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JP4836307B2 - 圧電磁器組成物及びこれを用いたインクジェット記録ヘッド - Google Patents
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JP4836307B2 - 圧電磁器組成物及びこれを用いたインクジェット記録ヘッド - Google Patents

圧電磁器組成物及びこれを用いたインクジェット記録ヘッド Download PDF

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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)
  • Compositions Of Oxide Ceramics (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、圧電定数dを劣化させることなく、研削性に優れたチタン酸ジルコン酸鉛系の圧電磁器組成物とこれを用いたインクジェット記録ヘッドに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、圧電効果によって発生する変位を機械的駆動源として利用したものに、超音波応用振動子、超音波モータ、圧電アクチュエータ等があり、メカトロニクスの分野の進展とともに、注目されている。
【0003】
例えば、圧電アクチュエータは、磁性体にコイルを巻いた従来の電磁式アクチュエータと比較して、消費電力や発熱量が少なく、応答速度に優れるとともに、変位量が大きく、寸法、重量が小さい等の優れた特徴を有している。そして、これら圧電アクチュエータ等を構成する圧電材料としては、PbZrO3−PbTiO3(以下、Pb(Zr Ti)O3という)組成系の圧電磁器組成物が用いられているが、さらに大きな機械的変位が得られることが要求されており、そのためには圧電定数dの大きい圧電磁器組成物が望まれている。
【0004】
このような目的に合致する圧電磁器組成物として、例えば、Pb(Zr Ti)O3の2成分組成系に、第3成分として、Pb(Mg1/3 Nb2/3)O3、Pb(Ni1/3 Nb2/3)O3、Pb(Zn1/3 Nb2/3)O3の少なくとも1種を固溶させたペロブスカイト型化合物から成る焼結体が実用化されている。また、特開平5−58729号公報には、圧電特性以外に耐熱性や焼結性等の改善を目的として、上記ペロブスカイト型化合物を主成分とし、副成分として、NiO、CuO、Bi23、WO3の少なくとも1種を0.01〜3mol%の範囲で含有して成る圧電磁器組成物が開示されている。
【0005】
一方、近年、低ランニングコストでカラー画像や文字情報等を印刷する記録装置として、インクジェット方式の記録装置が使用されており、この記録装置に搭載されるインクジェット記録ヘッドに圧電アクチュエータが用いられている。
【0006】
図3に従来のインクジェット記録ヘッドの一例を示すように、このインクジェット記録ヘッド20(以下、単にヘッドという)は、圧電磁器組成物にダイヤモンドホイールによる研削加工にて一端が閉じられた複数の溝を並設し、各溝をインクの流路22とするとともに、流路22を構成する壁を隔壁21とした流路部材28と、上記各隔壁21の両側面上半分に形成された駆動用電極23と、各隔壁21の頂部に接着にて接合され、各流路22を覆う蓋板29と、上記流路部材28の開放端部に接着にて接合されたノズル板27とから成り、上記ノズル板27には、各流路22と連通し、流路22内のインクを吐出するインク吐出孔26が形成され、上記蓋板29には、各流路22と連通し、流路22内にインクを導入するインク供給穴24が形成されたものがあった。なお、矢印は隔壁21を形成する圧電磁器組成物の分極方向を示す。
