JP4794593B2 - 新規乳酸菌を用いた発酵乳の製造方法 - Google Patents
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そこで、ビフィドバクテリウム属菌の生育性や保存生残性を改善することにより、生きているビフィドバクテリウム属菌を多く含有する発酵乳を製造し得るばかりではなく、生きているビフィドバクテリウム属菌が、製造直後と同様に、消費者が摂食する時点においても豊富に含有されている発酵乳を製造し得ることが期待できる。
一方、上記(2)の方法では、特定のビフィドバクテリウム属菌と特定の乳酸菌とからなる混合菌を用いることにより、増殖促進効果と生残性改善効果の両方が認められるものの、ビフィドバクテリウム・ブレーベ以外のビフィドバクテリウム属菌、例えば食品に汎用されているビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)については、一切記載がない。
また、本発明は、前記ビフィドバクテリウム属菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガム及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベである、前記発酵乳の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、前記ビフィドバクテリウム属菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガムATCCBAA−999及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベATCC15700である、前記発酵乳の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、前記乳酸菌が、前記ビフィドバクテリウム属菌、前記ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリスMCC−876(FERM P−21490)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、及び、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)であることを特徴とする、前記いずれかの発酵乳の製造方法を提供するものである。
また、本発明は、前記いずれかの発酵乳の製造方法により製造された発酵乳を提供するものである。
(1)は、発酵性に関するものである。10%(W/W)還元脱脂粉乳培地で、25〜30℃の温度範囲で16時間培養した時に、培地を凝固させることができるほど増殖が早く、強い発酵性を有する乳酸菌であれば、発酵乳製造時に、ビフィドバクテリウム属菌(以下、ビフィズス菌ということがある。)の生育性等をより効果的に改善することができるためである。
本発明のラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリス菌種においては、10%(W/W)還元脱脂粉乳培地で、ビフィドバクテリウム・ロンガムと混合培養した場合に、pHが4.4〜4.6に達した時に急冷して10℃で2週間保持した場合の、ビフィドバクテリウム・ロンガムの生残率を、本発明のラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリス菌種と混合培養しなかった場合の生残率の3倍以上、好ましくは4.5倍以上とすることができるような保存生残性促進性を有する乳酸菌であることが好ましい。特に、ビフィドバクテリウム・ロンガムと混合培養した場合に、pHが4.4〜4.6に達した時に急冷して、10℃で2週間保持した場合の、ビフィドバクテリウム・ロンガムの生残率を30%以上、好ましくは45%以上とすることができるような保存生残性促進性を有する乳酸菌であることがより好ましい。
1.菌株の取得
本発明者らは、前記の性質を有する菌株を自然界から取得すべく、日本国内の自然界から採集したサンプルを嫌気性希釈液(1980年叢文社発行、光岡知足著「腸内菌の世界」322ページ。以下、参考文献1と記載する。)で希釈し、Briggs liver broth(前記参考文献1、319ページ)の平板に塗布し、30℃で嫌気培養した。そして得られたコロニーの中で連鎖球菌の形態を示し、かつ塗布標本の顕微鏡観察によりグラム陽性である菌を釣菌した。該釣菌した菌を、BL寒天培地平板に画線塗布し、前記と同様の方法で嫌気培養を反復し、純粋単離された菌株を得た。これらの菌株を下記の方法を用いて、まず、10%(W/W)還元脱脂粉乳培地中での発酵試験を行い、優れた発酵性を有する菌株を20株得た。続いて、ビフィドバクテリウム・ロンガムとの混合培養試験を行い、pHが4.4〜4.6に達した時に、ビフィドバクテリウム・ロンガムの菌数を5×108CFU/g以上とすることのできる生育促進性と、10℃で2週間保持した場合の、ビフィドバクテリウム・ロンガムの生菌数を1×107CFU/g以上とすることのできる保存生残性促進性を有する菌株を2株取得した。該2菌株はそれぞれ、MCC−876、MCC−880と名付けられた。
前記2菌株の菌学的性質を、表1及び表2に示す。比較対象として、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリスATCC9625(=NCIB8139)株、及び特許文献2に記載のラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチスのタイプストレインATCC19435株の菌学的性質も示した。なお、菌学的性質を測定するための試験は、バージェイズ・マニュアル・オブ・システマティック・バクテリオロジー(Bergey's Manual of Systematic Bacteriology、Peter H. A. Sneath編、第2巻、Williams and Wilkins Company、1986年)にほぼ従って行った。また、糖の発酵性は、光岡の糖発酵性用培地(1974年、光岡知足著「乳酸菌の細菌学」、臨床検査18、1163〜1172ページ)を用いて、28種類の糖について試験を行った。
10%(W/W)還元脱脂粉乳培地を95℃で30分間殺菌し、各菌株のスターターを3%接種し、25及び30℃の各温度で16時間培養した。得られた培養液を急冷し、凝固状況、pH、及び含有される乳酸菌数を測定した。乳酸菌数の測定は、市販されているBCP加プレートカウント寒天培地(栄研機材社製)平板で行った。測定結果を表3に示す。
なお、対照株として、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリスATCC9625株及びラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチス タイプストレインATCC19435株を用いた。
