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JP4846858B2 - ボロン含有ステンレス鋼鋳造用パウダーおよびボロン含有ステンレス鋼の連続鋳造方法 - Google Patents
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ボロン含有ステンレス鋼鋳造用パウダーおよびボロン含有ステンレス鋼の連続鋳造方法 Download PDF

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Description

本発明は、ボロン含有ステンレス鋼、とくに液相線温度の低い(1320〜1380℃)ボロン含有ステンレス鋼の溶湯を連続鋳造する時に用いられる鋳造用パウダーと、このパウダーを用いて表面欠陥の少ないボロン含有ステンレス鋼のスラブを連続鋳造する方法についての提案である。
ボロン含有ステンレス鋼は、中性子吸収能が高く、耐食性にも優れることから、原子力発電所の使用済み核燃料の貯蔵容器用材料や遮蔽材料などとして使用される材料の1つである。このボロン含有ステンレス鋼の金相学的特徴は、オ−ステナイトとボライドとの共晶型で、液相線温度が低く、凝固時の固相化の速度が遅いという点にある。そのために、この鋼は、鋳造時に凝固割れを起しやすいという欠点がある。さらに、この種の鋼は、連続鋳造時に、溶鋼中のBと溶融パウダー中のSiOとが下記式に示す反応を起こし、パウダー中にBがピックアップすることが知られている。
3(SiO)+4=2(B)+3Si (1)
( )は溶融パウダー中成分、下線は溶鋼中成分を示す。
パウダー中のBが増加すると、パウダーの粘度や凝固温度が低下し、連続鋳造時における鋳型/凝固シェル間への溶融パウダー流入量の増加を招くだけでなく、この時に生成するパウダーフィルムがガラス質化する傾向がある。該パウダーフィルムがガラス質になると、鋳型内メニスカス部において、不均一冷却を招くと共に、縦割れやデプレッションの発生を助長する。
このような現象に鑑み、従来(特許文献1、2、3)、パウダー中に、反応終了時点に相当する量のBを予め添加しておくことにより、パウダーの物性の変化を抑制する方法の提案がある。しかし、これらの方法だけでは、結晶化挙動を適正に導くことができるとは言い難いのが実情であった。即ち、これらの既知技術では、結晶が全く形成されないか、あるいは、形成されてもその成長が著しく遅いという問題があった。
一方、パウダー中のSiOを極力低下させ、その代わりに、Alを添加したCaO−Al系パウダーが開発されている(特許文献4、5)。このパウダーによれば、反応による物性の変化を抑えることができる。しかしながら、このCaO−Al系パウダーはそもそも、滓化性に乏しいという欠点があり、そのために、パウダーをスラブ表面に噛み込みやすいといった問題があった。
その他、特許文献6では、結晶化を促進するために、LiOを添加したパウダーを用いた鋳造方法を提案している。しかし、この技術の場合、結晶化率が15%〜75%と高いが、鋳型内で緩冷却になりすぎる傾向があり、そのために、シェルの成長が弱くバルジングが起きやすいという問題などがあった。
特開平02−155547号公報 特開平08−141712号公報 特開2001−191153号公報 特開平11−309548号公報 特開2002−205153号公報 特開2007−61846号公報
上述したように、ボロン含有ステンレス鋼を連続鋳造する場合に用いられてきた従来のパウダーは、凝固温度が高すぎたり溶融が遅くなり過ぎたりして、結晶相が形成されにくいという問題、あるいは結晶相が発達しすぎたりするといった問題があった。このような問題があると、鋳型内で不均一冷却となりやすく、縦割れ、デプレッションあるいは焼き付きを起こしやすくない、最悪の場合は、ブレ−クアウトして鋳造停止になることがあった。
そこで、本発明の目的は、ボロン含有ステンレス鋼の連続鋳造に用いられる連続鋳造用パウダーを提供すること、および表面欠陥のないボロン含有ステンレス鋼スラブを連続鋳造する方法を提案することにある。