【0007】
そして、このヘッド20よりインク滴を吐出するには、インク供給孔24より各流路22へインクを導入し、隔壁21に備える駆動用電極23に通電して隔壁21を屈曲変位させることにより、隔壁21間にて仕切られた流路22内のインクを加圧し、その流路22と連通するインク吐出孔6よりインク滴を吐出するようになっており、インク滴の吐出性能を高めるためには、隔壁21の機械的変位量を大きくする必要があることから、上記流路部材28を形成する圧電磁器組成物として、Pb(Zr Ti)O3組成系の圧電磁器組成物が用いられていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、高圧電定数dを得るため、Pb(Zr Ti)O3組成系に対し、(Zr Ti)の一部をPb(Zn1/3 Sb2/3)O3、Pb(Zn1/3 Nb2/3)O3、Pb(Ni1/2 Te1/2)O3のうち1種以上の成分で置換したペロブスカイト型化合物から成る圧電磁器組成物に研削加工を施すと、折れやチッピング(欠け)による欠陥が生じ易く、加工精度が悪いといった課題があった。
【0009】
この理由は明らかではないが、本件発明者の研究によれば、上記圧電磁器組成物中におけるペロブスカイト型化合物の平均粒子径が小さく緻密であるため、ダイヤモンドホイールによる研削加工を施すと、ダイヤモンドホイールが圧電磁器組成物の研削面と接触する割合が大きく、研削面に大きな応力が加わることから、この応力によって研削面にクラックが発生し、割れやチッピング(欠け)等の欠陥が発生するものと思われる。
【0010】
また、上記インクジェット記録ヘッド20の流路22を仕切る隔壁21は、幅が100μm以下、高さが150μm以上の薄肉であるため、流路部材28が上記ペロブスカイト型化合物から成る圧電磁器組成物であると、隔壁21及び流路22の形成において、ダイヤモンドホイールを用いた研削加工を施すと、隔壁21に割れやチッピング(欠け)等の欠陥が多く、歩留りが悪いといった課題があった。しかも、仮に研削後に欠陥が目に見えず、そのままヘッド20を製作しても、インク滴を吐出させるために駆動用電極23に通電して隔壁21を屈曲変位させると、隔壁21には目に見えない欠陥が存在するため、使用中に隔壁21が破損し、インク滴を安定して吐出させることができなくなるといった課題があった。
【0011】
【課題を解決するための手段】
そこで、本発明は上記課題に鑑み、Al23を0.01〜0.06量%、SiO2を0.01〜0.06量%含有し、残部が組成式Pb1-x-ySrxBay(Zn1/3 Sb2/3a(Zn1/3 Nb2/3b(Ni1/2 Te1/2cZrdTi1−a−b−c−d3、ただし、0≦x≦0.10,0≦y≦0.10,0<x+y,0≦a≦0.08,0≦b≦0.04,0≦c≦0.01,0.15<a+b,0.43≦d≦0.55で示されるペロブスカイト型化合物から成り、上記ペロブスカイト型化合物の平均結晶粒子径が0.6〜7μmであるとともに、4点曲げ強度が70MPa以上、破壊靱性値が0.7MPam1/2以上である焼結体により圧電磁器組成物を構成したものである。
【0012】
また、本願発明は、少なくとも一部が前記圧電磁器組成物から成る複数の隔壁を並設し、各隔壁間をインクの流路として成る流路部材と、上記隔壁の両側面にそれぞれ形成された駆動用電極と、前記隔壁の頂面に接合され、上記流路を覆う蓋板と、上記各流路と連通するインク吐出孔とからインクジェット記録ヘッドを構成したものである。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0014】
