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JP4854777B2 - 危険物検査装置 - Google Patents
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JP4854777B2 - 危険物検査装置 - Google Patents

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Description

本発明は、爆発物を用いたテロや犯罪を防止するセキュリティ技術に係わる。
世界的にテロの脅威が増している。最近では、日用品を用いた爆薬の製造方法が広く知られるようになり、日常生活においても爆発物によるテロや犯罪が脅威となってきた。ロンドンでは地下鉄とバスを狙った、同時多発テロが発生し多数の死傷者が出た。また、報道によれば、日本国内でも通勤電車内で自爆テロを企てた容疑者が逮捕されるなどの事例が発生している。
テロや犯罪を未然に防止するため、危険物探知技術の開発が各国で行われている。例えば特開2000−28579号公報には、質量分析計を用いた爆発物探知装置が記載されている。荷物から漏洩した蒸気をサンプリングプローブにより採取し、それを負のコロナ放電を用いてイオン化し、質量分析計を用いて検出することにより、危険物の有無を判定している。
また、ガソリンなどの危険な液体を航空機内等に持ち込ませないようにするため、液体検査装置も開発されている。例えば特開2008−157685号公報には、液体の入った容器の重量と誘電率とを計測し、各々が基準値から外れていた場合に危険物であると判定して警報を作動させる。
特開2000−28579号公報 特開2008−157685号公報
特許文献1に記載の従来技術は、主に軍用の爆薬や発射薬、工事現場などで使用される産業用爆薬の探知を目的にしている。しかしながら、これらの軍用爆薬や産業用爆薬は、各国でテロ対策が強化された結果、より厳重に管理されるようになってきた。従って、紛争地帯を除き、犯罪者がこれらの爆薬を入手することは困難となっている。
このため、最近特に問題となっているのは、手製爆弾によるテロや犯罪である。手製爆弾に使用する手製爆薬は日用品を原料として合成され、その製造方法がインターネットを介して広く知られるようになり、世界的に使用される傾向にある。これらの手製爆薬を迅速に検査する方法が求められている。
また、手製爆薬において、液体状の物質を航空機内に持ち込んで飛行中に爆発させる計画であったテロ未遂事件も発生した。この事件以後、航空機内に持ち込む手荷物中の液体状、ゲル状物質が規制されるようになった。現在のところ、これらの液体状、ゲル状物質の検査には目視及び臭気による検査員の判断が必要である。しかしながら、検査員は、迅速な検査が求められるなかで、正確に物質を見分けることは困難である。また、容器の内容物を入れ替えたり、密閉したりした場合は検査が困難になる。
そこで、特許文献2のように、ガソリンなどの危険な液体を航空機内等に持ち込ませないようにするため、液体検査装置も開発されている。しかし、この方法では、容器の種類と内容物の重量を読み取る必要があり、その分、検査に時間がかかってしまい、迅速な検査は困難である。
また、特許文献1に記載されたような従来の爆発物探知機は主に空港や重要施設での運用を前提に考え、比較的少ない人数を検査する目的で考えられている。駅などの旅客が大量に利用する大量輸送機関で使用する上では、短時間で検査できる高スループットと、爆発物を所持していないのに探知機が反応してしまう誤報率を下げることの二つが重要である。特に、誤報が発生すると検査員による入念な手荷物検査が必要になり、高スループットにも影響する。したがって、誤報が発生した場合には、迅速な検査は困難である。
以上のような理由で、手製爆薬を迅速かつ低誤報で検査する方法が求められている。
本発明は、容器内の危険物を迅速かつ低誤報で検査する危険物検査装置を提供する。容器の内容物を手製爆薬に入れ替えても、フタ部分からは微量の手製爆薬成分のガスが発生する。この微量のガスを吸引し、高感度かつ高選択性の質量分析計で分析することでガス成分を特定することが可能になる。また、手製爆薬を扱った場合、容器の表面に手製爆薬の微粒子が付着する可能性もある。この微粒子から発生する微量のガスを吸引、あるいは微粒子自身を吸引し、ガス化して質量分析することでも、ガス成分を特定することが可能になる。
本発明の危険物検査装置は、一例として、検査する容器を置く容器載置部と、容器載置部に開口した吸気部と、吸気部から試料ガスを吸引する吸引部と、吸引された試料ガスをイオン化するイオン源と、イオン源で生成されたイオンを質量分析する質量分析部と、イオン源と質量分析部を制御する制御部と、手製爆薬に由来する質量スペクトルデータを保持するデータベース部と、質量分析部による試料ガスの質量分析結果とデータベース部に保持された質量スペクトルデータとを照合して手製爆薬の有無を判定する判定部と、判定部の判定結果を表示する表示部とを備える。
本発明によれば、容器内物質の高精度な検査が容易になることで、迅速かつ低誤報での検査が可能になる。したがって、空港の手荷物検査だけでなく、各種イベントや駅などの集客施設での検査も可能になり、よりテロや犯罪のリスクを軽減し、安全な社会の構築に寄与することができる。
