しかるに、上記特許文献4の内容を分析するかぎり、そこには高温の水蒸気を使う点について言及はされているものの、その噴射時の水蒸気圧やノズル孔の大きさ、形状など、水蒸気による繊維交絡に特有の各種条件に関する格別の記載はない。このことから、上記特許文献4に開示された高温の例えば過熱水蒸気流による不織布の製造は、その水蒸気流による繊維交絡が主目的ではなく、いわゆる水蒸気熱をもって熱溶融性材料からなる繊維ウェブの構成繊維を溶融させることを主な目的としていることが理解できる。通常、高圧水流の噴射により製造される繊維交絡不織布には、例えば上記特許文献3にも記載されているように、繊維ウェブ面に噴射流体による打撃痕や開孔痕が残る。
前記特許文献4の不織布の製造方法では、繊維ウェブに対して水蒸気を噴射する前工程として、噴射水流による繊維交絡を行っている。従って、この噴射水流により繊維交絡がなされた布帛にも、当然に上記打撃痕や開孔痕が残っており、そこに噴射される高温水蒸気は布帛全面にわたってその厚さ方向に貫通するものではなく、主に前記打撃痕や開孔痕を通過するものと考えられる。勿論、このとき前記打撃痕や開孔痕が形成されていない他のウェブ表面に存在する低融点の繊維も同時に溶融する。このことは、上記特許文献4の図4〜図5にも前記打撃痕や開孔痕が形成されていない領域においても繊維同士が融着している部分が存在することからも認識できるところである。その結果、同図に示された不織布も柔軟性では従来のポイント接着による不織布と変わるところがなく、特にその表面は多くの熱溶融性材料による硬化部分が存在することになる。
また、上記特許文献5には、水蒸気の噴出ノズルの一形態の構造が図示されてはいるものの、同噴出ノズルの構造やサイズ並びに使用態様等について具体的に記載が一切なされていない。
一方、上記特許文献2には、水蒸気の噴出ノズルの具体的構造が記載されてはいるが、同噴出ノズルに如何にして水蒸気を送り込み、そのノズルから如何なる条件下で高圧の水蒸気を均一に且つ連続して噴出させるかについては格別に記載されていない。この噴出に使われる水蒸気は、通常、軟水化処理し僅かに添加剤を加えた工業用水が使われており、しかも各種の配管などを通過するため、同水蒸気には極く微細な異物が混合することがあり、噴出ノズル孔を閉塞させやすい。或いは、ノズルに導入された水蒸気の一部は凝縮してドレンとなってノズル孔の近くに溜まってノズル孔が閉塞されやすく、水蒸気が連続して噴出されずに間欠的に噴出されやすい。しかも、同文献2に開示されたノズルの構造も、液体流の噴射ノズルであれば好適に採用が可能ではあっても、水蒸気の噴出ノズルとしては部品点数が多過ぎ複雑に過ぎる。
本発明は、以上の課題を解決すべくなされたものであり、その目的は構造が簡単で、しかも加圧水蒸気を均一に且つ連続して噴出させることができ、繊維ウェブの構成繊維の一部もしくは殆どを確実に交絡させて所要の強度が得られ、得られる不織布の表面の柔軟性が確保でき且つその内部形態の改善をも図ることを可能にし、繊維ウェブの構成繊維を確実に交絡させる効率的な不織布の連続製造装置を提供することにある。
本発明に係る不織布の製造装置の基本構成は、加圧水蒸気噴出ノズルの長手方向に形成された複数のノズル孔から、対向して走行する繊維ウェブに加圧水蒸気を噴出することにより、その構成繊維を交絡させて不織布を製造する装置に関し、前記加圧水蒸気噴出ノズルの一端に、加圧水蒸気供給管を介して接続された加圧水蒸気供給源と、前記加圧水蒸気噴出ノズルの他端に開閉バルブを介して接続された水蒸気排出管と、前記加圧水蒸気噴出ノズルに形成された複数の加圧水蒸気噴出ノズル孔に所定の間隔をおいて対向し、同加圧水蒸気噴出ノズルを横切って一方向に移動する多孔の繊維ウェブ担持移送手段と、同移送手段を挟んで前記加圧水蒸気噴出ノズルと反対側に配された吸引手段とを備えることを特徴としている。前記加圧水蒸気噴出ノズルとしては、次の構成を備えた加圧水蒸気噴出ノズルを採用することが望ましい。
すなわち、加圧水蒸気噴出ノズルは、一端に加圧水蒸気供給管に接続する水蒸気導入口を、他端に外部の水蒸気排出管に接続する水蒸気排出口を有するとともに、下面の長さ方向に沿って延びる開口を有する中空筒状のノズルホルダーと、前記ノズルホルダーの下面に脱着可能に配され、前記開口に対向して形成された複数のノズル孔を有するノズル部材とを備えているとよい。
ここで最も注目すべき点は、ノズルホルダーの一端に水蒸気導入口を、他端に水蒸気排出口を有する点にある。加圧水蒸気噴出ノズルから、常に水蒸気を噴出させておくことはできない。例えば、定期点検時や機械の停止時には水蒸気の供給も停止させる。このように水蒸気の噴出を停止させると、当然にノズル内の温度も急激に低下する。水蒸気の噴出を再開させて不織布の製造を開始するには、加圧水蒸気噴出ノズルの内部を所定の温度まで昇温させる必要がある。この昇温時に、従来の噴出ノズルのごとく水蒸気導入口以外を密閉状態に構成する場合には、ノズルホルダー内に導入される水蒸気量はノズル孔から噴出する量に止まり、熱量の交換量が少なくノズル自体を昇温させるために長い時間がかかることになる。
そのため、前記加圧水蒸気噴出ノズルにあっては、上述のごとくノズルホルダーの他端に水蒸気排出口を設けて、同水蒸気排出口に接続された水蒸気排出管に、例えば後述するように開閉バルブなどを取り付けて水蒸気排出口を開閉可能にする。いま、不織布製造装置を始動させる前に、ノズルホルダーに水蒸気を導入する。このとき、水蒸気排出口は開口しており、水蒸気導入口から導入される水蒸気を水蒸気排出口を通して連続して外部に排出する。ノズルホルダーの温度を測定し、その温度が所定の高温に達すると、前記水蒸気排出口を閉鎖する。この閉鎖と同時に水蒸気導入口における水蒸気圧を測定し、その水蒸気圧が所定の圧力に達したとき不織布製造装置を始動させる。このときの始動までの時間は、ノズルホルダー内を通過する新たな高温水蒸気によりノズルホルダーが速やかに昇温されるため、従来のごとく水蒸気排出口が存在しない場合と較べると大幅に短縮される。
前記中空筒状のノズルホルダーの形状としては、具体的に円筒状のノズルホルダーや矩形状のノズルホルダーが挙げられ、特に円筒状のノズルホルダーが加圧水蒸気の均一な流れや製作上の点から好ましく用いられる。また、実際の作業時には、かかるノズルホルダーの内部に高メッシュの筒状フイルター、例えば円筒状のノズルホルダーにおいては円筒状のフイルターを、また矩形状のノズルホルダーにおいては矩形状のフイルターを同一軸線上に配することが望ましいが、必ずしもこれらに限定されない。
本発明にあって、上述のように円筒状のノズルホルダーを用いる場合には、前記ノズルホルダーの内部に高メッシュの円筒状フィルターを同一軸線上に配することが望ましい。ここで、高メッシュの円筒状フィルターとは、水蒸気導入時に含まれる微細な異物を除去することができる直径1〜50μm程度の孔を有するフィルターをいう。この場合、ノズルホルダーの一端に設けられた水蒸気導入口から導入される水蒸気は円筒状フィルターの内部へと導入され、同フィルターを通過してノズルプレートに形成されたノズル孔に達し、同ノズル孔から外部に噴出する。このとき、ノズルホルダーの内壁面における長手方向の圧力分布は円筒状フィルターにより均一化されるとともに、水蒸気導入時に含まれる微細な異物が円筒状フィルターによって水蒸気中から除去されるため、ノズルホルダーの長手方向に沿って形成されたノズル部材の複数のノズル孔を閉塞させることなく、同ノズル孔から均等な噴出圧をもって高圧水蒸気が安定して噴出されるようになる。
前記ノズルホルダーはその下部にドレン排出口を有しているとよい。更に、前記ノズルホルダーは単独に又はノズル部材とともに、傾斜させることがある。これは、稼働中にノズルホルダー内にドレンが溜まるため、そのドレンを外部に排出しやすくするためである。そのため、ノズルホルダーの傾斜方向の低いほうの基端部にドレン排出口が形成され、例えば開閉バルブなどにより開閉自在とされており、任意の時間帯に同バルブを開いてノズルホルダーの内部に溜まったドレンを外部へと排出する。このとき、ノズルホルダーは傾斜して配されているため、吸引などの余分な装置が不要である。なお、このノズルホルダーを単独に傾斜させてもよいし、ノズル部材とともに傾斜させてもよい。更に、ドレンがノズル孔などの目詰まりを起こさせないため、ノズルホルダーの底面とノズル部材の配置平面との間に段差を設けたり、或いはノズルホルダーの底面にドレン流路(溝)を形成し、更にはノズルホルダーの底面と一部で連通するドレン流路をノズルホルダーと独立して設けるようにすることもできる。この独立してドレン流路を設ける場合には上述のようにノズルホルダーを傾斜させることなく、同流路だけを傾斜させるようにしてもよい。なお、前記傾斜は、水平線に対する最大勾配を1/100とすることが好ましい。この勾配が1/100よりも大きいと、ノズルホルダーの傾斜基端部にドレンが早く溜まるため、ドレン抜きを頻繁にしなければならず、更にはノズルホルダー内の水蒸気圧分布が不均一となりやすい。
