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JP4803992B2 - 発光装置および光伝送システムおよび垂直共振器型面発光半導体レーザ素子 - Google Patents
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JP4803992B2 - 発光装置および光伝送システムおよび垂直共振器型面発光半導体レーザ素子 - Google Patents

発光装置および光伝送システムおよび垂直共振器型面発光半導体レーザ素子 Download PDF

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本発明は、大容量光伝送などに適した垂直共振器型面発光半導体レーザ素子を備えた発光装置および光伝送システムおよび垂直共振器型面発光半導体レーザ素子に関する。
近年、光伝送技術は、幹線系伝送網だけでなく、LANやアクセス系、ホームネットワークにも展開されてきている。例えば、イーサネットにおいては、10Gbpsの伝送容量が開発されてきている。将来的には更なる伝送容量の増加が求められており、10Gbpsを超えた光伝送システムが期待されている。
伝送容量が10Gbps以下の光伝送用光源においては、半導体レーザの注入電流を変調することで出力光強度を変調する直接変調方式が主に用いられている。しかしながら、半導体レーザを直接変調により10GHzを超えた変調周波数で動作させることは困難であった。そこで、10Gbpsを超えた光伝送用光源としては、半導体レーザから出力された光を外部変調器で変調する方式が開発されている。しかし、外部変調方式では、モジュールサイズが大きく、また部品点数が多いためコストが高いというデメリットがある。そのため、外部変調器を備えた光伝送技術は、幹線系のような高価なシステムには用いられても、LANやホームネットワークのような一般ユーザが用いるシステムには不向きとなっている。
これに対し、近年では、LANや光インターコネクション用の光源として、垂直共振器型面発光半導体レーザ素子(VCSEL)が用いられるようになってきている。VCSELは、従来の端面発光型半導体レーザに比べて、低消費電力であり、また製造工程で劈開が不用でウエハ状態で素子の検査が可能であるため低コスト化に優れた特徴を有している。そのため、10Gbpsを超えた大容量の光LANや光インターコネクション用光源として、直接変調によるVCSELが期待されている。
VCSELを高速に変調する方法としては、これまで以下のような報告がなされている。
すなわち、特許文献1には、上部の多層膜反射鏡を介さずに電流を活性領域に注入させ、このとき、横方向抵抗を低減するために、2次元キャリアの生成が可能な変調ドープ積層構造を設け、これにより、VCSELの抵抗を低減して、抵抗(R)と容量(C)で制限される電気的な変調帯域を増加させる技術が示されている。
また、特許文献2には、発光層の近傍にサブバンド間吸収する量子井戸層を設け、変調信号光を入力すると、量子井戸層のサブバンド間吸収によりキャリア分布が変調され、発光層のキャリア密度も変調されて、発光出力が変調され、従って、応答速度がCR時定数やキャリア輸送効果に影響されることなく、高速化される技術が示されている。
また、特許文献3には、VCSELに光注入励起を行う横方向共振器型半導体レーザが同一基板上に集積されて形成され、VCSELの活性層の禁制帯幅は横方向共振器型半導体レーザの禁制帯幅よりも小さく設定して、光励起効率を高めており、外部変調として、横方向共振器型半導体レーザの変調光信号を入力させることにより、VCSELの変調周波数を増加させる技術が示されている。
また、非特許文献1には、VCSELにDFBレーザの光を注入させて、VCSELの発振波長を同期させ(インジェクションロック)、これにより、VCSELの緩和振動周波数を22.8GHzに増加させる技術が示されている。
特開2002−185079号公報 特開2002−204039号公報 特開平7−249824号公報 信学技報 OPE2003−218, LQE3003−155
上述の特許文献1においては、ドライバ回路から出力される電気的変調信号がVCSELの発光層のキャリア密度を変調させるときの応答速度を改善している。また、特許文献2,特許文献3においては、外部から変調光信号を入力することにより、素子に電流が流れるときの電気的な応答速度の遅れの影響をなくしている。
しかしながら、いずれの構造も、発光層におけるキャリア密度変化に対して誘導放出速度が追随できなくなる限界の周波数,すなわち緩和振動周波数については増加させることができない。そのため、変調速度が緩和振動周波数で制限されることになる。
一方、非特許文献1においては、VCSELの発振モードに同期した光を外部から注入することにより、VCSEL内部の光子密度を高めている。内部光子密度は緩和振動周波数と関係しており、内部光子密度を高めることで、VCSELの緩和振動周波数を増加させることが可能となっている。しかしながら、上記方法においては、外部から注入するレーザ光の波長を、VCSELの共振モード波長と厳密に一致させる必要がある。波長ずれが数nm程度で、モード同期されなくなり、緩和振動周波数を増加させることができなくなってしまう。そのため、波長のチューニングや温度制御を行う必要があり、装置構成が複雑となってしまう。
本発明は、緩和振動周波数が高く、チャンネル当たりの伝送容量が10Gbpsを超える大容量伝送に適した、簡易な構成の高速変調可能な発光装置および光伝送システムおよび垂直共振器型面発光半導体レーザ素子を提供することを目的としている。
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、基板上に多層膜反射鏡で上下をはさまれた複数の共振器を有する垂直共振器型面発光半導体レーザ素子と、変調用パルス電源と、励起用直流電源とを備え、前記垂直共振器型面発光半導体レーザ素子の複数の共振器は光学的に結合して1つの共振モードを形成しており、それぞれの共振器内には、それぞれ、活性層が設けられ、それぞれの前記活性層は同一の共振モード波長に対して利得を有しており、前記活性層のうちの1つの活性層は、前記変調用パルス電源に電気的に接続され、また、前記活性層のうちの他の活性層は、前記励起用直流電源に電気的に接続され、同一の共振モードに対して、前記変調用パルス電源に電気的に接続された活性層と前記励起用直流電源に電気的に接続された活性層とがモード同期して発振するようになっている発光装置であって、前記基板に隣接した多層膜反射鏡、および/または、最表面側の多層膜反射鏡の導電型が、n型であることを特徴としている。
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の発光装置において、前記垂直共振器型面発光半導体レーザ素子のそれぞれの活性層に対して注入する電流を狭窄する手段が設けられており、前記変調用パルス電源に電気的に接続された活性層に対して電流狭窄される面積は、前記励起用直流電源に電気的に接続された活性層に対して電流狭窄される面積よりも広いことを特徴としている。
また、請求項3記載の発明は、請求項2記載の発光装置において、前記励起用直流電源に電気的に接続された活性層に対して電流を狭窄する手段として、水平横方向に屈折率差を有する構造が用いられることを特徴としている。
また、請求項4記載の発明は、請求項2記載の発光装置において、前記変調用パルス電源に電気的に接続された活性層に対して電流狭窄する手段として、イオン注入により形成した高抵抗領域が用いられることを特徴としている。
また、請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の発光装置において、前記変調用パルス電源に電気的に接続された活性層は、量子井戸層と障壁層を複数積層した多重量子井戸構造から構成されており、障壁層にp型不純物が1×1018cm−3〜1×1019cm−3の範囲でドーピングされていることを特徴としている。
また。請求項6記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の発光装置において、前記活性層には、窒素と他のV族元素との混晶半導体が含まれていることを特徴としている。
また、請求項7記載の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の発光装置を備えていることを特徴とする光伝送システムである。
また、請求項8記載の発明は、基板上に、多層膜反射鏡で上下をはさまれた複数の共振器を備え、複数の共振器は光学的に結合して1つの共振モードを形成しており、それぞれの共振器内には活性層が設けられ、上記活性層は同一の共振モード波長に対して利得を有しており、それぞれの活性層に対して、電流を注入する電流注入手段と、電流注入手段から注入された電流を狭窄する電流狭窄手段とが設けられており、基板に隣接した多層膜反射鏡及び/または最表面側の多層膜反射鏡の導電型が、n型であることを特徴としている。
また、請求項9記載の発明は、請求項8記載の垂直共振器型面発光半導体レーザ素子において、前記活性層のうちの少なくとも1つの活性層は、量子井戸層と障壁層を複数積層した多重量子井戸構造から構成されており、障壁層にp型不純物が1×1018cm−3〜1×1019cm−3の範囲でドーピングされていることを特徴としている。
また、請求項10記載の発明は、請求項8記載の垂直共振器型面発光半導体レーザ素子において、前記活性層のうちの少なくとも1つの活性層は、窒素と他のV族元素とを含む混晶半導体であることを特徴としている。
また、請求項11記載の発明は、請求項8記載の垂直共振器型面発光半導体レーザ素子において、前記電流狭窄手段として、水平横方向に屈折率差を有する構造が用いられており、上記電流狭窄手段による電流狭窄面積が活性層ごとに異なることを特徴としている。
また、請求項12記載の発明は、請求項8記載の垂直共振器型面発光半導体レーザ素子において、前記電流狭窄手段として、水平横方向に屈折率差を有する構造と、イオン注入により形成した高抵抗領域とが、それぞれ異なる活性層に対して設けられており、水平横方向に屈折率差を有する電流狭窄手段による狭窄面積が、イオン注入により形成した高抵抗領域による狭窄面積よりも小さいことを特徴としている。
請求項1乃至請求項6記載の発明によれば、複数の共振器が光学的に結合して1つの共振モードが形成されており、同一の共振モードに対して、変調用パルス電源に電気的に接続された活性層と励起用直流電源に電気的に接続された活性層とがモード同期して発振することにより、VCSEL素子内部の光子密度を増加させてVCSELの緩和振動周波数を増加させることができる。また、基板に隣接した多層膜反射鏡、および/または、最表面側の多層膜反射鏡の導電型が、n型であることにより、素子の抵抗を低減することができ、発光装置の消費電力を低減することができるとともに、VCSELの電気的変調帯域が増加する。これにより、簡易な構成で10Gbpsを超える高速変調可能な発光装置を提供することができる。
特に、請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発光装置において、それぞれの活性層に対して注入する電流を狭窄する手段が設けられており、変調用パルス電源に電気的に接続された活性層に対して電流狭窄される面積が、励起用直流電源に電気的に接続する活性層に対して電流狭窄される面積よりも広いことにより、変調用パルス電源に電気的に接続された活性層における電流狭窄部の抵抗が低減され、電気的な変調帯域を増加させることができる。また、基本横モードに対応した中央部の利得を選択的に増加させることができ、基本横モードの光出力を増加させることができる。
