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JP4801781B2 - ポリ乳酸含有樹脂製耐熱性中空体の製造方法 - Google Patents
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JP4801781B2 - ポリ乳酸含有樹脂製耐熱性中空体の製造方法 - Google Patents

ポリ乳酸含有樹脂製耐熱性中空体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ポリ乳酸含有樹脂組成物からなり耐熱性を備える中空体の製造方法に関するものである。
近年、食堂等において生分解性樹脂からなる丼、カップ、椀、トレー等の食品容器を用いることが検討されている。前記生分解性樹脂からなる食品容器は、廃棄後、土中等で細菌等の微生物の働きにより分解されるので、環境に対する負荷を軽減することができる。
従来、前記生分解性樹脂として、ポリ乳酸樹脂が知られている。ところが、前記ポリ乳酸樹脂は、耐熱性が低いので、前記食品容器とした場合には、熱湯注入や、電子レンジによる加熱、一旦使用した後、回収して再利用に供するためのアルカリ洗剤による70℃程度の温度での洗浄、リンス(すすぎ)、さらには80℃程度の温度での高温乾燥、滅菌処理に耐えられないという問題がある。
前記問題を解決するために、ポリ乳酸樹脂を50質量%以上含有すると共に、無機充填剤をナノコンポジット化した生分解性樹脂組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。前記生分解性樹脂組成物は、110℃付近の温度で結晶化させることにより延伸によらずに優れた耐熱性を付与することができ、射出成形により前記食品容器を形成することができる。
前記生分解性樹脂組成物の射出成形により前記食品容器のような中空体を形成するときには、例えば、前記中空体の外面形状に沿う形状の凹部を備える雌金型と、該凹部に対向して該中空体の内面形状に沿う形状の凸部を備える雄金型とを備える金型を、例えば110℃に加熱し、該凹部と該凸部とに囲まれたキャビティに溶融状態の該生分解性樹脂組成物を射出する。そして、射出された前記生分解性樹脂組成物が固化して前記中空体を形成した後、前記金型を開くことにより、該中空体が取り出される。
ところが、前記生分解性樹脂組成物からなる射出成形体は、十分冷却されないうちに前記金型から取り出すと、剛性が不十分であるために変形して形状が損なわれる虞があるという問題がある。また、前記生分解性樹脂組成物からなる射出成形体は、固化する際に過度に冷却されると収縮して前記雄金型に密着する傾向があり、前記金型を開く際に、前記雌金型からは容易に離型するが、該雄金型からは離型できないことがあるという問題がある。特に、丼などの中空体を射出成形する場合、成形体が完全に固化すると離型することが非常に困難となる。
前記問題のために、現在、前記生分解性樹脂組成物からなる射出成形体は、スプーンやフォークなどの凹凸の浅いものしか製品化されていない。また、このような強大な収縮力による離型困難を克服する目的も兼ねて、現在市場に流通しているほとんどのポリ乳酸含有樹脂組成物は、ポリマーアロイ化(例えば、ポリ乳酸40質量%、ポリカーボネート60質量%、またはポリ乳酸50質量%、ABS50質量%等)されている。しかし、ポリマーアロイ化されたポリ乳酸含有樹脂組成物は、生分解しない石油由来合成樹脂の残存量が非常に多いため、生分解性に劣り、環境負荷が大きいという欠点がある。
そこで、本発明者らは、前記問題を解決するために、前記金型内に射出された前記生分解性樹脂組成物の温度が、前記中空体に耐熱性が発現する温度から離型不能となる温度までの範囲の温度であるときに、前記金型を開く技術を提案している(特許文献2参照)。
特開2004−204143号公報 国際公開第2006/080125号
