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JP4855706B2 - 水素分離材及び水素分離装置 - Google Patents
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JP4855706B2 - 水素分離材及び水素分離装置 - Google Patents

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Description

本発明は、水素分離材に関する。詳しくはプロトン伝導性と電子伝導性をともに有する複合材料から成る水素分離材に関する。
水素の分離精製や製造プロセスにおいて膜型(薄板形状を含む。以下同じ。)の水素分離材の使用が検討されている。膜型水素分離材(水素分離膜)を適用した水素分離装置では、被処理ガスを継続的に供給しながらの連続運転が可能であるため、水素分離処理を効率よく行い得るものと期待される。
従来、かかる膜型水素分離材の一形態として、プロトン伝導体を利用したいわゆる水素ポンプが知られている。例えば特許文献1には、水素ポンプに適用し得る種々の組成のプロトン伝導性セラミックス(プロトン伝導体)が例示されている。また、特許文献2には、所定の組成の膜型プロトン伝導体の両面に電極を取り付けた電気化学セル(水素ポンプ)の使用形態が記載されている。
特開平10−297902号公報 特開2003−2610号公報
しかしながら、特許文献2に記載される電気化学セルのように従来のプロトン伝導体から成る水素分離材を使用して水素分離を行う場合、当該プロトン伝導体の両面に電極を設け、該電極間に所定の電圧を印加して電流を流す必要がある。このため、電気化学セル(水素ポンプ)の構造が複雑となり、更には高価な電極(典型的には白金製)を付設することはコスト増の要因となり、好ましくない。
そこで本発明は、上記従来のプロトン伝導体から成る水素分離材を用いる場合の問題点を根本から解消すべく創出されたものであり、電極を付設して電圧を印加することなく良好なプロトン伝導性を示す水素分離材を提供することを目的とする。また、そのような水素分離材を備える水素分離装置の提供を他の目的とする。
本発明により提供される一つの水素分離材は、プロトン伝導可能なセラミックスと電子伝導性物質とから実質的に形成された複合材料である。そして、かかる電子伝導性物質は融点が950℃未満の金属であり、且つ、融点950℃以上の金属を実質的に含まないことを特徴とする。
ここで「プロトン伝導可能なセラミックス」とは、該セラミックスと上記電子伝導性物質(典型的には、融点が950℃未満の金属)とが所定の混合比率で複合材料(コンポジット)を構成した際に当該複合材料においてプロトン伝導を実現させ得る当該セラミックスをいう。かかるプロトン伝導可能なセラミックスとしては、種々のプロトン伝導性セラミックス(例えば、プロトン伝導性酸化物)を使用することができる。また、後述するように電子伝導性物質がプロトン伝導性をあわせ持つ場合には、種々のセラミックス(例えばアルミナ)を使用することができる。
ここで開示される水素分離材は、電子伝導性物質として低融点の金属を含む。かかる構成の水素分離材を該電子伝導性物質の融点よりも高い温度で水素分離処理に使用すると、該分離材中の電子伝導性物質が溶融した状態となる。これにより、該分離材中に良好な電子伝導経路が形成され、単位容積あたりの電子伝導性能が向上し、それに伴ってプロトン伝導性が向上する。上記電子伝導性物質の融点は950℃未満であるので、水素分離処理を950℃以下の温度で行う場合にも上記プロトン伝導性の向上効果が適切に発揮され得る。従って、本発明の水素分離材によると、上記電子伝導性物質の融点以上(好ましくは融点以上950℃以下)の温度域で行われる水素分離処理によって効率よく水素を分離することができる。
前記電子伝導性物質の好適例としては、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)及びビスマス(Bi)から成る群から選択される1種又は2種以上の金属(単体)が挙げられる。
これらの金属はいずれも低融点(単体の融点が300℃未満)である。従って、かかる金属を電子伝導性物質として有する水素分離材によると、より幅広い温度条件下で(例えば、より低い温度条件下で)効率よく水素分離処理を行うことができる。本発明にとり特に好ましい電子伝導物質はインジウムである。インジウムは特に電子伝導性に優れる。また、インジウムは融点が200℃未満と低く、しかも通常の作業環境下(例えば100℃以下)では固体状であるため取扱性が良好である。