また、請求項3記載の発明によれば、請求項2記載の発光装置において、励起用直流電源に電気的に接続された活性層に対して電流を狭窄する手段として、水平横方向に屈折率差を有する構造が用いられることにより、基本横モードを維持した状態で光出力を増加させることができる。
また、請求項4記載の発光装置は、請求項2記載の発光装置において、変調用パルス電源に電気的に接続された活性層に対して電流狭窄する手段として、イオン注入により形成した高抵抗領域が用いられることにより、変調用パルス電源に電気的に接続された活性層に対応する高抵抗領域の容量成分が低減され、電気的な変調帯域をさらに増加させることができる。
また、請求項5記載の発明によれば、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の発光装置において、変調用パルス電源に電気的に接続された活性層は、量子井戸層と障壁層を複数積層した多重量子井戸構造(MQW)から構成されており、障壁層にp型不純物が1×1018cm−3〜1×1019cm−3の範囲でドーピングされていることにより、多重量子井戸構造活性層の微分利得を増加させることができ、さらにVCSELの緩和振動周波数を増加させることができる。
また、請求項6記載の発明によれば、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の発光装置において、活性層には、窒素と他のV族元素との混晶半導体が含まれていることにより、石英光ファイバの分散がゼロである波長1.31μmのVCSELを形成することができ、これによって、10Gbps以上の大容量伝送に適した発光装置を形成できる。
また、請求項7記載の光伝送システムは、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の発光装置を備えていることにより、10Gbpsを超える高速変調(例えば40Gbps)をVCSELの直接変調で可能にしている。そのため、外部変調器や電子冷却素子を用いることなく、低コストで大容量の光伝送システムを構築することができる。
また、請求項8記載の発明によれば、基板上に、多層膜反射鏡で上下をはさまれた複数の共振器を備え、複数の共振器は光学的に結合して1つの共振モードを形成しており、それぞれの共振器内には活性層が設けられ、上記活性層は同一の共振モード波長に対して利得を有しており、それぞれの活性層に対して、電流を注入する電流注入手段と、電流注入手段から注入された電流を狭窄する電流狭窄手段とが設けられており、基板に隣接した多層膜反射鏡及び/または最表面側の多層膜反射鏡の導電型が、n型であることを特徴とする垂直共振器型面発光半導体レーザ素子(VCSEL)であり、このVCSELは、複数の活性層がそれぞれ異なる共振器内に設けられ、各共振器は光学的に結合して1つの共振モードを形成し、複数の活性層はすべて同一の共振モード波長に対して利得を有しているので、それぞれの活性層に電流注入するとモード同期して発振するため、素子内部の光子密度を増加させることができ、VCSELの緩和振動周波数が増加する。また、高反射率が必要であるために積層数が多くなる基板に隣接した多層膜反射鏡及び/または最表面側の多層膜反射鏡をn型で形成することにより、素子抵抗を低減することができ、VCSELの電気的変調帯域が増加する。従って、VCSELを高速変調することができる。
また、請求項9記載の発明によれば、請求項8記載の垂直共振器型面発光半導体レーザ素子において、前記活性層のうちの少なくとも1つの活性層は、量子井戸層と障壁層を複数積層した多重量子井戸構造から構成されており、障壁層にp型不純物が1×1018cm−3〜1×1019cm−3の範囲でドーピングされていることを特徴とする垂直共振器型面発光半導体レーザ素子(VCSEL)であり、このVCSELは、それぞれ活性層を含む複数の共振器が光学的に結合して1つの共振モードを形成しており、各活性層がモード同期して発振するため、素子内部の光子密度を増加させて、緩和振動周波数を向上させている。さらに、少なくとも1つの活性層は、量子井戸層と障壁層を複数積層した多重量子井戸構造(MQW)から構成されており、障壁層にp型不純物が1×1018cm−3〜1×1019cm−3の範囲でドーピングされているため、多重量子井戸活性層の微分利得が増加し、VCSELの緩和振動周波数をさらに増加させることができる。従って、VCSELの変調速度をさらに向上することができる。
また、請求項10記載の発明によれば、請求項8記載の垂直共振器型面発光半導体レーザ素子において、前記活性層のうちの少なくとも1つの活性層は、窒素と他のV族元素とを含む混晶半導体であることを特徴とする垂直共振器型面発光半導体レーザ素子(VCSEL)であり、このVCSELは、それぞれ活性層を含む複数の共振器が光学的に結合して1つの共振モードを形成しており、各活性層がモード同期して発振するため、素子内部の光子密度を増加させて、緩和振動周波数を向上させている。さらに、少なくとも1つの活性層は窒素と他のV族元素との混晶半導体であることにより、活性層の微分利得を高くでき、緩和振動周波数を向上させることができる。従って、VCSELの変調速度をさらに向上させることができる。また、石英光ファイバの分散がゼロである波長1.31μm帯のVCSELを形成できるため、本発明の高速変調特性を生かすことができる。
また、請求項11記載の発明によれば、請求項8記載の垂直共振器型面発光半導体レーザ素子において、前記電流狭窄手段として、水平横方向に屈折率差を有する構造が用いられており、上記電流狭窄手段による電流狭窄面積が活性層ごとに異なることを特徴とする垂直共振器型面発光半導体レーザ素子(VCSEL)であり、このVCSELは、それぞれ活性層を含む複数の共振器が光学的に結合して1つの共振モードを形成しており、各活性層がモード同期して発振するため、素子内部の光子密度を増加させることができる。さらに、電流狭窄手段として、水平横方向に屈折率差を有する構造が用いられ、上記電流狭窄手段による電流狭窄面積が活性層ごとに異なっており、狭窄面積が狭い電流狭窄構造では、基本横モードの光は閉じ込められ、逆に高次横モードは損失が大きくなり、また、基本横モードに対応した中央部の利得を選択的に増加させることができ、従って、基本横モードを維持した状態で光出力を増加させることができる。一方、狭窄面積が広い電流狭窄構造では、電流狭窄部の抵抗が低減されるため、CR時定数が低減され、電気的な変調帯域を増加させることができ、従って、VCSELの変調速度をさらに向上させることができる。
また、請求項12記載の発明によれば、請求項8記載の垂直共振器型面発光半導体レーザ素子において、前記電流狭窄手段として、水平横方向に屈折率差を有する構造と、イオン注入により形成した高抵抗領域とが、それぞれ異なる活性層に対して設けられており、水平横方向に屈折率差を有する電流狭窄手段による狭窄面積が、イオン注入により形成した高抵抗領域による狭窄面積よりも小さいことを特徴とする垂直共振器型面発光半導体レーザ素子(VCSEL)であり、このVCSELは、それぞれ活性層を含む複数の共振器が光学的に結合して1つの共振モードを形成しており、各活性層がモード同期して発振するため、素子内部の光子密度を増加させることができる。さらに、電流狭窄手段として、水平横方向に屈折率差を有する構造と、イオン注入により形成した高抵抗領域とが、それぞれ異なる活性層に対して設けられており、水平横方向に屈折率差を有する電流狭窄手段による狭窄面積が、イオン注入により形成した高抵抗領域による狭窄面積よりも小さいことから、イオン注入により形成した高抵抗領域による電流狭窄構造においては、容量と抵抗を共に小さくすることができ、電気的な変調帯域を増加させることができる。また、狭窄面積が狭い水平横方向に屈折率差を有する電流狭窄構造では、基本横モードの光は閉じ込められ、逆に高次横モードは発振が抑制されるため、基本横モードを維持した状態で光出力を増加させることができる。以上の効果により、VCSELを高速変調動作させることができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を説明する。
(第1の形態)
本発明の第1の形態は、基板上に多層膜反射鏡で上下をはさまれた複数の共振器を有する垂直共振器型面発光半導体レーザ素子と、変調用パルス電源と、励起用直流電源とを備え、前記垂直共振器型面発光半導体レーザ素子の複数の共振器は光学的に結合して1つの共振モードを形成しており、それぞれの共振器内には、それぞれ、活性層が設けられ、それぞれの活性層は同一の共振モード波長に対して利得を有しており、前記活性層のうちの1つの活性層は、変調用パルス電源に電気的に接続され、また、活性層のうちの他の活性層は、励起用直流電源に電気的に接続され、同一の共振モードに対して、変調用パルス電源に電気的に接続された活性層と励起用直流電源に電気的に接続された活性層とがモード同期して発振するようになっていることを特徴としている。
半導体レーザを直接変調する場合に、変調帯域を制限する原因として、CR時定数,キャリア輸送効果,緩和振動周波数などが挙げられる。特に、緩和振動周波数は、発光層におけるキャリア密度変化に対して誘導放出速度が追随できなくなる限界の周波数であり、直接変調する場合に本質的な制限となっている。
緩和振動周波数frは一般に次式(数1)で表される。
Figure 0004803992
数1において、Γは光閉じ込め係数、gは微分利得、Sは光子密度、τpは光子寿命である。数1によれば、緩和振動周波数frは、光子密度Sを大きくするほど、高くできる。しかしながら、発光層中にキャリアが高注入されると、キャリアオーバーフローや素子の発熱等により利得の飽和が生じ、光子密度を増加させることができなくなってしまう。そのため、緩和振動周波数は10GHz程度に抑えられている。
本発明の第1の形態の発光装置は、基板上に多層膜反射鏡で上下をはさまれた複数の共振器を有する垂直共振器型面発光半導体レーザ素子と、変調用パルス電源と、励起用直流電源とを備え、前記垂直共振器型面発光半導体レーザ素子の複数の共振器は光学的に結合して1つの共振モードを形成しており、それぞれの共振器内には、それぞれ、活性層が設けられ、それぞれの活性層は同一の共振モード波長に対して利得を有しており、前記活性層のうちの1つの活性層は、変調用パルス電源に電気的に接続され、また、活性層のうちの他の活性層は、励起用直流電源に電気的に接続され、同一の共振モードに対して、変調用パルス電源に電気的に接続された活性層と励起用直流電源に電気的に接続された活性層とがモード同期して発振するようになっていることにより(すなわち、複数の共振器が光学的に結合して1つの共振モードが形成されており、同一の共振モードに対して、変調用パルス電源に電気的に接続された活性層と励起用直流電源に電気的に接続された活性層とがモード同期して発振することにより)、垂直共振器型面発光半導体レーザ(VCSEL)素子内部の光子密度を増加させてVCSELの緩和振動周波数を増加させることができる。これにより、簡易な構成で10Gbpsを超える高速変調可能な発光装置を形成できる。
以下、共振器構造が2個の場合を例として説明する。第1の共振器構造には第1の活性層が設けられており、第2の共振器構造には第2の活性層が設けられている。第1の活性層は、変調用パルス電源に電気的に接続されており、第1の活性層に注入する電流を変調することにより、第1の活性層内のキャリア密度が変化して、光出力強度が変調されるようになっている。また、第2の活性層は、励起用直流電源に電気的に接続されており、直流電流が注入されることにより誘導放出が生じ、閾電流以上になるとレーザ発振が生じるようになっている。