本発明による容器内物質の検査装置の一例を示す概略図である。 本発明による容器内物質の検査装置の内部構成の一例を示す図である。 データベースの一例を示す説明図である。 本発明による手製爆薬検出の処理手順の一例を示す図である。 質量分析部の一例を示す図である。 本発明の検査装置で測定されたトリアセトントリパーオキサイドの質量スペクトルの一例を示す図である。 本発明の検査装置で測定されたヘキサメチレントリパーオキサイドジアミンの質量スペクトルの一例を示す図である。 本発明の検査装置により得られた過酸化水素の質量スペクトルの一例を示す図である。 本発明の検査装置によりヘキサメチレントリパーオキサイドジアミンをタンデム質量分析した質量スペクトルの一例を示す図である。 本発明の検査装置により過酸化水素のm/z=66のイオンをタンデム質量分析した質量スペクトルの一例を示す図である。 本発明の検査装置により過酸化水素のm/z=77のイオンをタンデム質量分析した質量スペクトルの一例を示す図である。 本発明の検査装置により容器中の過酸化水素をタンデム質量分析で検出した一例を示す図である。 本発明の検査装置により容器中の過酸化水素をタンデム質量分析で検出した一例を示す図である。 検査装置に設置した複数の試料導入配管の一例を示す図である。 複数の吸気部と複数の試料導入配管を有する検査装置の一例を示す説明図である。
以下、本発明の実施の形態について、図を用いて詳細に説明する。なお、ここで説明する装置構成や処理動作の内容は本発明の具体化の一例であり、それと既知の技術との組み合わせや置換による変形例も本発明の範囲に含まれる。
(A)第一の実施の形態
以下、本発明の第一の実施の形態について説明する。図1は、本実施形態の容器内物質の検査装置の一例を示す概略図である。検査装置1の前面には容器2を置く容器載置部が設けられている。容器載置部には、大きい容器用の容器載置部(大)3がある。容器載置部(大)3は、例えばペットボトルの場合、500mL容器を想定しているが、これより大きな容器を置くことができてもよい。また、容器載置部には小さい容器用の容器載置部(小)4もあり、小さい容器も置けるような構造になっている。小さい容器としては、例えばペットボトルの場合、350mL容器を想定しているが、これより小さい容器を置くことができてもよい。本実施例では大きな容器と小さな容器の2種類の容器を想定しているが、容器載置部は3種類以上の容器がおける形状になっていてもよい。また、本実施例では、容器としてペットボトルを例としているが、本発明の検査装置は、アルミやガラス製の容器、紙パックやプラスチックチューブ等の液体又はジェル、固体を入れる容器にも適用可能である。本発明の検査装置は、容器のフタ部分や継ぎ目などから漏れ出す極微量のガス成分や、容器表面に付着している微粒子も検出可能である。
容器載置部への容器2の置き方は、水平に倒したり、垂直に立てたりして置くようにしてもよいが、斜めに置く構造とすると、手で置き易く、また、容器の内容物がこぼれることを防ぐことができる。容器載置部の壁面には、容器内あるいは容器の表面に付着した手製爆薬成分のガスや微粒子を装置内に吸引する吸気部5が開口している。吸気部5から、容器2のフタ部分から漏れ出す手製爆薬のガスや容器表面に付着した手製爆薬の微粒子からのガスや微粒子自身を装置内に吸引する。図1には吸気部5が1つの場合を図示しているが、吸気部5は複数あってもよい。容器2のフタ部分が吸気部5の位置にくるように、フタ合わせ位置マーク6で容器を置く場所を表記している。大きい容器であっても小さい容器であっても、容器載置部に置かれたとき容器のフタが吸気部5の近くに位置するように、容器載置部(大)3と容器載置部(小)4の位置や形状が設計されている。図示の例の場合、容器載置部(小)4は容器載置部(大)3の載置面の上側の部分に一段深く設けられた凹みとして構成されている。
吸気部5から吸引したガス及び微粒子を含む試料ガスを分析することで、手製爆薬成分の有無を判定し、結果を表示部7に表示する。容器を容器載置部に置いてから結果が表示されるまで時間は、検出対象物質の蒸気圧で変化するが、比較的蒸気圧が高い手製爆薬の場合、1秒以下から数秒以下で結果を表示することが可能である。また、軍用爆薬のような蒸気圧が低い物質の場合には、数秒以下から10秒以下で結果を表示することが可能である。
本実施例では、吸気部5から吸引したガス及び微粒子からなる試料ガスの分析を行っているが、合わせて近赤外光による容器内容物の分光分析や液体の誘電率を分析する方法等の別の方法も同時にあるいは個別に行ってもよい。
図2は、本実施形態の容器内物質の検査装置の内部構成の一例を示す図である。大きい容器2は、検査装置1の容器載置部(大)3の凹みに置くことで、容器2のフタ部分が吸気部5の位置にくる。一方、小さい容器の場合には、容器を容器載置部(小)4の凹みに置くことで、同様に容器2のフタ部分が吸気部5の位置にくる。このように、容器の大きさに係らずフタ部分が吸気部5の位置にくるようになっている。吸気部5の前面には粗メッシュ状フィルタ8が付けられていて、大きな埃が入ったり、指を吸気部5に入れたりすることを防ぐ。粗メッシュ状フィルタ8には、例えば金網メッシュ(開き目0.5mm、開孔率50%)を用いた。この粗メッシュ状フィルタ8は交換可能であり、埃が詰まった場合には清掃して再利用するか、新品と交換する。
ガス及び微粒子を含む容器2のフタ付近の空気は、吸気部5から試料導入配管17を介して吸引ポンプ12によって吸引され、イオン源11に導入される。吸引ポンプ12の吸引流量は、例えば2.0L/minである。この吸引流量であれば1秒以下で容器のフタ付近の空気をイオン源に導入することが可能である。また、さらに吸引流量を増やすあるいは減らしてもよい。試料導入配管17は、配管ヒータ9で加熱して配管内部へのガスや微粒子の吸着を防ぐ。また、手製爆薬成分を検出した場合や吸気部5又は試料導入配管17が汚れてしまった場合には、次の検査が早期に行えるように加熱クリーニングすることもできる。配管ヒータ9は、最高温度300℃まで加熱可能であるが、手製爆薬の場合、加熱による熱分解が起こるため、70〜120℃の間で使用することが望ましいが、50℃〜150℃でもよい。例えば、TATP(トリアセトントリパーオキサイド)の場合、試料導入配管17を70℃に加熱することで最大の検出感度が得られるが、50℃〜150℃の温度範囲であればTATPの検出は可能である。一方、HMTD(ヘキサメチレントリパーオキサイドジアミン)の場合には、試料導入配管17を120℃に加熱することで最大の検出感度が得られるが、50℃〜150℃の温度範囲であればHMTDの検出は可能である。例えば、試料導入配管17を150℃に加熱した場合は、最大感度より感度は低下するがTATPの検出は可能であり、逆に試料導入配管17を50℃に加熱した状態でHMTDを検出することも可能である。また、中間の加熱温度、例えば100℃にすれば、TATPとHMTDの両方をある程度の感度で検出することも可能である。
