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JP4838566B2 - 固体高分子電解質膜電極接合体及びこれを利用する固体高分子電解質形燃料電池 - Google Patents
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JP4838566B2 - 固体高分子電解質膜電極接合体及びこれを利用する固体高分子電解質形燃料電池 - Google Patents

固体高分子電解質膜電極接合体及びこれを利用する固体高分子電解質形燃料電池 Download PDF

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Description

本発明は、固体高分子電解質膜電極接合体及びこれを利用する固体高分子電解質形燃料電池に関する。
固体高分子電解質形燃料電池に利用される従来の固体高分子電解質膜電極接合体(以下「セル」という。)としては、例えば、下記特許文献1等に記載されているものが知られている。
この特許文献1に記載されているセルは、プロトン(H+)伝導性を有する固体高分子電解質膜の一方側の面に、触媒金属を含有して導電性及びプロトン伝導性並びにガス透過性を有する燃料極層を設け、固体高分子電解質膜の他方側の面に、触媒金属及びセリウム含有酸化物を含有して導電性及びプロトン伝導性並びにガス透過性を有する酸化極層を設けた構成となっている。
このような特許文献1に記載されているセルにおいては、水素を含有する燃料ガスを燃料極層側に供給すると共に、酸素を含有する酸化ガスを酸化極層側に供給すると、燃料極層側で水素ガスから生成したプロトン(H+)が固体高分子電解質膜内を酸化極層側へ移動すると共に、燃料極層側で水素ガスから生成した電子(e-)が外部の電気回路を経由して酸化極層側へ流れ、酸化極層側で酸素が上記プロトン及び上記電子と反応することにより、水を生成しつつ外部へ電力を供給することができるようになっている。
また、上記反応に伴う副反応により、酸化極層側から過酸化水素が生成すると、過酸化水素は、不純物として混入した鉄等の金属イオンの存在により、ヒドロキシラジカル等のラジカルを生じて、固体高分子電解質膜等を損傷させてしまうものの、酸化極層に含有されたセリウム含有酸化物が、上記過酸化水素を、ヒドロキシラジカル等のラジカルとなる前に先に水に分解してしまうため、固体高分子電解質膜等の損傷が抑制されるようになっている。
特開2004−327074号公報 特許第3481010号公報
しかしながら、前述したような特許文献1に記載されているセルは、プロトン伝導性を有する酸化極層内にセリウム含有酸化物を含有していることから、すべてのセリウム含有酸化物がプロトン伝導性基の近傍に位置してしまうため、プロトン伝導性基とイオン交換しやすい環境となっている。このため、上記特許文献1に記載されているセルにおいては、長時間にわたって使用すると、固体高分子電解質膜側へ次第に溶出して、固体高分子電解質膜のプロトン伝導性が低下し、発電特性が低下してしまう可能性があった。
このようなことから、本発明は、ラジカルによる固体高分子電解質膜の損傷の抑制を図りながらも、固体高分子電解質膜のプロトン伝導性の低下も抑制できる固体高分子電解質膜電極接合体及びこれを利用する固体高分子電解質形燃料電池を提供することを目的とする。
前述した課題を解決するための、第一番目の発明に係る固体高分子電解質膜電極接合体は、固体高分子電解質膜の一方側の面に燃料極層を設け、当該固体高分子電解質膜の他方側の面に酸化極層を設けた固体高分子電解質膜電極接合体において、前記固体高分子電解質膜を前記燃料極層側と前記酸化極層側とに仕切るように当該固体高分子電解質膜の内部に配設されて、当該燃料極層側と当該酸化極層側とを連通させる連通孔を複数有するように、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),p−フェニレン−ベンゾビスオキサゾール(PBO),ポリイミドのうちの少なくとも一種の材料の多孔質体からなり、Ce,Tl,Mn,Ag,Yb,Wのうちの少なくとも一種のイオンを生じる劣化抑制材を当該多孔質体が含有すると共に、前記連通孔の内部にプロトン伝導性材料を充填されたベース層を備えていることを特徴とする。