本発明の圧電磁器組成物は、副成分としてAl23とSiO2とを含有し、残部が組成式Pb1-x-ySrxBay(Zn1/3 Sb2/3a(Zn1/3 Nb2/3b(Ni1/2 Te1/2cZrdTi1−a−b−c−d3、ただし、0≦x≦0.10,0≦y≦0.10,0<x+y,0≦a≦0.08,0≦b≦0.04,0≦c≦0.01,0.15<a+b,0.43≦d≦0.55で示されるペロブスカイト型化合物から成る焼結体であって、このペロブスカイト型化合物の平均結晶粒子径が0.6〜7μmであることを特徴とする。
【0015】
副成分として含有するAl23とSiO2 は、焼結段階において粒界に液相を生成し易く、焼結終了後において、焼結体の粒界にPbO−SiO2−Al23を主体とするガラス相を形成するため、これらの副成分を含まない圧電磁器組成物に比べて低い温度で焼結体を緻密化することができるとともに、上記ペロブスカイト型化合物から成る結晶を粒成長させることができるため、ダイヤモンドホール等による研削加工時に、ダイヤモンドホイ―ルと圧電磁器組成物の研削面との接触面積を小さくでき、研削面に作用する応力を低減することができる。
【0016】
また、上記PbO−SiO2−Al23を主体とするガラス相は、上記ペロブスカイト型化合物よりも強度が大きいため、焼結体の破壊靱性値を高めることができる。
【0017】
そのため、本発明の圧電磁器組成物は、破壊靱性値の向上と、ダイヤモンドホールとの接触面積の低減効果により、研削加工時に割れやチッピング(欠け)が少なく、研削性を大幅に向上させることができるとともに、低温での焼成が可能であることから、特殊な焼成炉は必要なく、一般的に使用される焼成炉を用いることができ、安価に製造することができる。
【0018】
ところで、このような効果を得るには、副成分としてAl23とSiO2の両成分を含有させるとともに、Al23を0.01〜0.06量%の範囲で含有し、かつSiO2を0.01〜0.06量%の範囲で含有することが重要である。
【0019】
即ち、副成分がAl23単独では、粒界相の強度がペロブスカイト型化合物よりも大きすぎ、破壊メカニズムが粒界破壊よりも粒内破壊が優先する結果、研削加工時の割れやチッピング(欠け)を低減することができないからであり、また、副成分がSiO2単独では、焼結体の曲げ強度が低く、研削加工時の割れやチッピング(欠け)を低減することができないからである。なお、粒内破壊とは、ペロブスカイト型化合物から成る結晶粒子の内部を破壊が進展することであり、粒界破壊とは焼結体の粒界に沿って破壊が進展すること言う。
【0020】
また、Al23及びSiO2の含有量をそれぞれ0.01〜0.06量%としたのは、Al23又はSiO2の含有量が0.01量%未満であると、ペロブスカイト型化合物の結晶を粒成長させる効果が小さく、研削加工時におけるダイヤモンドホイールとの接触面積が大きいため、研削加工時に作用する応力を低減することができず、割れやチッピング(欠け)等の欠陥を低減することができないからであり、逆にAl23又はSiO2の含有量が0.06量%を超えると、ガラス相から成る粒界相の強度が、ペロブスカイト型化合物の強度より大きくなるため、研削面では粒界破壊よりも粒内破壊が支配的となり、研削加工時に割れやチッピング(欠け)等の欠陥を低減することができず、さらに、Al23及びSiO2の含有量がそれぞれ0.06量%を超えると、圧電磁器組成物の圧電定数dが大きく低下するからである。
【0021】
なお、好ましくは、Al23及びSiO2をそれぞれ0.01〜0.04量%の範囲で含有することが良い。
【0022】
また、研削加工時に作用する応力を低減するためには、ペロブスカイト型化合物の平均結晶粒子径が0.6〜7μmの範囲にあることが必要である。
【0023】
即ち、副成分であるAl23及びSiO2を前記範囲で含有したとしても、ペロブスカイト型化合物の平均結晶粒子径が0.6μm未満では、研削加工時において、ダイヤモンドホイールとの接触面積が大きく、研削時に作用する応力を低減できないからであり、逆にペロブスカイト型化合物の平均結晶粒子径が7μmを超えると、チッピング(欠け)が発生した時のチッピングサイズが大きすぎるためである。
