JP4856913B2 - 高強度ポリ乳酸繊維とその製造方法 - Google Patents
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ポリ乳酸の融点は150℃から170℃の範囲にあり、ポリエステルやポリブチレンテレフタレートのごときエンジニアリングプラスチックの代替として用いるには不十分であると考えられている。また、ポリ乳酸はクロロホルムなどの有機溶媒に簡単に溶解するため、オイルなど有機溶剤などと接触する用途に用いることは不可能である。
例えばポリL乳酸とポリD乳酸を等モル量含む組成物を溶融紡糸した0.5cN/dTex程度の繊維が提案されている(特許文献1)。
またポリL乳酸とポリD乳酸の混合物を溶融紡糸した未延伸糸を熱処理た繊維が提案されている。しかしこの繊維は、熱処理時に繊維内部の分子配向が緩和して繊維の強度は2.3cN/dTexである(非特許文献2)。
また、ステレオコンプレックスポリ乳酸を高速紡糸で巻き取ったあと、多段延伸を行なった8.0cN/dTexの高強度の繊維が提案されている(特許文献2)。しかし、該繊維のステレオコンプレックス化率は65%以下と低く、高強度かつ高ステレオ化率の繊維を作るには至っていないのが現状である。
即ち本発明は、ポリL乳酸とポリD乳酸とからなる繊維であり、強度が4.5cN/dTex以上であり、示差走査熱量計(DSC)測定において、ステレオコンプレックス結晶に由来する単一の融解ピークを有し、融点が210℃以上であることを特徴とするポリ乳酸繊維である。
ポリL乳酸の重量平均分子量が10万〜50万であり、ポリD乳酸の重量平均分子量が10万〜50万であることが好ましい。ポリL乳酸中のスズイオンの含有量が5ppm以下であり、ポリD乳酸中のスズイオンの含有量が5ppm以下であることが好ましい。ポリL乳酸が100モル%のL乳酸単位から構成され、ポリD乳酸が100モル%のD乳酸単位から構成され、これらの重量平均分子量が10万〜50万であることが好ましい。ポリL乳酸およびポリD乳酸が、それぞれ260℃における溶融状態での重量平均分子量の低下率が20%以下であることが好ましい。
(2)未延伸糸を70〜100℃に予熱した後、3.5〜5.5倍に延伸することからなるポリ乳酸繊維の製造方法である。
ポリL乳酸およびポリD乳酸中のラクチド含有量がそれぞれ400ppm以下であることが好ましい。
ポリL乳酸は、L乳酸を主たるモノマー成分とするポリエステルおよびポリエステルセグメントである。このL乳酸を主たるモノマー成分とするポリエステルは、実質的にL乳酸単位だけで構成されるポリL乳酸、他のポリエステルとの共重合体、その他のポリマーとの共重合体などが上げられるが、特に実質的にL乳酸単位だけで構成されるポリL乳酸であることが好ましい。このポリL乳酸中のL乳酸単位は、好ましくは90〜100モル%、より好ましくは95〜100モル%、さらに好ましくは98〜100モル%である。またD乳酸単位および/または乳酸以外の共重合成分は、好ましくは0〜10モル%、好ましくは0〜5モル%、さらに好ましくは0〜2モル%である。
ポリL乳酸は、その重量平均分子量が好ましくは10万〜50万、より好ましくは14万〜25万である。
ポリD乳酸は、その重量平均分子量が好ましくは10万〜50万、より好ましくは14万〜25万である。
本発明のポリ乳酸繊維は溶融紡糸法により得られる。乾式あるいは湿式などの溶液紡糸では工業的な観点から見ると生産性が低く、またポリL乳酸とポリD乳酸をブレンドした溶液の安定性が低いために、安定した糸が得られにくい。
また、本発明のポリ乳酸繊維は強度が4.5cN/dTex以上であり、好ましくは4.8cN/dTex以上、さらに好ましくは5.0cN/dTex以上である。衣料用および産業用として使用するにあたり、4.5cN/dTex以上の強度を有している繊維は実用面での使用範囲が広く、好ましい。
ステレオコンプレックス結晶を有するポリ乳酸においては、成分、組成比および製造条件に応じて、通常は低温結晶融解相(A)と高温結晶融解相(B)の少なくとも2つの吸熱ピークを示すことが知られている。本発明のポリ乳酸繊維には、(A)は全く観察されず、(B)の単一融解ピークのみが見られる。また、高温結晶融解相(B)の融解開始温度は190℃以上であり、好ましくは200℃以上である。
本発明のポリ乳酸繊維では、溶融紡糸に供するポリL乳酸およびポリD乳酸中のスズイオンの含有量が共に5ppm以下であることを特徴とする。