一方、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリスATCC9625株又はラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチス タイプストレインATCC19435株を用いた場合には、何れの温度条件においても、pHが5.5以上であり、培地は凝固しなかった。また、本発明で用いられるラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリス菌種と比較して、特に30℃において、乳酸菌数が顕著に少なかった。
(1)ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999株との混合培養試験
本発明で用いられるラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリス菌種の、ビフィズス菌に対する生育促進性及び保存生残性促進性を、ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999株を用いて確認した。
対照株として、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリスATCC9625株及びラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチス タイプストレインATCC19435株を用いた。
まず、後記実施例1に記載の方法で、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリスMCC−876株及び880株のカルチャー、及び、ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999株のカルチャーを調製した。
また、0.2%(W/W)酵母エキス(Difco社製)入り10%(W/W)還元脱脂粉乳培地1000mLを90℃で30分間殺菌し、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリスATCC9625株のカルチャーを30mL接種し、25℃で16時間培養して、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリスATCC9625株のカルチャーを調製した。ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチス タイプストレインATCC19435株のカルチャーも同様に調製した。
一方、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリスATCC9625株又はラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチス タイプストレインATCC19435株を用いた発酵乳は、発酵が進まず、発酵後pHが5.0以上であり、10℃での保存試験が不可能であった。また、発酵終了直後のビフィズス菌数もおよそ1×108CFU/gであり、本発明で用いられるラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリス菌種と比較して、顕著に少なかった。
本発明で用いられるラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリス菌種の、ビフィズス菌に対する生育促進性及び保存生残性促進性を、ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999株とビフィドバクテリウム・ブレーベ タイプストレインATCC15700株を用いて確認した。
まず、後記実施例1に記載の方法で、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリスMCC−876株のカルチャー、及び、ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999株のカルチャーを調製した。
また、後記実施例9に記載の方法で、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)及びラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)の混合カルチャーを調製した。
さらに、0.2%(W/W)酵母エキス入り11%(W/W)脱脂粉乳培地を90℃で30分間殺菌し、ビフィドバクテリウム・ブレーベ タイプストレインATCC15700株のスターターを10%接種し、37℃でpHが4.6になるまで培養して、ビフィドバクテリウム・ブレーベ タイプストレインATCC15700株のカルチャーを調製した。
一方、対照として、10%(W/W)還元脱脂粉乳培地を90℃で10分間殺菌し、上記のように調整したビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999株のカルチャー1.5%又はビフィドバクテリウム・ブレーベ タイプストレインATCC15700株のカルチャー1.5%と、ストレプトコッカス・サーモフィルス及びラクトバチルス・ブルガリクスの混合カルチャー0.4%を接種し、37℃でpHが4.6になるまで培養して得た発酵乳のビフィズス菌数を同様に測定した。測定結果を表5に示す。
また、10℃で2週間保存後のビフィズス菌生残率は、ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999株の場合、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリスMCC−876株と混合培養しなかった場合には約13%であったのに対して、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリスMCC−876株と混合培養した場合には約60%であった。つまり、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリスMCC−876株と混合培養することにより、10℃で2週間保存後のビフィズス菌生残率は4.5倍以上改善された。
一方、ビフィドバクテリウム・ブレーベ タイプストレインATCC15700株の場合には、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリスMCC−876株と混合培養しなかった場合の10℃で2週間保存後のビフィズス菌生残率は約0.02%であったのに対して、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリスMCC−876株と混合培養した場合には約5%であり、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリスMCC−876株と混合培養することにより、10℃で2週間保存後のビフィズス菌生残率は著しく改善されていた。