しかしながら、前記金型内に射出された前記生分解性樹脂組成物において、金型を開く時期に対応する温度、即ち前記中空体に耐熱性が発現する温度から離型不能となる温度までの範囲の温度は、製造条件に応じて変動するという不都合がある。前記製造条件としては、前記中空体の厚み、前記生分解性樹脂組成物の前記金型に対する充填圧力及び注入開始温度、ヒータや保温流体の熱力収支能力等による前記金型の温度制御能力、前記生分解性樹脂組成物に対する無機充填剤の配合量等を挙げることができる。
そこで、本発明は、ポリ乳酸含有樹脂に無機充填剤をナノコンポジット化した生分解性樹脂組成物の射出成形により中空体を得るときに、製造条件に関わらず金型を開く時期を決定することができる耐熱性中空体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、製造条件に左右されることなく金型を開く時期を決定するために、前記金型の表面温度と、前記生分解性樹脂組成物が固化し、前記金型から離型可能となるときの該生分解性樹脂組成物の温度との関係について、実験を重ね鋭意検討した。その結果、前記生分解性樹脂組成物の温度が、前記金型の表面温度に所定の数値を加えた温度を基準とし、基準となる温度を中心とする所定の範囲の温度となったときに、製造条件に関わらず、該生分解性樹脂組成物が固化し、金型から離型可能となることを知見した。
本発明は、前記知見に基づいて完成されたものであり、前記目的を達成するために、金型にポリ乳酸含有樹脂組成物を射出することにより成形される耐熱性中空体の製造方法であって、前記ポリ乳酸含有樹脂組成物は、ポリ乳酸を50質量%以上含有するとともに、無機充填剤を1〜28質量%含有し、該無機充填剤をナノコンポジット化した生分解性樹脂組成物であり、前記中空体の外面形状に沿う形状の凹部を備える雌金型と、該凹部に対向して該中空体の内面形状に沿う形状の凸部を備える雄金型と、該雄金型の外周に沿って配設され該中空体の縁部に沿う形状の縁部形成部を備えるストリッパープレートとを備え、該凹部と該凸部と該縁部形成部とに囲まれたキャビティを形成する金型を、該キャビティに臨む該金型の表面が該生分解性樹脂組成物の結晶化温度に対応する110〜120℃の範囲の温度になるように加熱する工程と、前記温度に加熱された前記金型の前記キャビティに、該金型に配設されたゲート部を介して溶融状態の該生分解性樹脂組成物を射出する工程と、前記キャビティ内部に射出された該生分解性樹脂組成物の温度T(℃)が、式 T=(t+3.5)±1.5 (t(℃)は該キャビティに臨む前記金型の表面温度である) で示される範囲の温度となったことが、前記雄金型の凸部を形成する部分又は前記雌金型の凹部を形成する部分に収容され該キャビティに臨む位置に設けられた赤外線温度センサにより検知されたときに、前記雄金型と前記ストリッパープレートとを前記雌金型から離間する方向に移動させる工程と、前記雄金型と前記ストリッパープレートとの間に形成された圧縮空気導入路から、固化した前記中空体の内面と該雄金型の凸部との間に圧縮空気を噴射して、該中空体の内面と該凸部との間に圧縮空気を導入して、該中空体の内面を該雄金型の該凸部から離型させる工程と、前記ストリッパープレートを前記中空体方向に前進させて、該中空体を前記金型から取り出す工程とを備えることを特徴とする。
本発明の製造方法に用いる金型は、前記中空体の外面形状に沿う形状の凹部を備える雌金型と、該凹部に対向して該中空体の内面形状に沿う形状の凸部を備える雄金型と、該雄金型の外周に沿って配設され該中空体の縁部に沿う形状の縁部形成部を備えるストリッパープレートとを備える。前記金型では、前記凹部と前記凸部と前記縁部形成部とにより囲まれたキャビティが形成される。
尚、本明細書において、前記「中空体」との用語は、底部と該底部に連なって該底部から立ち上がる周壁部とを備える射出成形体を意味する。このような中空体として、例えば、丼、椀、カップ等の食器、口紅容器等の化粧品容器、薬品容器、容器のキャップ、飲料用ボトル(ブロー成形により形成されるペットボトル等を除く)、タッパーウェア(登録商標)等の密封可能な容器、電子レンジ用食品包装容器、耐熱電子機器用容器等を挙げることができる。