試料導入配管17に細メッシュ状フィルタ10を設けることで、この細メッシュ状フィルタ10に微粒子が付着する。細メッシュ状フィルタ10は配管ヒータ9で加熱されているため、付着した微粒子がガス化されて試料ガスとなる。また、細メッシュ状フィルタ10は、粗メッシュ状フィルタ8で捕集できなかった埃でイオン源11が汚されることを防ぐ役割もある。細メッシュ状フィルタ10には、例えば50μmmのステンレス鋼線フィルタや焼結体フィルタを用いるとよい。この細メッシュ状フィルタ10も粗メッシュ状フィルタ8と同様に、必要に応じて清掃して再利用したり、新品と交換したりすることができる。また、細メッシュ状フィルタ10は、微粒子をガス化するために個別に加熱してもよい。
イオン源11は、例えば特開2000−28579号公報に記載されている、負のコロナ放電あるいは正のコロナ放電を用いた大気圧化学イオン化源とすることができる。イオンの生成方法は、放射線源による放射線照射、電子や光、レーザー光の照射、ペニング放電、エレクトロスプレー等、他の方法であってもよい。イオン源11で試料ガスから生成されたイオンは、質量分析部13で質量分析される。質量分析部13は、例えばワイヤー方式リニアイオントラップ質量分析計を用いることができる。質量分析の方法は、リニアイオントラップ質量分析計、四重極イオントラップ質量分析計、四重極フィルタ質量分析計、三連四重極質量分析計、飛行時間型質量分析計、磁場型質量分析計、イオンモビリティ等、他の方法であってもよい。質量分析部13で計測された信号は、制御部14で質量スペクトルとして計測される。この質量スペクトルから手製爆薬特有の質量数のピークを抽出する。データベース部15には、手製爆薬物質を同定するために必要な標準質量分析データを含む情報が保持されている。保持されている情報には、イオンの質量数mをイオンの価数zで割った質量電荷比(m/z)の値と相対強度が含まれる。質量分析部13で計測された質量スペクトルは、判定部16に送られ、データベース部15から読み出された手製爆薬のデータと照合する等のデータ処理がされて、手製爆薬物質の特定がなされる。
図3は、データベース15が保持している情報の一例を示す説明図である。データベース15には、検出対象である手製爆薬の成分物質、正イオン検出か負イオン検出かの種別、質量分析(MS)あるいはタンデム分析(MSMS)の種別、その手製爆薬成分由来のイオンの質量電荷比、その質量電荷比の範囲、検出と判断する閾値、他の手製爆薬成分由来のイオンとのAND又はORをとるか、あるいは夾雑成分由来のイオンとのNOTをとるか等の情報が格納されている。特定された手製爆薬物質の有無、及び/又は質量分析の結果は、表示部7に表示される。表示部7は、例えば手製爆薬成分が検出された場合は赤ランプ、検出されない場合は青ランプを点灯し、閾値付近の場合には黄色ランプを点灯する。結果の表示方法はランプの点灯に限らず、表示部7の画面全体あるいは一部の表示状態を変化させる等でオペレータに検出の有無を認識させることができればよい。視覚的な表示ではなく、ブザー等の音で報知してもよい。また、何が検出されたかを文字あるいは色で表示してもよい。また、検出されたイオンの強度を棒グラフ、数字などで画面に表示してもよい。
図4は、本発明による手製爆薬検出の処理手順の一例を示す図である。被検体である容器を検査装置の容器載置部に置き(S11)、手動あるいは自動で吸引ポンプによって蒸気あるいは微粒子を吸引する(S12)。その蒸気あるいは微粒子を質量分析して質量スペクトルを測定する(S13)。測定した質量スペクトルをデータベースと照合することで手製爆薬の有無、及び/又は質量分析の結果を表示させる(S15,S16)。
図5は、本実施形態の質量分析部の一例を示す図である。ここでは、質量分析部にワイヤー方式リニアイオントラップ質量分析計を用いた例を説明する。イオン源11では、大気中のコロナ放電によって一次イオンを生成し、この一次イオンと試料ガスとの化学反応を利用して試料ガスをイオン化する。イオン源11には針電極18が配置され、引出電極19との間に高電圧が印加され、針電極18の先端付近にコロナ放電が発生する。例えば、正のイオン化では5kV、負のイオン化では−4kVの電圧を印加した。このコロナ放電により、空気中の窒素、酸素、水蒸気などがイオン化され、一次イオンとなる。生成された一次イオンは電界により第1細孔電極20a側に移動する。試料導入配管17を介して吸引された試料ガスは、引出電極19の開口部を通って針電極18側に流れ込む。その際、一次イオンと反応することで、試料ガスはイオン化される。
イオン化された試料ガスのイオンは、第1細孔電極20a、第1差動排気部21a、第2細孔電極20b、第2差動排気部21b、第3細孔電極20cを介して高真空部21cのイオントラップ部24に導入される。大気から真空までイオンを導入するには差動排気する。差動排気には真空ポンプ22a、真空ポンプ22bを使用した。真空ポンプ22bは1台で2箇所の真空排気が可能である。真空ポンプ22aは、真空ポンプ22bの粗引きポンプとしても使用した。差動排気の方法は、個別に真空ポンプを用いるなど、別の方法でもよい。それぞれの細孔の穴径は、例えば第1細孔電極20aの細孔は内径0.12mm、長さ10mm、第2細孔電極20bの細孔は内径0.5mm、第3細孔電極20cの細孔は内径1.2mmとした。細孔の穴径は、真空ポンプの排気量に依存する。第2差動排気部21bにはイオンガイド23が設置されている。このイオンガイドに代えて、イオンレンズ等を用いてもよい。また、第1差動排気部21a、第2差動排気部21b、高真空部21cに、イオンガイドやイオンレンズ等を設置してもよい。イオン源11や第1細孔電極20a、第2細孔電極20bは、内部に汚れ等が付着するのを防ぐために加熱したほうが望ましい。