一方、前記ノズルホルダーの下面に形成される上記開口は、ノズルホルダーの長さ方向に連続して形成されるスリット状の開口であっても、或いはノズルホルダーの長さ方向に千鳥状に形成された複数の小孔であってもよい。これらの開口を介してノズル部材に形成されたノズル孔に達する水蒸気の圧力は均圧化されノズル長手方向に対する水蒸気の均一な噴射が可能となる。上記ドレン流路は、当然にノズルホルダーの前記開口から外れた部位に形成される。
上記ノズル部材を複数のノズル孔を有するノズルプレートと同ノズルプレートを支持するプレート支持部材とから構成することができる。前記ノズル孔は筒孔を有していることが好ましい。前記筒孔の形状は単なる円筒状であってもよいが、前記ノズル孔の筒孔上端に連続する逆台形部を更に有するようにしても、或いは前記ノズル孔が前記筒孔の下端周縁からその口啌内に向けて同心上、好ましくは同心円上に延出するリング片を有するようにしてもよい。更には、前記ノズル孔の筒孔上端に前記ノズルプレートの長手方向に連続する逆台形断面の連続溝部を有するようにしてもよいし、或いは前記円筒状の各筒孔上端に逆円錐台孔を有するようにしてもよい。
前記ノズルプレートに形成されるノズル孔は、ノズルプレートの長手方向に単列に形成してもよいが、例えばノズルプレートの幅方向に複数列に形成することもできる。この場合複数列のノズル孔を千鳥状に配すると、噴出水蒸気が繊維ウェブの幅方向に満遍なく作用するため好ましい。
なお、前記筒孔、好ましくは円筒状の筒孔の高さと内径との比の値は1〜2とすることが好ましい。その値が1より小さいと、水蒸気流が柱状流となりにくく、2よりも大きいと、ノズル孔の径が微小であることとノズルプレートの板厚との関係で高精度の加工が難しい。また、ノズル孔を上述のように円筒状の筒孔の下端周縁からその口啌内に向けて同心円上に延出するリング片を有する構成とすると、ノズル孔から噴出する水蒸気流がある点で集束するようになり、例えば繊維ウェブに対する噴出力が増して、同ウェブの表裏を貫通しやすくなる。前記集束点はノズル孔の形状と水蒸気圧等とから決まる。
前記ノズルプレートの板厚を0.5〜1mm、前記ノズル孔の水蒸気噴出口内径を0.05〜1mm、同ノズル間のピッチを0.5〜3mmとすることが好ましい。ノズルプレートの板厚が0.5mmより小さいと水蒸気圧に耐え得るに十分な強度が得にくく、1mmを越えると微細なノズル孔の高精度な加工が難しい。このノズル孔の形成加工には、放電加工やレーザ加工を採用できる。また、ノズル孔の水蒸気噴出口内径が0.05mmより小さいとその加工が難しいばかりでなく、目詰まりを起こしやすくなり、1mmを越えると水蒸気噴出時に所要の噴出力が得にくくなる。ノズル間のピッチは0. 5〜3mmであれば、同時に繊維ウェブの構成繊維間で充分な交絡が得られる。なお、ノズル間のピッチは、各ノズル孔の中心点間距離をいう。
更に上記ノズル部材が、上記ノズルホルダーの下端開口に連通する船形の凹陥溝部と、同凹陥溝部の船底部に沿って形成された矩形断面溝部と、同矩形断面溝部の長さ方向に沿って所定ピッチをもって形成された複数の逆円錐台孔と、各逆円錐台孔の下端に連続して形成された円筒状の筒孔とを備えてなる単一部材から構成することもできる。このようにノズル部材を単一部材で構成することにより部品点数が大幅に削減されるばかりでなく、ノズル孔の上記噴射開口端を繊維ウェブの噴射表面に直接接近させることが可能となって、加圧水蒸気の断熱膨張による圧力低下が軽減され、よりウェブ内の貫通力が得られる。
更には、前記ノズル部材の幅方向の下端面形状を下方に突出する湾曲面形状とすると、繊維ウェブの導入が容易になる。この発明にあっても、前記筒孔の高さと内径との比の値は1〜2とすることが好ましく、また前記ノズル孔の水蒸気噴出口内径を0.05〜1mm、同ノズル間のピッチを0.5〜3mmとすることが好ましい。この場合のノズル間のピッチも上記同様、各ノズル孔の中心点間距離をいう。この場合にも前記ノズル孔をノズル部材の長手方向に複数列に形成することが好ましい。
以上の構成を備えた本発明の加圧水蒸気噴出ノズルは、本発明の上記不織布の製造装置に好適に適用され、同製造装置を使って交絡不織布を効率的に製造することができる。 すなわち、上記製造装置による不織布の製造は、一端に加圧蒸気供給管に接続する水蒸気導入口を、他端に外部の水蒸気排出管と接続する水蒸気排出口を有するとともに、下面の長さ方向に沿って開口を有する中空筒状のノズルホルダーと、前記ノズルホルダーの下面に脱着可能に配され、前記開口に対向して形成された複数のノズル孔を有するノズル部材とを備えてなる加圧水蒸気噴出ノズルを用いて、複数のノズル孔から走行する繊維ウエブの幅方向に加圧水蒸気を連続して噴射することにより構成繊維を交絡させる不織布の製造方法であって、始めに前記水蒸気導入口から加圧水蒸気を導入するとともに、その水蒸気排出口から同加圧蒸気を外部に排出すること、前記加圧水蒸気噴出ノズル内の温度を測定すること、同ノズル内の温度が所要の温度に達したとき、水蒸気排出路をトラップを介するドレン抜き通路に切り換えて、前記水蒸気の排出を停止させること、水蒸気の排出停止後に、繊維ウェブを前記ノズルの噴射ノズル孔に対面させて連続的に走行させ、噴射ノズル孔から噴出する加圧水蒸気により繊維ウェブの構成繊維を交絡させること、及び繊維ウェブを貫通する水蒸気を吸引して外部に排出する。
前記加圧水蒸気噴出ノズルの上記ノズルホルダーは、通常、断熱材などで被包されており、内部を通る加圧水蒸気の温度低下を防止しているが、更に加圧水蒸気噴出ノズルの全体を積極的に加熱することができる。その具体的な手法としては、シリコン系オイルなどの熱媒体による加熱、誘導加熱などの電気ヒーターによる加熱方法があり、その他例えば加圧水蒸気噴出ノズルの全体を、加圧水蒸気噴出側を開口させたボックス内に収容し、同ボックス内に高温に加熱された熱風を導入する。このように加圧水蒸気噴出ノズルの全体を、熱風によって例えば使用する水蒸気の飽和水蒸気温度以上の温度に昇温しておけば、内部の加圧水蒸気の温度低下が効果的に防げるようになり、不織布に作用する必要な水蒸気量を効率的に得やすくなるばかりでなく、交絡及び熱融着が進んだ高品質の不織布が得やすい。
一方、通常は前記加圧水蒸気噴出ノズルを走行する繊維ウェブの上方に配して、繊維ウェブの上面に向けて加圧水蒸気噴出流を付与するが、前記加圧水蒸気噴出ノズルを走行する繊維ウェブの下方に配して加圧水蒸気の噴出流を繊維ウェブの下面から上方に向けて付与することもできる。このように加圧水蒸気の噴出流を繊維ウェブの下方から上方に向けて噴出させるときは、ノズルホルダーの上面側に配されたノズル孔に水蒸気の凝縮液が溜まりにくくなり、安定した蒸気の噴出が可能となるため好ましい。
上記加圧水蒸気噴出ノズルと同ノズルに対向して配される水蒸気の上記吸引手段との一組をもって繊維ウェブの一表面から加圧水蒸気を付与するようにすると本発明の所期の目的は達成されるが、この加圧水蒸気噴出ノズルと水蒸気吸引手段とを二組以上用意して、これらを繊維ウェブに対して表裏両面から加圧水蒸気を噴出させるように交互に配することもできる。
この場合には、繊維ウェブの構成繊維が片面から加圧水蒸気による交絡作用を受けるだけではなく、表裏両面から独立して受けられるようになるため、繊維ウェブの構成繊維が表裏両面において均等に交絡及び熱融着し、不織布としての形態の安定性が得られるだけでなく、外観的にも表裏均整な高品質の不織布が得られる。