本発明の製造方法では、前記生分解性樹脂組成物として、ポリ乳酸を50質量%以上含有するとともに、無機充填剤を1〜28質量%含有し、該無機充填剤をナノコンポジット化したポリ乳酸含有樹脂組成物を用いる。前記無機充填剤は、平均層厚みが1〜100nm、長径が150nm以下の層状珪酸塩であることが好ましい。層状珪酸塩は、元来粘土であり、マトリックスとなっているポリ乳酸が生分解されれば、そのまま環境に還元されることとなるので、環境負荷が少ない。前記生分解性樹脂組成物は、具体的には、前記無機充填剤を1〜28質量%含有し、残部が実質的にポリ乳酸と、成分調整のための微量成分とからなる。
本発明の製造方法では、まず、前記金型を加熱して、前記キャビティに臨む該金型の表面が、前記生分解性樹脂組成物の結晶化温度に対応する110〜120℃の範囲になるように加熱する。前記生分解性樹脂組成物は、125℃付近の温度で結晶化が始まり、結晶化のピーク温度は110℃である。
次に、表面が前記結晶化温度になるように加熱された前記キャビティに、溶融状態の前記生分解性樹脂組成物を射出する。前記生分解性樹脂組成物は、前記キャビティ内で冷却されて固化することにより、前記中空体を形成する。このとき、前記生分解性樹脂組成物は、前記金型の表面の温度に維持されることにより結晶化し、耐熱性が付与される。
次に、射出された前記生分解性樹脂組成物が固化して前記中空体を形成したならば、前記雄金型と前記ストリッパープレートとを前記雌金型から離間する方向に移動させ、金型を開く。ここで、本発明者は、前述のように、前記金型に射出された前記生分解性樹脂組成物の温度が、金型の表面温度に所定の数値を加えた温度を基準とし、基準となる温度を中心とする所定の範囲の温度となったときに、該生分解性樹脂組成物が固化し、金型から離型可能となることを知見した。
即ち、本発明の製造方法では、前記キャビティ内の前記生分解性樹脂組成物の温度T(℃)が、式 T=(t+3.5)±1.5 (t(℃)は前記キャビティに臨む前記金型の表面温度である) で示される範囲の温度となったときに、前記生分解性樹脂組成物が固化して前記中空体を形成しており、金型から離型可能であると判断する。前記判断基準となる前記生分解性樹脂組成物の温度Tは、具体的には、前記金型の表面温度が120℃であるときには、123.5±1.5℃であり、前記金型の表面温度が110℃であるときには、113.5±1.5℃である。従って、前記生分解性樹脂組成物が固化して前記中空体を形成しており、金型から離型可能であるときの該生分解性樹脂組成物の温度Tは、125〜112℃の範囲の温度となる。
ここで、前記生分解性樹脂組成物は上述のように125℃付近の温度から結晶化が始まるので、該生分解性樹脂組成物の温度Tが125℃より高いときには、該生分解性樹脂組成物が未固化であり、前記中空体を形成していない。また、前記生分解性樹脂組成物は上述のように結晶化のピーク温度は110℃であるので、該生分解性樹脂組成物の温度Tが112℃より低くなると結晶化が過度に進行して前記雄金型からの離型が困難になる。
また、本発明の製造方法では、前記金型の表面温度は、前記生分解性樹脂組成物の結晶化のピーク温度である110℃とすることが好ましい。この場合、前記判断基準となる前記生分解性樹脂組成物の温度Tは、前記式から前述のように113.5±1.5℃、即ち115〜112℃の範囲となる。
本発明の製造方法では、前記生分解性樹脂組成物の固化、前記中空体の形成の判定を、前記キャビティに臨む位置に設けられた赤外線温度センサにより、該キャビティ内部に射出された前記ポリ乳酸含有樹脂の温度を測定することにより行う。
