JP4808367B2 - ポリ乳酸系成形体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はポリ乳酸系成形体の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、環境保全に関する社会的要求の高まりに伴い、微生物などにより分解される生分解性ポリマーが注目されている。生分解性ポリマーの具体例としては、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン、ポリ乳酸などの脂肪族ポリエステルや、テレフタル酸/1,4ブタンジオール/アジピン酸の共重合体などの脂肪族−芳香族共重合ポリエステルといった、溶融成形可能なポリエステルが挙げられる。
【0003】
上記の脂肪族ポリエステルの中でも、自然界に広く分布し、動植物や人畜に対して無害なポリ乳酸は、融点が140〜175℃であり十分な耐熱性を有するとともに、比較的安価な熱可塑性の生分解性樹脂として期待されている。
【0004】
ところが、このポリ乳酸を単にシートや容器などに成形した場合は、成形時の熱履歴によりポリ乳酸の結晶がほぼ完全に融解してしまい、結局耐熱性に劣ったものしか得られない。
【0005】
そこで、ポリ乳酸に耐熱性を付与する試みが多数報告されている。例えば、特許文献1には、乳酸系ポリマーに核剤として通常のタルク、シリカ、乳酸カルシウムなどを添加して射出成形を試みたが、結晶化速度が遅く、また成形物が脆いため実用に耐えうる成型物を得ることができず、したがって、このような乳酸系ポリマーは、通常のタルク、シリカなどを用いて一般の射出成形、ブロー成形、圧縮成形に使用しても、結晶化速度が遅く、得られる成型物の実用耐熱性が100℃以下と低く、用途に制約があると記載されている。
【0006】
特許文献2には、ポリL−ラクチドなどに核剤としてポリグリコール酸およびその誘導体を加えることで、結晶化速度を上昇させることにより射出成形サイクル時間を短縮させ、かつ、優れた力学的性質を有する製品を得ることができると記載されている。
【0007】
しかし、特許文献1には、実際に乳酸系ポリマーに核剤を入れないで射出成形を試みたところ、特許文献2に開示されているような金型温度がTg以上の条件では、成形できなかったと記載されている。
【0008】
特許文献3には、結晶核剤および結晶化促進剤としてワックスを用い、成形物を結晶化温度で熱処理する方法、あるいは結晶化温度に設定した金型内で一定時間保持する方法が開示されている。しかし、この方法では、80℃程度までの耐熱性は改善されているものの、それ以上の温度、特に電子レンジなどを対象とした100℃以上の温度での耐熱性は不十分である。
【0009】
一方、結晶核剤を使用せずに耐熱性と耐衝撃性を付与する方法として、特許文献4には、未延伸シートを1.5〜5倍に延伸することによって結晶配向度と結晶化度を向上させる技術が開示されている。しかし、この方法では、延伸シートとなるため、トレーなどの容器に加工する際にはさらなる延伸が必要となるが、一度延伸されたシートは延伸性に劣り、深絞り成形などには不向きで必然的に用途が限定されることになる。
【0010】
【特許文献1】
特開平8−193165号公報
【0011】
【特許文献2】
特開平4−220456号公報
【0012】
【特許文献3】
特開平11−106628号公報
【0013】
【特許文献4】
特開平9−25345号公報
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、このような課題を解決して、ポリ乳酸と結晶核剤からなるシートを熱処理した成形体であって耐熱性と耐衝撃性に優れたものを得ることを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記のように従来のポリ乳酸成形体の耐熱性と耐衝撃性を改良する目的で鋭意検討を重ねた結果、結晶性の高いポリ乳酸にガラス転移温度が0℃以下の芳香族・脂肪族共重合ポリエステルと平均粒径1〜8μmのタルクとをある範囲で配合して押し出し成形してシート状にした後、ある条件で熱処理を実施することにより、ポリ乳酸の結晶性の向上と柔軟成分の存在とにもとづき耐熱性と耐衝撃性が著しく向上し、しかも成形サイクルの観点からも工業生産可能となるまで結晶化速度が向上することを見出し、本発明に到達した。