また、一方向に走行する前記繊維ウェブと上記吸引手段との間に水蒸気反射板を配することができる。この水蒸気反射板は直径1〜10mmの多数の孔を有し、その開口率は10〜50%であることが好ましい。これらの値よりも小さいときは繊維ウェブを通過するときの上記吸引手段による水蒸気の吸引力が有効に働かず、また大きくなると反射する水蒸気量が少なくなりすぎる。加圧水蒸気噴出ノズルから噴出する加圧水蒸気が繊維ウェブを貫通する間、その構成繊維は交絡する。しかし、繊維ウェブの加圧水蒸気噴出側と貫通側との繊維交絡状態を比較すると、水蒸気噴出側の構成繊維の交絡の方が貫通側の構成繊維の交絡よりも進んでいる。そこで、上述のように水蒸気反射板を配することにより、繊維ウェブを貫通した水蒸気は同水蒸気反射板により繊維ウェブの貫通側表面に反射し、水蒸気反射板側の構成繊維間の交絡を促進させるようになり、例えば繊維ウェブに対して一方向から加圧水蒸気を噴出させた場合でも、その反対側の表面における繊維交絡が進むだけでなく、繊維ウェブの貫通側に突出する構成繊維を上記噴出側へと押込み交絡させるため、表裏面共に均整で安定した不織布形態が得やすくなる。
更に、上記繊維ウェブ移送手段が、加圧水蒸気噴出ノズルのノズル孔と前記繊維ウェブとの間に配される多孔の繊維ウェブ担持移送手段と、同繊維ウェブ担持移送手段との間で繊維ウェブを挟持して同繊維ウェブ担持移送手段と協働して繊維ウェブを移送する多孔の繊維ウェブ押圧移送手段とを備えており、繊維ウェブを前記繊維ウェブ担持移送手段と繊維ウェブ押圧移送手段との間で挟持して移送させれば、移送される繊維ウェブに高温高圧の水蒸気が噴射されてもウェブ表面の繊維を乱すことがないため好ましい。このとき、前記繊維ウェブ担持移送手段と前記押圧移送手段との双方が、駆動源により互いに同期して駆動回転する多孔のエンドレスベルトであってもよく、或いは前記繊維ウェブ押圧移送手段及び前記繊維ウェブ担持移送手段のいずれか一方が駆動回転するエンドレスベルトであって、その他方が同エンドレスベルトと同期して駆動回転する多孔の回転ドラムであってもよい。
前者の場合には、そのいずれかのエンドレスベルトの内側であって、上記加圧水蒸気噴出ノズルのノズル孔に対向する部位にスリット状の吸引開口を有する吸引手段を有しているが、後者の場合には、前記エンドレスベルトと前記回転ドラムとが最も接近する部位であって、同エンドレスベルト又は回転ドラムの内側にスリット状の吸引開口を有する吸引手段を有していることが望ましい。これらの吸引手段はいずれも固設されており、エンドレスベルト又は回転ドラムが上記スリット状の吸引開口面に近接して回動する。
前記繊維ウェブ押圧移送手段及び前記繊維ウェブ担持移送手段のいずれか一方に多孔の回転ドラムを採用すると、装置全体の小型化が達成できる。この回転ドラム及び吸引手段の構造と配置には丸網抄紙機に採用される回転ドラム及び吸引手段と実質的に同一の構造と配置を採用することができる。また、多孔のエンドレスベルト及び回転ドラムとして、例えば金網やパンチングメタルを使うことができる。このとき、繊維ウェブ押圧移送手段のメッシュ度は繊維ウェブ担持移送手段のそれを越えないことが望ましい。一般的に、これらの各移送手段のメッシュ度を20〜40(個/2.54cm)とすることが望ましく、特に繊維ウェブ押圧移送手段のメッシュ度が20(個/2.54cm)より少ないと同押圧移送手段により押圧される表面側の構成繊維がメッシュを通り抜けて表面に飛び出し、横方向に拡がってしまう。また、特に繊維ウェブ押圧移送手段のメッシュ度が40(個/2.54cm)を越えると、目詰まりが発生しやすく、噴出水蒸気が繊維ウェブ押圧移送手段の表面に沿って拡散し繊維ウェブに対する噴出水蒸気の貫通を妨げる。繊維ウェブ担持移送手段のメッシュ度についても、上記数値範囲を外れると高品質の不織布の製造が難しくなる。
通常、上記加圧水蒸気噴出ノズルは所定の位置に固設され不動状態におかれており、上記繊維ウェブ押圧移送手段及び繊維ウェブ担持移送手段も繊維ウェブを一方向に移送するように一方向に移動しているに過ぎないが、本発明にあっては前記加圧水蒸気噴出ノズルを繊維ウェブの移送路の横断方向に短い行程で往復動させ、或いは同加圧水蒸気噴出ノズルを固定しておき、前記繊維ウェブ押圧移送手段及び繊維ウェブ担持移送手段を繊維ウェブ移送路の横断方向に同じく短い行程をもって往復動させることが好ましい。このように、加圧水蒸気噴出ノズル又は繊維ウェブ押圧移送手段及び繊維ウェブ担持移送手段の、いずれかを往復動させる場合には、繊維ウェブの幅方向に均一に加圧水蒸気が噴出付与され、製造される不織布の表面にノズル孔から噴出される水蒸気によるモアレ状のパターンがつかず、均整な表面形態をもつ不織布が得られる。この往復動の行程幅はノズル間ピッチより多少でも長ければよく、具体的には±5mm程度であり、その往復速度は30〜300回/分である。
ところで、前記加圧水蒸気噴出ノズルのノズル孔と繊維ウェブ押圧移送手段との間の間隙は出来るかぎり小さい方が好ましく、可能であれば直接摺接させることが最も好ましい。しかし、加圧水蒸気噴出ノズルのノズル孔と繊維ウェブ押圧移送手段とを摺接させると、両者の摩耗による損傷が激しく、所要の耐久性が得られない。そこで、加圧水蒸気噴出ノズルのノズル孔と繊維ウェブ押圧移送手段との間に、その間隙を調整する手段を有していることが望ましい。この間隙調整手段により、加圧水蒸気噴出ノズルのノズル孔と繊維ウェブ押圧移送手段との間の間隙を最適に調整することができ、同時に装置の耐久性が確保される。また、前記繊維ウェブ押圧移送手段と前記繊維ウェブ担持移送手段の間の間隙を調整する第2の間隙調整手段を設けることもできる。これは、繊維ウェブの構成繊維材料やウェブ厚に対応して、その挟持力を調整するのに好適である。
また、本発明に係る不織布の製造装置にあっては、上記加圧水蒸気供給管の管路に水蒸気貯留部を配して、同水蒸気貯留部に一旦水蒸気を貯留し、そこに溜まる水蒸気中の塵芥等を凝縮液とともに、例えばトラップを介して外部に排出することが好ましい。更に、前記水蒸気貯留部と前記加圧水蒸気噴出ノズルの一端との間の加圧水蒸気供給管の管路に加熱手段を配し、前記水蒸気貯留部と前記水蒸気噴出ノズルとの間にて、加圧水蒸気の前記加熱蒸気供給管内を通過する水蒸気を加熱して過熱水蒸気を生成させることにより、繊維ウェブに所望の高圧下における高温の水蒸気を噴出させることができるため好ましい。このとき、前記水蒸気噴出ノズルに導入される水蒸気圧を0. 1〜2MPaとすると、水蒸気を繊維ウェブの表裏に確実に貫通させることができるため好ましい。
水蒸気噴出ノズルから噴出する加圧水蒸気は、ノズル孔から外部に噴出すると同時に断熱膨張により急激に温度が低下する。この温度の低下により水蒸気が凝縮して霧状の液体となりやすく、周辺に吹き上がり高圧流体ではなくなるため、繊維ウェブの内部にまで到達しにくくなる。過熱水蒸気は飽和水蒸気圧の下で飽和温度以上の温度にまで高温化された水蒸気であり、飽和温度と過熱温度との中間では凝縮液化しににくなる。そのため、水蒸気噴出ノズルから噴出する過熱水蒸気は繊維ウェブに当たっても凝縮することなく、その内部まで浸入して貫通し、周辺の繊維を加熱しながら交絡させる。従って、この加熱水蒸気の通過により繊維の交絡と熱融着とが同時に行われるようになる。
本発明の不織布の製造装置にあっても、繊維ウェブの移送方向にあって、前記加圧水蒸気噴出ノズルよりも上流側に水蒸気噴出ノズルによるウェブ内の繊維相互の交絡を容易化するための前処理手段を配しておくことが望ましい。
上述のように水蒸気の噴出により繊維を交絡させる前段で、繊維ウェブを構成する繊維相互の距離を短くするような前処理を行うことにより高圧水蒸気の噴射によっても繊維ウェブ内の繊維相互の交絡を斑なく効率的に行うことが出来る。
本発明にあって、前記交絡の容易化手段としては、繊維ウェブの表面に単に液体を噴霧する程度でも十分であるが、例えば従来の液体流やニードルパンチによる繊維交絡を採用することもできる。例えば、水にぬらした場合、ウェブが見かけ上薄くなり繊維間相互の距離が短くなることにより交絡が容易に出来る。この前処理は噴出水蒸気によるウェブ表面からの繊維の毛羽立ちや飛散防止にも有効である。更には、前記前処理として繊維ウェブの構成繊維の少なくとも一部に低融点の繊維を混在させておき、これの熱融着を更に促進させるべく加熱装置を配しておくこともできる。
