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JP4862829B2 - 吸収型多層膜ndフィルター - Google Patents
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JP4862829B2 - 吸収型多層膜ndフィルター - Google Patents

吸収型多層膜ndフィルター

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本発明は、可視波長域の透過光を減衰させる吸収型多層膜NDフィルターに係り、特に、樹脂フィルムを基板とした耐環境性に優れた吸収型多層膜NDフィルターの改良に関するものである。
NDフィルター(Neutral Density Filter)には、入射光を反射して減衰させる反射型NDフィルターと、入射光を吸収して減衰させる吸収型NDフィルターが知られている。そして、反射光が問題となるレンズ光学系にNDフィルターを組み込む場合には一般的に吸収型NDフィルターが用いられ、この吸収型NDフィルターには、基板自体に吸収物質を混ぜる(色ガラスNDフィルター)タイプと、基板自体に吸収はなくその表面に形成された薄膜に吸収があるタイプとが存在する。また、後者の場合、薄膜表面の反射を防ぐため上記薄膜を多層膜(吸収型多層膜)で構成し、透過光を減衰させる機能と共に反射防止の効果を持たせている。また、小型で薄型のデジタルカメラに用いられる吸収型多層膜NDフィルターは、組込みスペースが狭いため基板自体を薄くする必要があり、樹脂フィルムが最適な基板とされている。
そして、上記薄膜が多層膜で構成される吸収型多層膜NDフィルターとして、特許文献1には上記多層膜が酸化物誘電体膜と吸収膜層とで構成されたNDフィルターが開示され、吸収膜層としてTi等の金属膜が採用されている。尚、上記吸収膜層としては、成膜時に意図的に酸素導入を行って酸素欠損による吸収を有するTiOxやTaOx等の金属酸化物膜を採用したNDフィルターも知られている。
ここで、上記吸収膜層を、成膜時に意図的に酸素導入を行わない金属膜で構成した場合、金属膜はTiOxやTaOx等の上記金属酸化物膜に較べて消衰係数が高いため、同じ消衰係数を得るには金属膜を採用した方が吸収膜層の膜厚を薄くすることができる。
そして、フレキシブル性を有する樹脂フィルム基板に吸収型多層膜を成膜する場合、樹脂フィルム基板の反り、膜の割れや成膜時間等を考慮すると、TiOx等の上記金属酸化物膜に較べて膜厚を薄く設定できる金属膜を吸収膜層に採用した方が有利である。
但し、金属膜や完全に酸化されていないTiOx等の金属酸化物膜は容易に酸化が進行してその消衰係数が低下するため、上記吸収膜層として金属膜や完全に酸化されていない金属酸化物膜を採用したNDフィルターでは透過率が経時的に高くなることが知られており、特に金属膜の場合に顕著であった。
このように金属膜や完全に酸化されていない金属酸化物膜を採用したNDフィルターにおいては、高温高湿の環境下において吸収膜層の酸化が進行してその透過率が増加してしまうことが問題となっていた。
ところで、金属膜や完全に酸化されていない上記金属酸化物膜を酸化させる酸素は、大気中、あるいは、樹脂フィルム基板や酸化物誘電体膜から供給されると考えられる。特に、金属膜が10nm以下の厚さであると酸化の影響を受けやすい。
そこで、金属膜等の酸化を防ぐため、大気中や酸素雰囲気中で熱処理を行い、金属膜等の界面付近を予め酸化させて金属膜等の内部まで酸化を進行させない方法が提案されている。例えば、特許文献2では、吸収膜層と誘電体膜を透明基板上に積層した薄膜型NDフィルターが提案され、上記吸収膜層は金属材料Tiを原料とし蒸着により成膜されており、酸素を含む混合ガスを成膜時に導入し、真空度を1×10-3Paないし1×10-2Paの間で一定に維持した状態で生成した金属材料の酸化物TiOxを含有する吸収膜層が用いられている。そして、吸収膜層と誘電体膜を透明基板に積層した後、酸素を10%以上含む酸素雰囲気で加熱し、光学特性の変化を飽和させる方法が提案されている。
