本発明は、有機層のパターニング等、種々の用途に用いられる二酸化チタン組成物や二酸化チタン含有層、その二酸化チタン含有層を用いたパターン形成体等に関するものである。以下、それぞれについてわけて説明する。
A.二酸化チタン組成物
まず、本発明の二酸化チタン組成物について説明する。本発明の二酸化チタン組成物は、少なくとも二酸化チタンを含有する二酸化チタン組成物であって、紫外線を照射しながら電子スピン共鳴スペクトルを測定した際、Ti3+種由来の電子スピンの濃度が、上記二酸化チタン1gあたり、1.0×1012スピン以下で飽和することを特徴とするものである。
一般的に、二酸化チタン組成物中に含有される二酸化チタンに結晶欠陥が存在している場合、エネルギーが照射された際、チタン原子に電子が捕捉され、通常の二酸化チタン中のTi4+とは異なるTi3+となる。これにより、有機物の分解等を行うための活性酸素種の生成速度が遅くなり、例えば有機物を分解または変性させる効率が低下することとなる。またこの場合、所定の量の活性酸素種を発生させるためには、多量にエネルギーを照射する必要がある。
ここで、上記結晶欠陥の有無や量の測定は、電子スピン共鳴(ESR)法により行うことができる。具体的には、二酸化チタン組成物に紫外線を照射しながら、電子スピン共鳴法による測定を行うことによって、上記欠陥部分のTi3+種を検出することが可能であり、この電子スピンの飽和濃度を測定することによって、欠陥の量を算出することが可能となるのである。ここで電子スピンの飽和濃度とは、経時でスピン濃度を測定した際、電子スピン濃度がほぼ一定となる値をいい、本発明においては1秒間における電子スピンの濃度の変化率が5%以下となったときの値を、電子スピンの飽和濃度とする。
本発明においては、二酸化チタン組成物の電子スピン共鳴スペクトルを測定した際、Ti3+種由来の電子スピンの濃度が一定の値以下となるものとされていることから、上記二酸化チタン組成物中の二酸化チタンの結晶欠陥が少ないものであるといえる。したがって、本発明によれば、少ないエネルギー量で、有機物の分解や変性等に寄与する活性酸素種を大量に発生させること等ができ、短時間で効率よく、有機物の分解や変性等を行うことが可能な二酸化チタン組成物とすることができるのである。
ここで本発明においては、紫外線を照射しながら電子共鳴スペクトルを測定した際、Ti3+種由来の電子スピンの濃度が、上記二酸化チタン1gあたり、1.0×1012スピン以下、中でも8.0×1011スピン以下で飽和することが好ましい。これにより、二酸化チタン組成物中に含有される二酸化チタンの結晶欠陥が少なく、少ないエネルギー量で効率よく活性酸素種を有機物の分解等に寄与させることが可能となるからである。
なお、上記電子スピンの濃度は、紫外線照射、低温測定可能な電子スピン共鳴装置により行い、得られた紫外線照射時の信号強度を、スピン濃度既知のDPPH標準試薬を測定した場合の信号強度と比較することで求めることができる。詳細な算出方法は、「電子スピン共鳴」(株式会社講談社 1991年発行)に記載されている方法とすることができる。
また、上記測定の際に用いられる紫外線は、上記二酸化チタン組成物中の二酸化チタンを励起させることが可能な紫外線であればよく、適宜選択される。このような紫外線としては、通常、400nm以下の範囲、好ましくは150nm〜380nmの範囲から設定される。これは、より二酸化チタンを活性化させる紫外線として、上述した波長の光が好ましいからである。このような紫外線照射に用いることができる光源としては、例えば水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ、その他種々の光源を挙げることができる。また、上記測定中、紫外線の強度は、一定に保たれる。
ここで、上述したような二酸化チタン組成物は、少なくとも二酸化チタンを含有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば二酸化チタン単体からなるものであってもよく、また二酸化チタンと各種添加剤等とを含有するもの等であってもよい。また、性状についても特に限定されるものではなく、例えば粉体であってもよく、また液体に分散されたもの、溶液とされたもの等であってもよい。
本発明において、上記二酸化チタン組成物のTi3+の電子スピンの飽和濃度を上述した値以下とする方法としては、材料中の不純物を減少させる方法や、材料中の欠損そのものを減少させる方法、等が挙げられる。
二酸化チタン組成物中の不純物の量を少なくする方法として具体的には、原料の高純度化、酸化チタン合成時の、温度、環境条件の最適化等が挙げられ、材料中の欠損そのものを減少させる方法としては、やはり二酸化チタンの合成条件最適化や、後工程での加熱処理等が挙げられる。上記方法としては、例えば、二酸化チタンを高温かつ短時間で合成する方法等が挙げられる。
ここで、本発明に用いられる二酸化チタンには、アナターゼ型とルチル型があり本発明ではいずれも使用することができるが、アナターゼ型の二酸化チタンが好ましい。アナターゼ型二酸化チタンは励起波長が380nm以下にある。
このようなアナターゼ型二酸化チタンとしては、例えば、塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業(株)製STS−02(平均粒径7nm)、石原産業(株)製ST−K01)、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製TA−15(平均粒径12nm))等を挙げることができる。
また二酸化チタンの粒径は小さいほど好ましく、平均粒径が50nm以下であることが好ましく、20nm以下の二酸化チタンを使用するのが特に好ましい。二酸化チタンの粒径が小さいほど、二酸化チタン組成物中での二酸化チタンの表面積を大きいものとすることができ、エネルギー照射に対する二酸化チタンの感度を高いものとすることができるからである。
