、
    発電機と、
    モータとインバータを介して接続されるバッテリとからなる強電系回路と、
    車輪の駆動スリップを検出し、前記モータのトルクダウンにより車輪のグリップ力を回復させるモータトラクション制御を実行するモータトラクション制御手段と、
    を備えた車両のモータトラクション制御装置において、
    前記モータトラクション制御により前記強電系回路に発生する余剰電力を、前記発電機の発電量と前記バッテリの充電制限量とに基づいて推定する余剰電力推定手段を設け、
    前記モータトラクション制御手段は、推定された余剰電力が大きいほどモータトラクション制御のトルク収束レートをより小さな値に設定することを特徴とする車両のモータトラクション制御装置。
  2. 請求項1に記載の車両のモータトラクション制御装置において、
    前記モータトラクション制御手段は、推定された余剰電力により発生する過電圧が前記強電系回路の許容値以下となるように、前記トルク収束レートを設定することを特徴とする車両のモータトラクション制御装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載の車両のモータトラクション制御装置において、
    前記モータトラクション制御手段は、前記バッテリの充電制限量が大きいほど、前記トルク収束レートをより小さな値に設定することを特徴とする車両のモータトラクション制御装置。
  4. 請求項3に記載の車両のモータトラクション制御装置において、
    前記発電機はエンジンと連結され、
    前記余剰電力推定手段は、前記発電機の発電量に基づいて、前記余剰電力を推定することを特徴とする車両のモータトラクション制御装置。
  5. 請求項に記載の車両のモータトラクション制御装置において、
    前記モータトラクション制御手段は、前記発電機の発電量が大きいほど、前記トルク収束レートをより小さな値に設定することを特徴とする車両のモータトラクション制御装置。
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