また、特許文献3では、光透過性基板上に1層以上の透明誘電体膜と吸収膜層とが積層形成されて成る薄膜型NDフィルターに関し、上記吸収膜層として酸化により透過率が高くなり難い低級金属窒化膜を採用する方法が提案されている。
ところで、大気中あるいは酸素雰囲気中での熱処理により金属膜等の界面付近を予め酸化させる特許文献2に記載の方法では、特に厚さ10nm以下の薄い金属膜では内部まで瞬時に酸化が進行してしまい、界面付近にのみ酸化膜を形成させることが困難な問題を有していた。また、大気中あるいは酸素雰囲気中で熱処理を施した場合、成膜された吸収型多層膜と樹脂フィルム基板との熱膨張係数の違いや残留応力緩和により反りやクラックが発生することがあった。更に、基板である樹脂フィルムに関しては、通常、NDフィルターの製造時に長尺状のものが利用されることから、例えばスパッタリングロールコータにより吸収型多層膜が形成された樹脂フィルムを巻き取りローラに巻きつけながら均一な熱処理を施すには極めて大がかりな装置が必要となる問題も存在した。
他方、酸化により透過率が高くなり難い低級金属窒化膜を採用した特許文献3に記載の方法では、透過率が増加してしまう欠点は解決されているが、低級金属窒化膜は金属膜より消衰係数が小さいため、膜厚が厚くなるとNDフィルターのプレス加工時に膜割れが発生するという課題を有していた。
特開平5−93811号公報 特開2003−43211号公報 特開2003−322709号公報
本発明はこのような問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、吸収膜層に金属膜を用いた吸収型多層膜NDフィルターにおいて、外部雰囲気による金属膜の酸化に起因して透過率が経時的に上昇することのない、耐環境性に優れた吸収型多層膜NDフィルターを提供することにある。
上記課題を解決するため本発明者等が鋭意研究を行った結果、以下のような解決手法を見出すに至った。すなわち、上記吸収膜層を構成する金属材料には、従来からNi、Cr、Ti、Nb、Ta等が使用されてきた。しかし、これ等の金属材料は、そのどれもが酸化して透明すなわち消衰係数が小さくなる傾向があるため、高温高湿の環境下において吸収型多層膜NDフィルターの透過率が増加し、成膜直後の分光光学特性を長期間保つことは極めて困難であった。
そこで、本発明者等は、上記吸収膜層の材料として化学的に安定なPtを適用することにより上記課題の解決を試みた。すなわち、Ptは酸化により消衰係数が変化することのほとんどない極めて安定な金属である。また、Ptは極めて高価な金属ではあるが、消衰係数が高いため、同じ吸収を得るためには、例えばNiの約半分以下の膜厚でよい。以下、具体的に説明する。
まず、Ni膜とSiO膜で構成される従来例に係る平均透過率6.3%の吸収型多層膜NDフィルターの膜構成を表1に、その分光透過特性を図1に示す。この吸収型多層膜NDフィルターを、温度80℃、湿度90%の高温高湿環境下に24時間放置した場合、図2に示すように透過率が増加してしまうことがあった。これは、Ni膜の酸化によりその消衰係数が低下したためである。
Figure 0004862829
他方、Pt膜とSiO膜で構成される平均透過率6.3%の吸収型多層膜NDフィルターの膜構成を表2に、その分光透過特性を図3に示す。
Figure 0004862829
この吸収型多層膜NDフィルターにおいては、極めて安定なPtを金属膜の材料に適用しているため、高温高湿環境下に長時間放置した場合でも酸化による消衰係数の変化はほとんどない。しかし、酸化物誘電体膜に透明なSiO膜を用いた場合、図3に示すように短波長になるほど透過率が高くなる傾向があり、可視波長域(波長400〜700nm)における分光透過特性のフラット性[=(最大透過率−最小透過率)/平均透過率]が約65%も低下し好ましくなかった。そこで、物理的気相成長法によるSiOの成膜時に酸素の導入量を減少させ、完全に酸化させない若干着色したSiOx(1.5<x<2)膜を酸化物誘電体膜に用いたところ、図4に示すように上記分光透過特性のフラット性を改善することが可能となり、10%以下の非常に良好なフラット性が得られることを発見した。更に、この吸収型多層膜NDフィルターを、温度80℃、湿度90%の高温高湿環境下に24時間放置した場合でも、図5に示すように透過率は変化しなかった。本発明はこのような技術的検討を経て完成されている。