発明者らは、まず、ボロン含有ステンレス鋼を連続鋳造するのに必要な連続鋳造用パウダーの好ましい物性について、凝固試験を行って検討した。その結果、本発明で処理対象とするようなボロン含有ステンレス鋼は、そもそも液相線温度が低く(1320〜1380℃)、連続鋳造機にて鋳造する通常のステンレス鋼と比較すると、著しく低い温度を有する鋼種である。一般に、連続鋳造用パウダーの特性としては、溶鋼の熱により溶融するものであるから、低温の溶鋼に接しても確実に溶融し、鋳型/凝固シェル間に円滑に流入するようなものでなければならない。例えば、ボロン含有ステンレス鋼鋳造用のパウダーの特性としては、凝固温度が900〜1200℃(これは従来のパウダーよりも低い)であって、1300℃における粘度が0.5〜2poise程度のものであるようなものが求められる。さもないと、低温のボロン含有ステンレス鋼の場合、鋳型/凝固シェル間に適正量の溶融パウダーを流入させることができなくなるからである。
そこで、発明者らは、前記物性を示すパウダーサンプル(CaO−SiO−NaO−Al−B−F系)を、組成を変化させて30種類程度作製し、これらのパウダーサンプルの結晶化挙動ならびに溶融速度について調査した。通常、鋳型/凝固シェル間に流入するパウダーは、鋳型に冷却されて固体となりフィルムを形成する。このフィルムは、鋳型側において結晶相が形成されずガラス化すると、凝固シェルは強冷かつ不均一冷却になりやすく、そのためにデプレッションや縦割れ、ブリーディングなどを引き起こし、最悪の場合にはブレークアウトして鋳造停止となる場合もある。この理由は、ガラス化した場合、輻射伝熱が高くなることと、鋳型との接触が不均一になりやすいためと考えられている。一方で、結晶化が進みすぎた場合も、シェルの成長が遅くれ、充分なシェル強度が確保することができず、バルジングを起してしまう問題があった。そのため、連続鋳造用パウダーとしては、適正な結晶化挙動を示すものが必要となってくる。
上述したように、鋳造用パウダーの結晶化挙動は、本発明を考える上で最も重要なポイントである。そこで、発明者らは、Bが10mass%程度ピックアップしても、結晶化が確実に進むパウダーの開発を目的に、銅板などを使用して、鋳型/凝固シェル間に流入した溶融パウダーの状態を模擬する実験を行った。その結果、溶鋼温度が低いとガラス化しやすくなり、結晶が晶出し難くなることがわかった。その理由は、銅板で冷却された溶融パウダーは、最初はガラス化するが、その後は溶湯側からの熱を受けてやがて結晶化する。この時、合金の液相線温度が低く、そのために鋳込み温度が低いものだと、ガラス化したパウダーに充分な熱が伝わらないために、結晶化し難くなるものと考えられる。
次に、発明者らは、上記のボロン含有ステンレス鋼(液相線温度が1320〜1380℃)と、SUS304ステンレス鋼(液相線温度が1463℃)との比較を試みた。即ち、この両者の液相線温度は、100℃ほどの差があることに着目し、溶鋼/パウダー間のBのピックアップがどうなるのかを検証した。具体的には、高周波誘導炉を用いて、マグネシア坩堝内でそれぞれの鋼を溶解し、溶鋼/パウダー間で反応実験を繰り返し行った。その結果、液相線温度が1320〜1380℃であるボロン含有ステンレス鋼では、Bのピックアップは約1%程度に止まることを突き止めた。このことは、たとえ予めBを含有していても、ピックアップの量を抑えることさえできれば、ガラス化を抑えて所定の結晶相を生成させることができることを意味している。
そのための方法として、本発明では、パウダーの塩基度(CaO/SiO、以下「C/S」と略記する)に着目し、これを1.0≦C/S<1.3に調整すると共に、B含有量を3〜5(未満)mass%に設計したパウダーを準備し、このパウダーを18トンクラスの小規模の連続鋳造試験に適用したところ、問題なく連続鋳造できることがわかった。
さらに、この実験では、鋳型/シェル間に流入して形成されたパウダーフィルムは、0.5〜3mmの厚さがあり、そのうち、鋳型側の3%を超えて15%未満が結晶相となっていた(結晶相の占める%は厚みの割合である。図1のSEM像参照)。発明者らの知見では、結晶相の割合がこの範囲内だと、好ましいシェルの成長に有効であることがわかった。即ち、充分なシェル強度を確保することができ、バルジングを起こさず、勿論、縦割れやデプレッション、焼付きといった問題もなく、連続鋳造することができるのである。そして、この結晶相は、EDSあるいはX線回折により分析したところ、図2に示すように、結晶相はカスピダイン(3CaO・2SiO2・CaF)であることもわかった。
