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JP4853410B2 - ハイブリッド車両用動力伝達装置の制御装置 - Google Patents
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JP4853410B2 - ハイブリッド車両用動力伝達装置の制御装置 - Google Patents

ハイブリッド車両用動力伝達装置の制御装置 Download PDF

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Description

本発明は、ハイブリッド車両用動力伝達装置の制御装置に係り、車両の走行のための動力源として内燃機関であるエンジンと電動機とを備えたハイブリッド車両用動力伝達装置において、上記電動機による走行状態から上記エンジンによる走行状態に切り換わるときにそのエンジンを始動する技術に関するものである。
従来から、エンジンに連結された第1回転要素と、第1電動機に連結された第2回転要素と、駆動輪への動力伝達経路及び第2電動機に連結された第3回転要素とを含む差動機構と、該差動機構から上記駆動輪への動力伝達経路の一部を構成し自動変速機として機能する自動変速部とを備えたハイブリッド車両用動力伝達装置の制御装置が知られている。例えば、特許文献1のハイブリッド車両用動力伝達装置の制御装置がそれである。このハイブリッド車両用動力伝達装置の制御装置では、上記エンジンが始動される場合において上記自動変速部内の動力伝達経路が遮断され車両停止中である場合には、上記第1電動機及び第2電動機を同じ回転方向に回転させて上記エンジンの回転速度が引き上げられそのエンジンが始動された。
特開2005−264762号公報
前記エンジンを停止させた状態で前記第2電動機からの出力により走行する電動機走行時において、前記自動変速部の変速中にアクセルが大きく踏み込まれた場合など出来るだけ早い前記エンジンの始動が要求された場合には、そのエンジンの始動のためにその回転速度を上昇させることと上記自動変速部の変速動作とが並行して行われる。この場合、前記第1電動機及び第2電動機のトルク制御を上記自動変速部が非変速中である場合と同様に行っていたのでは、その自動変速部の非変速中はその自動変速部の変速動作を成立させるためその自動変速部の入力回転速度を上昇又は下降させる必要があるので、上記エンジンの回転速度を速やかに上昇させることができない場合があった。しかし、上記特許文献1のハイブリッド車両用動力伝達装置の制御装置は上記エンジンの始動のためにその回転速度を上昇させることと上記自動変速部の変速動作とが並行して行われることについて特に考慮されているものでは無かった。
本発明は、以上の事情を背景としてなされたものであり、その目的とするところは、車両の走行のための動力源としてエンジンと電動機とを備えたハイブリッド車両用動力伝達装置において、上記電動機による走行状態から上記エンジンによる走行状態に切り換わるときに、エンジン始動を速やかに行うことができる制御装置を提供することにある。
かかる目的を達成するために、請求項1に係る発明は、(a)内燃機関と駆動輪との間に連結された差動機構とその差動機構に動力伝達可能に連結された第1電動機とを有しその第1電動機の運転状態が制御されることによりその差動機構の差動状態が制御される電気式差動部と、動力伝達経路の一部を構成する変速部とを備えたハイブリッド車両用動力伝達装置の制御装置であって、(b)前記内燃機関を始動させるためその内燃機関の回転速度を上昇させる場合には、前記変速部の変速状態に応じて、前記内燃機関を駆動するための前記第1電動機の駆動力を制御し、(c)前記内燃機関を始動させるため前記変速部の変速中にその内燃機関の回転速度を上昇させる場合には、前記変速部の入力回転速度の単位時間当たりの変化幅の絶対値である入力回転速度変化勾配に基づいて、前記第1電動機の駆動力を制御することを特徴とする。
請求項に係る発明は、前記内燃機関を始動させるため前記変速部の変速中にその内燃機関の回転速度を上昇させる場合において、前記第1電動機の駆動力が制限される場合には、その駆動力が制限されない場合に対して前記変速部の変速制御を変更することを特徴とする。
請求項に係る発明は、前記内燃機関を始動させるため前記変速部の変速中にその内燃機関の回転速度を上昇させる場合において、その内燃機関の回転速度が、その内燃機関の回転から生じる振動が共振により増幅されるその内燃機関の回転速度範囲である共振周波数帯の範囲内にある間は、前記変速部が非変速中である場合に対して前記第1電動機の駆動力を変更することを特徴とする。
請求項に係る発明は、(a)前記ハイブリッド車両用動力伝達装置が、前記動力伝達経路に連結された第2電動機を備えており、(b)前記内燃機関を始動させるためその内燃機関の回転速度を上昇させる場合には、前記変速部の変速状態に応じて、前記第1電動機の駆動力に対する反力となる前記第2電動機の駆動力を制御することを特徴とする。
請求項に係る発明は、前記内燃機関を始動させるため前記変速部の変速中にその内燃機関の回転速度を上昇させる場合には、前記変速部の入力回転速度の単位時間当たりの変化幅の絶対値である入力回転速度変化勾配に基づいて、前記第2電動機の駆動力を制御することを特徴とする。
請求項に係る発明は、前記内燃機関を始動させるため前記変速部の変速中にその内燃機関の回転速度を上昇させる場合には、その変速部が非変速中である場合と比較して前記第2電動機の駆動力を大きくすることを特徴とする。
請求項に係る発明は、前記内燃機関を始動させるため前記変速部の変速中にその内燃機関の回転速度を上昇させる場合において、前記第2電動機の駆動力が制限される場合には、その駆動力が制限されない場合に対して前記変速部の変速制御を変更することを特徴とする。
請求項に係る発明は、前記内燃機関を始動させるため前記変速部の変速中にその内燃機関の回転速度を上昇させる場合において、その内燃機関の回転速度が、その内燃機関の回転から生じる振動が共振により増幅されるその内燃機関の回転速度範囲である共振周波数帯の範囲内にある間は、前記変速部が非変速中である場合に対して前記第2電動機の駆動力を変更することを特徴とする。
請求項1に係る発明によれば、前記内燃機関を始動させるためその内燃機関の回転速度を上昇させる場合には、前記変速部の変速状態に応じて、前記内燃機関を駆動するための前記第1電動機の駆動力が制御されるので、前記内燃機関の回転速度の上昇に対して上記変速部の変速動作が与える影響が軽減され、例えば、上記内燃機関が始動される場合には、上記変速部が変速中であってもその内燃機関の回転速度が速やかに上昇させられ、的確にその内燃機関を始動することが可能である。
また、上記内燃機関を始動させるため上記変速部の変速中にその内燃機関の回転速度を上昇させる場合には、上記変速部の入力回転速度の単位時間当たりの変化幅の絶対値である前記入力回転速度変化勾配に基づいて、前記第1電動機の駆動力が制御されるので、上記変速部の入力回転速度の変化が大きくなりそれに伴い、上記内燃機関の回転速度を上昇させるために必要とされる上記第1電動機の駆動力が増加しても、その内燃機関の回転速度が速やかに上昇させられ、的確にその内燃機関を始動することが可能である。
なお好適には、上記内燃機関を始動させるためその内燃機関の回転速度を上昇させる場合には、前記変速部の変速比の変化幅に基づいて、前記内燃機関を駆動するための前記第1電動機の駆動力が制御される。
また、好適には、上記入力回転速度変化勾配が大きいほど、上記第1電動機の駆動力が大きくなるように制御される。
請求項に係る発明によれば、上記内燃機関を始動させるため上記変速部の変速中にその内燃機関の回転速度を上昇させる場合において、上記第1電動機の駆動力が制限される場合には、その駆動力が制限されない場合に対して上記変速部の変速制御が変更されるので、その変速制御が変更されない場合と比較して、その変速部の入力回転速度の変化による上記内燃機関の回転速度の上昇に対する影響を軽減できる。
なお好適には、上記第1電動機の駆動力の制限が大きいほど、すなわちその第1電動機の出力可能な駆動力が低いほど、上記変速部の入力回転速度変化勾配が小さくなるように上記変速部の変速制御が変更される。
また好適には、上記第1電動機の駆動力の制限が大きいほど、すなわちその第1電動機の出力可能な駆動力が低いほど、上記変速部の変速時間が長くなるように上記変速部の変速制御が変更される。
また好適には、上記第1電動機の駆動力が制限される場合とは、その第1電動機の予め定められた駆動力が得られない場合である。
請求項に係る発明によれば、上記内燃機関を始動させるため上記変速部の変速中にその内燃機関の回転速度を上昇させる場合において、その内燃機関の回転速度が、その内燃機関の回転から生じる振動が共振により増幅されるその内燃機関の回転速度範囲である共振周波数帯の範囲内にある間は、上記変速部が非変速中である場合に対して前記第1電動機の駆動力が変更されるので、上記内燃機関の回転速度が速やかに上記共振周波数帯を通過するようにすることが可能であり、上記内燃機関の始動時に生じ得る振動によって快適性を損なう可能性を低減できる。
なお好適には、上記内燃機関の回転速度が上記共振周波数帯の範囲内にある間は、上記変速部が非変速中である場合に対して上記第1電動機の駆動力が大きくなるように変更される。
請求項に係る発明によれば、前記内燃機関を始動させるためその内燃機関の回転速度を上昇させる場合には、上記変速部の変速状態に応じて、上記第1電動機の駆動力に対する反力となる前記第2電動機の駆動力が制御されるので、前記内燃機関の回転抵抗が上記変速部の変速動作に与える影響を軽減することが可能であり、例えば上記内燃機関が始動される場合には、上記変速部が変速中であっても上記内燃機関の回転速度を速やかに上昇させ、的確にその内燃機関を始動することが可能である。
なお好適には、上記内燃機関を始動させるためその内燃機関の回転速度を上昇させる場合には、前記変速部の変速比の変化幅に基づいて、上記第1電動機の駆動力に対する反力となる前記第2電動機の駆動力が制御される。
請求項に係る発明によれば、上記内燃機関を始動させるため上記変速部の変速中にその内燃機関の回転速度を上昇させる場合には、上記変速部の前記入力回転速度変化勾配に基づいて前記第2電動機の駆動力が制御されるので、上記変速部の入力回転速度の変化が大きくなりそれに伴い、上記内燃機関の回転抵抗及び第1電動機の駆動力に対抗するために必要とされる上記第2電動機の駆動力が増加しても、上記内燃機関の回転抵抗が上記変速部の変速動作に与える影響を軽減することが可能であり、上記内燃機関の回転速度を速やかに上昇させ、的確にその内燃機関を始動することが可能である。
なお好適には、上記入力回転速度変化勾配が大きいほど、上記第2電動機の駆動力が大きくなるように制御される。
請求項に係る発明によれば、上記内燃機関を始動させるため上記変速部の変速中にその内燃機関の回転速度を上昇させる場合には、その変速部が非変速中である場合と比較して上記第2電動機の駆動力が大きくされるので、上記変速部の変速動作を成立させるためその変速部の入力回転速度を変化させる必要がある場合でも、上記内燃機関の回転抵抗が上記変速部の変速動作に与える影響を軽減することが可能であり、上記内燃機関の回転速度を速やかに上昇させ、的確にその内燃機関を始動することが可能である。
請求項に係る発明によれば、上記内燃機関を始動させるため上記変速部の変速中にその内燃機関の回転速度を上昇させる場合において、上記第2電動機の駆動力が制限される場合には、その駆動力が制限されない場合に対して上記変速部の変速制御が変更されるので、その変速制御が変更されない場合と比較して、その変速部の入力回転速度の変化による上記内燃機関の回転速度の上昇に対する影響を軽減できる。
なお好適には、上記第2電動機の駆動力の制限が大きいほど、すなわちその第2電動機の出力可能な駆動力が低いほど、上記変速部の入力回転速度変化勾配が小さくなるように上記変速部の変速制御が変更される。