すなわち、請求項1に係る発明は、
樹脂フィルムから成る基板の少なくとも片面に、酸化物誘電体膜と金属膜とを交互に積層させて成る吸収型多層膜を具備する吸収型多層膜NDフィルターにおいて、
Pt単体若しくはPt合金により上記金属膜が構成され、かつ、物理的気相成長法による成膜時の酸素導入量を制御して形成されたSiOx(1.5<x<2)により上記酸化物誘電体膜が構成されると共に、吸収型多層膜の可視波長域(波長400〜700nm)における最大透過率と最小透過率の差を平均透過率で割った値で定義される分光透過特性のフラット性が10%以下であり、吸収型多層膜の上記可視波長域における反射率が5%以下であることを特徴とする。
また、請求項2に係る発明は、
請求項1に記載の発明に係る吸収型多層膜NDフィルターにおいて、
上記吸収型多層膜の最外層と基板と接する最内層が、酸化物誘電体膜によりそれぞれ構成されていることを特徴とし、
請求項3に係る発明は、
請求項1または2に記載の発明に係る吸収型多層膜NDフィルターにおいて、
物理的気相成長法により上記酸化物誘電体膜を成膜する時に用いられるターゲットが、Si単結晶、Si多結晶またはSiCセラミックスから選ばれる1種以上のターゲットであることを特徴とし、
請求項4に係る発明は、
請求項1、2または3に記載の発明に係る吸収型多層膜NDフィルターにおいて、
Pt単体若しくはPt合金により構成される上記金属膜の各膜厚が1nm〜10nm、SiOx(1.5<x<2)により構成される上記酸化物誘電体膜の各膜厚が10nm〜100nmの範囲にそれぞれ設定されていることを特徴とするものである。
本発明に係る吸収型多層膜NDフィルターは、
Pt単体若しくはPt合金により上記金属膜が構成され、かつ、物理的気相成長法による成膜時の酸素導入量を制御して形成されたSiOx(1.5<x<2)により上記酸化物誘電体膜が構成されると共に、吸収型多層膜の可視波長域(波長400〜700nm)における最大透過率と最小透過率の差を平均透過率で割った値で定義される分光透過特性のフラット性が10%以下であり、吸収型多層膜の上記可視波長域における反射率が5%以下であることを特徴としている。
そして、本発明に係る吸収型多層膜NDフィルターにおいては、極めて安定なPtを金属の膜材料に適用しているため、高温高湿の環境下に晒されても、成膜直後の分光光学特性を長期間に亘り保つことができ、しかも、可視波長域(波長400〜700nm)における上記分光透過特性のフラット性も10%以下と良好である効果を有している。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
まず、本発明に係る吸収型多層膜NDフィルターは、樹脂フィルムから成る基板の少なくとも片面に、酸化物誘電体膜と金属膜とを交互に積層させて成る吸収型多層膜を具備する吸収型多層膜NDフィルターにおいて、Pt単体若しくはPt合金により上記金属膜が構成され、かつ、物理的気相成長法による成膜時の酸素導入量を制御して形成されたSiOx(1.5<x<2)により上記酸化物誘電体膜が構成されると共に、吸収型多層膜の可視波長域(波長400〜700nm)における最大透過率と最小透過率の差を平均透過率で割った値で定義される分光透過特性のフラット性が10%以下であり、吸収型多層膜の上記可視波長域における反射率が5%以下であることを特徴とする。
上記吸収型多層膜の金属膜は上述したようにPt単体若しくはPt合金により構成され、Pt合金としては、Pt−Pd合金、Pt−Pd−Ru合金、Pt−Pd−Cu合金等が例示される。また、吸収型多層膜の酸化物誘電体膜はSiOx(1.5<x<2)膜により構成され、物理的気相成長法によりSiOxを成膜する時に用いられるターゲットは、Si単結晶、Si多結晶またはSiCセラミックスから選ばれる1種以上のターゲットが使用できる。尚、ターゲットにCが含まれるSiCセラミックスを使用した場合、Cはほとんど排気されてしまうため膜内にはほとんど含まれない。
