本発明は、超音波やレーザ等を用いて自車と車外障害物とが衝突を判定する衝突判定装置の技術分野に属する。
この種の技術としては、ミリ波や超音波を物標に向かって送信し、自車と物標との相対速度及び距離を算出して、この相対距離及び相対速度に基づいて自車と物標とが衝突回避可能であるか否かを判定するものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
特開2003−320866号公報
しかしながら上記従来技術では、自車と車外対象物である物標との相対速度はドップラ周波数を用いて計測しているため、自車と物標との距離が短い場合、受信信号の受信強度が大きくなる。これに伴い、受信強度は受信機等の許容強度を超えてしまい波形の変曲点付近の情報が欠落する現象(以下、クリップ現象と記載する)が生じることがある。よって、受信波の周波数を正しく検出することができず、相対速度を正確に算出することができない虞があるといった問題があった。
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、その目的とするところは、自車と車外対象物とが衝突するか否かを正しく判定することができる衝突判定装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明では、車外対象物に対して送信波を送信する送信器と、前記送信器の送信する送信パワーを設定する送信パワー設定手段と、前記車外対象物からの前記送信波に対する反射波を受信する受信器と、前記送信器が送信波を送信してから、前記受信器が反射波を受信するまでの送受信時間を算出する送受信時間算出手段と、前記送受信時間から自車と前記車外対象物との距離を算出する距離算出手段と、前記反射波の波形の振幅の中心を推定し、前記振幅の中心における前記反射波の周期から周波数を算出し、前記送信波の周波数と前記反射波の周波数とを用いて前記自車と前記車外対象物との相対速度を算出する相対速度算出手段と、前記自車と前記車外対象物との前記距離と前記相対速度に基づいて前記自車と前記車外対象物との衝突判定を行う衝突判定手段と、を備えた衝突判定装置において、前記反射波の受信パワーを検出する受信パワー検出手段と、前記送信波の周波数に対する前記反射波の高調波成分の割合であるひずみ率と、前記反射波の積分値と、の2つの信号から、前記車外対象物の種類を判別する種類判別手段と、
を設け、前記送信パワー設定手段は、前記種類判別手段により判別した前記車外対象物の種類に基づいて前記送信パワーを設定するとともに、前記反射波の受信パワーが大きくなるほど、前記送信波の送信パワーを小さくするようにした。
本発明の乗員保護装置にあっては、反射波の受信パワーが大きくなるほど、送信波の送信パワーを小さくするようにした。よって、受信パワーを小さくすることが可能となり、受信機側で反射波形のクリップ現象を回避することできる。また、受信した反射波の周波数を正しく検出することが可能となり、自車と車外対象物との相対速度を正確に算出することで、自車と車外対象物との衝突を正しく判定できる。
以下、本発明の衝突判定装置を実現する最良の形態を、実施例1乃至実施例5に基づいて説明する。
まず、構成を説明する。
図1は、本発明の衝突判定装置を搭載した乗員保護装置1の構成を示す図である。乗員保護装置1は、超音波を送受信する超音波センサ(送信器、受信器)10と、超音波センサ10からの情報を処理するコントローラ20と、コントローラ20と接続され、衝突時の乗員保護をはかる乗員拘束装置30とを備える。乗員拘束装置30は、例えばエアバッグ、シートベルト、シート、ヘッドレスト等を有する。
超音波センサ10は、超音波を車外に向けて発信すると共に、送信した超音波のうち、車外対象物にて反射して戻ってくる反射波の受信も行う。ここで、車外対象物とは、例えば、車両前方又は後方に存する柔らかく小さな自車と衝突しても自車の乗員に対する加害性が低い新聞等(以下、低加害性障害物と称す)、又は車、壁等の固く大きな自車と衝突すると自車の乗員に対する加害性が高い障害物である。図2は、超音波センサ10の設置状態を示す車両後方図である。図2において、超音波センサ10は車体100の後方側面に取り付けている。具体的には、超音波センサ10は、バンパフェイシア101の中央付近に設けている。
図1に戻り、コントローラ20について説明する。コントローラ20は、超音波センサ10及び乗員拘束装置30の制御を行う。コントローラ20は超音波センサ10との間で信号の送受信をする入出力部21と、乗員拘束装置30に対して作動信号を出力する作動信号出力部22と、超音波センサ10及び乗員拘束装置30への制御信号を演算するCPU23と、CPU23の演算に必要な情報を保存するRAM24とROM25とを有する。
入出力部21は、例えば一般的なA/D変換機能を有する電子装置や、デジタル信号を受波できる通信ポートを含む。
CPU23は、送受信指令機能、衝突検出機能、種類判別機能及び拘束判断機能を有している。
CPU23の送受信指令機能は、超音波センサ10に対し、超音波の送信指令、受信指令をする機能である。このため、超音波センサ10は、CPU23からの指令に基づいて、超音波を送信及び受信する構成となっている。
CPU23の衝突検出機能とは、自車と車外対象物との距離や相対速度等を求め、将来的に自車が車外対象物と衝突するか否かを検出する機能である。衝突の可能性を検出した場合、CPU23は、次に述べる種類判別機能により車外対象物の種類を判別する。
CPU23の種類判別機能とは、超音波センサ10により受信した反射波の波形から車外対象物の種類を判別する機能である。なお、種類判別機能は、反射波の波形の積分値及びひずみ以外の要素から、車外対象物の種類を判別するようにしても良い。
CPU23の拘束判断機能とは、種類判別機能により判別された車外対象物の種類に応じて、乗員を拘束すべきか否かを判断する機能である。具体的には種類判別機能により判別した車外対象物の種類が車両や壁であった場合、CPU23の拘束判断機能は衝突時の衝撃が大きいと考えられるため、乗員を拘束保護すべきと判断する。一方、種類判別機能により判別した車外対象物の種類が車両や壁でない場合、CPU23の拘束判断機能は衝突時の衝撃が比較的小さいと考えられるため、乗員を拘束保護する必要がないと判断する。
また、ROM25にはCPU23の各機能に対応したプログラムを記憶している。このため、CPU23は、車両の電源を投入すると、ROM25からプログラムを読み込んで、各機能を実行する。
作動信号出力部22は、CPU23の拘束判断機能によって乗員を拘束保護すべきと判断すると、CPU23からの作動信号を乗員拘束装置30へ出力する構成となっている。
乗員拘束装置30は、作動信号の受信により作動して乗員を拘束するものである。また、乗員拘束装置30は、エアバッグ、シートベルト、シート、ヘッドレスト等の拘束手段を含んでおり、これらによって、衝突予測時に乗員を拘束等する構成となっている。なお、乗員拘束装置30は、衝突による衝撃を吸収すべく、車体100などの部品を移動させるデバイスであっても良いし、車体100などの部品の衝撃吸収特性を変化させるデバイスであっても良い。