第1の活性層と第2の活性層は、異なる共振器構造内に設けられているが、第1の共振器構造と第2の共振器構造は光学的に結合して1つの共振モードを形成している。また、同一の共振モード波長に対して、第1の活性層と第2の活性層とはともに利得を有している。従って、第1の活性層に電流注入したときの発振光と第2の活性層に電流注入したときの発振光は同一波長で発振し、モード同期する。これにより、従来、1つの活性層に電流注入して発生する光子密度に、第2の活性層で発生させた光子密度が同一モードで加えられるため、素子内部の光子密度を従来よりも増加させることができる。従って、VCSELの緩和振動周波数が増加し、10Gbpsを超える高速変調可能な発光装置を実現できる。
本発明の発光装置の特徴を生かすためには、第1の活性層に注入する変調用パルス電源がOFFの場合でも、励起用直流電源より第2の活性層に電流注入することでレーザ発振が維持されている方が好ましい。これにより、少ない注入パルス電流で第1の活性層の利得を増加させることができるため、より高い光出力まで第1の活性層の利得を高く維持することが可能となる。
なお、第1の活性層に電気的に接続されている変調用パルス電源は、パルス電流に直流バイアス電流を付加する機能を有することもできる。第1の活性層に対して、発振閾電流近傍まで直流バイアス電流を加え、さらにパルス電流を重畳させた場合、第1の活性層において、レーザ発振に必要なキャリア密度が蓄積される時間が短縮され、発振遅れ時間が減少する。従って、第1の活性層に加えるパルス電流に対するレーザ発振の応答性が改善され、一層、変調速度を向上させることができる。
また、本発明のVCSELでは、第1の活性層と第2の活性層とはそれぞれ別の共振器構造内に設けられているので、第1の活性層と第2の活性層との距離を離すことができる。従って、第1の活性層と第2の活性層との電気的クロストークや熱的クロストークを低減することができる。
また、前述した非特許文献1に報告されているVCSELは、発振モードに同期した光を外部の端面発光型(DFB)半導体レーザから注入することにより、VCSEL内部の光子密度を高めている。そのため、外部から注入するレーザ光の波長を、VCSELの共振モード波長と厳密に一致させる必要がある。これに対し、本発明では、励起用直流電源に接続された活性層が発光する光は、変調用パルス電源に接続された活性層が発光する光と同一の共振モードでレーザ発振するため、素子内部の光子密度を常に同一波長で増加させることができる。従って、励起光の発振波長を厳密に制御する必要がなく、簡易な装置構成で高速変調を実現できる。
また、本発明においては、励起光を発生させる構造もVCSEL構造となっているため、励起光を発生させるために必要な消費電力を、端面発光型半導体レーザに比べて低減することができる。
なお、文献「Electronnics Lett., Vol.38, No.12, pp278−280 (2002)」には、共振器内に2つの活性層を備えたVCSEL構造が報告されている。上記VCSELは3端子構造となっており、2つの活性層にそれぞれ独立に電流を注入する構造となっている。しかしながら、電流注入する2つの活性層は同一の共振器構造内に設けられており、本発明とは構造が異なっている。
また、文献「Electronnics Lett., Vol.34, No.14, pp1405−1407 (1998)」には、励起用の0.85μm帯VCSELと1.3μm帯VCSELを集積した構造が報告されている。しかし、この報告例においては、2つの共振器構造の共振モードが結合しておらず、それぞれ独立の発振波長で発振する。そのため、本発明のようにモード同期して内部光出力を増加させることができず、緩和振動周波数を増加させる構造とはなっていない。従って、本発明とは構造及び動作原理が異なっている。
また、文献「CLEO2001, CtuB1 (2001)」には、活性層を有する2つの共振器が光学的に結合したVCSELが報告されている。しかしながら、本発明のような高速変調動作については報告されていない。
本発明において、第1の活性層及び第2の活性層は、VCSEL素子内の光定在波分布において、腹の位置に設けることが望ましい。これにより、光定在波と活性領域との結合効率が増加して、閾値を低減することができる。
また、VCSELの温度特性を向上させるために、共振モード波長に対して、室温における活性領域の利得ピーク波長を短波長側にシフトさせることができる。このとき、第1の活性層における波長シフト量と第2の活性層における波長シフト量とは、必ずしも一致させる必要はない。それぞれの活性層の利得スペクトル帯域内に共振モード波長が入っていればよい。
以上、共振器が2個の場合を例として説明してきたが、更に共振器を増加させることも可能である。この場合、変調信号が入力される活性層を1つとし、他の活性層を励起用に用いることができる(他の活性層には直流電流を注入して励起用に用いることができる)。
(第2の形態)
本発明の第2の形態は、第1の形態の発光装置において、垂直共振器型面発光半導体レーザ素子のそれぞれの活性層に対して注入する電流を狭窄する手段が設けられており、変調用パルス電源に電気的に接続された活性層に対して電流狭窄される面積は、励起用直流電源に電気的に接続された活性層に対して電流狭窄される面積よりも広いことを特徴としている。
このように、第2の形態では、第1の形態の発光装置において、それぞれの活性層に対して注入する電流を狭窄する手段が設けられており、変調用パルス電源に電気的に接続された活性層に対して電流狭窄される面積が、励起用直流電源に電気的に接続する活性層に対して電流狭窄される面積よりも広いことにより、変調用パルス電源に電気的に接続された活性層における電流狭窄部の抵抗が低減され、電気的な変調帯域を増加させることができる。また、基本横モードに対応した中央部の利得を選択的に増加させることができ、基本横モードの光出力を増加させることができる。
以下、共振器構造が2個の場合を例として説明する。すなわち、例として、第1の形態で説明したように第1の共振器構造には第1の活性層が設けられており、第2の共振器構造には第2の活性層が設けられているとし、第1の活性層及び第2の活性層に対して、それぞれ注入する電流を狭窄する構造が設けられ、第1の活性層に対して電流狭窄される面積は、第2の活性層に対して電流狭窄される面積よりも広くなっているとする。
このように、変調信号が入力される第1の活性層に対して電流を狭窄する面積を大きくすることで、第1の活性層における電流狭窄部の抵抗が低減され、従って、第1の活性層に注入する電流を変調するときのCR時定数が低減されて、電気的な変調帯域を増加させることができる。
また、励起用直流電源に電気的に接続された第2の活性層においては、第1の活性層の電流注入領域よりも狭い領域に電流が注入される。これにより、基本横モードに対応した中央部の利得を選択的に増加させることができ、従って、基本横モードの光出力を増加させることができる。
(第3の形態)
本発明の第3の形態は、第2の形態の発光装置において、励起用直流電源に電気的に接続された活性層に対して電流を狭窄する手段として、水平横方向に屈折率差を有する構造が用いられることを特徴としている。
このように、第3の形態では、第2の形態の発光装置において、励起用直流電源に電気的に接続される活性層に対して電流を狭窄する手段として、水平横方向に屈折率差を有する構造を用いることにより、基本横モードを維持した状態で光出力を増加させることができる。
すなわち、第3の形態では、変調用パルス電源が接続された第1の活性層の電流注入領域よりも狭い面積で、第2の活性層に対する電流狭窄部では水平方向の屈折率差が形成され、光を中央部に閉じ込める構造となっている。従って、基本横モードの光は閉じ込められ、逆に高次横モードは損失が大きくなるため発振が抑制される。これにより、基本横モードを維持した状態で光出力を増加させることができる。
なお、水平方向に屈折率差が形成される電流狭窄手段としては、例えばAlを含む半導体層を側面から選択的に酸化するAl酸化狭窄構造や、エッチング層を側面から選択的にサイドエッチングするエアギャップ構造を用いることができる。
Al酸化狭窄構造では、Alを含む半導体層を酸化することでAlOx絶縁層が形成され、酸化された領域は電流が流れなくなる。これにより、電流は、酸化されていない領域に狭窄される。また、酸化されていない領域は、酸化された領域よりも屈折率が高いため、横方向に屈折率差が生じて、光を水平横方向に閉じ込めることができる。
また、エアギャップ構造では、電流はサイドエッチングされていない半導体層にのみ流れることで狭窄される。そして、エッチングされていない半導体層がエッチングされた領域よりも屈折率が高くなるため、Al酸化狭窄構造と同様に、光を水平横方向に閉じ込めることができる。
(第4の形態)
本発明の第4の形態は、第2の形態の発光装置において、変調用パルス電源に電気的に接続された活性層に対して電流狭窄する手段として、イオン注入により形成した高抵抗領域が用いられることを特徴としている。
第4の形態では、変調用パルス電源に電気的に接続された活性層に対して電流狭窄する手段として、イオン注入により形成した高抵抗領域が用いられることにより、変調用パルス電源に電気的に接続された活性層に対応する高抵抗領域の容量成分が低減され、電気的な変調帯域をさらに増加させることができる。
すなわち、プロトンや酸素、Cr,Fe等の重金属を半導体層にイオン注入すると、注入された領域は高抵抗となり、電流をイオン注入されていない領域に狭窄することができる。イオン注入により形成した高抵抗領域は、Al酸化狭窄構造やエアギャップ構造に比べて、積層方向の厚さが厚くなる。従って、変調信号が入力される第1の活性層に対する高抵抗領域が形成する容量成分は、Al酸化狭窄構造やエアギャップ構造を用いる場合に比べて低減される。従って、第1の活性層に注入される電流を変調するときのCR時定数が低減され、電気的な変調帯域を増加させることができる。
(第5の形態)
本発明の第5の形態は、第1乃至第4のいずれかの形態の発光装置において、基板に隣接した多層膜反射鏡、および/または、最表面側の多層膜反射鏡の導電型が、n型であることを特徴としている。
基板に隣接した多層膜反射鏡、及び、最表面側の多層膜反射鏡は、VCSELの閾電流を低減するために、高反射率にする必要がある。一方、共振器の間に設けられた多層膜反射鏡は、共振器が光学的に結合する必要があるため、反射率を下げる必要がある。
多層膜反射鏡を半導体で形成する場合に、屈折率の異なる半導体層をブラッグ反射条件を満たすように交互に積層し、積層数を多くすることで、高反射率が得られる。通常、VCSELでは20周期以上の積層数が必要となる。
屈折率の異なる半導体層を積層すると界面にヘテロ障壁が形成される。半導体層において、正孔の有効質量は電子の有効質量よりも約1桁大きいため、正孔はヘテロ障壁をトンネルすることが困難である。そのため、p型半導体を積層した多層膜反射鏡の抵抗は、n型半導体層を積層した多層膜反射鏡よりも抵抗が高くなる。
そこで、第5の形態では、高反射率が必要であるために積層数が多くなる、基板に隣接した多層膜反射鏡、および/または、最表面側の多層膜反射鏡を、n型で形成することにより、素子の抵抗を低減させている。これにより、発光装置の消費電力を低減することができる。
(第6の形態)
本発明の第6の形態は、第1乃至第4のいずれかの形態の発光装置において、基板に隣接した多層膜反射鏡、および/または、最表面側の多層膜反射鏡が、低キャリア濃度層であることを特徴としている。
多層膜反射鏡を構成する半導体層のキャリア濃度が増加すると、自由キャリアによる光吸収が増加する。さらにp型半導体層では、正孔濃度が増加すると価電子帯間吸収による光吸収が増加してしまう。
基板に隣接した多層膜反射鏡、および/または、最表面側の多層膜反射鏡は、VCSELの閾電流を低減するために、高反射率にする必要がある。そのため、多層膜反射鏡の積層数を数10層と多くしている。積層数が多い、基板に隣接した多層膜反射鏡、および/または、最表面側の多層膜反射鏡において、各半導体層のキャリア濃度を低減させることにより、VCSELの内部吸収損失を効果的に低減することができる。従って、VCSELの閾電流をさらに低減でき、また外部量子効率も増加させることができる。