ここで、上記酸化物誘電体膜については、Si単結晶、Si多結晶またはSiCセラミックスから選ばれる1種以上のターゲットを用い、酸素ガスの導入量を制御して物理気相成長法により成膜する。そして、成膜時における酸素ガスの導入量の制御は、吸収型多層膜の可視波長域(波長400〜700nm)における最大透過率と最小透過率の差を平均透過率で割った値[すなわち、(最大透過率−最小透過率)/平均透過率]で定義される分光透過特性のフラット性が10%以下であり、かつ、吸収型多層膜の上記可視波長域における反射率が5%以下となるように行われることが必要である。また、上記物理気相成長法としては、真空蒸着法、イオンビームスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、イオンプレーティング法等が挙げられる。
次に、本発明に係る吸収型多層膜NDフィルターの一例として、平均透過率が6.3%である吸収型多層膜NDフィルターの膜構成を表2に示し、その分光透過特性を図4に示す。この吸収型多層膜NDフィルターにおいて、酸化物誘電体膜にはSiCを主成分とした成膜材料(ターゲット)を用い、かつ、酸素ガスの導入量を制御したマグネトロンスパッタリング法により成膜したSiOx(1.5<x<2)膜を適用し、金属膜にはPtターゲットを用い、かつ、酸素導入を行わないDCスパッタリング法により成膜したPt膜を適用している。
ここで、上記SiOx(1.5<x<2)膜で構成される酸素欠損の酸化物誘電体膜を使用している理由は、透明なSiO膜とPt膜とで構成される吸収型多層膜NDフィルターでは、上述したように可視波長域(波長400〜700nm)における短波長側の透過率が高くなって[(最大透過率−最小透過率)/平均透過率]で定義される分光透過特性のフラット性が低下する弊害があるため、可視波長域の長波長側より短波長側の透過率が低い(吸収率が高い)SiOx膜を使用して上記弊害を解消することにある。
そして、分光透過特性のフラット性[=(最大透過率−最小透過率)/平均透過率]が10%以下になるように成膜条件を調整して成膜する。具体的には、SiOx膜の成膜時における酸素の導入量を酸素導入バルブにより制御し、カソード間のインピーダンスが設定値になるようにインピーダンスモニターして調整する。インピーダンスの設定値が高いと酸素導入量が少なくなり着色した消衰係数の大きいSiOx膜になる。また、インピーダンスの設定値が低くなると酸素の導入量が多くなり透明な消衰係数の小さいSiOx膜になる。
上記インピーダンスモニターは酸素の導入量によってターゲット電極間のインピーダンスが変化する現象を応用したもので、このインピーダンスモニターは、形成される膜が金属モードと酸化物モード間の遷移領域にある所望の膜となるように酸素の導入量を制御かつモニターして酸化物誘電体膜を高速成膜するために使用される。例えば、SiCを主成分とするターゲットを用いて得られる膜は、成膜時の酸素分圧が高くなる(成膜時の酸素導入量が多くなる)につれて、SiOxのX値が2に近く変化して、着色した膜から透明膜(SiO)へと変化していく。このように酸化物誘電体膜に関しては、上述したターゲットを成膜材料とし、真空蒸着法、イオンビームスパッタリング法、マグネトロンスパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的気相成長法により成膜し、かつ、インピーダンスモニターを用いて成膜中の酸素導入量を制御し、成膜時に導入する酸素ガスを減じることにより消衰係数を調整することができる。
上記SiOx膜と組み合わせるPt膜は、Pt単体若しくはPt合金をターゲットとしたDCスパッタリング等の物理的気相成長法により成膜される。
