上述した特許文献1に記載された装置では、これを搭載した車両の運転状態が高車速低負荷になると、エンジンの回転数が低下するとともに、出力軸の回転数を増大させるので、第1モータ・ジェネレータは負方向(エンジンの回転方向とは反対の回転方向)に回転させ、モータとして機能させることになる。その場合、第2モータ・ジェネレータは、出力軸との間に設けられた変速機の変速比に応じて増速されて回転し、発電を行う。その電力は、第1モータ・ジェネレータに供給される。このように、高車速低負荷の場合には、エンジンが出力した動力の一部が、電力変換を伴って再度、エンジンの出力軸に加えられる状態、すなわち動力循環が生じ、動力損失が大きくなって燃費の向上効果が減殺される可能性がある。また、特許文献2あるいは3に記載されている装置では、第2モータ・ジェネレータと出力軸との間の変速比を変えることができないので、車両の走行状態もしくは駆動要求状態に適した運転モードを設定しにくく、エネルギ効率あるいは動力の伝達効率を向上させるための改善の余地があった。
この発明は上記の技術的課題に着目してなされたものであり、簡単な構成で運転モードを多様化し、かつ動力の伝達効率を向上させることのできるハイブリッド駆動装置を提供することを目的とするものである。
上記の目標を達成するために、請求項1の発明は、内燃機関と第1電動発電機と出力部材とが、少なくとも三つの回転要素によって差動作用を行う動力分配機構に連結され、その出力部材が少なくとも高低の二つの変速比を設定可能な変速機構の出力側に連結され、かつその変速機構の入力側に第2電動発電機が連結されているハイブリッド駆動装置において、前記内燃機関と前記第2電動発電機とを選択的に連結するクラッチ機構を更に備えていることを特徴とするものである。
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記変速機構は、トルクを伝達しないニュートラル状態を設定可能に構成され、かつ前記クラッチ機構を係合状態とすることにより前記内燃機関と前記第2電動発電機とを連結するとともに前記変速機構をニュートラル状態とする出力スプリットモードを設定する第1モード設定手段を更に備えていることを特徴とするハイブリッド駆動装置である。
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記第1モード設定手段は、前記第1電動発電機の回転数が、前記内燃機関の回転方向とは反対の負の回転数の場合に前記出力スプリットモードを設定する手段を含むことを特徴とするハイブリッド駆動装置である。
請求項4の発明は、請求項2または3の発明において、前記第1モード設定手段は、前記第1電動発電機の回転数がゼロに近い所定回転数以下の状態で前記変速機構をニュートラル状態にし、かつその状態で前記内燃機関と前記第2電動発電機との回転数が同期した後に前記クラッチ機構を係合状態に切り替える手段を含むことを特徴とするハイブリッド駆動装置である。
請求項5の発明は、請求項1の発明において、前記内燃機関が停止している状態で前記変速機構をニュートラル状態とするとともに前記クラッチ機構を係合状態とし、その状態で前記第2電動発電機によって前記内燃機関を回転させる始動制御手段を更に備えていることを特徴とするハイブリッド駆動装置である。
請求項6の発明は、請求項1の発明において、前記変速機構をトルク伝達可能な減速状態に設定し、かつ前記クラッチ機構を係合状態として前記第2電動発電機を前記内燃機関に連結する機械直結減速モードを設定する第2モード設定手段を更に備えていることを特徴とするハイブリッド駆動装置である。
請求項7の発明は、請求項6の発明において、前記第2モード設定手段は、少なくともいずれか一方の電動発電機の負荷が相対的に大きい場合に前記機械直結減速モードを設定する手段を含むことを特徴とするハイブリッド駆動装置である。
請求項8の発明は、請求項6または7に記載の発明において、前記第2モード設定手段は、前記変速機構の変速比を低速変速比から高速変速比に切り替えた後に前記機械直結減速モードに切り替える手段を含むことを特徴とするハイブリッド駆動装置である。
請求項9の発明は、請求項6ないし8のいずれかの発明において、前記機械直結減速モードで前記内燃機関の出力トルクが増大した場合に前記第2電動発電機の出力トルクを低下させる電動発電機制御手段を更に備えていることを特徴とするハイブリッド駆動装置である。