イオントラップ部24は、入口端電極25a、出口端電極25b、四重極ロッド電極26、四重極ロッド電極26の間隙に挿入された励起電極27、トラップワイヤー電極28a、引き出しワイヤー電極28bより構成される。イオントラップ部24には、バッファーガス供給源31から、イオントラップやイオン解離に必要なバッファーガスを供給する。本実施例ではヘリウムガスを用いたが、空気やアルゴン、窒素等でもよい。イオントラップ部24に導入されたイオンは、軸方向の入口端電極25aとトラップワイヤー電極28a間の静電ポテンシャルと径方向の四重極ロッド電極26による四重極ポテンシャルによって図中に示したトラップ領域29にイオンがトラップされる。四重極ロッド電極26間に挿入された励起電極27に交流電圧を印加すると、特定のm/zのイオンのみが励起電極27方向に共鳴励起され、引き出しワイヤー電極28bが形成する引き出し電界により軸方向に排出される。この特定のm/zのイオンを検出器30で検出する。共鳴条件や各電極の電圧を制御部14で制御して任意のm/zのイオンを排出することで、質量スペクトルが得られる。
1回の質量スペクトルの測定は、例えば100ミリ秒で可能である。また、正イオンと負イオンを交互に測定することも可能である。具体的には、例えば正イオンを0.5秒で測定した後に、各電極を高速で負イオン検出用に切り替えることで負イオンを0.5秒で測定し、再び各電極を高速で正イオン検出用に切り替えて正イオンを測定する。これを繰り返すことで、正イオンの質量スペクトルと負イオンの質量スペクトルを測定する。その結果、1秒で正負両イオンの質量スペクトルを測定できる。切替速度は、さらに早くすることも可能である。また、正イオン(あるいは負イオン)の測定の際には、質量範囲が異なる質量スペクトルや、通常の質量スペクトルとタンデム質量スペクトルなどの複数のスペクトルを測定することもできる。これらの測定モードの切り替えや連続した測定は制御部14の制御下に行われる。測定された質量スペクトルは、判定部16に送られ、データベース部15から読み出された手製爆薬のデータベースの情報と照合する等のデータ処理がされて、手製爆薬物質の特定がなされる。特定された手製爆薬物質の有無、及び/又は質量分析の結果は、表示部7に表示される。本実施例では質量分析部にワイヤー方式リニアイオントラップ質量分析計を用いたが、イオントラップ部24が四重極イオントラップや四重極フィルタ、イオンモビリティ等の他の質量分析方法でもよい。
手製爆薬の成分で代表的な物質を本発明の検査装置で測定した。図6は、本発明の検査装置で測定されたトリアセトントリパーオキサイドの質量スペクトルの一例を示す図である。容器のフタ付近に数μgのトリアセトントリパーオキサイド微粒子を付着させて、容器を本発明の検査装置にセットした。正イオン検出で、吸気部と試料導入配管は70℃に、イオン源及び第1細孔電極は120℃に加熱した。m/z=33,43,75,77の信号を検出した。トリアセトントリパーオキサイドの分子量(M)は222である。m/z=75は(M/3+H)+と推定される。それ以外のm/z=33,43,77はトリアセトントリパーオキサイドの分解物の信号である。すなわち、m/z=33,43,75,77の中で少なくとも1つの信号が検出されたときにトリアセトントリパーオキサイドが検出されたものとする。また、m/z=33,43,75,77の中で複数のピークが検出されたときトリアセトントリパーオキサイドが検出されたとすると、誤報が少なくなる利点がある。例えば、m/z=77のピークのみで検出を判断した場合、別の成分が偶然m/z=77のピークに検出されてしまうと誤報となってしまうが、別のピークのm/z=33,43,75の少なくとも1つが同時に検出された場合に、トリアセトントリパーオキサイドが検出されたとすると誤報の可能性が低減される。
図7は、本発明の検査装置で測定されたヘキサメチレントリパーオキサイドジアミンの質量スペクトルの一例を示す図である。容器のフタ付近に数μgのヘキサメチレントリパーオキサイドジアミン微粒子を付着させて、容器を本発明の検査装置にセットした。正イオン検出で、吸気部と試料導入配管は100℃に、イオン源及び第1細孔電極は120℃に加熱した。m/z=145,179,209の信号を検出した。ヘキサメチレントリパーオキサイドジアミンの分子量(M)は208である。m/z=209は(M+H)+と推定される。それ以外のm/z=145,179は、ヘキサメチレントリパーオキサイドジアミンの分解物の信号である。すなわち、m/z=145,179,209の中で少なくとも1つの信号が検出されたときにヘキサメチレントリパーオキサイドジアミンが検出されたものとする。また、m/z=145,179,209の中で複数のピークが検出されたときヘキサメチレントリパーオキサイドジアミンが検出されたとすると、誤報が少なくなる利点がある。例えば、m/z=145のピークのみで検出を判断した場合、別の成分が偶然m/z=145のピークに検出されてしまうと誤報となってしまうが、別のピークのm/z=179,209の少なくとも1つが同時に検出された場合に、ヘキサメチレントリパーオキサイドジアミンが検出されたとすると誤報の可能性が低減される。
図8は、本発明の検査装置により得られた手製爆薬の原料である過酸化水素の質量スペクトルの一例を示す図である。試料には30%水溶液の過酸化水素を用いた。容器に過酸化水素を約100mL入れて、フタを閉めて本発明の検査装置にセットした。負イオン検出で、吸気部と試料導入配管は70℃に、イオン源及び第1細孔電極は120℃に加熱した。m/z=66,77の信号を検出した。過酸化水素の分子量(M)は34である。m/z=66は(M+O2-、m/z=77は(CO3OH)-と推定される。すなわち、m/z=66,77の中で少なくとも1つの信号が検出されたときに過酸化水素が検出されたものとする。また、m/z=66,77の中で複数のピークが検出されたとき過酸化水素が検出されたとすると誤報が少なくなる利点がある。例えば、m/z=66のピークのみで検出を判断した場合、別の成分が偶然m/z=66にピーク検出されてしまうと誤報となってしまうが、別のピークのm/z=77が同時に検出された場合に、過酸化水素が検出されたとすると誤報の可能性が低減する。