また、コントローラ20は、既存のエアバッグやシートベルト装置のために用いるコントローラと共用するようにしても良い。さらに、コントローラ20は、車外対象物までの距離及び車外対象物の位置情報を運転者に報知するための障害物検出装置や、その距離情報を表示部又は警報器を通じて報知する提示装置などに接続しても良い。さらに、超音波センサ10は、自車後方の障害物との間の距離を超音波により検出するバックソナーや、コーナー部から所定距離以内に存する車外対象物を超音波により検出するコーナーソナーと共用しても良い。
次に、作用を説明する。
[衝突判定制御処理]
図3はコントローラ20において行われる処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS1において、送信する超音波の送信パワーを設定する。なお、本システム立ち上がり直後の1サイクル目においては、送信パワーは予めコントローラ20に記憶させた初期値で決定する。
ステップS2では、超音波を送信し、送信が終了すると、ステップS3へ移行して、ステップS2で送信した超音波の反射波の受信を開始する。
ステップS3では、受信した反射波の受信パワー(振幅)を図示しない増幅器で増幅して、各装置へ受信パワーの情報を出力する。このステップS3は、本発明の受信パワー検出手段に相当する。
ステップS4では、自車と車外対象物との距離、相対速度及び相対加速度を算出する。なお、距離は、超音波センサ10が超音波を送信してから、反射波を受信するまでの時間(以下、送受信時間と記載する)を求め、送受信時間から算出する。また、相対速度は、送信波周波数と反射波周波数とのドップラ周波数より算出し、前回のサイクルで受信した反射波から算出した相対速度と、今回のサイクルで受信した反射波から算出した相対速度との変化から、相対加速度が求める。なお、このステップS4は、本発明の送受信時間算出手段、距離算出手段、相対速度算出手段、相対加速度算出手段に相当する。
ステップS5では、自車と車外対象物との衝突判定を行い、衝突乗員拘束装置30を作動させるか否か判断して、作動させると判断した場合にはステップS6へ移行し、作動させないと判断した場合にはステップS9へ移行する。このステップS5の衝突判定は、本発明の衝突判定手段に相当する。
ステップS6では、車外対象物の種類が低加害性障害物、壁、車のいずれであるかを判別し、ステップS7へ移行する。
ステップS7では、ステップS6で判断した車外対象物の種類が車又は壁であるか否かを判定して、車又は壁の場合にはステップS8へ移行し、車又は壁でない場合にはステップS9へ移行する。
ステップS8では、乗員保護の必要が想定されるシーンであるため、乗員拘束装置30に作動を指令する。
ステップS9では、次に送信する送信波が車外対象物に反射するときの自車と車外対象物との距離を予測し、ステップS10へ移行する。
ステップS10では、ステップS9で予測した自車と車外対象物との距離に応じて、次回送信する送信パワーを決定し、ステップS1へ戻る。このステップS10は、本発明の送信パワー設定手段に相当する。
[送信パワー設定制御作用]
次に本発明の主要構成要素である送信パワー設定手段について詳述する。
本実施例においては、自車と車外対象物との距離や相対速度を求め、この距離や相対速度から乗員拘束装置30を作動させるか否かを判断している。自車と車外対象物との相対速度の算出は送信波の周波数と反射波の周波数との変化から算出する。
上記判断を用いる際、自車と車外対象物との距離が短い場合、もしくは送信波の振幅が大きい場合には、受信した反射波を図示しない増幅器によって増幅した後の波形は、クリップ現象が発生する。クリップ現象とは、図4に示すように、振幅の変曲点付近で増幅前のプロフィールを再現できなくなる現象を示している。図5は、図4に示した波形を時間軸方向に一部を拡大した図である。受信した反射波の変曲点付近がクリップして正確な振幅の変曲点が推定できないために、振幅の中心の位置が正確に推定できない。
そのため、図5に一点鎖線で示す真の振幅の中心とは異なる時間軸の位置を振幅の中心と推定してしまい、観測した周波数は、図6に示すように波形の1/2周期の時間が半周期毎に異なる2種類の時間となる。この2種類の1/2周期の時間によって、高い周波数と低い周波数の2種類を計算する事になるが、この現象はすなわち2種類の相対速度を計算する事になり、算出した相対速度にバラツキが発生する。上記の原因により、増幅後の反射波の波形がクリップすると正確な相対速度を測定することができない。
そこで本実施例では、反射波の波形がクリップしないように、送信する送信波の送信パワーを可変に制御するようにした。送信パワーや受信パワーは、送信波や受信波の振幅や周波数等によって決定する。
なお、本実施例では周波数変化によって自車と車外対象物との相対速度を算出しているため、送信パワーは送信波及び受信波の周波数を固定し、送信波の振幅の大きさで制御している。よって、以下では、送信パワー及び受信パワーの大小とは、送信波及び受信波の振幅の大小を示すものとする。
更に本実施例では、送信する送信波が車外対象物に反射するときの自車と車外対象物との距離を推定するようにした。すなわち、この距離に応じて増幅後の反射波の波形がクリップしないように、送信波のパワー、すなわち送信波の振幅を制御する。
本実施例では、送信パワー設定手段はコントローラ20において行われる図3のステップS10に相当する。以下、ステップS10で行われる処理について詳述する。
予めコントローラ20において、図7に示すような、距離―パワー線図を有している。図7に示す送信パワーSは、自車と車外対象物との距離に応じて増幅後の反射波の波形がクリップしない値を示す。図7では、自車と車外対象物との距離は、送受信時間に比例するので、横軸は送受信時間tdで示している。
このときの自車と車外対象物との距離は、次回送信する送信波が車外対象物に反射するときの自車と車外対象物との予測距離L[0]を示し、送受信時間td[0]は、自車と車外対象物との距離L[0]のときの送受信時間である。自車と車外対象物との予測距離L[0]の算出については後述する。
次回送信する送信パワーSは、送受信時間t
dにより下記の式(1)によって求める。
ここで、S
0は超音波センサの受信回路に一般的に用いる増幅器の特性に依存して決定する定数である。送信パワーは時間の4乗に比例する関数とする事が好ましい。これは、波は伝播する距離の4乗に比例して減衰する原理に基づくものである。ただし、図7に示す距離―パワー線図は、超音波センサ10の特性や周辺回路の特性によって変更する事も可能である。この距離―パワー線図は自車と車外対象物との距離に応じて、増幅器を通過した後の反射波の波形がクリップしてしまい、初期の波形形状と異なる形状とならない上限の値を反射波として受信するに設定する事が肝要である。