本発明の製造方法では、前記生分解性樹脂組成物の温度Tが前述の範囲となったときに金型を開く。このとき、前記中空体は、離型不能ではないものの、前記生分解性樹脂組成物の固化に伴う収縮により前記雄金型に密着しており、前記雌金型からは容易に離型されるが、前記雄金型からは離型されにくい。そこで、前記雄金型と前記ストリッパープレートとを前記雌金型から離間する方向に移動させて、金型を開いた後、雄金型とストリッパープレートとの間に形成された圧縮空気導入路から、固化した該中空体の内面と該雄金型の凸部との間に圧縮空気を噴射する。この結果、前記中空体の表面と該凸部との間に圧縮空気が導入されることとなり、該中空体の内面を該雄金型の該凸部から離型させることができる。
次に、前記中空体が前記雄金型の凸部から離型されたならば、前記ストリッパープレートを前記中空体方向に前進させて、該中空体を前記金型から取り出す。
本発明の製造方法によれば、前記生分解性樹脂組成物の固化、前記中空体の形成の判定を、前記赤外線温度センサを用いて、前記キャビティ内部に射出された該生分解性樹脂組成物の温度を直接測定することにより行う。従って、外気温等の環境の影響を受けることなく、高精度で該生分解性樹脂組成物の温度を検出することができ、前記式により導かれるように、該生分解性樹脂組成物の温度Tが125〜112℃という狭い温度範囲内で前記金型を開くことができる。
この結果、本発明の製造方法によれば、前記中空体を前記金型から取り出す際に、該中空体が変形したり、該金型から取出不能となることなく、該中空体を製造することができる。上述のようにして得られた前記中空体は、前記結晶化温度に加熱されて結晶化した前記生分解性樹脂組成物からなるので、優れた耐熱性を備えており、熱湯の注入、電子レンジによる加熱、繰り返し使用するための熱処理等を必要とする用途に好適に使用することができる。
また、前記生分解性樹脂組成物は、ポリエチレン等の一般的な樹脂と比較して、冷却固化して成形体が得られるまで長時間を要するため、一般的に射出成形のサイクルタイムが長い。しかし、本発明の製造方法によれば、前記生分解性樹脂組成物が、結晶化により耐熱性を発現し、ある程度固化した時点で離型するので、サイクルタイムを短縮化することができる。
本発明の製造方法において、前記赤外線温度センサは、前記キャビティ内部に射出された前記生分解性樹脂組成物が発生する赤外線を光ファイバを介して赤外線受信装置で受信し、該赤外線の有するエネルギー量から該樹脂の温度を検出するもの好適に用いることができる。
前記キャビティ内は暗黒であり、前記生分解性樹脂組成物以外には赤外線の発生源が無いため、前記赤外線温度センサによれば該キャビティ内の該生分解性樹脂組成物の温度を高い精度で検出することができる。
前記赤外線温度センサは、前記ゲート部に位置する前記生分解性樹脂組成物の温度が検出可能な部分で、前記キャビティに臨む位置に設けられることが好ましい。前記生分解性樹脂組成物は、前記ゲート部の出口において最も高温となっている。従って、前記赤外線温度センサは、前記ゲート部に位置する前記生分解性樹脂組成物の温度が検出可能な部分で、前記キャビティに臨む位置に設けられることにより、生分解性樹脂組成物の温度Tが前述の範囲となったことを確実に検出することができ、前記金型を開くタイミングを確実に判断することができる。
(a)は本発明の一実施形態における中空体の斜視図、(b)は(a)のI−I線断面図。 本発明の一実施形態における中空体の製造工程を示す説明的断面図。 本発明の一実施形態における中空体の製造工程を示す説明的断面図。 本発明に用いる生分解性樹脂組成物の吸熱性を示すグラフ。 赤外線温度センサの構成を示すシステム構成図。 図4に示す赤外線温度センサにより測定されたキャビティ内における生分解性樹脂組成物の温度の経時変化を示すグラフ 本発明の一実施形態における食品容器の製造工程を示す説明的断面図。 本発明の一実施形態における食品容器の製造工程を示す説明的断面図。
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