請求項10の発明は、請求項6ないし9のいずれかの発明において、前記第2モード設定手段は、前記機械直結減速モードを設定する場合に前記内燃機関と前記第2電動発電機との回転数が同期した時に前記クラッチ機構を係合させる手段を含むことを特徴とするハイブリッド駆動装置である。
請求項11の発明は、請求項1ないし10のいずれかの発明において、前記第1電動発電機と前記動力分配機構と前記第2電動発電機とが同一軸線上に配置されるとともに、その動力分配機構が第1電動発電機と第2電動発電機との間に配置されていることを特徴とするハイブリッド駆動装置である。
請求項12の発明は、請求項1ないし11のいずれかの発明において、前記クラッチ機構は、噛み合い式のドグクラッチ機構によって構成され、かつ前記変速機構は、前記各変速比を設定するために係合および解放の各状態に切り替えられる摩擦式係合機構を備えていることを特徴とするハイブリッド駆動装置である。
請求項13の発明は、請求項1ないし12のいずれかの発明において、前記動力分配機構は、サンギヤとリングギヤとキャリヤとを回転要素とする遊星歯車機構によって構成されるとともに、前記内燃機関がその遊星歯車機構におけるいずれかの回転要素に連結され、前記第1電動発電機が他の回転要素に連結され、前記出力部材が更に他の回転要素に連結され、前記クラッチ機構は、前記内燃機関が連結された前記回転要素と前記第2電動発電機とを選択的に連結するように構成されていることを特徴とするハイブリッド駆動装置である。
請求項1の発明によれば、第2電動発電機と出力部材との間の変速機構における変速比を少なくとも高低に切り替えることができ、これに加えて内燃機関と第2電動発電機とをクラッチ機構によって直接連結できるので、設定可能な運転状態が従来になく多様化し、運転状態に合わせて運転モードを設定することにより動力の伝達効率を向上させることができる。
請求項2の発明によれば、変速機構をニュートラル状態とすることにより、第2電動発電機を出力部材から切り離すことができる。したがって、例えばこの発明はハイブリッド駆動装置を搭載した車両が高速巡航する場合、第2電動発電機を高速で回転させたり、それに伴う電力を第1電動発電機に供給してこれをモータとして機能させて大きくトルクを発生させたりする事態を回避もしくは抑制し、動力の伝達効率を向上させることができる。
請求項3の発明によれば、第1電動発電機がいわゆる負回転する場合、内燃機関と第2電動発電機とが連結されるとともに、第2電動発電機と出力部材との連結が断たれるので、第2電動発電機の回転数を増大させたり、それに伴って発生する電力を第1電動発電機に供給してこれをモータとして機能させたりする事態を回避もしくは抑制し、動力の伝達効率を向上させることができる。
請求項4の発明によれば、クラッチ機構を係合させる場合、回転数を予め同期させるので、クラッチ機構の係合による回転数の変化やそれに起因する回生トルクなどが防止もしくは抑制され、その結果、ショックや出力トルクの段差を回避もしくは抑制することができる。
請求項5の発明によれば、クラッチ機構によって第2電動発電機を内燃機関に連結した状態で第2電動発電機を駆動することによって内燃機関を始動することができる。その場合、変速機構がニュートラル状態になっていて第2電動発電機が出力部材に対して遮断されているので、内燃機関の始動に伴う反力が出力部材に現れることがなく、したがっていわゆる反力のキャンセルのための制御が不要になる。
請求項6の発明によれば、機械直結減速モードでは内燃機関が出力した動力の一部が動力分配機構を介して出力部材に伝達され、他の動力がクラッチ機構および第2電動発電機を介して出力部材に伝達される。そのため、内燃機関から出力部材に対していわゆる機械的手段によって伝達される動力の量が多くなり、その結果、動力の伝達効率を向上させることができる。
請求項7の発明によれば、電動発電の負荷が増大する場合には、機械直結減速モードが設定されて電力変換を伴う動力の伝達が抑制される。そのため、電動発電機の負荷を軽減して電気系統の耐久性を向上させ、また構成を簡素化でき、さらには電力変換に伴う動力損失を低減して動力の伝達効率を向上させることができる。
請求項8の発明によれば、クラッチ機構を係合状態として機械直結減速モードを設定する場合、変速機構の変速比を高速側の変速比に設定して第2電動発電機の回転数を低下させた後、クラッチ機構を係合させて第2電動発電機と内燃機関とを連結するので、機械直結減速モードに切り替えた後に内燃機関の回転数を相対的に低回転数に抑制することができる。
