JP4815686B2 - 電動機の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、密閉型圧縮機用電動機およびその製造方法に関するものであり、樹脂材料の使用量を削減し、キャピラリーチューブ詰まりの発生し難い密閉型圧縮機およびそれを用いた冷凍サイクルに関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、密閉型圧縮機には、小型高効率の観点から、突極部を有する電動機が用いられてきている。
【0003】
突極部を有する電動機については、特開平7−46782号公報に開示されているように、インシュレータと云われる樹脂等から形成される絶縁部材を介して固定子鉄心に、コイルが形成されている。一般的にコイル形成は、ノズル部を有する巻線機により、直接、ティースに巻線する直巻工法が採用されている。
【0004】
このように製造された電動機は、当該公報にも開示されているように、隣接するティースに巻線されたコイルを収納するスロットにおいては空間が形成されており、隣接するコイル同士の絶縁が確保されている。
【0005】
しかし、上記のような一体型の固定子鉄心による直巻工法においては、スロット内のノズル通過空間を確保する観点から、スロット内に空間(結果的に、絶縁を確保する空間となる)が形成され、これ以上の占積率の向上が困難であり、さらなる、小型高効率を実現することが不可能であった。
【0006】
そこで、特開平9−191588号公報には、固定子鉄心は略直線状に展開した状態で直巻線した後、環状とし、固定子を形成する製造方法が開示されている。当該製造方法により占積率を大幅に向上した固定子を得ることが可能である。そして、占積率向上に伴い、同一スロットに収納された隣接するコイル同士の絶縁が必要となる。相間絶縁方法として、当該公報には、スロット絶縁紙に折り曲げ部を有する構造とし、固定子鉄心を環状にする際に、折り曲げ部が突起となり、コイル間に配置される技術的思想が開示されている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記のような、固定子鉄心を略直線状に展開した状態で直巻線した後、環状とし、固定子を形成する製造方法においては、主たる磁束の通り道となる固定子のヨーク部が接合部において切断されているため、寸法のバラツキ等を考慮すると、微小な隙間がヨーク部に複数存在することになり、磁気抵抗が増加すると共に、接合部における積層間の短絡等により鉄損も増加する。
【0008】
また、密閉型圧縮機のように、半抜きによるカラマセや外周部の溶接等で積層間を固着している場合においては、落下時の接合強度の確保が困難であり、TIG溶接等で接合した場合は、溶接部の積層間短絡により鉄損が増加する。また、固定子外周部をシェルに焼きばめしてなる密閉型圧縮機においては、固定子鉄心の外径寸法精度によってしか、内径寸法精度を確保することができず、ギャップ不同になりやすく、振動、騒音の面でも問題があった。また、接合部が、スロット内部に突出した場合、スロット絶縁紙を破損する可能性もあった。
【0009】
本発明は、高占積率巻線を可能とし、さらに、磁束の急峻な変化による振動、騒音を抑制するものであり、低振動、低騒音な電動機、およびその製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は、あらかじめ環状に巻線された後に前記ティースにスロットオープンを介して集中巻状にコイルを挿入する際、互いに隣接しない前記ティースに同時にコイルを挿入する工程をM回繰り返す。それによりコイルの挿入が容易になり、絶縁も含めて自動化することができることに加え、占積率も向上する。また、固定子鉄心の剛性が向上し、巻線振動も抑制されることにより、鉄心の円環振動による振動、騒音を低減できる。具体的には、つぎのとおりである。
【0011】