このように、第6の形態では、基板に隣接した多層膜反射鏡、および/または、最表面側の多層膜反射鏡が、低キャリア濃度層であることにより、光吸収を抑制して高反射率の反射鏡を形成することができて、VCSELの閾電流を低減し、また外部量子効率を増加させることができる。
なお、低キャリア濃度層のキャリア濃度としては、半導体層中の自由キャリア吸収を10cm−1未満に低減して、光吸収損失の影響を抑制できるようにするために、5×1017cm−3以下であることが望ましい。
(第7の形態)
本発明の第7の形態は、第1乃至第6のいずれかの形態の発光装置において、変調用パルス電源に電気的に接続された活性層は、量子井戸層と障壁層を複数積層した多重量子井戸構造(MQW)から構成されており、障壁層にp型不純物が1×1018cm−3〜1×1019cm−3の範囲でドーピングされていることを特徴としている。
MQW構造の障壁層に、p型不純物を1×1018cm−3〜1×1019cm−3の範囲でドーピングすることにより、レーザ発振に必要な注入電子密度が減少し、微分利得gを増加させることができる。数1より、微分利得gを増加させる効果は、VCSEL素子内の光子密度Sを増加させる効果と併用することにより、さらにVCSELの緩和振動周波数を増加させることができる。
障壁層に対するp型不純物のドーピング濃度が1×1018cm−3よりも小さい場合には、微分利得を増加させる効果がほとんど見られない。また、障壁層に対するp型不純物のドーピング濃度が1×1019cm−3よりも大きくなると、障壁層の結晶品質が低下してしまう。従って、障壁層に対するp型不純物のドーピング濃度は、1×1018cm−3〜1×1019cm−3の範囲で行うことが望ましい。
このように、第7の形態では、変調用パルス電源と電気的に接続された活性層は、量子井戸層と障壁層を複数積層した多重量子井戸構造(MQW)から構成されており、障壁層にp型不純物が1×1018cm−3〜1×1019cm−3の範囲でドーピングされていることにより、多重量子井戸構造活性層の微分利得を増加させることができ、さらにVCSELの緩和振動周波数を増加させることができる。
なお、p型不純物としては、C,Zn,Be,Mg等を用いることが可能である。特に、Cは、高濃度にドーピングしても熱拡散しにくいため、急峻なドーピングプロファイルを形成することができ、適している。
(第8の形態)
本発明の第8の形態は、第1乃至第7のいずれかの形態の発光装置において、活性層には、窒素と他のV族元素との混晶半導体が含まれていることを特徴としている。
窒素と他のV族元素との混晶半導体としては、例えばGaNAs、GaInNAs、GaNAsP、GaInNAsP、GaNAsSb、GaInNAsSb、GaNAsPSb、GaInNAsPSb等がある。上記混晶半導体は、GaAs基板上に結晶成長可能な長波長帯材料系である。以下、GaInNAsを例にして説明する。
GaInNAsは、GaAs等の障壁層との伝導帯電子の閉じ込め障壁高さを300meV以上と高くすることができるため、電子のオーバーフローが抑制され、良好な温度特性を有している。また、AlGaAs材料系を用いた、高反射率,高熱伝導性の分布ブラッグ反射鏡を用いることができ、長波長帯で良好な性能の垂直共振器型面発光半導体レーザを形成可能である。
本発明は、変調周波数を向上させることで、10Gbpsを超える大容量伝送を可能とする直接変調光源を提供することを目的としている。10Gbps以上の高い伝送帯域では、石英光ファイバの分散によって伝送距離が制限される。GaInNAs等の窒素と他のV族元素との混晶半導体を活性領域に用いることで、石英光ファイバの分散がゼロである波長1.31μmのVCSELを形成できるため、本発明の高速変調特性を生かすことができる。
このように、第8の形態では、活性層には、窒素と他のV族元素との混晶半導体が含まれていることにより、石英光ファイバの分散がゼロである波長1.31μmのVCSELを形成することができ、これによって、10Gbps以上の大容量伝送に適した発光装置を形成できる。
(第9の形態)
本発明の第9の形態は、第1乃至第8のいずれかの形態の発光装置を備えていることを特徴とする光伝送システムである。
上記発光装置は、10Gbpsを超える高速変調(例えば40Gbps)をVCSELの直接変調で可能にしている。そのため、外部変調器や電子冷却素子を用いない安価な構成となっている。従って、大容量の光伝送システムを低コストで構築することができる。
(第10の形態)
本発明の第10の形態は、基板上に、多層膜反射鏡で上下をはさまれた複数の共振器を備え、複数の共振器は光学的に結合して1つの共振モードを形成しており、それぞれの共振器内には活性層が設けられ、上記活性層は同一の共振モード波長に対して利得を有しており、それぞれの活性層に対して、電流を注入する電流注入手段と、電流注入手段から注入された電流を狭窄する電流狭窄手段とが設けられており、基板に隣接した多層膜反射鏡及び/または最表面側の多層膜反射鏡の導電型が、n型であることを特徴とする垂直共振器型面発光半導体レーザ素子(VCSEL)である。
すなわち、本発明の第10の形態の垂直共振器型面発光半導体レーザ素子(VCSEL)は、複数の活性層がそれぞれ異なる共振器内に設けられている。そして、各共振器は光学的に結合して1つの共振モードを形成している。また、複数の活性層は、すべて同一の共振モード波長に対して利得を有している。従って、それぞれの活性層に電流注入しても同一波長で発振し、モード同期する。これにより、従来1つの活性層に電流注入して発生する光子密度に、他の活性層で発生させた光子密度が同一モードで加えられるため、素子内部の光子密度を従来よりも増加させることができる。従って、VCSELの緩和振動周波数が増加し、高速変調動作が可能となる。
なお、活性層は、VCSEL内の光定在波分布において、腹の位置に設けることが望ましい。これにより、光定在波と活性層との結合効率が増加して、閾電流を低減することができる。
また、本発明の第10の形態では、基板に隣接した多層膜反射鏡及び/または最表面側の多層膜反射鏡の導電型が、n型であることを特徴としている。基板に隣接した多層膜反射鏡及び最表面側の多層膜反射鏡は、VCSELの閾電流を低減するために、高反射率にする必要がある。一方、共振器の間に設けられた多層膜反射鏡は、共振器が光学的に結合する必要があるため、反射率を下げる必要がある。
すなわち、多層膜反射鏡を半導体で形成する場合に、屈折率の異なる半導体層をブラッグ反射条件を満たすように交互に積層し、積層数を多くすることで高反射率が得られる。通常、VCSELでは20周期以上の積層数が必要となる。屈折率の異なる半導体層を積層すると、界面にヘテロ障壁が形成される。半導体層において、正孔の有効質量は電子の有効質量よりも約1桁大きいため、正孔はヘテロ障壁をトンネルすることが困難である。そのため、p型半導体を積層した多層膜反射鏡の抵抗は、n型半導体層を積層した多層膜反射鏡よりも抵抗が高くなる。
そこで、本発明の第10の形態では、高反射率が必要であるために積層数が多くなる基板に隣接した多層膜反射鏡及び/または最表面側の多層膜反射鏡をn型で形成することにより、素子の抵抗を低減させている。これにより、CR時定数が低減され、電気的な変調帯域を増加させることができる。また、VCSELの消費電力を低減することができる。
このように、第10の形態のVCSELでは、複数の活性層がそれぞれ異なる共振器内に設けられ、各共振器は光学的に結合して1つの共振モードを形成し、複数の活性層はすべて同一の共振モード波長に対して利得を有しているので、それぞれの活性層に電流注入するとモード同期して発振するため、素子内部の光子密度を増加させることができ、VCSELの緩和振動周波数が増加する。また、高反射率が必要であるために積層数が多くなる基板に隣接した多層膜反射鏡及び/または最表面側の多層膜反射鏡をn型で形成することにより、素子抵抗を低減することができ、VCSELの電気的変調帯域が増加する。従って、VCSELを高速変調することができる。
(第11の形態)
本発明の第11の形態は、基板上に、多層膜反射鏡で上下をはさまれた複数の共振器を備え、複数の共振器は光学的に結合して1つの共振モードを形成しており、それぞれの共振器内には活性層が設けられ、上記活性層は同一の共振モード波長に対して利得を有しており、それぞれの活性層に対して、電流を注入する電流注入手段と、電流注入手段から注入された電流を狭窄する電流狭窄手段とが設けられており、基板に隣接した多層膜反射鏡及び/または最表面側の多層膜反射鏡が低キャリア濃度層であることを特徴とする垂直共振器型面発光半導体レーザ素子(VCSEL)である。
本発明の第11の形態のVCSELは、第10の形態と同様に、それぞれ活性層を含む複数の共振器が光学的に結合して1つの共振モードを形成しており、各活性層がモード同期して発振するため、素子内部の光子密度を増加させて、高速変調動作が可能となる。
さらに、第11の形態のVCSELは、基板に隣接した多層膜反射鏡及び/または最表面側の多層膜反射鏡が低キャリア濃度層であることを特徴としている。多層膜反射鏡を構成する半導体層のキャリア濃度が増加すると、自由キャリアによる光吸収が増加する。さらにp型半導体層では、正孔濃度が増加すると価電子帯間吸収による光吸収が増加してしまう。一方、基板に隣接した多層膜反射鏡及び/または最表面側の多層膜反射鏡は、VCSELの閾電流を低減するために、高反射率にする必要がある。そのため、多層膜反射鏡の積層数を数10層と多くしている。第11の形態では、積層数が多い基板に隣接した多層膜反射鏡及び/または最表面側の多層膜反射鏡において各半導体層のキャリア濃度を低減させることにより、VCSELの内部吸収損失を効果的に低減することができ、VCSELの閾電流を一層低減することができる。また、外部量子効率も増加させることができる。
低キャリア濃度層のキャリア濃度としては、半導体層中の自由キャリア吸収を10cm−1未満に低減して、光吸収損失の影響を抑制できるようにするために、5×1017cm−3以下であることが望ましい。
このように、第11の形態のVCSELでは、それぞれ活性層を含む複数の共振器が光学的に結合して1つの共振モードを形成しており、各活性層がモード同期して発振するため、素子内部の光子密度を増加させて、高速変調動作が可能となる。さらに、基板に隣接した多層膜反射鏡及び/または最表面側の多層膜反射鏡が低キャリア濃度層であるため、VCSELの内部吸収損失を低減することができ、VCSELの閾電流の低減、外部量子効率の向上が可能となる。
(第12の形態)
本発明の第12の形態は、基板上に、多層膜反射鏡で上下をはさまれた複数の共振器を備え、複数の共振器は光学的に結合して1つの共振モードを形成しており、それぞれの共振器内には活性層が設けられ、上記活性層は同一の共振モード波長に対して利得を有しており、それぞれの活性層に対して、電流を注入する電流注入手段と、電流注入手段から注入された電流を狭窄する電流狭窄手段とが設けられており、上記活性層のうちの少なくとも1つの活性層は、量子井戸層と障壁層を複数積層した多重量子井戸構造から構成されており、障壁層にp型不純物が1×1018cm−3〜1×1019cm−3の範囲でドーピングされていることを特徴とする垂直共振器型面発光半導体レーザ素子(VCSEL)である。
本発明の第12の形態のVCSELは、第10の形態と同様に、それぞれ活性層を含む複数の共振器が光学的に結合して1つの共振モードを形成しており、各活性層がモード同期して発振するため、素子内部の光子密度を増加させて、緩和振動周波数を向上させている。