B.二酸化チタン含有層
次に、本発明の二酸化チタン含有層について説明する。本発明の二酸化チタン含有層は、少なくとも二酸化チタンを含有する二酸化チタン含有層であって、紫外線を照射しながら電子スピン共鳴スペクトルを測定した際、Ti3+種由来の電子スピンの濃度が、上記二酸化チタン1gあたり1.0×1012スピン以下で飽和することを特徴とするものである。
本発明においては、上記二酸化チタン含有層のTi3+種由来の電子スピンの濃度が、上記値以下で飽和するものとされており、二酸化チタン含有層中に含有される二酸化チタンの結晶欠陥が少ないものであるといえる。したがって、二酸化チタン含有層にエネルギーを照射することにより、効率よく活性酸素種を発生させることができ、少ないエネルギーで効率よく有機物の分解等を行うこと等が可能となる。
ここで、本発明においては、紫外線を照射しながら電子共鳴スペクトルを測定した際、Ti3+種由来の電子スピンの濃度が、上記二酸化チタン1gあたり、1.0×1012スピン以下、中でも8.0×1011スピン以下で飽和することが好ましい。このような範囲内とすることにより、二酸化チタン含有層中に含有される二酸化チタンの結晶欠陥が少なく、少ないエネルギー量で効率よく活性酸素種を有機物の分解等に寄与させることが可能となるからである。
ここで、上記電子スピンの濃度の算出方法については、上述した「A.二酸化チタン組成物」の項で説明した方法と同様とすることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。なお、上記電子スピン共鳴法によれば、二酸化チタン含有層の膜状態でのTi3+種由来の電子スピンの濃度を測定することができる。これにより、実際に二酸化チタン含有層を有機物のパターニングに用いる場合と同様の条件における、結晶欠陥の影響を測ること等ができる、という利点を有している。
ここで、本発明において、上記二酸化チタン含有層のTi3+由来の電子スピンの濃度を、上記値以下とする方法としては、材料中の不純物を減少させる方法や、材料中の欠損そのものを減少させる方法、等が挙げられる。
上記二酸化チタン組成物中の不純物の量を少なくする方法として具体的には、原料の高純度化、酸化チタン合成時の、温度、環境条件の最適化等が挙げられ、材料中の欠損そのものを減少させる方法としては、やはり二酸化チタンの合成条件最適化や、後工程での加熱処理等が挙げられる。上記方法としては、例えば、二酸化チタンを高温かつ短時間で合成する方法等が挙げられる。
また、二酸化チタン含有層形成用組成物を塗布等した後、この二酸化チタン含有層形成用組成物を乾燥させることにより二酸化チタン含有層を形成する場合には、この際の乾燥温度を適度な温度条件に設定することにより、二酸化チタンの結晶欠陥の少ない二酸化チタン含有層を形成することができる。上記乾燥温度条件として具体的には200℃〜300℃程度、中でも250℃〜300℃程度とされることが好ましい。
上述したような二酸化チタン含有層は、少なくとも二酸化チタンを含有するものであればよく、二酸化チタン単体で製膜されたものであってもよく、また二酸化チタンとバインダとから構成されているものであってもよい。なお、二酸化チタン含有層中に含有される二酸化チタンとしては、上述した「A.二酸化チタン組成物」で説明したものと同様とすることができる。
二酸化チタンのみからなる二酸化チタン含有層の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法等の真空製膜法を用いる方法を挙げることができる。真空製膜法により二酸化チタン含有層を形成することにより、均一な膜でかつ二酸化チタンのみを含有する二酸化チタン含有層とすることが可能である。
また、例えば、基材上に無定形チタニアを形成し、次いで焼成により結晶性チタニアに相変化させる方法等を用いてもよい。ここで用いられる無定形チタニアとしては、例えば四塩化チタン、硫酸チタン等のチタンの無機塩の加水分解、脱水縮合、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラメトキシチタン等の有機チタン化合物を酸存在下において加水分解、脱水縮合によって得ることができる。次いで、400℃〜500℃における焼成によってアナターゼ型チタニアに変性し、600℃〜700℃の焼成によってルチル型チタニアに変性することができる。
一方、二酸化チタン含有層にバインダを用いる場合は、バインダの主骨格が上記の二酸化チタンの光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものが好ましく、例えばオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。
このようにオルガノポリシロキサンをバインダとして用いた場合は、上記二酸化チタン含有層は、二酸化チタンとバインダであるオルガノポリシロキサンとを必要に応じて他の添加剤とともに溶剤中に分散して塗布液を調製し、この塗布液を基材上に塗布することにより形成することができる。使用する溶剤としては、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系の有機溶剤が好ましい。塗布はスピンコート、スプレーコート、ディップコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。バインダとして紫外線硬化型の成分を含有している場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより二酸化チタン含有層を形成することができる。