本発明により提供される他の一つの水素分離材は、融点が950℃以上のセラミックス(例えばアルミナ)と電子伝導性物質とから実質的に形成された複合材料である。その電子伝導性物質は、電子伝導性及びプロトン伝導性を持つ物質(以下、「電子−プロトン伝導性物質」と表記することもある。)である。そして、かかる電子−プロトン伝導性物質は融点が950℃未満の金属又は該金属の化合物であり、且つ、融点950℃以上の金属を実質的に含まないことを特徴とする。
このような構成の水素分離材を該電子−プロトン伝導性物質の融点よりも高い温度で水素分離処理に使用すると、該分離材中の電子−プロトン伝導性物質が溶融した状態となる。これにより、該分離材中に電子及びプロトンの伝導経路が形成され、単位容積あたりの電子伝導性能が向上し、それに伴ってプロトン伝導性が向上する。ここで使用する電子−プロトン伝導性物質の融点は950℃未満であるので、水素分離処理を950℃以下の温度で行う場合にも上記効果が適切に発揮され得る。従って、本発明の水素分離材によると、上記電子伝導性物質の融点以上(好ましくは融点以上950℃以下)の温度域で行われる水素分離処理によって効率よく水素を分離することができる。
本発明に使用し得る電子−プロトン伝導性物質の好適例としては、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)及びビスマス(Bi)から成る群から選択される1種又は2種以上の金属(単体)及び/又は該金属の化合物が挙げられる。これらの金属はいずれも低融点(単体の融点が300℃未満)である。本発明にとり特に好ましい電子−プロトン伝導物質として、インジウム及び/又はインジウム化合物が挙げられる。
また、ここで開示される水素分離材の好ましい一態様は、前記セラミックス及び前記電子伝導性物質の合計を100mol%としたときの前記電子伝導性物質のモル含有率が40〜80mol%である水素分離材である。
かかる含有率とすることにより、高いプロトン伝導性を実現し、水素分離能力に優れた水素分離材が提供される。
また、本発明は、上記目的を実現する他の側面として、ガス流通可能なチャンバーと、そのチャンバー内に設けられた本発明に係る水素分離材から成る水素分離用隔壁とを備え、前記チャンバー内に前記水素分離用隔壁によって相互に隔てられた被処理ガス供給部と水素透過部とが形成されている水素分離装置を提供する。かかる構成の水素分離装置によると、水素分離材(典型的には膜型水素分離材)を備えるチャンバー内に導入された被処理ガスから高効率に水素を分離することができる。該水素分離装置は、好ましくは、前記水素分離用隔壁を構成する水素分離材に含まれる前記電子伝導性物質の少なくとも一部が溶融可能な温度まで該隔壁を加熱する加熱手段を備える。
また、本発明は、他の側面として、ここで開示される水素分離材(水素分離装置)を用いて被処理ガス中から水素を分離する水素分離方法であって、使用する水素分離材に含まれる電子伝導性物質の融点以上の温度に当該水素分離材を加熱して水素分離処理を行うことを特徴とする水素分離方法を提供する。
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄は、いずれも従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書及び図面によって開示されている事項と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
本発明の水素分離材に含まれる「プロトン伝導可能なセラミックス」は、単独で(即ち、他の材料と複合化しない状態において)プロトン伝導性を示すことが知られている種々のプロトン伝導性セラミックス(例えば、プロトン伝導性酸化物)であり得る。例えば、SrZrO3系酸化物、SrCeO3系酸化物、BaCeO3系酸化物、CaZrO3系酸化物等の、ペロブスカイト型(ABO3型)構造を有する酸化物を使用することができる。ここでいう「SrZrO3系酸化物」の概念には、ペロブスカイト型構造のBサイトを占める元素(ここではZr)の一部が他の元素で置き換えられた酸化物が含まれる。以下、このようなSrZrO3系酸化物を「Sr(Zr,M)O3系酸化物」と表すことがある。ここでMは、Sc,Y,ランタノイド(例えば、Nd,Pm,Sm,Eu,Gd,Dy,Ho,Er,Tm,Yb及びLu)及びInからなる群から選択される少なくとも一種の元素である。「SrCeO3系酸化物」、「CaZrO3系酸化物」及び「BaCeO3系酸化物」についても同様に、それぞれSr(Ce,M)O3系酸化物、Ca(Zr,M)O3系酸化物、Ba(Ce,M)O3系酸化物を含む概念である。Sr(Zr,M)O3系酸化物の例としては、Sr(Zr,Y)O3系酸化物、Sr(Zr,Yb)O3系酸化物等が挙げられる。SrCeO3系酸化物の例としてはSr(Ce,Y)O3系酸化物等、BaCeO3系酸化物の例としてはBa(Ce,Y)O3系酸化物、Ba(Ce,Nd)O3系酸化物等、CaZrO3系酸化物の例としてはCa(Zr,In)O3系酸化物等が挙げられる。