(B)第二の実施の形態
以下、本発明の第二の実施の形態について説明する。本実施の形態では、検出された手製爆薬成分由来のイオンピークに対してタンデム質量分析し、解離した特有のフラグメントイオンを検出対象とした。容器内から漏洩してくる物質の濃度はきわめて薄いので、検出する装置には非常に高い感度が要求される。タンデム質量分析を行うと、バックグラウンドが低減されるため、高感度の測定が可能であり、本実施例に示したような容器内からの漏洩物の検出には特に有効である。
質量分析計において選択性を高める方法として、タンデム質量分析法が知られている。このタンデム質量分析法を実施する装置として、リニアイオントラップ質量分析計、四重極イオントラップ質量分析計、三連四重極質量分析計などがある。タンデム質量分析法では、2段階で質量分析を行う。1段目の質量分析としてイオン源で生成されたイオンのm/zを測定する。様々なm/zを有するイオンの中から特定のm/zを有するイオンを選択する(アイソレーション)。次に、選択されたイオン(プリカーサーイオン)を中性ガスなどとの衝突により解離させ、分解物イオン(フラグメントイオン)を生成する。そして、2段目の質量分析としてフラグメントイオンの質量分析を行う。プリカーサーイオンが解離する場合に、分子中のどの部位が切れるかは化学結合の強さに依存する。従って、フラグメントイオンを分析すると、プリカーサーイオンの分子構造の情報を含んだ質量スペクトルが得られる。つまり、イオン源で生成されたイオンにおいて、夾雑成分のm/zのイオンと、検出対象である手製爆薬成分の特定のm/zのイオンがイオンのm/zが偶然同じでも、フラグメントイオンの質量スペクトルを調べることで、手製爆薬成分が含まれているか否か判別できる。
リニアイオントラップ質量分析計、四重極イオントラップ質量分析計、三連四重極質量分析計によるタンデム質量分析法は広く知られているので、詳しい説明は省略する。タンデム質量分析法は、選択性が向上し誤探知を防ぐ効果だけでなく、極微量のガス成分の検出にも極めて有効である。つまり、プリカーサーイオンを解離させてフラグメントイオンを検出するため、解離によってケミカルノイズ等のバックグラウンドノイズを下げる効果がある。つまり、通常の質量分析ではバックグラウンドノイズに埋もれて検出できない極微量成分もバックグラウンドノイズが下がることで検出可能になる。
本実施例で用いたワイヤー方式リニアイオントラップ質量分析計によるタンデム質量分析の一例を図5で説明する。イオントラップ部24に導入されたイオンは、軸方向の入口端電極25aとトラップワイヤー電極28a間の静電ポテンシャルと径方向の四重極ロッド電極26による四重極ポテンシャルによって、図中に示したトラップ領域29にトラップされる。四重極ロッド電極26間に挿入された励起電極27に交流電圧を印加し、残したい特定のm/zのプリカーサーイオン以外を励起電極27方向に共鳴励起して排除する(アイソレーション)。このとき複数の特定のm/zのイオンを残してもよい。残った特定のm/zのプリカーサーイオンに対して、四重極ロッド電極26間に挿入された励起電極27に交流電圧を印加し、励起させてイオントラップ内に供給された中性ガス(例えばヘリウムガス)に衝突させる。このとき励起させるエネルギーはイオントラップ内から外に排除されない程度のエネルギーにする。中性ガスに衝突した特定のm/zのプリカーサーイオンは解離され、フラグメントイオンが生成し、イオントラップ内にトラップされる。このフラグメントイオンを、四重極ロッド電極26間に挿入された励起電極27に交流電圧を印加し、引き出しワイヤー電極28bが形成する引き出し電界により軸方向に排出する。この特定のm/zのフラグメントイオンを検出器30で検出する。
共鳴条件や各電極の電圧を制御部14で制御して任意のm/zのフラグメントイオンを排出することで、フラグメントイオンの質量スペクトルが得られる。このフラグメントイオンの質量スペクトルは、プリカーサーイオンの分子構造の情報を含んだ質量スペクトルである。このフラグメントイオンの質量スペクトルは判定部16に送られ、データベース部15から読み出された手製爆薬のデータベースと照合する等のデータ処理がされて、手製爆薬物質の特定がなされる。特定された手製爆薬物質の有無、及び/又は質量分析の結果は、表示部7に表示される。つまり、イオン源で生成されたイオンにおいて、夾雑成分のm/zのイオンと、検出対象である手製爆薬成分の特定のm/zのイオンとがイオンのm/zが偶然同じでも、フラグメントイオンの質量スペクトルを調べることで、吸引したサンプル中に手製爆薬成分が含まれているか否か判別できる。
具体的に手製爆薬をタンデム質量分析で検出する例を説明する。図9は、本発明の検査装置によりヘキサメチレントリパーオキサイドジアミンのタンデム質量分析した質量スペクトルの一例を示す図である。図9(A)は、1段目の質量分析した質量スペクトルである。この質量スペクトルのm/z=145はヘキサメチレントリパーオキサイドジアミンの分解物の信号であり、手製爆薬由来の質量ピークである。このピーク以外のm/zのイオンは夾雑成分由来の信号と思われる。図9(B)は、プリカーサーイオンを選択的にイオントラップしたアイソレーション後の質量スペクトルである。手製爆薬由来のイオンであるm/z=145以外のイオンを励起電極27で共鳴励起させて排除したものである。つまり、m/z=145は手製爆薬由来のイオンであるプリカーサーイオンとなる。次に、手製爆薬由来のイオンであるm/z=145のイオン(プリカーサーイオン)を中性ガスなどとの衝突により解離させ、分解物イオン(フラグメントイオン)を生成する。図9(C)は、手製爆薬由来のイオンであるm/z=145のプリカーサーイオンを解離させたフラグメントイオンの質量スペクトルである。フラグメントイオントしてm/z=117の信号を検出した。m/z=117はヘキサメチレントリパーオキサイドジアミンの分解物であるフラグメントイオンの信号である。つまり、m/z=145のプリカーサーイオンを解離させて、m/z=117のフラグメントイオンが検出された場合は、手製爆薬であるヘキサメチレントリパーオキサイドジアミンが検出されたと判断することができる。タンデム質量分析では通常の質量分析より、10倍以上の感度と精度向上が可能である。