請求項9の発明によれば、第2電動発電機の出力トルクを相対的に小さくすることができるので、第2電動発電機を小型で小容量のものとすることができ、ひいてはハイブリッド駆動装置の全体としての構成を小型化することができる。
請求項10の発明によれば、機械直結減速モードを設定する場合、クラッチ機構を係合させることになるが、その場合、いわゆる回転同期が成立し、もしくは成立に近い状態になってからクラッチ機構が係合するので、運転モードの切り替えに伴うショックを防止もしくは抑制することができる。
請求項11の発明によれば、内燃機関側に外径の大きい部材を配置し、これとは反対側に外径が相対的に小さい部材を配置する構成を採ることが容易になり、その結果、車載性が向上し、特にいわゆる前置きエンジン後輪駆動車に対する車載性を向上させることができる。
請求項12の発明によれば、出力スプリットモードを設定する場合、いわゆる係合機構としてはドグクラッチ機構のみを係合させることになるので、動力の伝達状態を維持して出力スプリットモードを設定しておくために消費する動力が殆ど不要になる。例えば摩擦式係合機構を係合状態に維持する油圧を消費しないので、オイルポンプ損失を低減し、エネルギ効率を向上させることができる。
請求項13の発明によれば、上述した各請求項の発明と同様の効果を得ることができる。
つぎにこの発明を具体例に基づいて説明する。図1はこの発明の一具体例を示す図であって、ここに示す具体例では、原動機(エンジン:ENG)1と、発電機あるいは電動機として二つのモータ・ジェネレータ(MG1、MG2)2,3とが動力装置として設けられている。その原動機1は、要は内燃機関であって、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン、あるいは天然ガスエンジンなどの燃料を燃焼して動力を出力する動力装置である。好ましくはスロットル開度などの負荷を電気的に制御でき、また所定の負荷に対して回転数を制御することにより燃費が最も良好な最適運転点に設定できる内燃機関である。以下の説明では、原動機1をエンジン1と記す。
このエンジン1が動力分配機構4に連結されている。動力分配機構4は、エンジン1が出力した動力を第1モータ・ジェネレータ2と出力側とに分配するための機構であって、三つの回転要素で差動作用をなす遊星歯車機構によって構成されている。具体的には、動力分配機構4は、シングルピニオン型遊星歯車機構やダブルピニオン型遊星歯車機構を用いて構成することができ、図1に示す例では、キャリヤCfを入力要素、サンギヤSfを反力要素、リングギヤRfを出力要素としたシングルピニオン型遊星歯車機構によって構成されている。すなわち、外歯歯車であるサンギヤSfの外周側に、内歯歯車であるリングギヤRfがサンギヤSfに対して同心円上に配置され、これらのサンギヤSfとリングギヤRfとに噛み合っているピニオンギヤがキャリヤCfによって自転自在および公転自在に保持されている。そして、そのキャリヤCfにエンジン1のクランクシャフトなどの出力用の部材が連結されている。なお、エンジン1とキャリヤCfとの間に、発進用のクラッチやトルクコンバータ(ロックアップクラッチ付のトルクコンバータ)などの動力伝達機構を適宜に設けてもよいことは勿論である。
また、動力分配機構4のサンギヤSfにこの発明における第1電動発電機に相当する第1モータ・ジェネレータ(MG1)2が連結されている。この第1モータ・ジェネレータ2は、一例として、ロータに永久磁石を備えた同期電動機によって構成され、発電機および電動機として機能するように構成されている。そして、そのロータがサンギヤSfに連結され、ステータがケーシング(図示せず)などに固定されている。
さらに、リングギヤRfが、この発明の出力部材に相当する出力軸5に連結されている。上記の第1モータ・ジェネレータ2および動力分配機構4は、エンジン1の回転中心軸線上にここに挙げた順序で配置されており、出力軸5はこれらエンジン1および第1モータ・ジェネレータ2ならびに動力分配機構4と同一軸線上に配置されている。