本実施形態では、ポリ乳酸含有樹脂の射出成形により、耐熱性中空体として図1に示す丼Aを製造する場合を例として説明する。丼Aは、図1(a)、図1(b)に示すように、底部aと、底部aに連なって底部aから立ち上がる周壁部bとを備えている。また、丼Aは、底部aに外方に向かって突出する環状の着地部cを備えている。
丼Aは、図2に示す金型1を用いて製造される。図2に示すように、本実施形態の製造方法に用いる金型1は、丼Aの外面形状に沿う形状の凹部2を備える雌金型3と、凹部2に対向して該丼Aの内面形状に沿う形状の凸部4を備える雄金型5と、雄金型5の外周に沿って配設され該丼Aの縁部に沿う形状の縁部形成部6を備えるストリッパープレート7とを備える。金型1では、凹部2、凸部4、縁部形成部6とにより囲まれたキャビティ8が形成される。尚、2aは、丼Aの底部に備えられて着地部cとなる環状の突出部を形成するための凹部である。
金型1では、雌金型3が固定型、雄金型5とストリッパープレート7とが可動型であり、雌金型3はゲート9を介してキャビティ8に連通するランナ10を備えている。また、雄金型5とストリッパープレート7との間には、雄金型5の外周に沿って圧縮空気を噴出する圧縮空気導入路11が形成されており、雄金型5の凸部4にはゲート9に対向してキャビティ8に臨む位置に、赤外線温度センサ12が配設されている。
本実施形態の製造方法では、まず、図示しない加熱手段により、雌金型3、雄金型5、ストリッパープレート7を加熱し、キャビティ8を形成する凹部2、凸部4、縁部形成部6の表面が100〜120℃の温度、例えば110℃になるようにする。そして、図3に示すように、ランナ10を介してキャビティ8に、溶融状態の生分解性樹脂組成物Rを射出する。
生分解性樹脂組成物Rとしては、無機充填剤を1〜28質量%含有するとともに、残部が実質的にポリ乳酸からなり、該無機充填剤をナノコンポジット化した樹脂組成物を用いる。無機充填剤は、透過型電子顕微鏡で観察される平均層厚みが1〜100nm、長径が150nm以下の層状珪酸塩であることが好ましい。また、生分解性樹脂組成物Rは、成形性調整のためにポリ乳酸以外の他の樹脂を含んでいてもよいが、該他の樹脂の含有量は生分解性を損ねない範囲とする必要がある。このような生分解性樹脂組成物Rとして、例えば、ユニチカ株式会社製テラマックTE−8210(商品名)を挙げることができる。
図4に示すように、生分解性樹脂組成物Rは、95〜125℃の範囲で吸熱性を示しそのピークは110℃である。そこで、生分解性樹脂組成物Rは、キャビティ8内で冷却、固化する際に、前記範囲の温度、例えば結晶化のピーク温度である110℃の近傍の110〜120℃の範囲の温度に維持されることにより結晶化する。
このように、金型1内で冷却固化する際に、110℃近傍で急激に結晶化(吸熱)するような曲線を描くポリ乳酸含有樹脂は、無機充填剤をナノコンポジット化した前記生分解性樹脂組成物Rに限定される。無機充填剤を通常にコンポジット化したポリ乳酸含有樹脂や通常のポリ乳酸含有樹脂には、金型内で冷却固化する際に、急激に結晶化するような温度範囲がない。
無機充填剤をナノコンポジット化した生分解性樹脂組成物Rは、110℃近傍で急激に結晶化が進行するので、110℃近傍で長時間に亘って冷却すると、収縮が進行し過ぎて金型1に強固に密着して、成形品を離型することが困難となる。
次に、射出された生分解性樹脂組成物Rが固化して丼Aを形成したならば、雄金型5とストリッパープレート7とを雌金型3から離間する方向に移動させることにより金型1を開く。このとき、本発明者の検討によれば、生分解性樹脂組成物Rの温度T(℃)が、次式で示される範囲の温度となったときに、前記生分解性樹脂組成物Rが固化し、丼Aを形成すると共に、丼Aを雄金型5から離型可能であると判断することができる。
T=(t+3.5)±1.5
(t(℃)はキャビティ8に臨む凹部2、凸部4、縁部形成部6の表面温度である)