なお、ペロブスカイト型の酸化物を表す上記化学式において酸素原子数は3であるように表示されているが、実際には酸素原子の数は3以下(典型的には3未満)であり得る。ただし、この酸素原子数はペロブスカイト構造の一部を置換する原子の種類及び置換割合その他の条件により変動するため、正確に表示することは困難である。そこで、本明細書中においてペロブスカイト型材料を示す化学式では酸素原子の数を便宜的に3として表示するが、ここで教示する発明の技術的範囲を限定することを意図したものではない。従って、この酸素原子の数を例えば3−zと書くこともできる。ここでzは、典型的には1を超えない正の数(0<z<1)である。
ここに開示される水素分離材の一つの態様では、該分離材を構成するセラミックスが、下記式(1):
A(T1-xx)O3 ・・・(1);
で表されるペロブスカイト型酸化物(典型的にはプロトン伝導性酸化物)である。ここで、式(1)中のAはSr又はBaであり、TはZr又はCeである。また、式(1)中のxは、このペロブスカイト型構造においてTがYによって置き換えられた割合を示す値である。0.03≦x≦0.2を満たす酸化物が好ましく、0.03≦x≦0.1を満たす酸化物がより好ましく、0.03≦x≦0.07を満たす化合物が更に好ましい。
プロトン伝導可能なセラミックスとともに複合材料(コンポジット)を構成する電子伝導性物質(少なくとも電子伝導性を示す物質であればよく、例えば、電子伝導性とプロトン伝導性とをあわせ持つ物質であってもよい。)は、融点が950℃未満の金属又は該金属を構成元素として含む化合物から選択される1種又は2種以上であり得る。上記融点の値としては、「日本化学会編化学便覧 基礎編I(改訂4版)」に記載された値を採用することができる。本発明の水素分離材における電子伝導性物質又はその構成元素として選択し得る「融点が950℃未満の金属」としては、インジウム(In)、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)及びビスマス(Bi)及びゲルマニウム(Ge)を例示することができる。融点が300℃未満の金属が好ましく、融点が200℃未満の金属が更に好ましい。製造時における取扱性等の観点から、アルカリ金属以外(より好ましくは、アルカリ金属及びアルカリ土類金属以外)の金属が好ましい。また、融点が25℃以上の金属が好ましく、融点が100℃以上の金属がより好ましい。性能安定性等の観点から、長周期型周期表の12〜15族(より好ましくは13〜15族)に属する金属が好ましい。
ここに開示される水素分離材の好ましい一つの態様では、上記電子伝導性物質が、インジウム(融点156.61℃)、ガリウム(融点29.78℃)、スズ(融点231.97℃)及びビスマス(融点271.3℃)からなる群から選択される1種又は2種以上の金属及び/又は該金属の化合物である。例えば、かかる群から選択される1種又は2種以上の金属を電子伝導性物質として有する水素分離材が好ましい。本発明にとり特に好ましい電子伝導物質として、インジウム及びインジウム化合物(例えば、In23等の酸化インジウム)が挙げられる。かかる金属(電子伝導性物質)の一部又は実質的に全部を該金属の化合物(典型的には酸化物)の形態で含む水素分離材であってもよい。電子伝導性物質の少なくとも一部が金属化合物である水素分離材を用いて水素分離処理を行う際には、該水素分離処理に先立って(あるいは該水素分離処理の初期段階で)、該金属化合物の一部又は全部を金属(単体)に変換する処理(還元処理等)を実施することが好ましい。
ここに開示される水素分離材は、該水素分離材に含まれる電子伝導性物質の融点以上の温度で水素分離処理に使用される水素分離材として好適である。かかる使用態様によると、溶融状態にある電子伝導性物質によって水素分離材中に良好な電子伝導経路を形成することができる。これにより単位容積あたりの電子伝導性能が向上し、それに伴ってプロトン伝導性が向上する。例えば、該水素分離材に電極を付設して電圧を印加することなく、良好なプロトン伝導性を継続して発揮することができる。また、一般にセラミックスと異種材料(例えば金属材料)との複合材料は熱膨張率の違いによる損傷(破壊、剥離、接合不良等)を生じやすいところ、水素分離材に含まれる電子伝導性物質が溶融状態となる温度で水素分離処理を行う上記使用態様によると、上記損傷等の発生を防止することができる。ここに開示される水素分離材に含まれる電子伝導性物質の融点は950℃未満であり、かつ、該分離材は融点950℃以上の金属(単体)を実質的に含有しない。従って、比較的低温(950℃以下、例えば700〜950℃)で水素分離処理を行う場合にも上記効果(セラミックスと金属との熱膨張率の違いに起因する損傷の防止)が実現され得る。このように比較的低温で水素分離を行うことはコスト的に有利であり好ましい。