動力分配機構4を挟んで第1モータ・ジェネレータ2とは反対側に、この発明の第2電動発電機に相当する第2モータ・ジェネレータ(MG2)3が、同一軸線上に配置されている。この第2モータ・ジェネレータ3は、主として、第1モータ・ジェネレータ2で発電した電力を受けてモータとして機能することにより、いわゆるトルクアシストを行うためのものであり、要求される特性が前記第1モータ・ジェネレータ2とは異なるので、例えば第1モータ・ジェネレータ2よりも外径の小さい高回転数型のものが用いられている。また、第2モータ・ジェネレータ3は、前述した第1モータ・ジェネレータ2と同様にロータに永久磁石を備えた同期電動機によって構成されていて、発電機および電動機として機能するようになっており、そのロータが変速機構6の入力用の部材に連結され、かつステータがケーシング(図示せず)などに固定されている。
上記の各モータ・ジェネレータ2,3は発電機および電動機として機能するようになっており、そのためにこれらのモータ・ジェネレータ2,3は図示しないインバータなどのコントローラを介してバッテリーなどの蓄電装置に接続されている。そして、一方のモータ・ジェネレータ2,3によって発電した電力を他方のモータ・ジェネレータ3,2に供給して該他方のモータ・ジェネレータ3,2をモータとして機能させることができるように構成されている。
変速機構6は、第2モータ・ジェネレータ3の出力した動力を減速もしくは増速して出力軸5に伝達するための機構であって、少なくとも高低の二つの変速比に切り替えることができるように構成されている。より好ましくは、少なくとも二つの変速比とトルクを伝達しないニュートラル状態とを設定できるように構成されている。したがって、変速機構6は、低速用ギヤ対および高速用ギヤ対からなる機構や、一組の遊星歯車機構とクラッチおよびブレーキからなる機構、二つ組の遊星歯車機構を組み合わせた複合遊星歯車機構とブレーキなどの係合装置とからなる機構などによって構成することができる。図2にその一例を模式的に示してあり、ここに示す例は、いわゆるステップドピニオン型の遊星歯車機構7と二つのブレーキBHi,BLoとによって構成されている。
具体的に説明すると、大径の第1サンギヤS1とこれより小径の第2サンギヤS2とが同一軸線上に隣接して配置されており、第1サンギヤS1に小径のピニオンギヤP1が噛み合っており、また第2サンギヤS2に相対的に大径のピニオンギヤP2が噛み合っている。そして、これらのピニオンギヤP1,P2はキャリヤCによって自転かつ公転自在に保持されている。さらに、サンギヤS1,S2と同心円上に配置されたリングギヤRが、一方のピニオンギヤ(例えば大径のピニオンギヤP2)に噛み合っている。そのリングギヤRに前記第2モータ・ジェネレータ3のロータが連結され、したがってリングギヤRが入力要素となっている。また、キャリヤCが前記出力軸5に連結され、したがってキャリヤCが出力要素となっている。さらに、大径の第1サンギヤS1がハイブレーキBHiに連結され、また小径の第2サンギヤS2がローブレーキBLoに連結されている。これらのブレーキBHi,BLoはこの発明の摩擦式係合機構に相当し、一例として油圧を供給することにより係合してトルクを伝達し、油圧を抜くことにより解放状態となって伝達トルク容量が低下し、次第にトルクを伝達しなくなるように構成されている。
したがって、ハイブレーキBHiによって第1サンギヤS1を固定した状態で第2モータ・ジェネレータ3からリングギヤRに動力を入力すると、第1サンギヤS1の歯数とリングギヤRの歯数との比であるギヤ比に応じた減速作用が生じ、リングギヤRに入力されたトルクが増幅されて出力軸5に伝達される。また、ローブレーキBLoによって第2サンギヤS2を固定した状態で第2モータ・ジェネレータ3からリングギヤRに動力を入力すると、第2サンギヤS2の歯数とリングギヤRの歯数との比であるギヤ比に応じた減速作用が生じ、リングギヤRに入力されたトルクが増幅されて出力軸5に伝達される。その場合、第1サンギヤS1を固定した場合の減速比が、第2サンギヤS2を固定した場合の減速比より小さくなる。すなわち、ハイブレーキBHiを係合させることにより高速変速比が設定され、これに対してローブレーキBLoを係合させることにより低速変速比が設定される。さらに、各ブレーキBHi,BLoを共に解放すると、変速機構6はトルクを伝達しないニュートラル状態になり、第2モータ・ジェネレータと出力軸5とが遮断される。したがって、変速機構6は高速変速比、低速変速比、ニュートラル状態の三つの態様に設定されるようになっている。
