JP4850550B2 - ポリ乳酸系多孔体 - Google Patents
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Description
生分解性プラスチック及び植物由来プラスチックの一つであるポリ乳酸系樹脂は、酸素透過度や透湿性が比較的高い部類に入り、一般的に、23℃65%RHにおける酸素透過率(OTR)が約15000cc・μm/(m2・day・atm)であるか、38℃90%RHにおける水蒸気透過率(WVTR)が約7500g・μm/(m2・day)である。しかし、例えば、ポリ乳酸系樹脂を紙にラミネートしてハンバーガーなどの包み紙としたときに、ハンバーガーが経時でぐちゃぐちゃになってしまい、紙単独あるいは紙に耐油剤を塗布したものに比較すると未だ透湿性が不十分であり、更なる透湿性の高いフィルムが待ち望まれていた。
(1)38℃90%RHにおける水蒸気透過率(WVTR)が10000g・μm/(m2・day)以上であり、見かけ密度が1.10g/cm3以下であり、配向度の絶対値が0.15以下であるポリ乳酸系多孔体。
(2)平均孔径が10−4〜103μmである(1)に記載のポリ乳酸系多孔体。
(3)結晶化度が30%以下であるポリ乳酸系成形体を、溶剤で処理することにより、38℃90%RHにおける水蒸気透過率(WVTR)が10000g・μm/(m2・day)以上であり、見かけ密度が1.10g/cm3以下であるポリ乳酸系多孔体を製造する方法。
(4)溶剤が、ポリ乳酸の非晶部への浸透度の異なる少なくとも2種以上の溶剤の混合溶剤である(3)に記載のポリ乳酸系多孔体を製造する方法。
(5)(1)または(2)に記載のポリ乳酸系多孔体の気体透過膜としての使用。
ポリ乳酸系樹脂の重量平均分子量は10000〜1000000の範囲が好ましい。分子量が10000以上では多孔体の機械的物性が優れる傾向にあり、1000000以下であると溶融粘度が通常の加工機械で物性の安定した多孔体が得られやすい範囲となる。
本発明における多孔体とは成形体内部に存在する多数の孔が成形体表面とつながっている、いわゆる連通孔構造となっており、気体等の物質が孔を通過することにより所望の優れた通気性の得られるものをいう。 所望の多孔体を得るためには、見かけ密度(嵩密度ともいう)が1.10g/cm3以下であることが好ましい。見かけ密度は多孔構造が発達するにつれて、低下する。後述する実施例と比較例を見比べてみると見かけ密度が約1.10g/cm3より低くなると水蒸気透過度が急激に増大する。このことより見かけ密度が約1.10g/cm3以下であると連通孔構造をとっていることが推察される。更に好ましい見かけ密度は1.00g/cm3以下、より好ましい見かけ密度は0.90g/cm3以下、最も好ましい見かけ密度は0.75g/cm3以下である。
空隙率=100−100×(多孔体の見かけ密度/材質の密度)(%) (1)
好ましい空隙率は15%以上であり、更に好ましくは20%以上であり、より好ましくは30%以上であり、最も好ましくは40%以上である。
水蒸気粒子径は約10−4μmであり、水滴粒子は102〜103μmであるので、後述する気体透過膜、特に防水透湿成形体とする場合の好ましい平均孔径は10−4〜102μmである。平均孔径の上限は、より好ましくは10μmであり、最も好ましくは1μmである。また、平均孔径の下限は、より好ましくは10−3μmであり、最も好ましくは10−2μmである。また、分離膜として使用する場合には針孔状貫通孔よりも連通孔が網目構造を取っている方が好ましい。好ましい孔の曲路率は1.1以上であり、更に好ましくは1.5以上であり、最も好ましくは2.0以上である。多孔体の形状は特に問わず、フィルム、シート、チューブ、中空糸などの形態とすることができる。多孔体を溶剤浸漬して得る場合、溶剤の浸透性の観点や、高通気性成形体として使用する場合には高通気性の観点より多孔体の厚みは薄い方が好ましく、好ましくは200μm以下、更に好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下、最も好ましくは25μm以下である。
38℃90%RHにおける水蒸気透過率(WVTR)が10000g・μm/(m2・day)以上であるポリ乳酸系多孔体を得る好ましい方法としては溶剤で処理する方法が挙げられる。水蒸気透過率、見かけ密度、空隙率は、樹脂の結晶化度及びポリ乳酸の非晶部分に対する侵食しやすさから溶剤を選択し、溶剤への浸漬条件などを調整することにより、所望の範囲にすることができる。