【0016】
すなわち本発明は、光学純度95%以上かつ残留ラクチド量が0.1〜0.4質量%の結晶性ポリ乳酸系樹脂(A)と、ガラス転移温度が0℃以下の芳香族・脂肪族共重合ポリエステル(B)と、平均粒径1〜8μmのタルク(C)とを、(A)と(B)との混合比が(A)/(B)=97/3〜80/20質量%、(C)の混合比が組成物全体量に対して5〜20質量%となるよう配合した樹脂組成物(ただし、難燃剤を含むものを除く)を押し出し成形により未延伸のシート状にした後、成形金型を用いて、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、プレス成形のいずれか一つにより成形しながら、同時に、成形金型内で、処理温度110〜150℃および処理時間1〜30秒にて熱処理することを要旨とするものである。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明において用いられる結晶性ポリ乳酸樹脂(A)は、光学純度95%以上であることが必要である。
【0021】
ポリ乳酸のモノマーには2種の光学活性体、すなわちD−乳酸およびL−乳酸が存在する。現在、工業的に大量かつ安価に生産されているのはL−乳酸であり、ポリ乳酸においてもL−乳酸に由来するL−ポリ乳酸(PLLA)が一般的に用いられている。ポリ乳酸の結晶性はL−乳酸またはD−乳酸の含有率により変化し、例えば、乳酸モノマーの光学純度Lを下記の式1として規定した場合、Lが大きいほど、すなわち、光学純度が高くなるほど結晶性が増加する。
【0022】
光学純度=|M(L)−M(D)|…式1
ただし、M(L)はポリ乳酸樹脂を構成する全乳酸単位に対するL−乳酸単位のモル%、M(D)はポリ乳酸樹脂を構成する全乳酸単位に対するD−乳酸単位のモル%であって、M(L)+M(D)=100である。
【0023】
一般に、光学純度100%、例えば100%L−乳酸成分からなるモノマーよりPLLAを重合した場合でも、重合やその後の溶融成形における熱履歴により部分的にモノマーのラセミ化が起こるため、工業的に利用されるPLLAの光学純度は98%近辺が上限であるといわれている。したがって、これがポリ乳酸のなかで実用的には最も高結晶性の組成である。しかしながらこのような高純度のL−乳酸成分からなるPLLAにおいても、その結晶化速度は比較的遅く、冷却結晶化過程における過冷却性が非常に高い。
【0024】
特に実質的な強度や耐久性を得るためには、ポリ乳酸として、比較的高分子量の重合体、目安としては重量平均分子量が10万以上、好ましくは15万〜30万の重合体を用いることが良い。
【0025】
一方、最終的に得られるポリ乳酸系成形体に耐熱性を付与するには、ポリ乳酸自体の結晶化(結晶化速度)を促進させることに加え、成形後のポリ乳酸の結晶化度を向上させる必要がある。このためにはポリ乳酸自体が高結晶性と成り得る能力を有していることが必要であり、そのためには光学純度が95%以上のポリ乳酸樹脂であることが必要で、好ましくは96%以上である。光学純度が95%未満のポリ乳酸樹脂では、ポリ乳酸自体の結晶性が低下し、結晶核剤としてのタルクの添加を行ったり熱処理を施したりしても十分に結晶化せず所要の耐熱性が得られない。
【0026】
また、一般にポリ乳酸樹脂に存在するラクチドは、量が多すぎるとポリ乳酸の加水分解を促進する結果となることが知られているが、低分子量のラクチドは高分子量のポリ乳酸よりも結晶化しやすく、このラクチドの結晶化が起爆剤となってポリ乳酸の結晶化を促進する。そこで、ポリ乳酸に含まれるラクチドを適当量に規定することは、結晶化の促進と耐熱性付与という目的には有効な項目となる。つまり残留ラクチド量は樹脂の全体に対して0.1〜0.6質量%の範囲にあることが好ましく、0.1〜0.4質量%の範囲にあることがより好ましい。残留ラクチド量が0.1質量%未満では、ポリ乳酸の結晶化を促進する起爆剤としては量が少なすぎて用を足しにくくなる。また、0.6質量%を超えると、加水分解を促進する作用が強まり、好ましくない。
【0027】
本発明の製造方法で得られるポリ乳酸系成形体においては、0℃以下のガラス転移温度を有する、芳香族・脂肪族共重合ポリエステル(B)が、構成成分として必須である。