また好適には、上記第2電動機の駆動力の制限が大きいほど、すなわちその第2電動機の出力可能な駆動力が低いほど、上記変速部の変速時間が長くなるように上記変速部の変速制御が変更される。
また好適には、上記第2電動機の駆動力が制限される場合とは、その第2電動機の予め定められた駆動力が得られない場合である。
請求項に係る発明によれば、上記内燃機関を始動させるため上記変速部の変速中にその内燃機関の回転速度を上昇させる場合において、その内燃機関の回転速度が前記共振周波数帯の範囲内にある間は、上記変速部が非変速中である場合に対して前記第2電動機の駆動力が変更されるので、上記内燃機関の回転速度が速やかに上記共振周波数帯を通過するようにすることが可能であり、上記内燃機関の始動時に生じ得る振動によって快適性を損なう可能性を低減できる。
なお好適には、上記内燃機関の回転速度が上記共振周波数帯の範囲内にある間は、上記変速部が非変速中である場合に対して上記第2電動機の駆動力が大きくなるように変更される。
また好適には、上記内燃機関を始動させるためその内燃機関の回転速度を上昇させる場合には、前記第1電動機が上記第2電動機と同じ方向に回転駆動させられ、それにより上記内燃機関がその第1電動機及び第2電動機と同じ方向に回転させられる。
また好適には、(a)前記ハイブリッド車両用動力伝達装置が、前記差動機構の差動を制限もしくは禁止できる差動制限装置を備えており、(b)上記内燃機関を始動させるためその内燃機関の回転速度を上昇させる場合には、上記差動制限装置によって上記差動機構の差動が制限もしくは禁止され、走行中に前記駆動輪から内燃機関側へ伝達される逆駆動力及び上記第2電動機の駆動力の何れか一方又は両方によって上記内燃機関の回転速度が上昇させられる。そのようにした場合には、前記第1電動機から出力させなくても上記内燃機関の回転速度を上昇させることができる。
以下、本発明の実施例を図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明が適用されるハイブリッド車両用動力伝達装置の一部を構成する変速機構10を説明する骨子図である。図1において、変速機構10は車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース12(以下、ケース12という)内において共通の軸心上に配設された入力回転部材としての入力軸14と、この入力軸14に直接に或いは図示しない脈動吸収ダンパー(振動減衰装置)などを介して間接に連結された無段変速部としての差動部11と、その差動部11と駆動輪34(図6参照)との間の動力伝達経路で伝達部材(伝動軸)18を介して直列に連結されている動力伝達部としての自動変速部20と、この自動変速部20に連結されている出力回転部材としての出力軸22とを直列に備えている。この変速機構10は、例えば車両において縦置きされるFR(フロントエンジン・リヤドライブ)型車両に好適に用いられるものであり、入力軸14に直接に或いは図示しない脈動吸収ダンパーを介して直接的に連結された走行用の駆動力源として例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であるエンジン8と一対の駆動輪34との間に設けられて、エンジン8からの動力を動力伝達経路の一部を構成する差動歯車装置(終減速機)32(図6参照)および一対の車軸等を順次介して一対の駆動輪34へ伝達する。
このように、本実施例の変速機構10においてはエンジン8と差動部11とは直結されている。この直結にはトルクコンバータやフルードカップリング等の流体式伝動装置を介することなく連結されているということであり、例えば上記脈動吸収ダンパーなどを介する連結はこの直結に含まれる。なお、変速機構10はその軸心に対して対称的に構成されているため、図1の骨子図においてはその下側が省略されている。以下の各実施例についても同様である。
第1電動機M1を利用して差動状態が制御されるという点で電気式差動部と言うことができる差動部11は、第1電動機M1と、入力軸14に入力されたエンジン8の出力を機械的に分配する機械的機構であってエンジン8の出力を第1電動機M1および伝達部材18に分配する差動機構としての動力分配機構16と、伝達部材18と一体的に回転するように作動的に連結されている第2電動機M2とを備えている。本実施例の第1電動機M1および第2電動機M2は発電機能をも有する所謂モータジェネレータであるが、第1電動機M1は反力を発生させるためのジェネレータ(発電)機能を少なくとも備え、第2電動機M2は走行用の駆動力源として駆動力を出力するためのモータ(電動機)機能を少なくとも備える。また、第1電動機M1と第2電動機M2にはそれぞれ、レゾルバなどの回転速度センサが設けられており、その回転速度及びその回転方向が検出可能になっている。
本発明の差動機構に対応する動力分配機構16は、例えば「0.418」程度の所定のギヤ比ρ0を有するシングルピニオン型の差動部遊星歯車装置24を主体として構成されている。この差動部遊星歯車装置24は、差動部サンギヤS0、差動部遊星歯車P0、その差動部遊星歯車P0を自転および公転可能に支持する差動部キャリヤCA0、差動部遊星歯車P0を介して差動部サンギヤS0と噛み合う差動部リングギヤR0を回転要素(要素)として備えている。差動部サンギヤS0の歯数をZS0、差動部リングギヤR0の歯数をZR0とすると、上記ギヤ比ρ0はZS0/ZR0である。
この動力分配機構16においては、差動部キャリヤCA0は入力軸14すなわちエンジン8に連結され、差動部サンギヤS0は第1電動機M1に連結され、差動部リングギヤR0は伝達部材18に連結されている。このように構成された動力分配機構16は、差動部遊星歯車装置24の3要素である差動部サンギヤS0、差動部キャリヤCA0、差動部リングギヤR0がそれぞれ相互に相対回転可能とされて差動作用が作動可能なすなわち差動作用が働く差動状態とされることから、エンジン8の出力が第1電動機M1と伝達部材18とに分配されるとともに、分配されたエンジン8の出力の一部で第1電動機M1から発生させられた電気エネルギで蓄電されたり第2電動機M2が回転駆動されるので、差動部11(動力分配機構16)は電気的な差動装置として機能させられて例えば差動部11は所謂無段変速状態(電気的CVT状態)とされて、エンジン8の所定回転に拘わらず伝達部材18の回転が連続的に変化させられる。すなわち、差動部11はその変速比γ0(入力軸14の回転速度NIN/伝達部材18の回転速度N18)が最小値γ0min から最大値γ0max まで連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能する。このように、動力分配機構16(差動部11)に動力伝達可能に連結された第1電動機M1、第2電動機M2、およびエンジン8の運転状態が制御されることにより、動力分配機構16の差動状態、すなわち入力軸14の回転速度と伝達部材18の回転速度の差動状態が制御される。
本発明の変速部に対応する自動変速部20は、差動部11から駆動輪34への動力伝達経路の一部を構成しており、シングルピニオン型の第1遊星歯車装置26、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置28、およびシングルピニオン型の第3遊星歯車装置30を備え、有段式の自動変速機として機能する遊星歯車式の多段変速機である。第1遊星歯車装置26は、第1サンギヤS1、第1遊星歯車P1、その第1遊星歯車P1を自転および公転可能に支持する第1キャリヤCA1、第1遊星歯車P1を介して第1サンギヤS1と噛み合う第1リングギヤR1を備えており、例えば「0.562」程度の所定のギヤ比ρ1を有している。第2遊星歯車装置28は、第2サンギヤS2、第2遊星歯車P2、その第2遊星歯車P2を自転および公転可能に支持する第2キャリヤCA2、第2遊星歯車P2を介して第2サンギヤS2と噛み合う第2リングギヤR2を備えており、例えば「0.425」程度の所定のギヤ比ρ2を有している。第3遊星歯車装置30は、第3サンギヤS3、第3遊星歯車P3、その第3遊星歯車P3を自転および公転可能に支持する第3キャリヤCA3、第3遊星歯車P3を介して第3サンギヤS3と噛み合う第3リングギヤR3を備えており、例えば「0.421」程度の所定のギヤ比ρ3を有している。第1サンギヤS1の歯数をZS1、第1リングギヤR1の歯数をZR1、第2サンギヤS2の歯数をZS2、第2リングギヤR2の歯数をZR2、第3サンギヤS3の歯数をZS3、第3リングギヤR3の歯数をZR3とすると、上記ギヤ比ρ1はZS1/ZR1、上記ギヤ比ρ2はZS2/ZR2、上記ギヤ比ρ3はZS3/ZR3である。
自動変速部20では、第1サンギヤS1と第2サンギヤS2とが一体的に連結されて第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第1キャリヤCA1は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第3リングギヤR3は第3ブレーキB3を介してケース12に選択的に連結され、第1リングギヤR1と第2キャリヤCA2と第3キャリヤCA3とが一体的に連結されて出力軸22に連結され、第2リングギヤR2と第3サンギヤS3とが一体的に連結されて第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されている。
このように、自動変速部20内と差動部11(伝達部材18)とは自動変速部20の変速段を成立させるために用いられる第1クラッチC1または第2クラッチC2を介して選択的に連結されている。言い換えれば、第1クラッチC1および第2クラッチC2は、伝達部材18と自動変速部20との間の動力伝達経路すなわち差動部11(伝達部材18)から駆動輪34への動力伝達経路を、その動力伝達経路の動力伝達を可能とする動力伝達可能状態と、その動力伝達経路の動力伝達を遮断する動力伝達遮断状態とに選択的に切り換える係合装置として機能している。つまり、第1クラッチC1および第2クラッチC2の少なくとの一方が係合されることで上記動力伝達経路が動力伝達可能状態とされ、或いは第1クラッチC1および第2クラッチC2が解放されることで上記動力伝達経路が動力伝達遮断状態とされる。
また、この自動変速部20は、解放側係合装置の解放と係合側係合装置の係合とによりクラッチツウクラッチ変速が実行されて各ギヤ段(変速段)が選択的に成立させられることにより、略等比的に変化する変速比γ(=伝達部材18の回転速度N18/出力軸22の回転速度NOUT)が各ギヤ段毎に得られる。例えば、図2の係合作動表に示されるように、第1クラッチC1および第3ブレーキB3の係合により変速比γ1が最大値例えば「3.357」程度である第1速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1および第2ブレーキB2の係合により変速比γ2が第1速ギヤ段よりも小さい値例えば「2.180」程度である第2速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1および第1ブレーキB1の係合により変速比γ3が第2速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.424」程度である第3速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1および第2クラッチC2の係合により変速比γ4が第3速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.000」程度である第4速ギヤ段が成立させられる。また、第2クラッチC2および第3ブレーキB3の係合により変速比γRが第1速ギヤ段と第2速ギヤ段との間の値例えば「3.209」程度である後進ギヤ段(後進変速段)が成立させられる。また、第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、および第3ブレーキB3の解放によりニュートラル「N」状態とされる。