次に、本発明に係るパウダーの特徴の1つに、骨材としてCを添加することが挙げられる。この骨材Cは、連続鋳造用パウダーを構成するCaO・SiOやAlなどの酸化物、およびCaFやNaFなどの弗化物粒子の間に介在し、溶融速度を調整する働きを有する。このCは、大気中の酸素と反応して燃焼する段階では、酸化物や弗化物粒子の接触を防いで、溶融を抑制する。ただし、最終的には、酸化物や弗化物の粒子の接触を促して溶融を促す作用をもっている。そのため、パウダー中における骨材C量は、低温の溶鋼でもパウダーを確実に溶融させるようにするためにも、そしてパウダーの溶融速度を適正化する上で重要な成分である。
そこで発明者らは、骨材C量を0〜5mass%の範囲内で変化させて、溶融速度を測定する実験を行った。この測定実験では、高周波誘導炉内で上記のステンレス鋼を溶解し、溶鋼の過熱度(液相線温度と溶鋼温度の差)を40℃と一定にした条件下で、該溶鋼上に連続鋳造用パウダーを投入して完全に溶融するまでの時間を測定した。目標とする溶融速度は、液相線温度が1463℃であるSUS304ステンレス鋼と、それに用いている連続鋳造用パウダーの組合せによる場合を基準として、同等の結果が得られる、骨材C量を観察した結果から、1〜3mass%とする必要があることがわかった。
次に、本発明に適合する物性を有するパウダーを実機試験に供し、種々の条件下で鋳造し鋳造スラブを得た。その結果、ボロン含有ステンレス鋼を円滑に連続鋳造するためには、上述した鋳造用パウダーの選択と共に、溶鋼過熱度と鋳造速度も適正に制御することが有効であることがわかった。即ち、溶鋼過熱度が5℃未満では、前記鋳造用パウダーを用いても溶融速度が低下し、充分な溶融パウダーを得ることができないのと、浸漬ノズル内で地金が凝固し、ノズル閉塞を起す場合があった。一方、この溶鋼過熱度が50℃を超える場合には、連続鋳造機内で凝固が完了せず、中心割れを起すこともあった。したがって、溶鋼の過熱度は、5〜50℃が好ましいことがわかった。
さらに、本発明において連続鋳造時のスラブ引抜速度(鋳造速度)は、550mm/分未満ではスラブ表面品質が悪化し、900mm/分を超えるような速度では、凝固シェルが充分に成長せず、ブレ−クアウトを誘起した。そのため、鋳造速度は、550〜900mm/分とすることが好ましいことがわかった。
本発明は、前述した実験結果から知り得た新規な知見に基づいて開発したものである。即ち、本発明に係るボロン含有ステンレス鋼鋳造用パウダーは、液相線温度が1320〜1380℃であるボロン含有ステンレス鋼の連続鋳造に際して用いるパウダーであって、Ca0:30〜35mass%、SiO:20〜30mass%、NaO:10〜16mass%、Al:8〜11mass%、B:3〜5(未満)mass%、F:4〜10mass%、骨材C:1〜3mass%を含有する成分組成を有し、かつ、塩基度が1.0≦C/S<1.3、1300℃における粘度が0.5〜2poise、凝固温度が900〜1200℃、かつ鋳型と凝固シェルとの間に流入した時に、0.5〜3mmの厚さのパウダーフィルムを形成する特性を具えるものであることが必要である。
また、本発明は、C≦0.2mass%、Si≦3mass%、Mn≦5mass%、Cr:15〜25mass%、Ni:3〜20mass%、B:0.8〜1.5mass%、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ液相線温度が1320〜1380℃であるボロン含有ステンレス鋼の溶鋼を、前記連続鋳造パウダーを用いて連続鋳造することを特徴とするボロン含有ステンレス鋼の連続鋳造方法を提案する。
前述したように構成される本発明では、
(1)前記パウダーフィルムは、鋳型側に、このフィルムの厚さの3%超〜15%未満の部分が結晶相を有するものであること、
(2)パウダーフィルム中の前記結晶相はカスピダインであること