そして、Pt膜の成膜条件(スパッタ電力、Ar導入量、成膜速度、残留ガス、膜厚等)によりPt膜の光学定数(屈折率、消衰系数)が異なるため、分光透過特性のフラット性[=(最大透過率−最小透過率)/平均透過率]が10%以下になるときのSiOx膜におけるインピーダンス設定値を具体的に表すことはできない。以下に示す実施例では、分光透過特性のフラット性[=(最大透過率−最小透過率)/平均透過率]が10%以下になるときのSiOx膜における消衰係数は「0.1±0.01」であったが、Pt膜の光学定数(屈折率、消衰系数)は上述したように成膜条件によって異なるため、組み合わせるSiOx膜の最適な消衰係数もPt膜の光学定数に依存してしまう。
従って、インピーダンス設定値をパラメータにして吸収型多層膜の成膜を行い、得られた吸収型多層膜の分光透過特性を測定してフラット性を求める工程を繰り返し、フラット性が10%以下になるインピーダンス設定値を求める。
例えば、表2に示すSiOx膜とPt膜とで構成される吸収型多層膜を成膜する。
1回目は、SiOx成膜時のインピーダンス設定値を小さく(酸素導入を多くする)して、消衰係数がほぼゼロになるようなSiO膜とPt膜で構成する。
尚、この成膜条件と同一条件で成膜したSiOx単層膜(この場合はSiO単層膜となっている)の消衰係数を分光エリプソメトリー法により測定したところ、測定限界の消衰係数「k<0.001」であった。
次に、得られた吸収型多層膜NDフィルターの分光光学特性を自記分光光度計で測定し、その分光透過特性(図6参照)、分光反射特性(図7参照)を確認し、かつ、分光透過特性からそのフラット性[=(最大透過率−最小透過率)/平均透過率]を確認する。消衰係数「k<0.001」では、図6に示されているように分光透過特性のフラット性が約65%であり、このようなNDフィルターを挿入した場合、画像の色調が大幅に変化することになって好ましくない。
そこで、上記1回目の結果に基づき、2回目の吸収型多層膜の成膜では、SiOx成膜時のインピーダンス設定値を少し大きく(酸素導入を少し減らす)して若干着色したSiOx膜(1.5<x<2)とPt膜とで吸収型多層膜を構成する。
尚、この成膜条件と同一条件で成膜したSiOx単層膜の消衰係数を分光エリプソメトリー法により測定したところ、測定限界の消衰係数「k=0.05」であった。
次に、得られた吸収型多層膜NDフィルターの分光光学特性を自記分光光度計で測定し、その分光透過特性(図6参照)、分光反射特性(図7参照)を確認し、かつ、分光透過特性からそのフラット性[=(最大透過率−最小透過率)/平均透過率]を確認する。消衰係数「k=0.05」では、図6に示されているように分光透過特性のフラット性が約32%となっており、このNDフィルターの挿入により、画像の色調が変化することになってしまうので好ましくない。
そこで、上記2回目の結果に基づき、3回目の吸収型多層膜の成膜では、SiOx成膜時のインピーダンス設定値を更に大きく(酸素導入を極端に減らす)して若干着色したSiOx膜(1.5<x<2)とPt膜とで吸収型多層膜を構成する。
尚、この成膜条件と同一条件で成膜したSiOx単層膜の消衰係数を分光エリプソメトリー法により測定したところ、測定限界の消衰係数「k=0.1」であった。
次に、得られた吸収型多層膜NDフィルターの分光光学特性を自記分光光度計で測定し、その分光透過特性(図6参照)、分光反射特性(図7参照)を確認し、かつ、分光透過特性からそのフラット性[=(最大透過率−最小透過率)/平均透過率]を確認する。消衰係数「k=0.1」では、図6に示されているように分光透過特性のフラット性が約6%であった。このような10%以下のフラット性であれば、画像を見ても色調が変化したとは判断できない。
このようにSiOx成膜時のインピーダンス設定値を繰り返し変更して光学特性が相違する吸収型多層膜NDフィルターを複数調製し、分光透過特性のフラット性[=(最大透過率−最小透過率)/平均透過率]が10%以下となる成膜条件を調整していけばよい。