さらに、第12の形態のVCSELは、少なくとも1つの活性層が、量子井戸層と障壁層を複数積層した多重量子井戸構造(MQW)から構成されており、障壁層にp型不純物が1×1018cm−3〜1×1019cm−3の範囲でドーピングされていることを特徴としている。
MQW構造の障壁層に、p型不純物を1×1018cm−3〜1×1019cm−3の範囲でドーピングすることにより、レーザ発振に必要な注入電子密度が減少し、微分利得gを増加させることができる。微分利得gを増加させる効果は、VCSEL素子内の光子密度Sを増加させる効果と併用することにより、さらにVCSELの緩和振動周波数を増加させることができる。従って、VCSELの変調速度をより一層向上させることができる。
障壁層に対するp型不純物のドーピング濃度が1×1018cm−3より小さい場合には、微分利得を増加させる効果がほとんど見られない。また、障壁層に対するp型不純物のドーピング濃度が1×1019cm−3より大きくしてしまうと、障壁層の結晶品質が低下してしまう。従って、障壁層に対するp型不純物のドーピング濃度は、1×1018cm−3〜1×1019cm−3の範囲で行うことが望ましい。
p型不純物としては、C,Zn,Be,Mg等を用いることが可能である。特にCは高濃度にドーピングしても熱拡散しにくいため、急峻なドーピングプロファイルを形成することができるため、適している。
このように、第12の形態のVCSELでは、それぞれ活性層を含む複数の共振器が光学的に結合して1つの共振モードを形成しており、各活性層がモード同期して発振するため、素子内部の光子密度を増加させて、緩和振動周波数を向上させている。さらに、少なくとも1つの活性層は、量子井戸層と障壁層を複数積層した多重量子井戸構造(MQW)から構成されており、障壁層にp型不純物が1×1018cm−3〜1×1019cm−3の範囲でドーピングされているため、多重量子井戸活性層の微分利得が増加し、VCSELの緩和振動周波数をさらに増加させることができる。従って、VCSELの変調速度をさらに向上することができる。
(第13の形態)
本発明の第13の形態は、基板上に、多層膜反射鏡で上下をはさまれた複数の共振器を備え、複数の共振器は光学的に結合して1つの共振モードを形成しており、それぞれの共振器内には活性層が設けられ、上記活性層は同一の共振モード波長に対して利得を有しており、それぞれの活性層に対して、電流を注入する電流注入手段と、電流注入手段から注入された電流を狭窄する電流狭窄手段とが設けられており、上記活性層のうちの少なくとも1つの活性層は、窒素と他のV族元素とを含む混晶半導体であることを特徴とする垂直共振器型面発光半導体レーザ素子(VCSEL)である。
本発明の第13の形態のVCSELは、第10の形態と同様に、それぞれ活性層を含む複数の共振器が光学的に結合して1つの共振モードを形成しており、各活性層がモード同期して発振するため、素子内部の光子密度を増加させて、高速変調動作が可能となる。
さらに、第13の形態のVCSELは、少なくとも1つの活性層が、窒素と他のV族元素との混晶半導体であることを特徴としている。
窒素と他のV族元素との混晶半導体としては、例えばGaNAs、GaInNAs、GaNAsP、GaInNAsP、GaNAsSb、GaInNAsSb、GaNAsPSb、GaInNAsPSb等がある。上記混晶半導体は、GaAs基板上に結晶成長可能な長波長帯材料系である。以下、GaInNAsを例にして説明する。
GaInAsに対してNを添加すると、伝導帯バンド端位置が大きく低下する。そのため、GaInNAsはGaAs等の障壁層との伝導帯電子の閉じ込め障壁高さを300meV以上と高くすることができる。従って、活性層中に形成された基底準位と励起準位のエネルギー差が大きくなり、活性層の微分利得を高くすることができる。従って、緩和振動周波数が向上する。
また、本発明は、変調周波数を向上させることで、10Gbpsを超える大容量伝送を可能とする直接変調光源を提供することを目的としている。10Gbps以上の高い伝送帯域では、石英光ファイバの分散によって伝送距離が制限される。GaInNAs等の窒素と他のV族元素との混晶半導体を活性領域に用いることで、石英光ファイバの分散がゼロである波長1.31μm帯のVCSELを形成できるため、本発明の高速変調特性を生かすことができる。
このように、第13の形態のVCSELでは、それぞれ活性層を含む複数の共振器が光学的に結合して1つの共振モードを形成しており、各活性層がモード同期して発振するため、素子内部の光子密度を増加させて、緩和振動周波数を向上させている。さらに、少なくとも1つの活性層は窒素と他のV族元素との混晶半導体であることにより、活性層の微分利得を高くでき、緩和振動周波数を向上させることができる。従って、VCSELの変調速度をさらに向上させることができる。また、石英光ファイバの分散がゼロである波長1.31μm帯のVCSELを形成できるため、本発明の高速変調特性を生かすことができる。
(第14の形態)
本発明の第14の形態は、基板上に、多層膜反射鏡で上下をはさまれた複数の共振器を備え、複数の共振器は光学的に結合して1つの共振モードを形成しており、それぞれの共振器内には活性層が設けられ、上記活性層は同一の共振モード波長に対して利得を有しており、それぞれの活性層に対して、電流を注入する電流注入手段と、電流注入手段から注入された電流を狭窄する電流狭窄手段とが設けられており、上記電流狭窄手段として、水平横方向に屈折率差を有する構造が用いられており、上記電流狭窄手段による電流狭窄面積が活性層ごとに異なることを特徴とする垂直共振器型面発光半導体レーザ素子(VCSEL)である。
本発明の第14の形態のVCSELは、第10の形態と同様に、それぞれ活性層を含む複数の共振器が光学的に結合して1つの共振モードを形成しており、各活性層がモード同期して発振するため、素子内部の光子密度を増加させることができる。
さらに、第14の形態では、電流狭窄手段として、水平横方向に屈折率差を有する構造が用いられており、上記電流狭窄手段による電流狭窄面積が活性層ごとに異なることを特徴としている。
水平方向に屈折率差が形成される電流狭窄手段としては、例えばAlを含む半導体層を側面から選択的に酸化するAl酸化狭窄構造や、エッチング層を側面から選択的にサイドエッチングするエアギャップ構造がある。
ここで、Al酸化狭窄構造では、Alを含む半導体層を酸化することでAlO絶縁層が形成されるため、酸化された領域は電流が流れなくなる。これにより、電流は酸化されていない領域に狭窄される。また、酸化されていない領域は、酸化された領域よりも屈折率が高いため、横方向に屈折率差が生じて光を水平横方向に閉じ込める作用を有する。
また、エアギャップ構造では、電流はサイドエッチングされていない半導体層にのみ流れることで狭窄される。そして、エッチングされていない半導体層がエッチングされた領域よりも屈折率が高くなるため、同様に光を水平横方向に閉じ込める作用を有する。
複数の活性層のそれぞれ設けられた電流狭窄構造の中で、電流狭窄面積が狭い電流狭窄構造は、光を中央部に閉じ込める働きをする。従って、基本横モードの光は閉じ込められ、逆に高次横モードは損失が大きくなる。そのため、高次横モードの発振が抑制される。また、最も電流狭窄面積が狭い電流狭窄構造では、基本横モードに対応した中央部の利得を選択的に増加させることができる。従って、基本横モードを維持した状態で光出力を増加させることができる。
一方、狭窄面積が広い電流狭窄構造では、電流狭窄部の抵抗が低減される。従って、動作電圧を低減することができ、消費電力増加を抑制することができる。
狭窄面積が広い電流狭窄構造に対応した活性層に注入する電流を変調信号に応じて変調させる場合、電流狭窄部の抵抗が低いためCR時定数が低減され、電気的な変調帯域を増加させることができる。一方、狭窄面積が狭く抵抗の高い電流狭窄構造に対応した活性層に対しては、励起用直流電流を流すことで電気的な変調速度の低下を生じさせることなく、素子内部の光子密度を増加させることができる。従って、直接変調により、VCSELの高速変調動作を実現することができる。
このように、第14の形態のVCSELでは、それぞれ活性層を含む複数の共振器が光学的に結合して1つの共振モードを形成しており、各活性層がモード同期して発振するため、素子内部の光子密度を増加させることができる。さらに、電流狭窄手段として、水平横方向に屈折率差を有する構造が用いられ、上記電流狭窄手段による電流狭窄面積が活性層ごとに異なっており、狭窄面積が狭い電流狭窄構造では、基本横モードの光は閉じ込められ、逆に高次横モードは損失が大きくなり、また、基本横モードに対応した中央部の利得を選択的に増加させることができ、従って、基本横モードを維持した状態で光出力を増加させることができる。一方、狭窄面積が広い電流狭窄構造では、電流狭窄部の抵抗が低減されるため、CR時定数が低減され、電気的な変調帯域を増加させることができ、従って、VCSELの変調速度をさらに向上させることができる。
(第15の形態)
本発明の第15の形態は、基板上に、多層膜反射鏡で上下をはさまれた複数の共振器を備え、複数の共振器は光学的に結合して1つの共振モードを形成しており、それぞれの共振器内には活性層が設けられ、上記活性層は同一の共振モード波長に対して利得を有しており、それぞれの活性層に対して、電流を注入する電流注入手段と、電流注入手段から注入された電流を狭窄する電流狭窄手段とが設けられており、電流狭窄手段として、水平横方向に屈折率差を有する構造と、イオン注入により形成した高抵抗領域とが、それぞれ異なる活性層に対して設けられており、水平横方向に屈折率差を有する電流狭窄手段による狭窄面積が、イオン注入により形成した高抵抗領域による狭窄面積よりも小さいことを特徴とする垂直共振器型面発光半導体レーザ素子(VCSEL)である。
本発明の第15の形態のVCSELは、第10の形態と同様に、それぞれ活性層を含む複数の共振器が光学的に結合して1つの共振モードを形成しており、各活性層がモード同期して発振するため、素子内部の光子密度を増加させることができる。
さらに、第15の形態では、電流狭窄手段として、水平横方向に屈折率差を有する構造と、イオン注入により形成した高抵抗領域とが、それぞれ異なる活性層に対して設けられており、水平横方向に屈折率差を有する電流狭窄手段による狭窄面積が、イオン注入により形成した高抵抗領域による狭窄面積よりも小さいことを特徴としている。
プロトンや酸素,Cr,Fe等の重金属を半導体層にイオン注入することにより、注入された領域は高抵抗となるため、電流をイオン注入していない領域に狭窄することができる。イオン注入により形成した高抵抗領域は、Al酸化狭窄構造やエアギャップ構造に比べて、積層方向の厚さが厚くなる。従って、高抵抗領域が形成する容量成分は、Al酸化狭窄構造やエアギャップ構造を用いた場合に比べて低減される。また、イオン注入により形成した高抵抗領域による狭窄面積は、水平横方向に屈折率差を有する電流狭窄手段による狭窄面積よりも広いため、電流狭窄部の抵抗が低減される。従って、容量と抵抗を共に小さくすることができ、活性層に注入する電流を変調するときのCR時定数が一層低減され、電気的な変調帯域を増加させることができる。
また、狭窄面積が狭い水平横方向に屈折率差を有する電流狭窄構造では、光を中央部に閉じ込める働きをする。従って、基本横モードの光は閉じ込められ、逆に高次横モードは発振が抑制される。従って、基本横モードを維持した状態で光出力を増加させることができる。これにより、素子内部の光子密度を高めて、VCSELを高速変調動作させることができる。
上述したように、本発明の第10〜第15の形態の垂直共振器型面発光半導体レーザ素子(VCSEL)は、異なる共振器にそれぞれ活性層が設けられていることを特徴としている。