第二番目の発明に係る固体高分子電解質膜電極接合体は、第一番目の発明において、前記ベース層が、前記燃料極層側よりも前記酸化極層側に位置しているものであることを特徴とする。
第三番目の発明に係る固体高分子電解質膜電極接合体は、第一番目の発明において、前記ベース層が、前記燃料極層側に位置する燃料極層側ベース層と、前記酸化極層側に位置する酸化極層側ベース層とを備えてなるものであることを特徴とする。
第四番目の発明に係る固体高分子電解質膜電極接合体は、第一番目から第三番目の発明のいずれかにおいて、前記ベース層が、前記燃料極層の周縁端と前記酸化極層の周縁端との間の位置周辺を含む周縁部分の厚さを他の部分よりも厚くした肉厚部を有していることを特徴とする。
第五番目の発明に係る固体高分子電解質膜電極接合体は、第四番目の発明において、前記固体高分子電解質膜が、前記燃料極層の周縁端と前記酸化極層の周縁端との間の位置周辺を含む周縁部分の厚さを他の部分よりも薄くした肉薄部を有していることを特徴とする。
第六番目の発明に係る固体高分子電解質膜電極接合体は、第四番目の発明において、前記固体高分子電解質膜が、前記ベース層の前記肉厚部で包囲される内側のみに位置していることを特徴とする。
第七番目の発明に係る固体高分子電解質膜電極接合体は、第一番目から第六番目の発明のいずれかにおいて、前記ベース層が、前記劣化抑制材を1〜80vol.%含有していることを特徴とする。
第八番目の発明に係る固体高分子電解質膜電極接合体は、第一番目から第七番目の発明のいずれかにおいて、前記劣化抑制材が、Ce,Tl,Mn,Ag,Yb,Wのうちの少なくとも一種の酸化物、炭酸塩、若しくは、リン酸塩、又は、Ce,Tl,Mn,Ag,Ybのうちの少なくとも一種のタングステン酸塩を含むものであることを特徴とする。
また、前述した課題を解決するための、第九番目の発明に係る固体高分子電解質形燃料電池は、第一番目から第八番目の発明のいずれかの固体高分子電解質膜電極接合体を、セパレータを介して複数積層して構成されるスタックを備えていることを特徴とする。
本発明に係る固体高分子電解質膜電極接合体及びこれを利用する固体高分子電解質形燃料電池においては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),p−フェニレン−ベンゾビスオキサゾール(PBO),ポリイミドのうちの少なくとも一種の材料からなるベース層内に劣化抑制材が存在することから、酸性環境になりにくく、金属イオンがベース層の外部へ溶出しにくいと共に、その一部のみを固体高分子電解質膜やプロトン伝導性材料のプロトン伝導性基の近傍に位置させるだけで済ますことができるので、金属イオンがプロトン伝導性基とイオン交換してしまう単位時間当たりの量を従来よりも大幅に抑制することができる。このため、長時間にわたって使用しても、劣化抑制材の金属イオンが固体高分子電解質膜やプロトン伝導性材料へ溶出することを大幅に抑えることができるので、固体高分子電解質膜やプロトン伝導性材料のプロトン伝導性の低下を大幅に抑制することができ、発電特性の低下を抑制することができる。したがって、ラジカルによる固体高分子電解質膜の損傷の抑制を図りながらも、固体高分子電解質膜のプロトン伝導性の低下も抑制することができる。
本発明に係る固体高分子電解質膜電極接合体(以下「セル」という。)及びこれを利用する固体高分子電解質形燃料電池の実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明は以下に説明する実施形態に限定されるものではない。
[第一番目の実施形態]
本発明に係るセル及びこれを利用する固体高分子電解質形燃料電池の第一番目の実施形態を図1,2に基づいて説明する。図1は、セルの概略構成図、図2は、図1の要部の抽出拡大図である。
本実施形態に係るセルは、図1に示すように、固体高分子電解質膜11の一方側の面に燃料極層12を設け、固体高分子電解質膜11の他方側の面に酸化極層12を設けたセル10において、前記固体高分子電解質膜11を前記燃料極層12側と前記酸化極層13側とに仕切るように当該固体高分子電解質膜11の内部に配設されて、Ce,Tl,Mn,Ag,Yb,Wのうちの少なくとも一種のイオンを含有し、当該燃料極層12側と当該酸化極層13側とを連通させる連通孔を複数有するように、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),p−フェニレン−ベンゾビスオキサゾール(PBO),ポリイミドのうちの少なくとも一種の材料の多孔質体からなると共に、前記連通孔の内部にプロトン伝導性材料を充填されたベース層14を備えている。