本発明の水素分離材が融点950℃以上のセラミックスと電子−プロトン伝導性物質とから実質的に形成された複合材料である場合、該電子−プロトン伝導性物質とともに複合材料(コンポジット)を構成するセラミックスは、電子伝導性及びプロトン伝導性を実質的にもたないセラミックスであってもよく、電子伝導性又はプロトン伝導性を有するセラミックスであってもよい。例えば、上述したプロトン伝導性セラミックスの他、アルミナ、ジルコニア、窒化ケイ素等のような融点950℃以上のセラミックスを使用することができる。電子−プロトン伝導性物質とともに複合材料を構成するセラミックスの一好適例としてアルミナが挙げられる。
上記電子−プロトン伝導性物質としては、インジウム(融点156.61℃)、ガリウム(融点29.78℃)、スズ(融点231.97℃)及びビスマス(融点271.3℃)からなる群から選択される1種又は2種以上の金属及び/又は該金属の化合物を例示することができる。該金属がインジウムである電子−プロトン伝導性物質が特に好ましい。かかる金属の一部又は実質的に全部を該金属の化合物(典型的には酸化物)の形態で含む水素分離材であってもよい。電子−プロトン伝導性物質の少なくとも一部が金属化合物である水素分離材を用いて水素分離処理を行う際には、該水素分離処理に先立って(あるいは該水素分離処理の初期段階で)、該金属化合物の一部又は全部を金属(単体)に変換する処理(還元処理等)を実施することが好ましい。
ここに開示される水素分離材の一つの好ましい態様では、セラミックス(例えば、上記式(A)で表されるセラミックス)と電子伝導性物質(電子−プロトン伝導性物質を含む概念である。以下同じ。)との合計を100mol%としたときの該電子伝導性物質のモル含有率が凡そ20〜85mol%(より好ましくは凡そ35〜85%、更に好ましくは凡そ40〜80%、特に好ましくは凡そ50〜80%)の範囲にある。電子伝導性物質のモル含有率が上記範囲よりも低すぎると、水素分離材の電子伝導性を向上させる効果が少なくなりがちである。一方、該モル含有率が上記範囲よりも高すぎると水素分離材の強度が不足しやすくなる(例えば、ガスのリーク等が生じやすくなる)場合がある。電子伝導性物質のモル含有率が上記範囲にある水素分離材は、電子導電性と強度とのバランスに優れたものであり得る。ここに開示される水素分離材の一つの好ましい態様では、セラミックスと電子伝導性物質との合計を100質量%としたときの該電子伝導性物質の質量含有率が凡そ20〜75質量%(より好ましくは30〜75%、更に好ましくは40〜70%)の範囲にある。かかる質量含有率を満たす組成の水素分離材も、また、電子導電性と強度とのバランスに優れたものであり得る。
ここに開示される水素分離材は、電子−プロトン伝導性物質とアルミナ(Al23)とから実質的に構成された複合材料であり得る。この場合における電子伝導性物質としては、インジウム、ガリウム、スズ及びビスマスからなる群から選択される1種又は2種以上の金属及び/又は該金属の化合物(典型的には酸化物)が好ましい。これらのうち特に好ましい電子伝導性物質としてインジウム及びインジウム化合物(特に、金属インジウム)が挙げられる。また、アルミナと電子伝導性物質(例えばインジウム)との合計を100mol%としたときの該電子伝導性物質のモル含有率を40〜80%とすることが好ましく、50〜80%とすることが更に好ましい。
この水素分離材の形状は特に限定されない。本発明の好ましい態様では、該分離材が膜状に形成されている。ここで「膜状」とは、平面状、曲面状、管状(両端が開口した開管状のもの、一端が開口しており一端が閉じている閉管状のもの等を含む)、ハニカム状等を含む概念である。この膜の両側で水素分圧を異ならせることにより、膜の一方の面から他方の面へとプロトンを効率よく透過させることができる。この膜は緻密であって(例えば、理論密度に対する相対密度が95%以上)、実質的にガス不透性であることが好ましい。水素分離材の厚さは、例えば0.5μm〜10mmとすることができ、好ましくは1μm〜5mm、より好ましくは2μm〜3mm、更に好ましくは5μm〜2mmである。