前記判断基準となる生分解性樹脂組成物Rの温度Tは、具体的には、凹部2、凸部4、縁部形成部6の表面温度(以下、「金型の表面温度」と略記する)が120℃であるときには、123.5±1.5℃であり、前記金型の表面温度が110℃であるときには、113.5±1.5℃である。従って、前記金型の表面温度が110〜120℃の範囲の温度であるとき、前記判断基準となる生分解性樹脂組成物Rの温度Tは、125〜112℃の範囲の温度となる。
ここで、生分解性樹脂組成物Rは上述のように125℃付近の温度から結晶化が始まるので、生分解性樹脂組成物Rの温度Tが125℃より高いときには、生分解性樹脂組成物Rが未固化であり、丼Aが形成されていない。また、生分解性樹脂組成物Rは上述のように結晶化のピーク温度は110℃であるので、生分解性樹脂組成物Rの温度Tが112℃より低くなると結晶化が過度に進行して、丼Aを雄金型5から離型することが困難になる。
本実施形態では、前記金型の表面温度を110℃とすることが好ましく、この場合、前記判断基準となる生分解性樹脂組成物Rの温度Tは、前記式から113.5±1.5℃、即ち115〜112℃の範囲となる。
本実施形態では、キャビティ8内における生分解性樹脂組成物Rの温度を赤外線温度センサ12により、経時的に追跡することにより、生分解性樹脂組成物Rの固化と、丼Aの形成とを判定している。この結果、生分解性樹脂組成物Rの温度が適切な範囲の温度となったときに、前記のように金型1を開くことができる。
赤外線温度センサ12は、図5に示すように、焼き入れ鋼からなる鋼製スリーブ13内に配設された光ファイバー14を備え、光ファイバー14はキャビティ8内にその一方の端部を露出させるとともに、他方の端部には赤外線発信/受信装置15が接続されている。そして、赤外線発信/受信装置15は温度検出器16に接続されており、温度検出器16はさらにパーソナルコンピュータ等の表示手段17に接続されている。
赤外線温度センサ12は、キャビティ8内に射出された生分解性樹脂組成物Rが発生する赤外線を、光ファイバー14を介して赤外線発信/受信装置15で受信し、温度検出器16にて所定の演算処理を行うことにより該赤外線の有するエネルギー量から生分解性樹脂組成物Rの温度を検出する。温度検出器16で検出された生分解性樹脂組成物Rの温度は、表示手段17により表示される。赤外線温度センサ12により測定した、キャビティ8内における生分解性樹脂組成物Rの温度の経時変化の一例を図6に示す。
図6に示すように、キャビティ8内における生分解性樹脂組成物Rの温度は、射出直後に最も高温(一実施例において214℃)であり、充填−保圧切換時から保圧完了時までは緩やかに下降する(一実施例において、保圧完了時に193℃)。そして、保圧完了直後に一旦急峻に下降するが、その後は再び緩やかに下降する。図6に、キャビティ8内における生分解性樹脂組成物Rの温度が生分解性樹脂組成物Rに耐熱性が発現する温度T1(125℃)と、キャビティ8内における生分解性樹脂組成物Rの温度がさらに低下して丼Aが離型不能となる温度T2(112℃)とを示す。図6から、温度T1、T2は僅差であり、金型1の温度から間接的に測定した場合には、金型1を開くために好適な温度範囲を適切に把握することが困難であることが明らかである。
本実施形態では、赤外線温度センサ12を用いるので、キャビティ8内における生分解性樹脂組成物Rの温度が温度T1と温度T2とに対応する125〜112℃の範囲で、さらに好ましくは115〜112℃の範囲で、生分解性樹脂組成物Rがある程度固化し、丼Aが形成され、雄金型5から離型可能と判断することができ、前記のように金型1を開くことができる。
ここで、生分解性樹脂組成物Rの減温制御は、電気ヒータ、温水、油のいずれかまたはこれらの組み合わせによって行うことができる。
尚、本実施形態では、キャビティ8内における生分解性樹脂組成物Rの温度が112℃となったときに、金型1を開いている。キャビティ8内における生分解性樹脂組成物Rの温度が112℃になったことは、赤外線温度センサ12による測定温度の所定の微小時間(例えば、0.05秒)での平均温度が最初に112℃に到達したことにより判断する。