また、バインダとして無定形シリカ前駆体を用いることができる。この無定形シリカ前駆体は、一般式SiX4で表され、Xはハロゲン、メトキシ基、エトキシ基、またはアセチル基等であるケイ素化合物、それらの加水分解物であるシラノール、または平均分子量3000以下のポリシロキサンが好ましい。
具体的には、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラメトキシシラン等が挙げられる。また、この場合には、無定形シリカの前駆体と二酸化チタンの粒子とを非水性溶媒中に均一に分散させ、基材上に空気中の水分により加水分解させてシラノールを形成させた後、常温で脱水縮重合することにより二酸化チタン含有層を形成できる。シラノールの脱水縮重合を100℃以上で行えば、シラノールの重合度が増し、膜表面の強度を向上できる。また、これらの結着剤は、単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。
バインダを用いた場合の二酸化チタン含有層中の二酸化チタンの含有量は、5〜80重量%、好ましくは20〜70重量%の範囲で設定することができる。
また、二酸化チタン含有層には上記の二酸化チタン、バインダの他に、界面活性剤を含有させることができる。具体的には、日光ケミカルズ(株)製NIKKOL BL、BC、BO、BBの各シリーズ等の炭化水素系、デュポン社製ZONYL FSN、FSO、旭硝子(株)製サーフロンS−141、145、大日本インキ化学工業(株)製メガファックF−141、144、ネオス(株)製フタージェントF−200、F251、ダイキン工業(株)製ユニダインDS−401、402、スリーエム(株)製フロラードFC−170、176等のフッ素系あるいはシリコーン系の非イオン界面活性剤を挙げることができ、また、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、両性界面活性剤を用いることもできる。
さらに、二酸化チタン含有層には上記の界面活性剤の他にも、ポリビニルアルコール、不飽和ポリエステル、アクリル樹脂、ポリエチレン、ジアリルフタレート、エチレンプロピレンジエンモノマー、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン、メラミン樹脂、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリアミド、ポリイミド、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリエステル、ポリブタジエン、ポリベンズイミダゾール、ポリアクリルニトリル、エピクロルヒドリン、ポリサルファイド、ポリイソプレン等のオリゴマー、ポリマー等を含有させることができる。
さらに、二酸化チタン含有層には上記の二酸化チタン、バインダ、界面活性剤のほかに、塩化鉄、硝酸銅、酸化錫、酢酸銀等の、金属塩、金属酸化物や、金、銀、銅、鉄等金属微粒子や、トリアゾールのような紫外線吸収色素を含有させることができる。
C.パターン形成体
次に、本発明のパターン形成体について説明する。本発明のパターン形成体は、層構成により、2つの実施態様がある。以下、それぞれの態様ごとに詳しく説明する。
1.第1実施態様
まず、本発明の第1実施態様におけるパターン形成体について説明する。本実施態様のパターン形成体は、基材と、上記基材上に形成され、エネルギー照射に伴う上記二酸化チタンの作用により特性が変化する上記二酸化チタン含有層とを有し、上記二酸化チタン含有層の特性がパターン状に変化した特性変化パターンを有することを特徴とするものである。
本実施態様のパターン形成体は、例えば図1に示すように、基材1と、その基材1上に形成され、エネルギー照射に伴う二酸化チタンの作用により特性が変化する二酸化チタン含有層2とを有するものであり、二酸化チタン含有層2に、特性が変化した特性変化パターン3が形成されているものである。
本実施態様によれば、上記二酸化チタン含有層がエネルギー照射に伴う二酸化チタンの作用により特性が変化するものであることから、二酸化チタン含有層にパターン状にエネルギーを照射することにより、複雑な工程等を経ることなく上記特性変化パターンが形成されたものとすることができる。
従来、上述したようなエネルギー照射に伴う二酸化チタンの作用を利用して特性変化パターンを形成する際、二酸化チタン含有層に含有されている二酸化チタンに結晶欠陥が多量に生じている場合には、二酸化チタンの作用によって発生したキャリアが結晶欠陥によって消費されてしまい、活性酸素種の発生効率が低い、という問題があった。またこの場合、特性変化パターンの形成に、長時間のエネルギー照射が必要となるため、エネルギーの回りこみ等によって、パターンが太ってしまい、高精細なパターンが形成することができないという問題もあった。
一方、本実施態様においては、上述した二酸化チタン含有層が用いられていることから、結晶欠陥が少なく、少ないエネルギー量で、特性変化パターン形成に用いられる活性酸素種を多量に発生させることができる。したがって、短時間で特性変化パターンが形成されたものとすることができ、目的とするパターン状に、高精細に特性変化パターンが形成されたものとすることができる。そのため、本実施態様のパターン形成体を種々の用途に用いることが可能となるのである。
以下、本実施態様のパターン形成体について、各構成ごとに詳しく説明する。
a.二酸化チタン含有層
まず、本実施態様に用いられる二酸化チタン含有層について説明する。本実施態様に用いられる二酸化チタン含有層は、上述した「B.二酸化チタン含有層」の項で説明した二酸化チタン含有層が基材上に形成されたものであって、エネルギー照射に伴う二酸化チタンの作用により特性が変化するものである。また二酸化チタン含有層表面には、特性がパターン状に変化した特性変化パターンが形成されている。