上記では、自車と車外対象物との距離を予測して、その距離のときの送受信時間に対応した送信パワーを決定する図7のような距離―パワー線図を用いている。これを、前回の受信した受信波の受信パワーが大きくなるほど、次回送信する送信波の送信パワーを小さくするような受信パワー―送信パワー線図を用いて、受信パワーに対応した送信パワーを決定するようにしても良い。
以上の作用によって、反射波の波形がクリップしないように送信する送信波の送信パワーを可変に制御するので、周波数正確に検出することが可能となり、自車と車外対象物との相対速度をより正確に求めることができる。
[距離・相対速度算出]
コントローラ20において図3のステップS4で行われる、自車と車外対象物との距離と相対速度とを算出する方法について説明する。
図8は超音波センサ10が超音波を送信してから受信するまでの送受信時間t
dを説明する図である。この送受信時間t
dに基づいて自車と車外対象物との距離Lを式(2)に基づいて計算する。
ここで、cは音速を示す。
図9は、超音波センサ10が受信した反射波を示す図である。
自車と車外対象物との相対速度を計算する為には、反射波の振幅の変曲点から振幅の中心(図9では時間軸)を求める。反射波が時間軸と交わる時間を算出して、反射波の1/2周期の時間を算出する。この1/2周期の値を2倍にして周期Tとし、次の式(3)より周波数fを算出する。
周波数fを用いて、次の式(4)により相対速度Vを算出する。
ここで、f
dはドップラ周波数である。このドップラ周波数とは、送信波の周波数と反射波の周波数との差である。
[予測距離算出]
次に、コントローラ20において図3のステップS9で行われる、次回送信する送信波が車外対象物に反射するときの自車と車外対象物との距離を予測する方法について説明する。
前回受信した反射波から、式(2)及び式(4)より、自車と車外対象物との距離L[-1]及び相対速度V[-1]を算出する。また前々回受信した反射波から算出した自車と車外対象物との相対速度V[-2]から相対加速度aを算出する。よって、次に送信する送信波が車外対象物に反射するときの自車と車外対象物との距離L[0]は、次の式(5)によって算出する。
ここでt
d[-1]は、前回の送受信時間である。
[拘束判断]
次に、コントローラ20において図3のステップS5で行われる乗員拘束装置30を作動させるか否かの判断方法について述べる。
乗員拘束装置30を作動させるか否かの判断は、従来から行われている方法を用いれば良い。例えば、CPU23が算出した自車と車外対象物との相対距離Dが、次の式(6)の条件を満たした場合は、乗員拘束装置30を作動させると判断する。
ここで、vは自車と車外対象物との相対速度、gは緊急制動時の減速度を示す。
また他の例としては、乗員拘束装置30が十分な効果を発揮出来る程度まで作動する為に必要な時間をt
mとすると、次の式(7)の条件を満たした場合には、乗員拘束装置30を作動させると判断する。
なお、本実施例では式(6)及び式(7)を共に満たした場合、乗員拘束装置30を作動させると判断するようにしたが、いずれか1つの条件を用いて判断しても良いし、他の条件も考慮して3つ以上の条件を用いて判断しても良い。
[種類判別]
次に、コントローラ20において図3のステップS6で行われる車外対象物の種類を判別する方法について説明する。
(反射波の時間積分)
図10はエンベロープの算出を示す図であり、図10(a)はエンベロープ処理前の様子を示し、図10(b)はエンベロープ処理後の様子を示している。超音波センサ10は送信波を1波長だけでなく数波長に渡って発信するため、図10(a)に示すように反射波も同様に数波長に渡って受信することとなる。コントローラ20は、受信した数波長の反射波について、1波長ごとにピーク点を検出し、各ピーク点を結んでいくことにより、図10(b)に示す波形を得る。なお、以下の説明において図10(b)のように反射波をエンベロープ処理した後の滑らかな波形をエンベロープと称す。
エンベロープ処理の後、コントローラ20は、次の式(8)によってエンベロープの時間積分値を算出する。具体的にはCPU23が時間積分値を以下の計算式により求める。
ここで、y(t)はエンベロープを数化したものであり、時間0は反射波を受信し始めた時間であり、時間t1反射波を受信し終えた時間である。式(8)により反射波の受信パワーを計算する。
図11は、車外対象物ごとの反射波のエンベロープを示す図である。図11(a)は車外対象物が車である場合のエンベロープ処理前の波形を示し、図11(b)は車外対象物が車である場合のエンベロープ処理後の波形を示している。また、(c)は車外対象物が低加害性障害物である場合のエンベロープ処理前の波形を示し、(d)は車外対象物が低加害性障害物である場合のエンベロープ処理後の波形を示している。(e)は車外対象物が壁である場合のエンベロープ処理前の波形を示し、(f)は車外対象物が壁である場合のエンベロープ処理後の波形を示している。また図12は、車外対象物ごとのエンプロープの積分値と時間との相関を示す説明図である。
図11(a)及び(b)に示すように、車外対象物が車である場合、反射波の強度は比較的強い状態で長く継続する傾向にある。これは車両など奥行きがある車外対象物の場合、奥行き方向の複数の反射点からの波が重なり合うためである。このため、図12の実線で示す車外対象物が車であるときのエンベロープ波形の積分値は、高い値を示すこととなる。
これに対して、車外対象物が新聞等の低加害性障害物や壁である場合、図11(c)、(d)、(e)、(f)に示すように、反射波の強度は強い状態が継続しにくい傾向にある。これは、奥行きが少なく反射点からの波の重なり合いが殆どないためである。このため、図12の点線で示す車外対象物が低加害性障害物であるとき、及び一点鎖線に示す車外対象物が壁であるときのエンベロープ波形の積分値が示すように、車外対象物が車であるときに比べて低い値を示す。
(ひずみ率)
図12に示すように車外対象物が車である場合、エンベロープの時間積分値は他の低加害性障害物や壁と大きく異なるので、エンベロープの時間積分値を用いて車を判別することはできる。一方、車外対象物が低加害性障害物である場合のエンベロープの時間積分値と、車外対象物が壁である場合のエンベロープの時間積分値とは近い値となる。そこで、確実に低加害性障害物と壁との判別を行うために、反射波の波形のひずみ率を用いる。
送信波の周波数(基本周波数)が、例えば50[kHz]あった場合には50[kHz]の周波数成分に対して、自車と車外対象物との相対速度を有している場合、受信した反射波はドップラ効果により発生するドップラシフトした基本周波数以外に、様々な高調波成分が含む。特に、車外対象物の反射率や受信回路におけるアンプによるクリッピングの影響等により、反射波の信号はひずみ成分と呼ばれる正弦波の高調波成分を含む。