活性層を含むpn接合に電流を流すためには、活性層のバンドギャップエネルギーにほぼ対応したジャンクション電圧を印加する必要がある。そのため、活性層を含むpn接合では電圧降下に対応してジュール熱が発生する。それぞれ独立に電流注入できる複数の活性層を有する場合は、それぞれの活性層で発熱が生じる。そのため、活性層同士が近接していると、一方の活性層の発熱が他方の活性層の発光効率を低下させる熱的クロストークが発生してしまう。本発明のVCSELでは、異なる共振器にそれぞれ活性層が設けられており、活性層間の距離を離すことができるため、活性層間での熱的クロストークを低減することができる。
また、活性層と活性層の間に設けられた半導体多層膜は、低屈折率層と高屈折率層を含んでいる。低屈折率層は屈折率をできるだけ低下させるため、バンドギャップエネルギーが高く設定される。従って、活性層と活性層の間にはヘテロ障壁高さの高い低屈折率層が設けられることとなり、キャリアが一方の活性層から他方の活性層にオーバーフローしにくい構造となっている。従って、活性層間での電気的クロストークについても低減することができる。
このように、第15の形態のVCSELでは、それぞれ活性層を含む複数の共振器が光学的に結合して1つの共振モードを形成しており、各活性層がモード同期して発振するため、素子内部の光子密度を増加させることができる。さらに、電流狭窄手段として、水平横方向に屈折率差を有する構造と、イオン注入により形成した高抵抗領域とが、それぞれ異なる活性層に対して設けられており、水平横方向に屈折率差を有する電流狭窄手段による狭窄面積が、イオン注入により形成した高抵抗領域による狭窄面積よりも小さいことから、イオン注入により形成した高抵抗領域による電流狭窄構造においては、容量と抵抗を共に小さくすることができ、電気的な変調帯域を増加させることができる。また、狭窄面積が狭い水平横方向に屈折率差を有する電流狭窄構造では、基本横モードの光は閉じ込められ、逆に高次横モードは発振が抑制されるため、基本横モードを維持した状態で光出力を増加させることができる。以上の効果により、VCSELを高速変調動作させることができる。
実施例1は本発明の第1の形態に対応した実施例である。図1は、本発明の実施例1の発光装置を示す図である。図1の発光装置は、光源として垂直共振器型面発光半導体レーザ素子(VCSEL)を備えている。
このVCSELは、p型GaAs基板101上に、p型下部分布ブラッグ反射鏡(DBR)102、p型AlAs層103、Al0.3Ga0.7As第1スペーサ層104、GaAs/Al0.3Ga0.7As多重量子井戸第1活性層105、n型Al0.3Ga0.7As第2スペーサ層106、n型DBR107、Al0.3Ga0.7As第3スペーサ層108、GaAs/Al0.3Ga0.7As多重量子井戸第2活性層109、Al0.3Ga0.7As第4スペーサ層110、p型Al0.99Ga0.01As層111、p型上部DBR112が順次積層されている(積層構造が構成されている)。
ここで、p型下部DBR102は、p型Al0.2Ga0.8As層とp型Al0.9Ga0.1As層を1/4波長厚で交互に積層して形成されている。
また、n型DBR107は、n型Al0.2Ga0.8As層とn型Al0.9Ga0.1As層を1/4波長厚で交互に積層して形成されている。
また、p型上部DBR112は、p型Al0.2Ga0.8As層とp型Al0.9Ga0.1As層を1/4波長厚で交互に積層して形成されている。
そして、上記積層構造の表面から、n型DBR107の途中まで円筒状にエッチングされて、第1のメサ構造が形成されている。さらに、第1のメサ構造よりも大きいサイズで、p型下部DBR102に達するまで円筒状にエッチングされて第2のメサ構造が形成されている。
そして、第1のメサ構造及び第2のメサ構造の側面から、p型AlAs層103とp型Al0.99Ga0.01As層111が選択的に酸化されて、AlO絶縁領域116が形成されている。このとき、p型AlAs層103の酸化狭窄開口面積とp型Al0.99Ga0.01As層111の酸化狭窄開口面積とがほぼ等しくなるように作製した。
そして、p型上部DBR112の表面には、光出射部を除いて、リング状のp側上部電極113が形成されている。そして、第1のメサ構造底面(第2のメサ構造頂上部)には、n側電極114が形成されている。また、p型GaAs基板101の裏面には、p側下部電極115が形成されている。
p側上部電極113とn側電極114は、変調用パルス電源117に電気的に接続されている。変調用パルス電源117は、外部からの電気的変調信号に応じてp側上部電極113とn側電極114との間に加える電流を変調する機能を有している。また、n側電極114とp側下部電極115は、励起用直流電源118に電気的に接続されている。
図1のVCSELにおいては、p型下部DBR102とn型DBR107に挟まれた第1の共振器と、n型DBR107とp型上部DBR112に挟まれた第2の共振器とを有している。p型下部DBR102、n型DBR107、p型上部DBR112のブラッグ反射波長は、全て0.85μmとなっている。また、2つの共振器の共振器長は、共に0.85μmの光学的距離となるように設計されている。n型DBR107の積層周期数を3周期と少なくすることで、2つの共振器は光学的に結合し、1つの共振モードが形成される。また、第1活性層105と第2活性層109は、共振器内の光定在波分布の腹に位置している。
このような構成の発光装置では、励起用直流電源118より、n側電極114とp側下部電極115との間に順方向に電流を通電すると、GaAs/ Al0.3Ga0.7As多重量子井戸第1活性層105にキャリアが注入されて発光再結合し、0.85μm帯の光を放出する。このとき、電流は、p型AlAs層103を選択的に酸化したAlO絶縁領域116により狭窄される。第1活性層105で発光した光は、p型下部DBR102とn型DBR107とp型上部DBR112が光学的に結合した複合共振器内で共振し、閾電流を超えると、基板と垂直上方にレーザ光が連続的に出射される。
図5(a),(b)は実施例1の発光装置の動作を説明するための図である。図5(a)は、励起用直流電源118の電流(1)とVCSELの光出力との関係を示す図である。このとき、変調用パルス電源の電流は0である。実施例1の発光装置では、図5(a)に示したIbの位置に励起用直流電源118の電流(1)を設定することにより、光出力P0が出力される。
また、変調用パルス電源117より、p側上部電極113とn側電極114との間にパルス電流を加えると、GaAs/Al0.3Ga0.7As多重量子井戸第2活性層109にキャリアが注入されて発光再結合し、0.85μm帯の光を放出する。このとき、電流はp型Al0.99Ga0.01As層111を選択的に酸化したAlO絶縁領域116により電流が狭窄される。第2活性層109で発光した光は、p型下部DBR102とn型DBR107とp型上部DBR112が光学的に結合した複合共振器内で共振し、閾電流を超えると、基板と垂直上方にレーザ光が変調信号に応じて出射される。
第1活性層105と第2活性層109のバンドギャップを等しくしており、また、2つの共振器が結合した同一の共振モードで発振するため、第1活性層105に電流注入したときの発振光と第2活性層109に電流注入したときの発振光とは、同一波長で発振する。このとき、第1活性層105に連続的に電流を注入して発振させた状態で、第2活性層109に注入する電流を0からImの範囲で変調させると、図5(b)に示すように光出力強度は、P0とP1の間で変調される。第1活性層105に電流注入して発生する光に、第2活性層109で発生した光が同一モードで加えられるため、VCSEL素子内部の光子密度を増加させることができる。これにより、VCSELの緩和振動周波数を増加させることができる。
単一の活性層のみに注入する電流を増加させても、キャリアのオーバーフローにより利得が飽和してしまい、光出力が増加できなくなる。1つの活性層の層厚を厚くしていくことで利得飽和するキャリア密度を高くできるが、VCSEL素子内部の光定在波分布の腹の位置から活性層位置がずれてしまうため、活性層利得が光と結合する割合が減少して、実質的に利得が増加しなくなってしまう。また、多重量子井戸活性層において、量子井戸数を増加させていくと、キャリア注入が不均一になってしまい、高利得を得ることが困難となる。
本発明では、独立に電流注入する手段を有する複数の活性層を有し、またそれぞれの活性層は光定在波分布の腹の位置に設けており、各活性層に注入する電流を制御することで、それぞれの活性層におけるキャリアオーバーフローを抑制して、より高い光出力まで利得飽和が生じにくくしている。従って、緩和振動周波数が増加させて、高速変調が可能である。
実施例2は、第2,第3,第5の形態に対応した実施例である。図2は、本発明の実施例2の発光装置を示す図である。図2の発光装置は、光源としてVCSELを備えている。
このVCSELは、n型GaAs基板201上に、n型下部DBR202、Al0.2Ga0.8As第1スペーサ層203、GaInAs/GaAs多重量子井戸第1活性層204、Al0.2Ga0.8As第2スペーサ層205、p型AlAs層206、p型DBR207、p型第2AlAs層208、Al0.2Ga0.8As第3スペーサ層209、GaInAs/GaAs多重量子井戸第2活性層210、Al0.2Ga0.8As第4スペーサ層211、n型上部DBR212が順次積層されている(積層構造が構成されている)。
ここで、n型下部DBR202は、n型GaAs層とn型Al0.9Ga0.1As層を1/4波長厚で交互に積層して形成されている。
また、p型DBR207は、p型GaAs層とp型Al0.9Ga0.1As層を1/4波長厚で交互に積層して形成されている。
また、n型上部DBR212は、n型GaAs層とp型Al0.9Ga0.1As層を1/4波長厚で交互に積層して形成されている。
そして、上記積層構造表面から、p型DBR207の途中まで円筒状にエッチングされて、第1のメサ構造が形成されている。さらに、第1のメサ構造よりも大きいサイズで、n型下部DBR202に達するまで円筒状にエッチングされて、第2のメサ構造が形成されている。
そして、第1のメサ構造及び第2のメサ構造の側面から、p型第1AlAs層206とp型第2AlAs層208が選択的に酸化されて、AlO絶縁領域116が形成されている。このとき、p型第1AlAs層206の酸化狭窄開口面積は、p型第2AlAs層208の酸化狭窄開口面積よりも大きくなるように作製した。
そして、n型上部DBR212の表面には、光出射部を除いて、リング状のn側上部電極213が形成されている。そして、第1のメサ構造底面(第2のメサ構造頂上部)には、p側電極214が形成されている。また、n型GaAs基板201の裏面には、n側下部電極215が形成されている。
n側上部電極213とp側電極214は、励起用直流電源118に電気的に接続されている。また、p側電極214とn側下部電極215は、変調用パルス電源117に電気的に接続されている。
図2のVCSELにおいては、p型DBR207の積層周期数を少なくすることで、2つの共振器は光学的に結合し、1つの共振モードが形成されている。また、第1活性層204と第2活性層210のバンドギャップを等しくしており、また、2つの共振器が結合した同一の共振モードで発振するため、第1活性層204に電流注入したときの発振光と第2活性層210に電流注入したときの発振光とは、同一波長(0.98μm)で発振する。第2活性層210に変調用パルス電源117から入力される変調電気信号に応じて発生するレーザ光に、第1活性層204に励起用直流電源118から電流注入して発生する光が同一モードで加えられるため、VCSEL素子内部の光子密度が増加し、VCSELの緩和振動周波数を増加させることができる。