前記固体高分子電解質膜11は、プロトン(H+)伝導性基(例えば、スルホン酸基(SO3 -)等)を備えた陽イオン交換体高分子である(例えば、デュポン社製「ナフィオン(登録商標)」等)。
前記燃料極層12は、Pt−Ru系の触媒を担持させたカーボン粉末を陽イオン交換体高分子等の高分子電解質からなるバインダでカーボンペーパの表面に膜状に結着させたものであり、ガス透過性を有すると共に、導電性及びプロトン伝導性を有している。
前記酸化極層13は、Pt系の触媒を担持させたカーボン粉末を陽イオン交換体高分子等の高分子電解質からなるバインダでカーボンペーパの表面に膜状に結着させたものであり、ガス透過性を有すると共に、導電性及びプロトン伝導性を有している。
前記ベース層14は、図2に示すように、前記燃料極層12側と前記酸化極層13側とを連通させる連通孔14aを複数有し、Ce,Tl,Mn,Ag,Yb,Wのうちの少なくとも一種のイオンを生じる劣化抑制材14bを含有すると共に、前記連通孔14aの内部に陽イオン交換体高分子等のプロトン伝導性材料14cが充填されている。
つまり、従来は、酸化極層の内部にセリウム含有酸化物を含有させるようにしていたが、本実施形態は、固体高分子電解質膜11の内部に配設したベース層14の内部に上記劣化抑制材14bを含有させたのである。
なお、上記劣化抑制材14bとしては、Ce,Tl,Mn,Ag,Yb,Wのうちの少なくとも一種の酸化物、炭酸塩、若しくは、リン酸塩、又は、Ce,Tl,Mn,Ag,Ybのうちの少なくとも一種のタングステン酸塩を含むもの等が挙げられる。
また、上記陽イオン交換体高分子としては、ポリベンゾオキサゾール(PBO)、ポリベンゾチアゾール(PBT)、ポリベンゾイミダゾール(PBI)、ポリスルホン(PSU)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルスルホン(PEES)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリフェニレンスルホキシド(PPSO)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンスルフィドスルホン(PPS/SO2)、ポリパラフェニレン(PPP)、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリイミド(PI)等の高分子の一部をスルホン化してイオン交換体としたものを挙げることができ、これらの単独使用や、これらの複数種の共重合物又は混合物を使用することができる。特に、PPSO、PPS、PPS/SO2の一部をスルホン化した陽イオン交換体高分子を適用したものであると、その特性や汎用性等の観点から好ましく、さらに、PPSの一部をスルホン化した陽イオン交換体高分子を適用するとより好ましい。
このような構造をなす本実施形態に係るセル10は、例えば、テトラフルオロエチレン(TFE)と前記劣化抑制材14bの粉体とを所望の割合で混合し、TFEを重合させて劣化抑制材含有PTFEパウダを作製し、このPTFEパウダをペースト押出成形で、ダイから出てきた素材をそのままロールで圧延してから溶剤を除去して生PTFEテープを作製し、この生PTFEテープを延伸することにより多孔質膜化させた後、前記陽イオン交換体高分子の溶液中に含浸することにより、連通孔14aの内部にプロトン伝導性材料14cを充填したベース層14(例えば、厚さ10〜20μm)を得ることができ、さらに続けて含浸して乾燥させることにより、当該ベース層14の両面に固体高分子電解質膜11(例えば、厚さ5〜10μm)をそれぞれ形成し、これに前記電極層12,13(例えば、厚さ30〜50μm)をホットプレスで接合することにより、容易に製造することができる。
また、このようにして製造される本実施形態に係るセル10をガス拡散層及びセパレータを介して複数積層することにより、固体高分子電解質形燃料電池のスタックが構成される。