請求項1に記載の発明は、先端部の円周方向に幅広部を有する複数のティースと環状のヨーク部により一体的に形成される固定子鉄心と、あらかじめ環状に巻線された後に前記ティースにスロットオープンを回して集中巻状に挿入されるコイルと、前記ティースと前記ヨークにより形成されるスロット部に挿入収納された隣接する異相コイル間を絶縁する相間絶縁紙と、前記スロットに収納されたコイルと前記固定子鉄心を絶縁するスロット絶縁紙で構成される、突極部を有する固定子と、永久磁石を有する回転子により構成される電動機の製造方法において、互いに隣接しない前記ティースに同時にコイルを挿入する工程をM(Mは2以上の整数)回、繰り返し行うことを特徴とする電動機の製造方法であり、相間絶縁構造が取りやすくなり、絶縁性を向上させ、信頼性が向上するという効果が得られる。また、同一スロット内で異なる相のコイルが混同することなく巻線が可能になる。さらにコイルの挿入性を向上させ、高占積率巻線を可能にし、電動機の効率が向上する。
【0012】
請求項2に記載の発明は、コイル内径幅が、ティース先端部の円周方向に幅広となったティース幅広部より大きくなるように環状に巻線されたコイルを前記ティースに挿入する工程において、コイルをティース幅広部より奥に挿入した後、コイル内径幅を縮小し、かつコイル内径高さを内径幅の縮小に応じて拡大することを特徴とする請求項1記載の電動機の製造方法であり、占積率および絶縁性が向上する。
【0013】
請求項3に記載の発明は、コイルを挿入する工程において、コイル内径高さを内径幅の縮小に応じて拡大することによって、固定子鉄心の軸方向端部とコイルの軸方向端部の内径部との間に、十分な絶縁空間距離を確保することを特徴とする請求項2記載の電動機の製造方法であり、絶縁性が向上することによりインシュレータを廃止することができ、樹脂使用量が減量できるため、特に密閉型圧縮機の用途に適する。
【0014】
請求項4に記載の発明は各コイル挿入工程において、断面形状がコイル側に凹の略コの字型である相間絶縁紙をコイルと共に挿入することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電動機の製造方法であり、従来絶縁紙設置をコイル挿入後に行う場合、人の手で設置せねばならず、また絶縁紙の腰折れが発生するが、本発明は相間絶縁紙の設置が容易であり、機械による自動化が可能になる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、コイルが収納されるスロットで、かつコイル未挿入の隣接するティースのコイルが収納される前記スロットの部分にダミー部材を配置した状態で、コイル挿入を行うことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電動機の製造方法であり、同一スロット内の異なる相のコイルを前記ダミー部材の使用によって左右に分けることにより、占積率および耐圧性が向上する。加えて相間絶縁紙の挿入が容易になるため、相間絶縁紙の挿入工程の自動化が可能となる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、ティースに挿入されるコイルの前進に追従して、スロットの部分に配置したダミー部材を押し出すことを特徴とする請求項5記載の電動機の製造方法であり、占積率および耐圧性が向上し、また、相間絶縁紙の挿入が容易になるため、相間絶縁紙の挿入工程の自動化が可能となる。加えてダミー部材の押出のための特別な装置および工程が不要となる。
【0017】
請求項7に記載の発明は、巻線可能な全スロット断面積のうち、コイルを挿入する挿入可能部分の断面積がダミー部材の断面積より小さいことを特徴とする請求項6記載の電動機の製造方法であり、コイルの挿入工程において相互の相間絶縁紙の干渉がなくなるため、安定したコイル挿入が可能となり、占積率を向上させるという効果が得られる。
【0018】
請求項8に記載の発明は、ダミー部材が、抜く方向の先端に向かって断面積が大きくなるようなテーパ形状を有する請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の電動機の製造方法であり、抜きテーパがついているためダミー部材の押出が容易になり、コイルダメージが少なくなるという効果が得られる。
【0019】
請求項9に記載の発明は、ダミー部材が、抜く方向の先端に向かって断面積が小さくなるようなテーパ形状を有する請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の電動機の製造方法であり、ダミー部材をスロットから抜き出す際に、ダミー部材自身で先に挿入されているコイルをスロット内で整形し、次のコイル挿入を容易にするという効果が得られる。