前記第1クラッチC1、第2クラッチC2、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、および第3ブレーキB3(以下、特に区別しない場合はクラッチC、ブレーキBと表す)は、従来の車両用自動変速機においてよく用いられている係合要素としての油圧式摩擦係合装置であって、互いに重ねられた複数枚の摩擦板が油圧アクチュエータにより押圧される湿式多板型や、回転するドラムの外周面に巻き付けられた1本または2本のバンドの一端が油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキなどにより構成され、それが介挿されている両側の部材を選択的に連結するためのものである。
以上のように構成された変速機構10において、無段変速機として機能する差動部11と自動変速部20とで全体として無段変速機が構成される。また、差動部11の変速比を一定となるように制御することにより、差動部11と自動変速部20とで有段変速機と同等の状態を構成することが可能とされる。
具体的には、差動部11が無段変速機として機能し、且つ差動部11に直列の自動変速部20が有段変速機として機能することにより、自動変速部20の少なくとも1つの変速段Mに対して自動変速部20に入力される回転速度(以下、自動変速部20の入力回転速度)すなわち伝達部材18の回転速度(以下、伝達部材回転速度N18)が無段的に変化させられてその変速段Mにおいて無段的な変速比幅が得られる。したがって、変速機構10の総合変速比γT(=入力軸14の回転速度NIN/出力軸22の回転速度NOUT)が無段階に得られ、変速機構10において無段変速機が構成される。この変速機構10の総合変速比γTは、差動部11の変速比γ0と自動変速部20の変速比γとに基づいて形成される変速機構10全体としてのトータル変速比γTである。
例えば、図2の係合作動表に示される自動変速部20の第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段や後進ギヤ段の各ギヤ段に対し伝達部材回転速度N18が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって、変速機構10全体としてのトータル変速比γTが無段階に得られる。
また、差動部11の変速比が一定となるように制御され、且つクラッチCおよびブレーキBが選択的に係合作動させられて第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段のいずれか或いは後進ギヤ段(後進変速段)が選択的に成立させられることにより、略等比的に変化する変速機構10のトータル変速比γTが各ギヤ段毎に得られる。したがって、変速機構10において有段変速機と同等の状態が構成される。
例えば、差動部11の変速比γ0が「1」に固定されるように制御されると、図2の係合作動表に示されるように自動変速部20の第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段や後進ギヤ段の各ギヤ段に対応する変速機構10のトータル変速比γTが各ギヤ段毎に得られる。また、自動変速部20の第4速ギヤ段において差動部11の変速比γ0が「1」より小さい値例えば0.7程度に固定されるように制御されると、第4速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.7」程度であるトータル変速比γTが得られる。
図3は、差動部11と自動変速部20とから構成される変速機構10において、ギヤ段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図を示している。この図3の共線図は、各遊星歯車装置24、26、28、30のギヤ比ρの関係を示す横軸と、相対的回転速度を示す縦軸とから成る二次元座標であり、横線X1が回転速度零を示し、横線X2が回転速度「1.0」すなわち入力軸14に連結されたエンジン8の回転速度NEを示し、横線XGが伝達部材18の回転速度を示している。
また、差動部11を構成する動力分配機構16の3つの要素に対応する3本の縦線Y1、Y2、Y3は、左側から順に第2回転要素(第2要素)RE2に対応する差動部サンギヤS0、第1回転要素(第1要素)RE1に対応する差動部キャリヤCA0、第3回転要素(第3要素)RE3に対応する差動部リングギヤR0の相対回転速度を示すものであり、それらの間隔は差動部遊星歯車装置24のギヤ比ρ0に応じて定められている。さらに、自動変速部20の5本の縦線Y4、Y5、Y6、Y7、Y8は、左から順に、第4回転要素(第4要素)RE4に対応し且つ相互に連結された第1サンギヤS1および第2サンギヤS2を、第5回転要素(第5要素)RE5に対応する第1キャリヤCA1を、第6回転要素(第6要素)RE6に対応する第3リングギヤR3を、第7回転要素(第7要素)RE7に対応し且つ相互に連結された第1リングギヤR1、第2キャリヤCA2、第3キャリヤCA3を、第8回転要素(第8要素)RE8に対応し且つ相互に連結された第2リングギヤR2、第3サンギヤS3をそれぞれ表し、それらの間隔は第1、第2、第3遊星歯車装置26、28、30のギヤ比ρ1、ρ2、ρ3に応じてそれぞれ定められている。共線図の縦軸間の関係においてサンギヤとキャリヤとの間が「1」に対応する間隔とされるとキャリヤとリングギヤとの間が遊星歯車装置のギヤ比ρに対応する間隔とされる。すなわち、差動部11では縦線Y1とY2との縦線間が「1」に対応する間隔に設定され、縦線Y2とY3との間隔はギヤ比ρ0に対応する間隔に設定される。また、自動変速部20では各第1、第2、第3遊星歯車装置26、28、30毎にそのサンギヤとキャリヤとの間が「1」に対応する間隔に設定され、キャリヤとリングギヤとの間がρに対応する間隔に設定される。
上記図3の共線図を用いて表現すれば、本実施例の変速機構10は、動力分配機構16(差動部11)において、差動部遊星歯車装置24の第1回転要素RE1(差動部キャリヤCA0)が入力軸14すなわちエンジン8に連結され、第2回転要素RE2が第1電動機M1に連結され、第3回転要素(差動部リングギヤR0)RE3が伝達部材18および第2電動機M2に連結されて、入力軸14の回転を伝達部材18を介して自動変速部20へ伝達する(入力させる)ように構成されている。このとき、Y2とX2の交点を通る斜めの直線L0により差動部サンギヤS0の回転速度と差動部リングギヤR0の回転速度との関係が示される。
例えば、差動部11においては、第1回転要素RE1乃至第3回転要素RE3が相互に相対回転可能とされる差動状態とされており、直線L0と縦線Y3との交点で示される差動部リングギヤR0の回転速度が車速Vに拘束されて略一定である場合には、エンジン回転速度NEを制御することによって直線L0と縦線Y2との交点で示される差動部キャリヤCA0の回転速度が上昇或いは下降させられると、直線L0と縦線Y1との交点で示される差動部サンギヤS0の回転速度すなわち第1電動機M1の回転速度が上昇或いは下降させられる。
また、差動部11の変速比γ0が「1」に固定されるように第1電動機M1の回転速度を制御することによって差動部サンギヤS0の回転がエンジン回転速度NEと同じ回転とされると、直線L0は横線X2と一致させられ、エンジン回転速度NEと同じ回転で差動部リングギヤR0の回転速度すなわち伝達部材18が回転させられる。或いは、差動部11の変速比γ0が「1」より小さい値例えば0.7程度に固定されるように第1電動機M1の回転速度を制御することによって差動部サンギヤS0の回転が零とされると、エンジン回転速度NEよりも増速された回転で伝達部材回転速度N18が回転させられる。
また、自動変速部20において第4回転要素RE4は第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第5回転要素RE5は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第6回転要素RE6は第3ブレーキB3を介してケース12に選択的に連結され、第7回転要素RE7は出力軸22に連結され、第8回転要素RE8は第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されている。
自動変速部20では、差動部11において出力回転部材である伝達部材18(第3回転要素RE3)の回転が第1クラッチC1が係合されることで第8回転要素RE8に入力されると、図3に示すように、第1クラッチC1と第3ブレーキB3とが係合させられることにより、第8回転要素RE8の回転速度を示す縦線Y8と横線XGとの交点と第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6と横線X1との交点とを通る斜めの直線L1と、出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第1速(1st)の出力軸22の回転速度が示される。同様に、第1クラッチC1と第2ブレーキB2とが係合させられることにより決まる斜めの直線L2と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第2速(2nd)の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第1ブレーキB1とが係合させられることにより決まる斜めの直線L3と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第3速(3rd)の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第2クラッチC2とが係合させられることにより決まる水平な直線L4と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第4速(4th)の出力軸22の回転速度が示される。
図4は、本実施例の変速機構10を制御するための電子制御装置80に入力される信号及びその電子制御装置80から出力される信号を例示している。この電子制御装置80は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことによりエンジン8、第1、第2電動機M1、M2に関するハイブリッド駆動制御、自動変速部20の変速制御等の駆動制御を実行するものである。
電子制御装置80には、図4に示すような各センサやスイッチなどから、エンジン水温TEMPWを表す信号、シフトレバー52(図5参照)のシフトポジションPSHや「M」ポジションにおける操作回数等を表す信号、エンジン8の回転速度であるエンジン回転速度NEを表す信号、ギヤ比列設定値を表す信号、Mモード(手動変速走行モード)を指令する信号、エアコンの作動を表す信号、出力軸22の回転速度(以下、出力軸回転速度)NOUTに対応する車速Vを表す信号、自動変速部20の作動油温TOILを表す信号、サイドブレーキ操作を表す信号、フットブレーキ操作を表す信号、触媒温度を表す信号、運転者の出力要求量に対応するアクセルペダルの操作量であるアクセル開度Accを表す信号、カム角を表す信号、スノーモード設定を表す信号、車両の前後加速度Gを表す信号、オートクルーズ走行を表す信号、車両の重量(車重)を表す信号、各車輪の車輪速を表す信号、第1電動機M1の回転速度NM1(以下、第1電動機回転速度NM1という)を表す信号、第2電動機M2の回転速度NM2(以下、第2電動機回転速度NM2という)を表す信号、蓄電装置56(図6参照)の充電容量(充電状態)SOCを表す信号などが、それぞれ供給される。