このような本実施形態に係るセル10を利用した固体高分子電解質形燃料電池においては、水素を含有する燃料ガスを燃料極層12側に供給すると共に、酸素を含有する酸化ガスを酸化極層13側に供給すると、燃料極層12側で水素ガスから生成したプロトン(H+)が固体高分子電解質膜11内を酸化極層13側へ前記ベース層14の前記連通孔14a内のプロトン伝導性材料14cを介して移動すると共に、燃料極層12側で水素ガスから生成した電子(e-)が外部の電気回路を経由して酸化極層13側へ流れ、酸化極層13側で酸素が上記プロトン及び上記電子と反応することにより、水を生成しつつ外部へ電力を供給することができる。
また、上記反応に伴う副反応により、酸化極層13側から過酸化水素が生成すると、過酸化水素は、不純物として混入した鉄等の金属イオンの存在により、ヒドロキシラジカル等のラジカルを生じて、固体高分子電解質膜等を損傷させてしまうものの、ベース層14内の劣化抑制材14bが、上記過酸化水素を、ヒドロキシラジカル等のラジカルとなる前に先に水に分解してしまうため、固体高分子電解質膜11等の損傷が抑制される。
そして、劣化抑制材14bは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),p−フェニレン−ベンゾビスオキサゾール(PBO),ポリイミドのうちの少なくとも一種の材料からなるベース層14内に存在することから、酸性環境になりにくく、金属イオンがベース層14の外部へ溶出しにくいと共に、その一部のみを固体高分子電解質膜11やプロトン伝導性材料14cのプロトン伝導性基の近傍に位置させるだけで済ますことができるので、金属イオンがプロトン伝導性基とイオン交換してしまう単位時間当たりの量を従来よりも大幅に抑制することができる。
このため、セル10を長時間にわたって使用しても、劣化抑制材14bの金属イオンが固体高分子電解質膜11やプロトン伝導性材料14cへ溶出することを大幅に抑えることができるので、固体高分子電解質膜11やプロトン伝導性材料14cのプロトン伝導性の低下を大幅に抑制することができ、発電特性の低下を抑制することができる。
したがって、本実施形態によれば、ラジカルによる固体高分子電解質膜11の損傷の抑制を図りながらも、固体高分子電解質膜11のプロトン伝導性の低下も抑制することができる。
また、固体高分子電解質膜11の間に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),p−フェニレン−ベンゾビスオキサゾール(PBO),ポリイミドのうちの少なくとも一種の材料からなるベース層14が介在しているので、セル10の機械的強度も向上させることができる。
なお、前記ベース層14は、前記劣化抑制材14bを1〜80vol.%含有していると好ましく、特に、5〜50vol.%であるとより好ましく、10〜30vol.%であるとさらに好ましい。なぜなら、上記含有量が1vol.%未満であると、前記劣化抑制材14bによる前述した機能が十分に発現されず、上記含有量が80vol.%を超えると、ベース層14の機械的強度が著しく低下してしまうからである。
[第二番目の実施形態]
本発明に係るセル及びこれを利用する固体高分子電解質形燃料電池の第二番目の実施形態を図3に基づいて説明する。図3は、セルの概略構成図である。なお、前述した第一番目の実施形態の場合と同様な部分については、前述した第一番目の実施形態の説明で用いた符号と同様な符号を用いることにより、前述した第一番目の実施形態での説明と重複する説明を省略する。
図3に示すように、本実施形態に係るセル20は、前記ベース層14が、前記燃料極層12側よりも前記酸化極層13側に位置しているものである。
つまり、前述した第一番目の実施形態に係るセル10は、ベース層14の両側に同一の厚さ(例えば5〜10μm)の固体高分子電解質膜11をそれぞれ設けるようにしたが、本実施形態に係るセル20は、ベース層14の酸化極層13側に厚さの薄い肉薄固体高分子電解質膜21B(例えば5μm)を設ける一方、ベース層14の燃料極層12側に厚さの厚い肉厚固体高分子電解質膜21A(例えば15μm)を設けて、固体高分子電解質膜21を構成するようにしたのである。