この実施例2では、励起用直流電流を第2活性層210に注入するときに通過するDBRにおいて、高反射率が必要であるために積層数が多くなる最表面側の上部DBR212をn型で形成することにより、素子の抵抗を低減させている。また、変調信号を入力する第1活性層204に対して電流を狭窄する酸化狭窄開口面積を、第2活性層210に対する酸化狭窄開口面積よりも大きくしているため、第1活性層204における電流狭窄部の抵抗が低減される。従って、第1活性層204に注入する電流を変調するときのCR時定数が低減され、電気的な変調帯域を増加させることができる。
また、励起用直流電源118に電気的に接続された第2活性層210においては、第2活性層204の電流注入領域よりも狭い領域に電流が注入される。これにより、基本横モードに対応した中央部の利得を選択的に増加させることができて、基本横モードの光出力を増加させることができる。
また、酸化狭窄構造において、酸化されていない領域は酸化された領域116よりも屈折率が高いため、横方向に屈折率差が生じで光を水平横方向に閉じ込める作用を有する。変調用パルス電源117が接続された第1活性層204の電流注入領域よりも狭い面積で、p型第2AlAs層208の電流狭窄部では水平横方向の屈折率差が形成され、光を中央部に閉じ込める構造となっている。従って、基本横モードの光は閉じ込められ、逆に高次横モードは損失が大きくなるため発振が抑制される。これにより、基本横モードを維持した状態で光出力を増加させることができる。
以上の効果より、この実施例2においては、基本横モードを維持した状態で高出力化することが可能であり、実施例1に比べて更にVCSELの緩和振動周波数を増加させることができ、10Gbpsを超える高速直接変調が可能となる。
また、高反射率が必要であるために積層数が多くなる基板に隣接した下部DBR202についても、導電型をn型で形成することにより、素子の抵抗を低減させており、発光装置の消費電力を低減することができる。
実施例3は、第4,第6,第7,第8の形態に対応した実施例である。図3は、本発明の実施例3の発光装置を示す図である。図3の発光装置は、光源としてVCSELを備えている。
このVCSELは、n型GaAs基板201上に、ノンドープ下部DBR301、p型GaAs第1スペーサ層302、GaInNAs/GaAs多重量子井戸第1活性層304、n型GaAs第2スペーサ層305、n型DBR306、n型GaAs第3スペーサ層307、GaInNAs/GaAs多重量子井戸第2活性層308、p型GaAs第4スペーサ層309、ノンドープ上部DBR310が順次積層されている(積層構造が構成されている)。
ここで、ノンドープ下部DBR301は、ノンドープGaAs層とノンドープAl0.9Ga0.1As層を1/4波長厚で交互に積層して形成されている。
また、p型GaAs第1スペーサ層302中には、層厚30nmのp型AlAs層303が設けられている。
また、n型DBR306は、n型GaAs層とn型Al0.9Ga0.1As層を1/4波長厚で交互に積層して形成されている。
また、ノンドープ上部DBR310は、ノンドープGaAs層とノンドープAl0.9Ga0.1As層を1/4波長厚で交互に積層して形成されている。
そして、上記積層構造表面から、p型GaAs第4スペーサ層309の表面まで円筒状にエッチングされて、第1のメサ構造が形成されている。さらに、第1のメサ構造よりも大きいサイズで、n型DBR306に達するまで円筒状にエッチングされて、第2のメサ構造が形成されている。さらに、第2のメサ構造よりも大きいサイズで、p型AlAs層303よりも下側のp型GaAs第1スペーサ層302に達するまで円筒状にエッチングされて、第3のメサ構造が形成されている。
そして、第3のメサ構造の側面から、p型AlAs層303が選択的に酸化されて、AlO絶縁領域116が形成されている。また、第2活性層308の近傍において、第1のメサ構造の外側にはプロトンイオンが注入されて、高抵抗領域311が形成されている。高抵抗領域311は、第2活性層308に対して電流狭窄構造を形成している。このとき、高抵抗領域311の狭窄開口面積は、p型AlAs層303の酸化狭窄開口面積よりも大きくなるように作製した。
そして、第1のメサ構造底面(第2のメサ構造頂上部)には、リング状のp側上部電極113が形成されている。そして、第2のメサ構造底面(第3のメサ構造頂上部)には、リング状のn側電極114が形成されている。また、第3のメサ構造底面には、p側下部電極115が形成されている。
p側上部電極113とn側電極114は変調用パルス電源117に電気的に接続されている。また、n側電極114とp側下部電極115は励起用直流電源118に電気的に接続されている。
実施例3の発光装置は、実施例2の発光装置と同様な効果を有している。さらに、変調用パルス電源117に電気的に接続された第2活性層308に対して電流狭窄する手段として、イオン注入により形成した高抵抗領域311を用いたことを特徴としている。イオン注入により形成した高抵抗領域311の積層方向の厚さは約0.2μmとなっており、Al酸化狭窄構造に比べて厚くなっている。従って、変調信号を入力する第2活性層308に対する高抵抗領域が形成する容量成分が低減され、第2活性層308に注入する電流を変調するときの電気的な変調帯域をさらに増加させることができる。
また、高反射率が必要であるために積層数が多くなる基板に隣接した下部DBR301及び最表面側の上部DBR310は、ノンドープ層で形成されている。キャリア濃度は2×1017cm−3と低キャリア濃度となっているため、自由キャリアによる光吸収が抑制され、高反射率の反射鏡を形成することができる。従って、VCSELの閾電流を低減し、また外部量子効率も増加させることができる。
なお、活性層に対する電流注入は、下部DBR301及び最表面側の上部DBR310を通さずに、p型GaAsスペーサ層302,309に設けられた電極より注入する構造となっている。
実施例3の発光装置においては、第1活性層304,第2活性層308の量子井戸層に、窒素と他のV族元素との混晶半導体であるGaInNAsを用いている。そのため、石英光ファイバの分散がゼロである波長1.31μmの光源を形成できるため、本発明の高速変調特性を生かすことができる。
さらに、第2活性層308のGaAs障壁層に対して、p型不純物であるCを3×1018cm−3ドーピングしている。これにより、レーザ発振に必要な注入電子密度が減少し、第2活性層308の微分利得gを増加させることができる。数1より、微分利得gを増加させる効果は、VCSEL素子内の光子密度Sを増加させる効果と併用することにより、さらにVCSELの緩和振動周波数を増加させることができる。従って、40Gbpsで直接変調可能な光源を提供することができる。
実施例4は、第9の形態に対応した実施例である。図4は、実施例4の光伝送システムを示す図である。図4を参照すると、この光伝送システムは、光送信部401において電気信号が光信号に変換されて光ファイバケーブル404に導入され、光ファイバケーブル404を導波した光は、光受信部402で再び電気信号に変換されて出力されるようになっている。
光送信部401と光受信部402は、1つのパッケージに集積されて、光送受信モジュール403が構成されている。また、光ファイバケーブル404は、送り用と受け用の2本が1対となっており、双方向に通信可能となっている。
図4の光伝送システムの光送信部401には、光源として、実施例3の発光装置が用いられている。実施例3の発光装置は、緩和振動周波数を向上させており、外部変調器を用いることなく40Gbpsの光信号伝送が可能となっている。また、電子冷却素子による温度制御が不要であり、低コストで製造することができる。従って、40Gbpsの大容量光伝送システムを、低コストで構築することができる。
実施例5は、第14の形態に対応した実施例である。図6は、実施例5の垂直共振器型面発光半導体レーザ素子(VCSEL)を示す図である。
図6を参照すると、n型GaAs基板201上に、n型下部DBR202が積層されている。ここで、n型下部DBR202は、n型GaAs層とn型Al0.9Ga0.1As層を1/4波長厚で交互に積層して形成されている。そして、n型下部DBR202上には、GaAs第1スペーサ層601、GaInNAs/GaAs多重量子井戸第1活性層304、GaAs第2スペーサ層602、p型AlAs層206、p型DBR207が積層されている。ここで、p型DBR207は、p型GaAs層とp型Al0.9Ga0.1As層を1/4波長厚で交互に積層して形成されている。また、p型DBR207上には、p型第2AlAs層603、GaAs第3スペーサ層604、GaInNAs/GaAs多重量子井戸第2活性層308、GaAs第4スペーサ層605、n型上部DBR212が順次積層されている。ここで、n型上部DBR212は、n型GaAs層とp型Al0.9Ga0.1As層を1/4波長厚で交互に積層して形成されている。
そして、上記積層構造の表面からp型DBR207の途中まで円筒状にエッチングされて、第1のメサ構造が形成されている。さらに、第1のメサ構造よりも大きいサイズで、n型下部DBR202に達するまで円筒状にエッチングされて第2のメサ構造が形成されている。
また、第2のメサ構造側面から、p型第1AlAs層206が選択的に酸化されて、AlO絶縁領域116が形成されている。また、第1のメサ構造側面から、p型第2AlAs層603が選択的にサイドエッチングされてエアギャップ構造606が形成されている。このとき、p型第1AlAs層206の酸化狭窄開口面積は、p型第2AlAs層603のエアギャップ狭窄開口面積よりも小さくなるように作製されている。
そして、n型上部DBR212の表面には、光出射部を除いてリング状のn側上部電極213が形成されている。また、第1のメサ構造の底面(第2のメサ構造の頂上部)には、p側電極214が形成されている。また、n型GaAs基板201の裏面には、n側下部電極215が形成されている。
図6のVCSELにおいては、p型DBR207の積層周期数を少なくする(例えば3周期にする)ことで、2つの共振器は光学的に結合し、1つの共振モードが形成されている。また、第1活性層304と第2活性層308のバンドギャップを等しくしており、かつ、2つの共振器が結合した共振モードに対して利得を有しているため、第1活性層304に電流注入したときの発振光と、第2活性層308に電流注入したときの発振光は、モード同期して同一波長(1.3μm)で発振する。従って、活性層が1つの場合に比べて、VCSEL素子内部の光子密度が増加し、VCSELの緩和振動周波数を増加させることができる。
また、高反射率が必要であるために積層数が多くなる上部DBR212について導電型をn型で形成することにより、素子抵抗を低減させている。また、第2活性層308に対して電流を狭窄するエアギャップ狭窄開口面積を、第1活性層304に対する酸化狭窄開口面積よりも大きくしているため、第2活性層308における電流狭窄部の抵抗が低減される。
さらに、サイドエッチング領域606の誘電率は、AlO絶縁領域116の誘電率よりも低いため、サイドエッチング領域の寄生容量成分が低減できる。従って、第2活性層308に注入する電流を変調するときのCR時定数が低減され、電気的な変調帯域を増加させることができる。
また、第1活性層304においては、第2活性層308の電流注入領域よりも狭い領域に電流が注入される。これにより、基本横モードに対応した中央部の利得を選択的に増加させることができるため、基本横モードの光出力を増加させることができる。
以上の効果より、VCSELの緩和振動周波数を増加させることができ、10Gbpsを超える高速変調動作が可能となる。
なお、この実施例5のVCSELにおいては、電気的変調帯域が高い第2活性層308に電流を注入するn側上部電極213とp側電極214を変調用パルス電源に接続し、第1活性層304に電流を注入するp側電極214とn側下部電極215を励起用直流電源に接続することによって、高速変調性能を有効に発揮することができる。