溶剤の種類としてはポリ乳酸の非晶部を侵食する、すなわち非晶部への浸透度が高い溶剤が好ましく、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン、トルエンなどの芳香族炭化水素、テトラヒドロフラン等のエーテル、酢酸エチル等のエステル等よりポリ乳酸の非晶部を侵食する溶剤が選択される。この際、ポリ乳酸成形体は高度に配向していないことが好ましい。溶剤処理前のポリ乳酸成形体の好ましい配向度は多孔体面内(スルービュー)、多孔体厚み面内(エッジビュー・エンドビュー)の配向度の絶対値が共に0.15以下であり、より好ましくは0.1以下であり、更に好ましくは0.05以下であり、最も好ましくは0.02以下である。また熱処理により結晶化させていないことも好ましい。溶剤処理前のポリ乳酸成形体の結晶化度は30%以下であることが必要であり、より好ましくは20%以下であり、更に好ましくは10%以下であり、最も好ましくは1%以下である。配向結晶や熱処理による結晶化が進行しているとこれらの溶剤に対し耐溶剤性が発現して、所望の多孔構造が得られにくくなることがある。
いずれの場合も、多孔体の内、樹脂に占める乳酸単位の割合が50重量%以上存在することが好ましい。50重量%未満では溶剤による多孔構造が効率的に得られないことがある。更に好ましくは70重量%以上であり、より好ましくは80重量%以上であり、最も好ましくは90重量%以上である。
本発明の多孔体には、上記の樹脂の他に、可塑剤、熱安定剤、酸化防止剤、および紫外線吸収剤、防曇剤、帯電防止剤、防錆剤などの公知の添加剤を、本発明の要件と特性を損なわない範囲で配合することが可能である。ポリ乳酸系樹脂に使用される可塑剤としてはアセチル化モノグリセライド系可塑剤(商品名:リケマールPL−019/理研ビタミン(株)製)が例示できる。
一例として紙に多孔ポリ乳酸系樹脂フィルムをラミネートしている多孔体を得る方法について説明する。押出機にてポリ乳酸系樹脂を溶融混練してTダイにて溶融状態でシート状に押し出した後、キャストロール上で紙にラミネートしながら冷却し、紙とポリ乳酸系樹脂フィルムのラミネートシートを得る。その後、溶剤処理槽に入れてあるアセトン等に数秒間浸漬あるいはポリ乳酸側表面に溶剤微粒子を吹き付けた後、溶剤をラミネートシートから揮散させると紙と多孔ポリ乳酸系樹脂フィルムの高通気性シートを得ることができる。また、別途用意してあるポリ乳酸系フィルムを接着剤を介してラミネーターにより、もしくは接着剤を介せずに熱ラミネーターにより紙とポリ乳酸系樹脂フィルムのラミネートシートを得た後に、同様にして溶剤槽に入れてあるアセトン等に数秒間浸漬した後、溶剤を揮散させると紙と多孔ポリ乳酸系樹脂フィルムの高通気性シートを得ることもできる。
本発明の多孔体は、孔径により、精密ろ過膜、限外ろ過膜、透析膜、逆浸透膜、気体分離膜、液体分離膜とすることができ、例えば電池用セパレータ等の電子材料用途、形態を微粒子状として吸油材や薬除放材として、また中空糸状として白血球や細菌等の各種分離膜等の用途など多岐に渡る。他に多孔体として期待できる性能として、軽量化、断熱、防音、光拡散機能が挙げられる。
(1)水蒸気透過率
JIS K 7129Bの方法により測定した。装置はMocon社製PermaTran−W200(製品名)を用い、測定条件は38℃90RH%とした。
装置の測定限界を超える場合は適宜アルミマスクで測定面積を減じて測定を行った。単位はg・μm/(m2・day)で示す。
(2)見かけ密度(嵩密度)
JIS K7222の方法に準拠して測定した。面積9cm3の多孔体を切り出し、マイクロメータにて厚みの平均値を求め、体積を算出し、多孔体の重量を測定し、重量を体積で割ることにより見かけ密度(g/cm3)を算出した。測定温度を23℃とした。
多孔体の配向度の測定は広角X線散乱測定装置(株式会社リガク社製RINT2500XG)を用いて行った。ターゲットはCuで、発生X線の波長は1.54オングストロームである。管電圧は40kV、管電流は100mAで実施した。検出器としては2次元検出器であるイメージングプレートを用いた。ポリ乳酸系樹脂のX線の散乱角(2θ)が約16.7度の(200)および(110)面の回折ピークの方位角方向の回折強度分布を測定し、得られた回折強度分布から配向度(fc)より算出した。多孔体面内での配向度を求める際にはX線を多孔体表面に垂直方向から入射し(スルービュー)、多孔体の厚み面内での配向度を求める際にはX線を多孔体表面に平行方向(エッジビュー、エンドビュー)から入射し計測を行う。