ここで、上記エネルギー照射に伴う二酸化チタンの作用により特性が変化するとは、二酸化チタン含有層にエネルギー照射がされた際、二酸化チタンの作用により発生した活性酸素種等により表面の有機基が分解または変性等され、表面の特性が変化することをいう。なお本実施態様における二酸化チタン含有層の特性変化の種類は、特に限定されるものではない。例えば二酸化チタン含有層の表面に存在する有機基が分解または変性等されて濡れ性が変化するもの等であってもよく、また二酸化チタン含有層表面の接着性が変化するもの等であってもよい。
本実施態様においては上記の中でも特に二酸化チタン含有層が、エネルギー照射に伴う二酸化チタンの作用により、表面の液体との接触角が低下する層であることが好ましい。これにより、特性変化パターンとそれ以外の部分との濡れ性の差を利用して、特性変化パターンに沿って高精細に機能性部を形成可能なものとすることができるからである。
このようにエネルギー照射に伴う二酸化チタンの作用により特性が変化する二酸化チタン含有層は、上述した二酸化チタン含有層のバインダとして、二酸化チタンの作用により特性が変化する材料を用いたもの等とすることができる。このようなバインダとしては、バインダの主骨格が上記の二酸化チタンの光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものが好ましく、例えば特開2000−249821号公報に記載されているフルオロアルキル基を有するオルガノポリシロキサン等を用いることができる。
また、上記特性変化パターンの形成方法としては、例えば図2に示すように、上記二酸化チタン含有層2に例えばフォトマスク11等を用いてエネルギー12をパターン状に照射し(図2(a))、二酸化チタン含有層2の特性を変化させて特性変化パターン3を形成する方法等が挙げられる(図2(b))。
ここで、本実施態様でいうエネルギー照射(露光)とは、二酸化チタン含有層表面の特性を変化させることが可能ないかなるエネルギー線の照射をも含む概念であり、可視光の照射に限定されるものではない。
通常このようなエネルギー照射に用いられる光の波長は、400nm以下の範囲、好ましくは150nm以上380nm以下の範囲から設定される。これは、上述したように二酸化チタンを活性化させるエネルギーとして、上述した波長の光が好ましいからである。
このようなエネルギー照射に用いることができる光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ、その他種々の光源を挙げることができる。また、上述したような光源を用い、フォトマスクを介したパターン照射により行う方法の他、エキシマ、YAG等のレーザを用いてパターン状に描画照射する方法を用いることも可能である。
また、上記エネルギーの照射方向は、後述する基材が透明である場合は、基材側からであってもよく、また二酸化チタン含有層側からであってもよい。一方、基材が不透明な場合は、二酸化チタン含有層側からエネルギー照射を行う必要がある。
なお、上記特性変化パターン形成に際してのエネルギーの照射量は、二酸化チタン含有層表面の特性の変化が行われるのに必要な照射量とする。なお、本実施態様においては、上記二酸化チタンの結晶欠陥が少ないことから、短時間で上記特性変化パターンを形成することができるのである。
またこの際、二酸化チタン含有層を加熱しながらエネルギー照射することにより、より感度を上昇させることが可能となり、効率的な特性の変化を行うことができる点で好ましい。具体的には30℃〜80℃の範囲内で加熱することが好ましい。
b.基材
次に、本実施態様のパターン形成体に用いられる基材について説明する。本実施態様に用いられる基材は、パターン形成体の用途や、上記エネルギーの照射方向等により適宜選択される。このような基材として具体的には、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の可撓性のない透明なリジット材、あるいは透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材等を挙げることができる。また、基材は、必要に応じてアルカリ溶出防止用やガスバリア性付与その他の目的の表面処理を施したものであってもよい。
またさらに、基材表面と上記二酸化チタン含有層との密着性を向上させるために、基材上にアンカー層が形成されていてもよい。このようなアンカー層としては、例えば、シラン系、チタン系のカップリング剤等を挙げることができる。
c.パターン形成体
本実施態様のパターン形成体は、上記基材および二酸化チタン含有層を有するものであれば、特に限定されるものではなく、必要に応じて、例えば遮光部等、適宜有していてもよい。なお、本実施態様のパターン形成体は、例えば特性変化パターンとそれ以外の領域との特性の差を利用して、特性変化パターン上に着色層を形成するカラーフィルタの製造や、上記特性変化パターンの特性を利用して、有機EL層を形成する有機EL素子の製造、上記特性の差を利用してレンズを形成するマイクロレンズの製造、上記特性の差を利用して導電性パターンを形成する配線基板の製造等、種々の機能性部を有する機能性素子の製造に用いられるものとすることができる
2.第2実施態様
次に、本発明のパターン形成体の第2実施態様について説明する。本発明のパターン形成体の第2実施態様は、基材と、上記基材上に形成された上記二酸化チタン含有層と、上記二酸化チタン含有層上に形成され、エネルギー照射に伴う上記二酸化チタンの作用により特性が変化する特性変化層とを有し、上記特性変化層の特性がパターン状に変化した特性変化パターンを有することを特徴とするものである。
本実施態様のパターン形成体は、例えば図3に示すように、基材1と、その基材1上に形成された二酸化チタン含有層2と、二酸化チタン含有層2上に形成された特性変化層4とを有し、上記特性変化層4には、特性がパターン状に変化した特性変化パターン3が形成されているものである。