【0024】
なお、好ましくは、ペロブスカイト型化合物の平均結晶粒子径を0.6〜5μmとすることが良い。
【0025】
さらに、本発明の圧電磁器組成物は、焼結体の4点曲げ強度が70MPa以上でかつ破壊靱性値が0.7MPam1/2以上であることを特徴とする。
【0026】
ここで、4点曲げ強度を70MPa以上、破壊靱性値を0.7MPam1/2以上としたのは、副成分の含有量及びペロブスカイト型化合物の平均結晶粒子径が、前述した範囲内であっても、焼結体の4点曲げ強度が70MPa未満であったり、破壊靱性値が0.7MPam1/2未満であると、研削加工時における割れやチッピング(欠け)等の欠陥を低減することができないからで、好ましくは4点曲げ強度を75MPa以上、破壊靱性値を0.75MPam1/2以上とすることが良い。
【0027】
ところで、本発明の圧電磁器組成物の主体をなすペロブスカイト型化合物は、化1の組成式で表されるものが重要である。
【化1】
Figure 0004836307
ここで、Srの置換比率xとBaの置換比率yがそれぞれ0.10より大きくなると、耐熱性が急激に低下するからであり、また、0<x+yとしたのは、Sr又はBaのどちらかを置換しないと、圧電定数dを高めることができないからである。
【0028】
また、(Zn1/3 Sb2/3)の置換比率aが0.08を超えたり、(Zn1/3 Nb2/3)の置換比率bが0.04を超えると、耐熱性が低下するからであり、また、0.015<a+bとしたのは、(Zn1/3 Sb2/3)又は(Zn1/3 Nb2/3)を0.015以上置換しないと、圧電定数dを高めることができないからである。
【0029】
さらに、(Ni1/2 Te1/2)の置換比率cが0.01を超えると、150℃のエージングによる圧電特性の劣化が著しく大きくなるからである。
【0030】
また、Pb(Zr Ti)O3組成系の圧電磁器組成物には、圧電定数dの極大値を示すMPB(組成相境界)が存在し、Pb(Zr Ti)O3を構成するPbZrO3とPbTiO3 の固溶比率を変化させることにより調整することができ、例えば圧電アクチュエータ用として用いる場合には、MPB近傍の組成値を用いることが良く、このMPBは、x、a、b、cの量により変化するため、置換比率dを0.43≦d≦0.55とすることにより、前述した、x、a、b、cの組成範囲内でMPBを捉えることができる。
【0031】
このように、化1で表されるペロブスカイト型化合物を用いることにより、圧電定数dを向上させることができるだけなく、耐熱性並びに耐久性に優れた圧電磁器組成物を得ることができる。
【0032】
また、本発明の圧電磁器組成物は、Al23及びSiO2から成る副成分以外の残部は実質的にペロブスカイト型化合物から成る焼結体であるが、ここで、残部が実質的にペロブスカイト型化合物から成るとは、他に積極的に含有させるものはなく、不純物以外はペロブスカイト型化合物だけであることを指し、不純物として含まれるFe23やHfO2は0.01量%未満の範囲であれば含んでいても構わない。
【0033】
なお、好ましいペロブスカイト型化合物の含有量としては、99.87量%以上、さらには99.9量%以上、望ましくは99.93〜99.98量%であることが良い。
【0034】
次に、本発明の圧電磁器組成物の製造方法について説明する。
【0035】
まず、出発原料として、基本成分のPb34、ZrO2、TiO2に、SrCO3及び/又はBaCO3と、ZnO、Sb23、NiO、TeO2、Nb24の各粉末を秤量し、次いでこの混合物を脱水、乾燥したあと、850〜900℃の温度で1〜3時間仮焼して、化1の組成式で表されるペロブスカイト型化合物の仮焼粉体を製作する。次に、この仮焼粉体にそれぞれAl23とSiO2を0.01〜0.06量%の範囲で添加し、ボールミル等にて混合、粉砕する。その後、この粉砕物に有機バインダー(PVA、モビニール等)を添加して混練乾燥することにより造粒粉とし、得られた造粒粉を成形して成形体を作製する。この時、焼結された圧電磁器組成物が緻密化され、表面に存在するボイドの径が大きくならないようにするために、成形圧は1×108N/m2以上とすることが良い。