図1に示すハイブリッド駆動装置は、更に、エンジン1と第2モータ・ジェネレータ3とを選択的に連結するクラッチ機構8を備えている。このクラッチ機構8は、要は、エンジン1と第2モータ・ジェネレータ3もしくは変速機構6の入力要素とをトルク伝達可能に連結する機構であればよく、摩擦式の係合機構や噛み合い式の係合機構などを採用することができる。図1には、噛み合い式の係合機構であるドグクラッチを採用した例を示してあり、第2モータ・ジェネレータ3のロータに一体的に連結されているハブ9が、第2モータ・ジェネレータ3と動力分配機構4との間でこれらの外周側に配置されている。このハブ9にはスリーブ10が軸線方向に前後動可能にスプライン嵌合している。また、そのスリーブ10がスプライン嵌合可能な他のハブ11が、前記ハブ9に隣接して配置されている。該他のハブ11は、動力分配機構4におけるキャリヤCfに一体となって回転するように連結されている。
したがって、クラッチ機構8は、スリーブ10を図1の右側の位置に移動させた状態では、エンジン1と第2モータ・ジェネレータ3とが遮断された解放状態となり、スリーブ10を図1の左側の位置に移動させることにより、スリーブ10が前記他のハブ11にスプライン嵌合して、エンジン1と第2モータ・ジェネレータ3とを連結する係合状態となるようになっている。このようなスリーブ10の移動は、手動操作によって行うように構成してもよく、あるいは電気的に制御できる適宜のアクチュエータによって行うように構成してもよい。
図1に示すように、エンジン1側から第1モータ・ジェネレータ2、動力分配機構4、第2モータ・ジェネレータ3、変速機構6の順に配置した構成では、エンジン1側の外径が大きく、これとは反対側の外径が相対的に小さくなる。そのため、図1に示すように構成すれば、エンジン1を車両の前後方向に向けて搭載する前置きエンジン後輪駆動車に対する車載性が向上する。
上述したクラッチ機構8の係合・解放による運転モードの切り替え、および変速機構6における各ブレーキBHi,BLoの係合・解放による変速もしくは運転モードの切り替え、ならびに各モータ・ジェネレータ2,3による回生・力行の制御を電気的に行うように構成されており、そのための電子制御装置(ECU)12が設けられている。この電子制御装置12は、マイクロコンピュータを主体にして構成され、図示しないセンサによって検出されたデータや予め記憶しているデータを使用して演算を行い、その結果を制御指令信号として出力するように構成されている。
つぎに上述したハイブリッド駆動装置の作用について説明する。先ず、エンジン1を始動する場合について説明すると、エンジン1が通常の車両用エンジンと同様にスタータモータを備えていれば、そのスタータジェネレータによってエンジン1をモータリング(クランキング)してエンジン1を始動することができるが、これに替えて、前述した第2モータ・ジェネレータ3によってエンジン1をモータリングして始動することもできる。第2モータ・ジェネレータ3によってエンジン1をモータリングする場合、変速機構6における各ブレーキBHi,BLoを解放し、かつクラッチ機構8を係合状態とする。具体的には、前記スリーブ10を図1の左側に移動させて、各ハブ9,11に対してスリーブ10を係合させることにより、エンジン1と第2モータ・ジェネレータ3とをトルク伝達可能に連結する。これらクラッチ機構8および各ブレーキBHi,BLoの係合・解放の制御は、前記電子制御装置12からの制御指令信号によって行うことができ、したがって前記電子制御装置12がこの発明の始動制御手段に相当している。
この状態で蓄電装置から第2モータ・ジェネレータ3に電力を供給してこれを駆動すると、エンジン1が第2モータ・ジェネレータ3によって回転させられ、エンジン1に燃料を供給し、ガソリンエンジンの場合には点火制御を行うことにより、エンジン1が始動される。その場合、変速機構6における各ブレーキBHi,BLoが解放させられていて第2モータ・ジェネレータ3と出力軸5との連結が解かれているので、第2モータ・ジェネレータ3の出力トルクが出力軸5に伝達されることがなく、したがって出力軸5のトルクを変化させないようにするためのいわゆる反力をキャンセルする制御が不要になる。言い換えれば、特に制御を行うことなく出力軸5のトルク変動を防止でき、エンジン1の始動に伴うショックなどの違和感を回避もしくは抑制できる。