本実施態様によれば、上記二酸化チタン含有層が形成されていることから、上記二酸化チタン含有層中の二酸化チタンの作用によって、特性変化層の特性を変化させることができ、複雑な工程等を減ることなく、容易に特性変化パターンが形成されたものとすることができる。
また上述したように、二酸化チタン含有層中の二酸化チタンに結晶欠陥が多数存在する場合には、効率よく活性酸素種を発生させることができず、長時間エネルギーを照射する必要があるため、パターンが太ってしまい、上記特性変化パターンのような高精細なパターンを形成することができない場合があった。しかしながら、本実施態様において、上記二酸化チタン含有層は結晶欠陥が少ないことから、少量のエネルギーであっても、有機基の分解や変性等に寄与する活性酸素種を多量に発生するものとすることができる。したがって、短時間で効率よく高精細に特性変化パターンが形成されたものとすることができ、種々の用途に用いられるパターン形成体とすることができるのである。
以下、本実施態様のパターン形成体に用いられる特性変化層について説明する。なお、本実施態様に用いられる二酸化チタン含有層については、「B.二酸化チタン含有層」の項で説明したものと同様であり、基材については、上述した第1実施態様で用いられるものと同様であるので、ここでの詳しい説明は省略する。
a.特性変化層
本実施態様に用いられる特性変化層としては、上記二酸化チタン含有層上に形成され、エネルギー照射に伴う上記二酸化チタンの作用により特性が変化するものであって、特性がパターン状に変化した特性変化パターンを有するものである。
ここで、上記エネルギー照射に伴う二酸化チタンの作用により特性が変化するとは、エネルギー照射がされた際、二酸化チタン含有層中の二酸化チタンの作用により発生した活性酸素種等により表面の有機基が分解または変性等され、表面の特性が変化することをいう。なお本実施態様における特性変化層の特性変化の種類は、特に限定されるものではない。例えば特性変化層の表面に存在する有機基が分解または変性等されて濡れ性が変化するもの等であってもよく、また特性変化層表面の接着性が変化するもの等であってもよい。
本実施態様においては上記の中でも特に特性変化層が、エネルギー照射に伴う二酸化チタンの作用により、表面の液体との接触角が低下する層であることが好ましい。これにより、特性変化パターンとそれ以外の部分との濡れ性の差を利用して、特性変化パターンに沿って高精細に機能性部を形成可能なものとすることができるからである。
このような特性変化層としては、エネルギー照射に伴う二酸化チタンの作用により特性が変化する層であれば、特に限定されるものではなく、例えば第1実施態様の二酸化チタン含有層中のバインダと同様の材料で形成された層とすることができる。
また、上記特性変化パターンの形成方法としては、上記二酸化チタン含有層に、所定の方向からパターン状にエネルギーを照射することにより行うことができる。このような特性変化パターンの形成に用いられるエネルギーや、エネルギーの照射方法等については、上述した第1実施態様と同様とすることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
b.パターン形成体
本実施態様のパターン形成体は、上記基材、二酸化チタン含有層、および特性変化層を有するものであれば、特に限定されるものではなく、必要に応じて、例えば遮光部等、適宜有していてもよい。なお、本実施態様のパターン形成体についても、例えば特性変化パターンと、それ以外の領域との特性の差を利用して、特性変化パターン上に着色層を形成するカラーフィルタの製造や、上記特性変化パターンの特性の差を利用して、有機EL層を形成する有機EL素子の製造、上記の特性の差を利用してレンズを形成するマイクロレンズの製造、上記特性の差を利用して導電性パターンを形成する配線基板の製造等、種々の機能性部を有する機能性素子の製造に用いられるものとすることができる。
D.二酸化チタン含有層側基板
次に、本発明の二酸化チタン含有層側基板について説明する。本発明の二酸化チタン含有層側基板は、対向して配置される対向基板に、エネルギー照射に伴う二酸化チタンの作用を及ぼして、特性の変化した特性変化パターンを形成するために用いられる二酸化チタン含有層側基板であって、基体と、上記基体上に形成された上記二酸化チタン含有層とを有することを特徴とするものである。
本発明の二酸化チタン含有層側基板は、例えば図4に示すように、基体5と、その基体5上に形成された二酸化チタン含有層2とを有するものである。本発明の二酸化チタン含有層側基板は、例えば図5に示すように、活性酸素種等によって表面の有機基が分解や変性等されて特性が変化する対向基板7と、二酸化チタン含有層側基板6の二酸化チタン含有層2とが対向するように配置されて用いられるものであり(図5(a))、この状態で所定の方向からフォトマスク11等を用いてエネルギー12を照射することにより、対向基板7の特性がパターン状に変化した特性変化パターン3を形成するものである(図5(b))。
従来、上記二酸化チタン含有層側基板における二酸化チタンの活性酸素種の発生効率が低い場合には、エネルギーを長時間照射する必要があり、エネルギーのまわりこみ等により、高精細なパターンが形成できない、という問題があった。しかしながら、本発明においては、上述したように、上記二酸化チタン含有層中の二酸化チタンの結晶欠陥が少なく、少ないエネルギー量で、有機物の分解や変性等に寄与可能な活性酸素種が多量に発生するものとすることができる。したがって、本発明によれば、短時間で効率よく対向基板の特性を変化させることができ、目的とするパターン状に高精細に特性変化パターンを形成することが可能となるのである。