また、本発明に係る不織布の製造装置にあって、上記開閉バルブと前記加圧水蒸気噴出ノズルの他端との間の水蒸気排出管の管路から分岐するトラップ管路を配することもできる。上述のごとく装置の稼働開始に先立って、加圧水蒸気噴出ノズルの水蒸気排出口に接続された水蒸気排出管に設けられた開閉バルブを開き、加圧水蒸気噴出ノズルの一端から加圧水蒸気を導入して、その他端の水蒸気排出口から水蒸気を排出し、加圧水蒸気噴出ノズルの内部温度が所定の温度まで上がったとき、前記開閉バルブを閉じる。
上述のように、水蒸気排出管の管路から分岐するトラップ管路を設けておくと、開閉バルブが閉じられたのちも、加圧水蒸気噴出ノズル内に発生する凝縮液や水蒸気中に含まれる微細な異物などが凝縮液とともに水蒸気排出管を介してトラップ管路へと流れ、適時に外部へと排出されるようになり、装置の稼働時にも凝縮液や微細な異物によりノズル孔が詰まることがなく、全てのノズル孔から安定して水蒸気を噴出させることができるようになる。こうした本発明の製造方法及び製造装置に適用される加圧水蒸気噴出ノズルとしては、既述したような構成を備えた本発明の加圧水蒸気噴出ノズルを採用することができる。また、上述の説明では加圧水蒸気噴出ノズルを一段配した例を挙げて説明したが、同水蒸気噴出ノズルを繊維ウェブの走行方向に多段に配することもできる。この場合、既述したように、加圧水蒸気噴出ノズルとその吸引手段を、繊維ウェブに対して表裏交互に配するようにすれば、表面形態が安定した高品質の不織布が得られる。
更に、前記加圧水蒸気噴出ノズルのノズル孔の配置を各段ごとに繊維ウェブの幅方向に変位させることが望ましい。
以下、本発明の代表的な実施形態を図面に基づいて具体的に説明する。
図1〜図4は、本発明に係る交絡不織布の製造装置に適用される加圧水蒸気噴出ノズルの代表的な第1構造例を示している。この第1構造例による加圧水蒸気噴出ノズル10は、ノズルホルダー11と、同ノズルホルダー11の両端部に溶接により固着された第1及び第2フランジ12,13と、前記ノズルホルダー11の内部に挿通されて両端部を第1及び第2フランジ12,13により支持された円筒状の高メッシュフィルター14と、前記ノズルホルダー11の下面に沿って溶接又はボルト等により固着される複数のノズル孔をもつノズル部材15とを備えている。図示例によるノズル部材15は、第1の及び第2のノズルプレート支持部材15a,15bと、第1及び第2のノズルプレート支持部材15a,15bの間に固定用ボルトによって締結されるノズルプレート16とを備えている。
前記ノズルホルダー11の水蒸気導入側端部に固着された第1フランジ12は中心線に沿って大径部12a及び小径部12bとからなる貫通孔12cが形成されており、図示せぬ加圧水蒸気供給源に接続された図示せぬ加圧水蒸気供給管にプラグ17を介して接続される。前記ノズルホルダー11の水蒸気排出側端部に固着された第2フランジ13も、その中心線に沿って大径部13a及び小径部13bとからなる貫通孔13cが形成されており、図示せぬ水蒸気排出管と接続される。前記高メッシュフィルター14の両端部には、前記第1及び第2フランジ12,13の各大径部12a,13aに気密に固設されるリング状の固着部材18,19を固着してある。
前記ノズルホルダー11の下面部には、その両端部を残して内部空間に達するまで平面的に切除されて切除面11aを形成している。その結果、ノズルホルダー11の下面中央には長手方向に延びるスリット状開口11bが形成される。上記ノズル部材15は、図1及び図2に示すように、角柱状の第1ノズルプレート支持部材15aと同第1支持部材15aと同じ長さと幅を有する板状の第2ノズルプレート支持部材15bとから構成される。第1ノズルプレート支持部材15aの下面中央部にはその長手方向の両端部を除いて長手方向に延びる凹陥部15a' が形成されている。また、その上面中央部には、前記凹陥部15a' に通じる複数の貫通孔15a″が図4に拡大して示すように長手方向に千鳥状に配されて形成されている。
一方、前記第2ノズルプレート支持部材15bには、図4に拡大して示すように、前記凹陥部15a' に対応する部位に長手方向に延びるスリット状の開口15b' が形成されている。このスリット状開口15b' の断面は、前記凹陥部15a' の対向側に縦長の矩形断面を呈し、その下端に連続して下方に拡開する台形断面を呈している。また、第2ノズルプレート支持部材15bの前記スリット状開口15b' が形成された部位は他の部分よりも所定の幅をもって薄肉部15b″に形成され、この薄肉部15b″に対向する第1ノズルプレート支持部材15aの下面は、前記薄肉部15b″に嵌合する突出部15cを有している。
上記ノズルプレート16は前記薄肉部15b″に嵌め込まれる大きさと形状を有する細長い薄板片からなり、その幅方向の中央には所定のピッチをもって長手方向に一列又は多列に並んで形成された複数のノズル孔16aを有している。第1ノズルプレート支持部材15aは、図1及び図3に示すように、同第1ノズルプレート支持部材15aの上面をノズルホルダー11の上記切除面11aに密接させた状態で、溶接により固設一体化されている。前記ノズルプレート16は、上記第1ノズルプレート支持部材15aの突出部15cと第2ノズルプレート支持部材15bの薄肉部15b″との合わせ面の間にて挟持された状態で、第1ノズルプレート支持部材15a及び第2ノズルプレート支持部材15bとがOリング20を介してボルト21により気密に固着されることにより強固に支持される。従って、ノズルプレート16はボルト21を外すことにより、容易に取り外すことができるため、洗浄や交換が簡単にできる。
上記ノズル孔16aは単なる円筒形のみならず、図5〜図7に示すような形状とすることができる。図5に示すノズル孔16aの形状は、上部が逆円錐台形であり、その逆円錐台形に連続する下部を円筒形に形成している。この孔形状を採用するときは、同図に示すように、円筒形の高さをL、円筒形の口径をDとしたとき、L/Dの値を1〜2とすることが、噴射流の良好な集束性の確保と高精度の孔加工を可能にする両面から望ましい。
図6はノズルプレート16の上面に逆台形断面の溝を形成するとともに、その底面に長さ方向に所定のピッチをもって複数の円筒孔を形成しており、更にその円筒孔列に沿った左右両端を切除している。このとき突出する円筒孔の先端稜線部を円弧状に面加工すれば、蒸気噴出時に同ノズル孔16aを繊維ウェブに接触又は接近させても、繊維ウェブの表面繊維を乱すことがない。図7に示すノズル孔16aの形状は、円筒形の孔の下端周縁から内側に向けて同心円上に延出するリング片16a' を形成している。かかる孔形状を採用することにより、同ノズル孔16aから噴出される高圧水蒸気は集束流となる。
かかる構成を備えた加圧水蒸気噴出ノズル10によれば、後述するように、例えば加圧水蒸気噴出ノズル10から高温高圧の水蒸気を噴出させるとき、始動時にはパイプ状ノズルホルダー11の一端から水蒸気を導入して、その他端から放出させれば、高温高圧の新鮮な水蒸気がノズルホルダー11の内部を何らの障害もなく通過するため、温度の低下したノズルホルダー11を短時間で所定の温度まで昇温させることができる。これが、従来のようにノズルホルダーに水蒸気の導入開口のみが設けられているときは、ノズルホルダーに新鮮な高温高圧の水蒸気を導入しても、水蒸気はノズルホルダーの内部を流通せず、該ホルダー内に充満するため、水蒸気の凝縮が起こりやすくなり、ノズルホルダーの昇温に長時間を要することになる。
前記ノズルプレート16の板厚は0.5〜1mmが好ましい。0.5mmより小さいと水蒸気圧に耐え得るに十分な強度が得にくく、1mmを越えると微細なノズル孔16aの高精度な加工が難しい。このノズル孔16aの形成加工には、放電加工やレーザ加工が採用される。また、ノズル孔16aの水蒸気噴出口径が0.05mmより小さいとその加工が困難であるばかりでなく、目詰まりを起こしやすくなり、1mmを越えると水蒸気噴出時に所要の噴出力が得にくくなる。ノズル間のピッチは0.5〜3mmであれば、繊維ウェブの構成繊維間で十分な交絡が得られる。