エンジン1を始動して発進する場合には、クラッチ機構8を解放してエンジン1と第2モータ・ジェネレータ3との連結を解き、また変速機構6ではローブレーキBLoを係合させて、その変速比を低速変速比に設定する。したがって、エンジン1が出力した動力は、動力分配機構4におけるキャリヤCfに伝達されてサンギヤSfとリングギヤRfとに分配される。リングギヤRfには出力軸5側から負荷が掛かっているので、サンギヤSfおよびこれに連結されている第1モータ・ジェネレータ2が正回転(エンジン1またはキャリヤCfと同方向の回転)するので、第1モータ・ジェネレータ2を発電機として機能させてサンギヤSfに反力トルクを与えると、リングギヤRfおよびこれに連結された出力軸5に正回転方向のトルクが作用する。
一方、第1モータ・ジェネレータ2で発電された電力は、第2モータ・ジェネレータ3に供給されてこれがモータとして機能するので、その出力トルクが変速機構6の変速比に応じて増幅されて出力軸5に伝達される。したがって、エンジン1が出力した動力の一部は、動力分配機構4を介して出力軸5に機械的に伝達され、かつ他の動力は電力変換を伴って出力軸5に伝達される。そして、動力分配機構4と変速機構6とにおいてトルクの増幅作用が生じることにより、出力軸5のトルクすなわち車両の駆動トルクを大きくすることができる。なお、この場合、出力軸5の回転数を変化させることなく、エンジン1の回転数を第1モータ・ジェネレータ2によって制御でき、こうすることによりエンジン1を最適燃費で運転することが可能である。
加速や登坂などのためにエンジン負荷が増大し、その回転数が増大すると、第1モータ・ジェネレータ2および第2モータ・ジェネレータ3の回転数が増大する。すなわち、第1モータ・ジェネレータ2の発電量が増大し、その電力が第2モータ・ジェネレータ3に供給されてこれが大きいトルクを出力するようになる。その状態を動力分配機構4および変速機構6についての共線図として図3に破線で示してある。この状態では、電力変換を伴う動力の伝達量が増大し、電気系統の負荷が増大する。そこで、モータ・ジェネレータ2,3の負荷が予め定めた判断基準値を超えて増大した場合には、機械直結減速モードに切り替えて動力伝達効率の低下を回避する。具体的には、クラッチ機構8を係合状態に切り替えてエンジン1と第2モータ・ジェネレータ3とを機械的に連結する。なお、その判定基準値は、実験あるいはシミュレーションを行って定めることができる。
この機械直結(パラレル)減速モードでの動作状態を図4に共線図で示してあり、これは上述したように、電気的な負荷が増大する低速高負荷時に設定される運転モードである。この機械直結減速モードでは、エンジン1が出力した動力が動力分配機構4におけるキャリヤCfおよびクラッチ機構8ならびに第2モータ・ジェネレータ3を介して変速機構6に直接入力され、さらに変速機構6での減速作用で増幅されトルクが出力軸5に伝達される。この場合、従前と同様に、第1モータ・ジェネレータ2で発電し、その電力で第2モータ・ジェネレータ3を力行させることもできる。したがってこの機械直結減速モードでは、電力変換を伴わずに出力軸5に対して動力を伝達でき、あるいは電力変換を伴う動力の伝達量を低減できる。そのため、低速高負荷時の動力伝達効率を向上させることができ、また電気系統の耐久性の向上やモータ・ジェネレータ2,3を小型化してハイブリッド駆動装置の全体としての構成の小型化を図ることができる。
また、機械直結減速モードを設定している状態でエンジントルクが増大した場合、それに応じて第2モータ・ジェネレータ3の出力トルクが低減される。この制御は、前述した電子制御装置12によって行うことができ、したがって電子制御装置12がこの発明の電動発電機制御手段に相当している。このようにエンジントルクが増大した場合、動力分配機構4から出力軸5に伝達されるトルクが増大するので、第2モータ・ジェネレータ3の出力トルクを低下させても、車両の駆動トルクを十分に確保することができる。また、第2モータ・ジェネレータ3の出力トルクを低下させることにより変速機構6に入力されるトルクが低下するので、変速機構6の小型化を図ることができる。なお、このようなエンジントルクの増大およびそれに伴う第2モータ・ジェネレータ3の出力トルクの低下の制御は、例えば第2モータ・ジェネレータ3の温度が高くなるなど、第2モータ・ジェネレータ3の負荷を低下させる状況が生じた場合に実行するように構成することができる。