本発明の水素分離材は、例えば以下のようにして製造することができる。
即ち、製造しようとする水素分離材に含まれるセラミックスの組成に応じて、該セラミックスを構成する金属原子を含む化合物の粉末(原料粉末)を所定の割合で混合し、酸化性雰囲気(例えば大気中)又は不活性ガス雰囲気で焼成する(第1焼成)。その焼成物の粉末と電子伝導性物質の粉末とを所定の割合で含む混合粉末を調整する。該混合粉末を、水素分離材の用途(例えば、水素分離装置を構成する水素分離用隔壁)に応じた形状に成形する。この成形物を、酸化性雰囲気(例えば大気中)又は不活性ガス雰囲気で焼成する(第2焼成)。このようにして、プロトン伝導可能なセラミックスと電子伝導性物質とから実質的に形成され、所定の形状(例えば膜状)に形成された水素分離材を得る。
前記原料粉末としては、セラミックスを構成する金属原子を含む酸化物あるいは加熱により酸化物となり得る化合物(当該金属原子の炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、ハロゲン化物、水酸化物、オキシハロゲン化物等)を用いることができる。セラミックスを構成する金属原子のうち二種以上の金属原子を含む化合物(複合金属酸化物、複合金属炭酸塩等)を含有する原料粉末を用いてもよい。
電子伝導性物質の粉末としては、融点950℃未満の金属の粉末を用いてもよく、該金属の化合物(例えば酸化物)の粉末を用いてもよい。金属化合物粉末を用いる場合には、得られた水素分離材を用いて水素分離処理を行う前に(あるいは該水素分離処理の初期段階で)、金属化合物の一部又は全部を金属(単体)に変換する処理(還元処理等)を実施することが好ましい。
このような製造方法において、第1焼成と第2焼成とは同じ温度で行ってもよく、異なる温度で行ってもよい。例えば、第1焼成を800〜1500℃で行い、第2焼成を1000〜1800℃(好ましくは1100〜1700℃)で行うことができる。好ましい一つの態様では、第2焼成(本焼成)の温度よりも低い温度で第1焼成(仮焼)を行う。
第1焼成により得られた焼成物の粉末と電子伝導性物質の粉末との混合粉末は、例えば、上記焼成物を粉砕した焼成物粉末と電子伝導性物質の粉末とを用意し、これらを所定の割合で混合することにより調整することができる。あるいは、上記焼成物と電子伝導性物質とを一緒に粉砕しつつ混合してもよい。かかる混合粉末を成形する方法としては、一軸圧縮成形、静水圧プレス、押出し成形等の、従来公知の成形法を採用することができる。該成形のために、必要に応じて従来公知のバインダ等を使用することができる。
なお、本発明の水素分離材は、その性能(プロトン伝導性、電子伝導性、緻密性、強度等)を顕著に損なわない範囲で、上記セラミックス及び電子伝導性物質以外の成分を含有することができる。
本発明の水素分離装置は、ガス流通可能なチャンバーと、上述したいずれかの水素分離材から成る水素分離用隔壁と、該隔壁を収容するチャンバーとを備える。そのチャンバー内には、上記水素分離用隔壁によって相互に隔てられた被処理ガス供給部と水素透過部とが形成されている。被処理ガス供給部及び水素透過部はそれぞれ水素分離用隔壁の一方の面及び他方の面に面している。一つのチャンバーに収容されている水素分離用隔壁の数は一つでもよく二つ以上でもよい。また、被処理ガス供給部及び水素透過部は、それぞれ、一つの水素分離用隔壁に面していてもよく、二つ以上の水素分離用隔壁に面していてもよい。一つのチャンバー内に形成された被処理ガス供給部及び水素透過部の数は、それぞれ、一つでもよく二つ以上でもよい。一つのチャンバー内に形成された被処理ガス供給部の数と水素透過部の数とは同一であってもよく異なっていてもよい。
以下、本発明により提供される水素分離装置の構成及びその使用方法を例示する。
図1は、平板状に形成された水素分離材から成る水素分離用隔壁を備える水素分離装置の一構成例を示す模式図である。この水素分離装置1は、ガス流通可能なチャンバー2と、そのチャンバー内に設けられた水素分離用隔壁10と、その隔壁を所望の温度に加熱するための加熱手段(ヒータ等)3とを備える。