また、トリアセトントリパーオキサイドをタンデム質量分析した場合、例えばm/z=75をプリカーサーイオンとして選択し、m/z=75以外を共鳴励起させて排除した。m/z=75のイオン(プリカーサーイオン)を中性ガスなどとの衝突により解離させ、分解物イオン(フラグメントイオン)を生成する。フラグメントイオントしてm/z=48の信号を検出した。m/z=48はトリアセトントリパーオキサイドの分解物であるフラグメントイオンの信号である。つまり、m/z=75のプリカーサーイオンを解離させて、m/z=48のフラグメントイオンが検出された場合は、手製爆薬であるトリアセトントリパーオキサイドが検出されたと判断することができる。
図10は、本発明の検査装置によって手製爆薬である過酸化水素のm/z=66のイオンをタンデム質量分析した質量スペクトルの一例を示す図である。図10(A)は1段目の質量分析した質量スペクトルである。この質量スペクトルのm/z=66は手製爆薬である過酸化水素由来の質量ピークである。m/z=66は(M+O2-と推定される。m/z=66をプリカーサーイオンとして選択し、m/z=66以外を共鳴励起させて排除した。m/z=66のイオン(プリカーサーイオン)を中性ガスなどとの衝突により解離させ、分解物イオン(フラグメントイオン)を生成する。図10(B)は、手製爆薬由来のイオンであるm/z=66のプリカーサーイオンを解離させたフラグメントイオンの質量スペクトルである。フラグメントイオントしてm/z=48の信号を検出した。m/z=48は過酸化水素の分解物であるフラグメントイオンの信号である。つまり、m/z=66のプリカーサーイオンを解離させて、m/z=48のフラグメントイオンが検出された場合は、手製爆薬である過酸化水素が検出されたと判断することができる。
手製爆薬である過酸化水素の別のプリカーサーイオンをタンデム質量分析した例を説明する。図11は本発明の検査装置によって過酸化水素のm/z=77のイオンをタンデム質量分析した質量スペクトルの一例を示す図である。図11(A)は1段目の質量分析した質量スペクトルである。この質量スペクトルのm/z=77は、手製爆薬である過酸化水素由来の質量ピークである。m/z=77は(CO3OH)-と推定される。m/z=77をプリカーサーイオンとして選択し、m/z=77以外を共鳴励起させて排除した。m/z=77のイオン(プリカーサーイオン)を中性ガスなどとの衝突により解離させ、分解物イオン(フラグメントイオン)を生成する。図11(B)は、手製爆薬由来のイオンであるm/z=77のプリカーサーイオンを解離させたフラグメントイオンの質量スペクトルである。フラグメントイオントしてm/z=60の信号を検出した。m/z=60は過酸化水素の分解物であるフラグメントイオンの信号である。つまり、m/z=77のプリカーサーイオンを解離させて、m/z=60のフラグメントイオンが検出された場合は、手製爆薬である過酸化水素が検出されたと判断することができる。手製爆薬である過酸化水素の場合、プリカーサーイオンとしてm/z=66、m/z=77のどちらか、又は両方を、同時又は片方ずつタンデム質量分析することで、検出できる確率が増え、さらに選択性が向上し誤探知を防ぐことが可能になる。
タンデム質量分析法は、選択性が向上し誤探知を防ぐ効果だけでなく、極微量のガス成分の検出にも極めて有効である。極微量の手製爆薬を検出した一例を説明する。図12は、本発明の検査装置を用いて、容器に過酸化水素を入れてフタを固く閉めたものをタンデム質量分析で検出した一例を示す図である。手製爆薬である過酸化水素由来の質量ピークであるm/z=66をプリカーサーイオンとして選択し、m/z=66以外を共鳴励起させて排除し、m/z=66を解離させ、m/z=48の過酸化水素の分解物であるフラグメントイオンを検出した。矢印は検査装置にセットしたときの信号変化である。検査装置にセットしてから約1秒での検出が確認できた。m/z=48のフラグメントイオンは、容器を検査装置にセットしたときだけ反応しており、確実に手製爆薬である過酸化水素由来のフラグメントイオンを検出できている。このフラグメントイオンを検出した場合に警報を発報する。
また、ペットボトルのフタを開封せずに内容物を手製爆薬である過酸化水素に入れ替えた場合に、未開封であるフタ部分から極微量の手製爆薬である過酸化水素のガス成分を検出した例を説明する。容器のフタを開封せずに注射器で穴をあけて内容物を取り出し、手製爆薬である過酸化水素を注射器で注入した。その後、注射器の穴を接着剤で密封したものである。この場合、フタが開封されていない為、外見的には未開封であるが内容物は入れ替えられている。そして、フタ部分から僅かに漏れる手製爆薬である過酸化水素のガス成分を検出する必要がある。
図13は、本発明の検査装置を用いて未開封の容器に注射器で入れ替えた過酸化水素をタンデム質量分析で検出した例を示す図である。手製爆薬である過酸化水素由来の質量ピークであるm/z=66をプリカーサーイオンとして選択し、m/z=66以外を共鳴励起させて排除し、m/z=66を解離させ、m/z=48の過酸化水素の分解物であるフラグメントイオンを検出した。矢印は検査装置にセットしたときの信号変化である。検査装置にセットしてから約1秒での検出が確認できた。m/z=48のフラグメントイオンは、容器を検査装置にセットしたときだけ反応しており、確実に手製爆薬である過酸化水素由来のフラグメントイオンを検出できている。このフラグメントイオンを検出した場合に警報を発報する。