多孔体がシート・フィルム状で薄く、エッジビュー、エンドビューで測定を行う際には入射X線ビーム径の2〜3倍以上の厚みになるようにシート・フィルムを重ね、その厚み方向(断面方向)からX線を入射する。X線透過厚みは試料ごとに最適な値にする。本測定では約1.5mmとした。なお、配向度算出方法は「成型加工におけるプラスチック材料(シグマ出版)p71−72」に示されているように、下記式(2)式(3)に従い計算を行った。式(3)中のI(φ)は式(4)により求めた。なお、方位角の方向余弦の2乗平均を算出するための計算基準方向(方位角0°方向)は通常ピーク部分が選択されることが多いが、ピークの出方により状況は異なり、本発明においては、算出された配向度が一番大きくなるように方位角の計算基準方向を選択し、その時の配向度を多孔体の配向度とした。
fc=(3<cos2φ>−1)/2 (2)
I(φ):(200)および(110)面の回折ピーク強度の方位角依存性
2θs:(200)および(110)面の回折ピークの始点
2θe:(200)および(110)面の回折ピークの終点
成形体の結晶化度の測定は、広角X線散乱測定装置(株式会社リガク社製RINT2500XG)を用いて行った。ターゲットはCuで、発生X線の波長は1.54オングストロームである。管電圧は40kV、管電流は100mAで実施し、Materials Data Inc.社製X線回折パターン解析ソフトJade Ver.6.0を用いて多重ピーク分離法による積分強度比より求めた。なお、半価幅が3°以上のものは非晶ピークとして取り扱った。
(5)通気抵抗(sec/100cc)
JIS P−8117準拠のガーレー式透気度計にて測定した。このときの圧力は0.01276atm、膜面積は6.424cm2、透過空気量は100ccである。測定温度は23℃である。
平均孔径は特許文献特開平11−130900号公報に記載されている透気度(通気抵抗)と透水度の測定により求める「気液法」により測定した孔径を平均孔径とした。すなわち以下に詳述する。
まず、透水度の測定については直径42mmのステンレス製の透液セルに、あらかじめアルコールに浸しておいた多孔体をセットし、該多孔体のアルコールを水で洗浄したあと約0.5atmの差圧で水を透過させ、120秒間経過した際の透水量(cm3)から、単位時間・単位圧力・単位面積当たりの透水量を計算し、これを透水度(cm3/(cm2 ・sec・atm))とした。測定温度は23℃である。
τ2=dεν/(3L・Ps・Rgas) (6)
ここで、Rgas は透気度(sec)から次式(7)を用いて求められる。
Rgas (m3/(m2・sec・Pa))=0.0001/透気度/0.0006424/(0.01276×101325) (7)
また、Rliq は透水度(cm3 /(cm2・sec・atm))から次式(8)を用いて求められる。
Rliq (m3/(m2・sec・Pa))=透水度/1000000/0.0001/101325 (8)
さらに、νは気体定数R(8.314)、絶対温度T(K)、円周率π、気体の平均分子量M(kg/mol)から次式(9)を用いて求められる。
ν2=8RT/πM (9)
シート・フィルムの全層厚みは、JIS K−7130に従い、マイクロメータを用いて測定した。
使用した樹脂あるいは原材料を表1に示す。
表1に記載の結晶性ポリ乳酸D4を溶融インフレーション法、即ち、サーキュラーダイ(リップクリアランス1.6mm)を用いて溶融状態でチューブ状に押出し、冷却リングより約25℃のエアーを吹き付けながらチューブ内にエアーを注入してバブルを形成し得られたフィルムをピンチロールへ導きチューブ状のフィルムをフラット状2枚のフィルム(各フィルムの厚み35μm)とし巻き取りロールで巻き取った。そのフィルムの広角X線散乱において明瞭な結晶に基づく散乱ピークは観測されず、実質的に非晶であることが確認された。また、この時点での配向度は0.028(スルービュー)、0.069(エッジビュー)であった。そのフィルムを温度を10〜20℃に保ったアセトン90wt%水溶液に20秒間浸漬して取り出し、室温で風乾した。更に室温で3日放置して十分に乾かした後に多孔フィルムの厚み・見かけ密度・水蒸気透過率を測定し、表2に示した。また、得られた多孔体の配向度は0.005(スルービュー)、0.017(エッジビュー)であった。