【0036】
しかる後、得られた成形体を鉛雰囲気下で1〜3時間程度焼成するのであるが、この時、焼成温度が1100℃未満であると、緻密化が不十分であるため、得られた圧電磁器組成物の機械的特性(曲げ強度や破壊靱性値)を所望の範囲とすることができず、また、1300℃を超えると、圧電磁器組成物中のペロブスカイト型化合物の平均粒子径が所望の範囲を超えてしまう。
【0037】
その為、1100〜1300℃の範囲で焼成することが良く、このようにして製作することにより本発明の圧電磁器組成物を得ることができる。
【0038】
次に、本発明の圧電磁器組成物を用いた応用例であるインクジェット記録ヘッドを図1及び図2を基に説明する。
【0039】
このインクジェット記録ヘッド10は、圧電磁器組成物にダイヤモンドホイールによる研削加工にて一端が閉じられた複数の溝を並設し、各溝をインクの流路2とするとともに、流路2を構成する壁を隔壁1とした流路部材8と、上記各隔壁1の両側面上半分に、蒸着法、スパッタリング法、メッキ等の膜形成手段によって形成された、白金、金、パラジウム、ロジウム、ニッケル、アルミニウム等の金属や白金−金、パラジウム−銀、白金−パラジウム等の合金からなる駆動用電極3と、セラミックス、ガラス、シリコン等の絶縁材料から成り、各隔壁1の頂部に接着にて接合され、各流路2を覆う蓋板9と、セラミックス、ガラス、シリコン、樹脂(ポリイミド樹脂等)等から成り、上記流路部材8の開放端部に接着にて接合されたノズル板7とから成り、上記ノズル板7には、各流路2と連通し、流路2内のインクを吐出するインク吐出孔6を、上記蓋板9には、各流路2と連通し、流路2内にインクを導入するインク供給穴4をそれぞれ形成してある。
【0040】
そして、上記流路部材8を形成する圧電磁器組成物を、Al23を0.01〜0.06量%、SiO2を0.01〜0.06量%含有し、残部が組成式Pb1-x-ySrxBay(Zn1/3 Sb2/3a(Zn1/3 Nb2/3b(Ni1/2 Te1/2cZrdTi1−a−b−c−d3、ただし、0≦x≦0.10,0≦y≦0.10,0<x+y,0≦a≦0.08,0≦b≦0.04,0≦c≦0.01,0.15<a+b,0.43≦d≦0.55で示されるペロブスカイト型化合物の平均結晶粒子径が0.6〜7μmであるとともに、4点曲げ強度が70MPa以上、破壊靱性値が0.7MPam1/2以上である焼結体により形成してある。なお、矢印は隔壁1を形成する圧電磁器組成物の分極方向を示す。
【0041】
そして、このヘッド10よりインク滴を吐出するには、インク供給孔4より各流路2へ顔料タイプの油性インクや水性染料インクあるいは紫外線硬化インク等のインクを導入するとともに、隔壁1に形成された駆動用電極3に電圧を印加して隔壁1を屈曲変位させ、流路2内のインクを加圧することにより、インク吐出孔6からインク滴を吐出するようになっている。
【0042】
即ち、図2(a)(b)にその駆動原理を示すように、例えば駆動用電極3b,3c及び駆動用電極3h,3iにそれぞれ負極の電圧を、駆動用電極3a,3d,3g,3jに正極の電圧を印加して分極方向に対して垂直な方向に電界を加えると、隔壁1が剪断モードによるすべり振動を起こし、図2(a)に示すように隔壁1a及び隔壁1bが流路2a側へ屈曲変位するとともに、隔壁1d,1eが流路2d側へ屈曲変位するため、流路2a,2d内に充填されたインクを加圧して、インク吐出孔6よりインク滴を吐出させることができ、この後、各駆動用電極3a〜3d,3g〜3jへの通電を遮断すると、屈曲変位していた隔壁1a,1b,1d,1eが弾性作用によって元の形状に戻り、流路2a,2d内が減圧される結果、インク供