図13は、車外対象物ごとの反射波の波形と、この反射波の波形のひずみ率を示す図である。図13に示すように、車外対象物が低加害性障害物、車、壁のいずれであるかに応じて、受信した反射波の波形のひずみが異なってくる。具体的には、壁など反射率が高い車外対象物からの反射波は受信パワーが強い。このため、例えば受信回路の増幅器を通過した後の信号波形は増幅器の入出力上限値を超えて上限値以上の値がカットされる。よって、図13の車外対象物が壁である場合に示すように、波形は、矩形に近いひずみを有したものとなる。逆に低加害性障害物や車両など反射率がそれほど大きくない車外対象物からの反射波は強度が低い。このため、増幅器の入出力上限値以上の値がカットされることがなく、図13の車外対象物が低加害性障害物及び車である場合に示すように、波形は正弦波に近いものとなる。
このように、車外対象物が壁である場合にはひずみが大きくなる。ここで、ひずみの大小は、基本周波数に対する高調波成分の割合から求めることができる。すなわち、矩形波は或る基準となる周波数に高調波成分を足し合わせることで再現できる。また、反射波の形状は、高調波成分の割合が大きい程、矩形状となり、割合が小さいほど正弦波に近くなる。このため、増幅器の上限値以上の値がカットされて矩形に近い形状となった波形は、基準となる周波数に対する高調波成分の割合を求めることで、ひずみの度合い(ひずみ率)を知ることができる。
ひずみ率は次の式(9)から求める。
ここで、|E
1|は基本周波数(送信周波数)の実効値、|E
2|は第2高調波の実効値、|E
n|は第n高調波(nは3以上の整数)の実効値である。
なお、波形のひずみは、クリッピング以外の要素によって生じることがある。すなわち、車外対象物が動くものである場合、車外対象物にて反射した反射波はドップラ効果により送信時の周波数と異なった周波数を有することとなる。そして、送信時の周波数と異なった周波数が送信時の周波数に合成されることで、ひずみが生じることがある。
図14は、反射波のエンベロープの時間積分値と波形のひずみ率とから判別する対象物の種類を示す図である。図14に示すように、エンベロープの積分値が大きい場合、車外対象物が車であると判別している。エンベロープの積分値が小さい場合であって、受信波のひずみ率が大きい場合、車外対象物が壁であると判別している。また、エンベロープの積分値が小さい場合であって、受信波のひずみ率も小さい場合、車外対象物が低加害性障害物であると判別している。なお、エンベロープの積分値の大小判定は、車外対象物が車であることと低加害性障害物又は壁であることとを確実に判別できる閾値を設けて判定すれば良いし、受信波のひずみ率の大小判定は、車外対象物が壁であることと車又は低加害性障害物であることとを確実に判別できる閾値を設けて判定すれば良い。
上記のように車外対象物の種類が判別し、コントローラ20において図6のステップS7では、その種類によって乗員拘束装置30を作動させるか否かを再度判定する。すなわち、車外対象物が車や壁である場合には、乗員保護の必要が想定されるシーンであると判断し、ステップS8で乗員拘束装置30に作動を指令する。
図15は、反射波のエンベロープの時間積分値及び波形のひずみ率と、乗員拘束装置30の作動及び非作動の関係を示した図である。図15に示すように、エンベロープの積分値が大きい場合、乗員拘束装置30を作動させる。また、エンベロープの積分値が小さい場合であって、受信波のひずみ率が大きい場合、乗員拘束装置30を作動させる。一方、エンベロープの積分値が小さい場合であって、受信波のひずみ率も小さい場合、乗員拘束装置30を作動させない。
[車外対象物接近時の制御例]
例えば、自車に対して車外対象物が接近している場合に行われる制御の一例を下記に示す。
図16は、自車と車外対象物との距離に応じた送信波の送信パワー制御を示す図である。例えば、現在の送信パワーをS2と設定する。この送信パワーS2で送信波を送信して、反射波を受信し、この受信した反射波から自車と車外対象物との距離と、相対速度と、相対加速度とを算出する。自車と車外対象物との距離と、相対速度と、相対加速度とに応じて、乗員拘束装置30を作動させるか否かの判断を行う。乗員拘束装置30を作動させないと判断した場合、送信パワーS2で送信した送信波の反射波から算出した自車と車外対象物との距離と、相対速度と、相対加速度とから、次に送信波を送信したときの自車と車外対象物との距離を予測する。
例えば、予測した自車と車外対象物との距離における送受信時間がtd1とすると、次のサイクルで送信する送信波は、図16の距離―パワー線図に対応する送信パワーS1で送信する。この作用によって、次のサイクルで受信した反射波を増幅器によって増幅した後の波形が、クリップ現象を生じることを回避できる。
次に、効果を説明する。
(1)車外対象物に反射して戻ってくる反射波の受信パワーが大きくなるほど、送信波の送信パワーを小さく設定するようにした。よって、送信波の送信パワーに依存した受信波の送信パワーを的確に制御する事が可能になる。したがって、超音波センサ10等の非接触距離センサの出力信号を用いて速度を算出するにあたって、受信した反射波を増幅器によって増幅した後の波形のクリップ現象を防止し、速度算出の精度を向上することができる。
(2)車外対象物に反射して戻ってくる反射波の振幅が大きくなるほど、送信波の振幅を小さく設定するようにした。よって、送信波の振幅に依存した受信波の振幅を的確に制御する事が可能となる。したがって、超音波センサ10等の非接触距離センサの出力信号を用いて速度を算出するにあたって、受信した反射波を増幅器によって増幅した後の波形のクリップ現象を防止し、速度算出の精度を向上することができる。
(3)受信した反射波より、超音波センサ10が送信波を送信してから、この送信波を受信するまでの送受信時間を算出し、この送受信時間から自車と車外対象物との距離を算出する。また、送信波の周波数と反射波の周波数との変化から自車と車外対象物との相対速度を算出し、この相対速度の変化から自車と車外対象物との相対加速度を算出する。CPU23は、上記で算出した、送受信時間と、自車と車外対象物との距離と、相対速度と、相対加速度とから、次回送信波を送信するときの自車と車外対象物の距離を予測し、この予測距離に応じて、送信波の送信パワーを決定するようにした。よって、予測距離に応じた反射波の受信パワーの減衰を考慮して送信パワーを決定することができる。
(4)車外対象物に反射して戻ってくる反射波の受信パワーが大きくなるほど、送信波の送信パワーを小さく設定するようにして、反射波の受信パワーを小さくするようにした。したがって、超音波センサ10等の非接触距離センサの出力信号を用いて速度を算出するにあたって、受信した反射波を増幅器によって増幅した後の波形のクリップ現象を防止し、速度算出の精度を向上することができる。
次に、実施例2について説明する。基本的には、実施例1と同様の作用効果であるので、同一のものは同じ符号を付して説明を省略し、異なるもののみを説明する。
実施例1では、自車と車外対象物との距離に応じて送信パワーを決定したが、本実施例では、送信波の送信パワーを、更に車外対象物の種類に応じて設定するようにした点が異なる。