雄金型5とストリッパープレート7とを雌金型3から離間する方向に移動させて金型1を開いたときに、生分解性樹脂組成物Rは固化に伴って収縮しているので、丼Aは離型不能ではないものの雄金型5に密着している。この結果、図7に示すように、丼Aは雌金型3からは容易に離型されるが、雄金型5からは離型されにくく、雄金型5に密着したまま、雌金型3から離型される。
丼Aは、雄金型5に密着したままであると、前記収縮の進行に伴い、益々強固に雄金型5に密着することとなる。そこで、次に、圧縮空気導入路11から固化した丼Aの内面と雄金型5の凸部4との間に圧縮空気を導入して、丼Aの内面を凸部4から離型させる。圧縮空気導入路11は、雄金型の外周縁に沿って、その全周に開口していてもよく、部分的に数カ所に開口していてもよい。この結果、丼Aと凸部4との間にクリアランスZが形成され、丼Aは凸部4からわずかに浮き上がった状態となるが、凸部4から取り外されるには至らない。なお、導入する圧縮空気の圧力は、丼Aに変形や風船状の膨れが発生しない範囲で丼Aの重量や厚さなどに応じて適宜定めればよく、例えば、0.05MPaから1.0MPaである。
そこで次に、図8に示すように、ストリッパープレート7を丼A方向に前進させて、丼Aを金型1から取り出す。丼Aは前述のように凸部4から離型しており、ストリッパープレート7は、丼Aの縁部に当接している縁部形成部6により該縁部を持ち上げる形となるので、雄金型5から容易に取り外すことができる。
本実施形態の製造方法により得られた丼Aは、結晶化された生分解性樹脂組成物Rからなるので耐熱性を備えており、熱湯注入や電子レンジにより加熱される食品の容器として使用することができる。また、丼Aは、耐熱性を備えていることにより、高温での洗浄、乾燥、滅菌処理を行うことができ、使用後に回収して再利用可能な、所謂リターナブル容器として使用することができる。
また、生分解性樹脂組成物Rは、ポリエチレン等の一般的な樹脂と比較して、冷却固化して成形体が得られるまで長時間を要するため、一般的に射出成形のサイクルタイムが長い。しかし、本実施形態の製造方法によれば、生分解性樹脂組成物Rが、耐熱性を発現し、圧縮空気を噴射しながらストリッパープレート7による突き出しによる外力では変形が生じない程度まで固化した時点で、丼Aを離型するので、サイクルタイムを短縮化することができる。
なお、キャビティ8内における生分解性樹脂組成物Rの温度Tが125℃より高温の例えば130℃であるときに前記のように金型1を開くと、ストリッパープレート7の圧縮応力によって丼Aが蛇腹のように段々に変形する。また、圧縮空気の圧力が高いと、丼Aは風船のように膨らんでしまう。これらは、丼Aの表層部が十分な結晶化を発現しておらず、剛性が不足したためであると考えられる。
一方、キャビティ8内における生分解性樹脂組成物Rの温度Tが112℃より低温の例えば110℃であるときに前記のように金型1を開くと、丼Aが収縮によって雄金型5に強固に密着しており、丼Aは離型不能、又は離型時に変形が生じる。
本実施形態では、前記中空体として丼Aを製造する場合を例に挙げて説明しているが、前記中空体は、丼、椀、カップ等の食器、口紅容器等の化粧品容器、薬品容器、容器のキャップ、飲料用ボトル(ブロー成形により形成されるペットボトル等を除く)、タッパーウェア(登録商標)等の密封可能な容器、電子レンジ用食品包装容器、耐熱電子機器用容器等、射出成形により成形できる中空体であれば、どのようなものであってもよい。
また、本実施形態では、環状の着地部cを備える丼Aについて説明しているが、丼Aは着地部cを備えないものであってもよい。
また、本実施形態では、赤外線温度センサ12を雄金型5の凸部4に配設するようにしているが、赤外線温度センサ12はゲート9の出口における生分解性樹脂組成物Rの温度が検出可能な位置であればどのような位置に配設してもよく、雌金型3の凹部2に配設してもよい。