(3)溶鋼過熱度が5〜50℃、連続鋳造速度が550〜900mm/分の条件下で連続鋳造すること、
が、より好ましい実施形態である。
以上のように構成される本発明に係る鋳造用パウダーよれば、ボロン含有ステンレス鋼の連続鋳造にあたり、縦割れ、デプレッションあるいは焼き付きがなくなるだけでなく、ブレ−クアウト等の事故もなくなり、安定した連続鋳造が可能となる。また、本発明に係る鋳造用パウダーを用いて連続鋳造したスラブは、表面性状に優れているため、切断および研削歩留りが良好となり、生産性の向上、さらには、製造コストの低減を実現することができる。
パウダーフィルムの断面を示す写真である。 パウダーフィルム中の結晶層を示す写真である。
本発明に係る鋳造用パウダーは、上述した各種の実験に基づく知見により開発したものであり、CaO−SiO−NaO−Al−B−F系のパウダーであって、塩基度が1.0≦C/S<1.3、1300℃における粘度が0.5〜2poise、凝固温度が900〜1200℃で、かつ鋳型と凝固シェルとの間に流入した時に、0.5〜3mmの厚さのパウダーフィルムを形成する特性を具えるものであることを特徴としている。このような成分、物性を有する鋳造用パウダーであれば、1320〜1380℃と低い液相線温度のボロン含有ステンレス鋼の鋳造であっても確実に溶融し、鋳型と凝固シェルとの間に流入した時に、鋳型側に適量の結晶相を形成させることができる。以下、本発明にかかる鋳造用パウダーの物性、成分組成を、上記のように限定する理由について説明する。
a.1300℃における粘度:0.5〜2poise
パウダー粘度は、0.5poise未満だと、鋳型/凝固シェル間への流入が過多となり、深いオシレ−ションを引き起こし、デプレッションの起点になる。逆に、2poiseを超えて高粘度になると、流入不足となってスティッキングを引き起こしやすくなる。いずれの場合も、ブレ−クアウトを起こすことがある。このことから、1300℃における粘度は、0.5〜2poiseとする。好ましくは、0.6〜1.6poise、より好ましくは、0.7〜1.5poiseである。
b.凝固温度:900〜1200℃
パウダーの凝固温度は、900℃未満だと、鋳型/凝固シェル間への流入が過多となり深いオシレ−ションを引き起こし、デプレッションの起点になる。一方、1200℃を超えると、溶融速度が低下して流入不足となり、スティッキングを引き起こすことがある。いずれの場合も、最悪はブレークアウトを招く。このことから、凝固温度は900〜1200℃とする。好ましくは、950〜1180℃、より好ましくは、1000〜1150℃である。
c.結晶化挙動
一般的に、酸化物、弗化物の混合溶融体は、銅板上で冷却されると、ガラス化する性質がある。したがって、溶融したパウダーは、溶鋼の熱により、鋳型/凝固シェル間へ流入し、その直後はガラス化していると推定される。そして、流入してフィルムを形成するが、やがて溶鋼の熱を受けて、鋳型側に結晶相が形成されるものと考えられる。この点、結晶相が形成されると、フィルム/鋳型間の均一な接触が実現されて、健全な表面品質の鋳片が得られる。本発明では、比較的低温の溶鋼からの熱で充分な結晶相を得る必要があり、結晶化挙動は極めて重要である。なお、該結晶相の組成は、図2に示す写真に明らかなように、EDS分析により基本的にはカスピダイン(3CaO・2SiO・CaF)であることを確認している。場合によって、ネフェリン(NaO・Al・2SiO)やCaFが含まれていても構わない。
d.上述したフィルムは、厚み0.5〜3mm程度であって、そのうち、鋳型に接する側の3%を超えて15%未満が、図1に示すような結晶相を占めるもの(残部ガラス層)とする。この理由は、結晶相の厚みがフィルム厚の全厚に対し3%以下だと、ほとんどガラスとしての挙動を示し、一方、この厚みが15%以上だと凝固シェルの潤滑を悪くするとともに、緩冷却となりすぎて、充分なシェル強度を確保することができなくなる。これらの場合、スラブ表面欠陥発生の原因となるばかりか、ブレークアウトを引き起こす危険がある。そのため、パウダーフィルムに占める結晶相の割合は、鋳型に接する側において、3%を超えて15%未満の厚みが、図2に示すような結晶相からなるものとする。この結晶化特性については、パウダーの構成成分であるCaO、SiO、NaO、Al、B、Fの含有量を適正化することで制御することができる。