この(B)成分は、ガラス転移温度が0℃以下であるため、常温においても柔軟性を有している。このような成分がポリ乳酸樹脂中に分散することは、ゴムを分散させる場合と同様に外部衝撃を吸収する働きがある。すなわち、衝撃性の改善に寄与するものである。(B)成分の具体例としては、脂肪族ジオールを有する共重合ポリエステルである芳香族・脂肪族共重合ポリエステルが挙げられる。
【0028】
脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。そして(B)成分は、上記構成成分を少なくとも1種以上選択し、重縮合して得られる。必要に応じて、イソシアネートや酸無水物、エポキシ化合物、有機過酸化物などを用いて、構造上ジャンプアップおよび長鎖分岐をもたせることもできる。
【0029】
本発明では上記(A)成分と(B)成分の混合比が(A)/(B)=97/3〜80/20質量%であることが必要であり、好ましくは(A)/(B)=97/3〜85/15質量%であり、さらに好ましくは(A)/(B)=95/5〜85/15質量%である。(B)成分の混合比が3質量%未満であると、外部衝撃を吸収しきれず耐衝撃性に劣ったものとなる。一方、(B)成分の混合比が20質量%を超えると、耐衝撃性は著しく改善されるものの、ポリ乳酸自体の結晶化を妨げる結果となり、耐熱性に劣ることになる。かつ、同時に結晶化速度自体も遅くなるため、実生産における成形サイクルに時間を要し、生産性に劣ってしまうことになる。
【0030】
本発明においては、結晶化を促進させるため、上記のようにポリ乳酸樹脂自体を最適化することに加え、結晶核剤としてのタルクの存在が必須である。
本発明における結晶核剤としてのタルクは、平均粒径が1〜8μmであり、好ましくは1〜5μmである。数ある結晶核剤の内、タルクは、ポリ乳酸に対して最も結晶化効率の高い無機物質であることから結晶核剤として最適であるだけでなく、非常に安価で、また自然界に存在する無機物質であるため工業的にも有利であり、しかも地球環境に負荷を与えない。このタルクの平均粒径が1μm未満であると、分散不良や二次凝集を生じ結晶核剤としての効果を十分に発揮できず、このため得られる成形体の耐熱性が不十分となる。平均粒径が8μmを超えると、タルクは結晶核剤として作用する以外に成形体における欠点となり、このため得られる成形体の物性や表面状態に悪影響を及ぼす。
【0031】
タルクの含有量は、組成物全量に対し1〜30質量%であり、好ましくは5〜20質量%、さらに好ましくは10〜15質量%である。1質量%未満では、含有量が少なすぎて結晶核が少量しか生成せず、結晶核剤としての効果を十分発揮できず、したがって成形体の耐熱性が不十分となる。30質量%を超えると、含有量が多くなりすぎて、成形体が脆くなるなど物性に悪影響を及ぼす。
【0032】
この結晶核剤を効率よく分散させるために、分散剤を使用してもよい。分散剤としては、ポリ乳酸との相溶性に優れ、結晶核剤との濡れ性にも優れていることが好ましい。このような物質としては、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスラウリル酸アミドなどの脂肪酸アミドの中から少なくとも1種類を選択することが、ポリ乳酸系成形体の結晶性を効率よく高める上で重要である。
【0033】
(A)、(B)、(C)各成分を上記のような混合比としてシートを形成し、このシートに熱処理を施したうえで、成形体を得る。この成形体は、結晶化指標としての、20℃/minの昇温条件で示唆走査型熱量計にて測定した際の結晶融解熱量ΔHmと昇温結晶化熱量ΔHcとの絶対値の差が(|ΔHm|−|ΔHc|)≧25J/gとなることが必要である。好ましくは、(|ΔHm|−|ΔHc|)≧29J/gである。このように(|ΔHm|−|ΔHc|)≧25J/gとするためには、上述のように使用するポリ乳酸の光学純度、残留のラクチド量、タルクの平均粒径とその添加比を各々最適化するとともに、後述する熱処理を施すことが必要である。
【0034】
(|ΔHm|−|ΔHc|)が25J/g未満である場合は、十分に結晶化されておらず、例えば成形した容器に熱湯(90℃)を注いだ場合に通常のポリ乳酸から得られる容器では容器が熱変形してしまい耐熱性が不十分である。しかし、25J/g以上ではそのような現象は生じない。
【0035】