但し、1回目〜3回目の試験結果に基づくとしても、SiOx膜の最適な消衰係数が3回目の「約0.1±0.01」になるとは必ずしも限らない。これは、金属膜に用いているPt膜についても、成膜条件(スパッタ電力、成膜速度、Arガス分圧、残留ガス等)により光学定数(屈折率、消衰係数)が異なるため、組み合わせるSiOx膜の最適な消衰係数は、Ptの光学定数に依存するためである。
ここで、金属膜の酸化を抑制する観点から、酸化物誘電体膜と金属膜とで構成される吸収型多層膜の最外層については酸化物誘電体膜で構成することが好ましく、また、樹脂フィルム基板(PET)との密着性を考慮した場合、酸化物誘電体膜と金属膜とで構成される吸収型多層膜の最内層についても酸化物誘電体膜で構成することが好ましい。
また、上記吸収型多層膜を構成する酸化物誘電体膜の各膜厚については10nm〜100nmの範囲に設定され、金属膜の各膜厚については1nm〜10nmの範囲に設定されることが好ましい。上記酸化物誘電体膜の各膜厚が10nm未満では多層膜としての干渉効果が少なくなる場合があり、また、100nmを超えると膜割れを引き起こす場合があるからである。他方、上記金属膜の各膜厚が1nm未満であると成膜時間が短いために所望とする成膜が困難となる場合があり、10nmを超えると透過率が1%未満となり所望の透過率が得られなくなる場合があるからである。尚、膜厚の薄い金属膜を得るには、インラインスパッタリング法やロールコーティング法では、膜厚と基板搬送速度は反比例の関係にあるので、例えば、基板の搬送速度1m/分の条件で得られるPt膜の膜厚が4nmであれば、基板の搬送速度を2m/分にすることにより、膜厚2nmのPt膜を得ることができる。
次に、基板を構成する樹脂フィルムの材質は特に限定されないが、透明であるものが好ましく、量産性を考慮した場合、後述する乾式のスパッタリングロールコーティングが可能となるフレキシブル基板であることが好ましい。フレキシブル基板は、従来のガラス基板等に比べて廉価・軽量・変形性に富むといった点においても優れている。そして、上記基板を構成する樹脂フィルムの具体例として、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルスルフォン(PES)、ポリアリレート(PAR)、ポリカーボネート(PC)、ポリオレフィン(PO)およびノルボルネンの樹脂材料から選択された樹脂フィルムの単体、あるいは、上記樹脂材料から選択された樹脂フィルム単体とこの単体の片面または両面を覆うアクリル系有機膜との複合体が挙げられる。特に、ノルボルネン樹脂材料については、代表的なものとして、日本ゼオン社のゼオノア(登録商標)やJSR社のアートン(登録商標)等が挙げられる。
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。
平均透過率6.3%の実施例1に係る吸収型多層膜NDフィルターを製造した。
尚、上記吸収型多層膜NDフィルターの酸化物誘電体膜には、SiCを主成分とした成膜材料(ターゲット)を用い、金属膜にはPt成膜材料(ターゲット)を用いた。
成膜手段にはスパッタリングロールコータ装置[住友金属鉱山(株)社製]を用い、排気ポンプにはターボ分子ポンプを用いた。
そして、SiOx膜の成膜は、Arガスを150sccm導入し、スパッタ電力10kWで、デュアルマグネトロンスパッタリング法によるスパッタリングを行い、酸素導入はインピーダンスモニターにより制御した。インピーダンス制御の設定値が小さくなっているとき程、酸素が多く導入されていることを示している。
ここで、上記デュアルマグネトロンスパッタリング法とは、絶縁膜を高速成膜するため、2つのターゲットに中周波(40kHz)パルスを交互に印加してアーキングの発生を抑制し、ターゲット表面の絶縁層の形成を防ぐスパッタリング方法である。
また、インピーダンスモニターは、上述したように形成する膜が金属モードと酸化物モードの間の遷移領域にある所望の膜となるように、酸素の導入量を制御しかつモニターして酸化物誘電体膜を高速成膜するために使用される。
SiCを主成分としたターゲットを用いて得られる膜は、成膜時の酸素分圧が高くなる(成膜時の酸素導入量が多くなる)につれて、SiOxのX値が2に近く変化して着色した膜から透明膜へと変化していく。