図8は、本発明に係る交絡不織布の製造装置に適用される加圧水蒸気噴出ノズル10の第2構造例を示している。この第2構造例と上述の第1構造例との間で異なるところは、ノズルホルダー11の切除面11aに溶接により固着された第1ノズルプレート支持部材15aの構造にある。この第2構造例によれば、前記第1ノズルプレート支持部材15aから千鳥状に配列された貫通孔15a″が排除され、上記凹陥部15a' をそのままノズルホルダー11の切除面11aに形成されたスリット状開口11bに連通させている。これは、高温高圧の水蒸気にあっては、ノズルホルダー11内の水蒸気圧が安定状態にあると、その長さ方向で圧力分布に殆ど変動がないことと、前記貫通孔15a″の存在により反対に水蒸気流が乱されることによる。また、第1ノズルプレート支持部材15aから複数の貫通孔15a″を排除するため、構造が簡略化され、その加工も簡単になる。
図9は、上記加圧水蒸気噴出ノズル10の第3構造例を示している。この第3構造例と上述の第1構造例との間で異なるところは、上記ノズルホルダー11の周囲を、下面を開口させた円筒状ジャケット22で被包し、その開口端部を上記第1ノズルプレート支持部材15aに溶接により固設している点にある。この円筒状ジャケット22内に水蒸気や熱媒等の加熱媒体を供給し加熱することにより外気による冷却作用でノズルホルダー11内部で水蒸気の部分的な凝縮が発生することを防止できる。円筒状ジャケット22に代えて電熱式のヒーター等で加熱することも有効である。
図10は、上記加圧水蒸気噴出ノズル10の第4構造例を示している。この第4構造例と上記第3構造例との間で異なるところは、上記第1構造例と第2構造例との相違点と同様に、ノズルホルダー11の切除面11aに溶接により固着された第1ノズルプレート支持部材15aの構造にある。この第4構造例によれば、前記第3構造例における前記第1ノズルプレート支持部材15aから千鳥状に配列された貫通孔15a″を排除し、上記凹陥部15a' をそのままノズルホルダー11の切除面11aに形成されたスリット状開口11bに連通させている。その機能は、第2構造例における機能に加えて、更に第3構造例の上記機能を有している。
以上の実施形態では、全てノズルプレート16に形成される複数のノズル孔16aが一列に並んで配された例を挙げているが、本発明ではノズルプレート16に形成される複数のノズル孔16aを、図11(a)(b)に示すように2以上の複数列に配することもできる。このようにノズル孔16aを、例えば二列に並べて配するときは、列間に配されるノズル孔16aを1/2ピッチずらして千鳥状に配するようにすることが好ましい。千鳥状にノズル孔16aを配した場合には、単列である場合と比較して同一列上のノズル孔16a間のピッチを長くとっても、トータルとして実質的にピッチが短くなり、加圧水蒸気噴出ノズル10から噴出する加圧水蒸気が移送される繊維ウェブの幅方向に万遍なく付与されるようになり、モアレ状の模様もつきにくくなる。
図12〜図16は、本発明に係る交絡不織布の製造装置に適用される加圧水蒸気噴出ノズルノ他の実施形態を示している。この実施形態において、上述の第1〜第4構造例からなる実施形態と異なるところは、ノズル部材23が上記実施形態のごとく第1及び第2ノズルプレート支持部材15a,15bの分割片から構成されずに、単一の部材から構成されており、同ノズル部材23に直接ノズル孔26を形成している点にある。そのため、上述の実施形態のごとく別体としてのノズルプレート16をも不要としている。
この実施形態による前記ノズル部材23の上面には、上記ノズルホルダー11の下面中央に形成された長手方向に延びるスリット状開口11bに連通する船形の凹陥溝部24と、同凹陥溝部24の船底部に沿って形成された矩形断面をもつ溝部25と、同矩形断面溝部25の長さ方向に沿って所定ピッチをもって形成された複数の逆円錐台孔26aと、各逆円錐台孔26aの下端に連続して形成された円筒孔26bとを備えている。前記逆円錐台孔26a及び円筒孔26bが、この実施形態におけるノズル孔26を構成する。更に、前記ノズル部材の外観形状は、正面視では細長い矩形状とされ、側面視では下面が下方に突出する湾曲形状を有している(図14参照)。
このように、本実施形態によるノズル部材23が単一部材により構成され、上記実施形態のごとくノズル部材15がノズルプレート16と一体に構成されるとともに、同ノズル部材15も第1及び第2のノズルプレート支持部材15a,15bに分割されていないため、部品点数が低減されるばかりでなく、その組付作業の煩雑性が排除される。特に、上記第1実施形態では、ノズル孔16aはノズルプレート16に形成されており、繊維ウェブとの対向面は直接ノズル孔16aの水蒸気噴出側開口ではなく、第2ノズルプレート支持部材15bに形成されたスリット状開口15b' を介しているが、本実施形態ではノズル孔26を直接繊維ウェブに対向させることができるため、ノズル孔26の水蒸気噴出開口端と繊維ウェブとの間隙を任意に設定でき、より効率的な繊維交絡を実現させることができる。
また、本実施形態によれば、上記船形の凹陥溝部24と同凹陥溝部24の船底部に沿って形成された矩形断面をもつ溝部25とを同じノズル部材23に形成するため、水蒸気の圧力低下が少なく、更にはノズル部材自体の側面視形態を下面が下方に突出する湾曲形状(図14参照)としているため、繊維ウェブの走行時に繊維ウェブとの接触領域を少なくでき、繊維ウェブの走行がより円滑化される。また、この実施形態にあっても、上記第1実施形態と同様に、前記円筒孔26bの高さと内径との比の値を1〜2に設定することが望ましく、同円筒孔26bの径は0.1〜1mm、同ノズル孔26間のピッチを0.5〜3mmに設定している。
図17及び図18は、これらの加圧水蒸気噴出ノズル10が好適に適用された本発明に係る製造装置による不織布製造工程の第1実施形態を概要で示している。前記加圧水蒸気噴出ノズル10の下方には、所定の間隔をおいてエンドレスベルト30が配されている。このエンドレスベルト30は前記加圧水蒸気噴出ノズル10を横切るようにして一方向に回動する。そのため、同エンドレスベルト30の両端反転部は、図示せぬ駆動モータにより駆動される駆動ロール31及び従動ロール32により駆動支持されるとともに、下方においてテンションローラ33にて支持し、エンドレスベルト30に適切な張力を与えている。このエンドレスベルト30は、例えば合成樹脂製の太い線条を使って粗目に織り込まれたメッシュ状の織物から構成される。
そのメッシュ度は任意に設定できる。また、前記加圧水蒸気噴出ノズル10とエンドレスベルト30を移送される繊維ウェブとの間隔は、繊維ウェブの繊維密度やその厚さによって0〜30mm以下に設定する。30mmを越えるものでは噴出水蒸気流の温度と勢いが低下する。前記加圧水蒸気噴出ノズル10に導入される水蒸気圧は、繊維ウェブの構成繊維の材質や繊維密度に基づいて、0.1〜2MPaとすることが望ましく、蒸気噴出ノズルから噴出される水蒸気を過熱水蒸気とすれば、ノズル孔16aから噴出する過熱水蒸気が断熱膨張による温度低下を起こしても、霧状の水蒸気とはならず霧散することもなくなる。
前記加圧水蒸気噴出ノズル10の設置部位に対応する前記エンドレスベルト30を挟んで下方にはサクション手段が配されている。本実施形態では、同サクション手段はサクションボックス40と、同サクションボックス40にセパレータタンク41を介して配管により連結された真空ポンプ42と、同真空ポンプ42の排出側に連結されたミストセパレータ43とから構成される。ここで、前記セパレータタンク41はサクションボックス40により吸引される水蒸気を気液に分離するための気液分離タンクであり、前記ミストセパレータ43は真空ポンプ42から排出される水蒸気中の異物や有害ガス或いは液体などを水蒸気から除去して、清浄な水蒸気(気体)を外部に放出するとともに、真空ポンプから発生する騒音を低減化するサイレンサーとしての機能も有する。
上記加圧水蒸気噴出ノズル10は既述した図1〜図16に示すようなノズル構造を備えており、その水蒸気導入側端部には加圧水蒸気供給源S1から供給される高圧の水蒸気が水蒸気導入側主管路(c1)を通して導入される。この水蒸気導入側主管路(c1)では、水蒸気供給源S1から送られる水蒸気を一旦水蒸気貯留部51に導き、その底部に水蒸気中に含まれるドレンを貯留して、これを第1のトラップ管路57を介して図示せぬ回収タンクに回収している。水蒸気貯留部51に導入された水蒸気は圧力制御バルブ52及び精密フィルター53を介して加熱ヒーター54により加熱されて過熱水蒸気となり、加圧水蒸気噴出ノズル10に送り込まれる。