以下、本発明に用いられる基体について説明する。なお、上記二酸化チタン含有層としては、「B.二酸化チタン含有層」の項で説明したものと同様であるので、ここでの詳しい説明は省略する。
a.基体
本発明に用いられる基体について説明する。本発明に用いられる基体としては、上記二酸化チタン含有層を形成可能なものであれば、特に限定されるものではなく、可撓性を有するもの、例えば樹脂製フィルム等であってもよいし、可撓性を有さないもの、例えばガラス基板等であってもよい。これは、エネルギー照射方法により適宜選択される。また、上記基体のエネルギー透過性は、対向基板のパターニングの際に照射されるエネルギーの照射方向により適宜選択される。
なお、基体表面と二酸化チタン含有層との密着性を向上させるため、また二酸化チタンの作用による基体の劣化を防ぐために基体上に中間層を形成するようにしてもよい。このような中間層としては、シラン系、チタン系のカップリング剤、反応性スパッタ法やCVD法等により作製したシリカ膜等が挙げられる。
b.二酸化チタン含有層側基板
次に、本発明の二酸化チタン含有層側基板について説明する。本発明の二酸化チタン含有層側基板は、上述した基体および二酸化チタン含有層を有するものであれば特に限定されるものではない。例えば上記二酸化チタン含有層上や基体上に遮光部や、その遮光部上にプライマー層等が形成されているもの等であってもよい。
また、本発明に用いられる対向基板としては、エネルギー照射に伴う二酸化チタンの作用により特性が変化するものであれば、特に限定されるものではない。例えばエネルギー照射に伴う二酸化チタンにより特性が変化する樹脂層のみからなるものであってもよく、また例えば基材上に特性が変化する特性変化層等が形成されたもの等であってもよい。
なお、上記特性変化の種類は、特に限定されるものではなく、例えば特性変化層等の表面に存在する有機基が分解または変性等されて濡れ性が変化するもの等であってもよく、また特性変化層等の表面の接着性が変化するもの等であってもよい。
このような対向基板としては、例えば上述した「C.パターン形成体」の第2実施態様で説明した特性変化層等を有するものとすることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
ここで、本発明の二酸化チタン含有層側基板は、上述したようにエネルギー照射に伴う二酸化チタンの作用により分解または変性等される有機基を含有する対向基板等と対向させて用いられるものであるが、この際、二酸化チタン含有層側基板は、実質的に二酸化チタンの作用が対向基板等の表面に及ぶような状態で配置されて用いられる。この場合、実際に物理的に接触している状態の他、所定の間隔を隔てて配置されることが好ましく、間隙をおいて配置される場合には、200μm以下とされることが好ましい。
本発明においてこのような間隙は、パターン精度が極めて良好であり、二酸化チタンの感度も高く、対向基板等の特性変化の効率が良好である点を考慮すると特に0.2μm〜10μmの範囲内、好ましくは1μm〜5μmの範囲内とすることが好ましい。このような間隙の範囲は、特に間隙を高い精度で制御することが可能である小面積の対向基板等に対して特に有効である。
一方、例えば300mm×300mm以上といった大面積の対向基板等に対して処理を行う場合は、接触することなく、かつ上述したような微細な間隙を二酸化チタン含有層側基板と対向基板等との間に形成することは極めて困難である。したがって、対向基板等が比較的大面積である場合は、上記間隙は、10〜100μmの範囲内、特に50〜75μmの範囲内とすることが好ましい。間隙をこのような範囲内とすることにより、パターンがぼやける等のパターン精度の低下の問題や、二酸化チタンの感度が悪化して特性変化の効率が悪化する等の問題が生じることなく、さらに対向基板上の特性変化等にムラが発生しないといった効果を有するからである。
このように、本発明の二酸化チタン含有層側基板が比較的大面積の対向基板等を露光する際に用いられる場合には、エネルギー照射装置内の二酸化チタン含有層側基板と対向基板等との位置決め装置における間隙の設定を、10μm〜200μmの範囲内、特に25μm〜75μmの範囲内に設定することが好ましい。設定値をこのような範囲内とすることにより、パターン精度の大幅な低下や二酸化チタンの感度の大幅な悪化を招くことなく、かつ二酸化チタン含有層側基板と対向基板等とが接触することなく配置することが可能となるからである。
このように二酸化チタン含有層側基板と対向基板等の表面とを所定の間隔で離して配置することにより、酸素と水および二酸化チタン作用により生じた活性酸素種が脱着しやすくなる。すなわち、上記範囲より二酸化チタン含有層側基板と対向基板等との間隔を狭くした場合は、上記活性酸素種の脱着がしにくくなり、結果的に特性変化速度を遅くしてしまう可能性があることから好ましくない。また、上記範囲より間隔を離して配置した場合は、生じた活性酸素種が対向基板に届き難くなり、この場合も特性変化の速度を遅くしてしまう可能性があることから好ましくない。
このような配置状態は、少なくともエネルギー照射の間だけ維持されればよい。
また、上記二酸化チタン含有層側基板を用いたパターニングの際に、照射されるエネルギーとしては、上述した「C.パターン形成体」の第1実施態様で説明した特性変化パターンの形成に用いられるエネルギーと同様とすることができる。
E.二酸化チタン含有層の製造方法
次に、本発明の二酸化チタン含有層の製造方法について説明する。本発明の二酸化チタン含有層の製造方法は、少なくとも二酸化チタンを含有する二酸化チタン含有層に紫外線を照射しながら電子スピン共鳴スペクトルを測定し、Ti3+種由来の電子スピンの濃度が、上記二酸化チタン1gあたり、1.0×1012スピン以下で飽和する上記二酸化チタン含有層のみを選択する検査工程を有することを特徴とする方法である。