[衝突判定制御処理]
図17は、本実施例において、コントローラ20において行われる処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS11において、送信する超音波の送信パワーを設定する。なお、本システム立ち上がり直後の1サイクル目においては、送信パワーは予めコントローラ20に記憶させた初期値で決定する。
ステップS12では、超音波を送信し、送信が終了すると、ステップS13へ移行して、ステップS12で送信した超音波の反射波の受信を開始する。
ステップS13では、受信した反射波の受信パワー(振幅)を図示しない増幅器で増幅して、各装置へ受信パワーの情報を出力する。
ステップS14では、自車と車外対象物との距離及び相対速度を算出する。
ステップS15では、自車と車外対象物との衝突判定を行い、乗員拘束装置30を作動させるか否か判断して、作動させると判断した場合にはステップS16へ移行し、作動させないと判断した場合にはステップS19へ移行する。
ステップS16では、車外対象物の種類が低加害性障害物、壁、車のいずれであるかを判別し、ステップS17及びステップS19へ移行する。このステップS16は、本発明の種類判別手段に相当する。
ステップS17では、ステップS16で判断した車外対象物の種類が車又は壁であるか否かを判定して、車又は壁の場合にはステップS18へ移行し、車又は壁でない場合にはステップS19へ移行する。
ステップS18では、乗員保護の必要が想定されるシーンであるため、乗員拘束装置30に作動を指令する。
ステップS19では、次に送信する送信波が車外対象物に反射するときの自車と車外対象物との距離を予測し、ステップS20へ移行する。
ステップS20では、ステップS19で予測した自車と車外対象物との距離と、ステップS16で判別した車外対象物の種類に応じて、次回送信する送信パワーを決定し、ステップS11へ戻る。
[種類別送信パワー設定]
次に、本発明の送信パワー設定手段であって、車外対象物の種類に応じた送信パワー設定について詳述する。
車外対象物の種類によって反射率が異なるので、自車から同一距離の車外対象物からの反射波であっても、受信する反射波の最大振幅は車外対象物の種類によって異なる。そのため、例えば、反射波の最大振幅が大きな車外対象物からの反射波の波形がクリップしないように設定した送信波の送信パワーで、反射波の小さな車外対象物に対して送信波を送信すると、十分な反射波の受信パワーを得ることができない虞がある。逆に、反射波の最大振幅が小さな車外対象物からの反射波がクリップしないように設定した送信波の送信パワーで、反射波の大きな車外対象物に対して送信波を送信すると、反射波の波形がクリップしてしまう虞がある。
そこで本実施例では、送信波の送信出力を、自車と車外対象物との距離と、更に車外対象物の種類に応じて設定するようにした。
図18は、自車から同一距離にある低加害性障害物、車、壁のそれぞれからの反射波の最大振幅を比較する図である。図18に示すように、低加害性障害物、車、壁の反射波の最大振幅は、低加害性障害物の場合が最も小さく、また壁の場合が最も大きく、車の場合は低加害性障害物のときよりも大きく、壁のときよりも小さくなる。
予めコントローラ20においては、図19に実線で示す車外対象物が低加害性障害物、一点鎖線で示す車外対象物が車、二点鎖線車外対象物が壁のそれぞれの場合の距離―パワー線図を有している。それぞれ3つの距離―パワー線図の大小関係としては、低加害性障害物の場合が最もパワーが大きく、壁の場合が最もパワーが小さく、車外対象物が低加害性障害物の場合と壁の場合の中間に対象物が車の場合様の距離―パワー線図を設定することが望ましい。各パワー線図は実施例1と同様に、距離、すなわち送受信間の時間の4乗に比例する関数とすることがやはり望ましい。ただし、本件も実施例1と同様に、センサの感度特性、回路の特性に応じて、適宜最適なプロフィールを選択する事は可能である。
[車外対象物接近時の制御例]
例えば、自車に対して車外対象物が接近している場合に行われる制御の一例を下記に示す。
図19において、例えば、現在の送信パワーをS2と設定する。この送信パワーS2で送信波を送信して、反射波を受信し、この受信した反射波から自車と車外対象物との距離と、相対速度と、相対加速度とを算出する。自車と車外対象物との距離と、相対速度と、相対加速度とに応じて、乗員拘束装置30を作動させるか否かの判断を行う。乗員拘束装置30を作動させないと判断した場合、送信パワーS2で送信した送信波の反射波から算出した自車と車外対象物との距離と、相対速度と、相対加速度とから、次に送信波を送信したときの自車と車外対象物との距離を予測する。また、送信パワーS2で送信した送信波の反射波から車外対象物の種類を判別する。
例えば、予測した自車と車外対象物との距離における送受信時間がtd1とすると、次のサイクルで送信する送信波は、図19の距離―パワー線図に対応するように、車外対象物の種類が低加害性障害物、車、壁の順に送信パワーS1、S1'、S1"で送信する。この作用によって、車外対象物の種類に応じて、適切な送信パワーを決定するので、次のサイクルで受信した反射波を増幅器によって増幅した後の波形が、クリップ現象を生じることを回避できる。
次に、効果を説明する。
(5)コントローラ20において、反射波の時間積分値及びひずみ率から車外対象物の種類を低加害性障害物、車、壁のいずれであるかを判定し、車外対象物の種類が低加害性障害物、車、壁の順に送信波の送信パワーを小さくするようにした。よって、反射率の大きな壁からの反射波に対しては、受信した反射波を増幅器によって増幅した後の波形のクリップ現象を回避し、反射波から予測する自車と壁との相対速度の精度を向上することができる。一方、反射率の小さな低加害性障害物からの反射波に対しては、十分な受信パワーを確保することが可能となるので、反射波から予測する自車と低加害性障害物との相対速度の精度を向上することができる。また、反射率が低加害性障害物や壁との間である車からの反射波に対しては、波形のクリップ現象を防止しつつ、十分な受信パワーを確保することが可能となるので、反射波から予測する自車と他車との相対速度の精度を向上することができる。
次に、実施例3について説明する。基本的には、実施例2と同様の作用効果であるので、同一のものは同じ符号を付して説明を省略し、異なるもののみを説明する。
実施例2では、自車と車外対象物との距離及び車外対象物の種類に応じて送信パワーを決定したが、本実施例では、超音波センサ10が送信波を送信してから反射波の受信を待つ時間である受信待機時間を設定するようにした点が異なる。
本実施例の乗員保護装置は、実施例2と同様の構成であるものの作用が異なる。よって、構成については同一の符号を付し説明を省略する。
[衝突判定制御処理]