なお、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリスMCC−876株に代えて、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリスMCC−880株を用いた場合にも同様の結果が得られた。
まず、上記4(2)記載の方法で、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリスMCC−876株のカルチャー、ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999株のカルチャー、及び、ストレプトコッカス・サーモフィルス及びラクトバチルス・ブルガリクスの混合カルチャーを調製した。
一方、対照として、10%(W/W)還元脱脂粉乳培地を90℃で10分間殺菌し、上記のように調整したビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999株のカルチャー1%と、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・ラクチスとラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリスの混合物「EZAL MA14」(Rhodia社製)2%を接種し、38℃でpHが4.6になるまで培養して得た発酵乳のビフィズス菌数を同様に測定した。なお、「EZAL MA14」は、特許文献1に記載の「EZAL MR014」(Rhodia社製)に相当する混合物である。
10%(W/W)還元脱脂粉乳培地1000mLを90℃で30分間殺菌し、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリスMCC−876株のシードカルチャーを30mL接種し、25℃16時間培養した。一方、0.2%(W/W)酵母エキス入り11%(W/W)脱脂粉乳培地1000mLを90℃で30分間殺菌し、ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999株のシードカルチャーを100mL接種し、37℃6時間培養した。
これとは別に、脱脂粉乳、全粉乳及び蔗糖等の原料を混合溶解し、乳脂肪0.5%(W/W)、無脂乳固形分8.0%(W/W)、蔗糖5.0%(W/W)、ペクチン0.2%(W/W)からなるベース50Lを、90℃で10分間殺菌し,40℃に冷却した。該殺菌したベースに、前記の通り前培養を行ったラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリスMCC−876株のカルチャー50mLとビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999株のカルチャー500mLを接種し、37℃16時間培養して発酵乳を得た。該発酵乳を直ちに攪拌冷却し、冷却発酵乳を15MPaの圧力で均質化し、200mL容のガラス容器に充填し、密封し、ドリンクヨーグルトを得た。得られたドリンクヨーグルトは乳酸酸度0.7%、pH4.6であり、6.0×108CFU/gのビフィズス菌を含有していた。このドリンクヨーグルトを10℃で21日間保存した時のビフィズス菌数は3.2×108CFU/gであり、生残率は53%であった。
10%(W/W)還元脱脂粉乳培地1000mLを90℃で30分間殺菌し、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリスMCC−880株のシードカルチャーを30mL接種し、25℃16時間培養した。一方、0.2%(W/W)酵母エキス入り11%(W/W)脱脂粉乳培地1000mLを90℃で30分間殺菌し、ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999株のシードカルチャーを100mL接種し、37℃6時間培養した。また、10%(W/W)還元脱脂粉乳培地1500mLを90℃で30分間殺菌し、ストレプトコッカス・サーモフィルス(ハンゼン社製)とラクトバチルス・ブルガリクス(ハンゼン社製)の混合カルチャー50mLを接種し、37℃5時間培養した。
これとは別に、乳脂肪3.0%(W/W)、無脂乳固形分9.0%(W/W)からなる生乳50Lを70℃に加温し、15MPaの圧力で均質化した後、90℃で10分間殺菌し、40℃に冷却した。該殺菌したベースに、前記の通り前培養を行ったラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリスMCC−880株のカルチャー500mL、ビフィドバクテリウム・ロンガムATCC BAA−999株のカルチャー500mL、及びストレプトコッカス・サーモフィルスとラクトバチルス・ブルガリクスの混合カルチャー5mLを接種し、37℃7時間培養した後、直ちに冷却した。得られた発酵乳は乳酸酸度0.7%、pH4.5であり、6.8×108CFU/gのビフィズス菌を含有していた。この発酵乳を10℃で21日間保存した時のビフィズス菌数は3.8×108CFU/gであり、生残率は56%であった。
Claims (5)
- 乳酸菌として、ビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属菌と、ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリスMCC−876(FERM P−21490)を用いて発酵させることを特徴とする、発酵乳の製造方法。
- 前記ビフィドバクテリウム属菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガム(Bifidobacterium longum)及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベ(Bifidobacterium breve)である、請求項1に記載の発酵乳の製造方法。
- 前記ビフィドバクテリウム属菌が、ビフィドバクテリウム・ロンガムATCCBAA−999及び/又はビフィドバクテリウム・ブレーベATCC15700である、請求項1に記載の発酵乳の製造方法。
- 前記乳酸菌が、前記ビフィドバクテリウム属菌、前記ラクトコッカス・ラクチス・サブスピーシーズ・クレモリスMCC−876(FERM P−21490)、ストレプトコッカス・サーモフィルス(Streptococcus thermophilus)、及び、ラクトバチルス・ブルガリクス(Lactobacillus bulgaricus)であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか記載の発酵乳の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか記載の発酵乳の製造方法により製造された発酵乳。
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