隔壁10は平板状(例えば円盤状)であって、上述したいずれかの水素分離材から成る。チャンバー2は、隔壁10の一方の表面側に位置する被処理ガス供給側ケーシング22と、隔壁10の他方の表面側に位置する水素透過側ケーシング32とを備える。ケーシング22,32は、いずれも、ムライト等の緻密なセラミックにより形成されている。供給側ケーシング22は、一端が隔壁10の一方の表面10aに気密に接合された有底筒状の外管24と、一端が外管24の底面を貫通して外管24の内部に気密に挿入された筒状の内管26とを備える。また、外管24の底面には貫通孔25が形成されている。透過側ケーシング32も同様に、一端が隔壁10の他方の表面10bに気密に接合された有底筒状の外管34と、一端が外管34の底面を貫通して外管34に気密に挿入された筒状の内管36とを備える。外管34の底面には貫通孔35が形成されている。供給室側ケーシング22及び隔壁10によって、該隔壁の一方の表面10aに面する被処理ガス供給部20が区画形成されている。また、透過側ケーシング32及び隔壁10によって、該隔壁の他方の表面10bに面する水素透過部30が区画形成されている。
被処理ガス供給部20には、この被処理ガス供給部20に水素原子(H)を構成原子とするガス(被処理ガス)を流通させて隔壁10の一方の表面10aに接触させるための被処理ガス供給手段52が接続されている。この供給手段52は、図1に示すように、水素を含むガス(例えば、H2、H2を含む混合ガス、H2O、H2Oを含む混合ガス等)を内管26の他端から被処理ガス供給部20に供給し、外管24の貫通孔25から排出するように構築されている。一方、水素透過部30には、この水素透過部30に透過側ガスを流通させて隔壁10の他方の表面10bに接触させるための透過側ガス流通手段54が接続されている。この透過側ガス流通手段54は、図1に示すように、透過側ガス(ここではアルゴンガス)を内管36の他端から水素透過部30に供給し、外管34の貫通孔35から排出するように構築されている。
隔壁10を加熱する加熱手段3は、隔壁10に含まれる電子伝導性物質の少なくとも一部(好ましくは全部)が溶融可能な温度まで隔壁10を加熱し得るように設けられている。例えば、該電子伝導性物質の融点よりも100℃以上高い温度まで隔壁10を加熱し得るように設けられている。この加熱手段3により隔壁10を上記電子伝道性物質の融点以上の所定の使用温度(例えば700℃〜950℃)に維持しつつ、被処理ガス供給手段52及び透過側ガス流通手段54により被処置ガス及び透過側ガスをチャンバー2に流通させる。これにより、被処理ガスに含まれていた水素原子がプロトンとなって水素分離用隔壁10を透過し、このプロトンが水素透過部30において水素分子(H2)となって外部へ取り出される。このようにして水素の分離が行われる。
なお、図1に示す水素分離装置1では平板状に形成された一枚の水素分離用隔壁10を用いているが、複数の平板状の水素分離用隔壁を積層配置し、隣り合う隔壁10の間にそれぞれ形成された流路に被処理ガス及び透過側ガスが交互に流通されるように水素分離装置を構成してもよい。また、隔壁10を機械的に支持する多孔質支持体が隔壁10の他方の表面10b側に設けられた構成としてもよい。あるいは、かかる多孔質支持体を隔壁10の一方の表面10a側に設けてもよく、隔壁10の両側に設けてもよい。該多孔質支持体は、隔壁10の全面を支持するように設けてもよく、その一部面積を支持するように設けてもよい。
図1に示す水素分離装置1は、被処理ガス供給部20の位置と水素透過部30の位置とを逆にしても用いることができる。また、被処理ガス及び透過側ガスの流通方向も図示したものに限られるものではない。例えば、貫通孔25から被処理ガスを供給し、内管26の他端から排出してもよい。また、貫通孔35から透過側ガスを供給し、内管36の他端から排出してもよい。
隔壁10は電子伝導性を有する水素分離材から成るので、図1に示す水素分離装置1には隔壁10の両面を短絡させる外部電極及び外部回路は設けられていない。本発明は、このように水素分離材(隔壁)の両面を短絡させるための余分な要素(例えば、水素分離材の両面に設けられる電極、それらの電極間に電圧を印加する外部回路等)を用いない構成で実施することができる。もっとも、かかる要素により水素分離材の両面を短絡させるような装置構成としてもよい。このように構成された装置も本発明の範囲に含まれ得る。
このような水素分離装置は、典型的には次のような条件で用いられる。すなわち、水素分離処理を行う際における水素分離材(水素分離用隔壁)の好ましい温度は、使用する電子伝導性物質を構成する金属の融点よりも高い温度であって、該融点よりも100℃以上(より好ましくは200℃以上)高い温度である。水素分離処理時における水素分離材(水素分離用隔壁)の温度の上限は1500℃以下とすることが好ましく、より好ましくは1200℃以下、特に好ましくは950℃以下である。