また、上記電子制御装置80からは、エンジン出力を制御するエンジン出力制御装置58(図6参照)への制御信号例えばエンジン8の吸気管60に備えられた電子スロットル弁62のスロットル弁開度θTHを操作するスロットルアクチュエータ64への駆動信号や燃料噴射装置66による吸気管60或いはエンジン8の筒内への燃料供給量を制御する燃料供給量信号や点火装置68によるエンジン8の点火時期を指令する点火信号、過給圧を調整するための過給圧調整信号、電動エアコンを作動させるための電動エアコン駆動信号、電動機M1およびM2の作動を指令する指令信号、シフトインジケータを作動させるためのシフトポジション(操作位置)表示信号、ギヤ比を表示させるためのギヤ比表示信号、スノーモードであることを表示させるためのスノーモード表示信号、制動時の車輪のスリップを防止するABSアクチュエータを作動させるためのABS作動信号、Mモードが選択されていることを表示させるMモード表示信号、差動部11や自動変速部20の油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータを制御するために油圧制御回路70(図6参照)に含まれる電磁弁(リニアソレノイドバルブ)を作動させるバルブ指令信号、この油圧制御回路70に設けられたレギュレータバルブ(調圧弁)によりライン油圧PLを調圧するための信号、そのライン油圧PLが調圧されるための元圧の油圧源である電動油圧ポンプを作動させるための駆動指令信号、電動ヒータを駆動するための信号、クルーズコントロール制御用コンピュータへの信号等が、それぞれ出力される。
図5は複数種類のシフトポジションPSHを人為的操作により切り換える切換装置としてのシフト操作装置50の一例を示す図である。このシフト操作装置50は、例えば運転席の横に配設され、複数種類のシフトポジションPSHを選択するために操作されるシフトレバー52を備えている。
そのシフトレバー52は、変速機構10内つまり自動変速部20内の動力伝達経路が遮断されたニュートラル状態すなわち中立状態とし且つ自動変速部20の出力軸22をロックするための駐車ポジション「P(パーキング)」、後進走行のための後進走行ポジション「R(リバース)」、変速機構10内の動力伝達経路が遮断された中立状態とするための中立ポジション「N(ニュートラル)」、自動変速モードを成立させて差動部11の無段的な変速比幅と自動変速部20の第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段の範囲で自動変速制御される各ギヤ段とで得られる変速機構10の変速可能なトータル変速比γTの変化範囲内で自動変速制御を実行させる前進自動変速走行ポジション「D(ドライブ)」、または手動変速走行モード(手動モード)を成立させて自動変速部20における高速側の変速段を制限する所謂変速レンジを設定するための前進手動変速走行ポジション「M(マニュアル)」へ手動操作されるように設けられている。
上記シフトレバー52の各シフトポジションPSHへの手動操作に連動して図2の係合作動表に示す後進ギヤ段「R」、ニュートラル「N」、前進ギヤ段「D」における各変速段等が成立するように、例えば油圧制御回路70が電気的に切り換えられる。
上記「P」乃至「M」ポジションに示す各シフトポジションPSHにおいて、「P」ポジションおよび「N」ポジションは、車両を走行させないときに選択される非走行ポジションであって、例えば図2の係合作動表に示されるように第1クラッチC1および第2クラッチC2のいずれもが解放されるような自動変速部20内の動力伝達経路が遮断された車両を駆動不能とする第1クラッチC1および第2クラッチC2による動力伝達経路の動力伝達遮断状態へ切換えを選択するための非駆動ポジションである。また、「R」ポジション、「D」ポジションおよび「M」ポジションは、車両を走行させるときに選択される走行ポジションであって、例えば図2の係合作動表に示されるように第1クラッチC1および第2クラッチC2の少なくとも一方が係合されるような自動変速部20内の動力伝達経路が連結された車両を駆動可能とする第1クラッチC1および/または第2クラッチC2による動力伝達経路の動力伝達可能状態への切換えを選択するための駆動ポジションでもある。
具体的には、シフトレバー52が「P」ポジション或いは「N」ポジションから「R」ポジションへ手動操作されることで、第2クラッチC2が係合されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達遮断状態から動力伝達可能状態とされ、シフトレバー52が「N」ポジションから「D」ポジションへ手動操作されることで、少なくとも第1クラッチC1が係合されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達遮断状態から動力伝達可能状態とされる。また、シフトレバー52が「R」ポジションから「P」ポジション或いは「N」ポジションへ手動操作されることで、第2クラッチC2が解放されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達可能状態から動力伝達遮断状態とされ、シフトレバー52が「D」ポジションから「N」ポジションへ手動操作されることで、第1クラッチC1および第2クラッチC2が解放されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達可能状態から動力伝達遮断状態とされる。
図6は、電子制御装置80による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図6において、有段変速制御手段82は、図7に示すような車速Vと自動変速部20の出力トルクTOUTとを変数として予め記憶されたアップシフト線(実線)およびダウンシフト線(一点鎖線)を有する関係(変速線図、変速マップ)から実際の車速Vおよび自動変速部20の要求出力トルクTOUTで示される車両状態に基づいて、自動変速部20の変速を実行すべきか否かを判断しすなわち自動変速部20の変速すべき変速段を判断し、その判断した変速段が得られるように自動変速部20の自動変速制御を実行する。
このとき、有段変速制御手段82は、例えば図2に示す係合表に従って変速段が達成されるように、自動変速部20の変速に関与する油圧式摩擦係合装置を係合および/または解放させる指令(変速出力指令、油圧指令)を、すなわち自動変速部20の変速に関与する解放側係合装置を解放すると共に係合側係合装置を係合することによりクラッチツウクラッチ変速を実行させる指令を油圧制御回路70へ出力する。油圧制御回路70は、その指令に従って、例えば解放側係合装置を解放すると共に係合側係合装置を係合して自動変速部20の変速が実行されるように、油圧制御回路70内のリニアソレノイドバルブを作動させてその変速に関与する油圧式摩擦係合装置の油圧アクチュエータを作動させる。
ハイブリッド制御手段84は、エンジン8を効率のよい作動域で作動させる一方で、エンジン8と第2電動機M2との駆動力の配分や第1電動機M1の発電による反力を最適になるように変化させて差動部11の電気的な無段変速機としての変速比γ0を制御する。例えば、そのときの走行車速Vにおいて、運転者の出力要求量としてのアクセル開度Accや車速Vから車両の目標(要求)出力を算出し、その車両の目標出力と充電要求値から必要なトータル目標出力を算出し、そのトータル目標出力が得られるように伝達損失、補機負荷、第2電動機M2のアシストトルク等を考慮して目標エンジン出力を算出し、その目標エンジン出力が得られるエンジン回転速度NEとエンジントルクTEとなるようにエンジン8を制御するとともに第1電動機M1の発電量を制御する。
例えば、ハイブリッド制御手段84は、その制御を動力性能や燃費向上などのために自動変速部20の変速段を考慮して実行する。このようなハイブリッド制御では、エンジン8を効率のよい作動域で作動させるために定まるエンジン回転速度NEと車速Vおよび自動変速部20の変速段で定まる伝達部材18の回転速度とを整合させるために、差動部11が電気的な無段変速機として機能させられる。すなわち、ハイブリッド制御手段84は、エンジン回転速度NEとエンジン8の出力トルク(エンジントルク)TEとで構成される二次元座標内において無段変速走行の時に運転性と燃費性とを両立するように予め実験的に求められて記憶されたエンジン8の最適燃費率曲線(燃費マップ、関係)に沿ってエンジン8が作動させられるように、例えば目標出力(トータル目標出力、要求駆動力)を充足するために必要なエンジン出力を発生するためのエンジントルクTEとエンジン回転速度NEとなるように、変速機構10のトータル変速比γTの目標値を定め、その目標値が得られるように自動変速部20の変速段を考慮して差動部11の変速比γ0を制御し、トータル変速比γTをその変速可能な変化範囲内で制御する。
このとき、ハイブリッド制御手段84は、第1電動機M1により発電された電気エネルギをインバータ54を通して蓄電装置56や第2電動機M2へ供給するので、エンジン8の動力の主要部は機械的に伝達部材18へ伝達されるが、エンジン8の動力の一部は第1電動機M1の発電のために消費されてそこで電気エネルギに変換され、インバータ54を通してその電気エネルギが第2電動機M2へ供給され、その第2電動機M2が駆動されて第2電動機M2から伝達部材18へ伝達される。この電気エネルギの発生から第2電動機M2で消費されるまでに関連する機器により、エンジン8の動力の一部を電気エネルギに変換し、その電気エネルギを機械的エネルギに変換するまでの電気パスが構成される。
また、ハイブリッド制御手段84は、車両の停止中又は走行中に拘わらず、差動部11の電気的CVT機能によって第1電動機回転速度NM1および/または第2電動機回転速度NM2を制御してエンジン回転速度NEを略一定に維持したり任意の回転速度に回転制御する。言い換えれば、ハイブリッド制御手段84は、エンジン回転速度NEを略一定に維持したり任意の回転速度に制御しつつ第1電動機回転速度NM1および/または第2電動機回転速度NM2を任意の回転速度に回転制御することができる。
例えば、図3の共線図からもわかるようにハイブリッド制御手段84は車両走行中にエンジン回転速度NEを引き上げる場合には、車速V(駆動輪34)に拘束される第2電動機回転速度NM2を略一定に維持しつつ第1電動機回転速度NM1の引き上げを実行する。また、ハイブリッド制御手段84は自動変速部20の変速中にエンジン回転速度NEを略一定に維持する場合には、エンジン回転速度NEを略一定に維持しつつ自動変速部20の変速に伴う第2電動機回転速度NM2の変化とは反対方向に第1電動機回転速度NM1を変化させる。
また、ハイブリッド制御手段84は、スロットル制御のためにスロットルアクチュエータ64により電子スロットル弁62を開閉制御させる他、燃料噴射制御のために燃料噴射装置66による燃料噴射量や噴射時期を制御させ、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置68による点火時期を制御させる指令を単独で或いは組み合わせてエンジン出力制御装置58に出力して、必要なエンジン出力を発生するようにエンジン8の出力制御を実行するエンジン出力制御手段を機能的に備えている。
例えば、ハイブリッド制御手段84は、基本的には図示しない予め記憶された関係からアクセル開度Accに基づいてスロットルアクチュエータ64を駆動し、アクセル開度Accが増加するほどスロットル弁開度θTHを増加させるようにスロットル制御を実行する。また、このエンジン出力制御装置58は、ハイブリッド制御手段84による指令に従って、スロットル制御のためにスロットルアクチュエータ64により電子スロットル弁62を開閉制御する他、燃料噴射制御のために燃料噴射装置66による燃料噴射を制御し、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置68による点火時期を制御するなどしてエンジントルク制御を実行する。