本発明においては、成形体の製造に際して、熱処理が必須条件となる。ところが、工業的には熱処理に長時間かけることは不可能である。一方、ポリ乳酸は結晶化速度の極めて遅い素材として知られている。したがって、工業的な成形サイクルに適応できるだけの結晶化速度を付与することが必要となる。本発明では、ポリ乳酸の組成や結晶核剤や熱処理条件を細部まで最適化したことにより、所要の成形体を工業的に生産が可能となる。本発明の製造方法で得られる成形体は、130℃での結晶化速度が0.010min−1以上であることが必要であり、0.015min−1以上であることが好ましい。130℃での結晶化速度が0.010min−1未満であると、結晶化速度が遅く通常の成形サイクルに不適な他、結晶化が不十分となって、耐熱性に劣ったものとなる。130℃での結晶化速度が0.010min−1以上であるようにするためには、上述のように、使用するポリ乳酸の光学純度の最適化と、タルクの平均粒径や混合比の最適化と、芳香族・脂肪族共重合ポリエステルあるいは脂肪族ポリエステルとポリ乳酸との混合比の最適化とを行ったうえで、後述のように金型内で処理温度110〜150℃、処理時間1〜30秒の熱処理を行うことが必要である。
【0036】
本発明においては、結晶核剤による結晶化速度をより促進するために、必要に応じて有機過酸化物などの架橋剤および架橋助剤を併用して、樹脂組成物に極軽度の架橋を施すことも可能である。
【0037】
架橋剤の具体例としては、n−ブチル−4,4−ビス−t−ブチルパーオキシバリレート、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−t−ブチルパーオキシヘキシン−3などの有機過酸化物、無水フタル酸、無水マレイン酸、トリメチルアジピン酸、無水トリメリット酸、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸などの多価カルボン酸、蟻酸リチウム、ナトリウムメトキシド、プロピオン酸カリウム、マグネシウムエトキシドなどの金属錯体、ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、などのエポキシ化合物、ジイソシアネート、トリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどのイソシアネート化合物などが挙げられる。
【0038】
架橋助剤の具体例としては、トリメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ノルマル−ブチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルモノメタクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレートなどが挙げられる。
【0039】
本発明の製造方法で得られる成形体においては、厚み500μmについての落球高さが20cm以上の落球衝撃性を有していることが必要である。ここで厚み500μmについての落球高さとは、厚み500μmのシートにて形成された箱状の成形体を伏せた状態とすることでその底部を上面にして水平に設置し、これに300gの鉄球を5cmごとの異なる高さから複数回落下させた場合に、[(2回に1回の割合で割れた高さ)−5]cmをいう。
【0040】
厚み500μmについての落球高さが20cm未満であると、成形体の運搬時に外部衝撃が加えられた場合などにおいて、割れが生じたりヒビが入ったりする可能性がある。よって、厚み500μmについての落球高さが30cm以上であるのが好ましい。
【0041】
厚み500μmについての落球高さが20cm以上の落球衝撃性を有するようにするためには、上述のように、ガラス転移温度が0℃以下の芳香族・脂肪族共重合ポリエステル(B)を、光学純度95%以上の結晶性ポリ乳酸樹脂(A)に対し3質量%以上混合させることが必要である。
【0042】
次に本発明の製造方法で得られる成形体の分子量保持率について説明する。ここで、分子量保持率とは、成形体を50℃、90%RHの恒温恒湿機内に30日間放置する分解加速試験の後の重量平均分子量(Mw)を放置前の重量平均分子量で除した値の百分率値のことをいう。生分解性を有するポリ乳酸系樹脂製品は、通常、シートや成形品の保管あるいは使用中には分解が極力進行せず、これに対し使用後は速やかに分解することが好ましい。このため、上記の分解加速試験の条件下において分子量保持率が60%以上であることが好ましく、70%以上であることがさらに好ましい。分子量保持率が60%未満であることは、分解速度が速いことを意味し、倉庫保管中等において分解が進んで、実使用に耐えられないおそれがあるため、好ましくない。