一方、金属膜の成膜については、Ptターゲットを用いたDCスパッタリングにより行い、酸素の導入を行っていない。また、Arガスを150sccm導入し、スパッタ電力500Wで成膜を行った。
そして、吸収型多層膜の成膜条件に関しては、以下に述べる繰り返し試験により調整(探求)した。
まず、表2に示すSiOx膜とPt膜で構成される吸収型多層膜を成膜する。
1回目は、SiOx成膜時のインピーダンス設定値を小さく(酸素導入を多くする)して、消衰係数がほぼゼロになるようなSiO膜とPt膜で構成する。尚、Pt膜の光学定数(屈折率と消衰係数)を以下の表3に示す。
Figure 0004862829
尚、この成膜条件と同一条件で成膜したSiOx膜(SiO単層膜)の消衰係数を分光エリプソメトリー法により測定したところ、測定限界の消衰係数「k<0.001」であった。
次に、得られた吸収型多層膜NDフィルターの分光光学特性を自記分光光度計で測定した。この分光透過特性を図6に、分光反射特性を図7にそれぞれ示す。また、図6の分光透過特性からそのフラット性[=(最大透過率−最小透過率)/平均透過率]を求めたところ、約65%であった。このようなNDフィルターを挿入した場合、画像の色調が大幅に変化することになって好ましくない。
そこで、1回目の試験結果に基づき、2回目の吸収型多層膜の成膜では、SiOx成膜時のインピーダンス設定値を少し大きく(酸素導入を少し減らす)して若干着色したSiOx膜(1.5<x<2)とPt膜とで吸収型多層膜を構成した。
尚、この成膜条件と同一条件で成膜したSiOx単層膜の消衰係数を分光エリプソメトリー法により測定したところ、測定限界の消衰係数「k=0.05」であった。
次に、得られた吸収型多層膜NDフィルターの分光光学特性を自記分光光度計で測定した。この分光透過特性を図6に、分光反射特性を図7にそれぞれ示す。また、図6の分光透過特性からそのフラット性[=(最大透過率−最小透過率)/平均透過率]を求めたところ、約32%であった。これでも、NDフィルターの挿入により、画像の色調が変化することになってしまう。
3回目の吸収型多層膜の成膜では、SiOx成膜時のインピーダンス設定値を更に大きく(酸素導入を極端に減らす)して、若干着色したSiOx膜(1.5<x<2)とPt膜とで吸収型多層膜を構成した。
尚、この成膜条件と同一条件で成膜したSiOx単層膜の消衰係数を分光エリプソメトリー法により測定したところ、測定限界の消衰係数「k=0.1」であった。
次に、得られた吸収型多層膜NDフィルターの分光光学特性を自記分光光度計で測定した。この分光透過特性を図6に、分光反射特性を図7にそれぞれ示す。また、図6の分光透過特性からそのフラット性[=(最大透過率−最小透過率)/平均透過率]を求めたところ、約6%であった。このような10%以下のフラット性であれば、画像を見ても色調が変化したとは判断できない。
そこで、3回目のデータを元にして光学薄膜の理論シミュレーションを行うと、分光透過率のフラット性が10%以下となるSiOx膜(1.5<x<2)の消衰係数の範囲は「約0.1±0.01」であった。
極めて狭い消衰係数の範囲ではあるが、SiOx膜成膜時のインピーダンス制御による消衰係数の再現性は高く、特に問題とならないことが確認された。
[比較例]
上記表1のNi膜とSiO膜とで構成される平均透過率6.3%の比較例に係る吸収型多層膜NDフィルターを製造した。尚、吸収型多層膜の成膜条件は実施例1と同様である。但し、SiOx成膜時のインピーダンス設定値を小さく(酸素導入を多く)して、消衰係数がほぼゼロになるようなSiO膜とNi膜とで構成される吸収型多層膜NDフィルターにおいても、実施例1に係る吸収型多層膜NDフィルターと同様、分光透過率のフラット性を10%以下にすることができる。
得られた比較例に係る吸収型多層膜NDフィルターの分光光学特性を自記分光光度計で測定した。その分光透過特性を図1に、分光反射特性を図8にそれぞれ示す。
「評 価」
実施例1と比較例に係る吸収型多層膜NDフィルターを、80℃、90%に設定された環境試験機にそれぞれ放置してその耐環境性を調査した。