被処理ガス供給部に供給される被処理ガスの流量は、例えば10〜5000ml/min(好ましくは50〜2500ml/min)とすることができる。供給される被処理ガスのうち水素ガス(H2)換算の流量(水素ガス供給量)を10〜1500ml/min(好ましくは50〜1000ml/min)の範囲とすることが好ましい。透過側ガスの流量は、例えば1〜500ml/min(好ましくは1〜250ml/min、より好ましくは5〜60ml/min)とすることができる。透過ガスの流量が多すぎると出口ガス(水素透過部から排出されるガス)に含まれる水素ガスの濃度が低くなり、該出口ガスの有用性が低下しがちとなることがある。一方、透過ガスの流量が少なすぎると水素分離材の両側の化学ポテンシャルの差が少なくなり、水素透過性能が低下傾向となることがある。
ここに開示される水素分離材を用いた水素分離処理において、該処理に供する被処理ガスの一つの典型例は、水素分子(H2)を含むガスである。かかる被処理ガスは、実質的にH2のみからなるガス(水素ガス)であってもよく、H2と他のガスとを任意の割合(例えば、被処理ガスの全圧に占めるH2ガスの分圧が5%以上、より好ましくは20%以上)で含む混合ガスであってもよい。水素分離処理に供する被処理ガスの他の典型例としては、水分子(H2O)を含むガスが挙げられる。かかる被処理ガスは、実質的にH2Oのみからなるガスであってもよく、H2Oと他のガスとを任意の割合(例えば、被処理ガスの全圧に占めるH2Oの分圧が5%以上、より好ましくは20%以上)で含む混合ガスであってもよい。H2又はH2Oとともに被処理ガスを構成し得るガス成分の好適例としては、N2,He,Ar等の不活性ガスが挙げられる。また、H2及びH2Oを含む被処理ガス(含湿水素ガス)も好ましい。
透過側ガスの種類は特に限定されず、水素分離材を透過した水素を、水素分子又は水素を含む化合物の形態で、該水素分離材の表面近傍から運びさることができるガスであればよい。被処理ガスよりもH2分圧の低い透過側ガスを使用することが好ましい。好ましく使用される透過側ガスとしては、N2,He,Ar等の不活性ガスが挙げられる。これらの不活性ガスとH2Oとの混合ガス(含湿不活性ガス)を用いてもよい。
被処理ガス供給部の雰囲気圧力および水素透過部の雰囲気圧力は、それぞれ、常圧(大気圧)でもよく、加圧又は減圧であってもよい。典型的には常圧又は加圧であり、好ましくは常圧である。通常は、被処理ガス供給部の圧力を水素透過部の圧力と同等とするか、水素透過部よりもやや高くすることが好ましい。また、水素分離材にかかる負荷(応力)を軽減するという観点からは、被処理ガス供給部と水素透過部との圧力差(すなわち、水素分離材の両面における圧力差)を少なくすることが好ましい。例えば、被処理ガス供給部の圧力と水素透過部との圧力との比が2以下であることが好ましく、好ましくは1.2以下である。
以下、本発明に関するいくつかの実施例を説明するが、本発明をかかる実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
<水素分離材の作製>
表1に示す試料1〜13の各プロトン伝導性セラミックスの組成に対応する原料粉末を、該組成のセラミックスを与える化学量論比で混合した。原料粉末としては、SrCO3,BaCO3,Al23,ZrO2,CeO2及びY23から、目的とするセラミックスの組成に応じて必要なものを適宜選択して使用した。この混合物を大気中において900〜1250℃で仮焼し、得られた仮焼物を粉砕(解砕)した。この焼成物粉末(仮焼物粉末)と、表1に示す電子伝導性物質の粉末(金属粉末)とを、焼成物粉末(A)と金属粉末(B)との合計を100質量%としたときの前記金属粉末の質量含有率(B/(A+B))が同表に示す値となる割合で混合した。この混合粉末を円盤状に成形して1200〜1650℃で焼成した。得られた焼成体に研削加工を施して、直径25mm、厚さ1mmの円盤型に成形した。このようにして試料1〜13を得た。X線回折(XRD)測定により、これらの試料がいずれも表1に示すプロトン伝導性セラミックスと電子伝導性物質との混合物であることを確認した。
なお、表1の括弧内には、各試料における電子伝導性物質の質量含有率をモル含有率(すなわち、焼成物粉末と金属粉末との合計を100mol%としたときの前記金属粉末のモル含有率)に換算した値を示している。
<性能評価>
得られた試料1〜13を水素分離用隔壁に用いて、図1に示す構成の水素分離装置をそれぞれ作製し、これらの水素分離装置の水素分離性能を評価した。ここでは、隔壁の温度を900℃として水素分離処理を行った。