【0020】
請求項10に記載の発明は、スロットへのコイルの挿入は、互いに隣接しない、各相のコイルを同数ずつ同時に行う、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の電動機の製造方法であり、各相のコイル内径面積の合計が同一になるため、各相の誘起電圧が同一になるという効果が得られる。また、各相のコイルの抵抗も同一になるため、電流が安定するという効果が得られ、これらの効果により駆動が安定し、電気的あるいは磁気的なアンバランスが低減される。
【0021】
請求項11に記載の発明は、3相巻線が施され、スロット数が偶数のときはM=2、スロット数が奇数の時はM=3である、請求項10記載の電動機の製造方法であり、工程が少なくなるため、生産性が向上する。
【0022】
請求項12に記載の発明は、同一スロット内部に挿入された異なる相のコイルを挿入した後、前記コイルの軸方向両端部を整形し、かつ、前記同一スロット内部に挿入された異なる相のコイルを相間絶縁紙を介して接触させることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の電動機の製造方法であり、固定子鉄心の剛性が向上し、巻線振動を抑制する効果があり、隣接するティースが互いに引き合うことにより発生する円環振動を抑制する効果があり、振動、騒音が低減される。また、スロットオープン部の絶縁紙と兼用する場合、十分に絶縁性が確保された状態で工程および使用材料を削減できる。
【0023】
なお、ちなみに、参考例について説明する。先端部の円周方向に幅広部を有する複数のティースと環状のヨーク部により一体的に形成される固定子鉄心と、あらかじめ巻線された後に前記ティースにスロットオープンを介して挿入されるコイルと、前記ティースと前記ヨークにより形成されるスロット部に挿入収納された隣接する異相コイル間を絶縁する相間絶縁紙と、前記スロットに収納されたコイルと前記固定子鉄心を絶縁するスロット絶縁紙で構成される突極部を有する固定子と、永久磁石を有する回転子により構成される電動機において、前記スロット絶縁紙の固定子鉄心の軸方向両端面側に形成される折り返し角部を切欠形状とした電動機では、ステータ内径への絶縁紙のはみ出しがない、あるいは耐圧や信頼性などに影響がない程度まではみ出しを少なくすることができるため、信頼性の高い電動機が得られる。
【0024】
なお、上記参考例において、さらに、スロット絶縁紙の固定子鉄心の軸方向両端面側に形成される折り返し角部を切欠形状とすることによって、固定子巻線終了後、前記スロット絶縁紙の折り返し角部がステータの内径より内周側に突出しないようにした電動機では、ステータ内径への絶縁紙のはみ出しがなく、信頼性の高い電動機が得られる。
【0025】
なお、上記参考例において、さらに、スロット絶縁紙の固定子鉄心両端面側に形成される折り返し部の一部を収納する段差を固定子鉄心のスロット両端面側に設けた電動機では、固定子鉄心両端面側のスロットのエッジ部に、スロット絶縁紙折り返し部が当るため、絶縁性が良好となる。特に巻線のストレスによるスロット絶縁紙への応力により、絶縁破壊が少なくなるという効果が得られる。
【0026】
請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の製造方法により製造された電動機、又は上記参考例による電動機を用いた密閉型圧縮機では、集中巻の小型化・使用銅量低減という良さはそのままでありながら、高効率・低振動・低騒音が実現できる。
【0027】
なお、ちなみに、冷媒がHFCである上記参考例の密閉型圧縮機では、高効率・低振動・低騒音であると共に、インシュレータを使用しなくてよいため、キャピラリチューブづまり等が発生しにくいという効果が得られる。
【0028】
なお、ちなみに、冷媒が自然冷媒である上記参考例の密閉型圧縮機では、高効率・低振動・低騒音であると共に、インシュレータを使用しなくてよいため、キャピラリチューブづまり等が発生しにくいという効果が得られる。