本発明によれば、上記検査工程において、紫外線照射開始からのTi3+種由来の電子スピン濃度を測定した際、上記電子スピン濃度が所定の値以下で飽和する二酸化チタン含有層のみが選択されて製造される。したがって、本発明により製造された二酸化チタン含有層中の二酸化チタンには結晶欠陥が少ないものとすることができる。
上述したように、二酸化チタン含有層中の二酸化チタンに結晶欠陥が多数存在する場合には、エネルギー照射に伴って発生したキャリアが結晶欠陥によって消費されてしまい、有機物の分解等に寄与する活性酸素種の生成が促進されないという問題がある。一方、本発明においては、二酸化チタン含有層中の二酸化チタンにおける結晶欠陥が所定の値以下とされていることから、少ないエネルギー量で活性酸素種を多量に発生させることができる。したがって、本発明によれば、効率よく短時間で例えば有機物のパターニングを行うこと等が可能な二酸化チタン含有層とすることができる。
以下、本発明における検査工程について説明する。
1.検査工程
本発明における検査工程は、少なくとも二酸化チタンを含有する二酸化チタン含有層に、紫外線を照射しながら電子スピン共鳴スペクトルを測定し、Ti3+種由来の電子スピンの濃度が、上記二酸化チタン1gあたり、1.0×1012スピン以下で飽和する上記二酸化チタン含有層のみを選択する工程である。
本工程においては、紫外線を照射しながら電子共鳴スペクトルを測定した際、Ti3+種由来の電子スピンの濃度が、上記二酸化チタン1gあたり、1.0×1012スピン以下、中でも8.0×1011スピン以下で飽和する上記二酸化チタン含有層のみを選択することが好ましい。これにより、二酸化チタン含有層中に含有される二酸化チタンの結晶欠陥が少なく、少ないエネルギー量で効率よく活性酸素種を発生させるものとすることができるからである。
ここで、上記電子スピン濃度の算出方法については、上述した「A.二酸化チタン組成物」の項で説明した方法と同様とすることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
また、本工程においては、製造された二酸化チタン含有層をそのまま電子スピン共鳴測定装置で測定することが可能であれば、そのまま測定してもよいが、例えば製造された二酸化チタン含有層の一部を切り取り、測定を行ってもよい。また試験用の二酸化チタン含有層を製品用の二酸化チタン含有層と同条件で同時に製造しておき、この試験用の二酸化チタン含有層を検査することにより、製品用の二酸化チタン含有層の選別を行ってもよい。なお、本工程は、製造された全ての二酸化チタン含有層に対して行われてもよく、また所定の枚数ごとに行われるものであってもよい。
2.その他
本発明における二酸化チタン含有層の製造方法においては、上記検査工程だけでなく、例えば二酸化チタン含有層を形成する二酸化チタン含有層形成工程等を有していてもよい。なお、この場合には、上記検査工程は、上記二酸化チタン含有層形成工程後、行われることとなる。
また、本発明により製造された二酸化チタン含有層は、例えば「C.パターン形成体」の項で説明したパターン形成体や、「D.二酸化チタン含有層側基板」で説明した二酸化チタン含有層側基板に用いられることとなる。
F.パターン形成体の製造方法
次に、本発明のパターン形成体の製造方法について説明する。本発明は、対向基板と、基体、および上記基体上に形成され、少なくとも二酸化チタンを含有する二酸化チタン含有層を有する二酸化チタン含有層側基板とを対向させて配置し、パターン状にエネルギー照射することにより、上記対向基板上に特性の変化した特性変化パターンを形成してパターン形成体を製造するパターン形成体の製造方法であって、上記二酸化チタン含有層に、紫外線を照射しながら電子スピン共鳴スペクトルを測定し、Ti3+種由来の電子スピンの濃度が、上記二酸化チタン1gあたり、1.0×1012スピン以下で飽和する上記二酸化チタン含有層側基板のみを選択する検査工程を有することを特徴とする方法である。
本発明のパターン形成体の製造方法は、例えば図5に示すように、基体5、およびその基体5上に形成された二酸化チタン含有層2を有する二酸化チタン含有層側基板6の二酸化チタン含有層2と、活性酸素種等によって表面の有機基が分解や変性等されて特性が変化する対向基板7とを対向させて配置し、所定の方向からフォトマスク11等を用いてエネルギー12を照射することにより(図5(a))、対向基板7の特性をパターン状に変化させて、特性変化パターン3を有するパターン形成体8を製造する方法である(図5(b))。また本発明においては、上記二酸化チタン含有層に、紫外線を照射しながら電子スピン共鳴スペクトルを測定し、Ti3+種由来の電子スピン濃度が、所定の値以下で飽和する二酸化チタン含有層を有する二酸化チタン含有層側基板のみを選択する検査工程を有している。
本発明によれば、上記検査工程において、二酸化チタン含有層のTi3+種由来の電子スピン濃度が、所定の値以下で飽和する二酸化チタン含有層側基板のみ選択され、二酸化チタン含有層中の二酸化チタンの結晶欠陥が少ない二酸化チタン含有層側基板のみ選択されることとなる。したがって、少ないエネルギー量で効率よく、対向基板の特性を変化させてパターン形成体を製造することが可能となる。またこれにより、特性変化パターン形成の際、エネルギーの回りこみを少ないものとすることができ、目的とするパターン状に高精細に特性変化パターンを形成することが可能となるのである。
また上記二酸化チタン含有層側基板は、通常、繰り返し使用されることとなることから、上記検査工程を行うことにより、経時により劣化した二酸化チタン含有層側基板等を廃棄するタイミングを測定することができ、結晶欠陥の少ない二酸化チタン含有層側基板のみを用いてパターン形成体を製造することができる、という利点も有する。以下、本発明における検査工程について説明する。