e. 次に、パウダー組成を上記のように限定した理由を説明する。
CaO:30〜35mass%、SiO:20〜30mass%、NaO:10〜16mass%、Al:8〜11mass%、B:3〜5(未満)mass%、F:4〜10mass%
これらは、いずれも、上記した物性値ならびに結晶化挙動を達成するために必要な成分組成である。即ち、本発明においては、CaO、SiO、NaO、Al、B、Fについて、パウダーの凝固温度、粘度、結晶化挙動を適正なものにするため、それぞれ、上記の範囲内にする。
上記成分のうちCaO、SiO、およびFは、結晶相であるカスピダインの構成元素であるため、いずれの成分も上記の下限値を下まわると上述した結晶相の生成割合が不足し(≦3%)てしまい、一方、上限値よりも高くなると、結晶相の割合が多く(≧15%)なりすぎてしまう。また、SiOは、あまり高いと粘度が高くなりすぎ、そして、CaOはあまり高すぎると、凝固温度が高くなってしまい、低すぎると凝固温度が低くなってしまう。NaOは、結晶化を促進する成分であり、低いと結晶相の生成割合が低く、高すぎると逆に多くなりすぎる。Alは、基本的に結晶化挙動と粘度に作用する。上限値を超えると粘度が高くなり、さらに結晶相の割合も低くなってしまう。逆に、Alが下限値を下まわりすぎると、粘度が低くなり、さらには結晶相の割合も高くなってしまう。Bは、低すぎる(3mass%未満)と結晶相の割合が多くなり、一方、高すぎる(5mass%以上)と逆に結晶相の割合が不足してしまう。Bの好ましい範囲は、3.1mass%以上4.9mass%以下である。
f.塩基度:1.0≦C/S<1.3
塩基度は、この値が1.0未満だと、ガラス化しやすくなるとともに、凝固温度、粘度ともに高くなる傾向にあり、物性値の制御が困難になる。一方、1.3以上の場合にも、凝固温度、粘度ともに高くなる傾向にあり、物性値の制御が困難になる。したがって、塩基度の範囲は、1.0以上1.3未満とした。好ましくは、1.1以上1.25以下、より好ましくは、1.15以上1.24以下である。
g.骨材C:1〜3mass%以下
Cは、パウダーの溶融速度を制御するために添加されるものであり、本発明では極めて重要な成分である。このC量が1mass%未満では溶融が速すぎて過剰流入を引き起こす。一方、3mass%を超えると、溶融速度が遅過ぎて流入が追いつかなくなる。いずれの場合も、デプレッションや縦割れ、ブリ−ディングを引き起こす危険があり、最悪の場合、ブレ−クアウトする。そのため、1〜3mass%とした。好ましくは、1mass%以上3mass%未満、より好ましくは1.4mass%超2.8mass%以下である。
また、本発明は、上述した鋳造用パウダーを用いてボロン含有ステンレス鋼を連続鋳造する方法を提案する。以下に、この方法について説明する。
(1)鋳造材料
本発明方法に適用するボロン含有ステンレス鋼とは、C≦0.2mass%、Si≦3mass%、Mn≦mass5%、Cr:15〜25mass%、Ni:3〜20mass%、B:0.8〜1.5mass%、残部がFeおよび不可避的不純物からなる溶鋼であり、この成分組成を有するボロン含有ステンレス鋼を上記のパウダーを用いて鋳造する。特に限定されるものではないが、上記のボロン含有ステンレス鋼は、Mo:5mass%以下、Co:1mass%以下のうち、いずれか一方または両方を含有する鋼であってもよい。
ボロン含有ステンレス鋼の上記成分組成において、Cは、強度を保つために含有させるものであり、Si、Mnは、脱酸に有用な元素である。また、Crは、耐食性、耐熱性に有用な元素であり、Niは、組織をオ−ステナイトに保つために有用な元素である。Bは、中性子を吸収する能力を持つため、最も重要な元素である。Moは、耐食性を向上させ、Coは、オ−ステナイトを安定化させる元素であり、必要に応じて添加される。
(2)鋳造条件
a.鋳造速度(引抜速度):550〜900mm/分