このような本実施形態に係るセル20を利用した固体高分子電解質形燃料電池においては、前述した第一番目の実施形態の場合と同様に、水素を含有する燃料ガスを燃料極層12側に供給すると共に、酸素を含有する酸化ガスを酸化極層13側に供給すると、水を生成しつつ外部へ電力を供給することができる。
また、第一番目の実施形態で説明したように、前記反応に伴う副反応により、酸化極層13側から過酸化水素が生成すると、ベース層14内の劣化抑制材14bが、上記過酸化水素を、ヒドロキシラジカル等のラジカルとなる前に先に水に分解し、固体高分子電解質膜21等の損傷を抑制する。
ここで、ベース層14が、燃料極層12側よりも酸化極層13側に位置している、すなわち、過酸化水素が生成しやすい酸化極層13の近傍に位置しているので、酸化極層13側の劣化しやすい肉薄固体高分子電解質膜21Bの劣化が効率的に抑制される。
したがって、本実施形態によれば、前述した第一番目の実施形態の場合と同様な効果を得ることができるのはもちろんのこと、前述した第一番目の実施形態の場合よりも、固体高分子電解質膜21の劣化抑制を効率よく行うことができる。
[第三番目の実施形態]
本発明に係るセル及びこれを利用する固体高分子電解質形燃料電池の第三番目の実施形態を図4に基づいて説明する。図4は、セルの概略構成図である。なお、前述した第一,二番目の実施形態の場合と同様な部分については、前述した第一,二番目の実施形態の説明で用いた符号と同様な符号を用いることにより、前述した第一,二番目の実施形態での説明と重複する説明を省略する。
図4に示すように、本実施形態に係るセル30は、前記燃料極層12側に位置する燃料極層側ベース層34Aと、前記酸化極層13側に位置する酸化極層側ベース層34Bとを備えるものである。
つまり、前述した第二番目の実施形態に係るセル20は、酸化極層13寄りに位置するようにベース層14を配設するようにしたが、本実施形態に係るセル30は、燃料極層12寄りと酸化極層13寄りとに位置する前記ベース層34A,34Bによりベース層34を構成、すなわち、固体高分子電解質膜31C(例えば、厚さ6μm)の燃料極層12側の面に燃料極層側ベース層34A(例えば、厚さ6μm)を介して固体高分子電解質膜31A(例えば、厚さ6μm)を配設し、固体高分子電解質膜31Cの酸化極層13側の面に酸化極層側ベース層34B(例えば、厚さ6μm)を介して固体高分子電解質膜31B(例えば、厚さ6μm)を配設し、固体高分子電解質膜31を構成したのである。
このような本実施形態に係るセル30を利用した固体高分子電解質形燃料電池においては、前述した第一,二番目の実施形態の場合と同様に、水素を含有する燃料ガスを燃料極層12側に供給すると共に、酸素を含有する酸化ガスを酸化極層13側に供給すると、水を生成しつつ外部へ電力を供給することができる。
また、第一番目の実施形態で説明したように、前記反応に伴う副反応により、酸化極層13側から過酸化水素が生成すると、前記ベース層34内の劣化抑制材14bが、上記過酸化水素を、ヒドロキシラジカル等のラジカルとなる前に先に水に分解し、固体高分子電解質膜31等の損傷を抑制する。
ここで、ベース層34は、燃料極層側ベース層34Aが燃料極層12寄りに位置すると共に、酸化極層側ベース層34Bが酸化極層13寄りに位置しているので、酸化極層13側の劣化しやすい固体高分子電解質膜31Bの劣化を効率的に抑制することができるのはもちろんのこと、さらに燃料極層12側の固体高分子電解質膜31Aの劣化も効率的に抑制することができる。
したがって、本実施形態によれば、前述した第一番目の実施形態の場合と同様な効果を得ることができるのはもちろんのこと、前述した第二番目の実施形態の場合よりも、固体高分子電解質膜31の劣化抑制をさらに効率よく行うことができる。
[第四番目の実施形態]
本発明に係るセル及びこれを利用する固体高分子電解質形燃料電池の第四番目の実施形態を図5に基づいて説明する。図5は、セルの概略構成図である。なお、前述した第一〜三番目の実施形態の場合と同様な部分については、前述した第一〜三番目の実施形態の説明で用いた符号と同様な符号を用いることにより、前述した第一〜三番目の実施形態での説明と重複する説明を省略する。