本実施形態にあっては、図17及び図18に示すように前記加熱ヒーター54と加圧水蒸気噴出ノズル10の水蒸気導入側端部との間に、温度検出器WIと圧力検出器PIとが配されている。前記水蒸気導入側主管路(c1)は加熱ヒーター54の設置部位から分岐する水蒸気補充管路(c2)を有しており、この水蒸気補充管路(c2)は加圧水蒸気供給源S2と接続されている。この水蒸気補充管路(c2)の途中には、前記加熱ヒーター54からの温度検出信号を受けて作動する第1の開閉バルブ55が介装され、前記温度検出器WIにより検出される水蒸気温度が下限の温度より低下すると前記開閉バルブ55を開き新たな水蒸気を水蒸気導入側主管路(c1)に補給して過熱水蒸気温度を所定の温度範囲まで上昇させる。前記過熱水蒸気温度が所定の温度となるように前記開閉バルブ55の開度を調節し補給水蒸気量を調整する。
上記のようなシステムにより対象とする水蒸気の温度を所定の温度範囲に制御することが可能となる。また、前記圧力検出器PIは上記精密フィルター53の上流側に配された圧力制御バルブ52に接続されており、水蒸気導入側主管路(c1)の水蒸気圧を一定に維持するように調整する。
一方、加圧水蒸気噴出ノズル10の水蒸気排出側端部には第2の温度検出器TIが配され、水蒸気排出側端部は水蒸気排出管路(c3)と接続されている。同水蒸気排出管路(c3)には、前記第2の温度検出器TIに接続されて、同温度検出器TIにより検出された水蒸気温度が設定温度に達すると閉鎖する第2の開閉バルブ56が介装されている。また、前記第2の開閉バルブ56の下流側から第2のトラップ管路57が分岐しており、前記第2の開閉バルブ56が閉まって水蒸気排出管路(c3)が閉鎖されたときでも、加圧水蒸気噴出ノズル10のノズルホルダー11内部に発生するドレンを常に図示せぬ回収タンクに排出するようにしている。
更に本実施形態では、図18においてノズルホルダー11の加圧水蒸気導入側端部にあって、その底面に水蒸気凝縮液の排出口が形成されており、その排出口はドレン管路(c4)と第3開閉バルブ62を介して接続されている。このとき、前記加圧水蒸気噴出ノズル10は、その加圧水蒸気導入側端部を基端部として上記水蒸気排出管路(c3)の端部を上方に僅かに持ち上げ、加圧水蒸気噴出ノズル10を傾斜させておく。ノズルホルダー11に導入される加圧水蒸気は加圧水蒸気噴出ノズル10の稼働中にどうしても凝縮して液化する。既述したとおり、ノズルホルダー11の底面側開口には第1ノズルプレート支持部材15aが嵌め込まれるようにして固着される。そのためノズルホルダー11の底面と第1ノズルプレート支持部材15aとの間には、同支持部材15aの上面が高くなるように段差が作られており、通常はノズルホルダー11の内部に生成される凝縮液(水)がノズルプレート16に達することはないが、凝縮液の量が増加すると前記段差を越えてノズルプレート16に流れ込まないとは限らなくなる。その結果、加圧水蒸気の噴出が円滑になされなくなる。
上述のように、ノズルホルダー11の加圧水蒸気導入側端部の底面に蒸気凝縮液の排出口を形成するとともに第3の開閉バルブ62を介してドレン管路(c4)と接続しておけば、必要に応じて第3の開閉バルブ62を開けて、ノズルホルダー11の底面に溜まった凝縮液を外部に排出することができる。このとき、上述のようにノズルホルダー11の加圧水蒸気導入側端部を水蒸気排出管路(c3)の端部よりも下方に僅かに低くなるように設置しておけば、ノズルホルダー11の底面に溜まった凝縮液は自動的に加圧水蒸気導入側端部の凝縮液の排出口へと集まるため、その排出が容易になる。なお、凝縮液をノズルホルダー11の底面側に集めて円滑に加圧水蒸気導入側端部に流れるようにするには、同ノズルホルダー11の底面に長手方向に沿った凹溝を形成しておくことが好ましい。
更に、本実施形態にあっては、上記加圧水蒸気噴出ノズル10の繊維ウェブ走行方向の上流側に、図示せぬ繊維ウェブの表面に向けて水を付与する水噴射パイプ58が設置されている。この水噴射パイプ58と繊維ウェブとの間に、前記水噴射パイプ58から噴射する水を繊維ウェブ表面に案内する案内板59が配されており、水噴射パイプ58から噴射される水を直接ウェブ表面に付与せずに、前記案内板59を介して水流にして流下させるようにしている。この水噴射パイプ58は、本発明における交絡を容易化するための前処理手段に相当し、加圧水蒸気噴出ノズル10からの加圧水蒸気による打撃を受ける前に、水を付与して繊維ウェブの見かけ上の体積を収縮させそれによりウェブ内の繊維間相互の距離を短縮化し加圧水蒸気噴出ノズル10によるウェブ内の繊維相互の交絡を容易化することが出来る。前記案内板59の設置部位に対応する前記エンドレスベルト30の下方にも第2のサクションボックス45が設置されており、このサクションボックス45も気液分離タンク46を介して上記真空ポンプ42に接続されている。
上記セパレータタンク41の天板部の排気口が開閉バルブ47を介して前記気液分離タンク46と上記真空ポンプ42とを連結する吸引管路(c5)に接続され、同セパレータタンク41の底部は流体ポンプ48を介して、上記水噴射パイプ58と水供給源WAとの接続管路(c6)に合流させている。また、このセパレータタンク41の上限水位部と下限水位部との間に水位検出器49が配され、同セパレータタンク41の水位が上限を越え又は下限を下回ると、その信号を送って図示せぬ制御装置の指令により前記流体ポンプ48の作動を停止させるようにしている。
また、本実施形態では前記加圧水蒸気噴出ノズル10及び水噴射パイプ58の設置部を被包するようにして開閉蓋60が設置されている。この開閉蓋60の天板部は吸引ポンプ61が接続されており、同吸引ポンプ61により加圧水蒸気噴出ノズル10及び水噴射パイプ58の設置部で発生する霧状の水蒸気を常時吸引して外部に放出するようにしている。なお、本実施形態にあって図示を省略したが、当然に加圧水蒸気噴出ノズル10とその水蒸気導入配管や水蒸気排出管などは、水蒸気噴出ノズル孔を除きアルミ箔付きのガラス繊維マットなどの断熱材で被覆している。
以上のごとく構成された本実施形態による不織布の製造装置によれば、稼働に先立って、先ず上記加圧水蒸気噴出ノズル10の水蒸気排出管路(c3)の第2の開閉バルブ56を開けて水蒸気導入側主管路(c1)から高圧の過熱水蒸気を導入すると、新鮮な過熱水蒸気が加圧水蒸気噴出ノズル10のノズルホルダー11の内部を、その導入側開口から排出側開口へと流れ、ノズルホルダー11を所要の過熱温度まで速やかに昇温させる。このとき、ノズルホルダー11の水蒸気排出側端部に設置された温度検出器TIによりその温度を検出しており、同検出温度が所要の温度に達すると上記第2の開閉バルブ56の開度を調節する。この開閉バルブ56の開度を調節すると同時に、エンドレスベルト30を駆動して、その回動を開始する。
エンドレスベルト30の回動により、同ベルト上を移送される図示せぬ繊維ウェブの表面には、先ず水噴射パイプ58から噴射される水を案内板59を介して水が付与される。このときの水量は、繊維ウェブ表面の繊維を濡らして、その形態を安定化させるだけで十分なため、少量で十分であり、またその水の付与手段としては水の流下によらず、霧状の水を噴霧するだけでもよい。なお、繊維ウェブを構成する繊維の材質によっては、容易に交絡する場合もありその場合には予め交絡を容易化するための手段を講じることはない。一方、繊維ウェブを構成する繊維の材質によっては、水の付与だけでは交絡を容易化することが困難な場合もある。そんなときは、上記水付与に代えて既述した特許文献5に開示されているように従来と同様の高圧水流を噴射してもよいが、この場合にもその水量は必ずしも多量でなく少量であってもよい。
表面に水が付与された繊維ウェブの表面には、次いで上記加圧水蒸気噴出ノズル10の各ノズル孔16aから噴出する均等な圧力と温度をもつ柱状又は集束流の過熱水蒸気が付与され、その強力な過熱水蒸気流がウェブ内へと浸入し、周辺繊維を交絡させながら同時に熱融着を行いながらウェブを貫通して水蒸気による交絡繊維不織布が連続して製造される。このとき、水蒸気排出管路(c3)に設置された第2の開閉バルブ56は閉じられた状態にあり、加圧水蒸気噴出ノズル10のノズルホルダー11の内部にはドレンが生じるが、このドレンは、前記第2の開閉バルブ56の上流側から分岐する第2のトラップ管路57を介して常に系外に設置された回収タンクに回収される。