ところで、機械直結減速モードを設定するためにクラッチ機構8を係合させる場合、同期制御を行うことが好ましい。この同期制御は、クラッチ機構8で係合させられる部材の回転数を一致させる制御であり、上記の図1に示す構成のハイブリッド駆動装置では、エンジン回転数を第2モータ・ジェネレータ3の回転数に一致させる。これは、具体的には、第1モータ・ジェネレータ2の回転数を変化させることにより、エンジン回転数を第2モータ・ジェネレータ3の回転数に一致させることにより実行することができる。このようなクラッチ機構8を係合させることによる機械直結減速モードを設定する制御と、その際の上記の同期制御とは、前述した電子制御装置12からの指令信号に基づいて行われ、したがって前記電子制御装置12がこの発明の第2モード設定手段に相当している。
前述した変速機構6における変速比は、ローブレーキBLoを係合させることにより大きくなり、これに対してハイブレーキBHiを係合させることにより相対的に小さくなる。したがって、前述したように車速が次第に増大して第2モータ・ジェネレータ3の回転数が増大した場合、言い換えれば中速状態になった場合、ローブレーキBLoを解放してハイブレーキBHiを係合させることにより、変速機構6における変速比を低下させることとしてもよい。その動作状態を図3に実線で示してある。
このいわゆる中速モードであっても、エンジン負荷が増大してその回転数が増大し、また車速が増大した場合、各モータ・ジェネレータ2,3の回転数が増大する。このような状態は、低速変速比を設定している状態で車速およびエンジン負荷が増大した場合と同様であり、したがって機械的な動力伝達の割合を増大させるために、機械直結減速モードを設定する。具体的には、クラッチ機構8を係合状態に切り替えてエンジン1と第2モータ・ジェネレータ3とをトルク伝達可能に連結する。その場合、前述した同期制御を実行し、運転モードの切り替えに伴うショックや出力トルク段差を回避もしくは抑制する。
高速変速比を設定している状態での機械直結減速モードを図5に共線図で示してある。前述したように、機械直結減速モードでは、エンジン1から動力分配機構4および第2モータ・ジェネレータ3ならびに変速機構6を介して出力軸5に伝達される動力割合が増大し、電力変換を伴う動力伝達の割合が低下するために、動力損失が少なくなり、動力の伝達効率が向上する。また、電気系統の負荷が低下してその耐久性を向上させ、またモータ・ジェネレータ2,3やハイブリッド駆動装置の小型化を図ることができる。
なお、機械直結減速モードに切り替える場合、ローブレーキBLoに替えてハイブレーキBHiを係合させることにより変速機構6における変速比を低速変速比から高速変速比に切り替え、その後にクラッチ機構8を係合させる。このようにすれば、高速変速比を設定することによりエンジン回転数が低下し、その状態で第2モータ・ジェネレータ3に連結するので、エンジン回転数が高くなることを抑制することができる。このような変速比の切り替えとクラッチ機構8の係合とを、順序をもって実行する手段がこの発明の第2モード設定手段に相当し、これには前記電子制御装置12が相当する。
上述したこの発明に係るハイブリッド駆動装置では、車速が更に増大すると、いわゆるオーバードライブ状態に制御して、エンジン回転数に対して出力軸5の回転数を高回転数にする。これは、第1モータ・ジェネレータ2の回転数を低下させ、あるいは負回転方向(エンジン1の回転方向とは反対に回転方向)に回転させることにより設定される。その場合、第1モータ・ジェネレータ2の負方向の回転は、第1モータ・ジェネレータ2に電力を供給してこれを逆転力行させることにより達成される。そして、その電力は、第2モータ・ジェネレータ3を発電機として機能させて得られる電力、あるいは蓄電装置の電力である。したがって、第2モータ・ジェネレータ3を発電機として機能させる場合には、動力循環を可及的に抑制して全体としての動力伝達効率を向上させるために、出力スプリットモードを設定する。
この出力スプリットモードは、エンジン1が出力した動力の一部を出力軸5に伝達するとともに、他の動力で第2モータ・ジェネレータ3を駆動して発電させ、その電力で第1モータ・ジェネレータ2を逆転力行させる運転モードである。したがって、出力スプリットモードは第1モータ・ジェネレータ2の回転数が負回転数の場合に設定される。そして、この出力スプリットモードは、変速機構6における各ブレーキBHi,BLoを解放させて(変速機構6をニュートラル状態にして)第2モータ・ジェネレータ3と出力軸5とを遮断し、かつクラッチ機構8を係合させて、エンジン1と第2モータ・ジェネレータ3とを連結することにより設定される。