そして、24時間目に各吸収型多層膜NDフィルターを環境試験機から取り出し、かつ、自記分光光度計により24時間経過後の分光透過特性の測定をそれぞれ行い、経時変化から耐環境性を調べた。尚、実施例1と比較例に係る吸収型多層膜NDフィルターの耐環境試験による分光透過率の変化をそれぞれ図5と図2に示す。
図2のグラフ図から、比較例に係る吸収型多層膜NDフィルターは、耐環境試験により分光透過特性の、特に可視波長域における短波長側の透過率が増加してしまう傾向にあることが確認された。これは、吸収膜層としてのNi膜が酸化して消衰係数が低下したためである。
一方、図5のグラフ図から、実施例1に係る吸収型多層膜NDフィルターは、耐環境試験による分光透過特性の変化がないことが確認された。これは、吸収膜層としてのPt膜が極めて安定であるためと考えられる。
本発明に係る吸収型多層膜NDフィルターによれば、高温高湿の環境下に晒されても成膜直後の分光光学特性を長期間に亘り保つことができ、かつ、可視波長域(波長400〜700nm)における分光透過特性のフラット性も10%以下と良好であるため、厳しい環境下で長時間の信頼性が要求される小型で薄型のデジタルカメラに用いられる産業上の利用可能性を有している。
Ni膜とSiO膜で構成される従来例(比較例)に係る平均透過率6.3%の吸収型多層膜NDフィルターの分光透過特性を示すグラフ図。 Ni膜とSiO膜で構成される従来例(比較例)に係る平均透過率6.3%の吸収型多層膜NDフィルターにおける高温高湿環境試験前後の分光透過特性を示すグラフ図。 Pt膜とSiO膜で構成される平均透過率6.3%の吸収型多層膜NDフィルターの分光透過特性を示すグラフ図。 Pt膜とSiOx(1.5<x<2)膜で構成される平均透過率6.3%の本発明に係る吸収型多層膜NDフィルターの分光透過特性を示すグラフ図。 Pt膜とSiOx(1.5<x<2)膜で構成される平均透過率6.3%の本発明に係る吸収型多層膜NDフィルターにおける高温高湿環境試験前後の分光透過特性を示すグラフ図。 平均透過率6.3%の本発明(実施例1)に係る吸収型多層膜NDフィルターの分光透過特性を示すグラフ図。 平均透過率6.3%の本発明(実施例1)に係る吸収型多層膜NDフィルターの分光反射特性を示すグラフ図。 Ni膜とSiO膜で構成される従来例(比較例)に係る平均透過率6.3%の吸収型多層膜NDフィルターの分光反射特性を示すグラフ図。

Claims (4)

  1. 樹脂フィルムから成る基板の少なくとも片面に、酸化物誘電体膜と金属膜とを交互に積層させて成る吸収型多層膜を具備する吸収型多層膜NDフィルターにおいて、
    Pt単体若しくはPt合金により上記金属膜が構成され、かつ、物理的気相成長法による成膜時の酸素導入量を制御して形成されたSiOx(1.5<x<2)により上記酸化物誘電体膜が構成されると共に、吸収型多層膜の可視波長域(波長400〜700nm)における最大透過率と最小透過率の差を平均透過率で割った値で定義される分光透過特性のフラット性が10%以下であり、吸収型多層膜の上記可視波長域における反射率が5%以下であることを特徴とする吸収型多層膜NDフィルター。
  2. 上記吸収型多層膜の最外層と基板と接する最内層が、酸化物誘電体膜によりそれぞれ構成されていることを特徴とする請求項1に記載の吸収型多層膜NDフィルター。
  3. 物理的気相成長法により上記酸化物誘電体膜を成膜する時に用いられるターゲットが、Si単結晶、Si多結晶またはSiCセラミックスから選ばれる1種以上のターゲットであることを特徴とする請求項1または2に記載の吸収型多層膜NDフィルター。
  4. Pt単体若しくはPt合金により構成される上記金属膜の各膜厚が1nm〜10nm、SiOx(1.5<x<2)により構成される上記酸化物誘電体膜の各膜厚が10nm〜100nmの範囲にそれぞれ設定されていることを特徴とする請求項1、2または3に記載の吸収型多層膜NDフィルター。
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