【0029】
なお、ちなみに、上記参考例の密閉型圧縮機を搭載した冷凍サイクルでは、高効率でありながら使用電力を削減することができ、信頼性の向上と長寿命化が実現できる。
【0030】
なお、ちなみに、上記参考例の冷凍サイクルを搭載した空調機器では、高効率でありながら使用電力を削減することができ、信頼性の向上と長寿命化が実現できる。
【0031】
なお、ちなみに、上記参考例の冷凍サイクルを搭載した冷蔵庫では、高効率でありながら使用電力を削減することができ、信頼性の向上と長寿命化が実現できる。
【0032】
なお、ちなみに、上記参考例の冷凍サイクルを搭載した電子回路冷却システムでは、特に近年のIT産業の急成長により、インターネットのホスト局や移動体通信の中継局など、至るところに電子回路が集中しており、さらなる省エネが急務となっている中で、高効率でありながら使用電力を削減することができ、信頼性の向上と長寿命化が実現できる。
【0033】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について、実施例を用いて説明する。
【0034】
【実施例】
以下本発明の実施例について説明する。
【0035】
図1は本発明の一実施例における電動機の断面図である。
【0036】
図2は本発明の一実施例における電動機の製造方法を示す図である。
【0037】
図3は本発明の一実施例における電動機のコイル挿入方法を示す図であり、(a)は固定子鉄心の軸方向端面側、(b)は正面側からの図である。
【0038】
固定子10は先端部の円周方向に幅広部14を有する複数のティース12と環状のヨーク部13により一体的に形成される固定子鉄心11に、あらかじめ環状に巻線されたコイル15U1、15V1、15W1、15U2、15V2、15W2を前記ティースにスロットオープン16を介して挿入してなる。前記固定子の内周部には、固定子鉄心11の内周部とわずかな空隙をもって対向した回転子20を備える。回転子20は軸受等(図示せず)によって回転自在に保持され、略円筒形の回転子鉄心21の内部に永久磁石22が埋設されてなる。永久磁石22は、N、S交互に着磁されている。コイル15には回転子位置に応じて半導体素子等により転流された電流が流れ、固定子10に回転磁界が発生し、回転子20の磁束との相互作用により発生するトルクが働き、回転子20を回転させる。
【0039】
次に製造工程について説明する。
【0040】
固定子鉄心11は、電磁鋼板をプレスにて所定の形状に打ち抜き、所定の積厚に積層してなる。一方、図2(a)に示すように、あらかじめ環状(この場合、一本のティース12の回転子20に面した面の形状にあわせた形状)に巻線し、コイル15を形成する。このコイルは、図2(b)(c)に示すように前記コイル15にそれぞれ対応するティース12に挿入する。この際、少なくとも隣接しないティース12のコイル15を同時に挿入する。図2では、まず15U2、15V1、15W2を挿入し、次に15U1、15V2、15W1を挿入する手順を示しているが、図2(b)と図2(c)の工程が逆になっても問題ない。この時、コイル15を挿入するスロット50のうち、コイル15が未挿入の部分には、今回挿入するコイル15を所定の位置に収納し、バラけないようにダミー部材31を挿入した状態で行うとよい。また、スロット50の形状を略楕円状にしてもよく、略楕円状にすることで、コイル15がスムーズにスロット50内に挿入されるため、巻線性を向上させることができる。コイル15を挿入するときには、断面形状がコイル15側に凹の略コの字型である相間絶縁紙19を同時に挿入するとよい。相間絶縁紙19はそれぞれのコイル15側に凹のコの字形で、特に固定子10内径側の折り返しは、固定子鉄心11のスロットオープン16とコイル15との絶縁を兼ねることができる。固定子鉄心11のスロットオープン16付近において相間絶縁紙19とスロット絶縁紙18が一定の長さ以上で重なりあわせることにより、絶縁が十分となる。この時、巻線可能な全スロット断面積のうち、コイル15を挿入する挿入可能部分の断面積がダミー部材31の断面積より小さい場合には、コイル15の挿入工程において相互の相間絶縁紙19の干渉がなくなるため、安定したコイル15の挿入が可能となり占積率が向上する。また、ダミー部材31が、抜く方向の先端に向かって断面積が大きくなるようなテーパ形状を有する場合、抜きテーパがついているためダミー部材31の押出が容易になり、コイル15のダメージが少なくなるという効果が得られる。なお、ダミー部材31が抜く方向の先端に向かって断面積が小さくなるようなテーパ形状を有する場合、ダミー部材31をスロットから抜き出す際に、ダミー部材31自身で先に挿入されているコイル15をスロット50内で整形し、次のコイル15の挿入を容易にするという効果を得られる。