このようなブレーキBHi,BLoの解放制御とクラッチ機構8の係合制御とは、前記電子制御装置12から出力される制御指令信号に基づいて実行され、したがって電子制御装置12がこの発明の第1モード設定手段に相当している。また、出力スプリットモードを設定するためにクラッチ機構8を係合させる場合、前述した機械直結減速モードを設定する場合と同様に、同期制御を実行し、運転モードの切り替えに伴うショックや出力トルクの段差を回避もしくは抑制することが好ましい。その同期制御は、前述した場合と同様に、電子制御装置12からの指令信号によって実行することができる。さらに、出力スプリットモードに切り替える場合、第1モータ・ジェネレータ2の回転数がゼロもしくはゼロに近い低回転数で変速機構6をニュートラル状態とし、その後に第2モータ・ジェネレータ3とエンジンとが回転同期した際にクラッチ機構8を係合させて出力スプリットモードに切り替える。このようにすることにより、第2モータ・ジェネレータ3のトルクが小さい状態でクラッチ機構8を係合させることになるので、切り替えショックや出力トルクの段差を抑制することができる。
高速巡航時における出力スプリットモードでの動作状態を図6に共線図で示してある。この状態では、エンジン1と第2モータ・ジェネレータ3とが一体となって回転し、これに対して第1モータ・ジェネレータ2が逆転力行してこれに連結されているサンギヤSfが逆回転する。その結果、リングギヤRfおよびこれに連結されている出力軸5が、エンジン1よりも高速で正回転する。すなわち、オーバードライブ状態となる。そのため、第2モータ・ジェネレータ3が発電機として機能するとしても、その回転数はエンジン回転数と同じであって特に高回転数になることはなく、またその電力で逆転力行する第1モータ・ジェネレータ2の回転数や出力トルクは低回転数で低トルクでよい。すなわち、電力変換を伴う動力伝達量が少なくなり、いわゆる機械的に伝達される動力の割合が多くなるので、動力伝達効率が良好になる。
これを前記クラッチ機構8を備えていないハイブリッド駆動装置と比較して説明すると、高速巡航時に前述した出力スプリットモードを設定していないと、図7の共線図に示しように第2モータ・ジェネレータ3を高速で正回転させて発電を行い、その電力を第1モータ・ジェネレータ2に供給してこれを逆転力行させ、その動力を動力分配機構4から出力軸5に伝達することになる。そのため、動力循環が生じ、動力損失が増大する。これに対して、この発明に係るハイブリッド駆動装置では、出力スプリットモードを設定してエンジン1の出力を出力軸5と第2モータ・ジェネレータ3とに分配(もしくは分割)し、これを出力軸5に合成して伝達するので、動力循環が生じず、その結果、動力の伝達効率あるいはエネルギ効率が向上する。
これを図で示すと図8のとおりである。図8は、出力スプリットモードおよび機械直結減速モードを設定できる本発明例と、出力スプリットモードおよび機械直結減速モードを設定できない比較例とについてシミュレーションを行って動力の伝達効率を求めた結果を示している。図8で実線が本発明例での動力伝達効率を示し、破線が比較例での動力伝達効率を示している。この図8から明らかなように、エンジン1と第2モータ・ジェネレータ3とを連結して高車速時に出力スプリットモードを設定し、また低中速時の高負荷状態で機械直結減速モードを設定することにより、動力の伝達効率が従来なく向上し、ひいては車両の燃費を向上させることができる。なお、図8における「●」印は、機械直結減速モードでの動力伝達効率を示している。
また、出力スプリットモードを設定できない構成では、電力への変換を伴う動力の伝達量が多くなるので、電気的な負荷が大きく、そのため電気系統の耐久性が低下したり、あるいはその構成が大容量化もしくは大型化する可能性がある。これに対して、この発明に係るハイブリッド駆動装置では電気的負荷が小さいので、モータ・ジェネレータ2,3を小型化し、また電気系統の耐久性を向上させることができる。
さらに、前述したようにクラッチ機構8を噛み合い式の係合機構によって構成し、高車速時に設定される出力スプリットモードでは変速機構6をニュートラル状態にするように構成すれば、出力スプリットモードで動力を伝達する状態を維持するのに特に動力を消費することがなく、この点でも動力の伝達効率を向上させることができる。
1…内燃機関(エンジン)、 2…第1モータ・ジェネレータ、 3…第2モータ・ジェネレータ、 4…動力分配機構、 5…出力軸、 6…変速機構、 8…クラッチ機構、 12…電子制御装置、 Cf,C…キャリヤ、 Sf,S1,S2…サンギヤ、 Rf,R…リングギヤ、 BHi…ハイブレーキ、 BLo…ローブレーキ。