本発明の繊維は、(1)ポリL乳酸とポリD乳酸との混合物であって、水分率が100ppm以下の混合物を溶融紡糸し未延伸糸を得る工程、
(2)未延伸糸を70〜100℃に予熱した後、3.5〜5.5倍に延伸することにより製造することができる。
ポリL乳酸、ポリD乳酸は、繊維の項で説明したとおりである。混合物中のポリL乳酸とポリD乳酸との重量比は、前者/後者が、好ましくは60/40〜40/60、より好ましくは55/45〜45/55である。
混合物は、水分率が100ppm以下、好ましくは50ppm以下、より好ましくは10ppm以下である。混合物中の水分は、減圧乾燥することで低減することができる。水分率が高いとポリL乳酸とポリD乳酸の加水分解が促進され、分子量が著しく低下し、紡糸が困難になるばかりでなく、得られた糸の物性が低下する。
またポリL乳酸とポリD乳酸とのチップブレンド物を混練機にて溶融した後、チップ化した、予備混練されたチップが好ましい。
ポリL乳酸とポリD乳酸の混合物は、溶融された後、ギアポンプにより計量され、パック内で濾過された後、口金に設けられたノズルから吐出される。口金の形状、口金数は特に制限されるものではなく、円形、異形、中実、中空等のいずれも採用することができる。吐出された糸は直ちに冷却・固化された後集束され、油剤を付加されて巻き取られる。巻き取り速度は、特に限定されるものではないが、ステレオコンプレックス結晶が形成されやすくなることから300m/分から5000m/分の間が好ましい。
巻き取られた未延伸糸は、延伸工程に供されるが、紡糸工程と延伸工程は必ずしも分離する必要はなく、紡糸後いったん巻き取ることなく引き続き延伸を行う直接紡糸延伸法を採用しても構わない。
延伸は、1段延伸でも、2段以上の多段延伸でも良く、高強度の繊維を製造する観点から、延伸倍率は3.5倍以上、好ましくは3.5〜5.5倍である。しかし、延伸倍率が高すぎると繊維が失透し白化するため、繊維の強度が低下し、好ましくない。
延伸の予熱は70〜100℃、好ましくは70〜90℃で行なう。予熱は、ロールの昇温、平板状あるいはピン状の接触式加熱ヒータ、非接触式熱板、熱媒浴などにより行うことができる。
延伸に引き続き、巻き取り前にはポリマーの融点より低い温度で、熱処理が行われることが好ましい。熱処理にはホットローラーのほか、接触式加熱ヒータ、非接触式熱板など任意の方法を採用することができる。
本発明によれば、本発明のポリ乳酸繊維を含有してなる繊維製品が提供される。繊維製品として、織物、編物などが挙げられる。
(1)還元粘度:
ポリマー0.12gを10mLのテトラクロロエタン/フェノール(容量比1/1)に溶解し、35℃における還元粘度(mL/g)を測定した。
(2)水分率
水分率は得られたチップをカールフィッシャー水分率計(三菱化学 CA−100 気化装置つき)を用いて測定した。
(3)ラクチド含有量
ポリ乳酸中のラクチド含有量は、重クロロホルム中、日本電子製核磁気共鳴装置JNM−EX270スペクトルメーターを使用し、ポリ乳酸由来の四重線ピーク面積比(5.10〜5.20ppm)に対するラクチド由来の四重線ピーク面積比(4.98〜5.05ppm)として算出した。
(4)重量平均分子量および低下率
樹脂ならびに繊維の重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって以下の条件によって測定した。また、測定した重量平均分子量より下記の式によって分子量低下率を算出した。
重量平均分子量(Mw)測定法:ショーデックス製GPC−11を使用し、ポリ乳酸50mgを5mlのクロロホルムに溶解させ、40℃のクロロホルムにて展開した。重量平均分子量(Mw)、はポリスチレン換算値として算出した。
(5)スズイオン含有量
試料に捕捉剤を添加して灰化後、硫酸水素カリウムで融解した。希硝酸に溶解して、島津製作所製ICPS8100を使用し、ICP発光分析法によりスズイオン成分の含有量を算出した。
Lラクチド(株式会社武蔵野化学研究所)100重量部を重合容器に加え、系内を窒素置換した後、ステアリルアルコール0.2重量部、触媒としてオクチル酸スズ0.05重量部を加え、190℃、2時間、重合を行い、ポリマーを製造した。このポリマーを7%5N塩酸のアセトン溶液で洗浄し、触媒を除去し、ポリマーA1を得た。得られたポリマーA1の還元粘度は2.92(mL/g)、重量平均分子量19万であった。融点(Tm)は168℃であった。結晶化点(Tc)は122℃であった。ラクチド含有量は150ppm、スズイオン含有量は4.5ppmであった。