その結果、同ノズル孔16aから噴出される過熱水蒸気は間欠的に噴出することなく安定して連続で噴出するようになる。このように、走行する繊維ウェブの表面に安定した過熱水蒸気が連続して噴出されるため、ウェブ全体に均等な交絡がなされるようになり、所要の強度を備えた極めて高品質な不織布が製造される。
図19は、本発明に係る不織布の製造装置による不織布の製造工程の第2実施形態の概要を示している。この実施形態において、上記第1実施形態と異なるところは、加圧水蒸気噴出ノズル10の上流側に配設された交絡を容易化する手段を排除するとともに、本発明における繊維ウェブ担持移送手段である上記エンドレスベルト30のウェブ移送面に対向させて、同エンドレスベルト30と同一方向に回動する本発明の繊維ウェブ押圧移送手段である第2のエンドレスベルト34を配設し、第1及び第2のエンドレスベルト30,34をもって図示せぬ繊維ウェブを挟持した状態で移送し、加圧水蒸気噴出ノズル10から噴出する過熱水蒸気を、前記第2のエンドレスベルト34を介して繊維ウェブの上面から下方のエンドレスベルト30に向けている点である。
このように、2枚のエンドレスベルト30及び34をもって繊維ウェブを挟持しながら、ウェブ表面に過熱水蒸気を付与するようにすると、上記第1実施形態のように加圧水蒸気噴出ノズル10による過熱水蒸気の付与に先立って交絡を容易化するための手段を講じる必要がなくなるばかりでなく、加圧水蒸気噴出ノズル10からの過熱水蒸気の噴出による打撃によってもウェブ形態の崩れがなく、その結果、加圧水蒸気噴出ノズル10から噴出される過熱水蒸気の圧力を更に高めることも可能となって、高圧で噴出する過熱水蒸気流が繊維ウェブを確実に貫通することができるようになる。この実施形態にあっては、繊維ウェブの上面に対向する上記第2エンドレスベルト34の空隙率(メッシュ度)は下方のエンドレスベルト40のそれよりも粗く設定しているが、必ずしも粗くせず同等の空隙率に設定することもできる。
図20は、本発明に係る不織布の製造装置による製造工程の第3実施形態の概要を示している。この実施形態において、前述の第2実施形態と異なるところは、加圧水蒸気噴出ノズル10とサクションボックス40との配設位置を逆転させている点にある。すなわち、サクションボックス40を、上方に配された第2エンドレスベルト34のウェブ走行側の裏面に向けて配設するとともに、加圧水蒸気噴出ノズル10のノズル孔16aを、下方に配されたエンドレスベルト30のウェブ走行側の裏面に向けて配設して、エンドレスベルト30を通して同ベルト30と第2エンドレスベルト34との間で挟持しながら走行する図示せぬ繊維ウェブの下面に高圧の過熱水蒸気を噴出させている。
このように加圧水蒸気噴出ノズル10をエンドレスベルト30の下面に配し、繊維ウェブに下方から高圧の過熱水蒸気を噴出させると、同加圧蒸気噴出ノズル10のノズルホルダー11に発生するドレンがノズルホルダー11の下面側に集まり、上面に配されたノズル孔16aからは常に高圧の過熱水蒸気のみが噴出されるため、上記第2実施形態の機能に加えて、ノズル孔16aからは繊維ウェブに対して過熱水蒸気を間欠的ではなく連続して噴出させることができ、更に高品質の水蒸気による交絡繊維不織布が製造される。この実施形態では、当然に下方に配されるエンドレスベルト30のメッシュを粗くしている。
図21は、本発明に係る不織布の製造装置による不織布の製造工程の第4実施形態の概要を示している。この実施形態によれば、上記加圧水蒸気噴出ノズル10と同ノズル10に対向して配されるサクションボックス40とを一組としたとき、その複数組(図示例では二組)が繊維ウェブの移送方向に配されており、しかも各組における加圧水蒸気噴出ノズル10及びサクションボックス40の配置を互いに上下逆転させている。すなわち、第一組目の加圧水蒸気噴出ノズル10のノズル孔16aを、繊維ウェブの上面を押圧しながら一緒に走行する第2エンドレスベルト34の上面に向けて加圧蒸気噴出ノズル10を配設するとともに、サクションボックス40の吸引開口を繊維ウェブを下方から担持して繊維ウェブを移送する第1エンドレスベルト30の下面に向けてサクションボックス40を配設している。一方、第二組目の加圧水蒸気噴出ノズル10は、そのノズル孔16aを繊維ウェブを下方から担持して移送する第1エンドレスベルト30の下面に向けて配設されるとともに、サクションボックス40は、その吸引開口を繊維ウェブを上方から押圧して一緒に走行する第2エンドレスベルト34の上面に向けて配設している。
こうして、第1及び第2のエンドレスベルト30,34によって挟持されて移送される繊維ウェブに対して、上面と下面とに向けて交互に加圧水蒸気噴出ノズル10から高圧の過熱水蒸気を噴出させると、繊維ウェブの表裏両面に対して均等に高圧の過熱水蒸気が作用することになり、製造された不織布の表裏面において構成繊維が均等に交絡が進み、不織布としての形態安定性が確保されやすくなり、しかも外観的にも表裏の区別がなく商品価値が向上する。
図22は、本発明に係る不織布の製造装置による製造工程における最も好適な第4実施形態の要部を概要で示している。図中の符号23は図11〜16に示した高圧水蒸気噴出ノズルのノズル部材を示し、同ノズル部材23の下面に接近させて繊維ウェブ押圧移送手段であるエンドレスベルト34を配し、繊維ウェブ担持移送手段である第1のエンドレスベルト30に担持されて移送されてくる繊維ウェブWを前記エンドレスベルト34によって挟持しながら協働して移送し、その挟持移送の間に前記ノズル部材23のノズル孔26を介して高圧の過熱水蒸気を繊維ウェブ表面に噴出させる。前記第1のエンドレスベルト30の下面に近接させて吸引手段であるサクションボックス40が配されている。
この実施形態では、前記サクションボックス40の吸引開口はノズル部材23のノズル孔26に対向する位置に配され、その形状は周辺の気体の吸引を可能な限り回避すべくスリット状とされている。このスリット開孔の開口幅は略10mm程度が好適であり、その吸引力も通常の工場内で使われる換気扇の排気能力、すなわち300Pa程度で十分であり、これより大きいと繊維ウェブの構成繊維に配向性を与えやすく、それより小さいと吸引力不足となる。勿論、この吸引力は繊維ウェブの厚さ、密度や、ノズル部材23から噴出するときの水蒸気圧によっても所要の範囲で調整することが必要である。
また、この実施形態ではノズル部材23と第2エンドレスベルト34との間隙、第1エンドレスベルト30とサクションボックス40との間の間隙を維持すべく、第1エンドレスベルト30の下面を支持して案内する複数の支持回転ロール35aと第2エンドレスベルト34の上面位置を規制して案内する複数の規制案内ロール35bとを設けている。これらの支持回転ロール35a及び規制案内ロール35bを設けることにより、第1及び第2エンドレスベルト30,34をもって適切な挟持力をもって繊維ウェブWを挟持移送することが可能となるばかりでなく、各エンドレスベルト30,34とノズル部材23及びサクションボックス40との摺接を回避すると同時に、その対向間隙を微小に維持することが可能となる。なお、これらの支持回転ロール35a及び規制案内ロール35bを公知の上下位置調整手段を使ってそれぞれ調整可能にすることもできる。
図23は、本発明に係る不織布の製造装置による製造工程の第5実施形態の概要を示している。この実施形態では繊維ウェブWの担持移送手段として多孔の回転ドラム36を採用している。繊維ウェブ押圧移送手段としては、上記実施形態と同様に多孔のエンドレスベルト34が使われる。
前記エンドレスベルト34は、下方に配された回転ドラム36の所要の中心角領域にある周面を掛け回されるようにして、回転ドラム36の上方に配される。このとき、エンドレスベルト34と回転ドラム36は同期して逆方向に駆動回転される。前記エンドレスベルト34と回転ドラム36との間には繊維ウェブWがエンドレスベルト37や図示せぬガイドプレート或いはガイドロールを介して導入され、エンドレスベルト34と回転ドラム36との間にて繊維ウェブWが挟持されて前記中心角に相当する回転ドラム36の周面を周回しながら排出側へと送り出される。