実施例6は、第15の形態に対応した実施例である。図7は、実施例6の垂直共振器型面発光半導体レーザ素子(VCSEL)を示す図である。
図7を参照すると、n型GaAs基板201上に、n型下部DBR202が積層されている。ここで、n型下部DBR202は、n型GaAs層とn型Al0.9Ga0.1As層を1/4波長厚で交互に積層して形成されている。そして、n型下部DBR202上には、GaAs第1スペーサ層601、GaInNAs/GaAs多重量子井戸第1活性層304、GaAs第2スペーサ層602、p型DBR207が積層されている。ここで、p型DBR207は、p型GaAs層とp型Al0.9Ga0.1As層を1/4波長厚で交互に積層して形成されている。また、p型DBR207上には、p型AlAs層701、GaAs第3スペーサ層604、GaInNAs/GaAs多重量子井戸第2活性層308、GaAs第4スペーサ層605、n型上部DBR212が順次積層されている。ここで、n型上部DBR212は、n型GaAs層とp型Al0.9Ga0.1As層を1/4波長厚で交互に積層して形成されている。
そして、上記積層構造の表面からp型DBR207の途中まで円筒状にエッチングされて、メサ構造が形成されている。メサ構造側面から、p型AlAs層701が選択的にサイドエッチングされて、エアギャップ領域606が形成されている。
また、メサ構造底面から、第1活性層304近傍において、プロトンイオンが注入されて、高抵抗領域311が形成されている。高抵抗領域311は、第1活性層304に対して電流狭窄構造を形成している。このとき、高抵抗領域311の狭窄開口面積は、p型AlAs層701のエアギャップ狭窄開口面積よりも大きくなるように作製されている。
そして、n型上部DBR212の表面には、光出射部を除いてリング状のn側上部電極213が形成されている。また、メサ構造の底面には、p側電極214が形成されている。また、n型GaAs基板201の裏面には、n側下部電極215が形成されている。
図7のVCSELにおいては、p型DBR207の積層周期数を少なくすることで、2つの共振器は光学的に結合し、1つの共振モードが形成されている。第1活性層304と第2活性層308のバンドギャップを等しくしており、かつ、2つの共振器が結合した同一の共振モードに対して利得を有しているため、第1活性層304に電流注入したときの発振光と、第2活性層308に電流注入したときの発振光は、モード同期して同一波長(1.3μm)で発振する。従って、活性層が1つの場合に比べて、VCSEL素子内部の光子密度が増加し、VCSELの緩和振動周波数を増加させることができる。
また、高反射率が必要であるために積層数が多くなる下部DBR202について導電型をn型で形成することにより、素子抵抗を低減させている。また、第1活性層304に対して電流を狭窄する高抵抗領域311の狭窄開口面積を、第2活性層308に対するエアギャップ狭窄開口面積よりも大きくしているため、第1活性層304における電流狭窄部の抵抗が低減される。
さらに、イオン注入により形成した高抵抗領域311は、Al酸化狭窄構造やエアギャップ構造に比べて、積層方向の厚さが厚くなる。従って、高抵抗領域311が形成する容量成分は、Al酸化狭窄構造やエアギャップ構造を用いた場合に比べて低減される。従って、第1活性層304に注入する電流を変調するときのCR時定数が低減され、電気的な変調帯域を向上させることができる。
また、狭窄面積が狭いエアギャップ狭窄構造においては、エッチングされていない半導体層がエッチングされた領域よりも屈折率が高くなるため、光を中央部に閉じ込める作用を有する。従って、基本横モードの光は閉じ込められ、逆に高次横モードは発振が抑制される。
また、第2活性層308においては、第1活性層304の電流注入領域よりも狭い領域に電流が注入される。これにより、基本横モードに対応した中央部の利得を選択的に増加させることができる。従って、基本横モードを維持した状態で光出力を増加させることができる。これにより、素子内部の光子密度がさらに高められ、VCSELを高速変調動作させることができる。
なお、この実施例6のVCSELにおいては、電気的変調帯域が高い第1活性層304に電流を注入するp側電極214とn側下部電極215を変調用パルス電源に接続し、第2活性層308に電流を注入するn側上部電極213とp側電極214を励起用直流電源に接続することによって、高速変調性能を有効に発揮することができる。
実施例1の発光装置を示す図である。 実施例2の発光装置を示す図である。 実施例3の発光装置を示す図である。 実施例4の光伝送システムを示す図である。 実施例1の発光装置の動作を説明するための図である。 実施例5の垂直共振器型面発光半導体レーザを示す図である。 実施例6の垂直共振器型面発光半導体レーザを示す図である。
符号の説明
101 p型GaAs基板
102 p型Al0.2Ga0.8As/Al0.9Ga0.1As 下部DBR
103 p型AlAs層
104 AlGaAs第1スペーサ層
105 GaAs/AlGaAs多重量子井戸第1活性層
106 AlGaAs第2スペーサ層
107 n型Al0.2Ga0.8As/Al0.9Ga0.1As DBR
108 AlGaAs第3スペーサ層
109 GaAs/AlGaAs多重量子井戸第2活性層
110 AlGaAs第4スペーサ層
111 p型AlGaAs層
112 p型Al0.2Ga0.8As/Al0.9Ga0.1As 上部DBR
113 上部p側電極
114 n側電極
115 下部p側電極
116 AlO絶縁領域
117 変調用パルス電源
118 励起用直流電源
201 n型GaAs基板
202 n型GaAs/Al0.9Ga0.1As 下部DBR
203 AlGaAs第1スペーサ層
204 GaInAs/GaAs多重量子井戸第1活性層
205 AlGaAs第2スペーサ層
206 p型第1AlAs層
207 p型GaAs/Al0.9Ga0.1As DBR
208 p型第2AlAs層
209 AlGaAs第3スペーサ層
210 GaInAs/GaAs多重量子井戸第2活性層
211 AlGaAs第4スペーサ層
212 n型GaAs/Al0.9Ga0.1As 上部DBR
213 上部n側電極
214 p側電極
215 下部n側電極
301 ノンドープGaAs/Al0.9Ga0.1As 下部DBR
302 p型GaAs第1スペーサ層
303 p型AlAs層
304 GaInNAs/GaAs多重量子井戸第1活性層
305 n型GaAs第2スペーサ層
306 n型GaAs/AlGaAs DBR
307 n型GaAs第3スペーサ層
308 GaInNAs/GaAs多重量子井戸第2活性層
309 p型GaAs第4スペーサ層
310 ノンドープGaAs/Al0.9Ga0.1As 上部DBR
311 高抵抗領域
401 光送信部
402 光受信部
403 光送受信モジュール
404 光ファイバケーブル
601 GaAs第1スペーサ層
602 GaAs第2スペーサ層
603 p型第2AlAs層
604 GaAs第3スペーサ層
605 GaAs第4スペーサ層
606 サイドエッチング領域
701 p型AlAs層

Claims (12)

  1. 基板上に多層膜反射鏡で上下をはさまれた複数の共振器を有する垂直共振器型面発光半導体レーザ素子と、変調用パルス電源と、励起用直流電源とを備え、前記垂直共振器型面発光半導体レーザ素子の複数の共振器は光学的に結合して1つの共振モードを形成しており、それぞれの共振器内には、それぞれ、活性層が設けられ、それぞれの前記活性層は同一の共振モード波長に対して利得を有しており、前記活性層のうちの1つの活性層は、前記変調用パルス電源に電気的に接続され、また、前記活性層のうちの他の活性層は、前記励起用直流電源に電気的に接続され、同一の共振モードに対して、前記変調用パルス電源に電気的に接続された活性層と前記励起用直流電源に電気的に接続された活性層とがモード同期して発振するようになっている発光装置であって、前記基板に隣接した多層膜反射鏡、および/または、最表面側の多層膜反射鏡の導電型が、n型であることを特徴とする発光装置
  2. 請求項1記載の発光装置において、前記垂直共振器型面発光半導体レーザ素子のそれぞれの活性層に対して注入する電流を狭窄する手段が設けられており、前記変調用パルス電源に電気的に接続された活性層に対して電流狭窄される面積は、前記励起用直流電源に電気的に接続された活性層に対して電流狭窄される面積よりも広いことを特徴とする発光装置。
  3. 請求項2記載の発光装置において、前記励起用直流電源に電気的に接続された活性層に対して電流を狭窄する手段として、水平横方向に屈折率差を有する構造が用いられることを特徴とする発光装置。
  4. 請求項2記載の発光装置において、前記変調用パルス電源に電気的に接続された活性層に対して電流狭窄する手段として、イオン注入により形成した高抵抗領域が用いられることを特徴とする発光装置。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の発光装置において、前記変調用パルス電源に電気的に接続された活性層は、量子井戸層と障壁層を複数積層した多重量子井戸構造から構成されており、障壁層にp型不純物が1×1018cm−3〜1×1019cm−3の範囲でドーピングされていることを特徴とする発光装置。
  6. 請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の発光装置において、前記活性層には、窒素と他のV族元素との混晶半導体が含まれていることを特徴とする発光装置。
  7. 請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の発光装置を備えていることを特徴とする光伝送システム。
  8. 基板上に、多層膜反射鏡で上下をはさまれた複数の共振器を備え、複数の共振器は光学的に結合して1つの共振モードを形成しており、それぞれの共振器内には活性層が設けられ、上記活性層は同一の共振モード波長に対して利得を有しており、それぞれの活性層に対して、電流を注入する電流注入手段と、電流注入手段から注入された電流を狭窄する電流狭窄手段とが設けられており、基板に隣接した多層膜反射鏡及び/または最表面側の多層膜反射鏡の導電型が、n型であることを特徴とする垂直共振器型面発光半導体レーザ素子。
  9. 請求項8記載の垂直共振器型面発光半導体レーザ素子において、前記活性層のうちの少なくとも1つの活性層は、量子井戸層と障壁層を複数積層した多重量子井戸構造から構成されており、障壁層にp型不純物が1×1018cm−3〜1×1019cm−3の範囲でドーピングされていることを特徴とする垂直共振器型面発光半導体レーザ素子。
  10. 請求項8記載の垂直共振器型面発光半導体レーザ素子において、前記活性層のうちの少なくとも1つの活性層は、窒素と他のV族元素とを含む混晶半導体であることを特徴とする垂直共振器型面発光半導体レーザ素子。
  11. 請求項8記載の垂直共振器型面発光半導体レーザ素子において、前記電流狭窄手段として、水平横方向に屈折率差を有する構造が用いられており、上記電流狭窄手段による電流狭窄面積が活性層ごとに異なることを特徴とする垂直共振器型面発光半導体レーザ素子。
  12. 請求項8記載の垂直共振器型面発光半導体レーザ素子において、前記電流狭窄手段として、水平横方向に屈折率差を有する構造と、イオン注入により形成した高抵抗領域とが、それぞれ異なる活性層に対して設けられており、水平横方向に屈折率差を有する電流狭窄手段による狭窄面積が、イオン注入により形成した高抵抗領域による狭窄面積よりも小さいことを特徴とする垂直共振器型面発光半導体レーザ素子。
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