給孔4からインクの供給が行なわれ、さらに前述した駆動用電極3a〜3d,3g〜3jへ極性を逆転して電圧を印加すると、図2(b)に示すように隔壁1a,1bが流路2aに対して外側へ屈曲変位するとともに、隔壁1d,1eが流路2dに対して外側へ屈曲変位するため、流路2a,2d内がさらに減圧されてインクが充填され、次に、各駆動用電極3a〜3d,3g〜3jへの通電を遮断すると、屈曲変位していた隔壁1a,1b,1d,1eが弾性作用によって元の形状に戻り、次のインク滴の吐出段階に入ることになり、これらの動作を順次繰り返すことでインク滴の吐出を連続的に行うことができる。
【0043】
そして、本発明によれば、流路部材8を形成する圧電磁器組成物を前述した焼結体により形成してあるため、隔壁1及び流路2の形成にあたり、ダイヤモンドホイールを用いた研削加工を施しても、研削面である隔壁1の側面に割れやチッピング(欠け)等の欠陥が少ないため、幅100μm以下、高さ150μm〜500μm程度という薄肉の隔壁1を精度良く形成することができ、上記欠陥によって流路2内におけるインクの流れが阻害されることを防止できるため、全てのインク吐出孔からインクを安定して吐出されることができるとともに、隔壁1の屈曲変位によって割れや欠け等が発生することを防止でき、信頼性を高めることができる。
【0044】
なお、本発明にかかるヘッド10は、図1に示した構造だけに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で変更や改良できることは言うまでもない。
【0045】
【実施例】
(実施例1)
ここで、化1の組成式で表されるペロブスカイト型化合物を主成分とし、副成分としてAl23及び/又はSiO2を添加し、それらの添加量を異ならせた圧電磁器組成物と、上記副成分を含まない従来の圧電磁器組成物とを製作し、その曲げ強度、破壊靱性値、圧電定数dの変化、割れやチッピングの有無を調べる実験を行った。
【0046】
まず、圧電磁器組成物の原料粉末として、Pb34、ZrO2、TiO2、SrCO3、BaCO3と、ZnO、Sb23、NiO、TeO2、Nb25を用意し、それぞれの金属元素のモル比率が表1となるように秤量したものに溶媒として水を加え、ボールミルにて20時間湿式混合した。次にこの混合物を乾燥し、900℃の温度で3時間熱処理を加えて仮焼粉体を得た。
【0047】
次に、得られた仮焼粉体に、表1の範囲でAl23及び/又はSiO2を添加した後、溶媒として水を加え、ZrO2製のボールを使用しボールミルにて20時間、湿式混合粉砕し、さらにスラリーにモビニールの有機バインダーと混練したあと乾燥させて造粒粉を作製し、1.5×108N/m2の成形圧で、100mm×100mm、厚さ1.0mmの板状の成形体を形成し、脱脂処理した後、1250℃前後の温度で焼成することにより、表1に示す圧電磁器組成物を得た。
【0048】
なお、得られた各圧電磁器組成物の組成を、XRF蛍光分析やICP発光分光分析にて測定したところ、表1に示す組成比から構成されており、焼成による組成ずれがなかった。
【0049】
そして、得られた圧電磁器組成物の上下面に金の電極を蒸着法により被着し、80℃のシリコンオイル中で圧電磁器組成物の厚み方向に直流電圧を30分間印加して、3〜5kV/mmの電界にて分極処理した。その後、ダイシング装置を用いて、溝幅70μm、溝深さ400μm、ピッチ140μmの溝加工を施し、この溝加工による複数の溝を流路とするとともに、流路を仕切る壁を隔壁とした流路部材を製作した。なお、加工に使用したダイヤホイールは、砥粒粒度#2000(4〜8μm)であり、回転数25000rpm、送り速度20mm/秒の条件にて研削加工を行った。
【0050】