【0041】
次に、ダミー部材31が挿入されたスロット50にコイル15の挿入をするときは、図3に示すように、ティース12に挿入されるコイル15の前進に追従して、スロット50に配置したダミー部材31を押し出すことにより、占積率および耐圧性が向上し、また、相間絶縁紙19の挿入が容易になるため、相間絶縁紙19の挿入工程の自動化が可能となる。加えてダミー部材31の押出のための特別な装置および工程が不要となる。これにより同一スロット50内にある、異なる相のコイル15は、2枚の相間絶縁紙19を介して接することになる。
【0042】
なお、図2(d)のように、挿入後のコイル15の軸方向両端部(以下、「コイルエンド」と示す)17は、所定の形状に整形する。整形によって、電動機の付近に設けられる機器との絶縁空間距離を確保でき、固定子巻線を用いて着磁する場合、コイルエンド17の変形やダメージを抑える。さらに、コイルエンド17を成形することにより、同一スロット50内に収納されている異なる相のコイル15、例えば15W2と15U1に力が作用し、ティース12が拘束されることで固定子鉄心11の剛性が向上する。
【0043】
また、整形したコイルエンド17は、縛り糸で結束する、あるいは自己融着電線を用いて整形後にコイル15を融着させるとよい。
【0044】
以下にコイル15の挿入手順の一例を述べる。
【0045】
4極6スロットの時、各ティース12に施された巻線が、順にU1、V1、W1、U2、V2、W2である時、例えばまずU1、W1、V2を同時に挿入し、次にV1、U2、W2を同時に挿入するとよい。この時、最初にU1、W1、V2を入れる時、これらと同一スロット50にあり、2回目に挿入されるV1、U2、W2にダミー部材31を挿入する。
【0046】
同様に6極9スロットの時、各ティース12に施された巻線が、順にU1、V1、W1、U2、V2、W2、U3、V3、W3である時、例えばまずU1、W1、V2を同時に挿入し、次にU3、W3、V1を同時に挿入し、最後にU2、W2、V3を同時に挿入するとよい。
【0047】
また同様に8極9スロットの時、各ティース12に施された巻線が、順にU1、V1、W1、U2、V2、W2、U3、V3、W3、U4、V4、W4である時、例えばまずU1、W1、V2、U3、W3、V4を同時に挿入し、次にV1、U2、W2、V3、U4、W4を同時に挿入するとよい。このようなコイル15の挿入順序で行えば、それぞれのコイル15挿入において、同時に挿入するコイル15の組合せ(相対的な位置関係)が同一となるため、あらかじめ環状に巻線するための巻枠や巻線機が同一の構成でよい。このため設備が簡略化でき、生産性も向上する。
【0048】
すなわち、奇数スロット…3回、偶数スロット…2回でコイルの挿入が完了する。
【0049】
これにより各相のコイル15内径面積の合計が同一になるため、各相の誘起電圧が同一になるという効果が得られる。また、各相のコイル15の抵抗も同一になるため、電流が安定するという効果が得られ、これらの効果により駆動が安定し、アンバランスが低減される。例えば4極6スロットの場合、1回目に挿入したコイル15より2回目に挿入したコイル15の方が内径面積がわずかに大きかった場合、U1、W1、V2のコイルより、V1、U2、W2のコイルの方が誘起電圧がわずかに大きくなるが、U、V、W各相トータルではそれぞれU1+V2、V1+V2、W1+W2となるので、各相ほぼ同一の誘起電圧となる。
【0050】
なお、隣り合うティース12にコイル15を挿入する場合、例えば4極6スロットの時には、U1、V1、W1、U2、V2、W2のコイルを同時に挿入することも可能である。この場合、挿入回数が1回となるため工程を削減することができるが、コイル15の巻き崩れや、異なる相のコイル15の交差などの問題が生じるため、コイル15の挿入そのものが困難となる。したがって、本発明に示したように、互いに隣接しないティース12に同時にコイル15を挿入することが望ましい。