【0043】
本発明の製造方法で得られる成形体には、必要に応じて可塑剤、紫外線防止剤、光安定剤、防曇剤、防霧剤、帯電防止剤、着色防止剤、酸化防止剤、充填材、顔料などを添加できる。
【0044】
次に、本発明の製造方法の実施の形態の一例について説明する。
まず、光学純度95%以上のポリ乳酸樹脂(A)と、ガラス転移温度が0℃以下の芳香族・脂肪族共重合ポリエステル(B)と、タルク(C)および必要に応じて分散剤とを、所定量にて配合する。この場合、予め2軸混練押し出し機にて全量コンパウンドしてもよく、(A)と(C)のみコンパウンドし(B)をドライブレンドしてもよい。また、全てドライブレンドしてもよい。その後、Tダイを装備した1軸押し出し機あるいは2軸押し出し機にて溶融混練してそのTダイより押し出し、30〜50℃の温度範囲に設定されたキャストロールにて未延伸シートを成形する。シートの厚みは、使用目的により適宜選択できるが、通常は200〜750μmが好ましい。
【0045】
次に、未延伸シートをプレス成形、真空成形、圧空成形あるいは真空圧空成形のいずれかを選択して成形する際、金型内で熱処理しながら成形する。
本発明において、上述の如く樹脂、結晶核剤など細部にまで最適化を施したうえで熱処理を実施する場合の条件として、処理温度110〜150℃および処理時間1〜30秒にて実施することが必要である。上記の処理温度110〜150℃は、実質的に最もポリ乳酸が結晶化し易い温度である。また、処理時間1〜30秒は、実質的に生産サイクルに適用可能でしかも過不足無く結晶化できる時間である。処理温度が110℃未満では結晶化が十分に進行せず、反対に150℃を超えると結晶化速度が極端に遅くなり結果的に結晶化が不十分となってしまう。また処理時間が1秒未満では結晶化に要する時間が足りず、30秒を超えると実質的な成形サイクルに適応せず工業的な生産には不具合が生じる。
【0046】
【実施例】
次に、実施例に基づき本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、以下の実施例、比較例における各種物性値の測定は、以下の方法により実施した。
(1)結晶融解熱量ΔHmと昇温結晶化熱量ΔHc
パーキンエルマー社製 Pyrisl DSC を用い、成形品のうちの10mgを試験試料とし、昇温速度20℃/minにて昇温した際、発熱側に現れるピークの合計熱量を昇温結晶化熱量ΔHcとし、吸熱側に現れるピークの合計熱量を結晶融解熱量ΔHmとした。
(2)結晶化速度
パーキンエルマー社製 Pyrisl DSC を用い、20℃から200℃まで500℃/minで昇温後、5分間保持し、さらに130℃まで−500℃/minで急冷し、その後に結晶化が終了するまで測定した。その後、結晶化分率が0.5になるまでの時間の逆数に結晶化分率0.5を乗した値を結晶化速度とした。
(3)耐熱性
単発間接加熱真空成型機および金型CTデリカン15−11(アルミ製)を用いて、シートから縦150mm、横110mm、深さ20mmの容器を成形し、この容器に90℃の熱湯を注ぎ、5分後に容器の変形を目視にて観察し、全く変形がない場合を耐熱性良好として○で評価し、少しでも変形が認められた場合を耐熱性やや不良として△で評価し、著しく変形した場合を耐熱性不良として×で評価した。
(4)分子量保持率
試料を50℃、90%RHの恒温恒湿機内に30日間放置した後の重量平均分子量(Mw)を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により、ポリスチレンを標準物質として、THF溶液中のポリ乳酸をStyragel HRカラムとUltrastyragelカラム、および検出器として屈折率計を用いて測定し、下記式により保持率を計算した。
【0047】
Mw保持率(%)=(30日後のMw/放置前のMw)×100
(5)耐衝撃性
厚み500μmのシートにて形成された熱処理後の箱状の成形体を伏せた状態とすることでその底部を上面にして水平に設置し、これに300gの鉄球を5cmごとの異なる高さから垂直に落下させ、(2回に1回の割合で割れが生じたときの高さ−5)cmを落球高さとして、耐衝撃性の評価を行った。
実施例1