図5に示すように、本実施形態に係るセル40は、燃料極層12の周縁端と酸化極層13の周縁端との間の位置周辺を含む周縁部分の厚さを他の部分(例えば10〜20μm)よりも厚くした肉厚部44a(例えば26〜28μm)を有するベース層44を適用すると共に、燃料極層12の周縁端と酸化極層13の周縁端との間の位置周辺を含む周縁部分の厚さを他の部分(例えば5〜10μm)よりも薄くした肉薄部41a(例えば1〜2μm)を有する固体高分子電解質膜41を適用したものである。
つまり、前述した第一〜三番目の実施形態に係るセル10,20,30は、全体にわたって均一な厚さを有する固体高分子電解質膜11,21A,21B,31A〜31C及び前記ベース層14,34A,34Bを適用するようにしたが、本実施形態に係るセル40は、燃料極層12の周縁端と酸化極層13の周縁端との間の位置周辺を含む周縁部分の厚さをベース層44で厚くする一方、固体高分子電解質膜41でその分薄くするようにしたものなのである。
このような構造をなす本実施形態に係るセル40は、前述した第一番目の実施形態の場合と同様なベース層を三枚作製し、そのうちの二枚を額縁状に切り抜いて、残りの一枚の一方の面にそのうちの一枚を配設して、当該一方の面に前記陽イオン交換体高分子の溶液を含浸させて乾燥させた後、他方の面に他の一枚を配設して、当該他方の面に前記陽イオン交換体高分子の溶液を含浸させて乾燥させることにより、肉厚部44aを有するベース層44の両面に肉薄部41aを有する固体高分子電解質膜41を設けることができ、これに前記電極層12,13をホットプレスで接合することにより、容易に製造することができる。
このような本実施形態に係るセル40を利用した固体高分子電解質形燃料電池においては、前述した第一〜三番目の実施形態の場合と同様に、水素を含有する燃料ガスを燃料極層12側に供給すると共に、酸素を含有する酸化ガスを酸化極層13側に供給すると、水を生成しつつ外部へ電力を供給することができる。
また、第一番目の実施形態で説明したように、前記反応に伴う副反応により、酸化極層13側から過酸化水素が生成すると、前記ベース層44内の劣化抑制材14bが、上記過酸化水素を、ヒドロキシラジカル等のラジカルとなる前に先に水に分解し、固体高分子電解質膜41等の損傷を抑制する。
ここで、固体高分子電解質膜は、燃料極層12の周縁端と酸化極層13の周縁端との間の位置周辺を含む周縁部分が、他の部分よりも、ラジカルにより著しく劣化を生じやすいものの、機械的強度及び耐ラジカル劣化性の高いベース層44の肉厚部44aが当該周縁部分に設けられると共に、機械的強度及び耐ラジカル劣化性の低い固体高分子電解質膜41が当該周縁部分で肉薄部41aとなっているので、固体高分子電解質膜41は、劣化が非常に効率的に抑制されるようになる。
なお、固体高分子電解質膜は、燃料極層12の周縁端と酸化極層13の周縁端との間の位置周辺を含む周縁部分が、発電反応にほとんど寄与しないことから、ベース層44の肉厚部44aが当該周縁部分に設けられると共に、固体高分子電解質膜41が当該周縁部分で肉薄部41aとなっていても、発電性能に問題を生じることはない。
したがって、本実施形態によれば、前述した第一番目の実施形態の場合と同様な効果を得ることができるのはもちろんのこと、前述した第一〜三番目の実施形態の場合よりも、固体高分子電解質膜41の劣化抑制をさらに効率よく行うことができる。
[他の実施形態]
なお、前述した第四番目の実施形態では、ベース層44の前記周縁部分に肉厚部44a(例えば26〜28μm)を設けると共に、固体高分子電解質膜41の前記周縁部分に肉薄部41a(例えば1〜2μm)を設けるようにしたが、他の実施形態として、例えば、ベース層44の前記肉厚部44aで包囲される内側のみに固体高分子電解質膜を位置させる、すなわち、前記周縁部分において、固体高分子電解質膜41の前記肉薄部41aを省略して、ベース層44の前記肉厚部44aだけとする(厚さ30μm)ことも可能である。
また、前述した第四番目の実施形態では、ベース層44の両側に同一の厚さ(例えば5〜10μm)の固体高分子電解質膜41をそれぞれ設けた場合、すなわち、第一番目の実施形態の場合に肉厚部44a等を設けた場合について説明したが、他の実施形態として、前述した第二,三番目の実施形態の場合に前記肉厚部等を設けることも可能である。