1.検査工程
本発明における検査工程は、少なくとも二酸化チタンを含有する二酸化チタン含有層に、紫外線を照射しながら電子スピン共鳴スペクトルを測定し、Ti3+種由来の電子スピンの濃度が、上記二酸化チタン1gあたり、1.0×1012スピン以下で飽和する上記二酸化チタン含有層側基板のみを選択する工程である。
本工程においては、紫外線を照射しながら電子共鳴スペクトルを測定した際、Ti3+種由来の電子スピンの濃度が、上記二酸化チタン1gあたり、1.0×1012スピン以下、中でも8.0×1011スピン以下で飽和する上記二酸化チタン含有層側基板のみを選択することが好ましい。これにより、二酸化チタン含有層中に含有される二酸化チタンの結晶欠陥が少なく、少ないエネルギー量で効率よく活性酸素種を発生させることが可能な二酸化チタン含有層側基板を選択することができるからである。
ここで、上記電子スピン濃度の算出方法については、上述した「A.二酸化チタン組成物」の項で説明した方法と同様とすることができるので、ここでの詳しい説明は省略す
また、本工程においては、二酸化チタン含有層側基板をそのまま電子スピン共鳴測定装置で測定することが可能であれば、そのまま測定してもよいが、例えば二酸化チタン含有層側基板の一部を切り取り、測定を行ってもよい。また試験用の二酸化チタン含有層側基板を、パターン形成に用いる二酸化チタン含有層側基板と同条件で同時に製造しておき、この試験用の二酸化チタン含有層側基板の二酸化チタン含有層を検査することにより、パターン形成に用いる二酸化チタン含有層側基板の選別を行ってもよい。なお、本工程は、パターン形成体の製造に用いる全ての二酸化チタン含有層側基板に対して行われるものであってもよく、また抜き取りで行われるものであってもよい。
2.その他
本発明におけるパターン形成体の製造方法においては、上記検査工程だけでなく、例えば二酸化チタン含有層側基板を形成する二酸化チタン含有層側基板形成工程や、二酸化チタン含有層側基板と対向基板とを対向させて配置し、パターン状にエネルギーを照射するエネルギー照射工程等を有していてもよい。なお、この場合、上記検査工程は、上記二酸化チタン含有層側基板形成工程直後に行われるものであってもよく、また例えば上記エネルギー照射工程を行う直前に行われるもの等であってもよい。また、例えば保管されている二酸化チタン含有層側基板に対して、定期的に上記検査工程が行われるものであってもよい。
なお、本発明に用いられる二酸化チタン含有層は、例えば「D.二酸化チタン含有層側基板」で説明した二酸化チタン含有層側基板と同様とすることができ、上記エネルギー照射工程についても「D.二酸化チタン含有層側基板」で説明したエネルギー照射方法と同様とすることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。また、本発明に用いられる対向基板についても、例えば「D.二酸化チタン含有層側基板」で説明した二酸化チタン含有層側基板と同様とすることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
G.二酸化チタン含有物の検査方法
次に、本発明の二酸化チタン含有物の検査方法について説明する。本発明の二酸化チタン含有物の検査方法は、少なくとも二酸化チタンを含有する二酸化チタン含有物に対し、紫外線を照射しながら電子スピン共鳴スペクトルを測定し、Ti3+種由来の電子スピンの濃度を検査することを特徴とする方法である。
従来、二酸化チタン含有物中の結晶欠陥の量を測定する方法としては、例えば二酸化チタン含有物に紫外線を照射しながら、二酸化チタン表面の色を光学的に測定する方法等が用いられていた。これは、二酸化チタン含有物中に結晶欠陥が生じている場合には、二酸化チタン含有物表面の色が変化することを利用したものである。しかしながら、上記二酸化チタンの結晶欠陥は、極めて微小な領域で生じているものであり、また極めて微小な量であることから、結晶欠陥を再現性よく定量化することが難しいという問題があった。
一方、本発明においては、電子スピン共鳴スペクトルを測定し、Ti3+種の飽和する濃度を一定の値以下とすることにより、結晶欠陥の有無や量を測定する。上述したように、二酸化チタン含有物中に結晶欠陥が存在する場合には、エネルギー照射された際、欠陥部分のチタン原子に電子が捕捉され、通常の二酸化チタン中のTi4+とは異なるTi3+となる。そこで、電子スピン共鳴(ESR)法により、Ti3+種の電子スピン濃度を測定することにより、上記結晶欠陥の有無や量を測定することが可能となるのである。また、電子スピン共鳴スペクトル法は、非常に高感度であるため、再現性よく、二酸化チタン含有物中の結晶欠陥の定量化を行うことが可能であり、二酸化チタン含有物の優劣を容易に判断することができるという利点を有している。
ここで、本発明における電子スピン共鳴スペクトルの測定方法は、上述した方法と同様とすることができる。また、上記二酸化チタン含有物の優劣の判断基準は、二酸化チタン含有物の種類等により適宜選択されることとなるが、より上記電子スピン濃度が小さければ小さいほど、二酸化チタン含有物中に存在する結晶欠陥が少ないものとすることができる。なお、本発明は、上述した「A.二酸化チタン組成物」や「B.二酸化チタン含有層」等の製造の際に用いられるだけでなく、例えば二酸化チタンの光触媒活性を利用した、塗料、抗菌剤、防汚性外壁材、抗菌性繊維等の優劣を判断する際にも用いることが可能である。また本発明においては、上記光触媒含有物の性状は特に限定されず、例えば粉体であってもよく、また液体であってもよい。またさらに基体上に塗布されて塗膜とされているもの等であってもよく、また成形等されたものであってもよい。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。