(C)第三の実施の形態
複数の試料導入配管を使用して、それぞれの試料導入配管の温度を制御した本発明の検査装置の例を説明する。図14は、検査装置に設置した複数の試料導入配管の一例を示す図である。細メッシュ状フィルタ10及びイオン源11以降の質量分析部等は、第一の実施の形態及び第二の実施の形態と同様である。容器のフタ付近の空気に含有されるガス及び微粒子は、吸引ポンプ12によって吸気部5から吸引され、試料導入配管32,33を介してイオン源11に導入される。試料導入配管32は配管ヒータ34で加熱され、試料導入配管33は配管ヒータ35で加熱される。各配管の温度は、検出するガス及び微粒子の特性に合わせて変化させることが可能である。例えば、配管ヒータ34の加熱温度は70℃、配管ヒータ35の加熱温度は120℃に設定した。配管ヒータ34は50℃〜120℃で、配管ヒータ35は100℃〜150℃の温度範囲であればよい。図示していないが吸気部5はヒータで70℃に加熱している。
試料導入配管32は主にトリアセトントリパーオキサイドやニトログリセリンなどの高蒸気圧で分解しやすい物質を検出する際に用いる。これらの物質は高温の場合、熱分解してしまう恐れがあり、検出感度が得られない特性のものである。したがってトリアセトントリパーオキサイドやニトログリセリンなどに対して試料導入配管の温度は70℃〜120℃が適切である。一方、試料導入配管33は、主にヘキサメチレントリパーオキサイドジアミンなど前記したトリアセトントリパーオキサイドよりも熱分解しにくく低蒸気圧で、配管温度が低温の場合に配管内部に吸着してしまう物質に有効である。つまり、試料導入配管33は、配管ヒータ35で120℃に加熱されることで配管内部への爆薬成分の吸着を防ぐことができる。120℃以上であれば軍用爆薬のような低蒸気圧成分の検出も可能である。トリアセトントリパーオキサイドは配管温度が70℃で検出感度が高く、配管温度が120℃では熱分解で検出感度が低くなる。一方、ヘキサメチレントリパーオキサイドジアミンは配管温度が120℃で検出感度が高いが、配管温度が70℃では配管内部への吸着の影響で検出感度が低くなる。これらの物質を同時に検出できるようにするために70℃で加熱された試料導入配管32と120℃で加熱された試料導入配管33を使用する。本実施例では一例として低温用と高温用の2種類を説明したが、さらに複数の配管を用いてもよい。
ヘキサメチレントリパーオキサイドジアミンを検出した場合、70℃で加熱された試料導入配管32の配管内部にガス又は微粒子が吸着してしまい汚れてしまう。この場合、次の検査が早期に行えるように加熱クリーニングする必要がある。このとき、前述とは逆の温度で設定する。つまり、70℃であった配管ヒータ34の設定温度を120℃、120℃であった配管ヒータ35の設定温度を70℃に設定して加熱する。これにより、配管ヒータ34は120℃で加熱クリーニングされ、配管ヒータ35は70℃に降温されることになる。通常、加熱クリーニングする場合には、配管ヒータ34と配管ヒータ35の設定温度の両方を120℃以上、例えば150℃に加熱することが一般的である。しかし、その場合には昇温して降温する必要があり、時間がかかって、次の検査が早急に行えない。本実施例では、配管ヒータ34と配管ヒータ35の設定温度を逆転するだけで、配管ヒータ34は昇温、配管ヒータ35は降温のように同時に行い時間の短縮が可能となり、次の検査が早期に行えるようになった。
複数の試料導入配管だけでなく複数の吸気部を用いてもよい。図15は、複数の吸気部と複数の試料導入配管を有する検査装置の一例を示す説明図である。容器のフタ付近の空気に含有されるガス及び微粒子は、吸気部5及び吸気部36から試料導入配管32と試料導入配管33を介して、イオン源11に導入される。図示していないが吸気部5はヒータで70℃、吸気部36は120℃に加熱している。試料導入配管だけでなく吸気部も加熱することで、より吸着や熱分解を防ぐことができた。本実施例では吸気部の配置は縦方向としたが、ガスや微粒子が効率的に吸引できる位置にあれば横方向などでもよい。また、吸気部の大きさも変化させてもよい。
1 検査装置
2 容器
3 検査部(大)
4 検査部(小)
5 吸気部
6 フタ合わせ位置マーク
7 表示部
8 粗メッシュ状フィルタ
9 配管ヒータ
10 細メッシュ状フィルタ
11 イオン源
12 吸引ポンプ
13 質量分析部
14 制御部
15 データベース部
16 判定部
17 試料導入配管
18 針電極
19 引出電極
20a 第1細孔電極
20b 第2細孔電極
20c 第3細孔電極
21a 第1差動排気部
21b 第2差動排気部
21c 高真空部
22a 真空ポンプ
22b 真空ポンプ
23 イオンガイド
24 イオントラップ部
25a 入口端電極
25b 出口端電極
26 四重極ロッド電極
27 励起電極
28a トラップワイヤー電極
28b 引き出しワイヤー電極
29 トラップ領域
30 検出器
31 バッファーガス供給源
32 試料導入配管
33 試料導入配管
34 配管ヒータ
35 配管ヒータ
36 吸気部

Claims (17)

  1. 検査する容器を置く容器載置部と、
    前記容器載置部に置かれた容器のフタ部分に対応する位置で、前記容器載置部に開口した吸気部と、
    前記吸気部から試料ガスを吸引する吸引部と、
    前記吸引された試料ガスをイオン化するイオン源と、
    前記イオン源で生成されたイオンを質量分析する質量分析部と、
    前記イオン源と前記質量分析部を制御する制御部と、
    手製爆薬に由来する質量スペクトルデータを保持するデータベース部と、
    前記質量分析部による前記試料ガスの質量分析結果と前記データベース部に保持された質量スペクトルデータとを照合して手製爆薬の有無を判定する判定部と、
    前記判定部の判定結果を表示する表示部と