また、前述した第一〜四番目の実施形態においては、セル10,20,30,40を複数積層したスタックを固体高分子電解質形燃料電池に利用した場合について説明したが、他の実施形態として、例えば、セル10,20,30,40を複数積層して構成されるスタックに原料水を供給して当該セルで当該原料水を電気分解させることにより、オゾンを含む酸素と水素とを発生させるオゾン発生装置に利用することも可能である。
また、前述した第一〜四番目の実施形態において、前記固体高分子電解質膜11,21A,21B,31A〜31C,41は、そのプロトン伝導性置換基の1.65mmol/g以下までならば、前記劣化抑制材14bの金属のイオンでプロトンが置換されても、発電性能に大きな問題を生じることはない。
本発明に係るセル及びこれを利用する固体高分子電解質形燃料電池の効果を確認するために行った確認試験を以下に説明する。
[試験1:初期発電性能試験]
〈試験体及び比較体の作製〉
まず、白金系触媒粒子を担持させたカーボンブラックとパースルフォロスルホン酸樹脂溶液とを乾燥時の重量比が1:1となるように混合してからエタノールを添加して、超音波洗浄装置にて0℃で分散させることにより、酸化極層用のスラリを作製し、このスラリをカーボンペーパに塗布して乾燥させることにより、酸化極層の電極を作製した。
続いて、白金ルテニウム系触媒粒子を担持させたカーボンブラックとパースルフォロスルホン酸樹脂溶液とを乾燥時の重量比が1.0:0.8となるように混合してからエタノールを添加して、超音波洗浄装置にて0℃で分散させることにより、燃料極層用のスラリを作製し、このスラリをカーボンペーパに塗布し乾燥させることにより、燃料極層の電極を作製した。
次に、作製されたベース層中に酸化セリウムが10vol.%含有されるように、テトラフルオロエチレン(TFE)と酸化セリウムとを混合して重合した後、圧延及び延伸することにより、連通孔を複数有する多孔質性の膜を製作し、この多孔質性の膜をパーフルオロスルホン酸樹脂溶液に含浸することにより、ベース層を作成すると共に、パーフルオロスルホン酸樹脂溶液を当該ベース層の両面に同じ厚さ(5μm)で塗布して乾燥させることにより、固体高分子電解質膜を作製した。
そして、前記電極層を所定の大きさに切り取り、上記固体高分子電解質膜を当該電極層で挟み込んで、ホットプレスすることにより(130℃、2MPa)、セルを作製し(第一番目の実施形態のパターン)、このセルをセパレータで挟み込んで試験体を作製した。
また、比較のため、前記ベース層を省略した比較体も作製した。
〈試験方法〉
前記試験体及び前記比較体に対して、燃料極層側に75%水素含有ガスを供給すると共に、酸化極層側に空気を供給することにより、それぞれ発電を行って初期発電性能を測定した。なお、上記各ガスは、温度調節装置及び加湿器で湿度を調整した(相対湿度100%)。
〈試験結果〉
前記試験体及び前記比較体の初期発電性能の測定結果を図6に示す。
図6からわかるように、試験体は、比較体とほぼ同等の性能を発現し、ベース層が存在しても初期発電性能に悪影響を及ぼさないことが確認できた。
[試験2:加速耐久試験]
〈試験体及び比較体〉
前述した試験1で用いた試験体及び比較体と同一のものを用いた。
〈試験方法〉
前記試験体及び前記比較体に対して、燃料極層側に純水素ガスを低加湿状態(相対湿度20%以下)で供給すると共に、酸化極層側に空気を低加湿状態(相対湿度20%以下)供給し、OCV(Open Circuit Voltage:開回路電圧)の状態で保持することにより、固体高分子電解質膜の劣化を加速促進させる。
そして、酸化極層側に所定時間ごとに空気に変えて窒素ガスを供給し、セルの酸化極層側から排出される窒素ガス中の水素ガス濃度を経時的に測定することにより,耐久性の測定を行った(固体高分子電解質膜が劣化して破損すると,燃料極層側から酸化極層側への水素ガスの漏れ量が増加するため)。
〈試験結果〉
前記試験体及び前記比較体の初期発電性能の測定結果を図7に示す。なお、図7において、横軸は、前記比較体における酸化極層側からの排ガス中の水素量が1%となった時間を1とした場合の相対的な時間で表わしている。
図7からわかるように、試験体は、比較体に比べて、水素ガスリークを長期にわたって抑制でき、固体高分子電解質膜の劣化による破損が大幅に抑制され,耐久性が大幅に向上することが確認できた。
本発明に係る固体高分子電解質膜電極接合体及びこれを利用する固体高分子電解質形燃料電池は、各種産業において、極めて有益に利用することができる。