また、ハイブリッド制御手段84は、エンジン8の停止又はアイドル状態に拘わらず、差動部11の電気的CVT機能(差動作用)によって、第2電動機M2を走行用の駆動力源とするモータ走行をさせることができる。例えば、ハイブリッド制御手段84は、一般的にエンジン効率が高トルク域に比較して悪いとされる比較的低出力トルクTOUT域すなわち低エンジントルクTE域、或いは車速Vの比較的低車速域すなわち低負荷域において、モータ走行を実行する。また、ハイブリッド制御手段84は、このモータ走行時には、停止しているエンジン8の引き摺りを抑制して燃費を向上させるために、第1電動機回転速度NM1を負の回転速度で制御して例えば第1電動機M1を無負荷状態とすることにより空転させて、差動部11の電気的CVT機能(差動作用)により必要に応じてエンジン回転速度NEを零乃至略零に維持する。
また、ハイブリッド制御手段84は、エンジン8を走行用の駆動力源とするエンジン走行を行うエンジン走行領域であっても、上述した電気パスによる第1電動機M1からの電気エネルギおよび/または蓄電装置56からの電気エネルギを第2電動機M2へ供給し、その第2電動機M2を駆動して駆動輪34にトルクを付与することにより、エンジン8の動力を補助するための所謂トルクアシストが可能である。よって、本実施例のエンジン走行には、エンジン走行+モータ走行を含むものとする。
また、ハイブリッド制御手段84は、第1電動機M1を無負荷状態として自由回転すなわち空転させることにより、差動部11がトルクの伝達を不能な状態すなわち差動部11内の動力伝達経路が遮断された状態と同等の状態であって、且つ差動部11からの出力が発生されない状態とすることが可能である。すなわち、ハイブリッド制御手段84は、第1電動機M1を無負荷状態とすることにより差動部11をその動力伝達経路が電気的に遮断される中立状態(ニュートラル状態)とすることが可能である。
また、ハイブリッド制御手段84は、アクセルオフの惰性走行時(コースト走行時)やフットブレーキによる制動時などには、燃費を向上させるために車両の運動エネルギすなわち駆動輪34からエンジン8側へ伝達される逆駆動力により第2電動機M2を回転駆動させて発電機として作動させ、その電気エネルギすなわち第2電動機発電電流をインバータ54を介して蓄電装置56へ充電する回生制御手段としての機能を有する。この回生制御は、蓄電装置56の充電容量SOCやブレーキペダル操作量に応じた制動力を得るための油圧ブレーキによる制動力の制動力配分等に基づいて決定された回生量となるように制御される。
ここで、運転者の要求に対する応答性や快適性などを考慮すると、車両の走行状態がモータ走行からエンジン走行に切り換えられる場合には自動変速部20が変速中であっても速やかにエンジン始動が行われる必要がある。以下に、そのための制御作動について説明する。
図6に戻り、内燃機関始動判定手段90は、エンジン8を始動させるべきとの判断であるエンジン始動判断が電子制御装置80によってなされたか否かを判定する。例えば、モータ走行中においてアクセルペダルが大きく踏み込まれ、図7において、アクセル開度Accに対応する自動変速部20の要求出力トルクTOUTが大きくなり、車両状態がモータ走行領域からエンジン走行領域へと変化した場合には上記エンジン始動判断がなされる。
変速状態判定手段92は、自動変速部20が変速中であるか否かを判定する。詳細には、自動変速部20の変速中にその入力回転速度である第2電動機回転速度NM2がその変速の進行に応じて変化するイナーシャ相に自動変速部20の変速動作が入っている場合に、変速状態判定手段92は自動変速部20が変速中である旨の判定をする。自動変速部20の変速動作がイナーシャ相に入っているか否かは、例えば、自動変速部20のクラッチ又はブレーキを制御するための電磁弁の制御信号や第2電動機回転速度NM2を検出しそれに基づいて判断できる。
電動機制限状態判定手段94は、蓄電装置56からの出力により駆動される第1電動機M1又は第2電動機M2の予め定められた駆動力が得られない状態であるか否か、すなわち第1電動機M1又は第2電動機M2の駆動力が制限されるか否かを判定する。言い換えれば、充電池などの蓄電装置56からの出力が制限され、予め定められた蓄電装置56からの出力が得られない状態であるか否かを判定する。例えば、蓄電装置56の充電容量SOCが不足している場合や、第1電動機M1又は第2電動機M2が所定値を超えて高温になっているためにその電動機の出力が制限される場合には、蓄電装置56からの出力が制限される。
前記エンジン始動判断がなされたと内燃機関始動判定手段90によって判定された場合に内燃機関始動制御手段96は、エンジン8を駆動するための第1電動機M1の駆動力とその駆動力に対する反力となる第2電動機M2の駆動力とを自動変速部20の変速状態に応じて制御して、例えば自動変速部20の変速比γの変化幅に基づいて制御して、第1電動機M1を第2電動機M2と同じ方向に回転するように駆動し、それにより第1電動機M1及び第2電動機M2と同じ方向にエンジン8を回転させ、エンジン回転速度NEをエンジン始動が可能となるエンジン始動回転速度NE1以上、例えば1000rpm以上に上昇させ、エンジン点火を行う。ここで、第1電動機M1の駆動力及び第2電動機M2の駆動力はそれぞれ第1電動機M1の出力トルクTM1(以下、「第1電動機トルクTM1」という)及び第2電動機M2の出力トルクTM2(以下、「第2電動機トルクTM2」という)と一対一の比例関係にあり、第1電動機トルクTM1及び第2電動機トルクTM2が大きくなるほど第1電動機M1の駆動力及び第2電動機M2の駆動力もそれぞれ大きくなる関係にある。
第1電動機M1及び第2電動機M2の駆動力の上記制御について具体的に言えば、前記エンジン始動判断がなされたと内燃機関始動判定手段90によって判定された場合において内燃機関始動制御手段96は、自動変速部20が変速中である旨を肯定する判定が変速状態判定手段92によってなされ、かつ、第1電動機M1又は第2電動機M2の駆動力が制限される旨を否定する判定が電動機制限状態判定手段94によってなされた場合には、エンジン回転速度NEをエンジン始動回転速度NE1以上に上昇させるため、エンジン回転速度NEの上昇開始からエンジン点火までにかかる所要時間(以下、「エンジン始動所要時間」という)が、自動変速部20が非変速中である場合のそれに近づくように第1電動機トルクTM1及び第2電動機トルクTM2の制御をする。それは、エンジン回転から生じる振動が共振により増幅されるエンジン8の回転速度範囲である共振周波数帯でのエンジン回転速度NEの滞留時間を上記非変速中と同様に短くしてエンジン始動時の振動が大きくなることを抑制するためであり、上記非変速中と同様の応答性を確保するためである。
ここで第1電動機トルクTM1及び第2電動機トルクTM2について見ると、自動変速部20の非変速中と比較してその変速中は、差動部11のリング軸(第3回転要素RE3)である第2電動機M2の回転速度NM2が変化するので、上記非変速中と同様の第1電動機トルクTM1及び第2電動機トルクTM2の制御が行われていたのでは、エンジン始動のためエンジン回転速度NEがエンジン始動回転速度NE1以上になるまでに要する時間が上記非変速中と比較して長くなってしまう。例えば、自動変速部20の変速比γが小さくなるように変速動作が行われるアップシフト中にエンジン回転速度NEが引き上げられる場合には、図8に示すように、自動変速部20の変速動作により第2電動機回転速度NM2(差動部11のリング軸の回転速度)が低下するのと並行してエンジン回転速度NEが引き上げられることとなり、自動変速部20の非変速中に対して第1電動機回転速度NM1がより高い速度にまで引き上げられる必要があるので、上記非変速中と同様の所要時間でエンジン回転速度NEをエンジン始動回転速度NE1以上に引き上げるためには上記非変速中よりも上記変速中は第1電動機トルクTM1及びこの第1電動機トルクTM1に対抗する第2電動機トルクTM2が大きくされる必要がある。また、自動変速部20の変速比γが大きくなるように変速動作が行われるダウンシフト中にエンジン回転速度NEが引き上げられる場合には、自動変速部20の変速動作を成立させるために第2電動機回転速度NM2が引き上げられる必要があり、そのために上記非変速中と比較して上記変速中は第2電動機トルクTM2が大きくされるので、これに対抗する第1電動機トルクTM1も大きくされる必要がある。
これらのことから第1電動機トルクTM1及び第2電動機トルクTM2の制御について更に具体的に言えば、前記エンジン始動判断がなされたと内燃機関始動判定手段90によって判定された場合において内燃機関始動制御手段96は、自動変速部20が変速中である旨を肯定する判定が変速状態判定手段92によってなされ、かつ、第1電動機M1又は第2電動機M2の駆動力が制限される旨を否定する判定が電動機制限状態判定手段94によってなされた場合には、前記エンジン始動所要時間が、自動変速部20が非変速中である場合のそれに近づくようにするため、図9に示すように自動変速部20の入力回転速度である第2電動機回転速度NM2の単位時間当たりの変化幅の絶対値である入力回転速度変化勾配に基づいて、その入力回転速度変化勾配が大きいほど第1電動機トルクTM1及び第2電動機トルクTM2が大きくなるように制御する。この制御を自動変速部20が非変速中である場合と比較してみると、自動変速部20が非変速中である場合には車速V(駆動輪34)に拘束される第2電動機回転速度NM2は車速Vが変動しない限り殆ど変動しないので、自動変速部20が非変速中である場合の上記入力回転速度変化勾配は自動変速部20の変速中における入力回転速度変化勾配と比較して小さい。従って、自動変速部20の変速中において内燃機関始動制御手段96は、エンジン回転速度NEを上昇させる場合には、自動変速部20が非変速中である場合と比較して第1電動機トルクTM1及び第2電動機トルクTM2を大きくするように制御すると言える。なお、図9では上記入力回転速度変化勾配が横軸とされ、自動変速部20の非変速中に対するその変速中の第1電動機トルクTM1及び第2電動機トルクTM2の増加量が縦軸とされており、第2電動機トルクTM2の増加量の方が第1電動機トルクTM1の増加量よりも大きいように示されているがこれは一例であり逆の場合もあり得ることであって、上記入力回転速度変化勾配と第1電動機トルクTM1及び第2電動機トルクTM2との関係は例えば実験等によって求められ予め内燃機関始動制御手段96に記憶されている。
一方、自動変速部20が変速中である旨を否定する判定が変速状態判定手段92によってなされた場合のエンジン始動のための第1電動機M1及び第2電動機M2の駆動力の前記制御については、内燃機関始動制御手段96は、前記エンジン始動判断がなされたと内燃機関始動判定手段90によって判定された場合に、車速V(駆動輪34)に拘束される第2電動機回転速度NM2は車速Vが変動しない限り殆ど変動しないので、自動変速部20が変速中である場合よりは第1電動機トルクTM1が小さくなるように制御し、また、駆動輪34からエンジン8側へ伝達される逆駆動力もエンジン回転速度NEの上昇に利用できるので第2電動機トルクTM2も自動変速部20が変速中である場合よりは小さくなるように制御する。