結晶性ポリ乳酸(A)(光学純度97.2%、残留ラクチド量0.2質量%、重量平均分子量20万、カーギル・ダウ社製:ネイチャーワークス)と、ガラス転移温度0℃以下の芳香族・脂肪族共重合ポリエステル(B)(ガラス転移温度−30℃、BASF社製:エコフレックスF)とを、(A)/(B)=90/10質量%の割合で配合し、さらに、平均粒径2.75μmのタルク(林化成社製:MW HS−T)を組成物全体量に対し10質量%配合した。そして、2軸混練押出機(日本製鋼所社製、型番TEX44α)を用いて溶融混練し、押出温度230℃にてポリ乳酸コンパウンド原料を作製した。
【0048】
次いで、このポリ乳酸コンパウンド原料を、幅1000mmのTダイを装着したスクリュー径90mmの単軸押出機を用いて、押出温度215℃にて溶融押出し、40℃に設定されたキャストロールにて厚み500μmの未延伸シートを成形した。
【0049】
さらに、単発間接加熱真空成型機および金型CTデリカン15−11(アルミ製)を用いて、このシートを縦150mm、横110mm、深さ20mmに真空成形して、成形体としての容器を作製した。この真空成形の際に、金型内を140℃、保持時間5秒とすることで、熱処理を施した。
【0050】
得られた成形体の諸物性を表1に示す。
実施例2
結晶性ポリ乳酸(A)としてポリ乳酸(光学純度96.0%、残留ラクチド量=0.4質量%、重量平均分子量19万、カーギル・ダウ社製:ネイチャーワークス)を用いた。そして、それ以外は実施例1と同様にして、未延伸シートおよび真空成形した成形体としての容器を得た。この真空成形の際に、金型内を120℃、保持時間15秒にて熱処理した。
【0051】
得られた成形体の諸物性を表1に示す。
実施例3
結晶性ポリ乳酸(A)/ガラス転移温度0℃以下の芳香族・脂肪族共重合ポリエステル(B)=85/15質量%にした。そして、それ以外は実施例1と同様にして、未延伸シートおよび真空成形した成形体としての容器を得た。
【0052】
得られた成形体の諸物性を表1に示す。
実施例4
タルク(C)を組成物全体量に対して15質量%混合した。そして、それ以外は実施例1と同様にして、未延伸シートおよび真空成形した成形体としての容器を得た。
【0053】
得られた成形体の諸物性を表1に示す。
実施例5
平均粒径4.1μmのタルク(C)(林化成社製MICRON WHITE #5000A)を用いた。そして、それ以外は実施例1と同様にして、未延伸シートおよび真空成形した成形体としての容器を得た。
【0054】
得られた成形体の諸物性を表1に示す。
実施例6
金型内での熱処理条件を、表1に示すように、温度150℃、保持時間3秒と変更した。そして、それ以外は実施例1と同様にして、未延伸シートおよび真空成形した成形体としての容器を得た。
【0055】
得られた成形体の諸物性を表1に示す。
実施例7
結晶性ポリ乳酸(A)/ガラス転移温度0℃以下の芳香族・脂肪族共重合ポリエステル(B)=95/5質量%にした。また、金型内での熱処理温度条件を、表1に示すように、温度130℃、保持時間20秒と変更した。そして、それ以外は実施例1と同様にして、未延伸シートおよび真空成形した成形体としての容器を得た。
【0056】
得られた成形体の諸物性を表1に示す。
比較例1
タルクを使用しなかった。そして、それ以外は実施例1と同様にして、未延伸シートおよび真空成形した成形体としての容器を得た。
【0057】
得られた成形体の諸物性を表1に示す。
比較例2
タルクの含量を40質量%に変更した。そして、それ以外は実施例1と同様にして、未延伸シートおよび真空成形した成形体としての容器を得た。
【0058】
得られた成形体の諸物性を表1に示す。
比較例3
ポリ乳酸(A)としてポリ乳酸(光学純度80.0%、残留ラクチド量=0.5質量%、重量平均分子量20万、カーギル・ダウ社製:ネイチャーワークス)を用いた。そして、それ以外は実施例1と同様にして、未延伸シートおよび真空成形した成形体としての容器を得た。
【0059】
得られた成形体の諸物性を表1に示す。
比較例4
ガラス転移温度0℃以下の芳香族・脂肪族共重合ポリエステル(B)を使用せず、実施例1と同様の結晶性ポリ乳酸(A)とタルク(C)のみを用いた。そして、それ以外は実施例1と同様にして、未延伸シートおよび真空成形した成形体としての容器を得た。
【0060】
得られた成形体の諸物性を表1に示す。
比較例5