本発明に係る固体高分子電解質膜電極接合体の第一番目の実施形態の概略構成図である。 図1の要部の抽出拡大図である。 本発明に係る固体高分子電解質膜電極接合体の第二番目の実施形態の概略構成図である。 本発明に係る固体高分子電解質膜電極接合体の第三番目の実施形態の概略構成図である。 本発明に係る固体高分子電解質膜電極接合体の第四番目の実施形態の概略構成図である。 試験体及び比較体の初期発電性能試験の測定結果を表わすグラフである。 試験体及び比較体の耐久加速試験の測定結果を表わすグラフである。
符号の説明
10 固体高分子電解質膜電極接合体(セル)
11 固体高分子電解質膜
12 燃料極層
13 酸化極層
14 ベース層
14a 連通孔
14b 劣化抑制材
14c プロトン伝導性材料
20 固体高分子電解質膜電極接合体(セル)
21,21A,21B 固体高分子電解質膜
30 固体高分子電解質膜電極接合体(セル)
31,31A〜31C 固体高分子電解質膜
34 ベース層
34A 燃料極層側ベース層
34B 酸化極層側ベース層
40 固体高分子電解質膜電極接合体(セル)
41 固体高分子電解質膜
41a 肉薄部
44 ベース層
44a 肉厚部

Claims (9)

  1. 固体高分子電解質膜の一方側の面に燃料極層を設け、当該固体高分子電解質膜の他方側の面に酸化極層を設けた固体高分子電解質膜電極接合体において、
    前記固体高分子電解質膜を前記燃料極層側と前記酸化極層側とに仕切るように当該固体高分子電解質膜の内部に配設されて、当該燃料極層側と当該酸化極層側とを連通させる連通孔を複数有するように、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE),p−フェニレン−ベンゾビスオキサゾール(PBO),ポリイミドのうちの少なくとも一種の材料の多孔質体からなり、Ce,Tl,Mn,Ag,Yb,Wのうちの少なくとも一種のイオンを生じる劣化抑制材を当該多孔質体が含有すると共に、前記連通孔の内部にプロトン伝導性材料を充填されたベース層を備えている
    ことを特徴とする固体高分子電解質膜電極接合体。
  2. 請求項1において、
    前記ベース層が、前記燃料極層側よりも前記酸化極層側に位置しているものである
    ことを特徴とする固体高分子電解質膜電極接合体。
  3. 請求項1において、
    前記ベース層が、前記燃料極層側に位置する燃料極層側ベース層と、前記酸化極層側に位置する酸化極層側ベース層とを備えてなるものである
    ことを特徴とする固体高分子電解質膜電極接合体。
  4. 請求項1から請求項3のいずれかにおいて、
    前記ベース層が、前記燃料極層の周縁端と前記酸化極層の周縁端との間の位置周辺を含む周縁部分の厚さを他の部分よりも厚くした肉厚部を有している
    ことを特徴とする固体高分子電解質膜電極接合体。
  5. 請求項4において、
    前記固体高分子電解質膜が、前記燃料極層の周縁端と前記酸化極層の周縁端との間の位置周辺を含む周縁部分の厚さを他の部分よりも薄くした肉薄部を有している
    ことを特徴とする固体高分子電解質膜電極接合体。
  6. 請求項4において、
    前記固体高分子電解質膜が、前記ベース層の前記肉厚部で包囲される内側のみに位置している
    ことを特徴とする固体高分子電解質膜電極接合体。
  7. 請求項1から請求項6のいずれかにおいて、
    前記ベース層が、前記劣化抑制材を1〜80vol.%含有している
    ことを特徴とする固体高分子電解質膜電極接合体。
  8. 請求項1から請求項7のいずれかにおいて、
    前記劣化抑制材が、Ce,Tl,Mn,Ag,Yb,Wのうちの少なくとも一種の酸化物、炭酸塩、若しくは、リン酸塩、又は、Ce,Tl,Mn,Ag,Ybのうちの少なくとも一種のタングステン酸塩を含むものである
    ことを特徴とする固体高分子電解質膜電極接合体。
  9. 請求項1から請求項8のいずれかの固体高分子電解質膜電極接合体を、セパレータを介して複数積層して構成されるスタックを備えている
    ことを特徴とする固体高分子電解質形燃料電池。
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