前記エンジン始動判断がなされたと内燃機関始動判定手段90によって判定された場合において変速制御変更手段98は、自動変速部20が変速中である旨を肯定する判定が変速状態判定手段92によってなされ、かつ、第1電動機M1又は第2電動機M2の駆動力が制限される旨を肯定する判定が電動機制限状態判定手段94によってなされた場合には、第1電動機M1及び第2電動機M2の駆動力が制限されない場合に対して、すなわち第1電動機M1及び第2電動機M2の予め定められた駆動力が得られる場合に対して自動変速部20の変速制御を変更する。具体的に変速制御変更手段98は、蓄電装置56からの出力により駆動される第1電動機M1又は第2電動機M2の駆動力の制限が大きいほど、すなわち第1電動機M1又は第2電動機M2の出力可能な駆動力が低いほど、第1電動機M1及び第2電動機M2の駆動力が制限されない場合に対して自動変速部20の前記入力回転速度変化勾配が小さくなるように、或いは自動変速部20の変速時間が長くなるように自動変速部20の変速制御を変更する。例えばその変速制御の変更は、図10に示すように、第1電動機M1又は第2電動機M2の駆動力の制限すなわち電動機出力制限量が大きいほど、自動変速部20の変速動作に関わるクラッチ又はブレーキに供給される油圧の単位時間当たりの変化率である油圧勾配が小さくされることで実現できる。なお、変速制御変更手段98が自動変速部20の変速制御を変更する場合には、自動変速部20の変速と並行して第1電動機M1及び第2電動機M2の駆動力の制限範囲内で、前記エンジン始動判断に基づきエンジン8を始動するためのエンジン始動制御が行われる。具体的には、自動変速部20の変速と並行して第1電動機M1が第2電動機M2と同じ方向に回転するように駆動され、それにより第1電動機M1及び第2電動機M2と同じ方向にエンジン8が回転させられ、エンジン回転速度NEがエンジン始動回転速度NE1以上に上昇したところでエンジン点火が行われる。また、図10の縦軸は油圧勾配に限定されるものではない。更に図10において、横軸の電動機出力制限量としては、第1電動機M1又は第2電動機M2の駆動力の何れの制限量を採用してもよく、第1電動機M1又は第2電動機M2の駆動力の制限量のうち大きい方の制限量を採用してもよい。
図11は、電子制御装置80の制御作動の要部すなわちエンジン8を始動させるための制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行される。
先ず、変速状態判定手段92に対応するステップ(以下、「ステップ」を省略する)SA1では、自動変速部20が変速中であるか否かが判定される。詳細には、自動変速部20の変速のイナーシャ相に自動変速部20の変速動作が入っているか否かが判定される。自動変速部20の変速動作がイナーシャ相に入っているか否かは、例えば、自動変速部20のクラッチ又はブレーキを制御するための電磁弁の制御信号や第2電動機回転速度NM2を検出しそれに基づいて判断できる。この判定が肯定的である場合、すなわち、自動変速部20が変速中である場合にはSA2に移る。一方、この判定が否定的である場合にはSA6に移る。
内燃機関始動判定手段90に対応するSA2では、前記エンジン始動判断が電子制御装置80によってなされたか否かが判定される。例えば、モータ走行中においてアクセルペダルが大きく踏み込まれ、図7において、アクセル開度Accに対応する自動変速部20の要求出力トルクTOUTが大きくなり、車両状態がモータ走行領域からエンジン走行領域へと変化した場合には上記エンジン始動判断がなされる。この判定が肯定的である場合、すなわち、上記エンジン始動判断がなされた場合にはSA3に移る。一方、この判定が否定的である場合にはSA6に移る。
電動機制限状態判定手段94に対応するSA3では、蓄電装置56からの出力により駆動される第1電動機M1又は第2電動機M2の予め定められた駆動力が得られない状態であるか否か、すなわち第1電動機M1又は第2電動機M2の駆動力が制限されるか否かが判定される。言い換えれば、充電池などの蓄電装置56からの出力が制限され、予め定められた蓄電装置56からの出力が得られない状態であるか否かが判定される。例えば、蓄電装置56の充電容量SOCが不足している場合や、第1電動機M1又は第2電動機M2が所定値を超えて高温になっているためにその電動機の出力が制限される場合には、蓄電装置56からの出力が制限される。この判定が肯定的である場合、すなわち、第1電動機M1又は第2電動機M2の駆動力が制限される場合、言い換えれば、蓄電装置56からの出力が制限される場合にはSA4に移る。一方、この判定が否定的である場合にはSA5に移る。
変速制御変更手段98に対応するSA4では、蓄電装置56からの出力により駆動される第1電動機M1又は第2電動機M2の駆動力の制限が大きいほど、すなわち第1電動機M1又は第2電動機M2の出力可能な駆動力が低いほど、第1電動機M1及び第2電動機M2の駆動力が制限されない場合に対して自動変速部20の前記入力回転速度変化勾配が小さくなるように、或いは自動変速部20の変速時間が長くなるように自動変速部20の変速制御が変更される。例えばその変速制御の変更は、図10に示すように、第1電動機M1又は第2電動機M2の駆動力の制限すなわち電動機出力制限量が大きいほど、自動変速部20の変速動作に関わるクラッチ又はブレーキに供給される油圧の単位時間当たりの変化率である前記油圧勾配が小さくされることで実現される。なお、SA4にて自動変速部20の変速制御が変更される場合には、自動変速部20の変速と並行して第1電動機M1及び第2電動機M2の駆動力の制限範囲内で、前記エンジン始動判断に基づきエンジン始動制御が行われる。
内燃機関始動制御手段96に対応するSA5では、第1電動機トルクTM1及び第2電動機トルクTM2が制御され、第1電動機M1が第2電動機M2と同じ方向に回転するように駆動され、それにより第1電動機M1及び第2電動機M2と同じ方向にエンジン8が回転させられ、エンジン始動が可能となるエンジン始動回転速度NE1以上にエンジン回転速度NEが上昇させられて、エンジン点火が行われる。そのとき前記エンジン始動所要時間が自動変速部20の非変速中のそれに近づくようにするため、図9に示すように、上記非変速中の第1電動機トルクTM1及び第2電動機トルクTM2に対するその増加量が、自動変速部20の前記入力回転速度変化勾配に基づいて、その入力回転速度変化勾配が大きいほど大きくなるように制御される。つまり、第1電動機トルクTM1及び第2電動機トルクTM2が自動変速部20の前記入力回転速度変化勾配に基づいて、その入力回転速度変化勾配が大きいほど大きくなるように制御される。すなわち、自動変速部20が非変速中である場合には車速V(駆動輪34)に拘束される自動変速部20の入力回転速度である第2電動機回転速度NM2は車速Vが変動しない限り殆ど変動しないので、自動変速部20が非変速中である場合と比較して第1電動機トルクTM1及び第2電動機トルクTM2が大きくなるように制御される。
SA6では、通常の制御、例えば自動変速部20の非変速中のエンジン始動制御や、エンジン始動を伴わない自動変速部20の変速制御が行われる。
図12は、図11のフローチャートに示す制御作動を説明するためのタイムチャートであって、前記モータ走行中にアクセルペダルが踏み込まれるなどして、自動変速部20のアップシフト中に前記エンジン始動判断がなされた場合の例である。この図12では、上から順に出力軸22のトルク、第2電動機トルクTM2、第1電動機トルクTM1、エンジン回転速度NE、自動変速部20の入力回転速度である第2電動機回転速度NM2、第1電動機回転速度NM1、自動変速部20の第1ブレーキB1の係合油圧のタイムチャートとなっている。
図12のtA1時点は、自動変速部20の変速をすべき旨の指令である変速出力が出されたことを示している。具体的には、アップシフトをすべき旨の変速出力である。その変速出力によりその後、変速の係合側の油圧式摩擦係合装置である第1ブレーキB1の油圧(ブレーキB1係合油圧)が上昇を開始する。
A2時点は、自動変速部20の変速動作がイナーシャ相に入ったことを示している。その変速動作はアップシフトであるので、tA2時点から自動変速部20の入力回転速度である第2電動機回転速度NM2が下降し始めている。
A3時点は、前記エンジン始動判断が出されたので、エンジン8を始動するためのエンジン始動制御が開始されたことを示している。そして、tA4時点はエンジン回転速度NEがエンジン始動回転速度NE1以上に達し、エンジン8が始動されたこと、つまりエンジン点火が行われたことを示している。ここでtA3時点にて、前記図11のSA1及びSA2にて肯定的な判定がなされ、SA3にて蓄電装置56からの出力が制限されてはいないと判定されたのでSA5が実行される。従って、tA3時点とtA4時点との間の第1電動機トルクTM1及び第2電動機トルクTM2は、自動変速部20が非変速中である場合すなわち自動変速部20の前記入力回転速度変化勾配が0乃至略0である場合にエンジン始動が行われる場合(図12に「エンジン始動のみ」と注記された破線)と比較して大きくなるように制御され、それにより第1電動機回転速度NM1が上記非変速中のエンジン始動の場合よりも高くされ、エンジン回転速度NEが上記非変速中のものに近づけられている。なお、tA3時点直後に第1電動機トルクTM1及び第2電動機トルクTM2が一時的に大きくなるように制御されているのは、エンジン回転速度NEが速やかに前記共振周波数帯を通過するようにするためである。
図12のtA5時点は、自動変速部20の変速が終了したことを示している。自動変速部20の変速が終了したので、第1ブレーキB1の係合は完了しておりその油圧はtA5時点から一定となっており、車速V(駆動輪34)に拘束される第2電動機回転速度NM2はtA5時点から一定となっている。そして、tA5時点からはエンジン回転速度NEと第2電動機回転速度NM2との両方が一定になっているので、それらに基づいて決定する第1電動機回転速度NM1も一定になっている。また、自動変速部20の変速はアップシフトであるので、上記変速の終了を示すtA5時点以降の出力軸22のトルクはその変速前と比較して小さくなっている。
図13は、図11のフローチャートに示す制御作動を説明するためのタイムチャートであって、前記図12のタイムチャートにおいて第1電動機M1又は第2電動機M2の駆動力が制限されると判定された場合、すなわち蓄電装置56からの出力が制限されると判定された場合の例である。従って、図13のtA1乃至tA5はそれぞれ図12のそれと共通である。以下に、図13のタイムチャートの図12とは異なる点を主として説明する。なお、図13の「通常変速時」として示される実線は蓄電装置56からの出力が制限されてはいない場合のものであり、図12のタイムチャートと同じである。
図11のSA3にて充電池などの蓄電装置56からの出力が制限されると判定されたのでSA4が実行され、自動変速部20の前記入力回転速度変化勾配が小さくなるように第1ブレーキB1の油圧の前記前記油圧勾配が小さくされる。従って、イナーシャ相開始から自動変速部20の変速終了までのブレーキB1係合油圧のタイムチャートは、通常変速時、すなわち蓄電装置56からの出力が制限されてはいない場合であればtA2時点からtA5時点までの実線で示されるタイムチャートになるところ、上記SA4の実行により自動変速部20の変速制御が変更されたので、tA2時点からtA5’時点までの破線で示されるタイムチャートになり、変速終了がtA5時点からtA5’時点へとずれて変速に要する時間が長くなっているが、上記SA4が実行された場合の第2電動機回転速度NM2のタイムチャート(「電池出力制限時」と注記された破線)の傾きである自動変速部20の上記入力回転速度変化勾配が上記SA4が実行されなかった場合のもの(「通常変速時」と注記された実線)に対し小さくなっている。すなわち、上記SA4での自動変速部20の変速制御の変更によって自動変速部20の入力回転速度変化勾配は自動変速部20の非変速中に近づけられていると言える。
本実施例の電子制御装置80には次のような効果(A1)乃至(A9)がある。(A1)エンジン始動のためエンジン回転速度NEが上昇させられる場合には、自動変速部20の変速状態に応じて、エンジン8を駆動するための第1電動機M1の駆動力が制御されるので、上記エンジン回転速度NEの上昇に対して自動変速部20の変速動作が与える影響が軽減され、例えば、エンジン8が始動される場合には、自動変速部20が変速中であってもエンジン回転速度NEが速やかに上昇させられ、的確にエンジン8を始動することが可能である。
(A2)エンジン8を始動させるため自動変速部20の変速中にエンジン回転速度NEを上昇させる場合には、自動変速部20の前記入力回転速度変化勾配に基づいて第1電動機トルクTM1が制御されるので、自動変速部20の入力回転速度である第2電動機回転速度NM2の変化が大きくなりそれに伴い、エンジン回転速度NEを上昇させるために必要とされる第1電動機トルクTM1が増加しても、エンジン回転速度NEが速やかに上昇させられ、的確にエンジン8を始動することが可能である。