【0051】
次に集中巻線を施した電動機の音の発生原理について説明する。
【0052】
通常、前記のような電動機の固定子鉄心では、互いに隣接した幅広部14間に作用する互いに引き合うあるいは反発する応力が増加するために円環振動が発生し易く、分布巻に比べて振動が増加する傾向にあった。これには、回転方向の振動のみならず、半径方向の振動も大きく影響を及ぼす。また、スロットオープン16から巻線用ノズルを挿入しながらティース12に直接巻線を施すノズル巻工法によって製造された電動機では、コイル15はティース12に密着し、隣接するティース12に巻線されたコイル15間に空間があるため、円環振動に対しては、コイル15は質量として働く以外、剛性の向上に寄与しない。
【0053】
特に、PWM制御を行う場合、さらには3相中2相のみに通電する120°矩形波通電では振動の増加が顕著である。これは、正弦波駆動に比べて、巻線に流れる電流に高調波を多く含むためである。また120°矩形波通電では、相切替時の電流の変化が急峻であることから、幅広部14には強い加振力が発生し、振動が増大する。さらに永久磁石22を回転子鉄心21内部に埋設したIPMモータでは、磁気吸引力が大きくなるため、固定子鉄心21を変形させる力が大きく、また、ギャップ不同時のアンバランス力も大きくなる。永久磁石22が希土類(Nd−Fe−B系)である時は、さらに顕著となる。
【0054】
一方、本発明に示した製造方法によって製造された電動機においては、同一スロット50に挿入するコイル15を仮にU1(−)、V1(+)とすると、U1(−)とV1(+)は、U1(−)と同時に挿入した相間絶縁紙19と、V1(+)と同時に挿入した相間絶縁紙19を介して互いに接している。これにより固定子鉄心11の剛性が向上し、巻線振動の抑制がなされるため、隣接するティース12が互いに引き合うことにより発生する固定子鉄心11の円環振動による振動、騒音を低減する効果がある。図4に従来の電動機の固定子鉄心の伝達関数、図5に本発明の電動機の伝達関数を示す。
【0055】
なお、従来の技術で説明したような、固定子鉄心11を分割して巻線する場合は、スロット50内に隙間なく巻線した場合、コイル15の弾性が損なわれることもある。本発明における製造方法では、スペースファクタ50〜65%が望ましい。
【0056】
図6に示すように、スロット絶縁紙18のティース12の軸方向両端面側に形成される折り返し角部41を切欠形状とすることによって、固定子巻線終了後、スロット絶縁紙18の折り返し角部41が固定子10の内径より内周側に突出しないようにすることにより、固定子10の内径への絶縁紙のはみ出しがなく、信頼性の高い電動機が得られる。
【0057】
なお、図7のように、ティース12のスロット50について、軸方向両端部のわずかな長さLだけ(1〜3mm程度)、他の部分よりスロット50形状を大きくすることによって、ティース12にわずかな幅Wの段差51を設ける。スロット絶縁紙18のティース12両端面側に形成される折り返し部の一部を段差に収納する。段差51の幅は、スロット絶縁紙18の2枚分の厚みより若干大きめに取るとよい。例えば、0.25mmのスロット絶縁紙18を用いた時、段差51の幅Wは0.5mmより大きい値、0.6mm〜1mm程度でよい。
【0058】
コイル15をスロット50に挿入し、または、コイルエンド17を成形する時、スロット絶縁紙18の軸方向端部には、大きな力がかかる。このとき、前記段差51が無い場合には、スロット絶縁紙18の1枚のみが直接ティース12のスロット50の軸方向端部のエッジに強い力で押し付けられることになり、破れたりして、コイル15とティース12との絶縁が破壊される恐れがあるが、上記の段差51がある構成では、スロット絶縁紙18の折り返し部によって力が吸収されるため、コイル15側のスロット絶縁紙18の破損は起こりにくい。なお、スロット絶縁紙18の折り返し部の軸方向長さHは、段差51に一部を収納してもなおコイルエンド17とティース12との間に所定の絶縁空間距離があればよく、例えば家庭用機器に使われる圧縮機等の場合、絶縁空間距離は2.4mm以上であるので、段差の軸方向長さが1〜3mmである場合、これらをたしあわせて、3.4〜5.4mm程度設ければよい。