一方、上記エンドレスベルト34及び回転ドラム36の間にて挟持移送される繊維ウェブWには、エンドレスベルト34の内側に設置された上記加圧水蒸気噴出ノズル10から噴出される高圧高温の水蒸気が侵入して、同繊維ウェブWの構成繊維を交絡させながら繊維ウェブWを貫通して、回転ドラム36の内部に設置されたサクションボックス38を介して外部へと放出される。このサクションボックス38は、その吸引口38aを繊維ウェブWの幅寸法に等しく且つ幅方向に長いスリット状に形成され、効率的な吸引を行っている。前記吸引口38aの幅寸法は、既述した第4実施形態と同様に、10mm程度であることが好ましいが、繊維ウェブの厚さや密度あるいはその材質などによって、ある程度の変更が可能である。サクションボックス38の吸引口38aは加圧水蒸気噴出ノズル10のノズル孔16a,26に対向する位置であって、回転ドラム36の内壁面に近接して固設されており、吸引された水蒸気は図示せぬスイベルジョイントを介して、回転ドラム36の回転軸の中心部に形成された放出路を通って外部へと放出される。
本実施形態にあっては、更にエンドレスベルト34の内部にあって上記加圧水蒸気噴出ノズル10の上流側に、加圧高温空気の噴出装置39が設置されると共に、前記回転ドラム36の内部に配された上記サクションボックス38の吸引口38aの上流側にあって、前記加圧高温空気の噴出装置39に対応する部位に第2の吸引口38bが形成されている。この吸引口38bの形状及び寸法は上記吸引口38aと概略同一であるが、そこから噴出される高温の加圧空気の噴出圧力は加圧水蒸気噴出ノズル10からの噴出圧力よりも小さく設定されてもよく、また図示せぬノズル孔の寸法も厳密に設定されなくともよい。
これは、繊維ウェブWに対する前記加圧空気の付与が、上記加圧水蒸気の付与と異なり、その水蒸気付与に先立って加圧空気を付与して繊維ウェブWの表面近くの構成繊維を交絡して、繊維ウェブWの表面形態を仮に確保することを目的としてなされるがためである。なお、例えば繊維ウェブWの構成繊維の一部に低融点の繊維を混在させておけば、前記加圧高温空気の噴出装置39を利用して、同低融点の繊維を溶融させて周辺の繊維同士に融着して、繊維ウェブWの表面形態を安定化させることもできる。なお、本実施形態に使われるノズル部材としては、図1〜図16に示したノズル部材をも採用することができ、またこの実施形態における加圧水蒸気噴出ノズル10に対する水蒸気回路に関しても図17及び図18に例示した回路を採用できる。
上記実施形態にあっては、上述の構造を備えた加圧水蒸気噴出ノズル10のノズル孔16aを単に繊維ウェブの担持移送手段及び/又は押圧移送手段に向けて配設しているが、本発明では更に前記加圧水蒸気噴出ノズル10の全体を積極的に加熱して高温を維持させることもできる。図24は、その一例を示している。同図によれば、ノズルホルダー11、ノズルプレート支持部材15及びノズルプレート16を備えた加圧水蒸気噴出ノズル10の全体を収容する加熱ボックス27が使われている。この加熱ボックス27は加圧水蒸気噴出ノズル10の全体を収容するとともに、加圧水蒸気噴出ノズル10のノズル孔16aが向けられる側を全面開口させた細長い直方体からなり、その天板部27aの中央部に熱風導入口27bが形成されている。この熱風導入口27bは外部の熱風供給管路28と接続されている。ファン28aによりフィルター28bを介して導入され、ヒーター28cによって加熱された高温の清浄化された空気が、前記熱風供給管路28を通って加熱ボックス27へと送り込まれて、加圧水蒸気噴出ノズル10の全体を熱風により積極的に加熱する。
このように、加圧水蒸気噴出ノズル10の全体を加熱することにより、ノズルホルダー11の内部に導入される加圧水蒸気や過熱水蒸気の温度低下が効果的に防止され、所要温度を維持して加圧水蒸気噴出ノズル10から繊維ウェブWに向けて噴出させることができる。その結果、効率的な繊維交絡が実現できるようになるばかりでなく、製造される不織布の形態も安定化し所望の強度と風合いが得られる。
また図示例によれば、加熱ボックス27の繊維ウェブ移送方向の前後壁面27c,27dにあって、その下端部にはシールロール29a,29bの周面が当接されている。このシールロール29a,29bはステンレス製の平滑ロール又は周面に樹脂等がコーティングされたロールであり、自由回転ロールであっても、繊維ウェブWの移送速度に同調させて駆動回転させるようにしてもよい。かかるシールロール29a,29bを配することにより、加熱ボックス27からの熱風の散逸を防ぐと同時に外気の浸入が防止でき、加圧水蒸気噴出ノズル10に対する加熱効率が向上する。
また、この例では更に繊維ウェブWの担持移送体である第1エンドレスベルト30に対向して配されたサクションボックス40の吸引開口部に対応する部分を開口させた外気遮蔽板63を、前記第1エンドレスベルト30とサクションボックス40との間に介装している。この外気遮蔽板63の繊維ウェブ移送方向の前後端部をそれぞれ下方に湾曲させて、繊維ウェブWの通過を円滑に安定するようにしている。このように、第1エンドレスベルト30とサクションボックス40との間に前記外気遮蔽板63を介装することにより、加圧水蒸気噴出ノズル10から噴出する加圧水蒸気又は過熱水蒸気の噴出領域に外気が浸入することを防ぐことができ、噴出された加圧水蒸気又は過熱水蒸気を、繊維ウェブWに効率的に付与することができる。その結果、製造される不織布の表面形態が更に均整化するとともに繊維交絡が緻密化する。
図25は、本発明装置の更なる変更例を示している。この変更例によれば、前記外気遮蔽板63と同様に、第1エンドレスベルト30とサクションボックス40との間に、水蒸気反射板64を介装している。この蒸気反射板64と前記外気遮蔽板63との異なる点は、前記外気遮蔽板63が中央にノズル孔16aの列方向に延びる開口を有している外は平滑面に形成されているのに対して、前記水蒸気反射板64は多孔の板材から構成されている。いま、加圧水蒸気噴出ノズル10から噴出される加圧蒸気又は過熱水蒸気が第2エンドレスベルト34、繊維ウェブW、第1エンドレスベルト30を貫通すると、その水蒸気の一部はサクションボックス40により吸引されるが、その大半は前記水蒸気反射板64にて反射して、再度繊維ウェブWの下面に作用して、その構成繊維及びその周辺の繊維をウェブ内へと押し込むと同時に交絡させる。その結果、繊維ウェブWの下面側の構成繊維の交絡割合が増加して、外観的にも強度的にも高品質化する。
更に本発明にあっては、図18に矢印で示すように、加圧水蒸気噴出ノズル10をその長手方向に微小に往復動させるか、或いは上記第1及び第2のエンドレスベルト30,34を繊維ウェブとともに繊維ウェブ移送路を横断する方向へ微小に往復動させることができる。その往復動のための駆動機構は、図示は省略するが、例えば従来から長網抄紙機などの網に横振動を与えるための公知の機構を採用することができる。また往復動(振動)の行程は往復動中心から左右に5mm程度が好ましく、その往復動回数は30〜300回/分の範囲で任意に調整される。このように、加圧水蒸気噴出ノズル10を、或いは第1及び第2のエンドレスベルト30,34を往復動させると、列状に配された複数のノズル孔から噴出する加圧水蒸気又は過熱水蒸気が繊維ウェブの表面を幅方向に満遍なく作用するようになり、表面にモアレ状の模様がつくことなく、より均整な繊維交絡と表面形態が得られる。
以上説明したとおり本発明装置によれば、簡単な構造を備えた加圧水蒸気噴出ノズルにより確実に高圧高温の水蒸気を繊維ウェブに貫通させることができるようになるばかりでなく、そのノズルホルダーの長手方向の両端を開口させ、特にその水蒸気排出側の開口を開閉バルブ56(図18)により開閉可能とするとともに、同開閉バルブの上流側にトラップ管路を分岐させる場合には、不織布の製造開始時には予め同開閉バルブを開けておき、その加圧水蒸気噴出ノズルに新鮮な加圧された水蒸気を導入して前記水蒸気排出側の開口から外部に排出すると、同加圧水蒸気によりノズルホルダーの内部温度が急激に昇温するため、不織布の製造開始時の準備時間が大幅に短縮できるようになる。
不織布の製造が開始されると前記開閉バルブ56が閉じられるが、ノズルホルダーの内部に発生するドレンは前記水蒸気排出側の開口からトラップ管路を通って常時回収タンクに回収されるため、連続して且つ安定して高品質の不織布が製造できるようになる。なお、上記実施形態にあっては、水蒸気として過熱水蒸気を使っているが、繊維ウェブの構成繊維の材質により通常の水蒸気を使うことも可能である。