まず、各水素分離装置の備える水素分離用隔壁のリークの有無を次のようにしてチェックした。すなわち、水素分離装置1の加熱装置3を用いて隔壁10を900℃まで加熱した。隔壁10を同温度に維持しつつ、被処理ガス供給部20にN2ガスを100ml/minの流量で供給し、水素透過部30に含湿Arガスを100ml/minの流量で供給した。被処理ガス供給部20及び水素透過部30の圧力はいずれも常圧とした。このとき貫通孔35から排出されるガス(出口ガス)の流量を測定し、また該ガスの組成をガスクロマトグラフィにより調べた。これらの結果からリークの有無を判定したところ、電子伝導性物質(金属粉末)のモル含有率が85%を超える試料5ではリークがみられた(出口ガスにN2が混入した)。他の試料ではリークは観察されなかった。
次に、被処理ガス供給部20に供給するガスを、100ml/min流量のN2ガスから同流量の含湿H2ガスに切り替えた。水素透過部30には引き続き含湿Arガスを100ml/minの流量で供給した。また、隔壁10の温度は引き続き900℃に維持した。被処理ガス供給部20及び水素透過部30の圧力はいずれも常圧とした。出口ガスの流量及び成分を測定し、該出口ガスに含まれる水素の量から、被処理ガス供給部20から水素透過部30へと隔壁10を透過した水素の量(水素分子(H2)換算)を求めた。このようにして得られた各試料の水素透過率を表1に示す。なお、試料5については上述のとおりリークが観察されたため、水素透過率の測定を省略した。
Figure 0004855706
この表からわかるように、融点が950℃未満(ここでは300℃以下)の電子伝導性物質を含有する試料1〜12(試料5を除く。)は、いずれも水素分離機能を示した。特に、電子伝導性物質のモル含有率が40〜80%である試料は良好な水素透過性を示し、該モル含有率が50〜80%である試料ではさらに良好な結果が得られた。また、電子伝導性物質としてインジウムを用いた試料は、同程度のモル含有率で他の電子伝導性物質を含有する試料に比べて、より高い水素透過率を示した。一方、電子伝導性物質としてFe(融点1535℃)を用いた試料13では、このように試料に電極を付設しない使用態様では水素透過性が観察されなかった。
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示にすぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
また、本明細書又は図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組み合わせに限定されるものではない。また、本明細書又は図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
本発明に係る水素分離装置の一構成例を示す模式図である。
符号の説明
1:水素分離装置
2:チャンバー
3:加熱手段
10:水素分離用隔壁
20:被処理ガス供給部
30:水素透過部
52:被処理ガス供給手段
54:透過側ガス流通手段

Claims (7)

  1. プロトン伝導可能なセラミックスと電子伝導性物質とから実質的に形成された複合材料であり、
    前記電子伝導性物質は融点が950℃未満の金属であり、
    融点950℃以上の金属を実質的に含まないことを特徴とする、水素分離材。
  2. 前記電子伝導性物質は、インジウム、ガリウム、スズ及びビスマスから成る群から選択される1種又は2種以上の金属である、請求項1に記載の水素分離材。
  3. 融点が950℃以上のセラミックスと電子伝導性物質とから実質的に形成された複合材料であり、
    その電子伝導性物質は電子伝導性及びプロトン伝導性を持つ物質であって融点が950℃未満の金属又は該金属の化合物であり、
    融点950℃以上の金属を実質的に含まないことを特徴とする、水素分離材。
  4. 前記電子伝導性物質は、インジウム、ガリウム、スズ及びビスマスから成る群から選択される1種又は2種以上の金属及び/又は該金属の化合物である、請求項3に記載の水素分離材。
  5. 前記セラミックス及び前記電子伝導性物質の合計を100mol%としたときの前記電子伝導性物質のモル含有率が40〜80mol%である、請求項1〜4のいずれかに記載の水素分離材。
  6. ガス流通可能なチャンバーと、
    そのチャンバー内に設けられた請求項1〜5のいずれかに記載の水素分離材から成る水素分離用隔壁とを備え、
    前記チャンバー内には前記水素分離用隔壁によって相互に隔てられた被処理ガス供給部と水素透過部とが形成されている、水素分離装置。
  7. 前記水素分離用隔壁を構成する水素分離材に含まれる前記電子伝導性物質の少なくとも一部が溶融可能な温度まで該隔壁を加熱する加熱手段を備える、請求項6に記載の水素分離装置。
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