図20は、本実施例において、コントローラ20において行われる処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS21において、送信する超音波の送信パワーを設定する。なお、本システム立ち上がり直後の1サイクル目においては、送信パワーは予めコントローラ20に記憶させた初期値で決定する。
ステップS22では、超音波を送信し、送信が終了すると、ステップS23へ移行して、ステップS22で送信した超音波の反射波の受信を開始する。
ステップS23では、受信した反射波の受信パワー(振幅)を図示しない増幅器で増幅して、各装置へ受信パワーの情報を出力する。
ステップS24では、自車と車外対象物との距離及び相対速度を算出する。
ステップS25では、車外対象物の種類が低加害性障害物、壁、車のいずれであるかを判別し、ステップS26、ステップS29及びステップS30へ移行する。
ステップS26では、乗員拘束装置30を作動させるか否か判断して、作動させると判断した場合にはステップS27へ移行し、作動させないと判断した場合にはステップS29へ移行する。
ステップS27では、ステップS16で判断した車外対象物の種類が車又は壁であるか否かを判定して、車又は壁の場合にはステップS28へ移行し、車又は壁でない場合にはステップS29へ移行する。
ステップS28では、乗員保護の必要が想定されるシーンであるため、乗員拘束装置30に作動を指令する。
ステップS29では、加害性の低い新聞等の低加害性障害物(第1障害物)からの反射波は無視して、加害性の高い車又は壁(第2障害物)までの受信待機時間を設定する。このステップS29の処理は本発明の加害性判別手段及び受信待機時間設定手段に相当する。
ステップS30では、自車と車外対象物との距離と、車外対象物の種類に応じて、次回送信する送信パワーを決定し、ステップS21へ戻る。
[受信待機時間設定]
次に、本実施例において加えられた、本発明の受信待機時間設定手段に相当する図20のステップS29において行われる処理について詳述する。
図21に示すように、距離・速度測定の1サイクルの中で、送信波を送信して、受信波を受信するわけであるが、特に超音波を使ったセンサの場合には、超音波は光や電波の伝播速度が格段に遅い事から送信から受信までの時間が比較的長い時間が必要である。例えば、相対距離が10[m]の位置にある車外対象物に反射して受信するまでの時間は、雰囲気温度0度の場合には59[msec]を要する。59[msec]の間に時速60[km/h]の相対速度をもった後方の車両は1m近く進むことになり、サイクル毎の距離分解能が1[m]程度と低い分解能になる。
しかしながら、衝突が発生する直前においては、計測サイクル数を増やして、データの密度を上げる事で距離・速度データの信頼性を増すことは、乗員保護装置1の信頼性を上げる上で重要な事項となる。先に述べた通り、超音波センサを使った乗員保護装置1の場合には超音波を送信してから受信するまでの時間が長くなり、特に自車と車外対象物との相対距離が分からない場合には反射波を観測した後も受信を待機する事が必要となる。前述の課題である距離に応じて1サイクルの時間を短縮してデータ密度を上昇させる為には、この受信待機時間を最低限、反射波を受信するであろう時間に設定する事が肝要である。
一方で、受信待機時間を短縮するにあたっては、車外対象物が自車にとって加害性が高いと想定される対象物の場合には確実な衝突判断が必要となる。例えば、車外対象物が路上にある新聞のように自車にとって加害性が高くないと予想される低加害性障害物の場合には、この車外対象物を無視して、さらに遠距離に存在するが、加害性が高い車外対象物からの反射波を受信する事が、自車乗員の保護にとって重要である。そこで、図
20のフローチャートのステップS29において、車や壁までの受信待機時間を設定する。具体的には、図22に示すように、現在位置が距離d3であって、最も相対距離が短い距離d1の位置に遷移する事が予想した車外対象物が、図
20のフローチャートのステップS25で低加害性障害物であると検出した場合には、この対象物よりも次に遠い位置にある自車乗員にとって加害性の高いと予想される車や壁と自車との間の、次の計測サイクルで遷移するであろう距離d2の位置での必要な受信待機時間twaitを設定する。なお、ステップS29において設定する受信待機時間は、自車と対象物との距離d、相対速度v、相対加速度aの値を用いて下記の式(10)によって算出する事が可能である。
なお、Vsoundは音速、tは現時点での受信待機時間を示す。
[受信待機時間設定の制御例]
例えば、図23に示すように、自車に最も近い車外対象物が新聞等の低加害性障害物であって、この低加害性障害物より遠方から車が接近してきている場合の制御の一例を下記に示す。
図23のような状況の場合、新聞紙のようなやわらかくて小さいものであれば、自車と衝突しても自車にとって加害性が低いと想定できるので、この低加害性障害物からの反射波を無視して、低加害性障害物よりも遠距離にある後続車からの反射波を検出するようにする。この作用により、遠距離にある後続車からの反射波を的確に捉える事が出来、かつ加害性の高い対象物に検知対象を絞り計測サイクルを短くする事が可能である。
また実施例2で述べたように、後続の車外対象物からの反射波がクリップしない振幅に設定する事が可能となる事で、加害性の高いと予想される車や壁との相対速度を正確に検出する事が可能となる。
次に、効果を説明する。
(6)コントローラ20において、自車と車外対象物との距離と、相対速度と、相対加速度とから、自車と車外対象物との距離を予測して、この予測に基づいて超音波センサ10が反射波の受信を待つ受信待機時間を設定した。よって、送受信の1サイクルの時間を短縮してデータ密度を上昇させることが可能となるので、受信待機時間を最低限、反射波を受信するであろう時間に設定することができる。したがって、特に衝突が発生する直前においては、計測サイクル数を増やして、データの密度を上げる事で距離・速度データの信頼性を増すことができ、自車と車外対象物との衝突判定を精度良く行うことができる。
(7)コントローラ20において、車や壁といった加害性の高い車外対象物に対して受信待機時間を設定するようにした。よって、より遠距離にある加害性の高い車外対象物からの反射波を的確に捉える事が可能となり、かつ加害性の高い対象物に検知対象を絞り計測サイクルを短くする事ができる。
次に、実施例4について説明する。基本的には、実施例3と同様の作用効果であるので、同一のものは同じ符号を付して説明を省略し、異なるもののみを説明する。
実施例3では、超音波センサ10が送信波を送信してから反射波の受信を待つ時間である受信待機時間を設定したが、本実施例では、自車に対して車外対象物が所定の角度内部にあるかを判断し、所定の角度内部にあると判断した場合、将来的に自車と車外対象物とが衝突をする可能性が高いと判断して、衝突判定を行うようにした点が異なる。
[衝突判定制御処理]