【0059】
なお、スロット絶縁紙18および相間絶縁紙19の材質は、ポリエステルフィルムが好適であり、特に、密閉型圧縮機として、冷媒に晒されるような用途では、オリゴマの低い、PEN,PET等が優れる。
【0060】
なお、この電動機を密閉型圧縮機に用いれば、集中巻の小型化・使用銅量低減という良さはそのままのため高効率であるうえに低振動・低騒音である。さらにインシュレータを用いる必要がないため、キャピラリチューブづまり等が発生しにくい。自然冷媒を使用する密閉型圧縮機においても同様の効果を得ることができる。
【0061】
また、前記密閉型圧縮機を搭載した冷凍サイクルは、高効率であるので使用電力を削減することができ、信頼性の向上と長寿命化が実現できる。
【0062】
また、前記冷凍サイクルを搭載した空調機器は、高効率であるので使用電力を削減することができ、信頼性の向上と長寿命化が実現できる。
【0063】
また、前記冷凍サイクルを搭載した冷蔵庫は、高効率であるので使用電力を削減することができ、信頼性の向上と長寿命化が実現できる。
【0064】
また、前記冷凍サイクルを搭載した電子回路冷却システムは、高効率であるので使用電力を削減することができ、信頼性の向上と長寿命化が実現できる。
【0065】
【発明の効果】
請求項1に記載の発明によれば、相間絶縁構造が取りやすくなり、絶縁性を向上させ、信頼性が向上するという効果が得られる。また、同一スロット内で異なる相のコイルが混同することなく巻線が可能になる。さらにコイルの挿入性を向上させ、高占積率巻線を可能にし、電動機の効率が向上する。
【0066】
請求項2に記載の発明によれば、占積率および絶縁性が向上する。
【0067】
請求項3に記載の発明によれば、絶縁性が向上することによりインシュレータを廃止することができ、樹脂使用量が減量できるため、特に密閉型圧縮機の用途に適する。
【0068】
請求項4に記載の発明によれば、絶縁紙設置をコイル挿入後に行う場合、人の手で設置せねばならず、また絶縁紙の腰折れが発生するが、本発明は相間絶縁紙の設置が容易であるため、機械による自動化が可能になる。
【0069】
請求項5に記載の発明によれば、同一スロット内の異なる相のコイルを左右に分けることにより、占積率および耐圧性が向上する。加えて相間絶縁紙の挿入が容易になるため、自動化が可能となる。
【0070】
請求項6に記載の発明によれば、占積率および耐圧性が向上し、また、相間絶縁紙の挿入が容易になるため、自動化が可能となる。加えてダミー部材の押出のための特別な装置が不要となる。
【0071】
請求項7に記載の発明によれば、相互の相間絶縁紙の干渉がなくなるため、安定したコイル挿入が可能となり、占積率を向上させるという効果が得られる。
【0072】
請求項8に記載の発明によれば、抜きテーパがついているためダミー部材の押出が容易になり、コイルダメージが少なくなるという効果が得られる。
【0073】
請求項9に記載の発明によれば、ダミー部材がスロットから抜け出る際に、ダミー部材自身で先に挿入されているコイルをスロット内で整形し、次のコイル挿入を容易にするという効果が得られる。
【0074】
請求項10に記載の発明によれば、各相のコイル内径面積の合計が同一になるため、誘起電圧が同一になるという効果が得られる。また、各相のコイルの抵抗も同一になるため、電流が安定するという効果が得られ、これらの効果により駆動が安定し、電気的あるいは磁気的なアンバランスが低減される。
【0075】
請求項11に記載の発明によれば、工程が少なくなるため、生産性が向上する。
【0076】
請求項12に記載の発明によれば、固定子鉄心の剛性が向上し、巻線振動を抑制する効果があるため、隣接するティースが互いに引き合うことにより発生する円環振動を抑制する効果があり、振動、騒音が低減される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施例における電動機の断面図
【図2】 (a)(b)(c)(d)は、本発明の一実施例における電動機の製造方法を示す図