(A3)エンジン8を始動させるため自動変速部20の変速中にエンジン回転速度NEを上昇させる場合には、エンジン回転速度NEが上昇され始めてからエンジン点火までにかかる所要時間である前記エンジン始動所要時間が、自動変速部20が非変速中である場合のそのエンジン始動所要時間に近づくように第1電動機トルクTM1が制御されるので、自動変速部20が非変速中である場合と同様の応答性でエンジン8を始動することができる。
(A4)エンジン8を始動させるため自動変速部20の変速中にエンジン回転速度NEを上昇させる場合には、自動変速部20が非変速中である場合と比較して第1電動機トルクTM1が大きくされるので、自動変速部20の変速動作により自動変速部20の入力回転速度である第2電動機回転速度NM2が変化しても、エンジン回転速度NEを速やかに上昇させ、的確にエンジン8を始動することが可能である。
(A5)エンジン8を始動させるため自動変速部20の変速中にエンジン回転速度NEを上昇させる場合において、第1電動機M1の駆動力が制限される場合には、その駆動力が制限されない場合に対して自動変速部20の前記入力回転速度変化勾配が小さくなるように、或いは自動変速部20の変速時間が長くなるように自動変速部20の変速制御が変更されるので、その変速制御が変更されない場合と比較して、自動変速部20の入力回転速度である第2電動機回転速度NM2の変化によるエンジン回転速度NEの上昇に対する影響を軽減できる。
(A6)エンジン始動のためエンジン回転速度NEが上昇させられる場合には、自動変速部20の変速状態に応じて、第1電動機M1の駆動力に対する反力となる第2電動機M2の駆動力が制御されるので、エンジン8の回転抵抗が自動変速部20の変速動作に与える影響を軽減することが可能であり、例えばエンジン8が始動される場合には、自動変速部20が変速中であってもエンジン回転速度NEを速やかに上昇させ、的確にエンジン8を始動することが可能である。
(A7)エンジン8を始動させるため自動変速部20の変速中にエンジン回転速度NEを上昇させる場合には、自動変速部20の前記入力回転速度変化勾配に基づいて第2電動機トルクTM2が制御されるので、自動変速部20の入力回転速度である第2電動機回転速度NM2の変化が大きくなりそれに伴い、エンジン8の回転抵抗及び第1電動機トルクTM1に対抗するために必要とされる第2電動機トルクTM2が増加しても、そのエンジン8の回転抵抗が自動変速部20の変速動作に与える影響を軽減することが可能であり、エンジン回転速度NEを速やかに上昇させ、的確にエンジン8を始動することが可能である。
(A8)エンジン8を始動させるため自動変速部20の変速中にエンジン回転速度NEを上昇させる場合には、自動変速部20が非変速中である場合と比較して第2電動機トルクTM2が大きくされるので、自動変速部20の変速動作を成立させるため自動変速部20の入力回転速度である第2電動機回転速度NM2を変化させる必要がある場合でも、エンジン8の回転抵抗が自動変速部20の変速動作に与える影響を軽減することが可能であり、エンジン回転速度NEを速やかに上昇させ、的確にエンジン8を始動することが可能である。
(A9)エンジン8を始動させるため自動変速部20の変速中にエンジン回転速度NEを上昇させる場合において、第2電動機M2の駆動力が制限される場合には、その駆動力が制限されない場合に対して自動変速部20の前記入力回転速度変化勾配が小さくなるように、或いは自動変速部20の変速時間が長くなるように自動変速部20の変速制御が変更されるので、その変速制御が変更されない場合と比較して、自動変速部20の入力回転速度である第2電動機回転速度NM2の変化によるエンジン回転速度NEの上昇に対する影響を軽減できる。また、エンジン回転速度NEを上昇させるための第1電動機トルクTM1を低くすることが可能となり、第2電動機M2の駆動力に対抗する第1電動機M1の駆動力及びエンジン8の回転抵抗が自動変速部20の上記変速制御の変更後の変速動作を成立させるための自動変速部20の入力回転速度に与える影響を軽減でき、変速ショックが大きくなる可能性を低減できる。
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において実施例相互に共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
第2実施例は第1実施例の電子制御装置80を電子制御装置110に置き換えたものであり、機能ブロック線図は第1実施例の図6において内燃機関始動制御手段96を内燃機関始動制御手段112に置き換えたものであって、内燃機関始動判定手段90,変速状態判定手段92,電動機制限状態判定手段94,変速制御変更手段98は第1実施例と同じである。以下、その相違点について主に説明する。
前記エンジン始動判断がなされたと内燃機関始動判定手段90によって判定され、自動変速部20が変速中である旨を肯定する判定が変速状態判定手段92によってなされ、かつ、第1電動機M1又は第2電動機M2の駆動力が制限される旨を否定する判定が電動機制限状態判定手段94によってなされた場合に、第1実施例に係る内燃機関始動制御手段96は、エンジン始動のためのエンジン回転速度NEの上昇開始からエンジン回転速度NEがエンジン始動回転速度NE1以上になるまでの間、自動変速部20が非変速中である場合に対して第1電動機トルクTM1及び第2電動機トルクTM2を大きくするように制御するが、本実施例の内燃機関始動制御手段112は、エンジン回転速度NEが前記共振周波数帯の範囲内にある間、自動変速部20が非変速中である場合に対して第1電動機トルクTM1及び第2電動機トルクTM2が大きくなるように変更する制御を行うという点で相違する。その他の点については内燃機関始動制御手段112は内燃機関始動制御手段96と同じである。
電子制御装置110の制御作動を示すフローチャートは第1実施例の図11においてSA5をSB5に置き換えたものであって、その他のステップであるSA1乃至SA4及びSA6は第1実施例と同じである。以下、その相違点について主に説明する。
SA3において否定的な判定がなされると第1実施例に係るSA5では、エンジン始動のためのエンジン回転速度NEの上昇開始からエンジン回転速度NEがエンジン始動回転速度NE1以上になるまでの間、第1電動機トルクTM1及び第2電動機トルクTM2は自動変速部20が非変速中である場合に対して大きくなるように制御されるが、本実施例のSB5では、エンジン回転速度NEが前記共振周波数帯の範囲内にある間、自動変速部20が非変速中である場合に対して第1電動機トルクTM1及び第2電動機トルクTM2が大きくなるように変更される制御が行われるという点で相違する。その他の点についてはSB5はSA5と同じである。なお、SB5は内燃機関始動制御手段112に対応する。
図14は、図11のフローチャートに示す電子制御装置110の制御作動を説明するためのタイムチャートである。この図14は前記図12に相当する別の実施例であって、図14のtB1,tB2,tB3,tB5時点はそれぞれ、図12のtA1,tA2,tA3,tA5時点に相当する。以下、図14の中で、図12とは相違する点について主に説明する。
図14のtB3時点は前記エンジン始動制御が開始されたことを示しており、tB4時点はエンジン回転速度NEがエンジン始動回転速度NE1以上に達し、エンジン8が始動されたこと、つまりエンジン点火が行われたことを示している。ここでtB3時点にて、前記図11のSA1及びSA2にて肯定的な判定がなされ、SA3にて蓄電装置56からの出力が制限されてはいないと判定されたのでSB5が実行される。従って、上記エンジン始動制御の開始を示すtB3時点の直後のエンジン回転速度NEが前記共振周波数帯の範囲内にある間は、第1電動機トルクTM1(実線)及び第2電動機トルクTM2(実線)が、自動変速部20が非変速中である場合(破線)に対して大きくなるように変更される制御が行われる。しかし、図14ではエンジン回転速度NEが上記共振周波数帯を通過すると、第1電動機トルクTM1(実線)及び第2電動機トルクTM2(実線)が、自動変速部20が非変速中である場合のトルクに近づけられる。この点が図12と相違する。このように、自動変速部20が非変速中である場合に対して第1電動機トルクTM1及び第2電動機トルクTM2が大きくなるように変更される期間が、上記エンジン始動制御の開始直後のエンジン回転速度NEが前記共振周波数帯の範囲内にある間であり、エンジン8が始動されるまでではないので、結果として、図14のtB3時点からtB4時点までの時間である前記エンジン始動所要時間が、図12のtA3時点からtA4時点までの時間であるエンジン始動所要時間に対して長くなっている。
本実施例の電子制御装置110には第1実施例の効果(A1)乃至(A9)に加え、次のような効果(B1)乃至(B2)がある。(B1)エンジン8を始動させるため自動変速部20の変速中にエンジン回転速度NEを上昇させる場合において、エンジン回転速度NEが前記共振周波数帯の範囲内にある間は、自動変速部20が非変速中である場合に対して第1電動機トルクTM1が大きくなるように変更されるので、エンジン回転速度NEが速やかに上記共振周波数帯を通過するようにすることが可能であり、エンジン8の始動時に生じ得る振動によって快適性を損なう可能性を低減できる。
(B2)エンジン8を始動させるため自動変速部20の変速中にエンジン回転速度NEを上昇させる場合において、エンジン回転速度NEが上記共振周波数帯の範囲内にある間は、自動変速部20が非変速中である場合に対して第2電動機トルクTM2が大きくなるように変更されるので、エンジン回転速度NEが速やかに上記共振周波数帯を通過するようにすることが可能であり、エンジン8の始動時に生じ得る振動によって快適性を損なう可能性を低減できる。
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
例えば、第1実施例及び第2実施例では、第1電動機M1及び第2電動機M2は差動部11に備えられているが、第1電動機M1及び第2電動機M2が差動部11の一部である必要は特になく、例えば、第1電動機M1及び第2電動機M2が差動部11とは別個に変速機構10に備えられていてもよい。
また第1実施例及び第2実施例において差動部11は、例えば第1回転要素RE1と第2回転要素RE2との間の相対回転を制限もしくは禁止できるクラッチ等の差動制限装置を備えていてもよい。そのようにしてエンジン始動のためエンジン回転速度NEを上昇させる場合には、上記差動制限装置により第1回転要素RE1と第2回転要素RE2との間の相対回転を制限もしくは禁止して第1乃至第3回転要素RE1,RE2,RE3が一体回転する非差動状態とすることで、第1電動機M1又は第2電動機M2の何れか一方を使用しエンジン始動のためにエンジン回転速度NEを上昇させることができ、例えば、第1電動機M1を使用せず第2電動機M2を制御してエンジン回転速度NEを上昇させることができ、第1電動機M1及び第2電動機M2の両方を使用する場合と比較して電子制御装置80の制御負荷の軽減を図り得る。
また第1実施例及び第2実施例では、第2電動機M2が伝達部材18に連結されているが、例えば第2電動機M2が無い場合にも本発明は適用される。
また第1実施例及び第2実施例では、第2電動機M2は、伝達部材18に直接連結されているが、第2電動機M2の連結位置はそれに限定されず、エンジン8又は伝達部材18から駆動輪34までの間の動力伝達経路に直接的或いは変速機、遊星歯車装置、係合装置等を介して間接的に連結されていてもよい。
また第1実施例及び第2実施例では、差動部11はそのギヤ比γ0が最小値γ0minから最大値γ0maxまで連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能するものであったが、たとえば差動部11の変速比γ0を連続的ではなく差動作用を利用して敢えて段階的に変化させるものであっても本発明は適用することができる。