1…金型、 2…凹部、 3…雌金型、 4…凸部、 5…雄金型、 6…縁部形成部、 7…ストリッパープレート、 8…キャビティ、 12…赤外線温度センサ、 13…光ファイバー、 14…赤外線受信装置、 A…中空体、 R…生分解性樹脂組成物、 Z…クリアランス。

Claims (6)

  1. 金型にポリ乳酸含有樹脂組成物を射出することにより成形される耐熱性中空体の製造方法であって、
    前記ポリ乳酸含有樹脂組成物は、ポリ乳酸を50質量%以上含有するとともに、無機充填剤を1〜28質量%含有し、該無機充填剤をナノコンポジット化した生分解性樹脂組成物であり、
    前記中空体の外面形状に沿う形状の凹部を備える雌金型と、該凹部に対向して該中空体の内面形状に沿う形状の凸部を備える雄金型と、該雄金型の外周に沿って配設され該中空体の縁部に沿う形状の縁部形成部を備えるストリッパープレートとを備え、該凹部と該凸部と該縁部形成部とに囲まれたキャビティを形成する金型を、該キャビティに臨む該金型の表面が該生分解性樹脂組成物の結晶化温度に対応する110〜120℃の範囲の温度になるように加熱する工程と、
    前記温度に加熱された前記金型の前記キャビティに、該金型に配設されたゲート部を介して溶融状態の前記生分解性樹脂組成物を射出する工程と、
    前記キャビティ内部に射出された前記生分解性樹脂組成物の温度T(℃)が、式 T=(t+3.5)±1.5 (t(℃)は該キャビティに臨む前記金型の表面温度である) で示される範囲の温度となったことが、前記雄金型の凸部を形成する部分又は前記雌金型の凹部を形成する部分に収容され該キャビティに臨む位置に設けられた赤外線温度センサにより検知されたときに、前記雄金型と前記ストリッパープレートとを前記雌金型から離間する方向に移動させる工程と、
    前記雄金型と前記ストリッパープレートとの間に形成された圧縮空気導入路から、固化した前記中空体の内面と該雄金型の凸部との間に圧縮空気を噴射して、該中空体の内面と該凸部との間に圧縮空気を導入して、該中空体の内面を該雄金型の該凸部から離型させる工程と、
    前記ストリッパープレートを前記中空体方向に前進させて、該中空体を前記金型から取り出す工程とを備えることを特徴とするポリ乳酸含有樹脂製耐熱性中空体の製造方法。
  2. 前記無機充填剤は、平均層厚みが1〜100nm、長径が150nm以下の層状珪酸塩であることを特徴とする請求項1記載のポリ乳酸含有樹脂製耐熱性中空体の製造方法。
  3. 前記雄金型と前記ストリッパープレートとを前記雌金型から離間する方向に移動させる工程において、前記赤外線センサにより測定した前記生分解性樹脂組成物の温度Tが、125〜112℃の範囲の温度となったときに、該雄金型と該ストリッパープレートとを該雌金型から離間する方向に移動させることを特徴とする請求項1記載のポリ乳酸含有樹脂製耐熱性中空体の製造方法。
  4. 前記雄金型と前記ストリッパープレートとを前記雌金型から離間する方向に移動させる工程において、前記赤外線センサにより測定した前記生分解性樹脂組成物の温度Tが、115〜112℃の範囲の温度となったときに、該雄金型と該ストリッパープレートとを該雌金型から離間する方向に移動させることを特徴とする請求項1記載のポリ乳酸含有樹脂製耐熱性中空体の製造方法。
  5. 前記赤外線温度センサは、前記キャビティ内部に射出された前記生分解性樹脂組成物が発生する赤外線を光ファイバを介して赤外線受信装置で受信し、該赤外線の有するエネルギー量から該樹脂の温度を検出することを特徴とする請求項1記載のポリ乳酸含有樹脂製耐熱性中空体の製造方法。
  6. 前記赤外線温度センサは、前記ゲート部に対向して前記キャビティに臨む位置に設けられていることを特徴とする請求項1記載のポリ乳酸含有樹脂製耐熱性中空体の製造方法。
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