その後、隔壁の割れやチッピングの有無を双眼顕微鏡にて観察し、また、圧電磁器組成物を形成する各ペロブスカイト型化合物の平均結晶粒子径は、焼結体表面又は断面をSEM(電子顕微鏡)により写真を撮影し、インターセプト法により平均結晶粒径を測定し、4点曲げ強度はJIS R1601に準拠して測定し、破壊靱性値は、JIS R1607に準拠して測定し、圧電定数d(d15)は、分極処理した厚さ0.25mm、幅2.5mm、長さ10mmの短冊状の試料を電子工業会(EMAS)の規格に基づく測定法によって測定した。
【0051】
それぞれの結果は表1に示す通りである。なお、圧電定数d15は、Al23及びSiO2を添加していない試料の圧電定数d(d15)を100とした場合の相対値で示した。
【0052】
【表1】
Figure 0004836307
【0053】
この結果、表1に見られるように、組成式Pb1-x-ySrxBay(Zn1/3 Sb2/3a(Zn1/3 Nb2/3b(Ni1/2 Te1/2cZrdTi1−a−b−c−d3、ただし、0≦x≦0.10,0≦y≦0.10,0<x+y,0≦a≦0.08,0≦b≦0.04,0≦c≦0.01,0.15<a+b,0.43≦d≦0.55で示されるペロブスカイト型化合物を主成分とし、副成分としてAl23を0.01〜0.06量%、SiO2を0.01〜0.06量%含有して成り、上記ペロブスカイト型化合物の平均結晶粒子径が0.6〜7μmであるとともに、4点曲げ強度が70MPa以上で、かつ破壊靱性値が0.7MPam1/2以上である圧電磁器組成物であれば、Al23及びSiO2の副成分を含有していない従来の圧電磁器組成物と同等あるいはそれ以上の圧電定数dが得られるとともに、研削加工を施しても隔壁に割れがなくかつ大きなチッピングを生じることもなく、研削性に優れることが判る。
(実施例2)次に、表1のうち、試料No.5、9、12、25、35の流路部材を用い、各流路部材の隔壁の両側面上半分にスパッタリング法にて白金からなる駆動用電極を形成し、しかる後、インク供給孔を備えたアルミナセラミック製の蓋板を、流路部材の各流路を塞ぐように隔壁の頂部にエポキシ系樹脂により接着するとともに、流路部材の開放端部に、各流路と連通するインク吐出孔を備えたポリイミド樹脂製のノズル板をエポキシ系樹脂にて接着して図1に示すヘッドを製作した。なお、本発明範囲外のものは、流路部材の隔壁に割れが無いものを用意してヘッドを製作した。
【0054】
そして、各ヘッドの流路内にインクを充填し、駆動用電極に20Vの電圧を100Hr印加してインク吐出孔よりインク滴を吐出させ、この時のインク滴の飛翔状況を放電管を光源としフィルム上に記録させる高速度写真撮影装置によって観察した。
【0055】
この結果、試料No.9の流路部材を用いて形成した本発明範囲外のヘッドは、100Hr経過後、100個のインク吐出孔のうち26個のインク吐出孔からインク滴が吐出されなくなり、試料No.12の流路部材を用いて形成した本発明範囲外のヘッドでは、100Hr経過後、100個のインク吐出孔のうち15個のインク吐出孔からインク滴が吐出されなくなった。そこで、試料No.9,12の圧電磁器組成物から成る流路部材を用いたヘッドを切断して隔壁の状況を確認したところ、インク滴が吐出されなかったインク吐出孔と連通する流路を構成する隔壁にクラックや欠け等が見られた。
【0056】
これに対し、試料No.5,25,35の流路部材を用いて形成した本発明のヘッドは、100Hr経過後も、100個のインク吐出孔全てから安定してインク滴を吐出させることができ、また、各ヘッドを切断して隔壁の状況を確認したところ、隔壁に欠陥は見られなかった。