【図3】 (a)(b)は、本発明の一実施例における電動機のコイル挿入方法を示す図
【図4】 従来の電動機の固定子鉄心の伝達関数を示す図
【図5】 本発明における電動機の固定子鉄心の伝達関数を示す図
【図6】 一例におけるスロット絶縁紙形状を示した斜視図
【図7】 一例におけるスロットの軸方向両端部段差とスロット絶縁紙折り返し部との関係を示した断面図
【符号の説明】
10 固定子
11 固定子鉄心
12 ティース
13 ヨーク部
14 幅広部
15 コイル
16 スロットオープン
17 コイルエンド
18 スロット絶縁紙
19 相間絶縁紙
20 回転子
31 ダミー部材
41 折り返し角部
50 スロット
51 段差
Claims (12)
- 先端部の円周方向に幅広部を有する複数のティースと環状のヨーク部により一体的に形成される固定子鉄心と、あらかじめ環状に巻線された後に前記ティースにスロットオープンを介して集中巻状に挿入されるコイルと、前記ティースと前記ヨークにより形成されるスロット部に挿入収納された隣接する異相コイル間を絶縁する相間絶縁紙と、前記スロットに収納されたコイルと前記固定子鉄心を絶縁するスロット絶縁紙で構成される、突極部を有する固定子と、永久磁石を有する回転子により構成される電動機の製造方法において、互いに隣接しない前記ティースに同時にコイルを挿入する工程をM(Mは2以上の整数)回、繰り返し行うことを特徴とする電動機の製造方法。
- コイル内径幅が、ティース先端部の円周方向に幅広となったティース幅広部より大きくなるように環状に巻線されたコイルを前記ティースに挿入する工程において、コイルをティース幅広部より奥に挿入した後、コイル内径幅を縮小し、かつコイル内径高さを内径幅の縮小に応じて拡大することを特徴とする請求項1記載の電動機の製造方法。
- コイルを挿入する工程において、コイル内径高さを内径幅の縮小に応じて拡大することによって、固定子鉄心の軸方向端部とコイルの軸方向端部の内径部との間に、十分な絶縁空間距離を確保することを特徴とする請求項2記載の電動機の製造方法。
- 各コイル挿入工程において、断面形状がコイル側に凹の略コの字型である相間絶縁紙をコイルと共に挿入することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電動機の製造方法。
- コイルが収納されるスロットで、かつコイル未挿入の隣接するティースのコイルが収納される前記スロットの部分にダミー部材を配置した状態で、コイル挿入を行うことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電動機の製造方法。
- ティースに挿入されるコイルの前進に追従して、スロットの部分に配置したダミー部材を押し出すことを特徴とする請求項5記載の電動機の製造方法。
- 巻線可能な全スロット断面積のうち、コイルを挿入する挿入可能部分の断面積がダミー部材の断面積より小さいことを特徴とする請求項6記載の電動機の製造方法。
- ダミー部材が、抜く方向の先端に向かって断面積が大きくなるようなテーパ形状を有する請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の電動機の製造方法。
- ダミー部材が、抜く方向の先端に向かって断面積が小さくなるようなテーパ形状を有する請求項5から請求項7のいずれか1項に記載の電動機の製造方法。
- スロットへのコイルの挿入は、互いに隣接しない、各相のコイルを同数ずつ同時に行う、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の電動機の製造方法。
- 3相巻線が施され、スロット数が偶数のときはM=2、スロット数が奇数の時はM=3である、請求項10記載の電動機の製造方法。
- 同一スロット内部に挿入された異なる相のコイルを挿入した後、前記コイルの軸方向両端部を整形し、かつ、前記同一スロット内部に挿入された異なる相のコイルを相間絶縁紙を介して接触させることを特徴とする請求項1から請求項11のいずれか1項に記載の電動機の製造方法。
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