    を備えることを特徴とする危険物検査装置。
  2. 請求項1に記載の危険物検査装置において、前記検査する容器の大きさに係わらず前記フタ部分が前記吸気部に位置付けられるように、前記容器載置部に段差が設けられていることを特徴とする危険物検査装置。
  3. 請求項1又は2に記載の危険物検査装置において、前記イオン源はコロナ放電によってイオンを生成することを特徴とする危険物検査装置。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の危険物検査装置において、前記判定部は、前記試料ガスから質量電荷比75のイオンと質量電荷比77イオンが検出された場合に、トリアセトントリパーオキサイドが検出されたと判定することを特徴とする危険物検査装置。
  5. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の危険物検査装置において、前記判定部は、前記試料ガスから質量電荷比145のイオンと質量電荷比179イオンが検出された場合に、ヘキサメチレントリパーオキサイドジアミンが検出されたと判定することを特徴とする危険物検査装置。
  6. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の危険物検査装置において、前記判定部は、前記試料ガスから質量電荷比66のイオンと質量電荷比77イオンが検出された場合に、過酸化水素が検出されたと判定することを特徴とする危険物検査装置。
  7. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の危険物検査装置において、前記吸気部と前記イオン源とは試料導入配管で接続され、前記試料導入配管は50℃〜150℃に加熱されることを特徴とする危険物検査装置。
  8. 請求項1〜3のいずれか1項に記載の危険物検査装置において、前記吸気部と前記イオン源とは並列に配置された第1の試料導入配管と第2の試料導入配管で接続され、前記第1の試料導入配管は50℃〜120℃に加熱され、前記第2の試料導入配管は100℃〜150℃に加熱されることを特徴とする危険物検査装置。
  9. 検査する容器を置く容器載置部と、
    前記容器載置部に置かれた容器のフタ部分に対応する位置で、前記容器載置部に開口した吸気部と、
    前記吸気部から試料ガスを吸引する吸引部と、
    前記吸引された試料ガスをイオン化するイオン源と、
    前記イオン源で生成されたイオンを質量分析する質量分析部と、
    前記イオン源と前記質量分析部を制御してタンデム質量分析を行う制御部と、
    手製爆薬に由来するフラグメント質量スペクトルデータを保持するデータベース部と、
    前記質量分析部による前記試料ガスのタンデム質量分析結果と前記データベース部に保持されたフラグメント質量スペクトルデータとを照合して手製爆薬の有無を判定する判定部と、
    前記判定部の結果を表示する表示部と
    を備えることを特徴とする危険物検査装置。
  10. 請求項9に記載の危険物検査装置において、前記検査する容器の大きさに係わらず前記フタ部分が前記吸気部に位置付けられるように、前記容器載置部に段差が設けられていることを特徴とする危険物検査装置。
  11. 請求項9又は10に記載の危険物検査装置において、前記イオン源はコロナ放電によってイオンを生成することを特徴とする危険物検査装置。
  12. 請求項9〜11のいずれか1項に記載の危険物検査装置において、質量電荷比145のイオンをプリカーサーイオンとしてタンデム質量分析を行い、フラグメント質量スペクトルに質量電荷比117のイオンが検出された場合に、前記判定部は、ヘキサメチレントリパーオキサイドジアミンが検出されたと判定することを特徴とする危険物検査装置。
  13. 請求項9〜11のいずれか1項に記載の危険物検査装置において、質量電荷比66のイオン及び質量電荷比77イオンの両方又は片方をプリカーサーイオンとしてタンデム質量分析を行い、質量電荷比66のイオンがプリカーサーイオンの場合にフラグメント質量スペクトルに質量電荷比48のイオンが検出され、質量電荷比77のイオンがプリカーサーイオンの場合にフラグメント質量スペクトルに質量電荷比60のイオンが検出された場合に、前記判定部は過酸化水素が検出されたと判定することを特徴とする危険物検査装置。
  14. 請求項9〜11のいずれか1項に記載の危険物検査装置において、質量電荷比75のイオンをプリカーサーイオンとしてタンデム質量分析を行い、質量電荷比75のイオンがプリカーサーイオンの場合にフラグメント質量スペクトルに質量電荷比48のイオンが検出された場合に、前記判定部はトリアセトントリパーオキサイドが検出されたと判定することを特徴とする危険物検査装置。
  15. 請求項9〜11のいずれか1項に記載の危険物検査装置において、前記吸気部と前記イオン源とは試料導入配管で接続され、前記試料導入配管は50℃〜150℃に加熱されることを特徴とする危険物検査装置。
  16. 請求項9〜11のいずれか1項に記載の危険物検査装置において、前記吸気部と前記イオン源とは並列に配置された第1の試料導入配管と第2の試料導入配管で接続され、前記第1の試料導入配管は50℃〜120℃に加熱され、前記第2の試料導入配管は100℃〜150℃に加熱されることを特徴とする危険物検査装置。
  17. 検査する容器のフタ部分から発生する試料ガスを吸引する工程と、
    前記試料ガスをイオン化する工程と、
    前記イオン化されたイオンを質量分析する工程と、
    前記質量分析の結果得られた質量スペクトルとデータベースに保持された手製爆薬に由来する質量スペクトルデータとを照合する工程と、
    前記照合結果に基づいて手製爆薬の成分物質の存在の有無を判定する工程と
    を有することを特徴とする危険物検査方法。
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