図24は、本実施例において、コントローラ20において行われる処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS31において、送信する超音波の送信パワーを設定する。なお、本システム立ち上がり直後の1サイクル目においては、送信パワーは予めコントローラ20に記憶させた初期値で決定する。
ステップS32では、超音波を送信し、送信が終了すると、ステップS33へ移行して、ステップS32で送信した超音波の反射波の受信を開始する。
ステップS33では、受信した反射波の受信パワー(振幅)を図示しない増幅器で増幅して、各装置へ受信パワーの情報を出力する。
ステップS34では、自車と車外対象物との距離及び相対速度を算出する。
ステップS35では、自車と車外対象物との距離から、車外対象物が所定の角度内部にあるかを判断するための閾値を設定する。
ステップS36では、受信した反射波の振幅がステップS35で設定した閾値以上の場合には、車外対象物の位置が所定の角度内部であって、自車と車外対象物との衝突を判定し、拘束装置30を作動させる判定を開始するためにステップS37へ移行する。一方、閾値以下の場合には、車外対象物の位置が所定の角度ではなく、自車と車外対象物との衝突可能性が低くいので、他の車外対象物からの反射波を受信するためにステップS33へ戻る。このステップS36は本発明の判定開始手段に相当する。
ステップS37では、車外対象物の種類が低加害性障害物、壁、車のいずれであるかを判別し、ステップS38、ステップS41及びステップS42へ移行する。
ステップS38では、車外対象物と衝突の可能性が高いので、乗員拘束装置30を作動させるか否か判断して、作動させると判断した場合にはステップS39へ移行し、作動させないと判断した場合にはステップS41へ移行する。
ステップS39では、ステップS37で判断した車外対象物の種類が車又は壁であるか否かを判定して、車又は壁の場合にはステップS40へ移行し、車又は壁でない場合にはステップS41へ移行する。
ステップS40では、乗員保護の必要が想定されるシーンであるため、乗員拘束装置30に作動を指令する。
ステップS41では、車外対象物の種類に応じて車外受信待機時間を設定する。
ステップS42では、自車と車外対象物との距離と、車外対象物の種類に応じて、次回送信する送信パワーを決定し、ステップS31へ戻る。
[判定開始制御]
次に、本実施例において加えられた、本発明の判定開始手段に相当する図24のステップS36において行われる処理について詳述する。
図25は、使用するセンサの角度に対する感度の分布線図である。一般的な超音波センサは、センサ正面と対象物との角度が付くにつれて極端に感度が低くなる傾向を有している。そこで、ある一例とする距離Lにおいて図23のステップS35における角度に対する閾値は、自車のほぼ後方真後ろから接近する車両のみを検知する様に設定する。
図25における感度線図においては、左右15度程度で示しているが、この角度閾値の設定は本技術を適用する乗員保護装置1が対応すべき目標値に応じて決定する事が好ましい。例えば、図25に示すように、自車のほぼ垂直後方を+/-15度と設定した場合に、+/-15度の角度線と感度線図が交わる交点110を求める。この距離における閾値は交点110で示す値として設定する。さらに、車外対象物と自車との距離が離れるにつれて車外対象物からの反射波の振幅が小さくなる事から、図26に示すように距離に応じてこの閾値を可変とする。図25における相対距離の関係としては、
L5>L4>L3>L2>L1
となる様に設定する。すなわち、対象物との相対距離が長い場合には閾値を小さな値とし、逆に対象物との相対距離が短い場合には閾値を大きな値とする。特にこの閾値は、図示していないが図24にある交点110の値に所定の係数を掛け合わせて振幅の値と同じ次元になる様に設定しておく。
図24のステップS35で設定した閾値と、受信した反射波の振幅を比較して、振幅が閾値以上であれば所定の角度内部に対象物があると判断し、将来的には自車との衝突をする可能性が高いと予測されるため、車外対象物の種類を判別や拘束装置作動判定等を行う。一方、振幅が閾値よりも小さい場合には、所定の角度の外部に対象物があると判断し、将来的には自車との衝突する可能性が低いと予測されるため、再びステップS23に戻り受信を行う。
[判定開始制御例]
例えば、図25に示すように、車外対象物が自車の正面後方にある場合と、自車に対して30度の角度をなした後方にある場合とについての制御の一例を以下に示す。
図25に示すように、例えば自車に対して正面後方の距離Lに位置する車104aからの反射波は閾値を超えているので、乗員拘束装置30を作動させる判断を行う。一方、自車に対して30度の角度をなした後方の距離Lに位置する車104bからの反射波は閾値を超えていないので、乗員拘束装置30を作動させる判断を行わずに、他の車外対象物からの反射波の受信を待つ。
次に、効果を説明する。
(8)コントローラ20において、受信した反射波から車外対象物の自車に対する方向が設定角度内であることを判定し、車外対象物の自車に対する方向が設定角度内である場合は自車と車外対象物との衝突判定を行う、設定角度内でない場合、衝突判定を行わずに他の車外対象物からの反射波の受信を行うようにした。よって、衝突の可能性が高い車外対象物に絞って衝突判定を行うので、判定精度を向上できる。
(9)コントローラ20において、自車と車外対象物との距離から、車外対象物が所定の角度内部にあるかを判断するための閾値を設定し、受信した反射波の受信パワーが閾値よりも大きいときに、車外対象物の自車に対する方向が設定角度内であると判定するようにした。よって、自車と車外対象物との距離にかかわらず、受信した反射波が所定角度内にある車外対象物からのものであるかを判断でき、衝突可能性の高い自車後方にある車外対象物のみを選択的に衝突判定を行うことが可能となるので判定精度を向上できる。
(10)コントローラ20において、車外対象物からの反射波の振幅が閾値未満のとき、他の車外対象物からの反射波の受信を行うようにした。よって、衝突の可能性が高い車外対象物に絞って衝突判定を行うので、判定精度を向上できる。
次に、実施例5について説明する。基本的には、実施例4と同様の作用効果であるので、同一のものは同じ符号を付して説明を省略し、異なるもののみを説明する。
次に、実施例5について説明する。基本的には、実施例4と同様の作用効果であるので、同一のものは同じ符号を付して説明を省略し、異なるもののみを説明する。
実施例4では、所定の角度内部にあると判断する設定値を、自車と車外対象物との距離に応じて設定したが、本実施例では、更に車外対象物の種類に応じて設定値を設定する点が異なる。
[衝突判定制御処理]
図27は、本実施例において、コントローラ20において行われる処理の流れを示すフローチャートである。
ステップS51において、送信する超音波の送信パワーを設定する。なお、本システム立ち上がり直後の1サイクル目においては、送信パワーは予めコントローラ20に記憶させた初期値で決定する。
ステップS52では、超音波を送信し、送信が終了すると、ステップS53へ移行して、ステップS52で送信した超音波の反射波の受信を開始する。