引抜速度は、550mm/分未満ではスラブ表面品質が悪化し、一方、900mm/分を超えて速くした場合、凝固シェルが充分に成長せず、ブレ−クアウトを引き起す。そのため、引抜速度は、550〜900mm/分とする。好ましくは、600〜880mm/分、より好ましくは、650〜800mm/分とする。
b.溶鋼過熱度:5〜50℃
溶鋼過熱度(溶鋼の液相線温度とタンディッシュ内溶鋼温度の差として定義する)は、5℃未満では、連続鋳造用パウダーの溶融速度が低下し、充分な溶融パウダーを得ることができないことに加え、浸漬ノズル内で地金が凝固してノズル閉塞を招くことがある。一方、この温度が50℃を超える場合、連続鋳造機内で凝固が完了せず、中心割れとなることがある。したがって、溶鋼の過熱度は、5〜50℃とする。好ましくは、10〜45℃、より好ましくは、15〜43℃とする。
なお、鋳造初期の鋳造を安定させ、初期のスラブ表面品質を健全に保つためには、溶融が速く、早期にパウダーフィルムを形成する発熱型のスタ−トパウダーを用いることも有効である。
電気炉で、鉄屑、ステンレス屑、ニッケル、フェロクロム、フェロボロン、クロムを溶解し、AODあるいはVODのいずれか一方または両方を用いて精錬し、表1に示す組成のボロン含有ステンレス鋼を得た。鋳造の規模は60トンであり、スラブの形状は、154mm厚み×800〜1300mm幅である。長さは、1つのスラブをおよそ7〜10mに切断した。なお、表1には、連続鋳造用パウダーの成分組成と、その物性値および連続鋳造の条件についても併記した。溶鋼成分、パウダー成分および物性値は、以下の方法により評価した。
(1)溶鋼成分:蛍光X線分析装置により定量分析した。表1に示した残部はFeを主に含み、その他に不可避的不純物として、P、S、Cu、O、Nなどを含んでいる。さらに、脱酸にAlを用いている場合、0.4mass%以下程度のAlが含まれる。
(2)連続鋳造用パウダー成分:C以外は、化学分析により定量分析した。表1中に示す各成分の合計が100mass%未満であるのは、これらの成分以外にも、MgO、Fe等の不可避的不純物を含むためである。C含有量は添加した重量比から求めた。
(3)粘度:回転円筒法により測定した。即ち、鉄坩堝にパウダーを入れ、縦型抵抗炉内で溶解し、その後、鉄製のロ−タ−を挿入、回転することで粘度を測定した。
(4)凝固温度:上記粘度測定の際に、温度を降下していくと急激に粘度の値が立ち上がる点が求まる。この変曲点を凝固温度とした。
(5)パウダーフィルムの厚み:鋳込み後のパウダーフィルムをサンプリングし、厚みを測定した。
(6)結晶相の割合:鋳込み後のパウダーフィルムを埋め込み研磨し、SEM観察した。その観察から、結晶相の厚みを測定した。その一例を、図1および2に示す。
(7)スラブの表面あるいは内部欠陥:表面欠陥は外観観察により特定した。内部欠陥はスラブを切断して、断面のPT(浸透探傷)検査により割れの有無を確認した。
(8)研削および切断歩留まり:欠陥部の切断および研削を行った前後での重量を測定して、算出した。
表1および表2に示したボロン含有ステンレス鋼の液相線温度は、最も低いものでB含有量が1.41mass%(比較例12)の1321℃、最も高いもので、B含有量が0.82mass%(比較例6)の1375℃である。なお、中間の1.1%程度の鋼の液相線温度は、1350℃である。
次に、表1に示す連続鋳造用パウダーを用いて連続鋳造した、その結果、発明例1〜4では、いずれも問題なく完鋳することができた。しかも、得られたスラブの研削および切断歩留まりも、いずれも94%以上と良好であった。
一方、比較例(No.5〜No.12)では、パウダー成分、パウダー物性値、鋳造条件、それにともない、パウダーフィルムの結晶性のいずれかが本発明の範囲を外れたため、縦割れ、デプレッション、スティッキング等を引き起こす結果となった。また、研削歩留まりも90%未満となってしまい、製造コストの上昇を招いた。以下に、比較例についてさらに詳しく説明する。
(1)比較例の5〜9は、各成分が本発明の範囲を外れているパウダーを、連続鋳造に適用した例を示す。