また、第1実施例及び第2実施例の動力分配機構16では、差動部キャリヤCA0がエンジン8に連結され、差動部サンギヤS0が第1電動機M1に連結され、差動部リングギヤR0が伝達部材18に連結されていたが、それらの連結関係は、必ずしもそれに限定されるものではなく、エンジン8、第1電動機M1、伝達部材18は、差動部遊星歯車装置24の3要素CA0、S0、R0のうちのいずれと連結されていても差し支えない。
また第1実施例及び第2実施例では、エンジン8は入力軸14と直結されていたが、たとえばギヤ、ベルト等を介して作動的に連結されておればよく、共通の軸心上に配置される必要もない。
また第1実施例及び第2実施例では、第1電動機M1および第2電動機M2は、入力軸14に同心に配置されて第1電動機M1は差動部サンギヤS0に連結され第2電動機M2は伝達部材18に連結されていたが、必ずしもそのように配置される必要はなく、たとえばギヤ、ベルト、減速機等を介して作動的に第1電動機M1は差動部サンギヤS0に連結され、第2電動機M2は伝達部材18に連結されていてもよい。
また第1実施例及び第2実施例では、第1クラッチC1や第2クラッチC2などの油圧式摩擦係合装置は、パウダー(磁紛)クラッチ、電磁クラッチ、噛合型のドグクラッチなどの磁紛式、電磁式、機械式係合装置から構成されていてもよい。たとえば電磁クラッチであるような場合には、油圧制御回路70は油路を切り換える弁装置ではなく電磁クラッチへの電気的な指令信号回路を切り換えるスイッチング装置や電磁切換装置等により構成され、図10の縦軸である油圧勾配もそれに対応した電気的な制御量に置換される。
また第1実施例及び第2実施例では、自動変速部20は伝達部材18を介して差動部11と直列に連結されていたが、入力軸14と平行にカウンタ軸が設けられてそのカウンタ軸上に同心に自動変速部20が配列されていてもよい。この場合には、差動部11と自動変速部20とは、たとえば伝達部材18としてカウンタギヤ対、スプロケットおよびチェーンで構成される1組の伝達部材などを介して動力伝達可能に連結される。
また第1実施例及び第2実施例の差動機構として動力分配機構16は、たとえばエンジンによって回転駆動されるピニオンと、そのピニオンに噛み合う一対のかさ歯車が第1電動機M1および伝達部材18(第2電動機M2)に作動的に連結された差動歯車装置であってもよい。
また第1実施例及び第2実施例の動力分配機構16は、1組の遊星歯車装置から構成されていたが2以上の遊星歯車装置から構成されて、非差動状態(定変速状態)では3段以上の変速機として機能するものであってもよい。また、その遊星歯車装置はシングルピニオン型に限られたものではなくダブルピニオン型の遊星歯車装置であってもよい。また、このような2以上の遊星歯車装置から構成された場合においても、これらの遊星歯車装置の各回転要素にエンジン8、第1および第2電動機M1、M2、伝達部材18、構成によっては出力軸22が動力伝達可能に連結され、さらに遊星歯車装置の各回転要素に接続されたクラッチCおよびブレーキBの制御により有段変速と無段変速とが切り換えられるような構成であっも構わない。
また第1実施例及び第2実施例ではエンジン8と差動部11とが直接連結されているが、必ずしも直接連結される必要はなく、エンジン8と差動部11との間にクラッチを介して連結されていてもよい。
また第1実施例及び第2実施例では、差動部11と自動変速部20とが直列接続されたような構成となっているが、特にこのような構成に限定されず、変速機構10全体として電気式差動を行う機能と、変速機構10全体として電気式差動による変速とは異なる原理で変速を行う機能と、を備えた構成であれば本発明は適用可能であり、機械的に独立している必要はない。また、これらの配設位置や配設順序も特に限定されない。要するに、自動変速部20は、エンジン8から駆動輪34への動力伝達経路の一部を構成するように設けられておればよい。
また第1実施例及び第2実施例の変速機構10において、第1電動機M1と第2回転要素RE2とは直結されており、第2電動機M2と第3回転要素RE3とは直結されているが、第1電動機M1が第2回転要素RE2にクラッチ等の係合要素を介して連結され、第2電動機M2が第3回転要素RE3にクラッチ等の係合要素を介して連結されていてもよい。
また第1実施例及び第2実施例において、第2電動機M2はエンジン8から駆動輪34までの動力伝達経路の一部を構成する伝達部材18に連結されているが、第2電動機M2がその動力伝達経路に連結されていることに加え、クラッチ等の係合要素を介して動力分配機構16にも連結可能とされており、第1電動機M1の代わりに第2電動機M2によって動力分配機構16の差動状態を制御可能とする変速機構10の構成であってもよい。
また第1実施例及び第2実施例において、自動変速部20は有段の自動変速機として機能する変速部であるが、無段のCVTであってもよい。
また第1実施例及び第2実施例は、例えば優先順位を設けるなどして、相互に組み合わせて実施することができる。
本発明の制御装置が適用されるハイブリッド車両用動力伝達装置の構成を説明する骨子図である。 図1のハイブリッド車両用動力伝達装置に備えられた自動変速部の変速作動とそれに用いられる油圧式摩擦係合装置の作動の組み合わせとの関係を説明する作動図表である。 図1のハイブリッド車両用動力伝達装置における各ギヤ段の相対回転速度を説明する共線図である。 図1のハイブリッド車両用動力伝達装置に設けられた電子制御装置の入出力信号を説明する図である。 シフトレバーを備えた複数種類のシフトポジションを選択するために操作されるシフト操作装置の一例である。 図4の電子制御装置による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。 図1のハイブリッド車両用動力伝達装置において、車速と出力トルクとをパラメータとする同じ二次元座標に構成された、自動変速部の変速判断の基となる予め記憶された変速線図の一例と、エンジン走行とモータ走行とを切り換えるためのエンジン走行領域とモータ走行領域との境界線を有する予め記憶された駆動力源切換線図の一例とを示す図であって、それぞれの関係を示す図でもある。 図1のハイブリッド車両用動力伝達装置において、自動変速部のアップシフト中にエンジン回転速度を上昇させる場合の差動部における各回転要素の相対回転速度を説明するための共線図であって、図3の縦線Y1,Y2,Y3に図8の縦線Y1,Y2,Y3は対応している。 図4の電子制御装置による制御作動において、自動変速部の変速中にエンジン始動のためエンジン回転速度が上昇させられる場合の、自動変速部の入力回転速度変化勾配と第1電動機トルク及び第2電動機トルクの増加量との関係の一例を示す図である。 図4の電子制御装置による制御作動において、蓄電装置の出力制限により自動変速部の変速制御が変更される場合の、電動機出力制限量と自動変速部の変速動作に関わるクラッチ又はブレーキに供給される油圧の油圧勾配との関係の一例を示す図である。 図4の電子制御装置の制御作動の要部すなわちエンジンを始動させるための制御作動を説明するフローチャートである。 図11のフローチャートに示す制御作動を説明するためのタイムチャートであって、モータ走行中にアクセルペダルが踏み込まれるなどして、自動変速部のアップシフト中にエンジン始動判断がなされた場合の例である。 図11のフローチャートに示す制御作動を説明するための図12とは別のタイムチャートであって、図12のタイムチャートにおいて、蓄電装置からの出力が制限されると判定された場合の例である。 図11のフローチャートに示す電子制御装置の制御作動を説明するためのタイムチャートであって、図12とは別の実施例である第2実施例に係るタイムチャートである。
符号の説明
8:エンジン(内燃機関)
10:変速機構(ハイブリッド車両用動力伝達装置)
11:差動部(電気式差動部)
16:動力分配機構(差動機構)
20:自動変速部(変速部)
34:駆動輪
80,110:電子制御装置(制御装置)
M1:第1電動機 M2:第2電動機

Claims (8)

  1. 内燃機関と駆動輪との間に連結された差動機構と該差動機構に動力伝達可能に連結された第1電動機とを有し該第1電動機の運転状態が制御されることにより該差動機構の差動状態が制御される電気式差動部と、動力伝達経路の一部を構成する変速部とを備えたハイブリッド車両用動力伝達装置の制御装置であって、
    前記内燃機関を始動させるため該内燃機関の回転速度を上昇させる場合には、前記変速部の変速状態に応じて、前記内燃機関を駆動するための前記第1電動機の駆動力を制御し、
    前記内燃機関を始動させるため前記変速部の変速中に該内燃機関の回転速度を上昇させる場合には、前記変速部の入力回転速度の単位時間当たりの変化幅の絶対値である入力回転速度変化勾配に基づいて、前記第1電動機の駆動力を制御する
    ことを特徴とするハイブリッド車両用動力伝達装置の制御装置。
  2. 前記内燃機関を始動させるため前記変速部の変速中に該内燃機関の回転速度を上昇させる場合において、前記第1電動機の駆動力が制限される場合には、該駆動力が制限されない場合に対して前記変速部の変速制御を変更する
    ことを特徴とする請求項1に記載のハイブリッド車両用動力伝達装置の制御装置。
  3. 前記内燃機関を始動させるため前記変速部の変速中に該内燃機関の回転速度を上昇させる場合において、該内燃機関の回転速度が、該内燃機関の回転から生じる振動が共振により増幅される該内燃機関の回転速度範囲である共振周波数帯の範囲内にある間は、前記変速部が非変速中である場合に対して前記第1電動機の駆動力を変更する
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載のハイブリッド車両用動力伝達装置の制御装置。
  4. 前記ハイブリッド車両用動力伝達装置は、前記動力伝達経路に連結された第2電動機を備えており、
    前記内燃機関を始動させるため該内燃機関の回転速度を上昇させる場合には、前記変速部の変速状態に応じて、前記第1電動機の駆動力に対する反力となる前記第2電動機の駆動力を制御する
    ことを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれか1項に記載のハイブリッド車両用動力伝達装置の制御装置。
  5. 前記内燃機関を始動させるため前記変速部の変速中に該内燃機関の回転速度を上昇させる場合には、前記変速部の入力回転速度の単位時間当たりの変化幅の絶対値である入力回転速度変化勾配に基づいて、前記第2電動機の駆動力を制御する
    ことを特徴とする請求項に記載のハイブリッド車両用動力伝達装置の制御装置。
  6. 前記内燃機関を始動させるため前記変速部の変速中に該内燃機関の回転速度を上昇させる場合には、該変速部が非変速中である場合と比較して前記第2電動機の駆動力を大きくする
    ことを特徴とする請求項に記載のハイブリッド車両用動力伝達装置の制御装置。
  7. 前記内燃機関を始動させるため前記変速部の変速中に該内燃機関の回転速度を上昇させる場合において、前記第2電動機の駆動力が制限される場合には、該駆動力が制限されない場合に対して前記変速部の変速制御を変更する
    ことを特徴とする請求項乃至請求項のいずれか1項に記載のハイブリッド車両用動力伝達装置の制御装置。
  8. 前記内燃機関を始動させるため前記変速部の変速中に該内燃機関の回転速度を上昇させる場合において、該内燃機関の回転速度が、該内燃機関の回転から生じる振動が共振により増幅される該内燃機関の回転速度範囲である共振周波数帯の範囲内にある間は、前記変速部が非変速中である場合に対して前記第2電動機の駆動力を変更する
    ことを特徴とする請求項乃至請求項のいずれか1項に記載のハイブリッド車両用動力伝達装置の制御装置。
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