ステップS53では、受信した反射波の受信パワー(振幅)を図示しない増幅器で増幅して、各装置へ受信パワーの情報を出力する。
ステップS54では、自車と車外対象物との距離及び相対速度を算出する。
ステップS55では、車外対象物の種類が低加害性障害物、壁、車のいずれであるかを判別し、ステップS56へ移行する。
ステップS56では、自車と車外対象物との距離及び車外対象物の種類から、車外対象物が所定の角度内部にあるかを判断するための閾値を設定する。
ステップS57では、受信した反射波の振幅がステップS56で設定した閾値以上の場合には、車外対象物が所定の角度内部にあると判断してステップS58へ移行し、閾値以下の場合には、車外対象物が所定の角度にあると判断してステップS53へ戻る。
ステップS58では、乗員拘束装置30を作動させるか否か判断して、作動させると判断した場合にはステップS59へ移行し、作動させないと判断した場合にはステップS51へ移行する。
ステップS59では、ステップS55で判断した車外対象物の種類が車又は壁であるか否かを判定して、車又は壁の場合にはステップS60へ移行し、車又は壁でない場合にはステップS61へ移行する。
ステップS60では、乗員保護の必要が想定されるシーンであるため、乗員拘束装置30に作動を指令する。
ステップS61では、車外対象物の種類に応じて車外受信待機時間を設定する。
ステップS62では、自車と車外対象物との距離と、車外対象物の種類に応じて、次回送信する送信パワーを決定し、ステップS51へ戻る。
[判定開始制御]
本実施例では、ステップS56において角度閾値を設定する訳であるが、第4実施例で行う様に距離に応じて角度閾値を可変にするだけでなく、ステップS55で検出した車外対象物の種類に応じても角度閾値を可変にする。
図27にあるように、所定の距離の場合において車外対象物が壁の場合の閾値と、車外対象物が車の場合の閾値と、車外対象物が低加害性障害物の場合の閾値を設ける。これら閾値の関係は、壁用閾値を最も大きな値とし、低加害性障害物用閾値を最も小さな値として、壁用閾値と低加害性障害物様閾値の中間に車用閾値とする。第2実施例の図17に示したように壁の場合には反射波の最大振幅が大きく、低加害性障害物の場合には反射波の最大振幅が小さい値となる。これに伴って、角度閾値も対象物の3種類に応じて設定する事とする。図28においては、距離一定の場合について説明しているが、これら3種類の角度閾値は、前述の通り距離に応じて可変とする。可変の方法は第4実施例と同様である。
本実施例で車外対象物の種類と車外対象物との距離に応じて角度閾値を可変とした事により、車外対象物の違いによる反射波の振幅の違いを無視して、自車後方の対象物のみを選択的に検出する事が可能となり、より精度の高い衝突判定ができる。
次に、効果を説明する。
(11)コントローラ20において、低加害性障害物、車、壁の順に車外対象物が所定の角度内部にあるかを判断するための閾値を大きく設定するようにした。よって、反射率の異なる低加害性障害物、車、壁といった種類にかかわらず、受信した反射波が所定角度内にある車外対象物からのものであるかを判断が可能となり、衝突可能性の高い自車後方にある車外対象物のみを選択的に検出する事が可能となるため、より精度の高い衝突判定ができる。
以上、本発明の乗員保護装置を実施例1乃至実施例5に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加は許容される。
例えば、実施例では、超音波センサ10をバンパフェイシア101の中央付近に設けた例を示したが、車両前方や側方及びコーナー部などに設けても良い。また、超音波センサ10を図2におけるリアコンビランプ102内やトランクリッド103等に設置しても良い。
また、超音波センサ10を1つ設置する例を示しているが、超音波センサ10を複数設置しても良い。
また、送信機能及び受信機能のいずれか一方のみの機能を有するものであっても良い。
実施例1乃至実施例5では、超音波センサを用いた衝突判定装置の例で説明したが、マイクロ波レーダやミリ波レーダのパルス方式、2周波CW方式、SS方式等のドップラ周波数から自車と車外対象物との相対速度を算出するものを用いた衝突判定装置に適用しても良い。
実施例1に係る、衝突判定装置を搭載した乗員保護装置のシステム図である。
実施例1に係る、超音波センサの位置を示す図である。
実施例1に係る、コントローラのCPUにおいて行われる処理の流れを示すフローチャートである。
実施例1に係る、波形のクリップ現象を説明する図である。
実施例1に係る、波形のクリップ現象を説明する図である。
実施例1に係る、波形のクリップ現象を説明する図である。
実施例1に係る、自車と車外対象物との距離と次回送信する送信パワーとの関係を示す距離―パワー線図である。
実施例1に係る、超音波センサが超音波を送信してから受信するまでの時間を説明する図である。
実施例1に係る、超音波センサが受信した反射波を示す図である。
実施例1に係る、エンベロープの算出を示す図である。
実施例1に係る、車外対象物ごとの反射波のエンベロープを示す図である。
実施例1に係る、車外対象物ごとのエンベロープの時間積分値を示す図である。
実施例1に係る、車外対象物ごとの反射波の波形と、この反射波の波形のひずみ率を示す図である。
実施例1に係る、反射波のエンベロープの時間積分値と波形のひずみ率とから判別する対象物の種類を示す図である。
実施例1に係る、反射波のエンベロープの時間積分値及び波形のひずみ率と、乗員拘束装置の作動及び非作動の関係を示した図である。
実施例1に係る、自車と車外対象物との距離に応じた送信波の送信パワー制御を示す図である。
実施例2に係る、コントローラのCPUにおいて行われる処理の流れを示すフローチャートである。
実施例2に係る、自車から同一距離にある低加害性障害物、車、壁のそれぞれからの反射波の最大振幅を比較する図である。
実施例2に係る、車外対象物に応じた自車と車外対象物との距離と次回送信する送信パワーとの関係を示す距離―パワー線図である。
実施例3に係る、コントローラのCPUにおいて行われる処理の流れを示すフローチャートである。
実施例3に係る、受信待機時間を説明する図である。
実施例3に係る、受信待機時間の設定を説明する図である。
実施例3に係る、受信待機時間の設定を説明する図である。
実施例4に係る、コントローラのCPUにおいて行われる処理の流れを示すフローチャートである。
実施例4に係る、車外対象物の角度に対する超音波センサの感度の分布線図である。
実施例4に係る、車外対象物の角度及び距離に対する超音波センサの感度の分布線図である。
実施例5に係る、コントローラのCPUにおいて行われる処理の流れを示すフローチャートである。
実施例5に係る、車外対象物の角度及び種類に対する超音波センサの感度の分布線図である。
符号の説明
1 乗員保護装置
10 超音波センサ
20 コントローラ
23 CPU
30 乗員拘束装置