Dラクチド(株式会社武蔵野化学研究所)100重量部を重合容器に加え、系内を窒素置換した後、ステアリルアルコール0.2重量部、触媒としてオクチル酸スズ0.05重量部を加え、190℃、2時間、重合を行い、ポリマーを製造した。このポリマーを7%5N塩酸のアセトン溶液で洗浄し、触媒を除去し、ポリマーA2を得た。得られたポリマーA2の還元粘度は2.65(mL/g)、重量平均分子量20万であった。融点(Tm)は176℃であった。結晶化点(Tc)は139℃であった。ラクチド含有量は150ppm、スズイオン含有量は1.9ppmであった。
ポリマーA1およびポリマーA2のチップを、ポリマーA1/ポリマーA2=50/50の割合でチップブレンドした後、80℃で16時間減圧乾燥した。水分率は85ppmであった。
このチップを1軸ルーダー付溶融紡糸機を用い、240℃で溶融し、0.25Φの吐出孔を36ホールもつ口金から40g/分で吐出させた。吐出直後のパック下の温度は180℃、紡糸筒により冷却した後集束し、油剤を付加して、500m/分の速度で未延伸糸を巻き取った。この未延伸糸を予熱90℃で4.9倍に延伸し、引き続き140℃で熱セットを行い、160dtex/36filのポリ乳酸繊維を得た。得られた延伸糸は、示差走査熱量計(DSC)測定において、ポリL乳酸およびポリD乳酸からなるステレオコンプレックス結晶の単一融解ピークを示し、融点が224℃であった。また、繊維の強度は4.6cN/dtexであり、実用上十分な強度を保有していた。
ポリマーA1/ポリマーA2=50/50の割合のチップブレンドを準備し、溶融温度を260℃として紡糸すること以外は実施例1と同様の方法で160dtex/36filのポリ乳酸繊維を得た。260℃溶融後の分子量低下率は17%であった。得られた延伸糸は、DSC測定において、ポリL乳酸およびポリD乳酸からなるステレオコンプレックス結晶の単一融解ピークを示し、融点が215℃であった。また、繊維の強度は4.7cN/dtexであり、実用上十分な強度を保有していた。
延伸工程における予熱温度を70℃に設定したこと以外は実施例1と同様の方法で158dtex/36filのポリ乳酸繊維を得た。得られた延伸糸は、DSC測定において、ポリL乳酸およびポリD乳酸からなるステレオコンプレックス結晶の単一融解ピークを示し、融点が223℃であった。また、繊維の強度は4.5cN/dtexであり、実用上十分な強度を保有していた。
延伸工程における予熱温度を110℃に設定したこと以外は実施例1と同様の方法で160dtex/36filのポリ乳酸繊維を得た。
得られた延伸糸は、DSC測定において、ポリL乳酸およびポリD乳酸からなるステレオコンプレックス結晶の単一融解ピークを示したが、繊維の強度は3.3cN/dtexと低かった。
延伸工程における延伸倍率を2.9倍に設定したこと以外は実施例1と同様の方法で265dtex/36filのポリ乳酸繊維を得た。得られた延伸糸は、DSC測定において、ポリL乳酸およびポリD乳酸からなるステレオコンプレックス結晶の単一融解ピークを示したが、繊維の強度は2.2cN/dtexと低かった。
実施例1〜3、比較例1〜2の製糸条件を表1に示す。
Claims (6)
- ポリL乳酸とポリD乳酸とからなる繊維であり、強度が4.5cN/dTex以上であり、示差走査熱量計(DSC)測定において、ステレオコンプレックス結晶に由来する単一の融解ピークを有し、融点が210℃以上であることを特徴とするポリ乳酸繊維。
- ポリL乳酸の重量平均分子量が10万〜50万であり、ポリD乳酸の重量平均分子量が10万〜50万である請求項1記載のポリ乳酸繊維。
- ポリL乳酸中のスズイオンの含有量が5ppm以下であり、ポリD乳酸中のスズイオンの含有量が5ppm以下である請求項1記載のポリ乳酸繊維。
- ポリL乳酸が100モル%のL乳酸単位から構成され、ポリD乳酸が100モル%のD乳酸単位から構成され、これらの重量平均分子量が10万〜50万である請求項1記載のポリ乳酸繊維。
- ポリL乳酸およびポリD乳酸が、それぞれ260℃における溶融状態での重量平均分子量の低下率が20%以下である請求項1記載のポリ乳酸繊維。
- 請求項1記載のポリ乳酸繊維を含有してなる繊維製品。
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