結晶性ポリ乳酸(A)とガラス転移温度0℃以下の芳香族・脂肪族共重合ポリエステル(B)との混合比を(A)/(B)=70/30質量%にした。そして、それ以外は実施例1と同様にして、未延伸シートおよび真空成形した成形体としての容器を得た。
【0061】
得られた成形体の諸物性を表1に示す。
比較例6
実施例1と同様にして作製した未延伸シートに実施例1と同様の成型機を適用したが、その熱処理条件を変更して、金型内で160℃、5秒間熱処理した。次いで、実施例1と同様にして成形体としての容器を得た。
【0062】
得られた成形体の諸物性を表1に示す。
比較例7
実施例1と同様にして作製した未延伸シートに実施例1と同様の成型機を適用したが、その熱処理条件を変更して、金型内で100℃、1分間熱処理した。次いで、実施例1と同様にして成形体としての容器を得た。
【0063】
得られた成形体の諸物性を表1に示す。
【0064】
【表1】
実施例1〜7で得られた成形体としての容器は、熱湯を注いでも全く変形せず、耐熱性に優れたものであった。また耐衝撃性も優れていた。
【0065】
比較例1は、タルクを全く使用しなかったため、熱処理した容器の結晶化が不十分で、熱湯を注いだ際に一瞬で変形してしまった。
比較例2は、タルクの添加量が多すぎたため、容器自体が脆く、成形中あるいは成形後における容器の割れが観察された。
【0066】
比較例3は、ポリ乳酸の光学純度が低かったため、熱処理や結晶核剤を添加することにより結晶化を促しても、ポリ乳酸の結晶化が不十分で、耐熱性に劣る容器であった。
【0067】
比較例4は、ガラス転移温度0℃以下の芳香族・脂肪族共重合ポリエステル(B)を使用しなかったため、落球高さが低く、耐衝撃性に劣った容器であった。
比較例5は、ガラス転移温度0℃以下の芳香族・脂肪族共重合ポリエステル(B)の配合量が多過ぎたため、耐衝撃性に優れるものの、結晶化速度が著しく遅く、このため成型サイクル時間を要することになって工業的な生産の観点から問題であった。
【0068】
比較例6は、金型内での熱処理温度が160℃と高く、ポリ乳酸の融点付近であったため、結晶核が融解してしまい、このため得られた容器は十分結晶化しておらず、したがって耐熱性に劣ったものであった。
【0069】
比較例7は、金型内での熱処理時間が100℃とポリ乳酸分子が結晶化するに要する温度まで上がっておらず、処理時間を長くしても結晶化が不十分であり、このため|ΔHm|−|ΔHc|が9.0J/gにしかならず、耐熱性に劣る容器しか得られなかった。
【0070】
【発明の効果】
本発明によれば、光学純度と残留ラクチド量とを厳密に調整したポリ乳酸とガラス転移温度が0℃以下の芳香族・脂肪族ポリエステルとタルクとを所定の混合範囲としてシート状物を形成し、このシート状物を真空成形に代表される一般的な成形法によって成形するに際し、成形中の金型内で所定の条件にて熱処理するため、得られる生分解性の成形体の熱的性質は、(|ΔHm|−|ΔHc|)≧25J/gとなり、結晶化速度が0.010min-1以上となり、かつ、厚み500μm当たりの落球高さが20cm以上となって、従来のポリ乳酸による成形体では不可能であった熱湯にも耐えうる耐熱性と耐衝撃性を兼ね備えたものとすることができる。
【0071】
このようにして得られるポリ乳酸系成形体は、耐熱性と耐衝撃性が必要とされる容器、例えば弁当用トレー、どんぶり、皿、コップなどに好適に使用できる他に、夏季の倉庫保管中や運搬中においても変形しないため、蓋材や建材、ボード、文具、ケース、キャリアテープ、プリペイドカード、ICカードなどのカード類、FRPなど様々な用途にも適用できる。
Claims (1)
- 光学純度95%以上かつ残留ラクチド量が0.1〜0.4質量%の結晶性ポリ乳酸系樹脂(A)と、ガラス転移温度が0℃以下の芳香族・脂肪族共重合ポリエステル(B)と、平均粒径1〜8μmのタルク(C)とを、(A)と(B)との混合比が(A)/(B)=97/3〜80/20質量%、(C)の混合比が組成物全体量に対して5〜20質量%となるよう配合した樹脂組成物(ただし、難燃剤を含むものを除く)を押し出し成形により未延伸のシート状にした後、成形金型を用いて、真空成形、圧空成形、真空圧空成形、プレス成形のいずれか一つにより成形しながら、同時に、成形金型内で、処理温度110〜150℃および処理時間1〜30秒にて熱処理することを特徴とするポリ乳酸系成形体の製造方法。
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