表2に記載の組成物を実施例1と同様の方法で35μmのフィルムを得た。それらのフィルムの広角X線散乱において明瞭な結晶に基づく散乱ピークは観測されず、実質的に非晶であることが確認された。更に、表2に記載のアセトン水溶液にて実施例1と同様な方法で溶剤処理を行い、多孔フィルムを得た。多孔フィルムを評価した結果を表2に示した。アセトンに耐溶剤性のあるPES添加により同じアセトン濃度でも見かけ密度が大きくなる傾向となることが分かる。なお、いずれのフィルムにおいても溶剤処理前の配向度や溶剤処理後の多孔体の配向度は実施例1と同等であった。
表2に記載の組成物を実施例1と同様にしてフィルムを得た後、そのフィルムを表2に記載の溶剤(アセトン90%水溶液)を約50ml/m2噴霧して取り出し室温で3日放置して十分に乾かした。多孔フィルムを得、実施例1と同様に評価した結果を表2に示した。
表1に記載の結晶性ポリ乳酸D4を溶融混練してTダイにて溶融状態でシート状に押し出した後、40℃に調節したキャストロールで冷却し、厚み150μmのシートを得た。そのフィルムの広角X線散乱において明瞭な結晶に基づく散乱ピークは観測されず、実質的に非晶であることが確認された。また、この時点での配向度は0.0063(スルービュー)、0.020(エッジビュー)であった。そのフィルムを温度を10〜20℃に保ったアセトン90wt%水溶液に20秒間浸漬して取り出し、室温で風乾した。更に室温で3日放置して十分に乾かした後に多孔フィルムの厚み・見かけ密度・水蒸気透過率を測定し、表2に示した。また、得られた多孔体の配向度は実施例1の多孔体と同等であった。
表1に記載の高結晶性ポリ乳酸D1を溶融混練してTダイにて溶融状態でシート状に押し出した後、40℃に調節したキャストロールで冷却し、厚み80μmのシートを得た。そのフィルムの広角X線散乱において明瞭な結晶に基づく散乱ピークは観測されず、実質的に非晶であることが確認された。また、この時点での配向度は実施例8と同等であった。そのフィルムを温度を10〜20℃に保ったアセトン95wt%水溶液に60秒間浸漬して取り出し、室温で風乾した。更に室温で3日放置して十分に乾かした後に多孔フィルムの厚み・見かけ密度・水蒸気透過率を測定し、表2に示した。また、得られた多孔体の配向度は実施例1の多孔体と同等であった。
実施例1での溶剤処理する前のフィルム(厚み35μm)を実施例1と同様に評価した結果を表2に示した。
表2に記載の組成物を実施例1と同様にして溶剤処理したフィルムを得、評価した結果を表2に示した。このものは見かけ密度が1.18g/cm3であり、ボイドの形成を示唆しているが、アセトン濃度が低いため、孔形成能が不足して、見かけ密度は本発明の範囲外となっており、本発明の多孔体と比較した場合、水蒸気透過率はたいへん低いものであった。
表2に記載の組成物を実施例1と同様にして溶剤処理したフィルムを得、評価した結果を表2に示した。但し、フィルムを得てから、溶剤処理するまで1ヶ月、常温で放置した。このものはポリ乳酸系樹脂に使用される可塑剤であるPL−019を添加したものである。通常可塑剤を添加すると気体透過率は上昇するが、このものは見かけ密度が1.15g/cm3であり、ボイドの形成を示唆しているが、溶剤処理前の結晶化度5%であり、ポリ乳酸の含有量が70%と低く、アセトン濃度も低いため見かけ密度は本発明の範囲外となっており、本発明の多孔体と比較した場合、水蒸気透過率はたいへん低いものであった。
実施例3の溶剤処理前のフィルムを更に4辺固定の状態で110℃10分間、アドバンテック社製定温温風乾燥機にて熱処理を行い、結晶化を十分に進行させ結晶化度40%とした上で、アセトン濃度を100%とした上で実施例1と同様に溶剤処理を行った。その結果、溶剤が浸透しにくくなり見かけ比重や水蒸気透過率は比較例1と同様であった。
Claims (5)
- 38℃90%RHにおける水蒸気透過率(WVTR)が10000g・μm/(m2・day)以上であり、見かけ密度が1.10g/cm3以下であり、配向度の絶対値が0.15以下であるポリ乳酸系多孔体。
- 平均孔径が10−4〜102μmである請求項1に記載のポリ乳酸系多孔体。
- 結晶化度が30%以下であるポリ乳酸系成形体を、溶剤で処理することにより、38℃90%RHにおける水蒸気透過率(WVTR)が10000g・μm/(m2・day)以上であり、見かけ密度が1.10g/cm3以下であるポリ乳酸系多孔体を製造する方法。
- 溶剤が、ポリ乳酸の非晶部への浸透度の異なる少なくとも2種以上の溶剤の混合溶剤である請求項3に記載のポリ乳酸系多孔体を製造する方法。
- 請求項1または2に記載のポリ乳酸系多孔体の気体透過膜としての使用。
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