a.比較例5:これらはパウダー中のCa0、SiO、NaO、Alの含有量が本発明の範囲を外れており、それにともない塩基度C/Sの値も低く、さらに、Bを添加していないパウダーを用いた例である。そのため、粘度が6.2poiseと高く、凝固温度も1210℃と高かった。このため、パウダーが流入しすぎてフィルム厚みが、6.5mmと厚く、しかも完全にガラス質になってしまった。その結果、スラブはデプレッション、縦割れが発生した。
b.比較例6:パウダー中のB添加量が少なかったため、フィルム厚みが3.6mmと厚くなり、さらに結晶相の割合も1%と低かった。そのため、デプレッションを引き起こした。
c.比較例7:パウダー中のB含有量が8.3%と高いため、凝固温度が870℃と低すぎた。そのため、フィルム厚みが6.1mmと厚く、なおかつ、完全なガラス質となり、スラブはデプレッション、縦割れが発生した。
d.比較例8:パウダー中のCaO、SiO、NaO、Alの含有量が本発明の範囲を外れており、それにともない塩基度C/Sの値も低い。粘度が0.35poiseと低く、かつ凝固温度も725℃と低かった。そのため、フィルム厚みが5.6mmと厚く、なおかつ、完全なガラス質となり、スラブはデプレッション、縦割れが発生した。
e.比較例9:パウダー中に骨材Cを多く添加した例である。パウダーの溶融が遅くなってしまい、フィルム厚みが0.3mmと薄くなってしまった。その結果スティッキングを引き起こしてしまった。
(2)次に、比較例の10〜12は、いずれも本発明に適合するパウダーを用いたが、鋳造の条件が適合しなかった例を示している。
a.比較例10:引き抜き速度が1200mm/分と速かったため、凝固シェルが充分に成長せずにブレ−クアウトを引き起こし、完鋳できなかった。
b.比較例11:溶鋼過熱度が2℃と低かったため、パウダーの溶融が遅く、パウダーフィルムの厚みが0.2mmと薄くなってしまった。また、引き抜き速度も500mm/分と遅かったため、スティッキングを起こした。
c.比較例12:溶鋼過熱度が80℃と高かったために、連続鋳造機内で溶鋼が充分に固まらず、スラブの中心割れを引き起こした。研削歩留りは、それほど悪くなかったが、内部割れのため、圧延しても圧着せず、製品にならなかった。
Figure 0004846858
Figure 0004846858
本発明は、ボロン含有ステンレス鋼やNi−Cu系合金など液相線温度の低い合金・鋼の連続鋳造、そのためのパウダーとしても利用することができる。

Claims (5)

  1. 液相線温度が1320〜1380℃であるボロン含有ステンレス鋼の連続鋳造に際して用いるパウダーであって、Ca0:30〜35mass%、SiO:20〜30mass%、NaO:10〜16mass%、Al:8〜11mass%、B:3〜5(未満)mass%、F:4〜10mass%、骨材C:1〜3mass%を含有する成分組成を有し、かつ、塩基度が1.0≦C/S<1.3、1300℃における粘度が0.5〜2poise、凝固温度が900〜1200℃、かつ鋳型と凝固シェルとの間に流入した時に、0.5〜3mmの厚さのパウダーフィルムを形成する特性を具えることを特徴とするボロン含有ステンレス鋼用連続鋳造用パウダー。
  2. 前記パウダーフィルムは、鋳型側に、このフィルムの厚さの3%超〜15%未満の部分が結晶相を有するものであることを特徴とする請求項1に記載のボロン含有ステンレス鋼鋳造用パウダー。
  3. パウダーフィルム中の前記結晶相はカスピダインであることを特徴とする請求項1または2に記載のボロン含有ステンレス鋼造用パウダー。
  4. C≦0.2mass%、Si≦3mass%、Mn≦5mass%、Cr:15〜25mass%、Ni:3〜20mass%、B:0.8〜1.5mass%、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、かつ液相線温度が1320〜1380℃であるボロン含有ステンレス鋼の溶鋼を、請求項1〜3のいずれか1に記載の連続鋳造パウダーを用いて連続鋳造することを特徴とするボロン含有ステンレス鋼の連続鋳造方法。
  5. 溶鋼過熱度が5〜50℃、連続鋳造速度が550〜900mm/分の条件下で連続鋳造することを特徴とする請求項4に記載のボロン含有ステンレス鋼の連続鋳造方法。
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