【0057】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、Al23を0.01〜0.06量%、SiO2を0.01〜0.06量%含有し、残部が組成式Pb1-x-ySrxBay(Zn1/3 Sb2/3a(Zn1/3 Nb2/3b(Ni1/2 Te1/2cZrdTi1−a−b−c−d3、ただし、0≦x≦0.10,0≦y≦0.10,0<x+y,0≦a≦0.08,0≦b≦0.04,0≦c≦0.01,0.15<a+b,0.43≦d≦0.55で示されるペロブスカイト型化合物から成り、上記ペロブスカイト型化合物の平均結晶粒子径が0.6〜7μmであるとともに、4点曲げ強度が70MPa以上、破壊靱性値が0.7MPam1/2以上である焼結体により圧電磁器組成物を構成したことから、上記ペロブスカイト型化合物から成る従来の圧電磁器組成物と同等又はそれ以上の圧電定数dが得られ、大きな機械的変位量が要求される圧電アクチュエータ用として好適に用いることができるとともに、ダイヤモンドホイールを用いた研削加工を施したとしても割れやチッピング(欠け)等の欠陥がなく、研削性を大幅に向上させることができる。
【0058】
また、少なくとも一部が前記圧電磁器組成物から成る複数の隔壁を並設し、各隔壁間をインクの流路として成る流路部材と、上記隔壁の両側面にそれぞれ形成された駆動用電極と、前記隔壁の頂面に接合され、上記流路を覆う蓋板と、上記各流路と連通するインク吐出孔とからインクジェット記録ヘッドを構成したことから、隔壁に割れやチッピング(欠け)等の欠陥がなく、隔壁の屈曲変位によって破損することも少ないため、インク滴の吐出性能を高めることができるとともに、長期間にわたり、安定してインク滴を吐出させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の圧電磁器組成物を用いたインクジェット記録ヘッドの一例を示す一部を破断した斜視図である。
【図2】(a)(b)は本発明のインクジェット記録ヘッドの駆動原理を説明するための断面図である。
【図3】従来のインクジェット記録ヘッドの一例を示す一部を破断した斜視図である。
【符号の説明】
1,21・・・隔壁 2,22・・・流路 3,23・・・駆動用電極
4,24・・・インク供給孔 5,25・・・インク吐出孔
6,26・・・ノズル板 7,27・・・流路部材 8,28・・・蓋板
10,30・・・インクジェット記録ヘッド

Claims (2)

  1. Al23を0.01〜0.06量%、SiO2を0.01〜0.06量%含有し、残部が組成式Pb1-x-ySrxBay(Zn1/3 Sb2/3a(Zn1/3 Nb2/3b(Ni1/2 Te1/2cZrdTi1−a−b−c−d3、ただし、0≦x≦0.10,0≦y≦0.10,0<x+y,0≦a≦0.08,0≦b≦0.04,0≦c≦0.01,0.15<a+b,0.43≦d≦0.55で示されるペロブスカイト型化合物から成る焼結体であって、上記ペロブスカイト型化合物の平均結晶粒子径が0.6〜7μmで、かつ上記焼結体の4点曲げ強度が70MPa以上、破壊靱性値が0.7MPam1/2以上であることを特徴とする圧電磁器組成物。
  2. 少なくとも一部が圧電磁器組成物から成る複数の隔壁を並設し、各隔壁間をインクの流路として成る流路部材と、上記隔壁の両側面にそれぞれ形成された駆動用電極と、記隔壁の頂面に接合され、上記流路を覆う蓋板と、上記各流路と連通するインク吐出孔とから成るインクジェット記録ヘッドにおいて、記圧電磁器組成物を、Al23を0.01〜0.06量%、SiO2を0.01〜0.06量%含有し、残部が組成式Pb1-x-ySrxBay(Zn1/3 Sb2/3a(Zn1/3 Nb2/3b(Ni1/2 Te1/2cZrdTi1−a−b−c−d3、ただし、0≦x≦0.10,0≦y≦0.10,0<x+y,0≦a≦0.08,0≦b≦0.04,0≦c≦0.01,0.15<a+b,0.43≦d≦0.55で示されるペロブスカイト型化合物から成り、上記ペロブスカイト型化合物の平均結晶粒子径が0.6〜7μmで、かつ4点曲げ強度が70MPa以上、破壊靱性値が0.7MPam1/2以上である焼結体により形成したことを特徴とするインクジェット記録ヘッド。
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